シート給送装置及び画像形成装置
【課題】シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシート給送装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】正逆転可能な給送ローラ2の引き抜き方向下流側に、給紙カセット1の底板5に載置されているシートPの上面を押圧することにより、シートPの引き抜き方向への動きを規制し、シートPを撓ませるシート押さえ部Tを設ける。そして、このシート押さえ部TによるシートPの押え位置を、シートPの剛性が低いほど、給送ローラ2に近い位置とする。
【解決手段】正逆転可能な給送ローラ2の引き抜き方向下流側に、給紙カセット1の底板5に載置されているシートPの上面を押圧することにより、シートPの引き抜き方向への動きを規制し、シートPを撓ませるシート押さえ部Tを設ける。そして、このシート押さえ部TによるシートPの押え位置を、シートPの剛性が低いほど、給送ローラ2に近い位置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置に関し、特に給送ローラを逆回転させてシートを引き抜いた後、給送ローラを正回転させてシートを1枚ずつ分離する方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、ファックス、複写機等の画像形成装置においては、シート収納部に収納されたシートを画像形成部に向けて給送するためのシート給送装置を備えている。そして、このようなシート給送装置では、シートを1枚ずつ安定して給送することが非常に重要であることから、複数枚の記録紙等のシートを同時に搬送してしまう重送を防ぐための、様々な方法が取られている。
【0003】
また、近年は、プリンタやファックス等が一般家庭へ普及し、画像装置本体(以下、装置本体という)の、より一層の小型化が求められている。これに伴い、シート給送装置においては、重送を防ぎ安定したシート給送を行うことの他、小型化も重要とされている。そこで、例えばシートを載置する給紙カセットを備えたシート給送装置においては、特に装置本体の奥行きが給紙カセットの奥行きを越えないことが求められている。
【0004】
ここで、装置本体の奥行きを給紙カセットの奥行き内に収めるシート給送装置として、例えば、シート給送の際、一旦、シートをシート給送方向と反対に引いた後、シート給送方向に搬送する構成のものがある(特許文献1参照)。なお、このようなシート給送装置では、正逆転可能なシート給送ローラと、給紙カセットの後部壁と、給紙カセットのシート給送方向下流側に位置する分離爪を備えている。
【0005】
そして、シート給送の際、まず給送ローラを逆転させて給紙カセット内のシートをシート給送方向と反対に引く。ここで、このようにシートをシート給送方向と反対に引いた場合、給紙カセットに収納された最上位のシートの先端は分離爪を抜け、またシートの後端は給紙カセットの後部壁に圧接し、最上位のシートは後部壁を支点に撓むようになる。この後、給送ローラを正回転させると、引き抜かれた最上位のシートは撓んだ状態から元の状態に戻りながら、先端が分離爪を乗り上げて搬送される。これにより、最上位のシートだけが給送される。
【0006】
なお、給送ローラが逆回転すると、最上位のシートよりも下にある少なくとも2枚目のシートも、最上位のシートとの摩擦力により、搬送されて撓みが生じる可能性がある。しかし、少なくとも2枚目のシートは、最上位のシートを介して給送ローラから受ける引き抜き方向の力に対し、撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力の方が大きいため、シートの先端が分離爪の先端を抜ける前に復元力により元の位置に戻る。よって、給送ローラが逆回転すると、最上位のシートと、2枚目シートとは分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−147752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような従来のシート給送装置において、最上位のシートをシート給送方向と反対に引いて撓ませた際、既述したように2枚目のシートには復元力が働くが、この復元力の大きさは、シートの種類によって大きく異なる。例えば、一般的に、同一の撓み量でも、薄いシートほど剛性(剛度)が低く(こしが弱く)、復元力が小さい。このため、撓み量が、通常のシートであれば復元力により元の位置に戻るような大きさの場合でも、薄いシートの場合は、2枚目のシートが、最上位のシートと共に撓んで先端が分離爪を抜けるようになる。そして、この状態で給送ローラがシート給送方向に回転すると、最上位のシートと共に2枚目のシートも給送され、重送が発生する場合がある。
【0009】
一方、一般的に厚いシートほど剛性が高く(こしが強く)、復元力が大きいため撓みにくい。このため、撓み量が、通常のシートであれば復元力により元の位置に戻るような大きさの場合、厚いシートの場合には、給送ローラがスリップし、最上位のシートの先端が分離爪を抜けることができず、シートの不送りが発生する場合がある。
【0010】
このように、2枚目のシートの復元力によりシートを分離する場合、撓み量が一定の場合、薄いシートの場合は重送が発生する場合があり、厚いシートの場合にはシートの不送りが発生する場合がある。つまり、2枚目のシートの復元力によりシートを分離する場合、安定した給送を行うことのできるシートの種類(剛性の範囲)が限られてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シートを載置するシート支持部と、前記シート支持部に載置されたシートの最上位のシートを送り出す正逆転可能な給送ローラと、前記シート支持部に載置されたシートのシート給送方向下流側端部を上方より押える分離爪と、を備え、前記給送ローラを逆回転させて最上位のシートを前記分離爪から引き抜いた後、前記給送ローラを正回転させて引き抜いたシートを前記分離爪の上面に沿って給送するシート給送装置において、前記給送ローラによるシートの引き抜き方向下流側で引き抜き方向に沿って移動可能に設けられ、前記シート支持部に載置されているシートの上面を押圧し、最上位のシートを前記分離爪から引き抜く際、シートの移動を規制してシートを撓ませるシート押え部を備え、前記シート押え部によるシートの押え位置を、給送するシートの剛性が低いほど、前記給送ローラに近い位置にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のように、シート押え部によるシートの押え位置をシートの剛性が低いほど、給送ローラに近い位置とすることにより、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシートの給送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】上記シート給送装置の構成を説明する図。
【図3】上記シート給送装置のシート給送動作を説明する図。
【図4】上記画像形成装置の制御ブロック図。
【図5】上記シート給送装置のシートが厚紙の場合のシート給送動作を説明する図。
【図6】上記画像形成装置に設けられたCPUの摩擦片の位置制御及びシート給送動作制御を示すフローチャート。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置の構成を説明する図。
【図8】上記シート給送装置に設けられた摩擦片ホルダーの構成を説明する図。
【図9】上記摩擦片ホルダーの揺動機構を説明する図。
【図10】上記摩擦片ホルダーの揺動機構の動作を説明する図。
【図11】上記画像形成装置に設けられたCPUの摩擦片の位置制御及びシート給送動作制御を示すフローチャート。
【図12】上記シート給送装置のシート給送動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。この画像形成装置50は、画像形成装置本体50Aと、画像形成部50Bと、画像形成部50Bに記録紙等のシートPを給送するシート給送装置100等を備えている。画像形成部50Bは、感光体ドラム(像担持体)61と、感光体ドラム61の表面を露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成するレーザスキャナユニット62等を備えている。
【0016】
シート給送装置100は、給紙カセット1及び給紙カセット1に収納されたシートPを、最上位のシートP1から1枚ずつ給送するシート給送部材である給送ローラ2を備えている。63は感光体ドラム61と共に、転写部を構成する転写ローラ、64は定着ローラ対である。70は、画像形成部50Bの画像形成動作、シート給送装置100のシート給送動作等を制御する制御部であるCPUである。
