シート給送装置及び画像形成装置
【課題】シートがシート給送ローラに当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】カム37の回転に伴って圧板40を下降させ、かつ圧板40を上昇させるときにはカム37から離間する圧板コロ42と、圧板40を上昇させるときには、カム37に当接する凸部50とを、圧板40に設ける。そして、圧板40を上昇させるときは、凸部50をカム37に当接させることにより、カム37と凸部50との間で、摩擦力を発生させ、圧板40の上昇時の加速を抑える。
【解決手段】カム37の回転に伴って圧板40を下降させ、かつ圧板40を上昇させるときにはカム37から離間する圧板コロ42と、圧板40を上昇させるときには、カム37に当接する凸部50とを、圧板40に設ける。そして、圧板40を上昇させるときは、凸部50をカム37に当接させることにより、カム37と凸部50との間で、摩擦力を発生させ、圧板40の上昇時の加速を抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及び画像形成装置に関し、特にシートを支持するシート支持部を、シートを給送する際には上昇させ、シートの給送が終了すると下降させる昇降機構の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、複写機、FAX等の画像形成装置においては、複数枚のシートを支持するシート支持部からシートを1枚ずつ分離して送り出し、画像形成部に給送するためのシート給送装置を備えている。従来のシート給送装置としては、例えば傾斜したトレイにセットされたシートをシート給送ローラにより1枚ずつ給送すると共に、トレイのシート給送方向下流側にシート束先端部を突き当ててシートの位置を規制しているものがある。なお、このようなシート給送装置では、シート先端が突き当たる突き当て部のシート給送ローラ近傍に傾斜を設けることにより、シートがシート給送ローラ側に進入しやすくなるようにしている。
【0003】
このような傾斜したトレイにセットされたシートをシート給送ローラにより1枚ずつ給送するシート給送装置としては、画像形成装置本体の側面に設けられ、手差しシートを給送するようにした手差し給送装置が一般的である。なお、この手差し給送装置は、同一シートを大量に給送することよりも、大きさ、表面性、厚み、材質等が異なる多種多様なシートを手軽に給送できるように構成することが重視される。ここで、手差し給送装置はコストを抑えつつ、シートを1枚ずつ給送することができるように、シートを1枚給紙するたびに、手差しトレイの先端に設けられているシート支持部である圧板を上昇させ、シートをシート給送ローラに押し付けるようにしている。そして、この後、シート給送ローラを回転することでシートを給送すると共に、シートの給送が終わると、圧板を下降させ、シートをシート給送ローラから離間させるようにする。
【0004】
図14は、このような圧板を、シートを給送する際には上昇させ、シートの給送が終了すると下降させる昇降機構を備えた従来の手差し給送装置の構成を示す図である。手差し給送装置300は、図14の(a)に示すように、シート給送方向の下流側が下方になるように傾斜している手差しトレイ33と、シート給送ローラ301と、手差しトレイ33の先端に設けられている圧板302と、制御カム307を備えている。ここで、制御カム307は、ローラ軸309と同軸上に固定されており、シート給送ローラ301の回転と同期して回転動作する。また、圧板302は先端の両脇に、制御カム307に追従し、制御カム307と共に昇降機構を構成するカムフォロアとしてコロ308を有しており、コロ308は圧板302に軸支され、回転自在となっている。なお、圧板302はバネ312で両端を上方に付勢されており、待機状態においては制御カム307により押し下げられた状態となっている。
【0005】
そして、手差しトレイ33にシート(束)をセットした後、給紙信号が送られてくると、シート給送ローラ301が回転する。これに伴い、シート給送ローラ301と同軸上に固定された制御カム307も一緒に回転し、制御カム307のカム面にコロ308が追従することにより、バネ312により圧板302が上昇する。そして、この圧板302の上昇により、回転しているシート給送ローラ301にシートが接すると、シートはシート給送ローラ301により送り出される。なお、このようにシート給送ローラ301にシートが接する時には、圧板302に軸支されたコロ308は制御カム307から一旦離れるようになっている。この後、さらにシート給送ローラ301が回転し、シート先端が次の搬送ローラ対311に到達すると、再び、制御カム307のカム面がコロ308に当接し、バネ312に抗しながら圧板302が押し下げられる。これにより、シートがシート給送ローラ301から離れ、この後、シート給送ローラ301が一回転し、待機状態に戻る。
【0006】
ところで、このような手差し給送装置300において、制御カム307がバネ312の付勢力に抗して圧板302を押し下げるためには、制御カム307には大きな駆動トルクが必要となる。このため、従来は回転自在に軸支したコロ308をカムフォロアとし、制御カム307のカム面とカムフォロア面の摩擦力が働かない状態とすることにより、制御カム307及びシート給送ローラ301を駆動する駆動トルクが大きくならないようにしている。
【0007】
しかし、圧板302が上昇する時、バネ312の付勢力と、コロ308が自在に回転することで、圧板302が勢いよく上昇する場合があった。この場合、特にシートの積載量が少量の場合には、圧板302上のシートがシート給送ローラ301に当接するときに、衝突音が発生する。なお、近年、画像形成装置においては、静穏化が求められており、静穏化のレベルを向上させようとすると、コストをかけて改善する必要があった。そこで、このような衝突音をコストをかけることなく、簡単な構成で低減するため、図14の(b)に示すように、左右の制御カム307a,307bのプロファイルを異なる形状としている(特許文献1)。なお、このようなプロファイルの制御カム307a,307bによれば、シート給送ローラ301に対し、圧板上のシートの手前側部分が先に、奥側部分がその後に当接するようになる。このため、圧板302がシート給送ローラ301に当接する時の衝撃は分散され、衝突音は低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−250859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このような従来のシート給送装置及び画像形成装置においては、衝突音は低減されるが、シート給送ローラ301へのシートの当接タイミングが異なるようになる。そして、このように当接タイミングが異なる場合、特に高速給紙において、シートがシート給送ローラ301に当接する際、シート給送ローラ301は回転状態であるため、シートが斜行する。このため、シートが斜行しないような特別な工夫が必要であった。
【0010】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートがシート給送ローラに当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シートを支持する昇降可能なシート支持部と、前記シート支持部と共に上昇したシートを送り出すシート給送ローラと、シートを給送する際、シートを前記シート給送ローラに圧接させるように前記シート支持部を上昇させ、シートの給送が終了すると前記シート支持部を下降させる昇降機構と、を備えたシート給送装置において、前記昇降機構は、前記シート給送ローラと一体に回転するカム部材と、前記シート支持部に、前記カム部材に接離可能に当接するように設けられ、前記カム部材の回転に伴って前記シート支持部を下降させ、かつ前記シート支持部を上昇させるときには前記カム部材から離間する第1当接部と、前記シート支持部に設けられ、前記シート支持部を上昇させるときには、前記カム部材に当接する第2当接部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように、シート支持部を上昇させる際、第2当接部をカム部材に当接させてカム部材と第2当接部との間で摩擦力を発生させることにより、シートがシート給送ローラに当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザービームプリンタの全体構成図。
【図2】上記フルカラーレーザービームプリンタに設けられた手差し給紙部の構成を説明する図。
【図3】上記手差し給紙部に設けられたカムの形状を説明する図。
【図4】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第1の図。
【図5】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第2の図。
【図6】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第3の図。
