説明

シート状物およびその製造方法

【課題】 本発明の目的は従来の極細繊維によるシート状物では達成し得なかった優れた研磨特性を有しつつも、高い加工能率を兼ね備えた高性能シート状物を提供しようとするものである。
【解決手段】 熱可塑性ポリマーからなる平均径が300nm以下の極細繊維が収束してなる繊維束を表面に有するシート状物であって、繊維束の平均径が300〜1000nm、繊維束の繊維径CV%が30%以下であることを特徴とするシート状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録ディスクなどに用いるアルミニウム合金基板やガラス基板を超高精度の仕上げ加工を施すのに好適に用いられるシート状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク等の磁気記録媒体は、高容量化、高記録密度化に伴い、磁気ヘッドの浮上高さが著しく小さくなる傾向がある。長手記録媒体の場合、磁気ヘッドと磁気ディスク基板上の磁性体を円周方向に揃えるために記録ディスクの基板表面に円状の微細な条痕を形成するテクスチャー加工という表面処理が行われている。この際、磁気ディスクのテクスチャリング加工面の表面粗さ(Ra)を細かくすると、空気層流が薄くなり、磁気ヘッドが接近して記録密度を向上させることが可能となる。
【0003】
テクスチャー加工の方法としては、レーザーゾーンテクスチャリングやフォトリソグラフィを用いたものがあるが、比較的量産に向く方法としてテープテクスチャリングが好適に用いられている。一般にテープテクスチャリングではシート状物表面に立毛する繊維を極細化するほど、押し付け圧が分散することとなり優れたRaを達成できると考えられており、長手記録媒体のテープテクスチャリング用研磨布として極細繊維からなる不織布を利用したシート状物についての提案が行われている。
例えば0.03dtex以下の極細繊維絡合不織布に高分子弾性体を含浸させたシート状物が提案されており、Raが1.0nm以下を達成している(特許文献1)。また、平均直径0.05〜2μm極細繊維が20本以上収束した極細繊維束からなり、かつ該立毛が50〜1000μmである研磨基布によりRaが3.2オングストローム(0.32nm)を達成している(特許文献2)。
【0004】
いずれの技術もある程度低いRaを達成する技術であるものの、長手記録媒体のテクスチャー加工用シート状物を目的としたものであり、近年開発が急ピッチで進められている磁性体がディスク表面に垂直方向に配列された垂直記録媒体で要求されるRaやスクラッチ(大きな傷)には対応できないものである。すなわち、垂直記録媒体の研磨可能に対応するためには基板のRaを極小化することに加え、スクラッチと呼ばれる基板表面の大きな傷を極少化することが非常に重要となるためである。スクラッチの発生要因は押し付け圧の過多等の研磨条件によるものもあるが、その大半がシート状物表面における砥粒の凝集や研磨クズの堆積により、押し付け圧が局部集中することで発生するものが多く、この極少化のためには砥粒の坦持状態を均一化することに加え、押し付け圧の局部集中を抑制し、かつ研磨クズの堆積を抑制する研磨表面が必要であり、これに対応するシート状物の開発が切望されていた。
【特許文献1】特開2002−79472号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−170348号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は従来シート状物では達成し得なかったスクラッチ発生抑制を奏する優れた研磨特性を有したシート状物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のかかる課題は、熱可塑性ポリマーからなる平均径が300nm以下の極細繊維が収束してなる繊維束を有するシート状物であって、繊維束の平均径が300〜1000nm、繊維束の繊維径CV%が30%以下であることを特徴とするシート状物により解決される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシート状物では砥粒坦持が均一で有りつつも、研磨クズの堆積を抑制することが可能であり、従来のシート状物では適応が困難であった垂直記録媒体の研磨加工に適した優れた研磨特性、特にスクラッチ発生抑制に優れたシート状物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、望ましい実施形態とともに詳細に説明する。
本発明における熱可塑性ポリマーとは、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のことを言い、ポリアミドやポリエステルに代表される重縮合系ポリマーは融点が高く、より好ましい。本発明の言う熱可塑性ポリマーには必要に応じて粒子、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させても良いし、ポリマーの性質を損なわない程度に他の成分が共重合されていても良い。
本発明のシート状物は、熱可塑性ポリマーからなる平均径が300nm以下の極細繊維が収束してなる繊維束を有するシート状物であって、繊維束の平均径が300〜1000nm、繊維束の繊維径CV%が30%以下であることを特徴とするシート状物である。
本発明のシート状物とは極細繊維が収束した繊維束を少なくとも1部に有し、その繊維束間に高分子弾性体が配置されているものであり、表面に立毛を有するものである。
【0009】
本発明の極細繊維とは、形態的にはその単繊維がバラバラに分散したもの、単繊維が部分的に結合しているもの、あるいは複数の単繊維が凝集した集合体などの全ての総称であって、その断面形態などには限定がないものである。この極細繊維は少なくともシート状物表面の1部で収束して繊維束を構成するものであり、該繊維束表面には極細繊維径に相当する凹凸が形成されるものである。
