説明

シート状物への気体吹付方法及び装置

【課題】シート状物の塗布後の乾燥及びシート状物の洗浄等において、シート状物に適切に空気を吹付けることにより確実に一枚一枚捌かれることで、主に乾燥工程及び洗浄工程の歩留まりを改善する。
【解決手段】厚み方向に互いに接触した状態で並置された複数のシート状物に、端部において前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付ける吹付手段を有する。吹付領域は並置方向と直交方向に複数設けると好ましい。吹付領域を並置方向におよび/または直交方向に往復移動させても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、紙、ガラス、液晶及びプラズマディスプレイ関連部品等シート状物の乾燥及び洗浄等に用いることができる、シート状物への気体吹付方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム、紙、並びに液晶及びプラズマディスプレイ等いわゆるフラットディスプレイ関連部品等のシート状物に溶剤等を塗布した後、シート状物に残留する溶剤を蒸発させて、シート状物を乾燥させている。前記塗布後の連続シートの残留溶媒除去のために、従来、様々なシート状物の乾燥方法及び乾燥装置が用いられてきている。
【0003】
シート状物に溶剤を塗布した後でシート状物に残留する溶剤を除去するシート状物の乾燥方法として、図24に示すような、いわゆるロールトゥロール(Roll−to−Roll)乾燥装置200を使用する方法が挙げられる。ロールトゥロール乾燥装置200においては、連続したシート状物201を、多数のロール202を用いて、オーブンなどの加熱装置203を通じて搬送すると同時に加熱する。これにより、オーブンなどの加熱装置203内で多数のロール202に搬送される間に、シート状物201に残留する溶剤を蒸発させて、シート状物201を乾燥させることができる。そして、乾燥したシート状物201は、再度、連続して巻き取られる。
【0004】
この装置は、被処理物の乾燥領域が減率乾燥域である為に、長時間の乾燥、加熱保持が必要となる。この為、処理量を大きくするために連続シートの搬送速度を大きくすると、ロールトゥロール乾燥装置内の連続シートのパス長が長くなり、乾燥装置自体も長大なものになってしまう難点がある。例えば、連続シートの搬送速度が3m/min、処理時間が120分の場合、乾燥装置内の連続シートのパス長は360m以上と極めて長大なものとなり、設置スペースが大きい、設備コストが高い等の問題があった。また、装置が大型のため、要求処理量に対応するために更なる処理能力アップのための設備改造には大きなコスト、作業環境スペースが必要であった。このため、工程リードタイムが長く、在庫削減、短リードタイムのいわゆるオンデマンド生産とは相反する設備、工程であった。
【0005】
また図25に示すように、ロール状巻取り101のまま恒温室、オーブン等に入れ所望の残留溶媒まで乾燥させるものである。この場合、ロール状巻取りであるので、巻き取りの芯部が所定の温度に加温されるまでに時間がかかり、かつシートがほぼ密着状態であるため、シート表面の気流の流れは小さいため残留溶媒が抜けるまでに長時間かけて処理を行わねばならない。
【0006】
よって、最終的に乾燥したシート状物を得る場合には、上記のような連続したシート状物を乾燥させる代わりに、連続シート状物を裁断し所望の形状及び大きさの複数の枚葉シート状に作製した後、多数の棚段を持つ乾燥スタッカーの棚段に1枚ずつ枚葉状シートを置き、これを恒温室、オーブン等に入れて乾燥させる方法がある。例えば、図26に示すように、多数の棚を有するシート状物の乾燥用のスタッカー302を用意し、このようなスタッカー302の棚の各々に一枚のシート状物301を配置し、シート状物301を棚に配置したスタッカー302を恒温室及びオーブン等の加熱装置303に入れて、複数のシート状物301を乾燥させる。この方法では、シート間の隙間が最低10mmから25mm程度と大きいため、多数枚の枚葉状シートの残留溶媒除去処理の場合、大きな恒温室が必要になり、そのための設置スペース、設備コストも大きなものになるとともに、棚段への枚葉状シートの出し入れの作業工数は莫大なものとなっている。
【0007】
この他、複数のシート状物の乾燥方法に関する従来技術として、図27に示すような枚葉印刷用インキ裏移り防止装置が開示されている(特許文献1参照)。この枚葉印刷用インキ裏移り防止装置においては、複数のシート状物として複数の積載されたインキが付着した紙(刷本)を乾燥させる方法を用いており、具体的には、枚葉印刷機の排紙台上に積まれる刷本に対してその横方向からエアーを吹付けるエアーノズルを備えている。エアーノズルから刷本に吹付けられるエアーによって紙に印刷されたインキを乾燥させており、また、これらのエアーノズルは、固定式及び移動式のいずれでもよい。
【0008】
しかしながら、上記の枚葉印刷用インキ裏移り防止装置においては、複数のシート状物を積載させて乾燥させている。ここで、乾燥させるべきシート状物の枚数が多数になると、積載された複数のシート状物の下部におけるシート状物は、上部のシート状物の重量による圧力を受けることになる。よって、積載された複数のシート状物の下部におけるシート状物の間隔を、エアーノズルから吹付けられるエアーで広げることは困難になり、積載された複数のシート状物の下部におけるシート状物を効率良く乾燥させることができない。すなわち、上記の枚葉印刷用インキ裏移り防止装置のような装置を使用した場合には、多数のシート状物を均一に乾燥させることが困難である。
【0009】
また、複数のシート状物の洗浄方法に関する従来技術として、図28に示すような塵埃の除去方法が開示されている(特許文献2参照)。この塵埃の除去方法においては、複数のシート状物としての複数枚の枚葉状プリプレグに付着した塵埃を除去し、複数の枚葉状プリプレグの表面を洗浄する。具体的には、複数枚の枚葉状プリプレグを重ね合わせてプリプレグ束を形成し、そのプリプレグ束を挟持して回転し、枚葉状のプリプレグに付着している塵埃を遠心力により周囲に飛散させる。
【0010】
しかしながら、上記の塵埃の除去方法のように、複数のシート状物の束を形成して回転させる方法では、複数のシート状物の束におけるこれらシート状物の束を挟持する部分では、シート状物を挟持することによる圧力を受けて、複数のシート状物の間隔を広げることができない。このため、複数のシート状物の束を挟持する部分では、塵又は埃も複数のシート状物の間に挟持されたままであり、複数のシート状物の表面に残留する塵又は埃を、複数のシート状物の表面全体にわたって、除去することは困難である。
【0011】
【特許文献1】特開平6−143541号公報(請求項1、第0011段落及び第0012段落、図2等)
【特許文献2】特開平10−291213号公報(請求項1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、シート状物の塗布後の乾燥及びシート状物の洗浄等に用いられる気体吹付において、気流によりシート状物の一枚一枚にスキマを設けることで乾燥及び洗浄作用を発現し、被処理物のハンドリング工数が小さく、また設置スペース、設備コストともに小さく、プラスチックフィルム、紙、液晶及びプラズマディスプレイ関連部品等のシート状物の塗布後の乾燥あるいは洗浄に用いて好適な、シート状物への気体吹付方法および装置を提供することを目的とする。なお、本発明者により、一部の構成が類似した装置が、既に提案されている(特願2004−142710、特願2005−269679)。
【課題を解決するための手段】
【0013】
課題を解決するために、請求項1記載の発明は、厚み方向に互いに接触した状態で鉛直方向から0度以上90度未満の角度で並置された複数のシート状物に、気体を吹付けて互いに離間させて前記シート状物間の間隙に気体を通過させることにより、前記複数のシート状物を乾燥させるシート状物の気体吹付装置であって、前記複数のシート状物の端部において前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付ける吹付手段を有することを特徴とする。本発明によれば気体FLを吹付けることにより前記複数のシート状物を離間させ前記複数のシート状物11の間隙に気体FLを通過させることが可能となり、前記複数のシート状物を同時に乾燥、洗浄等することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載のシート状物の気体吹付装置において、前記気体が前記複数のシート状物に吹付けられる領域は、気体吹き付けノズルの吹き付け口により規定され、前記気体吹き付け口が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のシート状物の気体吹付装置において、前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に沿って所定の移動範囲内を往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする。ノズル吹き付け往復位置範囲を自在に調節できるので往復位置範囲がシート状物の長さであればシート状物全体の乾燥、洗浄等が可能となる。若しくは往復位置範囲を調節することでシート状物の必要な部分の乾燥、洗浄等が可能となる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のシート状物の気体吹付装置において、前記気体吹き付け口の往復移動のストロークは、前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物の長さを前記気体吹き付け口の数で除した値より大きくすることを特徴とする。