説明

シート材搬送装置及び画像形成装置

【課題】 長尺帯状に連続するシート材を搬送開始時においても高精度に搬送できるシート材搬送装置を得る。
【解決手段】 シート材搬送装置10では、制御部70は、連続紙Pの搬送を開始する際に、張力検出ローラ60の位置(すなわち連続紙Pの張力)が規定範囲内にある場合には、上流側の搬送ローラ18と下流側の搬送ローラ56Aとを同時に回転させる。また、制御部70は、連続紙Pの搬送を開始する際に、張力検出ローラ60の位置が規定範囲の上限値を超えている場合(連続紙Pの張力が高い場合)には、先ず上流側の搬送ローラ18を回転させると共に、張力検出ローラ60の位置が規定範囲内になった後で下流側の搬送ローラ56Aを回転させる。さらに、制御部70は、連続紙Pの搬送を開始する際に、張力検出ローラ60の位置が規定範囲の下限値を下回っている場合(連続紙Pの張力が低い場合)には、先ず下流側の搬送ローラ56Aを回転させると共に、張力検出ローラ60の位置が規定範囲内になった後で、上流側の搬送ローラ18を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状に連続するシート材を搬送するシート材搬送装置、及び該シート材搬送装置が適用されて構成された画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続紙に画像を形成する画像形成装置では、連続紙の搬送経路に沿って、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の各色のトナー像を形成可能な画像形成部が配設されている。また、このような画像形成装置では、画像形成部の前後に配設された搬送用のローラで連続紙を挟持し、これらの搬送用ローラによって連続紙に張力を作用させて搬送するようになっている。
【0003】
ところで、連続紙に画像を形成する場合、特にカラー画像を形成する場合には、各色の画像形成部において連続紙に搬送方向の位置ずれが生じると、画像品質が低下するが、このような連続紙の搬送方向の位置ずれは、連続紙の張力の変化に大きく関係している。このため、連続紙側へ付勢された揺動可能なローラ(張力検出ローラ)を連続紙に接触させると共に、この張力検出ローラの揺動位置に基づいて搬送方向下流側の搬送用ローラの回転速度を調節することで、連続紙の張力を制御する構成とした画像形成装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記特許文献に示された画像形成装置では、張力検出ローラは、支持アームによって揺動可能に支持されており、この支持アームの回転角をエンコーダによって検出するようになっている。そして、連続紙の張力が高くなると(支持アームが連続紙と反対側へ揺動すると)、搬送ローラの回転速度を減速させ、逆に連続紙の張力が低くなると(支持アームが連続紙側へ揺動すると)、搬送ローラの回転速度を増速させるようになっている。これにより、連続紙の張力が規定範囲内に維持され、画像形成部における連続紙の搬送方向の位置ずれが防止される。
【0005】
しかしながら、上記構成の画像形成装置では、張力検出ローラの位置が規定範囲から下限側に外れている状態(連続紙の張力が低い状態)で用紙搬送をスタートさせると、張力検出ローラへの連続紙の巻付き角が設計値より大きい状態で連続紙が搬送される。この場合、張力検出ローラの装置本体への取り付け精度等が用紙スキューに与える影響が大きくなる。
【0006】
また、張力検出ローラの位置が規定範囲から外れた状態で用紙搬送をスタートさせると、短時間では連続紙の張力が安定せず、その間に印字を開始すると印字ずれ(色ずれ)が生じてしまう。これを回避するためには、連続紙の張力が安定してから印字を開始すればよいが、その場合、張力が安定するまでの間に搬送された連続紙は無駄紙となってしまう。
