説明

シート状化粧料

【課題】多糖類を含有する化粧料基剤を均一に含浸させることができ、更に、使いやすく、保湿等の効果を顔全体に適用させることができ、安全性及び使用感にも優れたシート状化粧料を提供する。
【解決手段】(a)多糖類、(b)多価アルコールを含有する化粧料基剤をシート状保持体に含浸させた後、凍結乾燥して得られることを特徴とするシート状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類及び多価アルコールを含有する化粧料基剤をシート状保持体に含浸させた後、凍結乾燥することにより、使いやすく、さらに、使用感及び安全性に優れたシート状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸等の多糖類は、皮膚に対する保湿力が非常に優れ、皮膚に弾力性を与えると共に、潤いと張りを与え、皮膚を美しくする効果があるため、これらの成分を配合する化粧品は多数開発されている。
【0003】
一方、手軽で使いやすく、携帯にも便利な化粧料として、シート状化粧料が数多く上市されており、ヒアルロン酸塩等を不織布に含有したシート状化粧料も開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ヒアルロン酸等の多糖類は、非常に吸水性が高いため、不織布等のシート状保持体に含浸させる場合、均一に含浸させることが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2004-51521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、多糖類を含有する化粧料基剤をシート状化粧料に均一に含浸でき、さらに使いやすく、保湿等の効果を顔全体に適用させることができ、安全性及び使用感にも優れたシート状化粧料を提供することにある。また、凍結乾燥処理を施すことにより、携帯性、防腐性の面においても優れたシート状化粧料を提供できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸塩を、多価アルコールと共に用いることで、シート状保持体に均一に含浸させることを見出した。そして、それを凍結乾燥することにより得られるシート状化粧料が、使いやすく、しかも保湿等の効果を顔全体に適用させることができ、安全性や使用感にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち第1の発明は、(a)多糖類、(b)多価アルコールを含有する化粧料基剤をシート状保持体に含浸させた後、凍結乾燥して得られる。
【0009】
また第2の発明は、(a)多糖類がヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸塩、であることを特徴とする請求項1に記載のシート状化粧料にある。
【0010】
また第3の発明は、(b)多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状化粧料にある。
【0011】
また第4の発明は、更に(c)糖類を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状化粧料にある。
【0012】
また第5の発明は、(c)糖類がラフィノース及び/又はラクトースであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状化粧料にある。
【0013】
また第6の発明は、水又は水溶液を加えてから使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状化粧料にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、多糖類を含有する化粧料基剤をシート状化粧料に均一に含浸でき、さらに使いやすく、保湿等の効果を顔全体に適用させることができ、使用感にも優れたシート状化粧料を提供することができる。また、凍結乾燥をするため、防腐剤等を無添加にでき、安全性にも優れたシート状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明のシート状化粧料は、多糖類と多価アルコールを含有する化粧料基剤をシート状保持体に含浸させた後、凍結乾燥することにより得られるシート状化粧料であり、保湿等の効果を顔全体に適用させるために、必要な成分と量の化粧料基剤を含浸させておくことが好ましい。
【0017】
本発明の(a)成分としては、ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸、又はそれらの塩、キチン及びキトサン、又はそれらの誘導体、寒天等の多糖類から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。特に、保湿効果や使用性の面からヒアルロン酸及びその塩が好ましい。
【0018】
ヒアルロン酸及びその塩は、市販のものを使用することもできるし、動物組織から抽出したものや微生物の培養による発酵法で生産されたもの等を使用することもできる。また、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸塩の中で、水に対する溶解性、凍結乾燥のしやすさ、肌に対する使用感等の面から、ヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩の分子量は5万〜300万前後のものであればいずれのものでも使用できるが、5万〜220万のものが特に好ましい。また、加水分解されたヒアルロン酸やヒアルロン酸塩を用いることもできる。この場合の分子量は1万以下のものであればいずれのものでも使用できる。
【0019】
本発明における(a)成分の配合量は、化粧料基剤の総量を基準として、0.001〜1質量%が好ましく、更に好ましくは、0.05〜0.5質量%、最も好ましくは、0.01〜0.1質量%である。当該範囲内であれば、凍結乾燥効率も十分であり、使用感も向上する。
【0020】
本発明の(b)成分としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール等から選ばれた1種又は2種以上が好ましい。特に、ヒアルロン酸等をシート状保持体に含浸させる際の使用性や保湿効果、使用感の面からグリセリンが好ましい。
【0021】
本発明における(b)成分の配合量は、化粧料基剤の総量を基準として、0.001〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.01〜5質量%、最も好ましくは、0.1〜2.5質量%である。当該範囲内であれば、保湿等の効果や使用感が向上する。
【0022】
本発明は、前記成分に加え、保湿効果や使用感の向上を目的として、(c)糖類を含有させることが好ましい。
【0023】
(c)成分としては、例えば、単糖、二糖、オリゴ糖等が挙げられ、ラフィノース、マル
チトール、ラクトース、トレハロース、ショ糖、マンノース、ソルビトール、キシロビオース等から選ばれた1種又は2種以上が好ましい。保湿効果や使用感の面から、ラフィノース及び/又はラクトースが、特に好ましい。
【0024】