【0017】
次に、このように構成された画像形成装置50の画像形成動作を説明する。不図示のパソコン等から画像情報が送られ、この画像情報を画像形成処理したCPU70がプリント信号を発すると、レーザスキャナユニット62からの画像露光光により感光体ドラム61に潜像が形成される。この後、感光体ドラム上の潜像が、不図示の現像器によりトナーによって現像され、感光体ドラム上にトナー像が形成される。
【0018】
一方、CPU70がプリント信号を発すると、給送ローラ2が回転し、給紙カセット1に収納された最上位のシートP1が給送され、この最上位のシートP1は感光体ドラム61と転写ローラ63とにより構成される転写部に搬送される。そして、この転写部において、感光体ドラム上に形成されたトナー像がシートP1に転写され、この後、定着ローラ対64にて熱、圧力が加えられることにより、トナー像がシートP1に定着される。この後、画像が定着されたシートP1は、排紙ローラ対65により画像形成装置本体上面に設けられた積載トレイ66へと排出される。
【0019】
ところで、図2に示すように、給紙カセット1はシートPを載置するシート支持部である底板5と圧縮バネ6を備えている。そして、底板5を圧縮バネ6により付勢することにより、底板5に載置されたシートPの最上位のシートP1を給送ローラ2に押し付けるようにしている。また、給送ローラ2は、シートPを給送する矢印Rで示す正回転方向及びシートPをシート給送方向と反対方向(以下、引き抜き方向という)に搬送する矢印Lで示す逆回転方向に回転可能となっている。
【0020】
なお、シート給送装置100は、正逆転可能な給送ローラ2の引き抜き方向下流側に設けられ、給送ローラ2の逆回転によるシートPの引き抜き方向への移動を規制してシートPを撓ませるシート押え部Tを備えている。シート押え部Tは、シートPの上面に当接する摩擦片3と、摩擦片3を支持する摩擦片支持部材7、摩擦片ホルダー8とを備えている。摩擦片3は、摩擦片ホルダー8の内部に昇降可能に設けられ、かつ圧縮バネ9により下方に付勢されている摩擦片支持部材7の下面に取付けられている。そして、摩擦片支持部材7が圧縮バネ9により下方に付勢されることにより、摩擦片3は給紙カセット1に載置されたシートPを押圧する。
【0021】
シート押え部Tは、給紙カセット1の上方に配置されている移動機構Uによりシート給送方向に沿って移動可能に設けられている。移動機構Uは、シート給送方向に延設されたレール10と、レール10に取付けられた軸に設けられた従動プーリ14と、レール10に取付けられた駆動軸13に取付けられている駆動プーリ11との間に掛けられているタイミングベルト12とを備えている。さらに、駆動軸13に伝達する駆動源である摩擦片移動モータM2を備えている(図4を参照)。なお、シート押え部Tは、タイミングベルト12にビス15、又は溶着等で取付けられている。これにより、タイミングベルト12が回転すると、シート押え部Tはシート給送方向に沿って移動する。
【0022】
また、レール10は不図示のカム機構により、図2に示す摩擦片3がシートを押圧する第1の位置(押え位置)と、図3の(b)に示す摩擦片3が載置されたシートから離間する第2の位置(離間位置)の、2つの位置に移動可能となっている。つまり、シート押え部Tは、レール10と不図示のカム機構により構成される昇降部10Aにより、押え位置及び離間位置を移動する。
【0023】
また、シート給送装置100は、通常、給紙カセット1に収納されたシートPのシート給送方向下流側端部を上方から押圧し、シート給送時、後述するように最上位のシートP1が上面を通過することにより、シートPを分離させる分離爪4を備えている。ここで、分離爪4は、図2に示すように、給送ローラ2のシート給送方向下流側に位置し、載置されたシートPの上方に位置する分離爪支持台16に取付けられた圧縮バネ17によりシートPを上方より押えるようにしている。なお、本実施の形態において、この分離爪4の先端部の上面には、後述するように最上位のシートP1が分離爪4の上面を通過する際、シートがスムーズに分離爪4に乗り上げるように、PETシート等のシート材を貼り付けている。
【0024】
次に、このような構成のシート給送装置100のシートの給送動作について説明する。シートを給送する際は、まずCPU70は給送ローラ2を、図2の(a)に示す矢印L方向へ、シートPの先端が分離爪4の先端を抜けるまで逆回転させる。なお、本実施の形態では、この給送ローラ2の逆回転量は、CPU内に設けたタイマにより制御している。なお、センサ等を用いて、回転量を制御するなどしても良い。
【0025】
そして、このように給送ローラ2が逆回転すると、最上位のシートP1は引き抜き方向に移動する。ここで、このとき摩擦片3はシートPを押圧する位置にあるので、図2の(b)に示すように、最上位のシートP1は摩擦片3により引き抜き方向への搬送が規制され、給送ローラ2と摩擦片3の間で撓みが生じる。なお、給送ローラ2が逆回転すると、最上位のシートP1よりも下にある少なくとも2枚目のシートP2も、最上位のシートP1との摩擦力により、搬送されて撓みが生じる可能性がある。
【0026】
しかし、少なくとも2枚目のシートP2は、最上位のシートP1を介して給送ローラ2から受ける引き抜き方向の力に対し、撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力の方が大きいため、シートP2の先端が分離爪4の先端を抜けることは無い。よって、給送ローラ2が逆回転すると、最上位のシートP1と、2枚目シートP2とは分離される。
【0027】
次に、最上位のシートP1の先端が分離爪4の先端を抜けると、図3の(a)に示すように、給送ローラ2は矢印R方向へ正回転し、シートの給送を開始する。このとき、分離爪4の先端は2枚目のシートP2を押圧する状態となっているため、最上位のシートP1は分離爪4を乗り上げ搬送されていく。そして、このように最上位のシートP1が分離爪4を乗り上げて行くようになると、シート給送の負荷とならないように、レール10は図3の(b)に示す第2の位置に切り替えられ、最上位のシートP1から離間する。これにより、最上位のシートP1は、分離爪4の上面に沿って安定して給送される。
【0028】
ところで、既述したようにシートを一旦引き抜き方向に搬送する際、最上位のシートP1と共に2枚目のシートP2も引き抜き方向に移動する。ここで、引き抜き方向に回転させてシートを撓ませる際、シートP1,P2には、撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力が発生する。そして、この復元力はシートの種類、特に坪量によって大きく異なる。例えば、一般的に、通常使用されるシートでは、坪量が大きいシート(重いシート)ほどシートの厚さが厚くなって剛性(剛度)が高くなり、坪量が小さいシート(軽いシート)ほどシートの厚さが薄くなって剛性が低くなる。そのため、シートが薄紙の場合は剛性が低く(こしが弱く)、復元力は普通紙に比べ小さくなる。
【0029】
ここで、最上位のシートP1と2枚目のシートP2の間の摩擦力が相対的に大きく、2枚目のシートの復元力<シート間の摩擦力となってしまう場合がある。この場合、通常は復元力により戻る2枚目のシートP2が、剛性が低いため復元力により戻ることなく、撓み、この後、先端が分離爪4の先端を抜けるようになる。そして、この状態で給送ローラ2がシート給送方向に正回転すると、最上位のシートP1と共に2枚目のシートP2も給送され、重送が発生してしまう。
【0030】
一方、一般的にシートが厚紙の場合剛性が高く(こしが強く)、撓みにくい。このため、(給送ローラ2が最上位のシートを反対方向に送ろうとする力)<(最上位のシートの復元力)となった場合には、給送ローラ2はシート上でスリップする。そして、このような場合には、最上位のシートP1の先端が分離爪4を抜けることができず、シートの不送りが発生してしまう。
【0031】
このように、同一の押圧力に対しては、シートが、普通紙(一般に坪量60g/m2〜90g/m2)よりも坪量が小さく、剛性が低く復元力が小さい薄紙ほど重送が起こりやすい傾向にある。また、シートが普通紙よりも坪量が大きく、剛性が高く、復元力が大きい厚紙ほど撓みにくく、給送ローラの搬送力不足が発生してスリップし、不送りが発生する傾向がある。そこで、本実施の形態において、重送や不送りが無いように、摩擦片3の位置を変更可能に設け、シートの種類(剛性)に応じて摩擦片3の位置を変更するようにしている。なお、上述したように、通常使用されるシートでは一般的にシートの剛性の大きさはシートの坪量から換算(推定)することができる。
【0032】