【特許文献1】特開2002−12350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、長尺帯状に連続するシート材を搬送開始時においても高精度に搬送できるシート材搬送装置、及び該シート材搬送装置が適用されて構成された画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明のシート材搬送装置は、長尺帯状に連続するシート材を挟持しながら搬送する上流側搬送手段と、前記上流側搬送手段に対して前記シート材の搬送方向下流側に設けられ、前記シート材を挟持しながら搬送する下流側搬送手段と、前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段との間に設けられ、前記シート材の張力を検出する張力検出手段と、前記上流側搬送手段及び前記下流側搬送手段を作動させて前記シート材を搬送させると共に、前記シート材の搬送時に前記シート材の張力が規定範囲内に維持されるように前記下流側搬送手段による前記シート材の搬送速度を制御する制御手段と、を備えたシート材搬送装置において、前記制御手段は、前記シート材の搬送を開始する際に前記シート材の張力が前記規定範囲内にある場合には前記上流側搬送手段及び前記下流側搬送手段を同時に作動させる、ことを特徴としている。
【0009】
請求項1記載のシート材搬送装置では、制御手段は、上流側搬送手段及び下流側搬送手段によるシート材の搬送を開始する際に、シート材の張力が規定範囲内にある場合には、上流側搬送手段と下流側搬送手段とを同時に作動させる。そして、シート材の搬送が開始されると、シート材の張力が規定範囲内に維持されるように、制御手段が下流側搬送手段によるシート材の搬送速度を制御する。
【0010】
このように、搬送開始時にシート材の張力が規定範囲内にある場合には、上流側搬送手段と下流側搬送手段とが同時に作動されることで、シート材の張力が常に規定範囲内に維持されるので、高精度な搬送を実現できる。
【0011】
請求項2に係る発明のシート材搬送装置は、請求項1記載のシート材搬送装置において、前記制御手段は、前記シート材の搬送を開始する際に前記シート材の張力が前記規定範囲の上限値を超えている場合には前記上流側搬送手段を作動させて前記シート材の張力を前記規定範囲内にした後で前記下流側搬送手段を作動させる、ことを特徴としている。
【0012】
請求項2記載のシート材搬送装置では、制御手段は、シート材の搬送を開始する際に、シート材の張力が規定範囲の上限値を超えている場合には、先ず上流側搬送手段を作動させる。そして、上流側搬送手段の作動によりシート材の張力が規定範囲内になると、制御手段は、下流側搬送手段を作動させてシート材を搬送させると共に、シート材の張力が規定範囲内に維持されるように、下流側搬送手段によるシート材の搬送速度を制御する。
【0013】
このように、搬送開始時にシート材の張力が規定範囲の上限値を超えている場合でも、シート材の張力が規定範囲になってからシート材が搬送される構成であるため、高精度な搬送を実現できる。
【0014】
請求項3に係る発明のシート材搬送装置は、請求項1記載又は請求項2記載のシート材搬送装置において、前記制御手段は、前記シート材の搬送を開始する際に前記シート材の張力が前記規定範囲の下限値を下回っている場合には前記下流側搬送手段を作動させて前記シート材の張力を前記規定範囲内にした後で前記上流側搬送手段を作動させる、ことを特徴としている。
【0015】
請求項3記載のシート材搬送装置では、制御手段は、シート材の搬送を開始する際に、シート材の張力が規定範囲の下限値を下回っている場合には、先ず下流側搬送手段を作動させる。そして、下流側搬送手段の作動によりシート材の張力が規定範囲内になると、制御手段は、上流側搬送手段を作動させてシート材を搬送させると共に、シート材の張力が規定範囲内に維持されるように、下流側搬送手段によるシート材の搬送速度を制御する。
【0016】
このように、搬送開始時にシート材の張力が規定範囲の下限値を下回っている場合でも、シート材の張力が規定範囲になってからシート材が搬送される構成であるため、高精度な搬送を実現できる。
【0017】
請求項4に係る発明のシート材搬送装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のシート材搬送装置において、前記張力検出手段は、前記シート材に対して接離移動可能に設けられ、常に前記シート材側へ付勢されると共に当該付勢力によって前記シート材に接触された張力検出ローラを有し、前記張力検出ローラの位置に基づいて前記シート材の張力を検出する、ことを特徴としている。
【0018】