【図7】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第4の図。
【図8】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第5の図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置である手差し給紙部の構成を説明する図。
【図10】上記手差し給紙部に設けられたカムの形状及びカムフォロアを説明する図。
【図11】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第1の図。
【図12】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第2の図。
【図13】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第3の図。
【図14】従来の手差し給送装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザービームプリンタの全体構成図である。図1において、100はフルカラーレーザプリンタ、101はフルカラーレーザプリンタ本体(以下、プリンタ本体という)であり、プリンタ本体101には、シートに画像を形成する画像形成部102、シートを給送する給紙部103等が設けられている。画像形成部102は、像担持体である感光体ドラム1(1a〜1d)等を備え、プリンタ本体101に着脱可能に装着されたイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー画像を形成するプロセスカートリッジ3(3a〜3d)を備えている。また、画像形成部102は、プロセスカートリッジ3の鉛直下方に配置され、画像情報に基づいてレーザービームを照射し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成するスキャナユニット9を備えている。
【0015】
ここで、各プロセスカートリッジ3は、現像ユニット4(4a〜4d)と、クリーナユニット5(5a〜5d)によって構成されている。そして、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像ユニット4は、現像ローラ6(6a〜6d)と、現像剤塗布ローラ7(7a〜7d)及びトナー容器を有している。クリーナユニット5は、感光体ドラム1と、感光体ドラム表面を均一に帯電する帯電ローラ2(2a〜2d)と、ドラムクリーニングブレード8(8a〜8d)と、廃トナー容器とを有している。
【0016】
また、図1において、10は中間転写ベルトユニットであり、この中間転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト10eと、中間転写ベルト10eの内側に配設された一次転写ローラ10(10a〜10d)を備えている。なお、中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10f、テンションローラ10gに張架されており、テンションローラ10gが矢印方向に張力をかけている。
【0017】
また、一次転写ローラ10は、各感光体ドラム1に対向して配設されており、不図示のバイアス印加手段により転写バイアスを印加する構成となっている。そして、この1次転写ローラ10によって中間転写ベルト10eに1次転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の各色トナー像が順次中間転写ベルト10eに転写され、これにより中間転写ベルト上にはフルカラー画像が形成される。
【0018】
また、13は駆動ローラ10fと2次転写ローラ13aとにより構成され、順次中間転写ベルト10eに形成されたフルカラー画像をシートに転写する2次転写部である。15は、シート上に形成した画像に熱及び圧力を加えてトナー像を定着させる定着部であり、内部に不図示のヒータを内蔵した加熱ローラ15aと、加熱ローラ15aに圧接する加圧ローラ15bとを有している。104は、定着部15において画像が定着されたシートを、プリンタ本体上面に着脱自在に取り付けられたシート積載部18に排出するシート排出部である。このシート排出部104は、シート排出手段である排出ローラ対17、スイッチバックローラ対19、反転搬送路41等を備えている。
【0019】
給紙部103は、カセット給紙部20と、プリンタ本体101の側面に設けられ、手差しシートを給送するようにした手差し給紙部30とを備えている。なお、カセット給紙部20は、プリンタ本体101に着脱可能に装着された給紙カセット21と、給紙カセット21に収納されたシートSを給送するシート給送ローラ22等を有している。そして、給紙カセット21に収納されたシートSを給送する際は、シートSに圧接しているシート給送ローラ22を回転させてシートを送り出すようにしている。このように送り出されたシートSは、この後、シート給送ローラ22及びシート給送ローラ22に圧接する分離ローラ23により構成される分離部によって一枚ずつ分離されて搬送された後、レジストローラ対14に搬送される。
【0020】
また、シート給送装置である手差し給紙部30は、シート給送方向の下流側が下方になるように傾斜している手差しトレイ33と、手差しトレイ33のシート給送方向下流側に上下方向に回動自在に設けられ、シートを支持する圧板40を備えている。そして、シートを給送する際は、昇降可能なシート支持部である圧板40が持ち上がり、圧板上に積載されたシートをシート給送ローラ31に圧接させ、この後、シートに圧接しているシート給送ローラ31を回転させてシートを送り出すようにしている。なお、このように送り出されたシートは、この後、不図示の分離パットによって一枚ずつ分離されて搬送された後、搬送ローラ対19によりレジストローラ対14に搬送される
次に、このように構成されたフルカラーレーザプリンタ100の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号がスキャナユニット9に入力されると、スキャナユニット9から、画像信号に対応したレーザ光が感光体ドラム上に照射される。このとき感光体ドラム1は、帯電ローラ2により表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、スキャナユニット9からレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。
【0021】
この後、この静電潜像を現像ユニット4により現像し、可視化する。例えば、まず感光体ドラム1aに、原稿のイエロー成分色の画像信号によるレーザ光をスキャナユニット9から照射し、感光体ドラム1a上にイエローの静電潜像を形成する。そして、このイエローの静電潜像を、現像ユニット4aからのイエロートナーにより現像し、イエロートナー像として可視化する。この後、感光体ドラム1aの回転に伴ってトナー像が感光体ドラム1aと中間転写ベルト10eとが当接する1次転写部に到来すると、1次転写ローラ10aに印加した1次転写バイアスにより、感光体ドラム上のイエロートナー像が中間転写ベルト上に転写される。
【0022】
次に、中間転写ベルト10eのイエロートナー像を担持した部位が移動すると、このときまでに上記と同様な方法で感光体ドラム1b上に形成されたマゼンタトナー像がイエロートナー像上から中間転写ベルト10eに転写される。同様に、中間転写ベルト10eが移動するにつれて、それぞれ1次転写部においてシアントナー像、ブラックトナー像が、イエロートナー像、マゼンタトナー像上に重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト上にフルカラートナー画像が形成される。なお、トナー像転写後に、感光体ドラム表面に残ったトナーは、クリーナユニット5によって除去される。
【0023】
また、このトナー画像形成動作に並行して給紙カセット21に収容されたシートSはシート給送ローラ22により送り出された後、分離ローラ23によって一枚ずつ分離されて搬送される。そして、分離されたシートSは、レジストローラ対14に搬送される。なお、手差し給紙部30の圧板上に積載されたシートSは、シート給送ローラ31により送り出された後、搬送ローラ19を通過してレジストローラ対14に搬送される。
【0024】
次に、このようにしてレジストローラ対14に搬送されたシートは、レジストローラ対14によりタイミングを合わされた後、2次転写部13に搬送される。そして、2次転写部13において、2次転写ローラ13aに正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに、中間転写ベルト10e上の4色のトナー像が2次転写される。なお、シートSへの2次転写の後、中間転写ベルト上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置11によって除去され、除去されたトナーは、不図示の廃トナー回収容器へと回収される。トナー像転写後のシートSは、定着部15に搬送され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとによって加熱、加圧されてその表面にフルカラーのトナー像が定着される。次に、このようにフルカラーのトナー像が定着された後、シートSはシート排出部104に設けられた排出ローラ対17によってシート積載部18に排出積載される。