【0010】
一般にハードディスク研磨等の微細研磨に用いられる砥粒の一次粒子は100〜200nm程度であり、繊維束表面で形成される凹凸を砥粒と同レベルとすることが本発明の特徴である。すなわち、繊維束表面に砥粒サイズの凹凸を形成させることによって、そこに砥粒が坦持され、従来にはない砥粒の均一坦持を可能とし、かつ研磨加工時の摩擦力による砥粒の脱落を抑制することにより砥粒の凝集が解消される。この目的を満足するには、極細繊維の平均径が300nm以下であり、好ましくは200nm以下であることである。極細繊維の平均径は下限値は製造可能な範囲では50nmである。
この極細繊維は収束して繊維束を形成しており、この繊維束の平均径を300〜1000nmとし、かつ繊維径CV%を30%以下である。
【0011】
繊維束の平均径は砥粒の凝集あるいは研磨クズの堆積を抑制するために重要である。すなわち、繊維束の平均径が300nm以上の場合には、砥粒が繊維束表面に形成される凹凸に効率よく把持されることとなり、研磨加工時での摩擦力等により、凝集を起こしにくい。また、繊維径が1000nm以下の場合には砥粒や研磨クズを堆積しにくく、押し付け圧の局所集中を起こすことなく、スクラッチを発生を抑制することに加え、被研磨物の表面に不要なうねり等を生成することがない。
従って、本発明の繊維束はその平均径が300〜1000nmであり、繊維束表面に適度な凹凸を形成させるためには500〜1000nmであることが好ましい。
更に研磨加工時の押し付け圧の局部集中によるスクラッチの発生を抑制するためには該繊維束の径のバラツキが小さいことが重要であり、本発明の繊維束径バラツキは、繊維径CV%により評価するものである。本発明における繊維径CV%とは該繊維束について評価するものであり、繊維束径の測定結果から繊維径CV%=(σALL/RALL)×100 (%)(σALL:繊維束の標準偏差 RALL:繊維束の平均径))として求めた値である。
繊維径CV%が30%以下であると研磨加工時の押し付け圧が局所的に集中ことが抑制され、押し付け圧が分散するためにスクラッチ発生抑制することとなる。
よって本発明のシート状物の目的を満たす範囲としては、繊維束の繊維径CV%が30%以下であり、好ましくは25%以下とすることである。
本発明における重要な要件である極細繊維の平均径、繊維束の平均径および繊維径CV%は以下のように求める。すなわち、シート状物の横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で150本以上の極細繊維あるいは繊維束が観察できる倍率としてシート状物表面を撮影する。この際、必要に応じて金属染色を施し、繊維のコントラストをはっきりさせることができる。該画像から同一画像内で無作為に抽出した150本の極細繊維あるいは繊維束の直径を測定した。この際、2次元的に撮影された繊維の繊維軸に対して垂直方向の幅(距離)をそれぞれの繊維の径とするものであり、ここで同一画像内で繊維の幅が20%以上変動する場合には、同一の繊維に対し、無作為に3ヶ所の幅を測定し、それらの平均値を径とする。また、これらの値に関しては、nm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。本発明の極細繊維および繊維束の平均径とはそれぞれの繊維径を測定し、その単純な数平均値を求めるものである。本発明の繊維束の繊維径CV%とは繊維束径の測定結果を基に繊維径CV%=(σALL/RALL)×100 (%)(σALL:繊維束径の標準偏差 RALL:繊維束の平均径))として算出される値であり、小数点以下は四捨五入するものである。
【0012】
本発明のシート状物の特徴は砥粒とほぼ同スケールの極細繊維が収束して構成された、径バラツキが小さい繊維束を表面に有することであり、従来にはない砥粒の均一坦持状態と研磨加工時の押し付け圧が均一となる非常に優れた研磨特性を有するものである。また、該繊維束の平均径は比較的小さく、研磨クズ等の堆積を抑制し、スクラッチ発生を低減することができる。
【0013】
以上のように本発明のシート状物は3つの特性を有し、それらの相乗効果によって初めて極限的な平滑性を要求される垂直記録媒体の研磨に適した特性有するシート状物となる。
【0014】
本発明のシート状物は前述した特性を満たすことにより優れた研磨特性を有するものであるが、シート状物表面に立毛する繊維束の長さを短くすることで繊維束同士の絡み合いを抑制し、絡み合った繊維束間に研磨クズ等が堆積するのを抑制することで本発明のシート状物の特性をより効果的にすることができる。
本発明のシート状物の平均立毛長さは40μm以下とすることが好ましいが、研磨加工性と言う観点から、平均立毛長さの下限値は10μmである。
【0015】
本発明の立毛長さとはシート状物表面に立毛する繊維束の長さのことを意味し、その平均値を評価するものであり、本発明では繊維束の平均立毛長さと表現する。その測定方法は、以下に示す通りである。すなわち、シート状物表面を立毛の順目方向にガラス棒等を用いてなぞり、立毛する繊維束を配向させた後、前述した平均径測定の場合と同様にTEMあるいはSEMでシート状物の横断面を繊維束が150本以上観察される倍率で撮影し、その画像から繊維束の片方の端末がシート状物に入り込んでおらず、繊維端が同一画面内で確認できる繊維束150本の立毛の長さを測定する。この際、必要に応じて金属染色を施し、繊維のコントラストをはっきりさせることができる。これらの値に関しては、μm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。本発明の繊維束の平均立毛長さとはそれぞれの立毛長さを測定し、その単純な数平均値を求めるものである。
【0016】
本発明のシート状物の製造方法の一例を以下に具体的に示す。
