説明

シート積層装置

【課題】ワークの搬送前の形状を維持しつつワークを積層することが可能なシート積層装置を提供する。
【解決手段】シート状のワークを積層するシート積層装置1であって、ワークを載置する載置部11と、載置部11に載置されたワークの搬送方向下流側の少なくとも一部を吸着しつつ搬送する搬送装置20と、ワークの搬送方向下流側に配置され、搬送装置20から搬送されたワークが載置される積層部30と、を備え、搬送装置20は、ワークの一部を吸着した後、ワークの一部を吸着した状態でワークを水平方向に搬送し、ワークを水平方向に搬送する水平搬送過程のうち第1工程でワークを載置部11よりも高い位置に上昇させ、水平搬送過程のうち第2工程で上昇速度と下降速度とを切り換え、水平搬送過程のうち第3工程でワークを積層部30に向けて下降させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート積層装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状のワークを載置部から一枚ずつ取り出して積層部に載置するシート積層装置がある。例えば、シート状のワークとしては、二次電池を構成する電極やセパレータがある。
【0003】
ところで、正電極、負電極及びセパレータは、薄い材料で形成されていることから剛性が低く、取り扱いが非常に困難である。また、正電極、負電極、セパレータを積層させる際に位置ずれが生じると、電圧等の特性に影響し、電池の性能にばらつきが生じてしまう。このため、電池の性能にばらつきが生じないよう正電極、負電極、セパレータを積層させることが可能な技術が求められている。
【0004】
このような要求に応えるための技術が検討されており、例えば特許文献1では、正電極マガジンと、負電極マガジンと、一対の吸引機構を有する電極用トランスファと、正電極及び負電極の位置合わせを行う電極ゲージング機構と、積層用トランスファと、積層テーブルと、を備えた電極積層装置が開示されている。これにより、正電極、負電極、セパレータを積層させる際に位置ずれが生じることを抑制し、電池の性能にばらつきが生じないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−50583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術にあっては、一対の吸引機構を用いて電極マガジンから電極を取り出して電極ゲージング機構に移載することで、電極の重ね合わせの精度を確保することができると考えられる。
しかしながら、特許文献1では、電極マガジンから一枚ずつ電極を取り出す際、電極をバキュームヘッドで取り出している。このため、電極の吸引部は安定して搬送されるものの、電極の吸引部以外の部分は搬送中の風圧や電極の自重により折れ曲がったりばたついたりしてしまう。したがって、電極の搬送前の形状を維持しつつ電極を積層テーブルに積層することは困難である。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ワークの搬送前の形状を維持しつつワークを積層することが可能なシート積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、シート状のワークを積層するシート積層装置であって、前記ワークを載置する載置部と、前記載置部に載置された前記ワークの搬送方向下流側の少なくとも一部を吸着しつつ搬送する搬送装置と、前記ワークの搬送方向下流側に配置され、前記搬送装置から搬送された前記ワークが載置される積層部と、を備え、前記搬送装置は、前記ワークの前記一部を吸着した後、前記ワークの前記一部を吸着した状態で前記ワークを水平方向に搬送し、前記ワークを水平方向に搬送する水平搬送過程のうち第1工程で前記ワークを前記載置部よりも高い位置に上昇させ、前記水平搬送過程のうち第2工程で上昇速度と下降速度とを切り換え、前記水平搬送過程のうち第3工程で前記ワークを前記積層部に向けて下降させるシート積層装置を採用する。ここで、「第1工程」とは、図7の上昇期間T1の領域を示し、「第2工程」とは図7の上昇下降切換期間T2の領域を示し、「第3工程」とは、図7の下降期間T3の領域を示す。以下、同様である。
【0009】