なお、図4は、このようなシートの種類によって、摩擦片3の位置を変更するようにしたシート給送装置100を備えた画像形成装置50の制御ブロック図である。図4において、71は剛性情報としてシートの坪量等の情報をCPU70に入力する入力部である操作部である。また、M1は給送ローラ2を正逆転させる正逆転可能な駆動モータ、M2はタイミングベルト12を回転させて摩擦片3を移動させる摩擦片移動モータである。そして、CPU70は、操作部71から入力されたシートの坪量等の情報に基づき、シートの種類(シートの剛性)に応じて摩擦片移動モータM2を回転させることによりタイミングベルト12を回転させ、摩擦片3をシートの種類に応じた位置に移動させる。
【0033】
例えば、シート押え部TによるシートPの押圧位置を制御する制御部であるCPU70は、シートが薄紙の場合、摩擦片3を図2及び図3に示すように摩擦片3(摩擦片ホルダー8)の位置を給送ローラ2に近い位置に設定する。ここで、このような位置に設定したシート押え部Tによってシートを押圧することにより、図2の(b)に示すように、最上位のシートP1の変形量(撓み量)を大きくすることができる。そして、このように最上位のシートP1の変形量を大きくすることにより、2枚目のシートP2の復元力を大きくすることができ、重送を防ぐことができる。
【0034】
一方、シートが厚紙の場合、図5に示すように、シート押え部Tの位置を給送ローラ2から離れた位置に設定する。ここで、このような位置に設定したシート押え部Tによってシートを押圧することにより、図5の(a)に示すように、復元力が大きい最上位のシートP1を徐々に撓ませることができ、最上位のシートP1の不送りを防ぐことができる。
【0035】
次に、このようなCPU70によるシート押え部Tの位置制御及びシート給送動作制御について図6に示すフローチャートを用いて説明する。まず、ユーザーが操作部71により紙種(薄紙/普通紙/厚紙)を入力する。そして、シート給送動作が開始されると、CPU70は、入力された情報に基づいて紙種設定が普通紙であるかどうかを判断する(S10)。なお、シート給送動作を開始されるまでは、レール10及びシート押え部Tはシートから離間した第2の位置にある。
【0036】
ここで、紙種設定が普通紙であった場合には(S10のY)、シート押え部Tが普通紙に対応する位置にあるかどうかを判断し(S11)、普通紙に対応する位置にない場合には(S11のN)、CPU70は摩擦片移動モータM2を所定量回転させる。そして、この摩擦片移動モータM2の回転が、駆動軸13から駆動プーリ11を経てタイミングベルト12へと伝わり、摩擦片ホルダー8と一体に摩擦片3が、普通紙に対応する位置へ移動する(S12)。なお、この普通紙に対応する位置は、図2の(a)に示す薄紙に対応する位置と、図5の(a)に示す厚紙に対応する位置の間の所定位置である。
【0037】
次に、シート押え部Tが普通紙に対応する位置に配置されると、レール10を不図示のカム機構により、第2の位置から第1の位置に移動させ、シート押え部Tを下降させる(S13)。これにより、シート押え部Tの摩擦片3はシートに押し付けられる。次に、駆動モータM1を逆回転させて給送ローラ2を所定量逆転させ(S14)、シートを引き抜く。この後、駆動モータM1を正回転させて給送ローラ2を所定量正転させ(S15)、引き抜いたシートを給送する。そして、シートの給送が終了すると、レール10を不図示のカム機構により、第1の位置から第2の位置に移動させ、シート押え部Tを上昇させる(S16)。この後、駆動モータM1を停止させ、給送ローラを停止する(S17)。
【0038】
一方、シートが普通紙でなかった場合には(S10のN)、CPU70は、シートが薄紙であるかどうか判断し(S20)、薄紙である場合には(S20のY)、シート押え部Tが薄紙に対応する位置にあるかどうかを判断する(S21)。そして、薄紙に対応する位置にない場合には(S21のN)、CPU70は摩擦片移動モータM2を所定量回転させ、シート押え部Tを図2に示す薄紙に対応する位置へと移動させる(S22)。この後、既述したS13〜S17の処理を行う。
【0039】
また、シートが普通紙でも、薄紙でもない場合には(S20のN)、CPU70は、シートが厚紙であると判断し、シート押え部Tが厚紙に対応する位置にあるかどうかを判断する(S30)。そして、厚紙に対応する位置にない場合には(S30のN)、CPU70は摩擦片移動モータM2を所定量回転させ、シート押え部Tを図5の(a)に示す厚紙に対応する位置へと移動させる(S31)。この後、既述したS13〜S17の処理を行う。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートが薄紙のような剛性が低いシートの場合には、シート押え部Tを図2の(a)に示す給送ローラ2に近い位置に移動させる。また、シートが厚紙のような剛性が高いシートの場合は、図5の(a)に示す、図2の(a)に示す位置よりも給送ローラ2から離れた位置に移動させる。つまり、本実施の形態においては、シートの剛性が低いほど、シート押え部Tの位置を給送ローラ2に近い位置としている。そして、このようにシートの剛性が低いほどシート押え部Tの位置を給送ローラ2に近い位置とすることにより、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシートの給送が可能となる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、図7において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0042】
図7において、T1〜T3は、給送ローラ2の逆回転により引き抜かれるシートの動きを規制してシートを撓ませるシート押え部である。シート押え部T1〜T3は、シート給送方向に沿って複数配置されている摩擦片3A〜3Cと、摩擦片3A〜3Cを支持する摩擦片支持部材7A〜7Cと、摩擦片支持部材7A〜7Cを内部で昇降可能に保持する摩擦片ホルダー8A〜8Cとを備えている。また、摩擦片支持部材7A〜7Cは摩擦片ホルダー8A〜8C内で圧縮バネ9A〜9Cにより下方に付勢されている。そして、摩擦片3A〜3Cは、それぞれ摩擦片支持部材7A〜7Cの底面に取付けられており、摩擦片支持部材7A〜7Cが圧縮バネ9A〜9Cにより付勢されることにより、給紙カセット1に載置されたシートPに押し付けられる。
【0043】
ここで、本実施の形態では、3つのシート押え部T1〜T3のうち、シートの種類に応じて一つのシート押え部のみが最上位のシートに押し付けられ、その他のシート押え部はシートの上方位置に退避させるようにしている。
【0044】
図7の(a)は、シートが薄紙の場合の、シート給送装置100の状態を示している。この場合、給送ローラ2に一番近い板状部材18Aが軸19を中心に揺動することにより、シート押え部T1が下降し、圧縮バネ9Aにより摩擦片3AがシートPに押圧している状態を示している。なお、このとき、他の摩擦片3B,3C及び摩擦片ホルダー18B,18Cはシートの上方位置に退避している。
【0045】
そして、この状態で既述した第1の実施の形態と同様に、給送ローラ2を逆転及び正転させることにより、最上位のシートP1を給送する。そして、給送された最上位のシートP1が分離爪4の上面を通過すると、図7の(b)に示すようにシート押え部T1が引き上げられ、摩擦片3AがシートPから離間する。これによって最上位のシートP1は安定して給送される。
【0046】
同様に、シートが普通紙の場合には給送ローラ2に一番近いシート押え部T1と、給送ローラ2に一番遠いシート押え部T3の間のシート押え部T2がシートに押し付けられ、シートが厚紙の場合にはシート押え部T3がシートに押し付けられる。なお、本実施の形態においては、シート押え部T1〜T3の個数を3つとしたが、それよりも少ない個数に設定したり、反対に、より多くのシート押え部T1〜T3を設け、紙種に対して細かな対応をできるようにしたりしてもよい。
【0047】
次に、3つのシート押え部T1〜T3をシートの種類に応じて選択的に上下に揺動(昇降)させる揺動機構Sについて図8及び図9を用いて説明する。図8に示すように、18A〜18Cは、シート給送方向に伸びた軸19に所定間隔を設けて揺動自在に支持された板状部材であり、摩擦片ホルダー8A〜8Cは、板状部材18A〜18Cの一方の揺動端に回転自在に保持されている。そして、板状部材18A〜18Cを軸19を中心にして上下に揺動させることにより、摩擦片ホルダー8A〜8Cを介して摩擦片3A〜3Cをシートを押圧する位置及びシートから離間する位置に移動させることができる。
【0048】
また、図9に示すように、板状部材18A〜18Cの一端は摩擦片ホルダー8A〜8Cが、他端はコロ20A〜20Cが、不図示の軸部により回転可能に設けられている。また、板状部材18A〜18Cは、軸19を中心に取付けられたねじりコイルバネバネ21A〜21Cにより、コロ20A〜20Cがカム24に圧接するように付勢されている。