シート状物11の長さをカバーできるので均一に乾燥が可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載のシート状物の気体吹付装置において、前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に所定の範囲で往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする。フィルム間の押付け圧力が強くフィルム隙間の形成は極めて難しい部分に隙間を形成することが可能となる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項1または2記載のシート状物の気体吹付装置において、前記複数のシート状物を位置決め規制する規制手段により規定される前記複数のシート状物が並置された方向の間隔を自在に可変できることを特徴とする。シート状物の厚さ変化への対応及び一度に乾燥処理等できるシート状物の枚数の変更が可能となる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のシート状物の気体吹付装置において、前記複数のシート状物が並置された方向の間隔の可変範囲は前記複数のシート状物の厚さにシート状物間の平均隙間を0.2mmから0.6mmを加えた値にシート状物の枚数を乗じた値とすることを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート状物の気体吹付装置において、前記複数のシート状物が並置され位置決め規制されて収容されるカセットは、前記複数のシート状物の前記気体の入り口及び出口を除く4面を持ち、前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向の対向する2面の間隔は前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物の寸法に0.5〜5mmを加えた大きさであることを特徴とする
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項8記載のシート状物の気体吹付装置において、前記複数のシート状物の並置方向に対し直角方向に複数設けられている前記気体吹き付け口の間を塞ぐ第1の圧力保持板を持ち、複数設けられている前記気体吹き付け口の両端外側には概ね前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直角方向に往復移動する範囲までを塞ぐ第2の圧力保持板を持ち、前記第1および第2の圧力保持板は前記気体吹き付け口の先端と概ね同一面を構成しており、
前記複数のシート状物が並置され位置決め規制されるカセットが離れて複数設けられている場合には前記複数のカセットの間を塞ぐ第3の圧力保持板を更に持ち、
前記第3の圧力保持板は前記気体吹き付け口と対向する前記カセットの前端と概ね同一面を構成することを特徴とする。
【0022】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート状物の気体吹付装置において、前記気体吹き付け口の気体出口部に気体整流部材を具備したことを特徴とする。気体整流部材の整流作用により、吐出された風はそれぞれほぼ均一な吐出速度を得ることが可能となる。
【0023】
請求項11記載の発明のシート状物の気体吹付方法は、厚み方向に互いに接触した状態で鉛直方向から0度以上90度未満の角度で並置された複数のシート状物に、気体を吹付けて互いに離間させて前記シート状物間の間隙に気体を通過させることにより、前記複数のシート状物を乾燥させるシート状物の気体吹付方法であって、前記複数のシート状物の端部において前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付けることを特徴とする。
【0024】
請求項12記載の発明は、請求項11記載のシート状物の気体吹付方法において、前記気体が前記複数のシート状物に吹付けられる領域は、気体吹き付けノズルの吹き付け口により規定され、前記気体吹き付け口が前記複数のシート状物の並置方向に対し直角方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0025】
請求項13記載の発明は、請求項11または12記載のシート状物の気体吹付方法において、前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直角方向に沿って所定の移動範囲内を往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする。
【0026】
請求項14記載の発明は、請求項13記載のシート状物の気体吹付方法において、前記気体吹き付け口の往復移動のストロークは、前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物の長さを前記気体吹き付け口の数で除した値より大きくすることを特徴とする。
【0027】
請求項15記載の発明は、請求項11または12に記載のシート状物の気体吹付方法において、前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に所定の範囲で往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする。
【0028】
請求項16記載の発明は、請求項11または12に記載のシート状物の気体吹付方法において、前記複数のシート状物を位置決め規制する規制手段により規定される前記複数のシート状物が並置された方向の間隔を自在に可変できることを特徴とする。
【0029】
請求項17記載の発明は、請求項16記載のシート状物の気体吹付方法において、前記複数のシート状物が並置された方向の間隔の可変範囲は前記複数のシート状物の厚さにシート状物間の平均隙間を0.2mmから0.6mmを加えた値にシート状物の枚数を乗じた値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数のシート状物に対して容易に且つ効率良く気体を吹付けることが可能な、複数のシート状物への気体吹付方法、並びに設置スペース及び設備コストが小さい複数のシート状物を乾燥させるための複数のシート状物の気体吹付装置を提供することができる。本発明は、主に複数のシート状物の乾燥・洗浄に用いて好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を挙げ構成・作用について図面に基づいて具体的に説明する。以下の説明では、本発明に係るシート状物の気体吹付装置の実施の形態として乾燥装置を例として説明する。
【0032】
なお、本明細書の説明におけるシート状物の表面等の乾燥とは、シート状物に付着した液体を除去することを意味する。シート状物に付着した液体の種類は、蒸発させることが可能な液体であれば、特には限定されず、溶剤などの水性及び/又は油性の液体である。
【0033】
また、以下に詳述する乾燥装置(気体吹付装置)は、そのままシート状物の洗浄装置(固体異物の異物除去装置)として使用することもできるものである。ここで言うシート状物の表面等の洗浄とは、シート状物に付着した固体を除去することを意味する。シート状物に付着した個体の種類は、取り除くことが可能な固体であれば、特に限定されず、埃及び塵などの固体である。更には、この装置は、シート状物の表面等に付着した異物が、液体である場合の、複数のシート状物の異物除去装置とすることができる。
【0034】
また、この乾燥装置はシート状物の表面等に付着した異物が、液体である場合の、複数のシート状物の表面等を洗浄する異物除去装置とすることができる。シート状物の表面等に付着した異物が、液体及び固体の両方(混合物)である場合には、シート状物の表面等を乾燥させてシート状物の表面等に付着した液体を除去した後、シート状物の表面等を洗浄してシート状物の表面等に残留する固体を除去すればよい。
【0035】
まず、本発明の基本原理図を図1に、図2に気体吹付装置例として乾燥装置の基本構造概略図(斜視図)を模式的に示す。図2に示す乾燥装置は、少なくとも、互いに接触して並置された複数のシート状物11に対して矢印で示すように気体を吹付けることにより、複数のシート状物11を離間させると共に複数のシート状物11の間隙に気体を通過させることができる吹付手段としての乾燥手段21を含み構成される。前記乾燥手段21の気体吹き付け口23は、図に示すように、複数のシート状物11の並置方向中央を中心に左右均等振り分け位置に配されている。
【0036】
この図2の構造によって、図1に斜視図で模式的に示されているように、前記複数のシート状物11の端部に気体FLを吹付けることにより前記複数のシート状物11を離間させることが可能となり、このようにしてできた前記複数のシート状物11の間隙に気体FLを通過させることでシート状物の乾燥や洗浄等を好適に行うことができる。
【0037】
