説明

シート貼付装置

【課題】接着シートを支持する支持手段周りの構造の簡略化を図ることができるようにすること。
【解決手段】シート貼付装置10は、接着シートSを支持する支持手段22と、この支持手段22に一体的に設けられた押圧手段23と、支持手段22及び押圧手段23をスタンパSTに向かって変位可能な変位手段25と、支持手段22及び押圧手段23とスタンパSTとを当該被着体スタンパSTの被着面と平行な方向に相対移動可能な移動手段26とを備えて構成されている。変位手段25は、支持手段22とは別体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置に係り、更に詳しくは、支持手段に支持された接着シートを被着体に押圧して貼付することができるシート貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板等の被着体に接着シートを貼付するシート貼付装置が広く利用されるに至っており、かかるシート貼付装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献のシート貼付装置は、接着シートを支持する支持手段と、この支持手段に支持された押圧ローラと、支持手段を傾斜姿勢と水平姿勢との間で変位させる変位手段と、支持手段を水平方向に移動させる移動手段とを備えている。同装置において接着シートの貼付を行う場合、先ず、変位手段を作動して接着シートを支持する支持手段を傾斜姿勢とし、接着シートの一端側を押圧ローラを介して被着体に押圧する。その後、移動手段を作動して支持手段を移動し、接着シートの一端側から他端側に向かって押圧ローラを転動させて被着体に押圧することにより接着シートが貼付される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−134020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、支持手段が変位手段に連結されて支持されるので、支持手段とこれに連結される各手段とからなるユニットにおいて局所的に種々の機能が集中することとなる。具体的には、前記ユニットにおいて、接着シートを支持する機能と押圧ローラを支持する機能と支持手段を水平姿勢と傾斜姿勢との間で変位させる機能とが局所的に集中する。このため、前記ユニットの一部のメンテナンスを行う場合、大掛かりとなって作業に支障を来たしたり、各機能の制御の集中化によって制御プログラムも複雑化する、という不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、接着シートを支持する支持手段周りの構造の簡略化を図ることができるシート貼付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、接着シートを支持する支持手段と、この支持手段に一体的に設けられた押圧手段と、支持手段及び押圧手段を被着体に向かって変位可能な変位手段と、支持手段及び押圧手段と被着体とを当該被着体の被着面と平行な方向に相対移動可能な移動手段とを備え、前記変位手段により支持手段及び押圧手段を変位して、支持手段に支持された接着シートの一端側を押圧手段によって被着体に押圧した後、移動手段により前記相対移動を行うことで前記接着シートの一端側から他端側に押圧手段を変位し、接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置であって、
前記変位手段は、支持手段とは別体に設けられる、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記変位手段は、前記押圧手段による接着シートの押圧力を調整可能な調整手段を備える、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
また、前記調整手段は、前記移動手段による相対移動を案内するレールを備え、このレールは、撓み変形可能な弾性部材により構成されるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変位手段と支持手段とを別体としたので、支持手段を含むユニットにおいて種々の機能が局所的に集中することを抑制することが可能となる。これにより、前記ユニットのメンテナンス作業の簡略化を図ることができる他、各機能の制御が集中することを緩和でき、制御プログラム製作の容易化を実現することが可能となる。
【0010】
また、調整手段によって押圧手段による接着シートの押圧力を調整可能とした場合、接着シートの一端側から他端側に亘って、単位面積当たり(単位幅当たり)の押圧力を一定に保つといった制御も可能となり、部分的に過剰な押圧力が加わったり、押圧力が不足したりすることなく接着シートを貼付することができる。
【0011】
更に、撓み変形可能な弾性部材からなるレールにより移動手段による相対移動を案内する場合、レールが弾性的に撓み変形することで、例えば、接着シート一端側から中央領域にかけて押圧力を増大させ、接着シート中央領域から他端側にかけて押圧力を減少させることができる。これにより、光ディスク等に用いられる円形の接着シートであっても、接着シートの貼付初期領域や貼付後期領域において単位面積当たり(単位幅当たり)に過剰な押圧力が加わることを防止しつつ、構造の簡略化も達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るシート貼付装置の部分断面概略正面図。
【図2】接着シートの貼付初期段階の説明図。
【図3】接着シートの貼付後期段階の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に明示しない限り、「上」、「下」、
「左」、「右」は、図1を基準として用いる。
【0014】