請求項4記載のシート材搬送装置では、常にシート材側へ付勢された張力検出ローラがシート材に接触している。この張力検出ローラは、シート材に対して接離移動可能とされており、上流側搬送手段と下流側搬送手段との間でシート材の張力が変化すると、張力検出ローラの位置も変化する。張力検出手段は、この張力検出ローラの位置に基づいてシート材の張力を検出する。
【0019】
請求項5に係る発明のシート材搬送装置は、請求項4記載のシート材搬送装置において、前記張力検出手段は、揺動可能に支持されると共に前記張力検出ローラを回転可能に支持する支持アームを有し、前記制御手段は、前記支持アームの角度を検出すると共に、当該検出結果に基づいて前記張力検出ローラの位置を検出する、ことを特徴としている。
【0020】
請求項5記載のシート材搬送装置では、張力検出ローラは、揺動可能に支持された支持アームに回転可能に支持されており、これにより、シート材に対して接離移動可能とされている。また、制御手段は、支持アームの角度を検出することで、張力検出ローラの位置を検出する。
【0021】
請求項6に係る発明の画像形成装置は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のシート材搬送装置を備えた、ことを特徴としている。
【0022】
請求項6記載の画像形成装置では、シート材の高精度な搬送を実現できるので、画像品質を向上させることができる。また、搬送開始時においてもシート材の張力を安定させることができるので、シート材の搬送開始と略同時に印刷を開始した場合でも印字ずれ(色ずれ)が生じることを防止でき、無駄紙の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した如く、本発明のシート材搬送装置及び画像形成装置によれば、長尺帯状に連続するシート材を搬送開始時においても高精度に搬送できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1には、本発明のシート材搬送装置10が適用されて構成されたカラーレーザープリンタ(以下、プリンタという)11の概略構成図が示されている。
【0025】
このプリンタ11では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像をそれぞれシート材としての連続紙Pに順次転写し、重ね合わせるプリント部12Y、12M、12C、12K(以下、プリント部12Y〜Kと言う)が搬送方向(矢印A参照)上流側から順に配置されている。このプリント部12Y〜Kの搬送方向上流側には、連続紙Pをプリント部12Y〜Kに搬送する用紙搬送部14が設けられている。また、プリント部12Y〜Kの搬送方向下流側には、プリント部12Y〜Kで転写された未定着トナー像を連続紙Pに定着させる定着部16、定着部16を通過した連続紙Pを排紙する排紙部17が設けられている。
【0026】
なお、YMCKを区別する必要がある場合は、符号の後にY、M、C、Kの何れかを付して説明し、YMCKを区別する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略する。
【0027】
用紙搬送部14は、本シート材搬送装置10の上流側搬送手段を構成する搬送ローラ18を備えており、この搬送ローラ18には連続紙Pが巻掛けられている。搬送ローラ18は、ステッピングモータである用紙搬送モータ(図示省略)で駆動され、プリンタ10全体の制御を司る制御手段としての制御部70(図2参照)が、この用紙搬送モータのパルス数に基づいて搬送ローラ18の回転速度(すなわち上流側搬送手段の搬送速度)を制御する。これにより、連続紙Pの送り量が制御される。
【0028】
また、搬送ローラ18には、本シート材搬送装置10の上流側搬送手段を構成するアイドルローラ19Dが圧接されている。このアイドルローラ19Dと搬送ローラ18が連続紙Pを狭持搬送する。
【0029】
さらに、搬送ローラ18の搬送方向上流側には、連続紙Pが巻き掛けられたアイドルローラ19A、19Bが設けられ、搬送ローラ18の搬送方向下流側には、連続紙Pが巻き掛けられたアイドルローラ19Cが配設されている。
【0030】
アイドルローラ19Aとアイドルローラ19Bとの間には、搬送ガイド26と、アライニングローラ27が配設されている。搬送ガイド26には、連続紙Pが巻掛けられるU字状の曲面と、連続紙Pの幅方向(搬送方向と直交する方向)の一端部をガイドするサイドガイド(図示省略)が形成されている。
【0031】