この時、複数のシート状物11の間隙には気体FLの通過により負圧が発生し、複数のシート状物11の間で負圧が発生するためシート状物11間で圧力と間隙のバランスが調整されることでそれぞれのフィルム間隙が保持されかつシート状物の材質、厚さ及び平面性若しくはカールによるがその間隔はほぼ同一となる。負圧の発生はいわゆるベルヌーイの原理で知られ、風速が早くなるほどシート状物11間の減圧は進み隙間は小さくなろうとする。このように気体FLを吹付けることにより前記複数のシート状物11を離間させることが可能となり、この前記複数のシート状物11の間隙に気体FLを通過させることでシート状物の乾燥を行う。効率・品質等があまり要求されない場合は、図2の基本構造のように、乾燥手段21が一つの場合でも、前記気体が前記複数のシート状物11に吹付けられる領域は、図3に示すように前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布することでコンパクトな設備構成にて前記複数のシート状物11を同時に乾燥や洗浄が可能となる。
【0038】
本発明によるシート状物の乾燥装置における乾燥手段21は、上記のように、互いに接触して並置された複数のシート状物11に気体を吹付けることにより複数のシート状物を離間させると共に複数のシート状物の間隙に気体を通過させることができるものであれば、特に限定されない。このような乾燥手段としては、例えば、図2に示すように、特定方向に気体としての空気を流出させることができる単一の流出口としての乾燥風ノズル22を備えた乾燥手段21が挙げられる。図2に示す乾燥手段は、乾燥手段の背後に設けられた(単数又は複数の)空気の入り口から空気を吸引し、乾燥風ノズル22から空気を流出させる。図2においては、互いに接触して並置された複数のシート状物11の端部に向かって、乾燥手段21のノズル22から流出する空気を吹付け、複数のシート状物11を離間させると共に複数のシート状物11の間隙に空気を通過させて、複数のシート状物11の表面を乾燥させる。
【0039】
なお、互いに接触して並置された複数のシート状物に吹付けて複数のシート状物を離間させると共に複数のシート状物の間隙を通過する気体の種類は、その気体が使用される温度で化学的及び物理的反応を起こさなければ特に限定されないが、通常は、容易に入手可能な(乾燥した)空気が使用される。
【0040】
また、本発明に係る乾燥装置及び乾燥方法が適用されるシート状物については、それらの間隙に、実質的に所謂ベルヌーイの定理に従った気体の通過を実現することができれば、その形状、大きさ、及び材質は特に限定されない。シート状物は、プラスチック及び紙など様々な材料で形成され、シート状物の例としては、例えば、銀塩のレントゲンフィルムのようなプラスチックフィルム、紙に感熱発色層を設けた感熱紙のような印刷用紙、液晶又はプラズマディスプレイ関連のシート部品などが挙げられる。ただし、複数のシート状物の形状は、実質的に同一の形状であることが好ましい。複数のシート状物の形状が実質的に同一であれば、それらのシート状物の間を通過する気体は、実質的に同一の流れを生じ、ベルヌーイの定理に従った気体の通過を実現することが容易である。また、複数のシート状物の間隙に気体を通過させるために、シート状物は、実質的に平坦な形状(輪郭の形状は問わない)を有すること、特に枚葉のシート状物であることが好ましい。
【0041】
上記の場合の複数のシート状物は、互いに接触して並置される。ここで、本明細書及び特許請求の範囲における“互いに接触して並置された”とは、複数のシート状物の各々について、あるシート状物の少なくとも一方の面が、その面又はそれらの面側に隣接するシート状物の面の少なくとも一部分と接触し、且つ複数のシート状物が、並べて置かれていることを意味する。
【0042】
また、複数のシート状物の各々は、互いに接触して並置されていればよいが、好ましくは、複数のシート状物の各々が、それぞれ独立に鉛直方向から0度以上90度未満の角度で直立又は傾斜するように、配置される。なお、本明細書及び特許請求の範囲におけるシート状物が、鉛直方向から0度以上90度未満の角度で直立又は傾斜するとは、鉛直方向から0度の角度で直立する又は鉛直方向から0度を超えて90度未満の角度で傾斜することを意味する。より詳しくは、鉛直方向から0度の角度で直立するとは、シート状物の表面の法線方向が鉛直方向に対して垂直であることを意味し、鉛直方向から0度を超えて90度未満の角度で傾斜するとは、シート状物の表面の法線方向が鉛直方向と鉛直方向に対して垂直な方向との間にあることを意味する。このように、複数のシート状物に働く重力の作用によって複数のシート状物が互いに密着することを低減して、複数のシート状物の間隙に気体が容易に通過することができるように、複数のシート状物は、好ましくは、いずれも鉛直方向から90度の角度で傾斜しておらず、すなわち、水平に配置されず、直立又は傾斜して配置される。現実的には、複数のシート状物の重量によって複数のシート状物が互いに密着することは好ましくないため、通常は複数のシート状物は、好ましくは、おおよそ鉛直方向から0度の角度で、直立に並置される。
【0043】
〔第1実施形態〕
乾燥風ノズル22の吹き付け口23は、図2の基本構造のように、一つでも機能するが、前記気体FLが前記複数のシート状物11に吹付けられる領域は乾燥風ノズル22の吹き付け口23の大きさにより規定される。このため、シート状物の種類又は要求乾燥性能にもよるが、気体吹付け口23のシート状物の並置方向に直交方向(直角方向、すなわち鉛直方向)の開口幅に対してシート状物の長さ(高さ)が長い場合には、シート状物全体に風が当たらないことで乾燥品質にばらつきがでることがある。実用上はこのような場合に対処するために乾燥風ノズル22の吹き付け口23は、複数とするのが好ましく、その数は必要に応じて決定される。こうした複数の吹き付け口を持つ構成例を第1実施形態として以下に説明する。
【0044】
本発明によるシート状物の乾燥装置(気体吹付装置)の全体斜視図を図4に、概略側面図を図5示す。この第1実施形態の乾燥装置は、図1の原理図、図2に示すように、少なくとも、互いに接触して並置された複数のシート状物11に矢印で示すように気体を吹付けることにより、複数のシート状物11を離間させると共に複数のシート状物11の間隙に気体を通過させることができる乾燥手段21を含み構成されている。また、乾燥装置は、複数のシート状物を直線状に配置するために、複数のシート状物の全て又は一部をまとめて並置させることができる複数のシート状物カセット(枠体)41と、このカセットの外方から気体を吹付ける複数(この実施形態では3つ)の乾燥風ノズル22を含み構成されている。乾燥風ノズル22は、その気体吹き付け口23が、シート状物カセット(フィルムカセット)41の幅方向中央を中心に左右均等振り分け位置に配されている。この種の乾燥装置は断熱チャンバー(断熱室)を有するのが好ましい。図4に示した乾燥装置は、後述するように、乾燥手段21及び複数のシート状物11を内包する断熱室31を有する。
【0045】
実施形態において複数のシート状物は、位置決め規制する規制手段としての枠体(カセット)41により前記複数のシート状物が並置された方向の両端間隔を規定される。シート状物カセット(フィルムカセット)41は、図5・図6に示すように前記複数のシート状物11の前記気体FLの入り口及び出口は開放されていて、後面はシート状物ストッパ43が設けられている。前面にはシート状物ストッパ44が設けられている。入り口及び出口を除く4面のうち3面、すなわち複数のシート状物の下側端部を支持する部分と、並置された複数のシート状物のうち最も端側のシート状物を支持する部分(前記複数のシート状物の並置方向に対し直角方向の対向する2面:カセット側板42)とは板状部材となっている。シート状物11が並置され位置決め規制されるシート状物カセット41の上面は開放されている。
【0046】
図6に示すように、シート状物11は、規制手段としてのカセット側板42により規定される間隙(寸法W)に収容される。互いに接触して並置された複数のシート状物11の姿勢は鉛直方向から0度以上90度未満の角度で直立又は傾斜することが可能で、シート状物の種類にもよるがその姿勢は概ね鉛直が望ましい。カセット側板42の間隔は前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物11の寸法に0.5〜5mmを加えた大きさとなるようにする。なお、シート状物カセット41のフィルム入り口はフィルムがカセット部材とこすれによるキズ発生防止のため面取り又はR(曲面取り)加工処理を施すことが望ましい。
【0047】
気体吹き付け口23は本実施形態では、図4〜図6に示すように複数のシート状物11の長さ(高さH0)に合わせて、複数のシート状物11の並置方向に対し直角方向に複数設けられている。個々の気体吹き付け口23は、図2の場合と同様のものである。この乾燥装置においても、図1に斜視図で模式的に示すように前記複数のシート状物11の端部に気体FLを吹付けることにより前記複数のシート状物11を離間させることが可能となり、このようにしてできた前記複数のシート状物11の間隙に気体FLを通過させることでシート状物の乾燥や洗浄を行う。気体吹き付け口23を複数設けているため、前記複数のシート状物11の長さ(並置時高さ)をカバーできる。この結果、均一シート状物の確実な乾燥が可能となる。前記気体吹き付け口23の数は3つに限らず、それぞれの要求される乾燥性能によって決定すれば良い。
【0048】
なお、本実施形態では、単数の気体吹き付け口23を持つ乾燥風ノズル22を複数集合したものを用いて複数の気体吹き付け口23を実現しているが、本発明における複数の気体吹き付け口23は、単一の乾燥風ノズル22に気体吹き付け口23を複数一体構造としたもの(図13等に示す)として実現することもでき、いずれでもよい。
【0049】