このような構成を採用することによって、本発明では、載置部に載置されたワークの搬送方向下流側の少なくとも一部が吸着された状態で積層部に向けて上に凸の動作パターンで搬送される。ワークの搬送方向下流側の部分は吸着されているので、搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることはない。一方、ワークの搬送方向上流側の部分(非吸着部)では、搬送過程でワークの上昇と下降とが切り換えられることでワークの垂れ下がりと風圧との均衡状態が発生し渦状乱流が生じる。よって、ワークの非吸着部においても搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることはない。したがって、ワークの搬送前の形状を維持しつつワークを積層することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記載置部には複数の前記ワークが載置されており、前記載置部に載置された前記複数のワークのうち最上層のワークと、該最上層のワークの直下のワークとを離間させる離間手段を備えるという構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記搬送装置は、前記ワークを前記載置部よりも高い位置に上昇させるときの速度を、前記ワークを前記積層部に向けて下降させる速度よりも大きくするという構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記ワークは、平面視矩形の、正電極、負電極、セパレータの三種のシートからなり、前記載置部は、前記正電極、前記負電極、前記セパレータ毎に設けられており、前記各載置部からは前記搬送装置により前記正電極、前記負電極、前記セパレータが一枚ずつ取り出され、前記積層部には前記搬送装置により前記正電極及び前記負電極が前記セパレータを挟んで積層配置されるという構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記搬送装置は、前記ワークの搬送方向下流側の端部全体を吸着しつつ搬送するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、載置部に載置されたワークの搬送方向下流側の少なくとも一部が吸着された状態で積層部に向けて上に凸の動作パターンで搬送される。ワークの搬送方向下流側の部分は吸着されているので、搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることはない。一方、ワークの搬送方向上流側の部分(非吸着部)では、搬送過程でワークの上昇と下降とが切り換えられることでワークの垂れ下がりと風圧との均衡状態が発生し渦状乱流が生じる。よって、ワークの非吸着部においても搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることはない。
したがって、本発明では、ワークの搬送前の形状を維持しつつワークを積層することが可能なシート積層装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態におけるシート積層装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるシート積層装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における搬送装置の概略構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるワークの搬送過程を示す図である。
【図5】図4に続くワークの搬送過程を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるワークの搬送過程と搬送位置の関係図である。
【図7】本発明の第1実施形態におけるワークの搬送過程と搬送速度の関係図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるワークの積層構造体の製造工程を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態におけるシート積層装置の概略構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態におけるシート積層装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0017】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸が架台10に対して平行な方向に設定され、Z軸が架台10に対して直交する方向に設定されている。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるシート積層装置1の概略構成を示す正面図である。図2は、シート積層装置1の概略構成を示す平面図である。なお、図1においては、便宜上、第3載置部13及び第4載置部14(図2参照)の図示を省略している。また、図2においては、架台10、搬送装置20及び天板25(図1参照)の図示を省略している。
【0019】
図1に示すように、シート積層装置1は、載置部11〜14に載置されたシート状のワークを積層部31に積層するものである。ここでは、シート状のワークとして、平面視矩形の、正電極P、負電極N、セパレータSの三種のシートを例に挙げて説明する。具体的には、シート積層装置1は、正電極Pと負電極Nとをシート状のセパレータSを挟んで積層して構造体を形成するものである。なお、以下の説明で単にワークというときは正電極P、負電極N、セパレータSのいずれかを指す場合がある。