【0025】
図2は、手差し給紙部の構成を説明する図である。図2に示すように、手差しトレイ33は、一端がプリンタ本体101に支持されたヒンジ34の他端36を摺動可能に支持することにより、回動軸33aを支点にプリンタ本体101に回動可能に支持されている。なお、この手差しトレイ33は、手差し給紙部30がプリンタ本体内に収納されたとき、プリンタ本体101の外装を構成するカバーとなるものである。また、圧板40は、ヒンジ34の他端36を中心として手差しトレイ33に回動可能に支持されると共に、手差しトレイ33の開動作に伴って図2に示すシート給送待機位置に移動し、手差しトレイ33の閉動作に伴ってプリンタ本体内部へ収納される。
【0026】
なお、図2において、41は、圧板40に設けられ、圧板40に積載するシートの幅方向の位置を整列させるサイド規制板である。37はシート給送ローラ31のローラ軸31aと同軸上に支持され、シート給送ローラ31と一体に回転するカム(カム部材)、42は圧板40のシート給送方向と直交する幅方向の両脇に設けられた第1当接部を構成する回転部材である圧板コロである。35は圧板40を上方に向けて付勢する付勢部材である圧板バネであり、この圧板バネ35によって上方に向けて付勢力を受けることにより、圧板コロ42がカム37と接離可能に当接する。そして、このように圧板コロ42がカム37と当接することにより、圧板40の位置が、圧板上のシートがシート給送ローラ31から離間する位置に保たれる。
【0027】
ここで、カム37は、図3に示すように、圧板コロ42が当接し、圧板40を待機位置に保持する窪み部分37a、カム37の回転に伴って圧板40を上昇させる傾斜部分37bを備えている。また、カム37は、圧板40が所定のシート給送可能位置まで上昇した際、圧板上のシートSがシート給送ローラ31に確実に当接できるように、圧板コロ42が当接することのないようにする小径部分37cを備えている。さらに、シート給送ローラ31によりシートを給送した後、圧板40を待機位置まで押し下げるための押し下げ部分37dを備えている。なお、図2において、50は、圧板40の先端の、圧板コロ42の側方に突設された第2当接部を構成する非回転部材である凸部である。
【0028】
この凸部50は、後述するように圧板40を上昇させるときに圧板コロ42がカム37から離間した際、カム37の傾斜部分37bと当接するようになっている。そして、このように凸部50が、圧板40を上昇させるとき、カム37の第2カム面を構成する傾斜部分37bに当接することにより、凸部50はカム37との間に摩擦力を生じるようになる。なお、圧板バネ35と、カム37と、圧板コロ42、凸部50とにより、シートをシート給送ローラ31に当接させるように圧板40を上昇させ、シートの給送が終了すると圧板40を下降させる昇降機構30Aが構成される。
【0029】
このように構成された手差し給紙部30において、既述したように画像情報が入力され、給紙信号が送られてくると、不図示のモータと、シート給送ローラ31を1回転駆動する不図示の駆動機構により、ローラ軸31aが時計回りに回転する。そして、このようにローラ軸31aが回転すると、同軸上に接続されたカム37も時計回りに回転し、これにより圧板40が、圧板バネ35によって上昇し始める。更に、ローラ軸31aの回転が進むと、圧板40上のシートが1回転駆動されるシート給送ローラ31に圧接されて送り出され、この後、分離パット32により一枚ずつ分離され、搬送ローラ対19まで搬送される。なお、シート先端が搬送ローラ対19に到達すると、カム37によって圧板40が圧板バネ35に抗しながら押し下げられ、シートはシート給送ローラ31から離間し、この後、ローラ軸31aが一回転することにより、圧板40は待機位置に戻る。
【0030】
この一連のシート給送動作の際のカム37の作用を、図4〜図8を用いて更に詳しく説明する。図4の(a)は満載時のシート給送待機状態を示す図であり、このとき圧板40の先端の圧板コロ42は、カム37の窪み部分37aに当接している。図4の(b)は満載時にローラ軸31aが回転すると同時にカム37が回転し始め、圧板コロ42がカム37に追従して動き、圧板40が上昇し始めた状態を示す図である。図4の(c)は満載時に、圧板40上のシートがシート給送ローラ31に当接した時の状態を示した図である。ここで、シートSがシート給送ローラ31に当接した時、シートSの重量により、圧板バネ35による圧板40を上方に付勢する力が低減している。また、シートSがシート給送ローラ31に当接するタイミングは、圧板40の上昇が始まってすぐのタイミングであり、さらにシートSはクッション性を有している。したがって、シートSがシート給送ローラ31に当接するときの衝撃は非常に小さく、衝突音はほとんど発生しない。つまり、満載時においては、衝突音はほとんど発生しない。
【0031】
シート給送ローラ31にシートSが当接した後は、図5の(a)に示すようにカム37は、ローラ軸31aの回転に伴って圧板コロ42から離れた位置に移動する。これにより、圧板40はシート給送ローラ31によって位置が決められる。この後、ローラ軸31aの回転が進み、シート給送ローラ31によってシートSが搬送され、シートSの先端が次の搬送ローラ対19に到達すると、図5の(b)に示すように、第1カム面であるカム37の押し下げ部分37dが圧板コロ42に当接する。そして、更にローラ軸31aの回転が進むと、既述した図4の(a)に示すように、カム37により圧板40は押し下げられ、シートSはシート給送ローラ31より離間する。なお、ローラ軸31aが一回転すると、圧板40は、元のシート給送待機状態に戻ると共に、不図示の駆動機構によるシート給送ローラ31の駆動が停止され、次に給紙信号が送られるまでシート給送動作は停止する。
【0032】
このようなシート給送動作が順次行われると、手差しトレイ上のシートが減少し、少載状態となる。図6の(a)は、手差しトレイ上のシートが減少して少載状態となった時のシート給送待機状態を示す図であり、このとき圧板40の先端の圧板コロ42は、カム37の窪み部分37aに当接している。図6の(b)は、少載時にローラ軸31aが時計回りに回転すると同時にカム37も回転し始め、圧板40の先端の圧板コロ42がカム37に追従して動き、圧板40が上昇し始めた状態を示す図である。また、図7の(a)は、この後、ローラ軸31aが少し回転して圧板40上のシートSがシート給送ローラ31に当接する直前の状態を示した図である。このとき、圧板コロ42がカム37から離れ、圧板40の先端の圧板コロ42の側方に設けられた非回転の凸部50がカム37と接する。この後、さらにローラ軸31aが回転すると、図7の(b)に示すように、凸部50が第2カム面であるカム37の傾斜部分37bに接するようになり、これにより凸部50とカム37との間には、圧板バネ37のバネ力に応じた大きさの摩擦力が生じる。
【0033】
なお、図7の(b)において、fNはカム37の凸部50に対する垂直抗力であり、摩擦係数をμとすると、カム37の回転抵抗力はμfNとなる。そして、この垂直抗力fNと、回転抵抗力μfNとにより、凸部50には圧板40の上昇を妨げる力fが発生し、この結果、圧板バネ37のバネ力による圧板上昇力Fの大きさが、圧板コロ40がカム37の傾斜部分37bに接しているときに比べて弱くなる。これにより、シート給送ローラ31にシートSが当接する際の速度が減速されて衝撃が弱くなり、衝突音も小さくなる。なお、このとき、カム37の回転方向に不図示のダンパを設けるようにすると、さらに衝突音を小さくすることができる。このように、圧板40の先端に非回転の凸部50を設けることにより、カム37の形状はそのままであることから、給紙タイミングは変わらないまま、シート給送動作の際の静音化を図ることができる。
【0034】
なお、シート給送ローラ31にシートSが当接した後は、図8の(a)に示すようにカム37は、ローラ軸31aの回転に伴って圧板コロ42から離れた位置に移動する。これにより、圧板40はシート給送ローラ31によって位置が決められる。この後、ローラ軸31aの回転が進み、シート給送ローラ31によってシートSが搬送され、シートSの先端が次の搬送ローラ対19に到達すると、図8の(b)に示すようにカム37の押し下げ部分37dが圧板コロ42に当接する。そして、この後、更にローラ軸31aが回転すると、カム37の押し下げ部分37dよって圧板コロ42が上方から押圧されることにより、圧板40は押し下げられる。
【0035】
