説明

シート給送装置

【課題】カム部とカムフォロアとの接触圧の大きさに関わらず、カム部とカムフォロアと動きを円滑にすることにより、第1トレイのスムーズな引き出し動作を実現することが可能なシート給送装置を提供する。
【解決手段】
支軸28から後方斜め下方へ給紙アーム26が延びており、その先端に給紙ローラ25が軸支されている。給紙カセット20の装着状態では、給紙ローラ25はメイントレイ20Aの記録用紙に当接している。給紙アーム26が上方へ持ち上げられると、付勢機構74によって下方への付勢力が付与される。給紙アーム26にはメイントレイ20Aの側板90側へ伸びるカムフォロア52が設けられており、側板90の上面にはカム部51が設けられている。カム部51に接触するカムフォロア52の接触部には回転体92が軸支されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に挿抜可能に設けられたトレイを有し、アームの先端に軸支された給送ローラによってトレイ上のシートを給送するシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット記録装置などの画像記録装置では、シートが保持されたトレイが挿抜可能に設けられた構成が知られている。この画像記録装置には、トレイに保持されたシートを一枚ずつ給送するように構成されている。シートを給送する給送機構としては、例えば、特許文献1に記載のように、トレイの上側に設けられた軸に揺動可能に取り付けられたアームと、そのアームの先端に回転可能に支持された給送ローラとを備えた構成が公知である。アームは、その自重またはバネなどによってトレイ側へ付勢されており、これにより給送ローラがトレイ上のシートに当接する。そして、シートに当接した状態で給送ローラが回転されると、シートが給送される。特許文献1の給送機構では、アームとシートとのなす角度が所定角度よりも小さくなった場合に、シートに対する給送ローラの搬送力を増加させるために、給送ローラを下方へ付勢する力をアップさせている。
【0003】
給送ローラによって給送されたシートは、トレイの保持面から起立する傾斜板に案内されるようにして給送方向が変えられる。トレイには傾斜板が設けられているため、トレイを画像記録装置に対して挿抜するときに、給送ローラが傾斜板に衝突して破損するおそれがある。このため、特許文献2の給紙装置では、トレイの挿抜時にアームを昇降動させて傾斜板への衝突を回避するためのカム機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−168996号公報
【特許文献2】特開2009−155081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の付勢力アップ機構と特許文献2に記載のカム機構とが給送装置に設けられた場合は、アームが持ち上げられたときに下方へのバネ力が増加するため、カム部とカムフォロアとの当接部の圧接力も増加する。カム部とカムフォロアとの間には摩擦抵抗を軽減させる摺動部材が設けられているが、上記圧接力が増加した状態でトレイの挿抜が繰り返されると、摺動部材が摺動摩擦によって劣化して摩擦軽減力が低下する。この場合、カム部とカムフォロアとの摺動摩擦力によって、トレイが引き出され難くなり、場合によってはカム部とカムフォロアとが摺動しなくなり、トレイが引き出されなくなる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カム部とカムフォロアとの接触圧の大きさに関わらず、カム部とカムフォロアと動きを円滑にすることにより、第1トレイのスムーズな引き出し動作を実現することが可能なシート給送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、第1トレイと、アームと、給送ローラと、付勢部材と、カムフォロアと、カム部と、回転体とを具備するシート給送装置として構成されている。第1トレイは、装置本体に挿抜可能に設けられている。第1トレイは、第1向きへ給送されるシートを保持可能な保持面を有する。第1トレイは、上記第1向きの先端部に上記保持面から起立する傾斜板が設けられている。アームは、上記第1トレイの上方に設けられた支軸を中心に回動可能に支持されている。アームは、上記支軸から上記第1向き斜め下方へ延びている。給送ローラは、上記アームの先端に回転可能に支持されている。給送ローラは、上記第1トレイに保持されたシートに接した状態で回転駆動されることでシートを上記第1向きへ給送する。付勢部材は、少なくとも上記給送ローラの下端が上記傾斜板の上端よりも上方に持ち上げられたときに上記アームを下方へ付勢する。カムフォロアは、上記アームから上記支軸の軸方向に沿って延びている。カム部は、上記カムフォロアに当接可能なように上記第1トレイに設けられている。カム部は、上記第1トレイの脱抜動作に伴って上記カムフォロアが案内されることにより、上記給送ローラが上記傾斜板から退避するように上記アームを持ち上げる。回転体は、上記カムフォロアに設けられており、上記カム部に当接する当接部に回転可能に支持されている。