【0020】
シート積層装置1は、床面に設置された架台10と、該架台10上に配置された、正電極Pを載置する第1載置部11と、負電極Nを載置する第2載置部12と、セパレータSを載置する第3載置部13及び第4載置部14と、載置部11〜14に載置されたワークの搬送方向下流側の少なくとも一部を吸着しつつ搬送する搬送装置20と、ワークの搬送方向下流側に配置され、搬送装置20から搬送されたワークが載置される積層部30と、積層部30を移動させるコンベア31と、離間手段15と、搬送装置20を支持する天板25と、を備えている。
【0021】
本実施形態では、1台の積層部30の周辺に、正電極Pが載置される載置部が1台(第1載置部11)、負電極Nが載置される載置部が1台(第2載置部12)、セパレータSが載置される載置部が2台(第3載置部13及び第4載置部14)、の計4台の載置部が配置されている(図2参照)。
【0022】
第1載置部11、第2載置部12、第3載置部13及び第4載置部14は、搬送方向上流側に配置されている。第1載置部11及び第2載置部12はコンベア31を挟んで対向配置されている。第1載置部11及び第3載置部13は互いに隣り合う位置に配置されている。第2載置部12及び第4載置部14は互いに隣り合う位置に配置されている。第3載置部13及び第4載置部14はコンベア31を挟んで対向配置されている。
【0023】
第1載置部11は、正電極Pを載置する容器である。第1載置部11は、複数の正電極Pを積層可能な深さを有した箱状になっている。
【0024】
正電極Pは、例えばロール状の正電極を所定の長さに切断する等して、予め平面視矩形に形成された状態で第1載置部11に載置されている。正電極Pの基材厚さ(Z方向の高さ)は例えば8〜20μm程度になっている。また、正電極Pの形成材料としては、例えばリチウム含有金属酸化物を用いることができる。この正電極Pは、例えばアルミニウムや銅等の金属箔を基材に用い、粉末状のリチウム含有金属酸化物を基材の面上に配置する等して形成することができる。
【0025】
第2載置部12は、負電極Nを載置する容器である。第2載置部12は、複数の負電極Nを積層可能な深さを有した箱状になっている。
【0026】
負電極Nは、例えばロール状の負電極を所定の長さに切断する等して、予め平面視矩形に形成された状態で第2載置部12に載置されている。正電極Pと負電極Nとは、平面視においてほぼ同じ大きさになるように形成されている。負電極Nの基材厚さは例えば8〜20μm程度になっている。また、負電極Nの形成材料としては、例えば炭素材料を用いることができる。この負電極Nは、例えばアルミニウムや銅等の金属箔を基材に用い、粉末状の炭素を基材の面上に配置する等して形成することができる。
【0027】
第3載置部13及び第4載置部14は、セパレータSを載置する容器である。第3載置部及び第4載置部14は、複数のセパレータSを積層可能な深さを有した箱状になっている。
【0028】
セパレータSは、例えばロール状のセパレータを所定の長さに切断する等して、予め平面視矩形に形成された状態で第3載置部13及び第4載置部14に載置されている。また、セパレータSは、平面視において、正電極P及び負電極Nよりも一回り大きくなるように形成されている。また、セパレータSの形成材料としては、例えば絶縁性の樹脂を用いることができる。このセパレータSは、例えば多孔質のポリエチレンやポリエステルからなる。
【0029】
搬送装置20は、本体部22と、吸着部21とを備えている。搬送装置20は、第1載置部11と積層部30との間に1台、第2載置部12と積層部30との間に1台、第3載置部13と積層部30との間に1台、第4載置部14と積層部30との間に1台、の計4台配置されている。搬送装置20は、ワークの搬送方向下流側の少なくとも一部を吸着した後、ワークの一部を吸着した状態でワークを水平方向(少なくとも水平方向成分を含む方向をいう)に搬送し、ワークを水平方向に搬送する水平搬送過程のうち第1工程でワークを載置部よりも高い位置に上昇させ、水平搬送過程のうち第2工程で上昇速度と下降速度とを切り換え、水平搬送過程のうち第3工程で前記ワークを積層部30に向けて下降させる。つまり、搬送装置20は、ワークの一部を吸着した状態でワークを積層部30に向けて上に凸の動作パターンで搬送するものである。
【0030】
本体部22は、例えば高速パラレルロボットを用いることができる。パラレル型は複数のリンク機構を並列に結合した閉ループ機構となっているため、シリアル型(複数のリンク機構を直列に結合した開ループ機構)よりも高剛性化、高速化及び高精度化を図ることができる。本体部22の一端(上側のベース部)は天板25に固定されている。
【0031】
吸着部21は、例えば多孔質のセラミックスからなる真空チャックを用いることができる。吸着部21の気孔径をサブミクロンサイズとすることにより、ワークが変形することなく均一な吸着が可能となる。
【0032】