本発明における(c)成分の配合量は、化粧料基剤の総量を基準として、0.01〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、0.05〜5質量%、最も好ましくは、0.1〜2質量%である。当該範囲内であれば、保湿等の効果や使用感が向上する。
【0025】
本発明に用いられるシート状保持体としては、例えば、不織布、織布、繊維、紙、シート等が挙げられ、その材料としては、例えば、パルプ、レーヨン、コットン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられるが、本発明においては、特にパルプを含む不織布が好ましい。
【0026】
本発明の化粧料基剤には、更に美白成分を用いることができる。かかる美白成分としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ニワトコエキス、火棘エキス、デイオスコレアコンポジタ根エキス、酵母エキス、ジオウエキス、ハトムギエキス、チンピエキス、オオバナサルスベリエキス、サクラエキス、ホオノキエキス、タチバナエキス、オリーブ葉エキス、オトギリソウエキス、グリチルリチン酸ジカリウム、アセロラエキス、アスコルビン酸リン酸エステル塩等のアスコルビン酸塩、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸配糖体、アスコルビン酸エチル等のアスコルビン酸誘導体等が挙げられる。これらの中で、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸グルコシドが特に好ましい。
【0027】
本発明の化粧料基剤には、更に抗老化成分を用いることができる。かかる抗老化成分としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、塩化カルニチン、ナイアシン、γーアミノ酪酸(GABA)、グリチルリチン酸モノアンモニウム、オウバクエキス、オレンジ果汁、ニンジンエキス、オクラエキス、ランエキス、アボガドエキス、ピクノジェノール、カイソウエキス、加水分解シルク、オランダカラシ、タイソウエキス、メチルセリン、グリシン、L−プロリン、L−アラニン、酵母エキス、アセチルグルコサミン、シャクヤク抽出液、トウキ抽出液、センキュウ抽出液、カムカムエキス、ツキミソウエキス、月桃エキス等が挙げられる。
【0028】
本発明の化粧料基剤には、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の油分、有機酸類、アルカリ類、界面活性剤、紫外線吸収剤、粉体、顔料、染料、酸化防止剤、キレート剤、香料等を適宜配合することができる。
【0029】
また、本発明のシート状化粧料に用いられる化粧料基剤は、シート状保持体に含浸させた後、凍結乾燥し水分を除去するため、防腐剤等が含まれていなくても安全性及び安定性に優れるものである。但し、エキス等の原料を使用した場合、購入した原料中にパラベンやフェノキシエタノール等の防腐剤が含まれる場合がある。これらの防腐剤を除くことは現実的に困難なため、その場合に限っては、ごく微量の防腐剤が含まれていてもよい。
【0030】
また、本発明のシート状化粧料に用いられる化粧料基剤は、通常の方法に従って製造することができ、例えば、液状、油中水型又は水中油型乳化状、ジェル状、ペースト状等のいずれの剤型のものも用いることができる。特に、液状のものはシートに含浸させる点において効率が良く、好ましい。
【0031】
また、本発明のシート状化粧料に用いられる化粧料基剤は、化粧料の他に、医薬品、医薬部外品等を含むものである。
【0032】
本発明のシート状化粧料は、前記した化粧料基剤及びシート状保持体を使用し、例えば下記のようにして製造される。
【0033】
化粧料基剤が全体にいきわたるように、シート状保持体に押し広げて含浸させた後、これを−20℃〜−80℃まで冷却し、2〜24時間凍結させる。続いて、真空度50〜500mmTorrで、30分〜50時間凍結乾燥させることにより、製造することができる。
【0034】
そして、使用時にシート状保持体に含浸させた化粧料基剤の保湿等の効果を十分に発揮・持続させるために、一定量の水又は水溶液を加えてから使用することが好ましい。使用する水又は水溶液の量は、含浸させる化粧料の剤型や成分によって調節することが好ましい。例えば、加える水又は水溶液量を測ることができる計量器付き容器に収納していれば、手軽で、携帯性にも優れており、特に好ましい。
【0035】
使用する水は、蒸留水、イオン交換水、水道水等、特に制限なく使用可能である。また、使用する水溶液としては、化粧水や美容液等、シートに含浸できる水溶液であれば用いることができる。中でも、水は手軽に入手でき、かつシートへの含浸が容易であり好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
製造例1(シート状化粧料の作製方法)
下記表1の配合量に従って、実施例1〜3及び比較例1、2の化粧料基剤を常法によって調製した。次に、シート状保持体(不織布複合品:王子キノクロス社製、面積:約20cm、厚さ:3.6mm)を用い、化粧料基剤(約10mL)が全体に行きわたるように、シート状保持体を押し広げて化粧料基剤を含浸させた。これを−30℃で24時間凍結させ、真空度150mmTorで2日間乾燥した。
そして使用時に水(2.5mL)を加え、シート全体を湿らせた状態で使用してもらった。
【0038】
試験例1(シート状化粧料の使用感評価)
【0039】
上記製造例1で製造した実施例1〜3及び比較例1、2のシート状化粧料について、使用感評価を行った。
【0040】
・評価方法
専門パネル6名を対象に、実施例1〜3及び比較例1、2のシート状化粧料を使用している時の感触、及び使用後の肌の状態について評価した。
【0041】
評価方法は、実施例1〜3及び比較例1、2のシート状化粧料を使用してもらい、下記に示す各項目ごとにそれぞれ5段階で評価してもらった。
・評価項目
<使用時の感触>
(1)さっぱり感
(2)べたつき
(3)のびの良さ
(4)総合評価
判定方法は、パネル各人が(a)絶対評価基準を用いて5段階に評価した平均値を(b)
4段階判定基準により判定した。
(a)絶対評価基準
・(1)(3)(4)の評価項目
(評点):(評価)
4:「とてもある」または「非常に良い」
3:「ある」または「良い」
2:「どちらでもない」または「普通」
1:「ない」または「悪い」
0:「全くない」または「非常に悪い」
・(2)の評価項目
(評点):(評価)
4:「全くない」
3:「ない」
2:「どちらでもない」
1:「ある」
0:「とてもある」
(b)4段階判定基準
平均値が3点以上 :非常に良い(◎)
平均値が2点以上3点未満 :良い(○)
平均値が1点以上2点未満 :やや悪い(△)
平均値が1点未満 :悪い(×)
【0042】
<使用後の肌の状態>
(5)柔らかさ :「ある」「どちらでもない」「ない」
(6)しっとり感:「ある」「どちらでもない」「ない」
判定方法は、「ある」と評価したパネラーの人数を評価基準として判定した。
◎:6人
○:4〜5人
△:2〜3人
×:0〜1人
【0043】
結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