【0008】
このように構成されているため、第1トレイが引き出される過程においてカム部とカムフォロアとによってアームが持ち上げられても、カム部とカムフォロアとの摩擦抵抗は回転体によって極めて小さく抑えられる。また、給送ローラが傾斜板よりも上方へ到達するようにアームが持ち上げられたことによりアームを下方へ付勢する力が付勢部材によって加えられても、カム部とカムフォロアとの間には回転体による転がり摩擦しか生じない。このため、第1トレイの引き出し動作が円滑に行われる。
【0009】
(2) 本発明のシート給送装置は、第2トレイを更に備える。第2トレイは、上記第1トレイの上部に設けられており、シートを保持可能な保持面を有する。第2トレイは、上記傾斜板よりも上記第1向きの上流側へ離間した第1姿勢と上記第1姿勢よりも上記傾斜板に近接した第2姿勢との間で移動可能に構成されている。この場合、上記付勢部材は、上記第1姿勢から上記第2姿勢に移動する上記第2トレイによって上記アームが押し上げられることにより上記給送ローラが上記第2トレイ上に持ち上げられたときに上記給送ローラを下方へ付勢する。
【0010】
第1トレイの上部に第2トレイが設けられた構成では、給送ローラが第2トレイ上に配置されたときのアームの傾斜角が小さくなり、その結果、給送ローラは第2トレイに保持されたシートに対して十分な搬送力を付与することができない。このような構成には、上記付勢部材が有効であり、また、本発明のごとくカムフォロアとカム部との当接部に回転体を設けることが更に有効である。
【0011】
(3) 上記カム部は、上記第1向きに沿って延びるように上記第1トレイに設けられた側板の上端面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カム部とカムフォロアとの摺動抵抗に関わらず、カム部とカムフォロアとが円滑に摺動する。このため、第1トレイのスムーズな引き出し動作を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である給紙装置16を備えた複合機10の斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、給紙装置16の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、給紙装置16の構成を示す平面図である。
【図5】図5は、給紙装置16の構成を示す側面図である。
【図6】図6は、図5において二点鎖線の囲み線で囲まれた要部IVの部分拡大図である。
【図7】図7は、給送部15の構成を示す拡大斜視図である。
【図8】図8は、図4における切断面VIII−VIIIの断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口13が設けられている側を手前側(正面)として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0015】
[プリンタ部11]
図1に示されるように、複合機10は、薄型の直方体に概ね形成されており、下部にインクジェット記録方式のプリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。なお、プリント機能以外の機能の有無は任意である。従って、本実施形態では、プリント機能以外の機能及びその機能を実現する構成要素についての説明を省略する。
【0016】
[プリンタ部11]