ここで、少載時の場合、図8の(b)で示される圧板40とローラ軸31aとの距離は、図5の(b)で示される満載時の距離に比べて短いので、カム37により圧板40を押し下げ始めるタイミングは、満載時に比べて早くなる。また、圧板バネ35のバネ力に抗して圧板35を押し下げる際、少載時の場合はシートSの加重が少ない分ためローラ軸31aには大きな負荷がかかる。しかし、このときはカム37の押し下げ部分37dに圧板コロ42が接するようになっており、圧板コロ42が回転することにより、カム37の押し下げ部分37dに対して摩擦力が働くことなく、ローラ軸31aにかかる負荷を最低限にとどめることができる。なお、ローラ軸31aが一回転すると、圧板40は、元のシート給送待機状態に戻ると共に、不図示の駆動機構によるシート給送ローラ31の1回転駆動が停止され、次に給紙信号が送られるまでシート給送動作は停止する。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態においては、圧板40を上昇させる際、カム37に凸部50を当接させることにより、カム37と凸部50との間で、圧板40に作用する圧板バネ35による付勢力を低減させる摩擦力を発生させるようにしている。これにより、圧板を昇降させる際の最大負荷トルクは維持したまま、シートSがシート給送ローラ31に当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することができる。この結果、安定したシート給送性能と静かさを兼ね備えた手差し給紙部(シート給送装置)を低コストで提供することができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係るシート給送装置である手差し給紙部の構成を説明する図である。なお、図9において、既述した図2と同一符号は、同一または相当部分を示している。図9において、63は圧板であり、61は圧板63を昇降させるカム(カム部材)である。この圧板63には、カム61に当接する凸部62が形成されている。この凸部62は、図10の(a)に示すように、圧板63が上昇する際に、カム61と接する第2当接部を構成する第2当接面62aと、圧板63が押し下げられる際にカム61と接する第1当接部を構成する第1当接面62bを備えている。なお、本実施の形態において、第2当接面62aの表面の摩擦係数を高く、第1当接面62bの摩擦係数を低くなるようにしている。
【0038】
一方、カム61は、図10の(b)に示すように、凸部62が当接し、圧板63を待機位置に保持する窪み部分61a、カム61の回転に伴って圧板63を上昇させる傾斜部分61bを備えている。また、カム61は、圧板63が所定のシート給送可能位置まで上昇した際、圧板上のシートSがシート給送ローラ31に確実に当接できるように、凸部62が当接することのないようにする小径部分61cを備えている。さらに、シート給送ローラ31によりシートを給送した後、圧板63を待機位置まで押し下げるための押し下げ部分61dを備えている。
【0039】
ここで、カム61の斜面部分61bは、圧板63を上昇させる際、凸部62を摺動させながら圧板63を上昇させるようになっており、この斜面部分61bの表面には摩擦係数の高いシートが貼り付けられている。そして、このように斜面部分61bの表面に摩擦係数の高いシートを貼り付けることにより、凸部62はカム61との間に摩擦力を生じるようになっている。なお、カム61は、斜面部分以外の部分の表面が、凸部62との間の摩擦による摺動負荷を低減できるように摩擦係数の低い材質で形成されている。これにより、第1カム面であるカム61の押し下げ部分61dと第1当接面62bとの間の摩擦力よりも、第2カム面であるカム61の傾斜部分61bと第2当接面62aとの間の摩擦力を大きくすることができる。
【0040】
次に、このような構成のカム61の、シート給送動作の際の作用を、図11〜図13を用いて更に詳しく説明する。図11の(a)は手差しトレイ上のシートが減少して少載状態となった時のシート給送待機状態を示す図であり、このとき圧板63の先端の凸部62は、カム61の窪み部分61aに当接している。図11の(b)は少載時にローラ軸31aが回転すると同時にカム61が回転し始め、圧板63の先端の凸部62がカム61に追従して動き、圧板63が上昇し始めた状態を示す図である。また、図12の(a)は、この後、ローラ軸31aが少し回転して圧板上のシートSがシート給送ローラ31に当接する直前の状態を示した図である。このとき、凸部62のうち摩擦係数の高い第2当接面62aがカム61の傾斜部分61bに接するようになり、これにより凸部62とカム61との間には、圧板バネ37のバネ力に応じた大きさの摩擦力が生じる。
【0041】
なお、図12の(b)において、fNはカム61の凸部62に対する垂直抗力であり、摩擦係数をμとすると、カム61の回転抵抗力はμfNとなる。そして、この垂直抗力fNと、回転抵抗力μfNとにより、凸部62には力fが発生し、この結果、圧板バネ37のバネ力による圧板上昇力Fの大きさが弱くなる。これにより、シート給送ローラ31にシートSが当接する際の速度が減速されて衝撃が弱くなり、衝突音も小さくなる。
【0042】
なお、シート給送ローラ31にシートSが当接した後は、図13の(a)に示すようにカム61は、ローラ軸31aの回転に伴って凸部62から離れた位置に移動し、これにより圧板40はシート給送ローラ31によって位置が決められる。この後、ローラ軸31aの回転が進み、シート給送ローラ31によってシートSが搬送され、シートSの先端が次の搬送ローラ対19に到達すると、図13の(b)に示すようにカム61の押し下げ部分61dが凸部62の第1当接面62bに当接する。そして、この後、更にローラ軸31aが回転すると、カム61の押し下げ部分61dよって上方から押圧されることにより、圧板63は押し下げられる。
【0043】
ここで、少載時の場合、圧板63とローラ軸31aとの距離は、満載時に比べて短いので、圧板63を押し下げ始めるタイミングが早くなる。また、圧板バネ35のバネ力に抗して圧板63を押し下げる際、少載時の場合はシートSの加重が少ない分ためローラ軸31aには大きな負荷がかかる。しかし、このとき既述したようにカム61の押し下げ部分61d及び凸部62の第1当接面62bは摩擦係数が低いので、摩擦力を低く抑えながら、ローラ軸31aにかかる負荷を最低限にとどめることができる。なお、ローラ軸31aが一回転すると、圧板63は、元のシート給送待機状態に戻ると共に、不図示の駆動機構によるシート給送ローラ31の駆動が停止され、次に給紙信号が送られるまでシート給送動作は停止する。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態では、圧板63を上昇させる際、カム61に凸部62の第2当接面62aを当接させることにより、カム61と凸部62との間で圧板63に作用する圧板バネ35による付勢力を低減させる摩擦力を発生させるようにしている。これにより、圧板を昇降させる際の最大負荷トルクは維持したまま、シートSがシート給送ローラ31に当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することができる。この結果、安定したシート給送性能と静かさを兼ね備えた手差し給紙部(シート給送装置)を低コストで提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
30…手差し給紙部、30A…昇降機構、31…シート給送ローラ、33…手差しトレイ、35…圧板バネ、37…カム、37b…傾斜部分、40…圧板、42…圧板コロ、50…凸部、61…カム、62…凸部、62a…第2当接面、62b…第1当接面、63…圧板、100…フルカラーレーザプリンタ、101…フルカラーレーザプリンタ本体、102…画像形成部、S…シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置及び画像形成装置に関し、特にシートを支持するシート支持部を、シートを給送する際には上昇させ、シートの給送が終了すると下降させる昇降機構の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、複写機、FAX等の画像形成装置においては、複数枚のシートを支持するシート支持部からシートを1枚ずつ分離して送り出し、画像形成部に給送するためのシート給送装置を備えている。従来のシート給送装置としては、例えば傾斜したトレイにセットされたシートをシート給送ローラにより1枚ずつ給送すると共に、トレイのシート給送方向下流側にシート束先端部を突き当ててシートの位置を規制しているものがある。なお、このようなシート給送装置では、シート先端が突き当たる突き当て部のシート給送ローラ近傍に傾斜を設けることにより、シートがシート給送ローラ側に進入しやすくなるようにしている。
【0003】
このような傾斜したトレイにセットされたシートをシート給送ローラにより1枚ずつ給送するシート給送装置としては、画像形成装置本体の側面に設けられ、手差しシートを給送するようにした手差し給送装置が一般的である。なお、この手差し給送装置は、同一シートを大量に給送することよりも、大きさ、表面性、厚み、材質等が異なる多種多様なシートを手軽に給送できるように構成することが重視される。ここで、手差し給送装置はコストを抑えつつ、シートを1枚ずつ給送することができるように、シートを1枚給紙するたびに、手差しトレイの先端に設けられているシート支持部である圧板を上昇させ、シートをシート給送ローラに押し付けるようにしている。そして、この後、シート給送ローラを回転することでシートを給送すると共に、シートの給送が終わると、圧板を下降させ、シートをシート給送ローラから離間させるようにする。