*1:紀文フードケミファ社製ヒアルロン酸FCH−SU
【0045】
表1の結果より、実施例1は比較例2と比較して、使用時の感触、使用後の肌の状態が向上したことが分かる。また、実施例2、3は、比較例2及び実施例1と比較して、使用時の感触、使用後の肌の状態が更に向上したことが分かる。尚、比較例1においては、比較例2及び実施例1〜3と同様の方法では均一に含浸させることができず、製造することができなかったため評価対象外とした。
【0046】
また、実施例1〜3の全てにおいて、本発明のシート状化粧料は、水を含浸させる操作においても、また顔全体に適用する上でも、パネル全員が非常に使いやすいと答えた。
【0047】
また、実施例1〜3の全てにおいて、肌への刺激感を感じると答えたパネルはいなかった。
【0048】
実施例4
下記表2の組成の化粧料基剤を常法に従って調製し、それを製造例1で示した製造方法に従い、シート状化粧料を製造した。
【0049】
【表2】

*1:紀文フードケミファ社製ヒアルロン酸FCH−SU
【0050】
実施例4、5のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【0051】
次に、下記の配合成分に従って、化粧水、美容液を常法により製造し、それを用いて上記製造例1に従って、本発明のシート状化粧料を製造した。
【0052】
処方例1〜5 美白化粧水
【0053】
【表3】

【0054】
上記処方例1〜5のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【0055】
処方例6〜9 美白化粧水
【0056】
【表4】

【0057】
上記処方例6〜9のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【0058】
処方例10〜14 抗老化化粧水
【0059】
【表5】

【0060】
上記処方例10〜14のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【0061】
処方例15〜19 抗老化化粧水
【0062】
【表6】

【0063】
上記処方例15〜19のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【0064】
処方例20〜23 美白美容液
【0065】
【表7】

【0066】
上記処方例20〜23のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【0067】
処方例24〜28 抗老化美容液
【0068】
【表8】

【0069】
上記処方例24〜28のシート状化粧料は、前記試験において良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
多糖類を含有する化粧料基剤をシート状保持体に均一に含浸させることができ、更に、凍結乾燥法を利用して化粧料基剤をシート状保持体に適用することで、簡便性に優れ、安全性及び使用感にも優れたシート状化粧料を提供することができ、化粧料の使用性、携帯性の面から非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多糖類、(b)多価アルコールを含有する化粧料基剤をシート状保持体に含浸させた後、凍結乾燥して得られる。
【請求項2】
(a)多糖類がヒアルロン酸及び/又はヒアルロン酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のシート状化粧料。
【請求項3】
(b)多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状化粧料。
【請求項4】
更に(c)糖類を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状化粧料。
【請求項5】
(c)糖類がラフィノース及び/又はラクトースであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状化粧料。
【請求項6】
水又は水溶液を加えてから使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状化粧料。

【公開番号】特開2010−43022(P2010−43022A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207975(P2008−207975)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】