本発明のシート状物は難溶解性ポリマーの平均分散径が2000nm以下であるアロイポリマーを紡糸して得たアロイ繊維から不織布を作製し、、該不織布に高分子弾性体を付与する工程に引き続いて、該アロイ繊維から海である易溶解性ポリマーを溶解除去した後、立毛処理を施して、次いで物理的刺激を加えることを特徴とするシート状物の製造方法により得ることができる。本発明のシート状物の製造方法の特徴は、(1)アロイポリマーを得る工程、(2)アロイポリマーからアロイ繊維を得て、アロイ繊維からなる不織布を得る工程、(3)不織布に高分子弾性体を付与した後、海成分を溶解除去して極細繊維を発生させる工程、および(4)立毛処理を施した後、物理的刺激を加える工程であり、これらの工程を(1)〜(4)の順で行うことにより本発明のシート状物を安定して得ることができる。
【0017】
本発明におけるアロイポリマーとは溶剤に対する溶解性の異なる2種類以上のポリマーをエクストルーダーなどの溶融混練機にて混練し、該記のポリマーがアロイ化した樹脂のことを意味し、易溶解性ポリマーが海(マトリックス)、難溶解性ポリマーが球状に分散した島(ドメイン)をなしているものである。本発明のシート状物の製造方法では少なくとも1種類のアロイポリマーの難溶解性ポリマーの平均分散径は2000nm以下であることが好ましく、島成分ポリマーとして特にN6に代表されるポリアミド系樹脂を用いる場合は平均分散径を1000nm以下とすることが特に好ましい。なお、平均分散径とは難溶解性ポリマーの分散径の平均値のことを意味し、アロイポリマーを溶剤処理し、表層の海成分を溶解した後で、SEMあるいはTEMにより表面を観察し、得られた写真から同観察面に存在する500個の難溶解性ポリマーの分散物の外周を円あるいは楕円として測定する。これを少なくとも3ヶ所について行い、その平均値を平均分散径とする。
本発明におけるアロイポリマーの製造方法は、混練押出機等で温度、吐出量およびスクリュー回転数を適宜調整し、高混練することにより得ることができる。この混練条件としては、例えば、ポリマーの組み合わせにもよるが、混練押出機を用いる場合には、島成分ポリマーの分割数が100万以上となるようにスクリュー回転数と吐出量を調整することが目安となる。具体的には吐出量15kg/hr.の場合はスクリュー回転数を200〜600rpmとすることにより安定して難溶解ポリマーの平均分散径が2000nm以下であるアロイポリマーが得られる。
【0018】
本発明のシート状物の繊維層である不織布を作製する方法はアロイポリマー得、これを紡糸してアロイ繊維とし、該アロイ繊維を絡合処理することにより得ることができる。
本発明におけるアロイ繊維は前述したアロイポリマーを口金孔から溶融吐出し、冷却固化後巻き取るか捕集することにより得ることができる。ここで、アロイポリマーでない単なるチップ同士のドライブレンドによる紡糸の場合には混練不足により、島成分ポリマーの分散が不十分となるため、最終的な極細繊維の最小径が限られることに加え、口金孔内でのせん断の影響が繊維径の決定に大きく影響するため、特許文献2に記載されるような繊維束の外層と内層で極細繊維の繊維径が大きく異なるものとなり、製品の安定性を欠いたものになる。
また、不織布の形態は、短繊維をカード、クロスラッパーを用いて幅方向に配列させた積層ウェブを形成させた後にニードルパンチを施して得られる短繊維不織布や、スパンボンドあるいはメルトブロー法などから得られる長繊維不織布、抄紙法で得られる不織布および、支持体上にナノファイバーを噴霧、浸漬、あるいはコーティングして付着させたもの、織編物が挙げられる。中でも製造工程における極細繊維の脱落を抑制する点や得られるシート状物の引張強力や製造コストなどの点からスパンボンド法は好適に用いられる。
スパンボンド法とは、一般には溶融したポリマーをノズルより押出し、これを高速吸引ガスにより2500〜8000m/分の速度で吸引延伸した後、移動コンベア上に繊維を捕集して繊維ウェブとする方法を用いることを言う。また、繊維ウェブの捕集に引き続いて熱接着、絡合等を施すことにより一体化させたシートを得る方法が好ましい。繊維ウェブの絡合方法は、例えばニードルパンチやウォータジェットパンチなどの方法を適宜組み合わせることができる。
【0019】
ニードルパンチ処理のパンチング本数としては、繊維の高絡合化による緻密な表面状態を達成することを目的とし、500〜5000本/cmであることが好ましい。500本/cm以上であれば表面繊維の緻密性も良く、所望の高精度仕上げを得ることができる。一方、5000本/cm以下であれば加工性の悪化を招くことなく、繊維損傷も抑制される。また、ウォータジェットパンチング処理を行う場合には、水は柱状流の状態で行うことが好ましい。柱状流を得るには、通常直径0.05〜1.0mmのノズルから圧力1〜60MPaで噴出させる方法により好適に用いられる。
このようにして得られたアロイ繊維不織布は、緻密化の観点から、乾熱あるいは湿熱、あるいはその両者によって収縮させ、さらに高密度化しても良い。
本発明のシート状物をテープ状として、研磨加工に用いる場合には、形態安定の観点から目付は100〜600g/mとすることが好ましく、ニードルパンチあるいはウォータージェットパンチ等の条件を適宜調整することが良い。
【0020】
本発明のシート状物の製造方法においては、得られたアロイ繊維不織布に、ポリウレタンを主成分とする高分子弾性体を付着させる。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維あるいは繊維束がシート状物から抜け落ちるのを防止することができる。本発明に用いる高分子弾性体は、例えばポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でもポリウレタン、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
ポリウレタンは、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオール、もしくはこれらの共重合物を用いることができる。また、ジイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族イソシアネートなどを使用することができる。