積層部30は、ワークの搬送方向下流側に配置されている。積層部30は、搬送装置20から搬送されたワークが載置される容器である。積層部30は、複数のワークを積層可能な深さを有した箱状になっている。積層部30には、搬送装置20により搬送された正電極Pと負電極NとがセパレータSを間に挟んで交互に積層して配置されるようになっている。
【0033】
コンベア31は、Y方向に延在して配置されている。コンベア31は、例えばベルトコンベアやローラーコンベアを用いることができる。コンベア31は、積層部30を載せて移動させる装置である。具体的には、コンベア31の+Y方向側の端部で空の積層部30が搭載される。すると、空の積層部30は−Y方向側に移動し載置部11〜14が対向配置された位置で停止する。その後、積層部30はワークが所定の高さまで積層された後、コンベア31の−Y方向側の端部に移動し、別工程に取り出される。
【0034】
離間手段15は、架台10と載置部11〜14との間に配置されている。離間手段15は、載置部11〜14に載置された複数のワークのうち最上層のワークと、最上層のワークの直下のワークとを離間させるものである。離間手段は、例えば超音波分離装置を用いることができる。これにより音波の強弱で載置部11〜14に積層された複数のワークに対して圧力の差を生じさせることができる。なお、離間手段15は、超音波分離装置に限らず、例えば振動子等のアクチュエータを搭載した振動発生装置を用いることもできる。
【0035】
これにより、載置部11〜14に積層された複数のワークの最上層のものと最上層から2番目のものとを離間させることができる。つまり、搬送装置20で最上層のワークを吸着したときに、吸着したワークが下地のワークにくっついてしまうことを抑制することができる。このため、吸着したワークの下面が最上層から2番目のワークの上面から離れずにそのまま搬送装置20につられて搬送されることはない。
【0036】
図3は、本発明の第1実施形態における搬送装置20の概略構成を示す斜視図である。なお、図3においては、便宜上、ワークとして正電極P、負電極N、セパレータSのうち正電極Pを例に挙げて図示している。載置部としては、正電極Pが載置された第1載置部11を例に挙げて図示している。
【0037】
図3に示すように、搬送装置20の吸着部21は、第1載置部11に配置された正電極Pの搬送方向下流側(+X方向側)の2隅部(2つの角部)を吸着している。搬送装置20は、正電極Pの2隅部を吸着した後、正電極Pの2隅部を吸着した状態で正電極Pを積層部30に向けて上に凸の動作パターンで搬送する
【0038】
図4は、本発明の第1実施形態におけるワークの搬送過程を示す図である。図5は、図4に続くワークの搬送過程を示す図である。なお、図4及び図5においては、便宜上、ワークとして正電極P、負電極N、セパレータSのうち正電極Pを例に挙げて図示している。載置部としては、正電極Pが載置された第1載置部11を例に挙げて図示している。また、積層部30には搬送装置20により正電極P及び負電極NがセパレータSを挟んで複数積層配置されており、その最上層にセパレータSが載置されているものとする。
【0039】
図6は、本発明の第1実施形態におけるワークの搬送過程と搬送位置の関係図(位置プロファイル)である。図7は、本発明の第1実施形態におけるワークの搬送過程と搬送速度の関係図(速度プロファイル)である。なお、図6及び図7において、符号T1はワークの上昇期間、符号T2はワークの上昇下降切替期間、符号T3はワークの下降期間、を示している。図6において、横軸はT(ワークの搬送過程)、縦軸はH(ワークの搬送位置)である。図7において、横軸はT(ワークの搬送過程)、縦軸はV(ワークの搬送速度)である。
【0040】
先ず、第1載置部11に配置された正電極Pの搬送方向下流側(+X方向側)の2隅部を搬送装置20で吸着する。具体的には、図4(a)に示すように、第1載置部11に複数枚積層して配置された正電極Pのうち最上層のものを吸着部21で吸着する。このとき、離間手段15(図1参照)により第1載置部11に積層された複数の正電極Pの最上層のものと最上層から2番目のものとが離間されている。これにより、正電極Pは搬送装置20により確実に一枚ずつ吸着される。
【0041】
次に、吸着された正電極Pを、第1載置部11よりも高い位置に上昇させる。具体的には、図4(b)に示すように、正電極Pの搬送方向下流側の端部が第1載置部11の箱枠を所定の距離だけ越える位置に浮上させる。これにより、正電極Pが搬送中に第1載置部11の箱枠に接触等して変形したり損傷したりすることを抑制することができる。
【0042】
正電極Pは、上昇期間T1において+X方向及び+Z方向に斜めに搬送される。正電極Pは搬送装置20により上昇期間T1において搬送速度が次第に大きくなるよう搬送される(図7参照)。
【0043】