図1に示されるように、プリンタ部11は、正面に開口13が形成されたケーシング(筐体)14を有している。プリンタ部11の底部に給紙カセット20(図2参照)が設けられている。給紙カセット20は、各種サイズのシート状の記録用紙(本発明のシートの一例)を収容可能とするものであり、下段にメイントレイ20A(本発明の第1トレイの一例)が配置され、上段にセカンドトレイ20B(本発明の第2トレイの一例)が配置されている。つまり、メイントレイ20A及びセカンドトレイ20Bは、上下2段に設けられている。開口13からケーシング14の奥部に至る空間の両側壁又は底板12には、給紙カセット20を前後方向8へスライド可能に支持するレール支持機構などの周知のスライド機構(不図示)が設けられている。給紙カセット20は、上記スライド機構によって、開口13から前後方向8に挿抜可能に構成されている。つまり、給紙カセット20は、プリンタ部11に装着された状態から前方へ引き出されることによって脱抜される。
【0017】
図2に示されるように、プリンタ部11は、大別すると、記録用紙を給送する給紙装置16(本発明のシート給送装置の一例)と、給送された記録用紙に対してインクによる画像記録を行うインクジェット記録方式の記録部24と、記録用紙が搬送される搬送路65などを備えている。給紙装置16は、プリンタ部11の下部に設けられており、記録用紙が積載状に載置された給紙カセット20と、給紙カセット20から記録用紙をピックアップして給送する給送部15と、を備えている。記録部24は、給紙装置16の上方に配置されている。なお、記録部24はインクジェット方式に限られず、電子写真方式などの種々の記録方式のものが適用可能である。
【0018】
[搬送路65]
図2に示されるように、プリンタ部11の内部には、給紙装置16の先端(後方側の端部)から記録部24を経て排紙保持部79に至る搬送路65が形成されている。搬送路65は、給紙装置16の先端から記録部24に至る間に形成された湾曲路65Aと、記録部24から排紙保持部79に至る間に形成された排紙路65Bとに区分される。なお、排紙保持部79は、プリンタ部11のフレームなどに固定されている。
【0019】
湾曲路65Aは、給送装置16の先端付近から記録部24に渡って延設された湾曲状の通路である。湾曲路65Aは、プリンタ部11の内部側を中心とする円弧形状に概ね形成されている。給紙装置16の給送部15によって給紙カセット20から第1搬送向き(図2において一点鎖線に付された矢印の向き、本発明の第1向きに相当)へ給送された記録用紙は、湾曲路65Aに沿って湾曲されながら搬送方向(図2において一点鎖線で示される方向)へ搬送されて、記録部24の直下へ案内される。湾曲路65Aは、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とによって区画されている。なお、外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19は、いずれも、図2において紙面に垂直な方向(図1の左右方向9)へ延出されている。
【0020】
排紙路65Bは、記録部24の直下から排紙保持部79に渡って延設された直線状の通路である。記録用紙は、排紙路65Bを第1搬送向きに案内される。排紙路65Bは、記録部24が設けられている箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する記録部24及びプラテン42によって形成されており、記録部24が設けられていない箇所においては、所定間隔を隔てて互いに対向する上側ガイド部材82及び下側ガイド部材83によって形成されている。
【0021】
図2に示されるように、記録部24の第1搬送向きの上流側には駆動ローラ60とピンチローラ61とからなる一対の搬送ローラ対59が設けられている。また、記録部24の第1搬送向きの下流側には、駆動ローラ63とピンチローラ64とからなる一対の排紙ローラ対62が設けられている。給送部15によって給紙カセット20から給送された記録用紙は、搬送用モータ(不図示)の駆動力を受けて回転する搬送ローラ対59や排紙ローラ対62によって搬送路65内を第1搬送向きへ搬送される。
【0022】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、給紙カセット20の上方に配置されている。記録部24は、左右方向9(図2において紙面と垂直な方向)に往復移動可能に構成されている。記録部24の下方には記録用紙を水平に保持するためのプラテン42が設けられている。記録用紙が搬送路65を搬送される際に、記録部24は左右方向9へ往復移動される。記録部24は、その往復移動過程において、図示しないインクカートリッジから供給されたインクをノズル39からプラテン42上の記録用紙に吐出する。これにより、プラテン42上の記録用紙に画像が記録される。
【0023】
[給紙装置16]