【0004】
図14は、このような圧板を、シートを給送する際には上昇させ、シートの給送が終了すると下降させる昇降機構を備えた従来の手差し給送装置の構成を示す図である。手差し給送装置300は、図14の(a)に示すように、シート給送方向の下流側が下方になるように傾斜している手差しトレイ33と、シート給送ローラ301と、手差しトレイ33の先端に設けられている圧板302と、制御カム307を備えている。ここで、制御カム307は、ローラ軸309と同軸上に固定されており、シート給送ローラ301の回転と同期して回転動作する。また、圧板302は先端の両脇に、制御カム307に追従し、制御カム307と共に昇降機構を構成するカムフォロアとしてコロ308を有しており、コロ308は圧板302に軸支され、回転自在となっている。なお、圧板302はバネ312で両端を上方に付勢されており、待機状態においては制御カム307により押し下げられた状態となっている。
【0005】
そして、手差しトレイ33にシート(束)をセットした後、給紙信号が送られてくると、シート給送ローラ301が回転する。これに伴い、シート給送ローラ301と同軸上に固定された制御カム307も一緒に回転し、制御カム307のカム面にコロ308が追従することにより、バネ312により圧板302が上昇する。そして、この圧板302の上昇により、回転しているシート給送ローラ301にシートが接すると、シートはシート給送ローラ301により送り出される。なお、このようにシート給送ローラ301にシートが接する時には、圧板302に軸支されたコロ308は制御カム307から一旦離れるようになっている。この後、さらにシート給送ローラ301が回転し、シート先端が次の搬送ローラ対311に到達すると、再び、制御カム307のカム面がコロ308に当接し、バネ312に抗しながら圧板302が押し下げられる。これにより、シートがシート給送ローラ301から離れ、この後、シート給送ローラ301が一回転し、待機状態に戻る。
【0006】
ところで、このような手差し給送装置300において、制御カム307がバネ312の付勢力に抗して圧板302を押し下げるためには、制御カム307には大きな駆動トルクが必要となる。このため、従来は回転自在に軸支したコロ308をカムフォロアとし、制御カム307のカム面とカムフォロア面の摩擦力が働かない状態とすることにより、制御カム307及びシート給送ローラ301を駆動する駆動トルクが大きくならないようにしている。
【0007】
しかし、圧板302が上昇する時、バネ312の付勢力と、コロ308が自在に回転することで、圧板302が勢いよく上昇する場合があった。この場合、特にシートの積載量が少量の場合には、圧板302上のシートがシート給送ローラ301に当接するときに、衝突音が発生する。なお、近年、画像形成装置においては、静穏化が求められており、静穏化のレベルを向上させようとすると、コストをかけて改善する必要があった。そこで、このような衝突音をコストをかけることなく、簡単な構成で低減するため、図14の(b)に示すように、左右の制御カム307a,307bのプロファイルを異なる形状としている(特許文献1)。なお、このようなプロファイルの制御カム307a,307bによれば、シート給送ローラ301に対し、圧板上のシートの手前側部分が先に、奥側部分がその後に当接するようになる。このため、圧板302がシート給送ローラ301に当接する時の衝撃は分散され、衝突音は低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−250859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このような従来のシート給送装置及び画像形成装置においては、衝突音は低減されるが、シート給送ローラ301へのシートの当接タイミングが異なるようになる。そして、このように当接タイミングが異なる場合、特に高速給紙において、シートがシート給送ローラ301に当接する際、シート給送ローラ301は回転状態であるため、シートが斜行する。このため、シートが斜行しないような特別な工夫が必要であった。
【0010】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートがシート給送ローラに当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することのできるシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シートを支持する昇降可能なシート支持部と、前記シート支持部と共に上昇したシートを送り出すシート給送ローラと、シートを給送する際、シートを前記シート給送ローラに圧接させるように前記シート支持部を上昇させ、シートの給送が終了すると前記シート支持部を下降させる昇降機構と、を備えたシート給送装置において、前記昇降機構は、前記シート給送ローラと一体に回転するカム部材と、前記シート支持部に、前記カム部材に接離可能に当接するように設けられ、前記カム部材の回転に伴って前記シート支持部を下降させ、かつ前記シート支持部を上昇させるときには前記カム部材から離間する第1当接部と、前記シート支持部に設けられ、前記シート支持部を上昇させるときには、前記カム部材に当接する第2当接部と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のように、シート支持部を上昇させる際、第2当接部をカム部材に当接させてカム部材と第2当接部との間で摩擦力を発生させることにより、シートがシート給送ローラに当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザービームプリンタの全体構成図。
【図2】上記フルカラーレーザービームプリンタに設けられた手差し給紙部の構成を説明する図。
【図3】上記手差し給紙部に設けられたカムの形状を説明する図。
【図4】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第1の図。
【図5】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第2の図。
【図6】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第3の図。
【図7】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第4の図。
【図8】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第5の図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置である手差し給紙部の構成を説明する図。
【図10】上記手差し給紙部に設けられたカムの形状及びカムフォロアを説明する図。
【図11】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第1の図。
【図12】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第2の図。
【図13】上記カムのシート給送動作の際の作用を説明する第3の図。
【図14】従来の手差し給送装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の一例であるフルカラーレーザービームプリンタの全体構成図である。図1において、100はフルカラーレーザプリンタ、101はフルカラーレーザプリンタ本体(以下、プリンタ本体という)であり、プリンタ本体101には、シートに画像を形成する画像形成部102、シートを給送する給紙部103等が設けられている。画像形成部102は、像担持体である感光体ドラム1(1a〜1d)等を備え、プリンタ本体101に着脱可能に装着されたイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のトナー画像を形成するプロセスカートリッジ3(3a〜3d)を備えている。また、画像形成部102は、プロセスカートリッジ3の鉛直下方に配置され、画像情報に基づいてレーザービームを照射し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成するスキャナユニット9を備えている。
【0015】
ここで、各プロセスカートリッジ3は、現像ユニット4(4a〜4d)と、クリーナユニット5(5a〜5d)によって構成されている。そして、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像ユニット4は、現像ローラ6(6a〜6d)と、現像剤塗布ローラ7(7a〜7d)及びトナー容器を有している。クリーナユニット5は、感光体ドラム1と、感光体ドラム表面を均一に帯電する帯電ローラ2(2a〜2d)と、ドラムクリーニングブレード8(8a〜8d)と、廃トナー容器とを有している。