また、アライニングローラ27は、アイドルローラ19A、19B、19C、19Dよりも各段にローラ幅が狭く、回転軸が連続紙Pの搬送方向に対して斜めに交差したローラで、連続紙Pの幅方向一端部に当接して連続紙Pを幅方向の一端側へ寄せる。これによって、連続紙Pの幅方向一端部が搬送ガイド26のガイドリブに突き当てられ、連続紙Pのスキューが補正される。
【0032】
なお、搬送ローラ18、アイドルローラ19A、19B、19C、19D、用紙搬送モータ20、搬送ガイド26、アライニングローラ27は、直接、又は支持部材を介して用紙搬送フレーム21に支持されている。また、用紙搬送フレーム21は基台23に支持されている。
【0033】
一方、プリント部12Y〜Kは、感光体22を備え、この感光体22の回りにはそれぞれ、感光体22の回転方向(図中矢印方向)に順に転写ローラ24、クリーニング装置28、帯電チャージャー30、LEDヘッド32、現像器34が配設されている。プリント部12Y〜Kは、それぞれ感光体22、クリーニング装置28、帯電チャージャー30、LEDヘッド32を支持するプリントフレーム38Y〜Kを備える。隣り合うプリントフレーム38Y〜K同士の連結は、各プリントフレーム38Y〜Kを昇降可能に支持する基台54同士をボルトとナット(共に図示省略)で連結し、各プリントフレーム38Y〜K同士を連結板(図示省略)を介して位置決めしてネジ止めすることによって行われる。また、プリントフレーム38Yを支持する基台54は、用紙搬送フレーム21を支持する基台23に連結されている。
【0034】
転写ローラ24は、感光体22の上面に当接し、感光体22と共に連続紙Pを挟持搬送し、この際に現像器34によって感光体22上に形成されたトナー像を連続紙Pに転写させる。また、帯電チャージャー30は、感光体22表面を帯電させ、LEDヘッド32は、感光体22表面をライン露光して潜像を形成する。そして、現像装置34は、感光体22に形成された潜像上にトナーを付着させてトナー像を形成する。また、クリーニング装置28は、用紙Pに転写されずに感光体22表面に残留した未転写残留トナーを掻き落して除去する。また、転写ローラ24の左右にはガイドローラ40が配設されており、連続紙Pはこのガイドローラ40に沿って搬送される。
【0035】
現像装置34は、感光体22の軸方向に沿って配設された3本の現像マグネットローラ42と、この3本の現像マグネットローラ42の軸方向に沿って配設され、トナーとキャリアで構成される2成分トナーを3本の現像マグネットローラ42に搬送する搬送マグネットローラ44と、搬送マグネットローラ44の軸方向に沿って配設され、現像器カートリッジ46内に充填されたトナーとキャリアを攪拌して帯電させ、且つむら無く混合する2本の攪拌スクリュー48を備える。
【0036】
定着部16は、定着装置50、アイドルローラ54A、54B、本シート材搬送装置10の下流側搬送手段を構成する搬送ローラ56A、及び搬送ローラ56Aと共に下流側搬送手段を構成するアイドルローラ56Bを備える。搬送方向に順に、定着装置50、アイドルローラ54A、54B、54C、搬送ローラ56A及びアイドルローラ56Bの順に配設されており、これらは、搬送方向と直交する方向の両端部を定着フレーム58に支持されている。
【0037】
この定着装置50は、第1定着装置64及び第2定着装置66を備えており、これら第1定着装置64及び第2定着装置66を連続紙Pが通過する際には、連続紙P上の未定着トナーが加熱されて溶融され、再び凝固して連続紙Pに定着する。そして、定着装置50を通過した連続紙Pは、連続紙Pの印字面の裏面側に配設されたアイドルローラ54A、54Bによって方向転換されて搬送され、一旦定着部16から排出されて排紙部17を通過した後に、再び定着部16へ戻る。
【0038】
定着部16では、連続紙Pは搬送ローラ56A及びアイドルローラ56Bにより挟持されている。搬送ローラ56Aは、ステッピングモータである用紙搬送モータ(図示省略)で駆動され、これにより、連続紙Pが搬送ローラ56A及びアイドルローラ56Bによって挟持搬送される。
【0039】
なお、前述した搬送ローラ18と同様に、プリンタ10全体の制御を司る制御部70が用紙搬送モータのパルス数に基づいて搬送ローラ56Aの回転速度(すなわち下流側搬送手段の搬送速度)を制御する。これにより、連続紙Pの送り量が制御される。
【0040】