給紙装置16は、大別すると、給紙カセット20と、給送部15と、カム機構50と、付勢機構74とにより構成されている。
【0024】
[給紙カセット20]
図3示されるように、給紙カセット20は、メイントレイ20Aと、セカンドトレイ20B(図2参照)とを備える。なお、図3の斜視図は、給紙カセット20がプリンタ部11に装着された状態の給紙装置16の構成を示すものである。図3では、説明の便宜上、セカンドトレイ20Bの図示が省略されている。
【0025】
メイントレイ20Aは、プリンタ部11の底側に配置されている(図2参照)。メイントレイ20Aは、上面が開放された矩形箱状に形成されている。メイントレイ20Aは、記録用紙が保持される用紙保持面86(本発明の保持面に相当)を有しており、この用紙保持面86に複数枚の記録用紙が積載された状態で略水平に収容可能である。本実施形態では、メイントレイ20は、最大でA4サイズ(210mm×297mm)の記録用紙が収容可能なサイズに形成されている。
【0026】
用紙保持面86には、周知の一対のサイドガイド87が左右方向9へスライド可能に支持されている。サイドガイド87で挟まれたスペースに記録用紙が収容される。サイドガイド87がスライドされて記録用紙の左右端に当接されると、記録用紙の左右方向9の中心位置が基準位置となるように記録用紙が位置決めされる。
【0027】
メイントレイ20Aの後方側の端部には、分離傾斜板22(本発明の傾斜板の一例)が設けられている。分離傾斜板22は、用紙保持面86の後方側の端部から斜め後方へ起立するように設けられている。また、メイントレイ20Aの後方側の両側端部それぞれには側板90が設けられている。側板90は、用紙保持面86に沿って前後方向8へ延びる細幅の板状部材で形成されている。
【0028】
図2に示されるように、セカンドトレイ20Bは、メイントレイ20Aの上部に設けられている。セカンドトレイ20Bは、最大でハガキサイズ(100×148mm)の記録用紙が保持される保持面を有している。本実施形態の複合機10では、主として、葉書や、写真L判サイズの光沢紙、名刺サイズの厚紙などがセカンドトレイ20に載置される。なお、セカンドトレイ20Bは、葉書サイズ以上の記録用紙、例えばメイントレイ20Aと同様にA4サイズの記録用紙等を保持可能なものであってもよい。
【0029】
セカンドトレイ20Bは、メイントレイ20Aの上部において前後方向8へスライド可能に支持されている。詳細には、セカンドトレイ20Bは、その後方端部43が分離傾斜板22の内側面に近接した後方位置(図2(B)に示される位置,本発明の第2姿勢に相当)と、分離傾斜板22から所定距離だけ前方側へ離間した前方位置(図2(A)に示される位置,本発明の第1姿勢に相当)との間でスライド移動する。
【0030】
セカンドトレイ20Bのスライド支持機構としては、例えば、メイントレイ20Aの上部に設けられたレール(不図示)と、セカンドトレイ20Bの下面に設けられた摺動溝(不図示)とからなる摺動支持機構や、その他の周知の支持機構が採用可能である。セカンドトレイ20Bは、手動で動作可能なものであってもよく、或いは、周知の伝達機構(例えばラック−ピニオン機構)を介して図示しないモータなどの電動機から動力を受けて動作可能なものであってもよい。
【0031】
セカンドトレイ20Bが上記前方位置に配置された状態では、メイントレイ20Aの後方側の上面が開けられる。このとき、給送部15の給紙アーム26及び給紙ローラ25は、メイントレイ20Aの後方側の上面の開口からメイントレイ20A側へ下降して、メイントレイ20Aに保持された記録用紙に給紙ローラ25が当接した状態を維持する(図2(A),図8(A)参照)。以下、この状態の給紙アーム26及び給紙ローラ25の姿勢を第1回動姿勢と称する。この第1回動姿勢にあるときに給紙ローラ25が回転されると、メイントレイ20Aに保持された記録用紙が湾曲路65Aへ向けて給送される。言い換えると、第1回動姿勢は、給紙カセット20がプリンタ部11に装着された状態で、給紙ローラ25をメイントレイ20Aの上面またはメイントレイ20Aに載置された記録用紙の上面に当接可能な位置に案内する姿勢である。
【0032】