【0016】
また、図1において、10は中間転写ベルトユニットであり、この中間転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト10eと、中間転写ベルト10eの内側に配設された一次転写ローラ10(10a〜10d)を備えている。なお、中間転写ベルト10eは、駆動ローラ10f、テンションローラ10gに張架されており、テンションローラ10gが矢印方向に張力をかけている。
【0017】
また、一次転写ローラ10は、各感光体ドラム1に対向して配設されており、不図示のバイアス印加手段により転写バイアスを印加する構成となっている。そして、この1次転写ローラ10によって中間転写ベルト10eに1次転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の各色トナー像が順次中間転写ベルト10eに転写され、これにより中間転写ベルト上にはフルカラー画像が形成される。
【0018】
また、13は駆動ローラ10fと2次転写ローラ13aとにより構成され、順次中間転写ベルト10eに形成されたフルカラー画像をシートに転写する2次転写部である。15は、シート上に形成した画像に熱及び圧力を加えてトナー像を定着させる定着部であり、内部に不図示のヒータを内蔵した加熱ローラ15aと、加熱ローラ15aに圧接する加圧ローラ15bとを有している。104は、定着部15において画像が定着されたシートを、プリンタ本体上面に着脱自在に取り付けられたシート積載部18に排出するシート排出部である。このシート排出部104は、シート排出手段である排出ローラ対17、スイッチバックローラ対19、反転搬送路41等を備えている。
【0019】
給紙部103は、カセット給紙部20と、プリンタ本体101の側面に設けられ、手差しシートを給送するようにした手差し給紙部30とを備えている。なお、カセット給紙部20は、プリンタ本体101に着脱可能に装着された給紙カセット21と、給紙カセット21に収納されたシートSを給送するシート給送ローラ22等を有している。そして、給紙カセット21に収納されたシートSを給送する際は、シートSに圧接しているシート給送ローラ22を回転させてシートを送り出すようにしている。このように送り出されたシートSは、この後、シート給送ローラ22及びシート給送ローラ22に圧接する分離ローラ23により構成される分離部によって一枚ずつ分離されて搬送された後、レジストローラ対14に搬送される。
【0020】
また、シート給送装置である手差し給紙部30は、シート給送方向の下流側が下方になるように傾斜している手差しトレイ33と、手差しトレイ33のシート給送方向下流側に上下方向に回動自在に設けられ、シートを支持する圧板40を備えている。そして、シートを給送する際は、昇降可能なシート支持部である圧板40が持ち上がり、圧板上に積載されたシートをシート給送ローラ31に圧接させ、この後、シートに圧接しているシート給送ローラ31を回転させてシートを送り出すようにしている。なお、このように送り出されたシートは、この後、不図示の分離パットによって一枚ずつ分離されて搬送された後、搬送ローラ対19によりレジストローラ対14に搬送される
次に、このように構成されたフルカラーレーザプリンタ100の画像形成動作について説明する。不図示のパソコン等から画像信号がスキャナユニット9に入力されると、スキャナユニット9から、画像信号に対応したレーザ光が感光体ドラム上に照射される。このとき感光体ドラム1は、帯電ローラ2により表面が予め所定の極性・電位に一様に帯電されており、スキャナユニット9からレーザ光が照射されることによって表面に静電潜像が形成される。
【0021】
この後、この静電潜像を現像ユニット4により現像し、可視化する。例えば、まず感光体ドラム1aに、原稿のイエロー成分色の画像信号によるレーザ光をスキャナユニット9から照射し、感光体ドラム1a上にイエローの静電潜像を形成する。そして、このイエローの静電潜像を、現像ユニット4aからのイエロートナーにより現像し、イエロートナー像として可視化する。この後、感光体ドラム1aの回転に伴ってトナー像が感光体ドラム1aと中間転写ベルト10eとが当接する1次転写部に到来すると、1次転写ローラ10aに印加した1次転写バイアスにより、感光体ドラム上のイエロートナー像が中間転写ベルト上に転写される。
【0022】
次に、中間転写ベルト10eのイエロートナー像を担持した部位が移動すると、このときまでに上記と同様な方法で感光体ドラム1b上に形成されたマゼンタトナー像がイエロートナー像上から中間転写ベルト10eに転写される。同様に、中間転写ベルト10eが移動するにつれて、それぞれ1次転写部においてシアントナー像、ブラックトナー像が、イエロートナー像、マゼンタトナー像上に重ね合わせて転写される。これにより、中間転写ベルト上にフルカラートナー画像が形成される。なお、トナー像転写後に、感光体ドラム表面に残ったトナーは、クリーナユニット5によって除去される。
【0023】
また、このトナー画像形成動作に並行して給紙カセット21に収容されたシートSはシート給送ローラ22により送り出された後、分離ローラ23によって一枚ずつ分離されて搬送される。そして、分離されたシートSは、レジストローラ対14に搬送される。なお、手差し給紙部30の圧板上に積載されたシートSは、シート給送ローラ31により送り出された後、搬送ローラ19を通過してレジストローラ対14に搬送される。
【0024】
次に、このようにしてレジストローラ対14に搬送されたシートは、レジストローラ対14によりタイミングを合わされた後、2次転写部13に搬送される。そして、2次転写部13において、2次転写ローラ13aに正極性のバイアスを印加することにより、搬送されたシートSに、中間転写ベルト10e上の4色のトナー像が2次転写される。なお、シートSへの2次転写の後、中間転写ベルト上に残ったトナーは、転写ベルトクリーニング装置11によって除去され、除去されたトナーは、不図示の廃トナー回収容器へと回収される。トナー像転写後のシートSは、定着部15に搬送され、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとによって加熱、加圧されてその表面にフルカラーのトナー像が定着される。次に、このようにフルカラーのトナー像が定着された後、シートSはシート排出部104に設けられた排出ローラ対17によってシート積載部18に排出積載される。
【0025】
図2は、手差し給紙部の構成を説明する図である。図2に示すように、手差しトレイ33は、一端がプリンタ本体101に支持されたヒンジ34の他端36を摺動可能に支持することにより、回動軸33aを支点にプリンタ本体101に回動可能に支持されている。なお、この手差しトレイ33は、手差し給紙部30がプリンタ本体内に収納されたとき、プリンタ本体101の外装を構成するカバーとなるものである。また、圧板40は、ヒンジ34の他端36を中心として手差しトレイ33に回動可能に支持されると共に、手差しトレイ33の開動作に伴って図2に示すシート給送待機位置に移動し、手差しトレイ33の閉動作に伴ってプリンタ本体内部へ収納される。
【0026】
なお、図2において、41は、圧板40に設けられ、圧板40に積載するシートの幅方向の位置を整列させるサイド規制板である。37はシート給送ローラ31のローラ軸31aと同軸上に支持され、シート給送ローラ31と一体に回転するカム(カム部材)、42は圧板40のシート給送方向と直交する幅方向の両脇に設けられた第1当接部を構成する回転部材である圧板コロである。35は圧板40を上方に向けて付勢する付勢部材である圧板バネであり、この圧板バネ35によって上方に向けて付勢力を受けることにより、圧板コロ42がカム37と接離可能に当接する。そして、このように圧板コロ42がカム37と当接することにより、圧板40の位置が、圧板上のシートがシート給送ローラ31から離間する位置に保たれる。
【0027】
ここで、カム37は、図3に示すように、圧板コロ42が当接し、圧板40を待機位置に保持する窪み部分37a、カム37の回転に伴って圧板40を上昇させる傾斜部分37bを備えている。また、カム37は、圧板40が所定のシート給送可能位置まで上昇した際、圧板上のシートSがシート給送ローラ31に確実に当接できるように、圧板コロ42が当接することのないようにする小径部分37cを備えている。さらに、シート給送ローラ31によりシートを給送した後、圧板40を待機位置まで押し下げるための押し下げ部分37dを備えている。なお、図2において、50は、圧板40の先端の、圧板コロ42の側方に突設された第2当接部を構成する非回転部材である凸部である。
【0028】