正電極Pの上昇期間T1における搬送速度は、下降期間T3における搬送速度よりも大きく設定されている。一方、正電極Pの下降期間T3における搬送速度は、正電極Pの位置精度の観点から小さく設定されている。このため、正電極Pの上昇期間T1における搬送速度が下降期間T3における搬送速度と同じに設定される(あるいは下降期間T3における搬送速度よりも小さく設定される)場合に比べて、速い速度で正電極Pを積層部30に搬送することができる。なお、正電極Pの搬送速度は、正電極Pのサイズ、厚み、重量等のパラメータや正電極Pの吸着部の面積を考慮して適宜設定することができる。
【0044】
次に、第1載置部11よりも高い位置に上昇させた正電極Pの搬送方向下流側の端部が設定した最も上方の位置に達したら、その高さを維持せずに下降させる。すなわち、正電極Pの搬送方向下流側の端部の上下方向の移動がない期間(水平方向移動期間)を設けない。これにより、自重による正電極Pの垂れ下がりと風圧による均衡状態が発生し渦状の乱流41が生じる(図4(c)参照)。このため、正電極Pの搬送方向下流側の端部がバタつくことを抑制することができる。
【0045】
正電極Pは、上昇下降切換期間T2において、上昇動作から下降動作へ切り換えられつつ水平方向へ+X方向に搬送される。正電極Pは上昇下降切換期間T2において搬送速度がピークとなっている(図7参照)。正電極Pは、搬送速度がピークの状態で所定の距離だけ搬送される。
【0046】
次に、正電極Pを積層部30に向けて水平に移動させつつ下降させる。具体的には、図5(a)に示すように、正電極Pの搬送方向下流側の端部を積層部30の最上層に配置されたセパレータSの+X方向側の端部を狙って搬送させる。
【0047】
正電極Pは、下降期間T3において+X方向及び−Z方向に斜めに搬送される。正電極Pは下降期間T3において搬送速度が次第に小さくなっている(図7参照)。これにより、正電極Pを積層部30(セパレータSの上)に積層させる際、正電極P及びセパレータSが互いに接触による衝撃で変形が生じることを抑制することができる。また、正電極PをセパレータSの所定の位置に高い精度で載置することができる(図5(b)参照)。
【0048】
また、正電極Pの搬送方向上流側の非吸着部は、正電極Pの下降(図5(a)参照)の搬送過程で正電極Pが空気に覆いかぶさる動作により正電極Pの裏面に空気溜まり40が発生する。すると、正電極Pは空気溜まり40により正電極Pの自重と反対方向の圧力を受ける。すなわち、正電極Pの非吸着部についても風圧や自重により搬送中に折れ曲がったりばたついたりすることはない。このため、正電極Pの搬送前の形状(平面視矩形形状)を維持しつつ正電極Pを積層することができる。
【0049】
次に、セパレータSを積層部30に載置された正電極Pの上に載置する。次に、負電極Nを積層部30に載置されたセパレータSの上に載置する。次に、正電極Pを積層部30に載置されたセパレータSの上に載置する。
【0050】
以上の工程を複数回(例えば100回程度)繰り返すことにより、積層部30には、−Z方向側から、セパレータS、正電極P、セパレータS、負電極N、セパレータS、…正電極P、セパレータS、負電極N、セパレータSの順に積層された構造体が配置されることになる(図8(a)参照)。この構造体は、例えば100層程度で構成されている。
【0051】
このとき、最下層のセパレータSと最上層のセパレータSとは、平面視したときに重なる位置に配置されている。また、複数のセパレータSの間に挟まれた各正電極Pと各負電極Nについても平面視したときに重なる位置に配置されている。
【0052】
次に、各正電極Pに接続されたタブP1及び各負電極Nに接続されたタブP2をそれぞれ溶接する。そして、この構造体を例えばアルミニウムからなるラミネートフィルムFに入れ、電解液を注液し、構造体に含浸させる。この後、構造体をシールして密閉することにより、ラミネート型電池セルが得られる(図8(b)参照)。
【0053】
したがって、本実施形態では、載置部に載置されたワークの搬送方向下流側の少なくとも一部が吸着された状態で積層部30に向けて上に凸の動作パターンで搬送される。ワークの搬送方向下流側の部分は吸着されているので、搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることはない。一方、ワークの搬送方向上流側の部分(非吸着部)では、搬送過程でワークの上昇と下降とが切り換えられることでワークの垂れ下がりと風圧との均衡状態が発生し渦状乱流41が生じる。よって、ワークの非吸着部においても搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることはない。つまり、ワークのヨレやシワもしくは変形の発生を抑制することができる。したがって、ワークの搬送前の形状を維持しつつワークを積層することができる。
【0054】