【0049】
ここで、カム24は図10に示すように板状部材18A〜18Cのコロ20A〜20Cを選択的に押し上げる突部24A〜24Cと、一端部に設けられたラック部24Rとを備えている。そして、このカム24のラック部24Rは、図9に示すように、正逆転可能なカム移動モータ25より駆動されるピニオン22と噛み合っており、カム移動モータ25を駆動してピニオン22を回転させると、これに伴いカム24は水平方向に移動する。なお、図10において、P0はシート押え部T1〜T3が全て上方に退避するカム24(の突部24A〜24C)の位置を、P1はシート押え部T1がシートに押し付けられるカム24の位置を示している。また、P2はシート押え部T2がシートに押し付けられるカム24の位置を、P3はシート押え部T3のみがシートに押し付けられるカム24の位置を示している。
【0050】
続いて、揺動機構Sによるシート押え部T1〜T3の選択的な揺動動作について説明する。シートが薄紙の場合、図10の(a)に示すように、シート押え部T1〜T3が全て上方に退避している状態から、カム移動モータ25を駆動してピニオン22を回転させ、図10の(b)に示す突部24Aがコロ20Aを持ち上げる位置までカム24を移動させる。つまり、図10の(a)に示すP0の状態にあるカム24を、ピニオン22を矢印L3方向に所定量回転させて、P1の状態となる位置にする。この動作により、シートが薄紙の場合、シートに対応したシート押え部T1によりシートを押し付けることができる。
【0051】
なお、シートが普通紙の場合にはP2の位置にカム24を移動させることにより、普通紙に対応したシート押え部T2によりシートを押し付けることができる。また、シートが厚紙の場合にはP3の位置にカム24を移動させることにより、厚紙に対応したシート押え部T3によりシートを押し付けることができる。このように、本実施の形態は、複数のシート押え部T1〜T3の一つを、選択的に離間位置から押え位置に下降させる昇降部は、カム24と、カム移動モータ25と、により構成されるカム機構により構成される。
【0052】
次に、このような本実施の形態に係るシート押え部T1〜T3の位置制御及びシート給送動作制御について図11に示すフローチャートを用いて説明する。まず、ユーザーが操作部により紙種(薄紙/普通紙/厚紙)を入力する。そして、シート給送動作が開始されると、CPU70は、入力された情報に基づいて紙種に応じたカムの移動位置を確定する(S31)。次に、CPU70は、カム移動モータ25を駆動する。そして、このカム移動モータ25の回転が、駆動軸23、ピニオン22を介してラック24Rに伝わることにより、紙種に応じた位置にカム24が移動する(S32)。
【0053】
例えば、シートが薄紙の場合は、カム24が図10の(a)に示すP0の位置から、図10の(b)に示すP1の位置に移動する。これにより、図7の(a)に示すように板状部材18Aとシート押え部T1が下降し(S33)、摩擦片3Aがシートに押し付けられる。次に、給送ローラ2を所定量逆転させると(S34)、図12の(a)に示すように、最上位のシートP1は、給送ローラ2と摩擦片3の間で大きな撓みが生じる。そして、このように最上位のシートP1の変形量を大きくすることにより、2枚目のシートP2の撓み量を多くすることができ、これに伴い2枚目のシートP2の復元力を大きくすることができ、重送を防ぐことができる。
【0054】
次に、最上位のシートP1の先端が分離爪4の先端を抜けると、図12の(a)に示すように、給送ローラ2を矢印R方向へ所定量正転させる(S35)。これにより、最上位のシートP1は分離爪4を乗り上げ搬送されていく。この後、シートの給送が終了すると、カム移動モータ25を逆転させ、カム24を図10の(b)に示すP1の位置から、図10の(a)に示すP0の位置に移動させる。そして、このようにカム24を移動させることにより、板状部材18Aとシート押え部T1を上昇させる(S36)。この後、給送ローラを停止する(S37)。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態においては、例えばシートが薄紙のような剛性が低いシートの場合には、図7の(a)に示すように給送ローラ2に一番近いシート押え部T1を下降させる。また、シートが厚紙のような剛性が高いシートの場合は、シート押え部T1よりも給送ローラ2から遠いシート押え部T3を下降させる。つまり、本実施の形態においては、シートの剛性が低いほど、給送ローラ2に一番近いシート押え部を下降させるようにしている。そして、このようにシートの剛性が低いほどシート押え部の位置を給送ローラ2に近い位置とすることにより、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシートの給送が可能となる。
【0056】
なお、上記各実施の形態では、シート押え部をモータ等の駆動を用いて自動的に移動するようにしたものについて詳細に説明したが、本発明は、自動的にシート押え部を移動させる構成でなくともよい。例えば、シート押え部をシート給送方向に自由に移動可能に支持し、シート押え部に一体に操作レバーを取り付けて、ユーザがシートの種類に応じて操作レバーを移動させることにより、マニュアルでシート押え部を最適な位置に移動させるようにしても良い。
【0057】
また、これまでの説明においては、シートの坪量等の情報を操作部71によりCPU70に入力するようにしたが、センサによりシートの厚さ、ループ量等を検知し、この情報をシートの剛性に関する情報としてCPU70に入力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0058】
1…給紙カセット、2…給送ローラ、3,3A〜3C…摩擦片、4…分離爪、5…底板、10…レール、10A…昇降部、12…タイミングベルト、24…カム、50…画像形成装置、50A…画像形成装置本体、50B…画像形成部、70…CPU、71…操作部、100…シート給送装置、P1…最上位のシート、P…シート、S…揺動機構、T…シート押え部、U…移動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置に関し、特に給送ローラを逆回転させてシートを引き抜いた後、給送ローラを正回転させてシートを1枚ずつ分離する方式に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ、ファックス、複写機等の画像形成装置においては、シート収納部に収納されたシートを画像形成部に向けて給送するためのシート給送装置を備えている。そして、このようなシート給送装置では、シートを1枚ずつ安定して給送することが非常に重要であることから、複数枚の記録紙等のシートを同時に搬送してしまう重送を防ぐための、様々な方法が取られている。
【0003】
また、近年は、プリンタやファックス等が一般家庭へ普及し、画像装置本体(以下、装置本体という)の、より一層の小型化が求められている。これに伴い、シート給送装置においては、重送を防ぎ安定したシート給送を行うことの他、小型化も重要とされている。そこで、例えばシートを載置する給紙カセットを備えたシート給送装置においては、特に装置本体の奥行きが給紙カセットの奥行きを越えないことが求められている。
【0004】
ここで、装置本体の奥行きを給紙カセットの奥行き内に収めるシート給送装置として、例えば、シート給送の際、一旦、シートをシート給送方向と反対に引いた後、シート給送方向に搬送する構成のものがある(特許文献1参照)。なお、このようなシート給送装置では、正逆転可能なシート給送ローラと、給紙カセットの後部壁と、給紙カセットのシート給送方向下流側に位置する分離爪を備えている。
【0005】
そして、シート給送の際、まず給送ローラを逆転させて給紙カセット内のシートをシート給送方向と反対に引く。ここで、このようにシートをシート給送方向と反対に引いた場合、給紙カセットに収納された最上位のシートの先端は分離爪を抜け、またシートの後端は給紙カセットの後部壁に圧接し、最上位のシートは後部壁を支点に撓むようになる。この後、給送ローラを正回転させると、引き抜かれた最上位のシートは撓んだ状態から元の状態に戻りながら、先端が分離爪を乗り上げて搬送される。これにより、最上位のシートだけが給送される。
【0006】