この種の乾燥装置は、断熱チャンバー(断熱室)を有するのが好ましく、図4に示した乾燥装置は、乾燥手段21及び複数のシート状物11を内包する断熱室31を有している。断熱室31は、所定の時間の間、乾燥手段から流出する気体の温度が冷却され、所定の温度よりも低い温度の気体が複数のシート状物の間隙を通過することを低減し、乾燥手段から流出する気体の温度及び複数のシート状物の間隙を通過する気体の温度(すなわち、複数のシート状物の周囲温度)をおおむね保持することを可能にする。これにより、おおむね一定の温度の気体を、複数のシート状物に吹付け、複数のシート状物の間隙に通過させることができる。なお、複数のシート状物の間隙を通過する気体の温度が高いほど、複数のシート状物の表面等を乾燥させる時間を短縮することができ、複数のシート状物の表面等における乾燥の効率を高めることができる。ただし、複数のシート状物の間隙を通過する気体の温度が高すぎる場合には、シート状物の劣化又は変質が生ずる場合もある。このように、シート状物の乾燥装置が、断熱室を有することで、複数のシート状物の間隙を通過する気体の温度の下降による複数のシート状物の表面等を乾燥させる効率の低下を低減することができる。
【0050】
この実施形態では、乾燥手段21の気体吹き付け口23から流出する空気を、鉛直方向及び複数のシート状物が並置された方向と直交する方向から、複数のシート状物11に吹付けると共に複数のシート状物11の間隙を通過させる。このように、複数のシート状物を支持する支持体などのような乾燥装置の部材に阻害されることなく、気体を複数のシート状物に吹付けると共に複数のシート状物の間隙に通過させてシート状物の表面等をより効率よく乾燥させることができる。
【0051】
〔第2実施形態〕
なお、図6に示す第1実施形態のようにシート状物11が並置され位置決め規制されるシート状物カセット41の上面が開放されている場合には、前記気体吹き付け口23より吹き出した気体FLはシート状物11を通過する過程で最も抵抗の少ない上面側に逃げてしまい、この結果、前記気体FLを効率よくシート状物の乾燥に用いることができなくなる。この場合には、図7の概略正面図に示す様に、カセット上蓋46を設ける(第2実施形態)ことで前記気体FLはシート状物11を通過する過程で上面側に逃げることなく効率よくシート状物11の乾燥が可能となる。
【0052】
この場合、カセット上蓋46とシート状物11との隙間Gは、できるだけ小さいことが望ましいが、現実的にはシート状物11のシート状物カセット41への挿入時の隙間を考慮すると下限寸法は0.5mm程度となる。隙間Gの上限寸法はシート状物11の隙間形成状態にもよるが5mm程度が望ましい。カセット上蓋46のフィルム入り口はフィルムがカセット部材とこすれによるキズ発生防止のため面取り又はR(曲面取り)加工処理を施すことが望ましい。
【0053】
〔第3実施形態〕
以上の実施形態では、カセットの幅は一定で規制幅は定まったものとしているが、気体吹付装置では、複数のシート状物を位置決め規制する並置方向の間隔を自在に可変できるように構成するとより好適である。このような構成の第3の実施形態の乾燥装置について説明する。本実施形態は、概略構成は、図1に示す第1実施形態と同様であるが、複数のシート状物を位置決め規制する規制手段により規定される前記複数のシート状物が並置された方向の間隔を自在に可変できる。すなわち、図6に示される、前記複数のシート状物を並置し、位置決め規制するためのシート状物カセット側板42の、前記複数のシート状物が並置された方向の間隔W(カセット側板42の間の距離)を自在に可変させることが可能になっている。
【0054】
間隔Wを変えるために側板42を移動させるが、この場合の可動とする側板42は、シート状物を並置するシート状物カセット41の2枚の側板の内、両方若しくは片方のいずれでもよい。側板42の移動時ガイドには、ガイドレール等適宜の機構を用い、位置固定方法は、長穴とボルトの組み合わせ又はスライドネジ機構等のいずれでもよい。
【0055】
こうして側板42の間隔Wを可変とすることで、それぞれのシート状物の極僅かな剛性の違い、シート端面の切断面形状の違い及び気体の流れのばらつきがあっても、前記複数のシート状物が並置された方向の間隔の最適化ができるため前記複数のシート状物を規則正しく一枚一枚捌くことが可能となる。前述の通りカール、座屈があった場合でも、この構成によれば規制幅を調整して適切に対応ができる。なお、並置枚数は一定枚数を想定しているが、並置枚数自体を変更しても間隔Wを調整することで対応できる。
【0056】
このように規制幅可変な構成の場合には、図6に示すように前記複数のシート状物を並置し、位置決め規制する前記複数のシート状物が並置された方向の間隔Wの可変範囲を、処理フィルム厚さにシート状物間の平均隙間を0.2mmから0.6mmを加えた値にシート状物の枚数を乗じた値とすると好適で、適切なフィルム間隙を形成することが可能となる。なお、前記複数のシート状物の厚さはそれぞれ公称同一厚さであることが均一隙間を形成する上での要件となる。
【0057】
具体的には、厚さ約200μm(0.2mm)の樹脂塗布済みPETフィルム50枚の場合では、平均隙間0.4mmを加え、(0.2mm+0.4mm)×50枚=30mmとなり、シート状物カセット内幅を30mmとすることで良好な隙間形成ができている。0.3mmを加えた間隔W=25mm、また0.6mmを加えた間隔W=40mmでも隙間が形成できている。シート状物の厚さはその大きさにもよるが、50μmから500μm程度のものであれば概ね均一な隙間を形成できる。
【0058】
上述のように、本実施形態によれば、シート状物の材質、厚さ等の違いにより前記の通りカール、座屈などが大きく変化した場合であってもシート状物が並置された方向の間隔を自在に可変できることでフィルム間隙を形成することが可能となる。更にはシート状物の厚さ変化への対応及び一度に乾燥処理できるシート状物の枚数の変更が可能となる。
【0059】
〔第4実施形態〕
ところで、気体吹き付け口23は、本来図6に示すように、フィルムカセット41の幅方向中央を中心に左右均等振り分け位置に配すればよいが、実際にはシート状物が厚さ数百μm以下の薄いフィルム等の場合、図8に示すように自重若しくはフィルムに塗布された塗膜表裏の残留応力の影響でカール若しくは座屈をすることが多い。この場合、前記気体吹き付け口23を図6に示すようなフィルムカセット41の幅方向中央を中心に左右均等振り分け位置に固定配置されていると、フィルムのカール又は座屈の影響で前記気体吹き付け口23から吹付けられた気体FLでフィルムカセット41にセットされたフィルムに間隙を形成することができないことがある。
【0060】
本発明者らの検討では、厚さ175μmもPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの表裏に樹脂を主成分とする塗布膜を形成したものの場合、1次乾燥後の2次乾燥としての本乾燥時には少なからずフィルムのカールがあり、これが座屈を助長していることが分かっている。図8に示すように特に右側下部ではフィルム間の押付け圧力が強くフィルム隙間の形成は極めて難しい。このことに対応するために、気体吹付けノズルが左右オシレート(往復移動)するように構成しても良く、このような構成の第4の実施形態について説明する。
【0061】
第4実施形態の乾燥装置は、図4に示したものと基本的構成は同様であるが、図4中に矢印で示すように(乾燥風シート状物の並置方向ノズル往復:矢印D4)、前記気体吹き付け口23の位置が前記複数のシート状物の並置方向に所定の範囲で往復移動し、その位置を自在に調節できるようになっている。
【0062】
気体吹き付け口23がシート状物11が並置された方向に沿って移動する往復運動の範囲(距離)は、図9に示すように、ノズルカセット内側位置気体吹き付け口23の移動位置左右端が、中央位置時に対し、それぞれL1及びR1の距離となるように調節される。
【0063】
このような構成にすることで、以下の問題を解決することが可能となる。この構成では、気体吹き付け口23を図10に示すように図右側に移動することでフィルム11のカール又は座屈の影響によりフィルム間隙を形成することができない場合であっても、図8に示すように特に左側下部のフィルム間の押付け圧力が強くフィルム隙間の形成は極めて難しい部分に隙間を形成することが可能となる。
【0064】
ただし、気体吹き付け口23を図10において、右側に移動し過ぎると、フィルムはフィルムカセット41の左側に寄せられ、右側に数mm単位の大きな隙間ができる。この時、最も右側にある数枚のフィルムが強くばたつき、フィルムを傷つけることがあるので、その移動位置及び前記気体吹き付け口23からの乾燥風FLの速度を適切にするように注意が必要である。
【0065】
なお、ノズル口往復動位置調節は、リミットスイッチにより又はボールネジとステッピングモータ若しくはサーボモータとの組み合わせなどいずれでも構わない。図11に、ノズル口往復動位置調節機構の一例を、概略図で示す。図11は、図4を上方からみた平面図相当の図である。ノズル22はノズル固定板32で連結され、図示しないスベリ軸受けで支持されていて図のノズル並置方向に往復スベリ移動が可能となっている。ノズル固定板32はボールネジ33の回転とボールネジナット34の送り機構によりノズル並置方向に往復スベリ移動し、ボールネジ33の回転数及び回転角度位置に比例してその位置が変化する。移動方向(向き)は、ボールネジ33の回転方向により決まる。図11では、ボールネジ軸受け35で支持されたボールネジ33には軸継ぎ手36を介してステッピングモータ37が回転を与える構造となっている。ボールネジ33に替えて、従来の台形ネジ等を用いて構成しても構わない。
【0066】