ポリウレタンの重量平均分子量は100,000〜300,000が好ましく、より好ましくは150,000〜250,000である。重量平均分子量100,000以上にすることにより得られるシート状物の強度を保持し、また極細繊維束の脱落を防ぐことができる。また、300,000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑制し不織布への含浸を行いやすくすることができる。
【0021】
また、高分子弾性体は、主成分としてポリウレタンを用いることが好ましいが、バインダーとして性能を損なわない範囲で、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などのエラストマー樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂などが含まれていても良く、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
本発明において、高分子弾性体の含有率は、不織布の繊維の総重量に対し、10重量%以上60重量%以上であることが好ましい。含有量によってシート状物の表面状態、クッション性、硬度、強度などを適宜調整することができる。
使用する高分子弾性体については前記の通りであるが、高分子弾性体を付与させる際に用いる溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。溶媒に溶解した高分子弾性体溶液に不織布を浸漬する等して高分子弾性体を不織布に付与し、その後、乾燥することによって高分子弾性体を実質的に凝固し固化させる。乾燥にあたっては不織布及び高分子弾性体の性能が損なわない程度の温度で加熱してもよい。なお、繊維と高分子弾性体との接着を緩和する目的で、高分子弾性体を付与する前にポリビニルアルコールを付与し、繊維を保護してもよい。
径バラツキが小さい繊維束がシート状物の表面で立毛した状態となるためには、前述した工程に加え、アロイ繊維から海成分を溶解除去して極細繊維を発生させた後、立毛処理をさせることが良く、この順序が重要である。すなわち、不織布に高分子弾性体を付与した後、極細繊維を発生させれば、極細繊維同士が絡み合うことで繊維束としての収束力が増し、これに立毛処理を施すことで極細繊維が収束した繊維束として立毛させることが可能となる。
アロイ繊維から極細繊維を発生させる方法は、除去する成分(易溶解性ポリマーからなる海成分)の種類によって異なるが、PEやポリスチレン等のポリオレフィンであれば、トルエンやトリクロロエチレン等の有機溶媒、PLAや共重合ポリエステルであれば、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で浸漬・窄液を行う方法を好ましく用いることができる。
【0022】
また、シート状物の表面に繊維束を立毛させる方法は、例えばバッフィング処理が用いられる。ここでいうバッフィング処理とは、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて表面を研削する方法などにより施すのが一般的である。特に、表面をサンドペーパーにより、立毛処理することにで均一かつ緻密な立毛を形成することができる。本発明のシート状物となるようにバッフィング条件はバフ段数、サンドペーパー番手などを適宜調整すると良い。具体的には、バフ段数は3段以上の多段バッフィングとし、各段に使用するサンドペーパーの番手をJIS規定の300番〜600番の範囲とすることにより達成される。
【0023】
本発明のシート状物を得るためには最後に物理的刺激を加えることにより繊維束を分割および分散させることが重要である。すなわち、立毛処理後に物理的刺激を加えることにより繊維束が分割し、繊維束毎にシート状物表面に分散することとなるため、本発明のシート状物を安定に得ることが可能となる。この物理的刺激を加える方法および条件については繊維束を1/10程度に分割できるようにすることが目安となるが、例えば、ウォータージェットパンチング処理などの高速流体流処理や、液流染色機、ウインス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサー等を用いた揉み処理、超音波処理等を適宜組み合わせて実施してもよい。中でも液流染色機中にて揉み処理などを施す方法は好適に用いることができる。すなわち、液中で物理的刺激を付与することにより、極細繊維間に液体が侵入し、極細繊維同士の収束力を低減するため、効率的に繊維束の分割および分散が行われる液体染色機での揉み処理条件は、例えば、液浴比、ノズル径およびノズル圧を適宜調整すると良く、具体的には、液浴比1/10〜1/40、ノズル径50〜100φmmの液流染色機で布束10〜60m/分(ノズル圧0.1〜0.6kg/cm)とすることにより安定して本発明のシート状物を得ることができる。
【0024】
以上のように本発明のシート状物の製造方法は、(1)アロイポリマーを得る工程、(2)アロイポリマーからアロイ繊維を得て、該アロイ繊維からなる不織布を得る工程、(3)該不織布に高分子弾性体を付与した後アロイ繊維から海成分を溶解除去して極細繊維を発生させる工程、および(4)立毛処理後に物理的刺激を加える工程が特徴的なものであり、(1)〜(4)の順で行うことで、極限的な平滑性を要求される垂直記録媒体の研磨に適した特性を有する全く新しい本発明のシート状物を安定して得ることができる。
本発明のシート状物は記録媒体用磁気ディスクの研磨加工に用いる研磨布あるいはクリーニング布として用いると効果的である。
本発明のシート状物を用いて、ハードディスク研磨加工を行う方法としては、かかるシート状物を加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、研磨加工用テープとして用いる。