一方、排紙部17には、搬送方向に順に、アイドルローラ59A、アイドルローラ61、搬送ガイド62、アライニングローラ63、アイドルローラ59Cが配設されており、これらは搬送方向と直交する方向の両端部を直接、又は支持部材等を介して排紙フレーム65に支持されている。この排紙フレーム65は、プリントフレーム38K、及び定着フレーム58に連結されている。
【0041】
アイドルローラ61は、アイドルローラ59Aの上方に配設されており、アイドルローラ59A及びアイドルローラ61に巻き掛けられた連続紙Pは方向転換されて上方へ搬送される。
【0042】
また、アイドルローラ61の搬送方向下流側には、搬送ガイド62と、アライニングローラ63が配設されている。搬送ガイド62及びアライニングローラ63は、用紙搬送部14に配設された搬送ガイド26、アライニングローラ27と同様の構成で、連続紙Pのスキューを補正する。
【0043】
そして、搬送ガイド62の搬送方向下流側にはアイドルローラ59Cが配設されている。連続紙Pは、このアイドルローラ59Cに巻き掛けられ、定着部16の搬送ローラ56A及びアイドルローラ56Bへ向けて方向転換される。
【0044】
さらに、排紙部17には、アイドルローラ59Aとアイドルローラ61との間において、本シート材搬送装置10を構成する張力検出ローラ60が配設されている。連続紙Pはアイドルローラ59Aと張力検出ローラ60との間、張力検出ローラ60とアイドルローラ61との間を蛇行して搬送されている。
【0045】
ここで、図2には、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10の主要部の構成が概略図にて示されている(なお、図2では、説明の都合上、搬送ガイド62、アライニングローラ63、アイドルローラ59Cの図示を省略してある)。
【0046】
図2に示す如く、張力検出ローラ60は、長尺板状に形成された支持アーム72の先端側に支軸74によって回転可能に支持されており、その外周部が連続紙Pのアイドルローラ59Aとアイドルローラ61との間の部位に接触している。支持アーム72は、基端側が支軸76によって排紙フレーム65に支持されており、支軸76周りに揺動するようになっている(図2の矢印B及び矢印C参照)。
【0047】
また、支持アーム72の長手方向中間部には、捩りコイルスプリング78の一端部が係止されており、この捩りコイルスプリング78の他端部は、排紙フレーム65に係止されており、支持アーム72を支軸76周り一方(連続紙P側、図2の矢印B方向)へ付勢している。これにより、張力検出ローラ60の外周部が連続紙Pに押し付けられており、連続紙Pに所定の張力が付与されている。
【0048】
さらに、支持アーム72の基端側には、支軸76と同軸的にプーリ80が固定されている。プーリ80の近傍には、制御部70と共に制御手段を構成するポテションメータ82が配設されており、このポテションメータ82の回転軸とプーリ80にはベルト84が巻き掛けられている。このため、支持アーム72が揺動すると、プーリ80及びベルト84を介してポテションメータ82の回転軸が回転するようになっている。
【0049】
また、ポテションメータ82は、制御部70に電気的に接続されており、制御部70は、支持アーム72の回転角をポテションメータ82の値に基づいて検出すると共に、当該検出結果に基づいて張力検出ローラ60の位置を検出するようになっている。
【0050】
すなわち、張力検出ローラ60は搬送ローラ18と搬送ローラ56Aとの速度差によって生じる連続紙Pの張力に応じてその位置を変えるため、連続紙Pの張力検出手段として用いられ、ポテションメータ82の値に基づいて張力が検出される。
【0051】
ここで、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、印刷実施時には、制御部70が、図示しない用紙搬送モータに電力を供給して搬送ローラ18及び搬送ローラ56Aを回転させることで、連続紙Pが搬送される。このとき、制御部70は、張力検出ローラ60の位置が規定範囲内に維持されるように、下流側の搬送ローラ56Aの回転速度を制御する。これにより、連続紙Pの張力が規定範囲内に維持されるので、プリント部12Y〜Kにおける連続紙Pの搬送方向の位置ずれが防止され、印字ずれ(色ずれ)が防止される。