なお、給送ローラが逆回転すると、最上位のシートよりも下にある少なくとも2枚目のシートも、最上位のシートとの摩擦力により、搬送されて撓みが生じる可能性がある。しかし、少なくとも2枚目のシートは、最上位のシートを介して給送ローラから受ける引き抜き方向の力に対し、撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力の方が大きいため、シートの先端が分離爪の先端を抜ける前に復元力により元の位置に戻る。よって、給送ローラが逆回転すると、最上位のシートと、2枚目シートとは分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−147752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような従来のシート給送装置において、最上位のシートをシート給送方向と反対に引いて撓ませた際、既述したように2枚目のシートには復元力が働くが、この復元力の大きさは、シートの種類によって大きく異なる。例えば、一般的に、同一の撓み量でも、薄いシートほど剛性(剛度)が低く(こしが弱く)、復元力が小さい。このため、撓み量が、通常のシートであれば復元力により元の位置に戻るような大きさの場合でも、薄いシートの場合は、2枚目のシートが、最上位のシートと共に撓んで先端が分離爪を抜けるようになる。そして、この状態で給送ローラがシート給送方向に回転すると、最上位のシートと共に2枚目のシートも給送され、重送が発生する場合がある。
【0009】
一方、一般的に厚いシートほど剛性が高く(こしが強く)、復元力が大きいため撓みにくい。このため、撓み量が、通常のシートであれば復元力により元の位置に戻るような大きさの場合、厚いシートの場合には、給送ローラがスリップし、最上位のシートの先端が分離爪を抜けることができず、シートの不送りが発生する場合がある。
【0010】
このように、2枚目のシートの復元力によりシートを分離する場合、撓み量が一定の場合、薄いシートの場合は重送が発生する場合があり、厚いシートの場合にはシートの不送りが発生する場合がある。つまり、2枚目のシートの復元力によりシートを分離する場合、安定した給送を行うことのできるシートの種類(剛性の範囲)が限られてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシート給送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、シートを載置するシート支持部と、前記シート支持部に載置されたシートの最上位のシートを送り出す正逆転可能な給送ローラと、前記シート支持部に載置されたシートのシート給送方向下流側端部を上方より押える分離爪と、を備え、前記給送ローラを逆回転させて最上位のシートを前記分離爪から引き抜いた後、前記給送ローラを正回転させて引き抜いたシートを前記分離爪の上面に沿って給送するシート給送装置において、前記給送ローラによるシートの引き抜き方向下流側で引き抜き方向に沿って移動可能に設けられ、前記シート支持部に載置されているシートの上面を押圧し、最上位のシートを前記分離爪から引き抜く際、シートの移動を規制してシートを撓ませるシート押え部を備え、前記シート押え部によるシートの押え位置を、給送するシートの剛性が低いほど、前記給送ローラに近い位置にすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のように、シート押え部によるシートの押え位置をシートの剛性が低いほど、給送ローラに近い位置とすることにより、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシートの給送が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図。
【図2】上記シート給送装置の構成を説明する図。
【図3】上記シート給送装置のシート給送動作を説明する図。
【図4】上記画像形成装置の制御ブロック図。
【図5】上記シート給送装置のシートが厚紙の場合のシート給送動作を説明する図。
【図6】上記画像形成装置に設けられたCPUの摩擦片の位置制御及びシート給送動作制御を示すフローチャート。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るシート給送装置の構成を説明する図。
【図8】上記シート給送装置に設けられた摩擦片ホルダーの構成を説明する図。
【図9】上記摩擦片ホルダーの揺動機構を説明する図。
【図10】上記摩擦片ホルダーの揺動機構の動作を説明する図。
【図11】上記画像形成装置に設けられたCPUの摩擦片の位置制御及びシート給送動作制御を示すフローチャート。
【図12】上記シート給送装置のシート給送動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。この画像形成装置50は、画像形成装置本体50Aと、画像形成部50Bと、画像形成部50Bに記録紙等のシートPを給送するシート給送装置100等を備えている。画像形成部50Bは、感光体ドラム(像担持体)61と、感光体ドラム61の表面を露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成するレーザスキャナユニット62等を備えている。
【0016】
シート給送装置100は、給紙カセット1及び給紙カセット1に収納されたシートPを、最上位のシートP1から1枚ずつ給送するシート給送部材である給送ローラ2を備えている。63は感光体ドラム61と共に、転写部を構成する転写ローラ、64は定着ローラ対である。70は、画像形成部50Bの画像形成動作、シート給送装置100のシート給送動作等を制御する制御部であるCPUである。
【0017】
次に、このように構成された画像形成装置50の画像形成動作を説明する。不図示のパソコン等から画像情報が送られ、この画像情報を画像形成処理したCPU70がプリント信号を発すると、レーザスキャナユニット62からの画像露光光により感光体ドラム61に潜像が形成される。この後、感光体ドラム上の潜像が、不図示の現像器によりトナーによって現像され、感光体ドラム上にトナー像が形成される。
【0018】
一方、CPU70がプリント信号を発すると、給送ローラ2が回転し、給紙カセット1に収納された最上位のシートP1が給送され、この最上位のシートP1は感光体ドラム61と転写ローラ63とにより構成される転写部に搬送される。そして、この転写部において、感光体ドラム上に形成されたトナー像がシートP1に転写され、この後、定着ローラ対64にて熱、圧力が加えられることにより、トナー像がシートP1に定着される。この後、画像が定着されたシートP1は、排紙ローラ対65により画像形成装置本体上面に設けられた積載トレイ66へと排出される。
【0019】
ところで、図2に示すように、給紙カセット1はシートPを載置するシート支持部である底板5と圧縮バネ6を備えている。そして、底板5を圧縮バネ6により付勢することにより、底板5に載置されたシートPの最上位のシートP1を給送ローラ2に押し付けるようにしている。また、給送ローラ2は、シートPを給送する矢印Rで示す正回転方向及びシートPをシート給送方向と反対方向(以下、引き抜き方向という)に搬送する矢印Lで示す逆回転方向に回転可能となっている。
【0020】
なお、シート給送装置100は、正逆転可能な給送ローラ2の引き抜き方向下流側に設けられ、給送ローラ2の逆回転によるシートPの引き抜き方向への移動を規制してシートPを撓ませるシート押え部Tを備えている。シート押え部Tは、シートPの上面に当接する摩擦片3と、摩擦片3を支持する摩擦片支持部材7、摩擦片ホルダー8とを備えている。摩擦片3は、摩擦片ホルダー8の内部に昇降可能に設けられ、かつ圧縮バネ9により下方に付勢されている摩擦片支持部材7の下面に取付けられている。そして、摩擦片支持部材7が圧縮バネ9により下方に付勢されることにより、摩擦片3は給紙カセット1に載置されたシートPを押圧する。
【0021】
シート押え部Tは、給紙カセット1の上方に配置されている移動機構Uによりシート給送方向に沿って移動可能に設けられている。移動機構Uは、シート給送方向に延設されたレール10と、レール10に取付けられた軸に設けられた従動プーリ14と、レール10に取付けられた駆動軸13に取付けられている駆動プーリ11との間に掛けられているタイミングベルト12とを備えている。さらに、駆動軸13に伝達する駆動源である摩擦片移動モータM2を備えている(図4を参照)。なお、シート押え部Tは、タイミングベルト12にビス15、又は溶着等で取付けられている。これにより、タイミングベルト12が回転すると、シート押え部Tはシート給送方向に沿って移動する。
【0022】
また、レール10は不図示のカム機構により、図2に示す摩擦片3がシートを押圧する第1の位置(押え位置)と、図3の(b)に示す摩擦片3が載置されたシートから離間する第2の位置(離間位置)の、2つの位置に移動可能となっている。つまり、シート押え部Tは、レール10と不図示のカム機構により構成される昇降部10Aにより、押え位置及び離間位置を移動する。
【0023】