〔第5実施形態〕
第1実施形態の乾燥装置でも図4に示すように気体吹付け口23の間隔が相対的に極小さいと風はシート状物11全体に均一に当たらず乾燥品質にばらつきがでることがある。この点に対処するためには、気体吹き付け口23の位置が、図4および図12の乾燥風シート状物の並置方向に対し直交方向ノズル往復(矢印D2)に示すように前記複数のシート状物11の並置方向に対し直交方向にノズル長さL、乾燥風ノズルの気体吹付け口のスリット間隔SG、気体吹き付け口間隔H1の一群の気体吹き付け口を所定の範囲で往復移動:D2し、そのノズル吹き付け往復位置範囲を自在に調節できるようにすれば良い。これにより、往復位置範囲がシート状物の長さをカバーすればシート状物全体の乾燥が可能となる。若しくは、往復位置範囲を調節することでシート状物の必要な部分を集中的に乾燥させることが可能となる。
【0067】
図12に示すように前記気体吹き付け口23の往復移動の範囲D2は、前記気体吹き付け口23が対向する面の前記複数のシート状物の長さH0を前記気体吹き付け口23の数で除した値より大きくすることで前記複数のシート状物11の長さをカバーできるので均一に乾燥が可能となる。
【0068】
具体的には複数のシート状物の長さH0を300mmとした場合、気体吹き付け口23の数が3であるので、300mmを3で除して、気体吹き付け口23同士の間隔H1を100mmとし、気体吹き付け口23の往復移動の範囲D2を100mm以上とすると気体吹き付け口23の往復移動により前記複数のシート状物11の長さをカバーできる。この時、下端の気体吹き付け口23位置は必要に応じて自在に設定できるが、概ねシート状物下端(カセット下面)位置と一致させることで、概ねシート状物の長さH0の範囲全体に気体吹き付け口23位置が移動することになるのでシート状物全域に渡り乾燥風を吹付けることが可能となる。
【0069】
〔第6実施形態〕
更に第6実施形態の乾燥装置を示す。図4に示すような乾燥装置で実際に運転すると、気体吹き付け口23から吐出された乾燥風FLは、共に互いに接触して並置された複数のシート状物11に衝突し、その乾燥風FLの一部は、前述のように複数のシート状物11を離間させると共に複数のシート状物11の間隙を通過しシート状物11を乾燥させるが、一部の乾燥風FLは、シート状物11により反射し、あるいは、気体吹き付け口23と複数のシート状物11の間に発生する乾燥風FLの複数のシート状物の間隙抵抗圧によりシート状物11の間隙を通過しないで、気体吹き付け口23の上方、下方、右方及び左方に逃げてゆく。この結果、図示しない気体送風ブロワにより送られて気体吹き付け口23から吐出された乾燥風FLはその一部しか乾燥動作に有効に働かず、残る一部の乾燥風は全く乾燥に寄与することがなく、エネルギーロスを生じている。
【0070】
図13〜図16に示す第6実施形態は、この不都合を回避するために、第1〜第3のバッフル板(圧力保持板)27を設けるようにしたものである(請求項9参照)。図13はバッフル板の配置を示す概略平面図、図14はバッフル板の配置を示す概略側面図、図15は気体吹き付け口とバッフル板の配置を示す概略正面図、図16はシート状物カセット41とバッフル板の配置を示す概略正面図である。
【0071】
図示のように、第1の圧力保持板27aは、複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に複数設けられている気体吹き付け口23の間を塞ぐ。この圧力保持板27aは前記気体吹き付け口の先端と概ね同一面を構成している。JLは、シート状物カセット前端位置に対する気体吹き付け口の先端距離である。第2の圧力保持板27bはカセット側に設けられ、カセット上端部と複数設けられている気体吹き付け口23の両端外側に設けられ、概ね気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に往復移動する範囲までを塞いでいる。この圧力保持板27bは前記気体吹き付け口の先端と僅かに離れてカセットの前端と概ね同一面を構成している。KLは、シート状物カセット前端位置に対するシート状物の前端距離である。なお、気体吹き付け口23に対するシート状物11の相対位置関係は図3若しくは図2に示した通りである。
【0072】
この実施形態の作用は、図15に示すように複数の気体吹き付け口23に対し(第1グループの)バッフル板27aを配置し、また、図16に示すように、シート状物カセットに(第2グループの)バッフル板27bを配置することで、複数のシート状物11の間隙を通過しないで、気体吹き付け口23の上方、下方、右方及び左方に逃げてゆく乾燥風FLがバッフル間の通過抵抗により、バッフルのない場合に比べてより大量の乾燥風FLをシート状物11の間隙を通過させることが可能となり、ブロワの送風乾燥風を効率よく乾燥操作(吹付)に用いることができ、この結果エネルギー効率の増大、つまり省エネルギーが可能となる。実際のテストでは、通過風量を同一としたときバッフルの設置によりブロワの送気量が約1/2以下に低減できることが確認できた。
【0073】
なお、複数のシート状物が並置され位置決め規制されるカセットが離れて複数設けられている場合(例えば図19を参照)には、更に前記複数のカセットの間を塞ぐ第3の圧力保持板27cを設けるようにする。第3の圧力保持板27cは前記気体吹き付け口と対向する前記カセットの前端と概ね同一面を構成する。
【0074】
〔第7実施形態〕
ところで、複数のシート状物11はシート状物カセット側板42によって仕切られており、従来は、エネルギーロスを低減するために、乾燥手段21側では図17に示すようにシート状物カセット側板42に対応する部分には、乾燥風FLが吐出されないように、乾燥手段21の乾燥風ノズルチャンバー24の開口部である気体吹き付け口23の一部(カセット側板42対面部分)が、板状で厚さ約0.1mmの気体吹き付け口遮蔽カバー25(例えば金属製)で塞がれていた。このため、図18に概念的に示すように、乾燥風FLの吐出送度は幅方向に不均一となり、具体的には各気体吹き付け口23の両端の吹き出し方向が内側に向くいわゆる“縮流“を起こしており、この結果、シート状物11の間隙はその並置方向に不均一となり中央若しくは一部のみの間隙が大きくなり乾燥風通過量も複数のシート状物のそれぞれの箇所毎に不均一となってしまう。この結果、遮蔽カバー25を付けた乾燥装置では、それぞれのシート状物11を一枚一枚確実に均一に所定の温度まで昇温させることができず、乾燥または、残留溶媒除去品質にばらつきが発生してしまう。
【0075】
そこで、本実施形態の乾燥装置では上記不都合を解消するために、気体整流部材26を用いている。すなわち、その基本構成を示す概略平面図(図19)または、本発明の基本構成を示す概略平面図(図20)、気体吹き付け口の基本構造を示す概略平面図(図21)に示すように、気体吹き付け口23の内側に気体整流部材26を設けてある。図19は隣り合うフィルムカセット間で単一のカセット側板を共有した構成の場合のシート状物とシート状物ストッパ(前)及びシート状物ストッパ(後)の位置関係を示す概略平面図を示し、図20は隣り合うフィルムカセットはそれぞれ独立してカセット側板42を具備している構成の場合を示している。
【0076】
この気体整流部材26による整流作用により図22に示すような各フィルムカセット毎に分割された気体吹き付け口23より吐出された乾燥風FLはそれぞれ、ほぼ均一な吐出速度を得ることが可能となる。この結果、シート状物の材質、厚さ及び平面性若しくはカールによるがシート状物11の間隙はほぼ同一となる。本発明者らの実験では、気体整流部材26の気体吹付け方向長さを15mmとして実験した結果、良好な整流結果が得られた。
【0077】
このように、本実施形態の乾燥装置によれば、図22に示すように各フィルムカセット毎に分割された気体吹き付け口23より吐出された乾燥風FLは、夫々ほぼ均一な吐出速度を得ることが可能となる。この結果、シート状物の材質、厚さ及び平面性若しくはカールによるがシート状物11の間隙はほぼ同一となり、良好な乾燥が行える。
【0078】
〔第8実施形態〕
以上、乾燥装置について説明したが、続いて本発明によるシート状物の気体吹付方法の実施形態として乾燥方法について説明する。本発明に係るシート状物の乾燥方法は、これまで説明した如き乾燥装置によって好適に実施することができる。本発明によるシート状物の乾燥方法においては、互いに接触して並置された複数のシート状物に図2に示すように、複数のシート状物の端部において複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付けることにより複数のシート状物を離間させると共に複数のシート状物の間隙に気体を通過させて、複数のシート状物の表面等を乾燥させる。
【0079】
すなわち、互いに接触して並置された複数のシート状物の端部に気体を吹付けることで、複数のシート状物の間隔は、吹付けられた気体の圧力により広げられ、それらの広げられた間隙を、吹付ける気体が通過することになる。ここで、気体が吹付けられた複数のシート状物の間隙には、シート状物の間隙を通過する気体の速さに応じて、理想的にはベルヌーイの定理により決定される圧力が生じる。つまり、通過する気体の速さが大きい間隙では、圧力が小さくなり、通過する気体の速さが小さい間隙では、圧力が相対的に大きくなる。その結果、複数のシート状物の間隙間における圧力差が無くなるまで、複数のシート状物は、移動する。そして、複数のシート状物の間隙を通過する気体の速さがほぼ均一になり、複数のシート状物の間隙における圧力も均一になると、複数のシート状物の間隔もほぼ均一となる。また、複数のシート状物は、気体が複数のシート状物の間隙を通過している間は、互いに密着しない。このようにして、複数のシート状物の間隙に気体を通過させることで、複数のシート状物の間隙に存在する気体を強制的に換気し、複数のシート状物の表面等を乾燥させることができる。