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクの研磨加工を行う方法が好適な方法である。研磨条件として、スラリーは、ダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明のシート状物を構成する極細繊維束に適合した砥粒径としては1000nm以下が好ましいものである。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。また実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
(1)ペレット中の島成分(難溶解性)ポリマーの平均分散径
ペレット状樹脂を溶剤(易溶解性ポリマーがPLAの場合、NaOH水溶液。易溶解ポリマーがPEの場合、熱トルエン)中で抽出除去し、水洗後(株)キーエンス社製 VE−7800型SEMで島成分ポリマーが500個以上観察できる条件に設定し、ポリマー表面を撮影する。ペレット表面に露出した島成分ポリマーを画像処理ソフト(WINROOF)を用いて円あるいは楕円として500個の直径から平均値を求めるものである。各島成分ポリマーの直径はnm単位で小数点1桁まで測定し、小数点以下を四捨五入する。その分散径から単純な数平均値を求めた。
(2)極細繊維の平均径、繊維束の平均径および繊維径CV%
シート状物を白金蒸着し、(株)日立製作所製 超高分解能電解放射型走査型電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)にて極細繊維あるいは繊維束が150本以上観察できる条件としてシート状物表面を撮影した。また、必要に応じて金属染色を施し、繊維のコントラストをはっきりさせた。シート状物表面の画像を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて同一横断面で無作為に抽出した150本の極細繊維あるいは繊維束の径を測定した。この際、断面が円と仮定して2次元的に撮影された繊維の繊維軸に対して垂直方向の幅(距離)を繊維径とし、同一視野内で繊維の幅が20%以上変動する場合には、同一の繊維に対し、無作為に3ヶ所以上同様の測定し、その平均値を繊維径とした。各繊維の直径はnm単位で小数点1桁まで測定し、小数点以下を四捨五入する。その繊維径から単純な数平均値を求め極細繊維あるいは繊維束の平均径とし、繊維径CV%については下記式に従い求めた。
CV%=(標準偏差/平均値)×100
(3)繊維束の平均立毛長さ
シート状物表面を立毛の順目方向にガラス棒(5mmφ)でなぞり、立毛する極細繊維束を配向させた後、白金蒸着し、シート状物表面を(株)キーエンス社製 VE−7800型走査型電子顕微鏡(SEM)で繊維束が150本以上観察できるような条件で撮影した。この際、必要に応じて金属染色を施し、繊維のコントラストをはっきりさせた。同一横断面で無作為に抽出した同一画像内で繊維束の片方の端末が確認でき、かつシート状物に入り込んでいない繊維束150本の立毛の長さを画像処理ソフト(WINROOF)を用いてその長さ測定した。この際、必要に応じて金属染色を施し、繊維のコントラストをはっきりさせた。
【0026】
これらの値に関しては、μm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。本発明の繊維束の平均立毛長さとはそれぞれの立毛長さを測定し、その単純な数平均値を求めるものである。
(4)シート状物の研磨特性(基板表面粗さ)
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、シュミットメジャーメントシステム社(Schmitt Measurement Systems,Inc)製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、研磨加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど研磨特性が高いことを示す。
(5)スクラッチ点数
研磨加工後の基板5枚の両面、すなわち計10表面の全領域を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
【0027】
実施例1
ナイロン6(N6)40重量%とポリ乳酸(PLA)を60重量%を独立にフィードし、温度220℃に設定した2軸押出混練機にて、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/hr.として島成分ポリマーの平均分散径が590nmのアロイポリマーを得た。アロイポリマーをスパンボンド法により、紡糸温度240℃で口金孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度3500m/minで紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで、温度80℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付150g/mとし、油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、4枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを2000本/cm施すことで、目付600g/mの不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタン(平均分子量200,000)のDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。その後、80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることで、海成分であるPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。