また、シート給送装置100は、通常、給紙カセット1に収納されたシートPのシート給送方向下流側端部を上方から押圧し、シート給送時、後述するように最上位のシートP1が上面を通過することにより、シートPを分離させる分離爪4を備えている。ここで、分離爪4は、図2に示すように、給送ローラ2のシート給送方向下流側に位置し、載置されたシートPの上方に位置する分離爪支持台16に取付けられた圧縮バネ17によりシートPを上方より押えるようにしている。なお、本実施の形態において、この分離爪4の先端部の上面には、後述するように最上位のシートP1が分離爪4の上面を通過する際、シートがスムーズに分離爪4に乗り上げるように、PETシート等のシート材を貼り付けている。
【0024】
次に、このような構成のシート給送装置100のシートの給送動作について説明する。シートを給送する際は、まずCPU70は給送ローラ2を、図2の(a)に示す矢印L方向へ、シートPの先端が分離爪4の先端を抜けるまで逆回転させる。なお、本実施の形態では、この給送ローラ2の逆回転量は、CPU内に設けたタイマにより制御している。なお、センサ等を用いて、回転量を制御するなどしても良い。
【0025】
そして、このように給送ローラ2が逆回転すると、最上位のシートP1は引き抜き方向に移動する。ここで、このとき摩擦片3はシートPを押圧する位置にあるので、図2の(b)に示すように、最上位のシートP1は摩擦片3により引き抜き方向への搬送が規制され、給送ローラ2と摩擦片3の間で撓みが生じる。なお、給送ローラ2が逆回転すると、最上位のシートP1よりも下にある少なくとも2枚目のシートP2も、最上位のシートP1との摩擦力により、搬送されて撓みが生じる可能性がある。
【0026】
しかし、少なくとも2枚目のシートP2は、最上位のシートP1を介して給送ローラ2から受ける引き抜き方向の力に対し、撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力の方が大きいため、シートP2の先端が分離爪4の先端を抜けることは無い。よって、給送ローラ2が逆回転すると、最上位のシートP1と、2枚目シートP2とは分離される。
【0027】
次に、最上位のシートP1の先端が分離爪4の先端を抜けると、図3の(a)に示すように、給送ローラ2は矢印R方向へ正回転し、シートの給送を開始する。このとき、分離爪4の先端は2枚目のシートP2を押圧する状態となっているため、最上位のシートP1は分離爪4を乗り上げ搬送されていく。そして、このように最上位のシートP1が分離爪4を乗り上げて行くようになると、シート給送の負荷とならないように、レール10は図3の(b)に示す第2の位置に切り替えられ、最上位のシートP1から離間する。これにより、最上位のシートP1は、分離爪4の上面に沿って安定して給送される。
【0028】
ところで、既述したようにシートを一旦引き抜き方向に搬送する際、最上位のシートP1と共に2枚目のシートP2も引き抜き方向に移動する。ここで、引き抜き方向に回転させてシートを撓ませる際、シートP1,P2には、撓んだ状態から元に戻ろうとする復元力が発生する。そして、この復元力はシートの種類、特に坪量によって大きく異なる。例えば、一般的に、通常使用されるシートでは、坪量が大きいシート(重いシート)ほどシートの厚さが厚くなって剛性(剛度)が高くなり、坪量が小さいシート(軽いシート)ほどシートの厚さが薄くなって剛性が低くなる。そのため、シートが薄紙の場合は剛性が低く(こしが弱く)、復元力は普通紙に比べ小さくなる。
【0029】
ここで、最上位のシートP1と2枚目のシートP2の間の摩擦力が相対的に大きく、2枚目のシートの復元力<シート間の摩擦力となってしまう場合がある。この場合、通常は復元力により戻る2枚目のシートP2が、剛性が低いため復元力により戻ることなく、撓み、この後、先端が分離爪4の先端を抜けるようになる。そして、この状態で給送ローラ2がシート給送方向に正回転すると、最上位のシートP1と共に2枚目のシートP2も給送され、重送が発生してしまう。
【0030】
一方、一般的にシートが厚紙の場合剛性が高く(こしが強く)、撓みにくい。このため、(給送ローラ2が最上位のシートを反対方向に送ろうとする力)<(最上位のシートの復元力)となった場合には、給送ローラ2はシート上でスリップする。そして、このような場合には、最上位のシートP1の先端が分離爪4を抜けることができず、シートの不送りが発生してしまう。
【0031】
このように、同一の押圧力に対しては、シートが、普通紙(一般に坪量60g/m2〜90g/m2)よりも坪量が小さく、剛性が低く復元力が小さい薄紙ほど重送が起こりやすい傾向にある。また、シートが普通紙よりも坪量が大きく、剛性が高く、復元力が大きい厚紙ほど撓みにくく、給送ローラの搬送力不足が発生してスリップし、不送りが発生する傾向がある。そこで、本実施の形態において、重送や不送りが無いように、摩擦片3の位置を変更可能に設け、シートの種類(剛性)に応じて摩擦片3の位置を変更するようにしている。なお、上述したように、通常使用されるシートでは一般的にシートの剛性の大きさはシートの坪量から換算(推定)することができる。
【0032】
なお、図4は、このようなシートの種類によって、摩擦片3の位置を変更するようにしたシート給送装置100を備えた画像形成装置50の制御ブロック図である。図4において、71は剛性情報としてシートの坪量等の情報をCPU70に入力する入力部である操作部である。また、M1は給送ローラ2を正逆転させる正逆転可能な駆動モータ、M2はタイミングベルト12を回転させて摩擦片3を移動させる摩擦片移動モータである。そして、CPU70は、操作部71から入力されたシートの坪量等の情報に基づき、シートの種類(シートの剛性)に応じて摩擦片移動モータM2を回転させることによりタイミングベルト12を回転させ、摩擦片3をシートの種類に応じた位置に移動させる。
【0033】
例えば、シート押え部TによるシートPの押圧位置を制御する制御部であるCPU70は、シートが薄紙の場合、摩擦片3を図2及び図3に示すように摩擦片3(摩擦片ホルダー8)の位置を給送ローラ2に近い位置に設定する。ここで、このような位置に設定したシート押え部Tによってシートを押圧することにより、図2の(b)に示すように、最上位のシートP1の変形量(撓み量)を大きくすることができる。そして、このように最上位のシートP1の変形量を大きくすることにより、2枚目のシートP2の復元力を大きくすることができ、重送を防ぐことができる。
【0034】
一方、シートが厚紙の場合、図5に示すように、シート押え部Tの位置を給送ローラ2から離れた位置に設定する。ここで、このような位置に設定したシート押え部Tによってシートを押圧することにより、図5の(a)に示すように、復元力が大きい最上位のシートP1を徐々に撓ませることができ、最上位のシートP1の不送りを防ぐことができる。
【0035】
次に、このようなCPU70によるシート押え部Tの位置制御及びシート給送動作制御について図6に示すフローチャートを用いて説明する。まず、ユーザーが操作部71により紙種(薄紙/普通紙/厚紙)を入力する。そして、シート給送動作が開始されると、CPU70は、入力された情報に基づいて紙種設定が普通紙であるかどうかを判断する(S10)。なお、シート給送動作を開始されるまでは、レール10及びシート押え部Tはシートから離間した第2の位置にある。
【0036】
ここで、紙種設定が普通紙であった場合には(S10のY)、シート押え部Tが普通紙に対応する位置にあるかどうかを判断し(S11)、普通紙に対応する位置にない場合には(S11のN)、CPU70は摩擦片移動モータM2を所定量回転させる。そして、この摩擦片移動モータM2の回転が、駆動軸13から駆動プーリ11を経てタイミングベルト12へと伝わり、摩擦片ホルダー8と一体に摩擦片3が、普通紙に対応する位置へ移動する(S12)。なお、この普通紙に対応する位置は、図2の(a)に示す薄紙に対応する位置と、図5の(a)に示す厚紙に対応する位置の間の所定位置である。
【0037】
次に、シート押え部Tが普通紙に対応する位置に配置されると、レール10を不図示のカム機構により、第2の位置から第1の位置に移動させ、シート押え部Tを下降させる(S13)。これにより、シート押え部Tの摩擦片3はシートに押し付けられる。次に、駆動モータM1を逆回転させて給送ローラ2を所定量逆転させ(S14)、シートを引き抜く。この後、駆動モータM1を正回転させて給送ローラ2を所定量正転させ(S15)、引き抜いたシートを給送する。そして、シートの給送が終了すると、レール10を不図示のカム機構により、第1の位置から第2の位置に移動させ、シート押え部Tを上昇させる(S16)。この後、駆動モータM1を停止させ、給送ローラを停止する(S17)。
【0038】