図1〜図3において、シート貼付装置10は、ケース11を備えており、このケース11は、底壁12と、この底壁12から立設する側壁13と、この側壁13の上端に設けられた頂壁15と、側壁13に連設されて底壁11の上方に所定間隔を隔てて位置する中間壁16とを備え、この中間壁16を挟んで閉塞した上空間18及び下空間19を形成している。また、シート貼付装置10は、頂壁15に形成された開口15A内に位置してスタンパSTを保持可能な保持手段21と、上空間18内に設けられて接着シートSを支持する支持手段22と、この支持手段22に一体的に設けられた押圧手段23と、中間壁16上に設けられた変位手段25と、支持手段22及び押圧手段23を左右方向に移動させる移動手段26とを備えている。なお、接着シートSの接着剤層Aは、紫外線硬化型とされ、基材シートBSの一方の面に積層されている。また、接着シートSの平面形状は円形とされ、その面内中央領域には中心孔S1が形成されている。
【0015】
前記保持手段21は、下面側に図示しない吸着孔を備え、当該吸着孔が図示しない吸引ポンプに接続されてスタンパSTを吸着保持可能に設けられている。保持手段21は、頂壁15に連結される支持アーム28を介して図1中矢印R1方向に回動可能に設けられている。また、保持手段21の上面には把手29が設けられている。
【0016】
前記支持手段22は、フレームFと、当該フレームFの左方に設けられたヒンジ部35と、このヒンジ部35によって水平姿勢と傾斜姿勢との間で変位可能に支持された吸着テーブル31と、シリンダ33によってそれぞれが接離動作可能に設けられた複数のチャック32とを備えている。吸着テーブル31は、上面側に図示しない吸着孔を備え、当該吸着孔が図示しない吸引ポンプに接続されて接着シートSを吸着保持可能に設けられている。チャック32は、吸着テーブル31に形成された貫通孔31Aを通り、吸着テーブル31上に載置された接着シートSの中心孔S1に当接して接着シートSの位置決めを行う。
【0017】
前記押圧手段23は、吸着テーブル31の右端側における図1中紙面直交方向両側にそれぞれ設けられたL型ブラケット37と、当該L型ブラケット37介して回転可能に支持された弾性部材によって形成された押圧ローラ38と、各L型ブラケット37の下端にそれぞれ回転可能に設けられたローラ39とを有する。押圧ローラ38の上端は、吸着テーブル31の上面の延長面の面内に位置し、チャック32によって位置決めされた接着シートSの右端側が押圧ローラ38の上端に位置するようになっている。
【0018】
前記変位手段25は、支持手段22とは別体に設けられ、押圧手段23の各ローラ39の転動を案内すべく、図1中紙面直交方向両側にそれぞれ設けられた一対のレール41と、各レール41に出力軸42Aが連結され、出力軸42Aの出力トルクを制御可能な調整手段としての一対の直動モータ42とを備えている。各レール41は、撓み変形しない構造とされている。各直動モータ42は、レール41を介して吸着テーブル31をヒンジ部35を中心として変位可能とする。
【0019】
前記移動手段26は、中間壁16上に設けられて左右方向にスライダ26Aを移動させる直動モータからなり、スライダ26Aは、フレームFに連結されている。従って、移動手段26は、スライダ26Aを移動させることにより、支持手段22及び押圧手段23を左右方向に移動可能となっている。
【0020】
なお、下空間19内には、紫外線照射手段45が設けられている。この紫外線照射手段45は、紫外線ランプ46と、上面でスタンパSTを支持するテーブル47と、このテーブル47を左右方向移動させるレール部材48とを備え、テーブル47に設けられた把手49を介して下空間19からテーブル47を出し入れ可能に設けられている。
【0021】
次に、本実施形態に係る接着シートSの貼付方法について説明する。
【0022】
先ず、保持手段21を図1中二点鎖線で示される位置に回動した後、開口15Aを通じて接着シートSの基材シートBSを下方にし、中心孔S1内にチャック32が位置するようにして接着シートSを吸着テーブル31上に載置する。次いで、チャックシリンダ33により各チャック32が離間する方向に作動され、接着シートSの面方向の位置決めを行った後、図示しない吸引ポンプを作動させて吸着テーブル31上面で接着シートSを吸着支持させる。
【0023】
次いで、図1中二点鎖線で示される位置の保持手段21にスタンパSTを図示しない位置決め手段で位置決めして吸着保持させる。その後、把手29を持って開口15Aを閉塞するように保持手段21を回動し、図1中実線で示されるように保持手段21及びスタンパSTの被着面となる下面を水平姿勢とした状態とする。
【0024】
この状態から、変位手段25の各直動モータ42を作動させてレール41を上昇させると、図2に示されるように、吸着テーブル31及び押圧手段23がヒンジ部35によって回動して水平姿勢から右上がりの傾斜姿勢となる。そして、吸着テーブル31に吸着支持された接着シートSの右端側(一端側)が押圧ローラ38によってスタンパSTの下面に押圧されて貼付される。
【0025】
接着シートSの右端側が貼付された後、移動手段26を作動させ、スライダ26Aを介して吸着テーブル31及び押圧手段23をスタンパSTの下面と平行な方向すなわち左方向に移動させる(図3参照)。この移動時に、レール41上でローラ39が転動して吸着テーブル31及び押圧手段23の水平移動が案内される。これにより、押圧ローラ38が接着シートSの右端側から当該接着シートSの下面を転動して左端側(他端側)に変位し、押圧ローラ38によって接着シートSの全領域がスタンパSTに押圧されて貼付される。
【0026】
ここで、移動手段26の作動中すなわち押圧ローラ38の転動中において、図示しない制御手段により直動モータ42が制御され、予め設定された制御プログラムに応じて出力軸42Aの出力トルクが制御されて押圧ローラ38による接着シートSの押圧力が調整される。具体的には、押圧ローラ38が接着シートSの右端の貼付初期領域から中央領域に向かうに従って、押圧ローラ38と接着シートSとの接触面積が拡大するので、接着シートSの単位面積当たり(単位幅当たり)の押圧力を一定に保つように出力軸42Aの出力トルクを次第に上げていく。一方、押圧ローラ38が接着シートSの中央領域から左端の貼付後期領域に向かうに従って、押圧ローラ38と接着シートSとの接触面積が縮小するので、接着シートSの単位面積当たり(単位幅当たり)の押圧力を一定に保つように出力軸42Aの出力トルクを次第に下げていく。