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、制御部70は、連続紙Pの搬送を開始する際(印刷を開始する際)に、張力検出ローラ60の位置(すなわち連続紙Pの張力)が規定範囲内にある場合には、上流側の搬送ローラ18と下流側の搬送ローラ56Aとを同時に回転させる(上流側搬送手段と下流側搬送手段とを同時に作動させる通常シーケンスにて連続紙Pの搬送を開始する)。これにより、連続紙Pは、その張力が規定範囲内の状態で搬送を開始され、搬送開始後は、上述の如く制御部70によって下流側の搬送ローラ56Aの回転速度が制御されることで、連続紙Pの張力が規定範囲内に維持される。したがって、連続紙Pの張力は常に規定範囲内に維持されるので、高精度な搬送を実現できる。
【0053】
さらに、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、制御部70は、連続紙Pの搬送を開始する際(印刷を開始する際)に、張力検出ローラ60の位置(すなわち連続紙Pの張力)が規定範囲の上限値を超えている場合(連続紙Pの張力が高く、支持アーム72が図2の矢印C方向に所定量以上傾いている場合)には、先ず上流側の搬送ローラ18を回転させる。そして、上流側の搬送ローラ18の回転により、張力検出ローラ60の位置(すなわち連続紙Pの張力)が規定範囲内になると、制御部70は、下流側の搬送ローラ56Aを回転させて連続紙Pの搬送を開始させると共に、張力検出ローラ60の位置が規定範囲内に維持されるように下流側の搬送ローラ56Aの回転速度を制御する。
【0054】
このように、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、搬送開始時(印刷開始時)に連続紙Pの張力が規定範囲の上限値を超えている場合でも、連続紙Pの張力が規定範囲になってから連続紙Pが搬送されるので、高精度な搬送を実現できる。
【0055】
またさらに、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、制御部70は、連続紙Pの搬送を開始する際(印刷を開始する際)に、張力検出ローラ60の位置(すなわち連続紙Pの張力)が規定範囲の下限値を下回っている場合(連続紙Pの張力が低く、支持アーム72が図2の矢印B方向に所定量以上傾いている場合)には、先ず下流側の搬送ローラ56Aを回転させる。そして、下流側の搬送ローラ56Aの回転により、張力検出ローラ60の位置(すなわち連続紙Pの張力)が規定範囲内になると、制御部70は、上流側の搬送ローラ18を回転させて連続紙Pの搬送を開始させると共に、張力検出ローラ60の位置が規定範囲内に維持されるように下流側の搬送ローラ56Aの回転速度を制御する。
【0056】
このように、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、搬送開始時(印刷開始時)に連続紙Pの張力が規定範囲の下限値を下回っている場合でも、連続紙Pの張力が規定範囲になってから連続紙Pが搬送されるので、張力検出ローラ60への連続紙Pの巻付き角が設計値よりも大きい状態で連続紙Pが搬送されることを防止できる。これにより、張力検出ローラ60の排紙フレーム65への取付精度などが用紙スキューに影響することを防止又は軽減できる。
【0057】
また、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、上述の如く、搬送開始時においても連続紙Pの張力を安定させることができるので、連続紙Pの搬送開始と略同時に印刷を開始した場合でも印字ずれ(色ずれ)が生じることを防止でき、無駄紙の発生を防止できる。
【0058】
以上説明した如く、本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置10(プリンタ11)では、連続紙Pを搬送開始時においても高精度に搬送できる。
【0059】
なお、上記実施の形態に係るシート材搬送装置10では、張力検出ローラ60は支持アーム72によって揺動可能に支持される構成としたが、これに限らず、張力検出ローラ60がスライド可能に支持される構成としてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態に係るシート材搬送装置10では、制御部70は、ポテションメータ82の値に基づいて支持アーム72の回転角を検出すると共に、当該検出結果に基づいて張力検出ローラ60の位置を検出する構成としたが、これに限らず、制御部70が他の検出手段を用いて張力検出ローラ60の位置を検出する構成としてもよい。