【0080】
上記のシート状物の乾燥方法によれば、複数のシート状物の表面を容易に且つ効率良く乾燥させることができる。すなわち、本発明に係るシート状物の乾燥方法によれば、連続した長いシート状物ではなく、互いに接触して並置された複数のシート状物の表面等を乾燥させるため、短時間で複数のシート状物の表面等を乾燥させることができる。また、複数のシート状物の各々を所定の位置に位置決めする必要がないため、シート状物の表面等を乾燥させるための作業工数を小さくすることができる。さらに、本発明に係るシート状物の乾燥方法によれば、複数のシート状物を鉛直方向に積載することなく、互いに接触して並置させ、複数のシート状物の間隙に気体を通過させることで、複数のシート状物の表面等を効率よく乾燥させることができる。また、複数のシート状物を治具などで互いに固定する必要がなく、シート状物の面全体にわたって気体を通過させることができるため、シート状物の表面等を比較的均一に乾燥させることができる。
【0081】
本発明方法では、複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した気体を吹付ける領域を、分割し並置された方向に概ね沿って分布した複数の領域に気体を吹付けるようにしても良い。この際に、気体を吹付ける位置を、シート状物並置方向におよび/またはシート状物並置方向と直交方向(上下方向)に、シート状物の特質に応じて調節される所定の適切範囲で往復移動させても良い。これにより、より確実にシート状物の面全体にわたって気体を通過させ、シート状物の表面等を均一に乾燥させることができる。
【0082】
また、適宜の規制手段により複数のシート状物が並置された方向の間隔を作業状態に合わせて適切に変更するようにすることも考えられる。それぞれのシート状物の極僅かな剛性の違い、シート端面の切断面形状の違い及び気体の流れのばらつきがあっても、前記複数のシート状物が並置された方向の間隔の最適化が可能となり前記複数のシート状物を規則正しく一枚一枚捌くことが可能となる。例えば、間隔は前記複数のシート状物の厚さにシート状物間の平均隙間を0.2mmから0.6mmを加えた値にシート状物の枚数を乗じた値とする。
【0083】
なお、シート状物へ気体吹付を行う主要用途の一つにシート状物の乾燥があるが、乾燥過程において、第一の時刻における気体の速さは、好ましくは、第一の時刻よりも後の第二の時刻における気体の速さよりも大きくすると良い。また、複数のシート状物の周囲温度は、常温よりも高いことが好ましい。ここで、常温とは、例えば室温のようなシート状物の乾燥を実施する環境によって決まる温度であり、おおむね5℃以上35℃以下の範囲にある温度である。また、複数のシート状物の周囲温度とは、複数のシート状物の間隙に気体を通過させる際における複数のシート状物を取り巻く環境の温度である。このように、複数のシート状物の周囲温度を常温よりも高くすることで、複数のシート状物の端部に吹付けられる気体の温度が常温より高い場合に、複数のシート状物の間隙を通過する気体の温度が、複数のシート状物の周囲温度によって下降することを低減することができる。これにより、複数のシート状物の表面等を乾燥させる効率が低下することを低減することができる。
【0084】
〔実施例1〕
次に実施例1について説明する。本発明による気体吹付装置である図4に示すような構成のシート状物の乾燥装置(詳細構造については後述)を用いて、本発明によるシート状物の気体吹付方法に準じた乾燥方法(詳細条件については後述)に従って、複数のシート状物を乾燥させ、フィルムスキマの形成状況の評価をした。
【0085】
フィルムスキマの形成状況の評価方法は以下のとおりである。
フィルム反ノズル側を15ゾーンに分け観察し、フィルム間スキマのマップ(詳細マップ)を作成して評価した。
【0086】
詳細マップは、図23に示す通り、フィルムカセットに収容したフィルムの反ノズル側フィルムスキマを、上・中・下の3ゾーン(ゾーンあたりフィルム50枚)を、各ゾーンにつき10枚ずつの5ゾーン=15の小ゾーンに分割し小ゾーン毎の処理結果から処理全体を評価した。
○・・・全スキマ、
×・・・全面接触、
△・・・一部接触(参考:合成マップ判断時は×扱い)
評価は、4個のフィルムカセットのうち一つについて実施した。開発過程中で4個のフィルムカセットでフィルムはいずれもほぼ同じ挙動をすることが確認できており、全てのカセットについて評価する必要はない。
【0087】
ノズル上下移動及び左右オシレートする場合には、上下の位置数×左右オシレートの位置数のすべてのノズル位置(図23参照)について、〔表1〕に例示するような詳細マップを作成した。
【0088】
【表1】

【0089】
そして、詳細マップから合成マップを作成し、合成マップにより評価を行った。合成マップ作成方法は、詳細マップを重ね合わせ、少なくとも一つ“○”があれば“○”とし、“○”でない場合には、少なくとも一つ“△”があれば“△”とし、それ以外は“×”とした。合成マップで全てのゾーンが“○“となれば全域均一スキマとした。合成マップの一例を〔表2〕に示す。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例1で用いたシート状物の乾燥装置は、乾燥手段としてのブロワ及びブロワ―と乾燥風ノズルをフレキシブルダクトで分配接続し、200枚のシート状物を50枚ごとに仕切る4個のフィルムカセット、並びに乾燥風ノズル及びフィルムカセットを内部に含む断熱室としての断熱カバーを有する。
【0092】
また、本実施例で用いたシート状物は、PET(ポリエチレンテレフタラート)のシートに塗料を塗布し自然乾燥させて得られたものである。PETのシートに塗布した塗料は、樹脂、染料、染料用の顕色剤、及びフィラーを溶剤に溶解させて得られたものである。塗料に用いた溶剤は、MEK(メチルエチルケトン)、トルエン、及び酢酸エチルの混合物であった。また、PETのシートの総数は、200枚であり、PETのシートの表面の大きさは、縦354mm(シート状物高さH0)×奥行き430mmであり、PETのシートの厚さは、約200μmであった。PETのシートの厚さは175μmあり、このシートに塗布された塗料の厚さは、シート状物を自然乾燥させた状態で、約18.5μmであった。
【0093】
乾燥風ノズル単体から流出する空気の速さ(以下ノズル風速と呼ぶ)は、15m/秒以上50m/秒以下の速さに調節した。乾燥風ノズルから流出する空気の温度は、20度以上120度以下の温度に調節した。
乾燥風ノズルの気体吹付け口のスリット間隔SGは、2mm以上15mm以下の間隔に調節し、乾燥風ノズルの長さLは、50mmの長さに調節した。
乾燥風ノズルは、図4に示す通りほぼ水平に設置した。
乾燥風ノズルの気体吹付け口の数を7本とした。
乾燥風ノズルの気体吹付け口は、図22に示したように各フィルムカセット毎に分割し、気体吹き付け口の内側に気体整流部材を設けた。
乾燥風ノズル左右オシレート範囲を中央位置±10mmかつ左右オシレートピッチを5mmから10mmとした。
乾燥風ノズルの気体吹付け口のスリット間隔(H1.気体吹き付け口間隔)を50mmとし、乾燥風ノズル上下移動は、上下移動は50mmの2位置とした。
1個のフィルムカセットに50枚のシート状物を並置したとき、複数のシート状物の並置間隔は、25mm以上40mm以下の範囲にあった。
フィルムカセット上方にカセット上蓋を設け、シート状物直立時のシート状物上端と上蓋との距離(隙間G)を0.5mm以上5mm以下とした。
カセット下面プレートは、(1)SUS440C−SG品(面粗度Ra0.2a:Rmax2.3▽▽▽▽相当/加工目:ノズル−反ノズル方向)、(2) SUS440C−SG無品(面粗度Ra1.3a:Rmax9.8▽▽▽相当/加工目:ノズル−反ノズル方向)、とした。
また、乾燥風ノズルの気体吹付け口から最も近いフィルムカセット端部までの距離は2mm以上8mm以下の範囲で調節した。また、フィルムカセット端部からシート状物の気体吹付け口方向のシート状物の出代を-2mmから2mmの範囲で調節した。
ノズル周囲の開放部分からのエアー漏れを抑制するためにノズル周囲にバッフル板を設け、更にその平面度を0.5mmから3.0mmとした。
さらに、断熱カバーは、表面を厚さ50mmのグラスウールで覆ったステンレススチールで形成されたものを用いた。
【0094】
上述のような条件の実施例1で得られた、詳細マップの一例を〔表3〕に示す。〔表3〕は、気体吹き付け口の内側に気体整流部材を用いた場合のフィルム間スキマ形成状態を示す詳細マップである。
【0095】
【表3】

【0096】
実施例1では、乾燥風によるフィルム昇温時の軟化に起因するフィルム座屈の程度は、スキマ形成に影響を与えることはなく、全域に均一にスキマ形成ができた。乾燥風によるフィルム昇温時状態をサーモグラフィー(チノー;CPA8200)により測定した結果、いずれの条件で約5分から約10分でフィルムの温度差は10℃以内となった。PETのシートに塗布した塗料である、樹脂、染料、染料用の顕色剤、及びフィラーの種類及び配合比率を変えても全域に均一にスキマ形成ができた。
【0097】
200枚のシート状物に関するブロワによる乾燥開始前におけるシート状物の表面に残留する溶剤の量の割合は、シート状物の表面に塗布した溶剤の量に対して5%であった。200枚のシート状物をブロワによって1時間乾燥した後では、シート状物の表面に残留する溶剤の量の割合は、シート状物の表面に塗布した溶剤の量に対して0.3%以下であった。