一方、シートが普通紙でなかった場合には(S10のN)、CPU70は、シートが薄紙であるかどうか判断し(S20)、薄紙である場合には(S20のY)、シート押え部Tが薄紙に対応する位置にあるかどうかを判断する(S21)。そして、薄紙に対応する位置にない場合には(S21のN)、CPU70は摩擦片移動モータM2を所定量回転させ、シート押え部Tを図2に示す薄紙に対応する位置へと移動させる(S22)。この後、既述したS13〜S17の処理を行う。
【0039】
また、シートが普通紙でも、薄紙でもない場合には(S20のN)、CPU70は、シートが厚紙であると判断し、シート押え部Tが厚紙に対応する位置にあるかどうかを判断する(S30)。そして、厚紙に対応する位置にない場合には(S30のN)、CPU70は摩擦片移動モータM2を所定量回転させ、シート押え部Tを図5の(a)に示す厚紙に対応する位置へと移動させる(S31)。この後、既述したS13〜S17の処理を行う。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態においては、シートが薄紙のような剛性が低いシートの場合には、シート押え部Tを図2の(a)に示す給送ローラ2に近い位置に移動させる。また、シートが厚紙のような剛性が高いシートの場合は、図5の(a)に示す、図2の(a)に示す位置よりも給送ローラ2から離れた位置に移動させる。つまり、本実施の形態においては、シートの剛性が低いほど、シート押え部Tの位置を給送ローラ2に近い位置としている。そして、このようにシートの剛性が低いほどシート押え部Tの位置を給送ローラ2に近い位置とすることにより、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシートの給送が可能となる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を示す図である。なお、図7において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
【0042】
図7において、T1〜T3は、給送ローラ2の逆回転により引き抜かれるシートの動きを規制してシートを撓ませるシート押え部である。シート押え部T1〜T3は、シート給送方向に沿って複数配置されている摩擦片3A〜3Cと、摩擦片3A〜3Cを支持する摩擦片支持部材7A〜7Cと、摩擦片支持部材7A〜7Cを内部で昇降可能に保持する摩擦片ホルダー8A〜8Cとを備えている。また、摩擦片支持部材7A〜7Cは摩擦片ホルダー8A〜8C内で圧縮バネ9A〜9Cにより下方に付勢されている。そして、摩擦片3A〜3Cは、それぞれ摩擦片支持部材7A〜7Cの底面に取付けられており、摩擦片支持部材7A〜7Cが圧縮バネ9A〜9Cにより付勢されることにより、給紙カセット1に載置されたシートPに押し付けられる。
【0043】
ここで、本実施の形態では、3つのシート押え部T1〜T3のうち、シートの種類に応じて一つのシート押え部のみが最上位のシートに押し付けられ、その他のシート押え部はシートの上方位置に退避させるようにしている。
【0044】
図7の(a)は、シートが薄紙の場合の、シート給送装置100の状態を示している。この場合、給送ローラ2に一番近い板状部材18Aが軸19を中心に揺動することにより、シート押え部T1が下降し、圧縮バネ9Aにより摩擦片3AがシートPに押圧している状態を示している。なお、このとき、他の摩擦片3B,3C及び摩擦片ホルダー18B,18Cはシートの上方位置に退避している。
【0045】
そして、この状態で既述した第1の実施の形態と同様に、給送ローラ2を逆転及び正転させることにより、最上位のシートP1を給送する。そして、給送された最上位のシートP1が分離爪4の上面を通過すると、図7の(b)に示すようにシート押え部T1が引き上げられ、摩擦片3AがシートPから離間する。これによって最上位のシートP1は安定して給送される。
【0046】
同様に、シートが普通紙の場合には給送ローラ2に一番近いシート押え部T1と、給送ローラ2に一番遠いシート押え部T3の間のシート押え部T2がシートに押し付けられ、シートが厚紙の場合にはシート押え部T3がシートに押し付けられる。なお、本実施の形態においては、シート押え部T1〜T3の個数を3つとしたが、それよりも少ない個数に設定したり、反対に、より多くのシート押え部T1〜T3を設け、紙種に対して細かな対応をできるようにしたりしてもよい。
【0047】
次に、3つのシート押え部T1〜T3をシートの種類に応じて選択的に上下に揺動(昇降)させる揺動機構Sについて図8及び図9を用いて説明する。図8に示すように、18A〜18Cは、シート給送方向に伸びた軸19に所定間隔を設けて揺動自在に支持された板状部材であり、摩擦片ホルダー8A〜8Cは、板状部材18A〜18Cの一方の揺動端に回転自在に保持されている。そして、板状部材18A〜18Cを軸19を中心にして上下に揺動させることにより、摩擦片ホルダー8A〜8Cを介して摩擦片3A〜3Cをシートを押圧する位置及びシートから離間する位置に移動させることができる。
【0048】
また、図9に示すように、板状部材18A〜18Cの一端は摩擦片ホルダー8A〜8Cが、他端はコロ20A〜20Cが、不図示の軸部により回転可能に設けられている。また、板状部材18A〜18Cは、軸19を中心に取付けられたねじりコイルバネバネ21A〜21Cにより、コロ20A〜20Cがカム24に圧接するように付勢されている。
【0049】
ここで、カム24は図10に示すように板状部材18A〜18Cのコロ20A〜20Cを選択的に押し上げる突部24A〜24Cと、一端部に設けられたラック部24Rとを備えている。そして、このカム24のラック部24Rは、図9に示すように、正逆転可能なカム移動モータ25より駆動されるピニオン22と噛み合っており、カム移動モータ25を駆動してピニオン22を回転させると、これに伴いカム24は水平方向に移動する。なお、図10において、P0はシート押え部T1〜T3が全て上方に退避するカム24(の突部24A〜24C)の位置を、P1はシート押え部T1がシートに押し付けられるカム24の位置を示している。また、P2はシート押え部T2がシートに押し付けられるカム24の位置を、P3はシート押え部T3のみがシートに押し付けられるカム24の位置を示している。
【0050】
続いて、揺動機構Sによるシート押え部T1〜T3の選択的な揺動動作について説明する。シートが薄紙の場合、図10の(a)に示すように、シート押え部T1〜T3が全て上方に退避している状態から、カム移動モータ25を駆動してピニオン22を回転させ、図10の(b)に示す突部24Aがコロ20Aを持ち上げる位置までカム24を移動させる。つまり、図10の(a)に示すP0の状態にあるカム24を、ピニオン22を矢印L3方向に所定量回転させて、P1の状態となる位置にする。この動作により、シートが薄紙の場合、シートに対応したシート押え部T1によりシートを押し付けることができる。
【0051】
なお、シートが普通紙の場合にはP2の位置にカム24を移動させることにより、普通紙に対応したシート押え部T2によりシートを押し付けることができる。また、シートが厚紙の場合にはP3の位置にカム24を移動させることにより、厚紙に対応したシート押え部T3によりシートを押し付けることができる。このように、本実施の形態は、複数のシート押え部T1〜T3の一つを、選択的に離間位置から押え位置に下降させる昇降部は、カム24と、カム移動モータ25と、により構成されるカム機構により構成される。
【0052】
次に、このような本実施の形態に係るシート押え部T1〜T3の位置制御及びシート給送動作制御について図11に示すフローチャートを用いて説明する。まず、ユーザーが操作部により紙種(薄紙/普通紙/厚紙)を入力する。そして、シート給送動作が開始されると、CPU70は、入力された情報に基づいて紙種に応じたカムの移動位置を確定する(S31)。次に、CPU70は、カム移動モータ25を駆動する。そして、このカム移動モータ25の回転が、駆動軸23、ピニオン22を介してラック24Rに伝わることにより、紙種に応じた位置にカム24が移動する(S32)。
【0053】
例えば、シートが薄紙の場合は、カム24が図10の(a)に示すP0の位置から、図10の(b)に示すP1の位置に移動する。これにより、図7の(a)に示すように板状部材18Aとシート押え部T1が下降し(S33)、摩擦片3Aがシートに押し付けられる。次に、給送ローラ2を所定量逆転させると(S34)、図12の(a)に示すように、最上位のシートP1は、給送ローラ2と摩擦片3の間で大きな撓みが生じる。そして、このように最上位のシートP1の変形量を大きくすることにより、2枚目のシートP2の撓み量を多くすることができ、これに伴い2枚目のシートP2の復元力を大きくすることができ、重送を防ぐことができる。
【0054】