セカンドトレイ20Bが上記前方位置から上記後方位置へスライドされると、セカンドトレイ20Bの後方端部43が給送部15の給紙アーム26を押圧して、給紙アーム26を上方へ押し上げる。これにより、給紙アーム26及び給紙ローラ25は、セカンドトレイ20B上に配置されて、給紙ローラ25はセカンドトレイ20Bに保持された記録用紙の上面に当接する(図2(B)参照)。以下、この状態の給紙アーム26及び給紙ローラ25の姿勢を第2回動姿勢と称する。この第2回動姿勢にあるときに給紙ローラ25が回転されると、セカンドトレイ20Bに保持された記録用紙が湾曲路65Aへ向けて給送される。言い換えると、上記第2回動姿勢は、セカンドトレイ20Bが後方位置に配置されたときに、給紙ローラ25をセカンドトレイ20Bの上面またはセカンドトレイ20Bに載置された記録用紙の上面に当接可能な位置に案内する姿勢である。なお、この第2回動姿勢では、給紙アーム26と記録用紙とがなす角が小さくなるため、記録用紙に対する給紙ローラ25の押圧力が不十分となり、記録用紙の給送不良が生じる場合がある。このため、後述するように、給紙アーム26が第2回動姿勢となったときは、付勢機構74によって給紙アーム26に下方への付勢力を付与している。
【0033】
[給送部15]
図2に示されるように、給送部15は、給紙カセット20の上方であって記録部24の下方に設けられている。給送部15は、給紙ローラ25(本発明の給送ローラの一例)と、給紙アーム26(本発明のアームの一例)と、支軸28(本発明の支軸の一例)と、駆動伝達機構27とを備えている。図3乃至図5に示されるように、プリンタ部11には、左右方向9に隔てられた一対のサイドフレーム71と、給紙カセット20の上方で一対のサイドフレーム71間に設けられたベースフレーム72とを備えている。支軸28は、その長手方向が左右方向9に一致するように、ベースフレーム72の上面側で回転可能に支持されている。
【0034】
[給紙アーム26]
図3に示されるように、給紙アーム26は、支軸28に取り付けられている。給紙アーム26の基端部(前方側の端部)が支軸28に回転可能に支持されている。ベースフレーム72の左右方向9の中央部に矩形状の開口30が形成されている。給紙アーム26は、支軸28から後方斜め下方へ延びて、開口30を通ってベースフレーム72の下側に達している。給紙アーム26の基端部には、ねじりコイルバネ33が設けられており、このねじりコイルバネ33によって給紙アーム26は下方へ付勢されている。このように給紙アーム26の基端部が支軸28に回転可能に支持されているため、給紙アーム26は支軸28を中心として図2の矢印29の方向に回動可能である。なお、本実施形態では、給紙アーム26は、図2(A)に示される第1回動姿勢から、図2(B)に示される第2回動姿勢を経て、図2(C)に示される第3回動姿勢となる回動範囲内で回動可能である。ここで、上記第3回動姿勢は、給紙カセット20がプリンタ部11から脱抜されたときに、給紙ローラ25を分離傾斜板22の上端よりも上方へ案内する姿勢である。
【0035】
図7に示されるように、給紙アーム26の先端部に給紙ローラ25が設けられている。したがって、給紙ローラ25は支軸28よりも後方側に配置されている。言い換えると、支軸28は、給紙ローラ25よりも前方側(後述する第2搬送向きとは反対側)に配置されている。給紙ローラ25は、給紙アーム26の左右両側それぞれに設けられている。2つの給紙ローラ25は、左右方向9へ所定間隔を隔てた状態で給紙アーム26の先端部で回転可能に支持されている。
【0036】
このように給紙アーム26が構成されているため、給紙アーム26の回動姿勢に応じて、給紙ローラ25はメイントレイ20Aに保持された記録用紙に所定の付勢力で当接することができ、また、メイントレイ20Aから離間してセカンドトレイ20Bに保持された記録用紙に所定の付勢力で当接することができる。また、給紙ローラ25は、セカンドトレイ20Bの更に上方に持ち上げ可能である。
【0037】
駆動伝達機構27は給紙アーム26に設けられている。給紙ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって給紙用モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙カセット20がプリンタ部11に装着されている場合に、メイントレイ20A又はセカンドトレイ20Bに保持された一番上側の記録用紙に当接された状態で回転することによって、記録用紙をその下側にある他の記録用紙から分離して湾曲路65Aへ向かう第1搬送向きへ給送する。
【0038】
[カム機構50]
カム機構50は、図5及び図6に示されるように、右側の側板90の上端面に形成された高低差のあるカム部51(本発明のカム部の一例)と、給紙アーム26に設けられたカムフォロア52とにより構成されている。
【0039】