【0061】
さらに、上記実施の形態では、本発明のシート材搬送装置をカラーレーザープリンタ11に適用して構成した場合について説明したが、これに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置が適用されて構成されたカラーレーザープリンタの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るシート材搬送装置の主要部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0063】
10 シート材搬送装置
11 カラーレーザープリンタ
18 搬送ローラ(上流側搬送手段)
19D アイドルローラ(上流側搬送手段)
56A 搬送ローラ(下流側搬送手段)
56B アイドルローラ(下流側搬送手段)
60 張力検出ローラ
70 制御部(制御手段)
72 支持アーム
P 連続紙(長尺帯状に連続するシート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状に連続するシート材を挟持しながら搬送する上流側搬送手段と、
前記上流側搬送手段に対して前記シート材の搬送方向下流側に設けられ、前記シート材を挟持しながら搬送する下流側搬送手段と、
前記上流側搬送手段と前記下流側搬送手段との間に設けられ、前記シート材の張力を検出する張力検出手段と、
前記上流側搬送手段及び前記下流側搬送手段を作動させて前記シート材を搬送させると共に、前記シート材の搬送時に前記シート材の張力が規定範囲内に維持されるように前記下流側搬送手段による前記シート材の搬送速度を制御する制御手段と、
を備えたシート材搬送装置において、
前記制御手段は、前記シート材の搬送を開始する際に前記シート材の張力が前記規定範囲内にある場合には前記上流側搬送手段及び前記下流側搬送手段を同時に作動させる、
ことを特徴とするシート材搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記シート材の搬送を開始する際に前記シート材の張力が前記規定範囲の上限値を超えている場合には前記上流側搬送手段を作動させて前記シート材の張力を前記規定範囲内にした後で前記下流側搬送手段を作動させる、ことを特徴とする請求項1記載のシート材搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記シート材の搬送を開始する際に前記シート材の張力が前記規定範囲の下限値を下回っている場合には前記下流側搬送手段を作動させて前記シート材の張力を前記規定範囲内にした後で前記上流側搬送手段を作動させる、ことを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載のシート材搬送装置。
【請求項4】
前記張力検出手段は、前記シート材に対して接離移動可能に設けられ、常に前記シート材側へ付勢されると共に当該付勢力によって前記シート材に接触された張力検出ローラを有し、前記張力検出ローラの位置に基づいて前記シート材の張力を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載のシート材搬送装置。
【請求項5】
前記張力検出手段は、揺動可能に支持されると共に前記張力検出ローラを回転可能に支持する支持アームを有し、
前記制御手段は、前記支持アームの角度を検出すると共に、当該検出結果に基づいて前記張力検出ローラの位置を検出する、
ことを特徴とする請求項4記載のシート材搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載のシート材搬送装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−264827(P2006−264827A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82750(P2005−82750)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】