この凸部50は、後述するように圧板40を上昇させるときに圧板コロ42がカム37から離間した際、カム37の傾斜部分37bと当接するようになっている。そして、このように凸部50が、圧板40を上昇させるとき、カム37の第2カム面を構成する傾斜部分37bに当接することにより、凸部50はカム37との間に摩擦力を生じるようになる。なお、圧板バネ35と、カム37と、圧板コロ42、凸部50とにより、シートをシート給送ローラ31に当接させるように圧板40を上昇させ、シートの給送が終了すると圧板40を下降させる昇降機構30Aが構成される。
【0029】
このように構成された手差し給紙部30において、既述したように画像情報が入力され、給紙信号が送られてくると、不図示のモータと、シート給送ローラ31を1回転駆動する不図示の駆動機構により、ローラ軸31aが時計回りに回転する。そして、このようにローラ軸31aが回転すると、同軸上に接続されたカム37も時計回りに回転し、これにより圧板40が、圧板バネ35によって上昇し始める。更に、ローラ軸31aの回転が進むと、圧板40上のシートが1回転駆動されるシート給送ローラ31に圧接されて送り出され、この後、分離パット32により一枚ずつ分離され、搬送ローラ対19まで搬送される。なお、シート先端が搬送ローラ対19に到達すると、カム37によって圧板40が圧板バネ35に抗しながら押し下げられ、シートはシート給送ローラ31から離間し、この後、ローラ軸31aが一回転することにより、圧板40は待機位置に戻る。
【0030】
この一連のシート給送動作の際のカム37の作用を、図4〜図8を用いて更に詳しく説明する。図4の(a)は満載時のシート給送待機状態を示す図であり、このとき圧板40の先端の圧板コロ42は、カム37の窪み部分37aに当接している。図4の(b)は満載時にローラ軸31aが回転すると同時にカム37が回転し始め、圧板コロ42がカム37に追従して動き、圧板40が上昇し始めた状態を示す図である。図4の(c)は満載時に、圧板40上のシートがシート給送ローラ31に当接した時の状態を示した図である。ここで、シートSがシート給送ローラ31に当接した時、シートSの重量により、圧板バネ35による圧板40を上方に付勢する力が低減している。また、シートSがシート給送ローラ31に当接するタイミングは、圧板40の上昇が始まってすぐのタイミングであり、さらにシートSはクッション性を有している。したがって、シートSがシート給送ローラ31に当接するときの衝撃は非常に小さく、衝突音はほとんど発生しない。つまり、満載時においては、衝突音はほとんど発生しない。
【0031】
シート給送ローラ31にシートSが当接した後は、図5の(a)に示すようにカム37は、ローラ軸31aの回転に伴って圧板コロ42から離れた位置に移動する。これにより、圧板40はシート給送ローラ31によって位置が決められる。この後、ローラ軸31aの回転が進み、シート給送ローラ31によってシートSが搬送され、シートSの先端が次の搬送ローラ対19に到達すると、図5の(b)に示すように、第1カム面であるカム37の押し下げ部分37dが圧板コロ42に当接する。そして、更にローラ軸31aの回転が進むと、既述した図4の(a)に示すように、カム37により圧板40は押し下げられ、シートSはシート給送ローラ31より離間する。なお、ローラ軸31aが一回転すると、圧板40は、元のシート給送待機状態に戻ると共に、不図示の駆動機構によるシート給送ローラ31の駆動が停止され、次に給紙信号が送られるまでシート給送動作は停止する。
【0032】
このようなシート給送動作が順次行われると、手差しトレイ上のシートが減少し、少載状態となる。図6の(a)は、手差しトレイ上のシートが減少して少載状態となった時のシート給送待機状態を示す図であり、このとき圧板40の先端の圧板コロ42は、カム37の窪み部分37aに当接している。図6の(b)は、少載時にローラ軸31aが時計回りに回転すると同時にカム37も回転し始め、圧板40の先端の圧板コロ42がカム37に追従して動き、圧板40が上昇し始めた状態を示す図である。また、図7の(a)は、この後、ローラ軸31aが少し回転して圧板40上のシートSがシート給送ローラ31に当接する直前の状態を示した図である。このとき、圧板コロ42がカム37から離れ、圧板40の先端の圧板コロ42の側方に設けられた非回転の凸部50がカム37と接する。この後、さらにローラ軸31aが回転すると、図7の(b)に示すように、凸部50が第2カム面であるカム37の傾斜部分37bに接するようになり、これにより凸部50とカム37との間には、圧板バネ37のバネ力に応じた大きさの摩擦力が生じる。
【0033】
なお、図7の(b)において、fNはカム37の凸部50に対する垂直抗力であり、摩擦係数をμとすると、カム37の回転抵抗力はμfNとなる。そして、この垂直抗力fNと、回転抵抗力μfNとにより、凸部50には圧板40の上昇を妨げる力fが発生し、この結果、圧板バネ37のバネ力による圧板上昇力Fの大きさが、圧板コロ40がカム37の傾斜部分37bに接しているときに比べて弱くなる。これにより、シート給送ローラ31にシートSが当接する際の速度が減速されて衝撃が弱くなり、衝突音も小さくなる。なお、このとき、カム37の回転方向に不図示のダンパを設けるようにすると、さらに衝突音を小さくすることができる。このように、圧板40の先端に非回転の凸部50を設けることにより、カム37の形状はそのままであることから、給紙タイミングは変わらないまま、シート給送動作の際の静音化を図ることができる。
【0034】
なお、シート給送ローラ31にシートSが当接した後は、図8の(a)に示すようにカム37は、ローラ軸31aの回転に伴って圧板コロ42から離れた位置に移動する。これにより、圧板40はシート給送ローラ31によって位置が決められる。この後、ローラ軸31aの回転が進み、シート給送ローラ31によってシートSが搬送され、シートSの先端が次の搬送ローラ対19に到達すると、図8の(b)に示すようにカム37の押し下げ部分37dが圧板コロ42に当接する。そして、この後、更にローラ軸31aが回転すると、カム37の押し下げ部分37dよって圧板コロ42が上方から押圧されることにより、圧板40は押し下げられる。
【0035】
ここで、少載時の場合、図8の(b)で示される圧板40とローラ軸31aとの距離は、図5の(b)で示される満載時の距離に比べて短いので、カム37により圧板40を押し下げ始めるタイミングは、満載時に比べて早くなる。また、圧板バネ35のバネ力に抗して圧板35を押し下げる際、少載時の場合はシートSの加重が少ない分ためローラ軸31aには大きな負荷がかかる。しかし、このときはカム37の押し下げ部分37dに圧板コロ42が接するようになっており、圧板コロ42が回転することにより、カム37の押し下げ部分37dに対して摩擦力が働くことなく、ローラ軸31aにかかる負荷を最低限にとどめることができる。なお、ローラ軸31aが一回転すると、圧板40は、元のシート給送待機状態に戻ると共に、不図示の駆動機構によるシート給送ローラ31の1回転駆動が停止され、次に給紙信号が送られるまでシート給送動作は停止する。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態においては、圧板40を上昇させる際、カム37に凸部50を当接させることにより、カム37と凸部50との間で、圧板40に作用する圧板バネ35による付勢力を低減させる摩擦力を発生させるようにしている。これにより、圧板を昇降させる際の最大負荷トルクは維持したまま、シートSがシート給送ローラ31に当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することができる。この結果、安定したシート給送性能と静かさを兼ね備えた手差し給紙部(シート給送装置)を低コストで提供することができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は、本実施の形態に係るシート給送装置である手差し給紙部の構成を説明する図である。なお、図9において、既述した図2と同一符号は、同一または相当部分を示している。図9において、63は圧板であり、61は圧板63を昇降させるカム(カム部材)である。この圧板63には、カム61に当接する凸部62が形成されている。この凸部62は、図10の(a)に示すように、圧板63が上昇する際に、カム61と接する第2当接部を構成する第2当接面62aと、圧板63が押し下げられる際にカム61と接する第1当接部を構成する第1当接面62bを備えている。なお、本実施の形態において、第2当接面62aの表面の摩擦係数を高く、第1当接面62bの摩擦係数を低くなるようにしている。
【0038】
一方、カム61は、図10の(b)に示すように、凸部62が当接し、圧板63を待機位置に保持する窪み部分61a、カム61の回転に伴って圧板63を上昇させる傾斜部分61bを備えている。また、カム61は、圧板63が所定のシート給送可能位置まで上昇した際、圧板上のシートSがシート給送ローラ31に確実に当接できるように、凸部62が当接することのないようにする小径部分61cを備えている。さらに、シート給送ローラ31によりシートを給送した後、圧板63を待機位置まで押し下げるための押し下げ部分61dを備えている。
【0039】