側板90の後方寄りの所定位置には、側面視でV字状の切欠部53が形成されている。切欠部53は、前方側に位置する下り傾斜面53Aと、後方側に位置する上り傾斜面からなる第1ガイド面53BとによってV字状に形成されている。側板90の上端面には、第1ガイド面53Bから後方側へ連続するように水平状の第2ガイド面54が設けられている。カム部51は、第1ガイド面53Bと第2ガイド面54とによって実現されている。つまり、第1ガイド面53B及び第2ガイド面54が、カムフォロア52をガイドするガイド面の役割を担っている。なお、切欠部53の下り傾斜面53Aには、プリンタ部11に給紙カセット20が装着された状態で、カムフォロア52が少しの間隔をあけて対向する(図6参照)。
【0040】
カムフォロア52は、図7に示されるように、給紙アーム26を基端として、支軸28の軸方向に沿って右方向(側板90側の方向)へウィング状に延びている。このカムフォロア52の延出端55(右側の端部)は、カム部51の各ガイド面53B,54に当接可能なように、カム部51の上方に達している。カムフォロア52の上端部には複数のリング部31が設けられており、このリング部31に支軸28が挿通される(図3参照)。これにより、カムフォロア52は、給紙アーム26とともに、支軸28によって回動可能に支持される。
【0041】
図7に示されるように、カムフォロア52の延出端55には、POM(ポリアセタール樹脂)で形成された筒状の回転体92(本発明の回転体の一例)が取り付けられている。詳細には、延出端55の下端には、右方向へ突出する半円柱状の支軸93が設けられており、この支軸93に回転体92が回転可能に支持されている。支軸93よりもカムフォロア52の上端側には鉤状のストッパー94が設けられており、このストッパー94によって回転体92が支軸93から容易に外れないようになっている。本実施形態では、回転体92の外周面がカム部51の各ガイド面53B,54に当接するように、カム部51及びカムフォロア52が位置決めされている。
【0042】
[付勢機構74]
付勢機構74は、給紙ローラ25がセカンドトレイ20Bに持ち上げられたときに、給紙アーム26の先端側を下方へ付勢するものである。この付勢機構74は、給紙アーム26の先端に取り付けられたねじりコイルバネ75(本発明の付勢部材の一例,図7参照)と、開口30の後方側の縁部に設けられた当接片76(図3,図8参照)とによって構成されている。当接片76は、支軸28を中心に給紙アーム26が回動したときに、ねじりコイルバネ75の後端部75Aが移動する経路に設けられている。給紙アーム26が第1回動姿勢(図2(A),図8(A)参照)にあるときは、給紙アーム26は上述したねじりコイルバネ33のバネ力のみによって下方へ付勢されている。しかし、給紙アーム26が第1回動姿勢(図2(A),図8(A)参照)から上方へ持ち上げられると、後端部75Aも上方へ移動し、その移動過程において後端部75Aが当接片76の下側面に下方から上方へ向けて当接する(図8(B)参照)。このとき、バネ力を増加する方向にねじりコイルバネ75が巻き上げられるから、ねじりコイルバネ33のバネ力に加えて上記増加たバネ力が給紙アーム26を下方へ付勢する力となって給紙アーム26に作用する。これにより、記録用紙に対する給紙ローラ25の圧接力が増加し、セカンドトレイ20Bからの給送不良が防止される。
【0043】
[給紙アーム26の昇降動作]
以下、適宜図面を参照しながら、給紙カセット20の挿抜動作に伴う給紙アーム26の昇降動作について説明する。
【0044】
給紙カセット20がプリンタ部11に装着された状態で、且つセカンドトレイ20Bが前方位置に配置された状態では、図8(A)に示されるように、給紙アーム26は第1回動姿勢を維持する。このとき、カムフォロア52の回転体92は、切欠部53の中央部から少しの隙間を隔てた位置に配置されている。回転体92と切欠部53との隙間は、メイントレイ20Aに保持された記録用紙の量に比例する。つまり、記録用紙の量が多いほど上記隙間も大きくなる。
【0045】