【0027】
スタンパSTへの接着シートSの貼付が完了した後、把手29を持って保持手段21を回動して当該保持手段21から接着シートSが貼付されたスタンパSTを取り外す。その後、下空間19から引き出されたテーブル47上に接着シートSを上向きとしてスタンパSTを載置する。そして、テーブル47を下空間19内に投入し、UVランプ46により接着シートSに紫外線を照射させて接着剤層Aを硬化させる。その後、テーブル47を再度引き出し、接着剤層Aが硬化した接着シートS付きスタンパSTを取り出す。この取り出された接着シートS付きスタンパSTは、例えば、接着剤層Aに形成された凹凸等を検査する検査次工程等に搬送される。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、支持手段22と変位手段25とが別体となるので、支持手段22と押圧手段23とを独立して取り扱うことができ、例えば、メンテナンス作業の容易化を図ることができる。また、変位手段25を制御するプログラムと、支持手段22を制御するプログラムとは、別個独立したものとなり、各プログラムの簡略化を通じて当該プログラムを製作する労力を軽減することができる。
【0029】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
例えば、本発明における被着体としては、スタンパに限定されるものではなく、シリコンウエハや化合物ウエハ等の半導体ウエハ、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等であってもよい。
【0031】
また、本発明のシート貼付装置10は、多数の被着体に接着シートSを順次貼付する量産タイプのものに適用してもよい。
【0032】
更に、移動手段となる直動モータを保持手段21側に設け、当該保持手段21をスタンパSTの面と平行に移動することにより、押圧手段23とスタンパSTとの相対移動を行ってもよいし、保持手段21と支持手段22との両方を移動させて前記相対移動を行ってもよい。
【0033】
また、前記移動手段26や直動モータ42は、単軸ロボット、エアシリンダ、油圧シリンダ等の駆動手段に代えてもよい。
【0034】
また、変位手段25の各レール41を撓み変形可能な金属材や樹脂材等によって構成し、押圧ローラ38の転動中において、ローラ39が転動する位置においてレール41が下方に撓むように変形するように構成してもよい。このような構成とすることで、押圧ローラ38の押圧位置に応じて、直動モータ42の出力軸の出力トルクを刻々制御するといった複雑な制御をしなくても、各レール41の撓み変形を利用してそれに近い押圧を実現することができる。具体的には、図1に示されるように、各直動モータ42の出力軸42Aから左右にオーバーハングするように撓み変形可能なレール41をそれぞれ取り付ける。そして、直動モータ42がそれぞれの出力軸42Aを所定の位置にまで伸長させて停止する。すると、ローラ39が出力軸42Aから遠くに位置している場合、つまり、接着シートSの貼付初期領域や貼付後期領域に位置しているときには、レール41の撓み変形量が大きくなる分、押圧ローラ38が接着シートSを押圧する押圧力が小さくなる。一方、移動手段26の作動によってローラ39が出力軸42Aに近付くに従って、つまり、押圧ローラ38が接着シートSの中央領域に近付くに従って、レール41の撓み変形量が小さいくなる分、押圧ローラ38が接着シートSを押圧する押圧力が大きくなる。このような簡単な構成によって、接着シートSの貼付初期領域や貼付後期領域において単位面積当たり(単位幅当たり)に過剰な押圧力が加わることを防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 シート貼付装置
22 支持手段
23 押圧手段
25 変位手段
26 移動手段
41 レール(調整手段)
42 直動モータ(調整手段)
S 接着シート
ST スタンパ(被着体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シートを支持する支持手段と、この支持手段に一体的に設けられた押圧手段と、支持手段及び押圧手段を被着体に向かって変位可能な変位手段と、支持手段及び押圧手段と被着体とを当該被着体の被着面と平行な方向に相対移動可能な移動手段とを備え、前記変位手段により支持手段及び押圧手段を変位して、支持手段に支持された接着シートの一端側を押圧手段によって被着体に押圧した後、移動手段により前記相対移動を行うことで前記接着シートの一端側から他端側に押圧手段を変位し、接着シートを被着体に貼付するシート貼付装置であって、
前記変位手段は、支持手段とは別体に設けられていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記変位手段は、前記押圧手段による接着シートの押圧力を調整可能な調整手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記移動手段による相対移動を案内するレールを備え、このレールは、撓み変形可能な弾性部材により構成されていることを特徴とする請求項2記載のシート貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−16562(P2011−16562A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163530(P2009−163530)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】