次に、最上位のシートP1の先端が分離爪4の先端を抜けると、図12の(a)に示すように、給送ローラ2を矢印R方向へ所定量正転させる(S35)。これにより、最上位のシートP1は分離爪4を乗り上げ搬送されていく。この後、シートの給送が終了すると、カム移動モータ25を逆転させ、カム24を図10の(b)に示すP1の位置から、図10の(a)に示すP0の位置に移動させる。そして、このようにカム24を移動させることにより、板状部材18Aとシート押え部T1を上昇させる(S36)。この後、給送ローラを停止する(S37)。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態においては、例えばシートが薄紙のような剛性が低いシートの場合には、図7の(a)に示すように給送ローラ2に一番近いシート押え部T1を下降させる。また、シートが厚紙のような剛性が高いシートの場合は、シート押え部T1よりも給送ローラ2から遠いシート押え部T3を下降させる。つまり、本実施の形態においては、シートの剛性が低いほど、給送ローラ2に一番近いシート押え部を下降させるようにしている。そして、このようにシートの剛性が低いほどシート押え部の位置を給送ローラ2に近い位置とすることにより、シートの種類に拘らず、重送や不送りの無い安定したシートの給送が可能となる。
【0056】
なお、上記各実施の形態では、シート押え部をモータ等の駆動を用いて自動的に移動するようにしたものについて詳細に説明したが、本発明は、自動的にシート押え部を移動させる構成でなくともよい。例えば、シート押え部をシート給送方向に自由に移動可能に支持し、シート押え部に一体に操作レバーを取り付けて、ユーザがシートの種類に応じて操作レバーを移動させることにより、マニュアルでシート押え部を最適な位置に移動させるようにしても良い。
【0057】
また、これまでの説明においては、シートの坪量等の情報を操作部71によりCPU70に入力するようにしたが、センサによりシートの厚さ、ループ量等を検知し、この情報をシートの剛性に関する情報としてCPU70に入力するようにしても良い。
【符号の説明】
【0058】
1…給紙カセット、2…給送ローラ、3,3A〜3C…摩擦片、4…分離爪、5…底板、10…レール、10A…昇降部、12…タイミングベルト、24…カム、50…画像形成装置、50A…画像形成装置本体、50B…画像形成部、70…CPU、71…操作部、100…シート給送装置、P1…最上位のシート、P…シート、S…揺動機構、T…シート押え部、U…移動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置するシート支持部と、前記シート支持部に載置されたシートの最上位のシートを送り出す正逆転可能な給送ローラと、前記シート支持部に載置されたシートのシート給送方向下流側端部を上方より押える分離爪と、を備え、前記給送ローラを逆回転させて最上位のシートを前記分離爪から引き抜いた後、前記給送ローラを正回転させて引き抜いたシートを前記分離爪の上面に沿って給送するシート給送装置において、
前記給送ローラによるシートの引き抜き方向下流側で引き抜き方向に沿って移動可能に設けられ、前記シート支持部に載置されているシートの上面を押圧し、最上位のシートを前記分離爪から引き抜く際、シートの移動を規制してシートを撓ませるシート押え部を備え、
前記シート押え部によるシートの押え位置を、給送するシートの剛性が低いほど、前記給送ローラに近い位置にすることを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記シート押え部をシート給送方向に移動させる移動機構と、
シートの剛性情報を入力する入力部と、
前記入力部からの剛性情報に基づき前記移動機構により前記シート押え部を移動させて押え位置を変更させるための制御部と、を有することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記シート押え部を、シートを押える押え位置及びシートから離間する離間位置に移動させる昇降部を備え、
前記制御部は、前記入力部からの剛性情報に基づき、前記離間位置にある前記シート押え部をシートの剛性に応じた位置に移動させた後、前記押え位置に移動させるよう前記移動機構及び前記昇降部を制御することを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記昇降部は、前記移動機構を昇降させ、前記シート押え部をシートを押える押え位置及び前記離間位置に移動させることを特徴とする請求項3記載のシート給送装置。
【請求項5】
シート給送方向に沿って複数配置された前記シート押え部を、シートを押える押え位置及びシートから離間する離間位置に揺動させる揺動機構と、
シートの剛性情報を入力する入力部と、
複数の前記押え部材の一つを、選択的に前記離間位置から前記押え位置に下降させる昇降部と、
前記入力部からの剛性情報に基づき前記昇降部により前記複数の押え部の一つを選択的に下降させるための制御部と、を有することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記昇降部は、カム機構により前記複数の押え部の一つを選択的に下降させることを特徴とする請求項5記載のシート給送装置。
【請求項7】
画像形成部と、前記画像形成部にシートを給送する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート給送装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
シートを載置するシート支持部と、前記シート支持部に載置されたシートの最上位のシートを送り出す正逆転可能な給送ローラと、前記シート支持部に載置されたシートのシート給送方向下流側端部を上方より押える分離爪と、を備え、前記給送ローラを逆回転させて最上位のシートを前記分離爪から引き抜いた後、前記給送ローラを正回転させて引き抜いたシートを前記分離爪の上面に沿って給送するシート給送装置において、
前記給送ローラによるシートの引き抜き方向下流側で引き抜き方向に沿って移動可能に設けられ、前記シート支持部に載置されているシートの上面を押圧し、最上位のシートを前記分離爪から引き抜く際、シートの移動を規制してシートを撓ませるシート押え部を備え、
前記シート押え部によるシートの押え位置を、給送するシートの剛性が低いほど、前記給送ローラに近い位置にすることを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記シート押え部をシート給送方向に移動させる移動機構と、
シートの剛性情報を入力する入力部と、
前記入力部からの剛性情報に基づき前記移動機構により前記シート押え部を移動させて押え位置を変更させるための制御部と、を有することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記シート押え部を、シートを押える押え位置及びシートから離間する離間位置に移動させる昇降部を備え、
前記制御部は、前記入力部からの剛性情報に基づき、前記離間位置にある前記シート押え部をシートの剛性に応じた位置に移動させた後、前記押え位置に移動させるよう前記移動機構及び前記昇降部を制御することを特徴とする請求項2記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記昇降部は、前記移動機構を昇降させ、前記シート押え部をシートを押える押え位置及び前記離間位置に移動させることを特徴とする請求項3記載のシート給送装置。
【請求項5】
シート給送方向に沿って複数配置された前記シート押え部を、シートを押える押え位置及びシートから離間する離間位置に揺動させる揺動機構と、
シートの剛性情報を入力する入力部と、
複数の前記押え部材の一つを、選択的に前記離間位置から前記押え位置に下降させる昇降部と、
前記入力部からの剛性情報に基づき前記昇降部により前記複数の押え部の一つを選択的に下降させるための制御部と、を有することを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記昇降部は、カム機構により前記複数の押え部の一つを選択的に下降させることを特徴とする請求項5記載のシート給送装置。
【請求項7】
画像形成部と、前記画像形成部にシートを給送する請求項1ないし6のいずれか1項に記載のシート給送装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−96902(P2012−96902A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246516(P2010−246516)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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