また、本実施形態では、離間手段15を備えているので、搬送装置20で最上層のワークを吸着したときに、吸着したワークが下地のワークにくっついてしまうことを抑制することができる。このため、吸着したワークの下面が最上層から2番目のワークの上面から離れずにそのまま搬送装置20につられて搬送されることはない。したがって、ワークの搬送速度を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、正電極Pの上昇期間T1における搬送速度が下降期間T3における搬送速度よりも大きく設定されている。このため、正電極Pの上昇期間T1における搬送速度が下降期間T3における搬送速度と同じに設定される(あるいは下降期間T3における搬送速度よりも小さく設定される)場合に比べて、速い速度で正電極Pを積層部30に搬送することができる。したがって、電池の生産速度を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、ワークが平面視矩形の正電極P、負電極N、セパレータSの三種のシートからなり、載置部が正電極P、負電極N、セパレータS毎に設けられており、各載置部から搬送装置20により正電極P、負電極N、セパレータSが一枚ずつ取り出され、積層部30には搬送装置20により正電極P及び負電極NがセパレータSを挟んで積層配置される。ワークが平面視矩形なので、ワークを安定して搬送することができる。したがって、正電極P、負電極N及びセパレータSの位置合わせを高い精度で行い、電池の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、吸着部21として多孔質のセラミックスからなる真空チャックを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば吸着部21として、ベルヌーイ効果を利用してワークを吸引するベルヌーイチャックを用いることもできる。なお、ベルヌーイチャックを用いる場合には、例えばレーザー式変位センサ、渦電流式変位センサ、CCDカメラを用いたレーザフォーカス式変位センサ等の変位センサをチャック側のワーク角部等位置検出に用いることが望ましい。この情報をロボットの位置制御に用いることで、ワークの位置精度が低下することを抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、ワークの形状として平面視矩形を例に挙げて説明したがこれに限らない。例えば、平面視形状が円形、楕円形、三角形あるいは五角形以上の多角形など、種々形状のワークについても適用することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るシート積層装置2の構成について、図9を用いて説明する。図9は、本発明の第2実施形態におけるシート積層装置2の概略構成を示す斜視図である。なお、図9においては、便宜上、搬送装置120周辺部を図示し、その他の構成(図1参照)の図示を省略している。
図9に示すように、本実施形態のシート積層装置2は、搬送装置120の吸着部121が正電極Pの搬送方向下流側の一辺に沿って設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したシート積層装置1と異なる。なお、図9においては、便宜上、ワークとして正電極P、負電極N、セパレータSのうち正電極Pを例に挙げて図示している。
【0060】
本実施形態のシート積層装置2は、架台10(図1参照)と、載置部11〜14(図1参照)と、ワークの搬送方向下流側の端部全体を吸着しつつ搬送する搬送装置120と、積層部30(図1参照)と、コンベア31(図1参照)と、離間手段15(図1参照)と、天板25(図1参照)と、を備えている。
【0061】
搬送装置120の吸着部121は、Y方向に延在している。吸着部121のY方向の長さは、正電極PのY方向に沿う一辺の長さとほぼ同じになっている。吸着部121は、平面視矩形の正電極Pの搬送方向下流側(+X方向側)の端部全体を吸着している。
【0062】
したがって、本実施形態では、第1実施形態のように正電極Pの搬送方向下流側の2隅部を吸着する構成に比べて、正電極Pを安定して搬送することができる。また、ワークの搬送方向下流側の端部全体が吸着されているので、搬送中に風圧や自重により折れ曲がったりばたついたりすることを確実に抑制することができる。
【0063】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るシート積層装置3の構成について、図10を用いて説明する。図10は、図2に対応した、本発明の第3実施形態におけるシート積層装置3の概略構成を示す平面図である。なお、図10においては、便宜上、架台10、搬送装置20及び天板25(図1参照)の図示を省略している。
図10に示すように、本実施形態のシート積層装置3は、1台の積層部130の周辺に、正電極Pが載置される載置部が1台(第1載置部111)、負電極Nが載置される載置部が1台(第2載置部112)、セパレータSが載置される載置部が1台(第3載置部113)、の計3台の載置部が配置されている点で、上述の第1実施形態で説明したシート積層装置1と異なる。図10において、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態のシート積層装置3は、架台10(図1参照)と、載置部111〜113と、搬送装置20(図1参照)と、積層部130と、コンベア131と、離間手段15(図1参照)と、天板25(図1参照)と、を備えている。