【0098】
なお、シート状物の表面に残留する溶剤の量の割合に関するシート状物内のばらつき及び200枚のシート状物間におけるばらつきは、20%以下であった。
【0099】
また、本実施例で用いたシート状物の乾燥方法及び乾燥装置によれば、図4に示すようなシート状物の乾燥装置を設置するスペースは、スタッカーを用いる従来技術と比較して、1/4以下であった。また、図4に示すようなシート状物の乾燥装置に関する設備コストは、スタッカーを用いる従来技術と比較して、1/2以下であった。さらに、図4に示すようなシート状物の乾燥装置に200枚のシート状物を並置する及び取り出す作業時間は、スタッカーを用いる従来技術と比較して、1/10以下であった(50枚のシート状物を並置することに要する時間は、10秒以下であった)。
【0100】
〔実施例2〕
乾燥風ノズルの気体吹付け口23の数を1本及び4本とし、実施例1条件である7本と比較した。〔表4〕に示すように均一な乾燥を目的としてフィルム間スキマ形成状態を確認したところ1本及び4本では全域に均一にスキマ形成することができなかった。
【0101】
【表4】

【0102】
〔実施例3〕
上下移動の効果を、実施例1条件の上下移動有りと比較した。〔表5〕に示すように、フィルム間スキマ形成状態を確認したところ上下移動なしでは全域に均一にスキマ形成ができなかった。
【0103】
【表5】

【0104】
〔実施例4〕
左右オシレートの幅とそのピッチの効果を実施例1の左右オシレート条件と比較した。〔表6〕に示すように、フィルム間スキマ形成状態を確認したところ、オシレートピッチ15mmでは全域にスキマ形成ができなかった。オシレート範囲±30mmでは、オシレートピッチ5mm及び10mmでは全域に均一にスキマ形成ができたもののオシレート範囲±20mmより外側では隙間形成ができていないことから、オシレート範囲の有効領域は±20mm以内であることが確認できた。
【0105】
【表6】

【0106】
〔実施例5〕
複数のシート状物の並置間隔の効果を〔表7〕に示すように、合わせてノズル風速条件を振ってフィルム間スキマ形成状態を確認したところ、25〜40mm、の範囲で全域に均一にスキマ形成ができた。また、この時、適正風速は、ノズル単体の無負荷風速15〜50m/秒である。
【0107】
【表7】

【0108】
〔実施例6〕
カセット上蓋設置とフィルム間スキマの効果を確認するための反ノズル側風速を測定した。測定位置はフィルム高さを4等分しそれぞれの位置について、ノズル上下位置の平均風速を比較した。測定結果を〔表8〕に示す。この結果、蓋なしに比べて蓋ありの場合(スキマ1mm、5m)、2倍以上に風速が増大していることが確認できた。
【0109】
【表8】

【0110】
この結果、フィルムとカセット上蓋間スキマのフィルム間スキマ形成状態を確認したところ、〔表9〕に示すとおり0.5mm以上5mm以下で全域に均一スキマが形成できた。スキマの効果からみれば、できるだけスキマは小さいことがフィルム間スキマ形成に有効であるが、現実にはフィルムのシートカット寸法のばらつきを考慮すると0.5mm以上が望ましいと考えられる。
【0111】
【表9】

【0112】
〔実施例7〕
バッフル平面度の効果を確認するための反ノズル側風速を測定した。測定位置はフィルム高さを4等分しそれぞれの位置について、ノズル上下位置の平均風速を比較した。測定結果を〔表10〕に示す。この結果、平面度2mmと比べて0.5mmの場合(スキマ1mm、5m)約1.5倍に風速が増大していることが確認できた。
【0113】
【表10】

【0114】
この結果、バッフル平面度を変えてフィルム間スキマ形成状態を確認したところ、〔表11〕に示すとおり0.5mm以上3mm以下で全域に均一スキマが形成できた。バフル無しでは全域に均一スキマは形成できなかった。
下限スキマは、その効果からみれば、できるだけ小さいことがフィルム間スキマ形成に有効であるが、現実には機械設備の寸法精度特に板金加工品であるノズルの寸法精度を考慮すると0.5mm以上が望ましいと考えられる。
【0115】
【表11】

【0116】
〔実施例8〕
乾燥風ノズルの気体吹付け口には、図17に示すように、気体吹付け口カバーにより各フィルムカセット毎に分割し、気体吹き付け口の内側には気体整流部材を設けなかった。このときのフィルムスキマ形成マップを〔表12〕に示す。図22に示す実施例1の条件でのマップ〔表3〕と比較すると明らかなように、気体整流部材は設けない場合には特にフィルムカセット両端ではスキマを形成することが全くできていないことが明らかである。
【0117】
【表12】

【0118】
〔実施例9〕
カセット下面プレートを、A2017P−テフロン(登録商標)品(日本フッソ工業;NFカ゛ート゛コーティンク゛;NF-004ECH)にし、フィルム間スキマ形成状態を確認したところ全域に均一にスキマ形成ができなかった。実施例1との比較を〔表13〕に示す。
【0119】
【表13】

【0120】
以上、本発明の乾燥装置及び乾燥方法について詳述したが、これと同等装置および同等方法は、そのまま、シート状物の洗浄方法及び洗浄装置として用いて好適に機能し、好ましい洗浄結果が得られる。以下、このような洗浄方法及び洗浄装置について簡単に説明する。
【0121】
既に乾燥装置および方法として実施形態を説明したので、重複する細部説明は全て省略するが、本発明の気体吹付装置であるシート状物の乾燥装置は、そのままシート状物の洗浄装置として使用できる。また、前述した乾燥方法は、これまで乾燥装置として説明した如き気体吹付装置によって好適に実施することができる、本発明に係るシート状物の洗浄方法においては、互いに接触して並置された複数のシート状物に図2に示すように、複数のシート状物の端部において前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付けることにより複数のシート状物を離間させると共に複数のシート状物の間隙に気体を通過させる。これにより、前記複数のシート状物を洗浄することができる。この方法によれば、複数のシート状物の表面を容易に且つ効率良く洗浄することができる。気体を吹付けるにあたっては、既述した乾燥処理の場合と全く同様に、各種の吹付態様を採ることができる。例えば、吹付ける領域は、気体吹き付けノズルの吹き付け口により規定され、前記気体吹き付け口が複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に複数であっても良い。気体吹き付け口をシート状物並置方向におよび/またはシート状物並置方向と直交方向(上下方向)に往復移動させる等も洗浄機能にとっても有効である。
【0122】
以上の説明で明らかなように、本発明の気体吹付装置及び方法によれば、プラスチックフィルム、紙、液晶及びプラズマディスプレイ等いわゆるフラットディスプレイ関連部品等のシート状物の塗布後の乾燥及びシート状物の洗浄において、シート状物が一枚一枚捌かれることで乾燥工程及び洗浄工程の歩留まりを改善することが可能となる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形して適用することができる。特に、各実施形態で個々に説明した特徴的構成の多くは、単一の装置で同時に採用することができるものである。例えば、気体吹き付け口をシート状物並置方向およびシート状物並置方向と直交方向の両方に往復移動させる構成も可能で、同時に気体吹き付け口に気体整流部材を備え圧力保持板も備えた構成が採れる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、気体吹付機能を必要とする、複数のシート状物を乾燥させるシート状物の乾燥方法、及び複数のシート状物を乾燥させる乾燥手段を有するシート状物の乾燥装置を用いる全ての技術分野に適用することができる。また、本発明は、複数のシート状物を洗浄するシート状物の洗浄方法、及び複数のシート状物を洗浄する洗浄手段を有するシート状物の洗浄装置を用いる全ての技術分野に適用することができる。
【0125】
さらには、本発明は、複数のシート状物から異物を除去するシート状物の異物除去方法、及び複数のシート状物の異物を除去する異物除去手段を有するシート状物の異物除去装置を用いる全ての技術分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の基本原理を示す概略図である。
【図2】本発明の基本構造を示す概略図である。
【図3】気体吹付け領域を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態のシート状物の乾燥装置(気体吹付装置)の全体斜視図である。
【図5】実施形態の乾燥装置の概略側面図である。
【図6】実施形態におけるシート状物に対する複数の気体吹き付け口との位置関係を示す概略正面図である。
【図7】シート状物カセットとシート状物の位置を示す概略正面図である。
【図8】座屈若しくはカールしたシート状物を示す概略正面図である。
【図9】気体吹付けノズルの左右オシレート範囲を説明する概略正面図である。
【図10】気体吹付けノズルの左右オシレート端部位置を示す概略正面図である。
【図11】ノズル口往復動位置調節機構の一例を示す概略図である。
【図12】シート状物に対する複数の気体吹き付け口の位置関係を示す概略正面図である。
【図13】バッフル板の配置を示す概略平面図である。
【図14】バッフル板の配置を示す概略側面図である。