この表面をJIS#400番のサンドペーパーにて表裏各3回研削し繊維束からなる立毛を形成させ、液浴比1/27、ノズル径80mmφの小型液流染色機にてノズル圧0.25kg/cm(布速:約40m/分)にて30分間液中で揉み処理を加え、乾燥することによりシート状物を得た。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均径は110nm、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは787nm、23%、30μmであった。
該シート状物を40mm幅のテープとし、以下の条件で研磨加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工し平均表面粗さ0.2nmに制御したディスクを用い、シート状物表面に1次粒子径1〜10nmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分、荷重2.0kgfの条件で20秒間研磨を実施した。
研磨加工後のディスクは、表面粗さが0.17nm、スクラッチ点数は9であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表1に示す。
【0028】
実施例2
N6を20重量%、PLAを80重量%とし、2軸混練機で島成分ポリマーの平均分散径が488nmのアロイポリマーを得たこと以外は全て実施例1に従って実施した。得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は82nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは506nm、20%、30μmであった。
該シート状物を利用し、実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は6であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表1に示す。
【0029】
実施例3
N6を30重量%、PLAを70重量%とし、2軸混練機で島成分ポリマーの平均分散径が624nmのアロイポリマーを得たこと以外は全て実施例1に従って実施した。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は156nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは521nm、20%、30μmであった。
該シート状物を利用し、実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.16nm、スクラッチ点数は10であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表1に示す。
【0030】
実施例4
N6を50重量%、PLAを50重量%とし、2軸混練機で島成分ポリマーの平均分散径が767nmのアロイポリマーを得たこと以外は全て実施例1に従って実施した。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は213nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは952nm、28%、30μmであった。
該シート状物を利用し、実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.23nm、スクラッチ点数は13であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表1に示す。
【0031】
実施例5
繊維束からなる立毛を形成させるのに際し、JIS#500番のサンドペーパーにて表裏各3回研削し、繊維束からなる立毛を形成させたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は110nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは789nm、24%、20μmであった。
該シート状物を利用し、実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.19nm、スクラッチ点数は7であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表1に示す。
【0032】
実施例6
繊維束からなる立毛を形成させるのに際し、JIS#300番のサンドペーパーにて表裏各2回研削し、繊維束からなる立毛を形成させたこと以外は全て実施例1に従って実施した。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は103nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは808nm、28%、100μmであった。
該シート状物を利用し、実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.28nm、スクラッチ点数は38であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例7
イソフタル酸を10mol%共重合されたPBTポリマー(PBT−I)を30重量%とポリ乳酸(PLA)を70重量%とを単独にフィードし、温度230℃に設定した2軸押出混練機にて、スクリュー回転数400rpm、吐出量15kg/hr.として島成分ポリマーの平均分散径が968nmのアロイポリマーを得た。このアロイポリマーを用いてアロイ繊維からなる不織布を作製した以外は全て実施例1に従って実施した。