ここで、カム61の斜面部分61bは、圧板63を上昇させる際、凸部62を摺動させながら圧板63を上昇させるようになっており、この斜面部分61bの表面には摩擦係数の高いシートが貼り付けられている。そして、このように斜面部分61bの表面に摩擦係数の高いシートを貼り付けることにより、凸部62はカム61との間に摩擦力を生じるようになっている。なお、カム61は、斜面部分以外の部分の表面が、凸部62との間の摩擦による摺動負荷を低減できるように摩擦係数の低い材質で形成されている。これにより、第1カム面であるカム61の押し下げ部分61dと第1当接面62bとの間の摩擦力よりも、第2カム面であるカム61の傾斜部分61bと第2当接面62aとの間の摩擦力を大きくすることができる。
【0040】
次に、このような構成のカム61の、シート給送動作の際の作用を、図11〜図13を用いて更に詳しく説明する。図11の(a)は手差しトレイ上のシートが減少して少載状態となった時のシート給送待機状態を示す図であり、このとき圧板63の先端の凸部62は、カム61の窪み部分61aに当接している。図11の(b)は少載時にローラ軸31aが回転すると同時にカム61が回転し始め、圧板63の先端の凸部62がカム61に追従して動き、圧板63が上昇し始めた状態を示す図である。また、図12の(a)は、この後、ローラ軸31aが少し回転して圧板上のシートSがシート給送ローラ31に当接する直前の状態を示した図である。このとき、凸部62のうち摩擦係数の高い第2当接面62aがカム61の傾斜部分61bに接するようになり、これにより凸部62とカム61との間には、圧板バネ37のバネ力に応じた大きさの摩擦力が生じる。
【0041】
なお、図12の(b)において、fNはカム61の凸部62に対する垂直抗力であり、摩擦係数をμとすると、カム61の回転抵抗力はμfNとなる。そして、この垂直抗力fNと、回転抵抗力μfNとにより、凸部62には力fが発生し、この結果、圧板バネ37のバネ力による圧板上昇力Fの大きさが弱くなる。これにより、シート給送ローラ31にシートSが当接する際の速度が減速されて衝撃が弱くなり、衝突音も小さくなる。
【0042】
なお、シート給送ローラ31にシートSが当接した後は、図13の(a)に示すようにカム61は、ローラ軸31aの回転に伴って凸部62から離れた位置に移動し、これにより圧板40はシート給送ローラ31によって位置が決められる。この後、ローラ軸31aの回転が進み、シート給送ローラ31によってシートSが搬送され、シートSの先端が次の搬送ローラ対19に到達すると、図13の(b)に示すようにカム61の押し下げ部分61dが凸部62の第1当接面62bに当接する。そして、この後、更にローラ軸31aが回転すると、カム61の押し下げ部分61dよって上方から押圧されることにより、圧板63は押し下げられる。
【0043】
ここで、少載時の場合、圧板63とローラ軸31aとの距離は、満載時に比べて短いので、圧板63を押し下げ始めるタイミングが早くなる。また、圧板バネ35のバネ力に抗して圧板63を押し下げる際、少載時の場合はシートSの加重が少ない分ためローラ軸31aには大きな負荷がかかる。しかし、このとき既述したようにカム61の押し下げ部分61d及び凸部62の第1当接面62bは摩擦係数が低いので、摩擦力を低く抑えながら、ローラ軸31aにかかる負荷を最低限にとどめることができる。なお、ローラ軸31aが一回転すると、圧板63は、元のシート給送待機状態に戻ると共に、不図示の駆動機構によるシート給送ローラ31の駆動が停止され、次に給紙信号が送られるまでシート給送動作は停止する。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態では、圧板63を上昇させる際、カム61に凸部62の第2当接面62aを当接させることにより、カム61と凸部62との間で圧板63に作用する圧板バネ35による付勢力を低減させる摩擦力を発生させるようにしている。これにより、圧板を昇降させる際の最大負荷トルクは維持したまま、シートSがシート給送ローラ31に当接する際の衝突音を簡単な構成で低減することができる。この結果、安定したシート給送性能と静かさを兼ね備えた手差し給紙部(シート給送装置)を低コストで提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
30…手差し給紙部、30A…昇降機構、31…シート給送ローラ、33…手差しトレイ、35…圧板バネ、37…カム、37b…傾斜部分、40…圧板、42…圧板コロ、50…凸部、61…カム、62…凸部、62a…第2当接面、62b…第1当接面、63…圧板、100…フルカラーレーザプリンタ、101…フルカラーレーザプリンタ本体、102…画像形成部、S…シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを支持する昇降可能なシート支持部と、前記シート支持部と共に上昇したシートを送り出すシート給送ローラと、シートを給送する際、シートを前記シート給送ローラに圧接させるように前記シート支持部を上昇させ、シートの給送が終了すると前記シート支持部を下降させる昇降機構と、を備えたシート給送装置において、
前記昇降機構は、
前記シート給送ローラと一体に回転するカム部材と、
前記シート支持部に、前記カム部材に接離可能に当接するように設けられ、前記カム部材の回転に伴って前記シート支持部を下降させ、かつ前記シート支持部を上昇させるときには前記カム部材から離間する第1当接部と、
前記シート支持部に設けられ、前記シート支持部を上昇させるときには、前記カム部材に当接する第2当接部と、を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記第1当接部を回転部材により構成し、前記第2当接部を非回転部材により構成することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記シート支持部に前記カム部材に接離可能に当接する凸部を形成し、前記凸部の、前記シート支持部が下降するとき前記カム部材に当接する部分を前記第1当接部とし、前記シート支持部が上昇するとき前記カム部材に当接する部分を前記第2当接部とすることを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記カム部材は、前記第1当接部が当接する第1カム面と、前記第2当接部が当接する第2カム面とを備え、
前記第1カム面と前記第1当接部との間の摩擦力よりも、前記第2カム面と前記第2当接部との間の摩擦力を大きくすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート給送装置と、前記シート給送装置から送り出されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
シートを支持する昇降可能なシート支持部と、前記シート支持部と共に上昇したシートを送り出すシート給送ローラと、シートを給送する際、シートを前記シート給送ローラに圧接させるように前記シート支持部を上昇させ、シートの給送が終了すると前記シート支持部を下降させる昇降機構と、を備えたシート給送装置において、
前記昇降機構は、
前記シート給送ローラと一体に回転するカム部材と、
前記シート支持部に、前記カム部材に接離可能に当接するように設けられ、前記カム部材の回転に伴って前記シート支持部を下降させ、かつ前記シート支持部を上昇させるときには前記カム部材から離間する第1当接部と、
前記シート支持部に設けられ、前記シート支持部を上昇させるときには、前記カム部材に当接する第2当接部と、を備えたことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記第1当接部を回転部材により構成し、前記第2当接部を非回転部材により構成することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記シート支持部に前記カム部材に接離可能に当接する凸部を形成し、前記凸部の、前記シート支持部が下降するとき前記カム部材に当接する部分を前記第1当接部とし、前記シート支持部が上昇するとき前記カム部材に当接する部分を前記第2当接部とすることを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記カム部材は、前記第1当接部が当接する第1カム面と、前記第2当接部が当接する第2カム面とを備え、
前記第1カム面と前記第1当接部との間の摩擦力よりも、前記第2カム面と前記第2当接部との間の摩擦力を大きくすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート給送装置と、前記シート給送装置から送り出されたシートに画像を形成する画像形成部と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−131949(P2011−131949A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290293(P2009−290293)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]