【図15】気体吹き付け口とバッフル板の配置を示す概略正面図である。
【図16】シート状物カセット41とバッフル板の配置を示す概略正面図である。
【図17】従来の気体吹き付け口の基本構造を示す概略平面図である。
【図18】従来の気体吹き出し風速の不均一性を示す概略図である。
【図19】本発明の基本構成を示す概略平面図である。
【図20】本発明の基本構成を示す概略平面図である。
【図21】本発明の気体吹き付け口の基本構造を示す概略平面図である。
【図22】本発明による気体吹き出し風速の均一性を示す概略図である。
【図23】スキマ形成状況を評価するための反ノズル側フィルム観察部位のゾーン分けを示す概略正面図である。
【図24】従来のロールトゥロール乾燥装置を用いた連続したシート状物を乾燥させる方法を説明する概略図である。
【図25】従来のロール状に巻き取られた連続したシート状物を乾燥させる方法を説明する概略図である。
【図26】従来のスタッカーを用いた複数のシート状物を乾燥させる方法を説明する概略図である。
【図27】従来の枚葉印刷用インキ裏移り防止装置を説明する概略図である。
【図28】従来の塵埃の除去方法を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0127】
11…シート状物
21…気体吹付手段(乾燥手段)
22…気体吹付けノズル(乾燥風ノズル、洗浄風ノズル)
23…気体吹き付け口
24…乾燥または洗浄風ノズルチャンバー
25…気体吹き付け口遮蔽カバー
26…気体整流部材
27…バッフル板(圧力保持板)
31…断熱室(断熱チャンバー)
32…ノズル固定板
33…ボールネジ
34…ボールネジナット
35…ボールネジ軸受け
36…軸継ぎ手
37…ステッピングモータ
41…シート状物カセット(フィルムカセット)
42…シート状物カセット側板
43…シート状物ストッパ(後)
44…シート状物ストッパ(前)
46…シート状物カセット上蓋
D1…気体吹付けノズル吹付け方向
D2…気体吹付けノズル往復方向(移動方向は並置方向に対し直交方向;運動機構は図示せず)
D3…シート状物重ね方向(並置方向)
D4…気体吹付けノズル往復方向(移動方向は並置方向;運動機構は図示せず)
FL…気体(乾燥風、洗浄風)
L…ノズル長さ
G…隙間
KL…シート状物カセット前端位置に対するシート状物の前端距離
H0…シート状物高さ
H1…気体吹き付け口間隔
L1…気体吹付けノズル左右オシレート範囲
R1…気体吹付けノズル左右オシレート範囲
P,P´…シート状物の並置方向両端位置の鉛直線位置
SG…乾燥風ノズルの気体吹付け口のスリット間隔
W…シート状物カセット内幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に互いに接触した状態で鉛直方向から0度以上90度未満の角度で並置された複数のシート状物に、気体を吹付けて互いに離間させて前記シート状物間の間隙に気体を通過させることにより、前記複数のシート状物を乾燥させるシート状物の気体吹付装置であって、
前記複数のシート状物の端部において前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付ける吹付手段を有することを特徴とするシート状物の気体吹付装置。
【請求項2】
前記気体が前記複数のシート状物に吹付けられる領域は、気体吹き付けノズルの吹き付け口により規定され、前記気体吹き付け口が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項3】
前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に沿って所定の移動範囲内を往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項4】
前記気体吹き付け口の往復移動のストロークは、前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物の長さを前記気体吹き付け口の数で除した値より大きくすることを特徴とする請求項3記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項5】
前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に所定の範囲で往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項6】
前記複数のシート状物を位置決め規制する規制手段により規定される前記複数のシート状物が並置された方向の間隔を自在に可変できることを特徴とする請求項1または2記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項7】
前記複数のシート状物が並置された方向の間隔の可変範囲は前記複数のシート状物の厚さにシート状物間の平均隙間を0.2mmから0.6mmを加えた値にシート状物の枚数を乗じた値とすることを特徴とする請求項6記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項8】
前記複数のシート状物が並置され位置決め規制されて収容されるカセットは、前記複数のシート状物の前記気体の入り口及び出口を除く4面を持ち、前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に対向する2面の間隔は前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物の寸法に0.5〜5mmを加えた大きさであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項9】
前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に複数設けられている前記気体吹き付け口の間を塞ぐ第1の圧力保持板を持ち、複数設けられている気体吹き付け口の両端外側には概ね気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に往復移動する範囲までを塞ぐ第2の圧力保持板を持ち、前記第1および第2の圧力保持板は前記気体吹き付け口の先端と概ね同一面を構成しており、
前記複数のシート状物が並置され位置決め規制されるカセットが離れて複数設けられている場合には前記複数のカセットの間を塞ぐ第3の圧力保持板を更に持ち、
前記第3の圧力保持板は前記気体吹き付け口と対向する前記カセットの前端と概ね同一面を構成することを特徴とする請求項8記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項10】
前記気体吹き付け口の気体出口部に気体整流部材を具備したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のシート状物の気体吹付装置。
【請求項11】
厚み方向に互いに接触した状態で鉛直方向から0度以上90度未満の角度で並置された複数のシート状物に、気体を吹付けて互いに離間させて前記シート状物間の間隙に気体を通過させることにより、前記複数のシート状物を乾燥させるシート状物の気体吹付方法であって、
前記複数のシート状物の端部において前記複数のシート状物が並置された方向に概ね沿って分布した領域に前記気体を吹付けることを特徴とするシート状物の気体吹付方法。
【請求項12】
前記気体が前記複数のシート状物に吹付けられる領域は、気体吹き付けノズルの吹き付け口により規定され、前記気体吹き付け口が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に複数設けられていることを特徴とする請求項11記載のシート状物の気体吹付方法。
【請求項13】
前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に対し直交方向に沿って所定の移動範囲内を往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする請求項11または12記載のシート状物の気体吹付方法。
【請求項14】
前記気体吹き付け口の往復移動のストロークは、前記気体吹き付け口が対向する面の前記複数のシート状物の長さを前記気体吹き付け口の数で除した値より大きくすることを特徴とする請求項13記載のシート状物の気体吹付方法。
【請求項15】
前記気体吹き付け口の位置が前記複数のシート状物の並置方向に所定の範囲で往復移動し、その位置を自在に調節できることを特徴とする請求項11または12に記載のシート状物の気体吹付方法。
【請求項16】
前記複数のシート状物を位置決め規制する規制手段により規定される前記複数のシート状物が並置された方向の間隔を自在に可変できることを特徴とする請求項11または12に記載のシート状物の気体吹付方法。
【請求項17】
前記複数のシート状物が並置された方向の間隔の可変範囲は前記複数のシート状物の厚さにシート状物間の平均隙間を0.2mmから0.6mmを加えた値にシート状物の枚数を乗じた値とすることを特徴とする請求項16記載のシート状物の気体吹付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−192498(P2007−192498A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12225(P2006−12225)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】