得られたシート状物のPBT−I極細繊維の平均繊維径は93nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは631nm、19%、30μmであった。
該シート状物を利用し、荷重1.5kgf、研磨時間15秒間としたこと以外は全て実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.15nm、スクラッチ点数は8であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表2に示す。
【0034】
実施例8
イソフタル酸を10mol%共重合されたPBTポリマー(PBT−I)を40重量%とポリ乳酸(PLA)を60重量%、スクリュー回転数を300rpmとし、島成分ポリマーの平均分散径が1916nmのアロイポリマーを得たこと以外は全て実施例7に従って実施した。アロイポリマー得られたシート状物のPBT−I極細繊維の平均繊維径は224nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは956nm、29%、30μmであった。
該シート状物を利用し、実施例7記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.28nm、スクラッチ点数は18であり、研磨特性が良好であった。
該シート状物を利用し、荷重を1.5kgfで研磨時間を15秒間としたこと以外は全て実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.21nm、スクラッチ点数は14であり、研磨特性が良好であった。このシート状物の物性および加工評価結果を表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
比較例1
アロイ繊維から極細繊維を発生させる前にJIS#200番のサンドペーパーにて表裏各3回研削し、アロイ繊維からなる立毛をシート状物表面に形成させた後、極細繊維発生工程を液体染色機内で行うことで極細繊維発生工程と揉み処理を同時におこなったこと以外は全て実施例1記載の方法で実施した。
得られたシート状物の表面を観察したところ、N6極細繊維はそのほとんどが単繊維でバラバラに分散した状態であり、極細繊維の平均径は92nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは111nm、26%、103μmであった。
研磨特性については、ディスクの表面粗さが0.16nm、スクラッチ点数は28であり、表面粗さは満足するものの、研磨クズに起因するスクラッチ発生が見られ、スクラッチ発生抑制の点で本発明のシート状物と比較して低下する結果となった。このシート状物の物性および加工評価結果を表3に示す。
【0038】
比較例2
JIS#400番のサンドペーパーにて表裏各3回研削し、アロイ繊維からなる立毛をシート状物表面に形成させた以外は全て比較例1記載の方法で実施した。
得られたシート状物の表面を観察したところ、N6極細繊維はそのほとんどが単繊維でバラバラに分散した状態であり、極細繊維の平均径は92nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは111nm、26%、30μmであった。
研磨特性については、ディスクの表面粗さが0.14nm、スクラッチ点数は23であり、比較例1と比較してスクラッチ発生は抑制されているものの、依然として研磨クズに起因するスクラッチ発生が見られ、スクラッチ発生抑制の点で本発明のシート状物と比較して低下する結果となった。このシート状物の物性および加工評価結果を表3に示す。
【0039】
比較例3
最後に物理的刺激を与えるための揉み処理を行わないこと以外は全て実施例1に従い実施した。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均径は94nmであったが、繊維束は分割されておらず、かつ部分的に繊維束同士が絡み合ったものが見られた。繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは9230nm、35%、30μmと繊維束径が非常に大きいとともに見掛けの径バラツキが大きいものであった。
研磨特性については、ディスクの表面粗さが0.22nm、スクラッチ点数は95であり、凝集砥粒および研磨クズに起因するスクラッチ発生が見られた。また、テクスチャー加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きいものであった。このシート状物の物性および加工評価結果を表3に示す。
【0040】
比較例4
N6を50重量%、PLAを50重量%を単独でフィードし、スクリュー回転数を200rpmとして2軸混練機で島成分ポリマーの平均分散径が1178nmのアロイポリマーを得たこと以外は全て比較例2に従って実施した。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は323nmであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは346nm、43%、30μmであった。
該シート状物を利用し、実施例1記載の研磨方法でディスクの研磨加工を施したところ、ディスクの表面粗さが0.33nm、スクラッチ点数は73であり、研磨特性で本発明のシート状物から大きく低下するものであった。このシート状物の物性および加工評価結果を表3に示す。
【0041】
比較例5