給紙カセット10がプリンタ部11に装着された状態から、給紙カセット10が前方へ引き出されると、まず、第1ガイド面53Bが回転体92に当接する。その後、更に給紙カセット10が前方へ引き出されると、回転体92が第1ガイド面53Bを転がりながら第2ガイド面54側(後方)へ向けて相対的に移動する(図8(B)参照)。そして、図8(B)に示されるように、回転体92が第2ガイド面54に到達する少し手前まで相対移動すると、ねじりコイルバネ75の後端部75Aが当接片76に当接する。この状態から更に給紙カセット10が前方へ引き出されると、ねじりコイルバネ75のバネ力が増加して、給紙アーム26がねじりコイルバネ75によって下方へ付勢される。更に給紙カセット10が前方へ引き出されて、回転体92が第2ガイド面54に到達すると、給紙アーム26は、図2(C)に示される第3回動姿勢となり、給紙ローラ25が分離傾斜板22の上端よりも上方位置に配置される。この状態で更に給紙カセット20が引き出されると、給紙ローラ25が分離傾斜板22に衝突せずにプリンタ部11から引き抜かれる。
【0046】
[実施形態の効果]
このように給紙アーム26が昇降するため、動作給紙カセット10の前方への引き出し動作中にねじりコイルバネ75による下方への付勢力が給紙アーム26に付勢されることによって、回転体92と第1ガイド面53Bとの接触圧も増加しても、回転体92と第1ガイド面53Bとの間には、第1ガイド面53Bに対する回転92の転がり摩擦しか生じないので、給紙カセット10の引き出し動作が円滑に行われる。また、摩擦抵抗が極めて小さいので、回転体92や第1ガイド面53Bの摩耗を起因とする給紙カセット10の引き出し不良が生じなくなる。
【0047】
なお、上述の実施形態では、給紙カセット20にセカンドトレイ20Bが設けられた構成について説明したが、メイントレイ20Aのみで構成された給紙カセット20についても、本発明は適用可能である。この場合、メイントレイ20Aに所定量以上の記録用紙が積載されたことにより、給紙アーム26と記録用紙との角度がより小さくなって給送不良が生じるおそれがある。この給送不良を防止するために、付勢機構74は、給紙アーム26と記録用紙との角度が所定角度未満となったときに付勢力を給紙アーム26に付与するのが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
10:複合機
15:給送部
20:給紙カセット
20A:メイントレイ
20B:セカンドトレイ
22:分離傾斜板
50:カム機構
51:カム部
52:カムフォロア
74:付勢機構
75:ねじりコイルバネ
86:用紙保持面
90:側板
92:回転体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に挿抜可能に設けられ、第1向きへ給送されるシートを保持可能な保持面を有し、上記第1向きの先端部に上記保持面から起立する傾斜板が設けられた第1トレイと、
上記第1トレイの上方に設けられた支軸を中心に回動可能に支持され、上記支軸から上記第1向き斜め下方へ延びるアームと、
上記アームの先端に回転可能に支持され、上記第1トレイに保持されたシートに接した状態で回転駆動されることでシートを上記第1向きへ給送する給送ローラと、
少なくとも上記給送ローラの下端が上記傾斜板の上端よりも上方に持ち上げられたときに上記アームを下方へ付勢する付勢部材と、
上記アームから上記支軸の軸方向に沿って延びるカムフォロアと、
上記カムフォロアに当接可能なように上記第1トレイに設けられ、上記第1トレイの脱抜動作に伴って上記カムフォロアが案内されることにより、上記給送ローラが上記傾斜板から退避するように上記アームを持ち上げるカム部と、
上記カムフォロアに設けられ、上記カム部に当接する当接部に回転可能に支持された回転体と、を具備するシート給送装置。
【請求項2】
上記第1トレイの上部に設けられ、シートを保持可能な保持面を有し、上記傾斜板よりも上記第1向きの上流側へ離間した第1姿勢と上記第1姿勢よりも上記傾斜板に近接した第2姿勢との間で移動可能な第2トレイを更に備え、
上記付勢部材は、上記第1姿勢から上記第2姿勢に移動する上記第2トレイによって上記アームが押し上げられることにより上記給送ローラが上記第2トレイ上に持ち上げられたときに上記給送ローラを下方へ付勢する請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
上記カム部は、上記第1向きに沿って延びるように上記第1トレイに設けられた側板の上端面に形成されている請求項1又は2に記載のシート給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−140196(P2012−140196A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292800(P2010−292800)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】