【0065】
第1載置部111、第2載置部112及び第3載置部113は、コンベア131の+Y方向側の端部を囲んで配置されている。第1載置部111及び第2載置部112はコンベア131を挟んで対向配置されている。第1載置部111及び第3載置部113は互いに隣り合う位置に配置され、第2載置部112及び第3載置部113は互いに隣り合う位置に配置されている。
【0066】
コンベア131の−Y方向側の端部で空の積層部130が搭載される。すると、空の積層部130は+Y方向側に移動し載置部11〜13に囲まれた位置で停止する。その後、積層部130はワークが所定の高さまで積層された後、コンベア131の−Y方向側の端部に移動し、別工程に取り出される。
【0067】
したがって、本実施形態では、コンベア131の端部に載置部111〜113が1台ずつ配置され(計3台)、コンベア131上の積層部130がY方向に往復移動する。このため、第1実施形態のように載置部が計4台配置される構成に比べて部品点数を少なくすることができ、さらに装置の小型化を図ることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、シート状のワークとして、二次電池を構成する電極やセパレータを例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、セラミックス、カーボン、金属や樹脂材料からなる薄膜フィルムなど、必要に応じて様々なシート状の部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,2,3…シート積層装置、11,111…第1載置部(載置部)、12,112…第2載置部(載置部)、13,113…第3載置部(載置部)、15…離間手段、20…搬送装置、30…積層部、P…正電極、N…負電極、S…セパレータ、T1…上昇期間(第1工程)、T2…上昇下降切換期間(第2工程)、T3…下降期間(第3工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のワークを積層するシート積層装置であって、
前記ワークを載置する載置部と、
前記載置部に載置された前記ワークの搬送方向下流側の少なくとも一部を吸着しつつ搬送する搬送装置と、
前記ワークの搬送方向下流側に配置され、前記搬送装置から搬送された前記ワークが載置される積層部と、
を備え、
前記搬送装置は、前記ワークの前記一部を吸着した後、前記ワークの前記一部を吸着した状態で前記ワークを水平方向に搬送し、前記ワークを水平方向に搬送する水平搬送過程のうち第1工程で前記ワークを前記載置部よりも高い位置に上昇させ、前記水平搬送過程のうち第2工程で上昇速度と下降速度とを切り換え、前記水平搬送過程のうち第3工程で前記ワークを前記積層部に向けて下降させることを特徴とするシート積層装置。
【請求項2】
前記載置部には複数の前記ワークが載置されており、前記載置部に載置された前記複数のワークのうち最上層のワークと、該最上層のワークの直下のワークとを離間させる離間手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート積層装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記ワークを前記載置部よりも高い位置に上昇させるときの速度を、前記ワークを前記積層部に向けて下降させる速度よりも大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載のシート積層装置。
【請求項4】
前記ワークは、平面視矩形の、正電極、負電極、セパレータの三種のシートからなり、
前記載置部は、前記正電極、前記負電極、前記セパレータ毎に設けられており、
前記各載置部からは前記搬送装置により前記正電極、前記負電極、前記セパレータが一枚ずつ取り出され、
前記積層部には前記搬送装置により前記正電極及び前記負電極が前記セパレータを挟んで積層配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート積層装置。
【請求項5】
前記搬送装置は、前記ワークの搬送方向下流側の端部全体を吸着しつつ搬送することを特徴とする請求項4に記載のシート積層装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−56648(P2012−56648A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198952(P2010−198952)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】