N6を20重量%とポリエチレン(PE)を80重量%とをそれぞれのポリマーを独立にフィードし、2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度285℃で口金孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度2000m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し、圧着率16%のエンボスロールで温度90℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、単繊維繊度2.0dtex、目付200g/mとし、油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、3枚積層し、バーブ数1、バーブ深さ0.06mmのニードルを用いて、ニードルパンチを2000本/cm施すことで目付600g/mのアロイ繊維からなる不織布を得た。
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、アロイ繊維重量に対して固形分で20重量%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次に、濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタン(平均分子量200,000)のDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。表面を実施例1と同様にサンドペーパーにて研削しアロイアロイ繊維からなる立毛を形成させた。最後に85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた。その後、実施例1と同様に立毛処理を施し、シート状物を得た。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均径は427nmと大きく、バラツキの大きいものであったが大部分で単繊維として表面にバラバラに分散していた。繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは568、49%、32μmであった。
研磨特性については、ディスクの表面粗さが0.38nm、スクラッチ点数は171であり、凝集砥粒および研磨クズに起因するスクラッチ発生が見られるとともに研磨面のうねりが大きいものであった。このシート状物の物性および加工評価結果を表3に示す。
【0042】
比較例6
N6を50重量%、ポリエチレン(PE)を49.1重量%とポリエチレングリコールを0.9重量%とを混合し、2軸押出混練機にて260℃にて混練して紡糸口金温度290℃、紡糸速度2000m/分で紡糸し、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸に油剤(SM7060:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を繊維重量に対し2重量%付与し、51mmにカットし、カード、クロスラッパー、ニードルロッカーを通し、圧着率16%のエンボスロールで温度140℃、線圧20kg/cmの条件で熱圧着し、目付670g/mの不織布を得た。
この不織布を濃度約12%のポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタン(平均分子量200,000)のDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で35重量%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させた。最後に、85℃のトルエンにて1時間処理し、乾燥させることで、海成分であるPEを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させた後、表面をJIS#200番のサンドペーパーを用いて立毛処理したこと以外は実施例1と同様にサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
得られたシート状物のN6極細繊維の平均繊維径は578nmと大きいとともに繊維束の内層と外層で繊維径が大きく異なるものであった。また、シート状物表面に立毛した極細繊維束は互いに絡み合ったものであり、繊維束の平均径、繊維径CV%および平均立毛長さは9784nm、56%、375μmであった。
研磨特性については、ディスクの表面粗さが0.35nm、スクラッチ点数は160であり、研磨特性が本発明のシート状物と比較して低下する結果となった。また、研磨加工面全体を観察すると、表面のうねりが大きく、テクスチャー痕の均一性に欠けるものであった。このシート状物の物性および加工評価結果を表3に示す。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーからなる平均径300nm以下の極細繊維が収束してなる繊維束が立毛するシート状物であって、繊維束の平均径が300〜1000nm、繊維束の繊維径CV%が30%以下であることを特徴とするシート状物。
【請求項2】
繊維束が平均立毛長さ40μm以下でシート表面に立毛していることを特徴とする請求項1記載のシート状物。
【請求項3】
シート状物が研磨布であることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
【請求項4】
シート状物がクリーニング布であることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物。
【請求項5】
難溶解性ポリマーの平均分散径が2000nm以下であるアロイポリマーを紡糸して得たアロイ繊維から不織布を作製し、該不織布に高分子弾性体を付与する工程に引き続いて、該アロイ繊維から海である易溶解性ポリマーを溶解除去した後、立毛処理を施して、次いで物理的刺激を加えることを特徴とするシート状物の製造方法。

【公開番号】特開2008−208502(P2008−208502A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48994(P2007−48994)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】