説明

シーブ溝の摩耗量測定装置

【課題】シーブの交換を要する程度にシーブ溝が摩耗しているかどうかを容易に判断することができるシーブ溝の摩耗量測定装置の提供。
【解決手段】ロープ3が巻き掛けられるシーブ溝10と、このシーブ溝10に連設され回転中心10b側に位置する基部10cと、この基部10cと回転中心10bとの間に形成される空間部10dとを有するエレベータのシーブ4に形成される前述のシーブ溝10の摩耗量測定装置が、シーブ溝10に連設される基部10cを貫通し、シーブ溝10の底面10aと空間部10dとを連通させ、シーブ4の回転中心10bに向かって延設させた貫通穴50と、シーブ溝10に巻き掛けられたロープ3の下端3aとシーブ溝10の底面10aとの間の寸法が正常範囲内に含まれるか否かを判断するための第1測定指標を有する測定ゲージ53とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに備えられロープが巻き掛けられるシーブに形成されたシーブ溝の摩耗量を測定するに際し用いられるシーブ溝の摩耗量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5はエレベータの概略構成を示す側面図である。一般にエレベータは、この図5に示すように、昇降路1内において昇降する乗かご2と釣り合いおもり6とがロープ3によって釣瓶式に連結されている。また、シーブ4及びそらせ車5には、前述のロープ3がそれぞれ巻き掛けられており、シーブ4には回転力を伝達するモータと減速機とから成る駆動装置7が接続されている。駆動装置7によってシーブ4に回転力が伝達されると、そのシーブ4の回転力によってロープ3が移動し、乗かご2と釣り合いおもり6が昇降路1内を昇降する。
【0003】
ところで、シーブ4とロープ3との間には、エレベータの運転時に摩擦力が加わることから、シーブ4とロープ3との接触部が経年的に摩耗する。シーブ4のロープ3との接触部であるシーブ溝の摩耗が進むと、ロープ3へ回転力を十分に伝えることができなくなり、ロープ3とシーブ4との間でスリップが生じ、乗かご2の走行性能が劣化する。また、シーブ溝が摩耗することに伴ってロープ3の異常摩耗が生じやすい。このようなことから、シーブ溝の摩耗量の測定は、定期的に実施される重要な保守点検項目となっている。
【0004】
図6は従来のシーブ溝の摩耗量測定装置の第1例を示す図で、(a)図は摩耗量測定装置を構成するディップスゲージを示す図、(b)図は摩耗量測定装置を構成するノギスを示す図である。
【0005】
図6の(a)図に示すように、シーブ4のシーブ溝10は、シーブ4にロープ3を巻き掛ける溝であり、ロープ3への駆動力が増すようにくさび状に形成され、鋭角な角度を有している。このため、ロープ3がシーブ溝10の底面に着いてしまうと、ロープ3をシーブ溝10に食い込ませることができなくなり、ロープ3に対する駆動力が大幅に低下してしまい、上述のような問題を生じる。この図6に示す従来の第1例は、ディップスゲージ20とノギス21によって構成されている。シーブ溝10の摩耗量の測定に際しては、シーブ溝10に巻き掛けられたロープ3の下端とシーブ溝10の底面との距離L1を測定することが必要になるが、この従来の第1例にあっては、シーブ溝10をロープ3が覆っているために、前述の距離L1を直接には測定することができない。
【0006】
そこで、この従来の第1例にあっては、同図6の(a)図に示すように、ディップスゲージ20でシーブ4の外周の機械加工面4aからのロープ3の突出量L3を測定することが行われる。また、同図6の(b)図に示すように、シーブ4に巻き掛けられていないロープ3の部分の外径Dをノギス21で測定することが行われる。なお、シーブ溝10の深さL2は、予め設定され経年的には変化しないと考えられる部分である。前述したディップスゲージ20で計測した突出量L3と、ノギス21で計測したロープ3の外径Dと、予め設定されるシーブ溝10の深さL2とから、ロープ3の下端とシーブ溝10の底面との距離L1は、次の計算式によって求められる。
L1=L2+L3−D
すなわち、従来の第1例は、ディップスゲージ20とノギス21とによって間接的に、ロープ3の下端とシーブ溝10の底面との距離L1を把握し、シーブ溝10が摩耗限界に至っているかどうか判断しようとするものであった。
【0007】
図7は従来のシーブ溝の摩耗量測定装置の第2例を示す図である。この図7に示す従来の第2例は、特許文献1に示されるものであり、鉛直方向に挿入穴を有し上下端に基準面を有するガイド筒30と、このガイド筒30に挿入され、下方にロープ径に相応する外径を有する球体状部32を有し、上方に指標33を有し、上下に移動可能な棒状のゲージ31とによって構成されている。この従来の第2例にあっては、ゲージ31をガイド筒30に挿入し、ロープ3が巻き掛けられていないシーブ4のシーブ溝10にゲージ31の下方の球体状部32を接触させ、ガイド筒30の下端の基準面をシーブ4の機械加工面4aに押し当てた状態にして、ガイド溝30の上端からの指標33の突出量L4を測定するようにしている。これによって、間接的にロープ3の下端とシーブ溝10の底面との距離を把握し、シーブ溝10が摩耗限界に達しているかどうかを判断するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−338157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した従来の第1例及び第2例は、シーブ溝10が摩耗しているかどうかを、ロープ3を介して、もしくはロープ径に相応する外径Dを有する球体状部32を介して演算により測定するものであることから、摩耗量測定作業が煩雑になりがちであった。
【0010】
また一般に、シーブ4はシーブ溝10の形状が異なるものが複数存在するが、前述の従来の第1例にあっては、シーブ溝10の形状に応じて複数の計算式が存在する。したがって、シーブ溝10の摩耗量の計算式を間違え大きな測定誤差を招く虞があった。また一般に、ロープ3は摩耗によって細くなる傾向にあるが、従来の第2例にあっては、ゲージ31の下端の球体状部32の形状は一定であるので、測定誤差が大きくなりやすい。
【0011】
このようなことから、前述した従来の第1例及び第2例におけるような測定誤差を考慮して、従来にあってはシーブ4を摩耗限界まで使うことはせず、尤度を大きく取ってシーブ4を交換するようにしている。このために従来にあっては、シーブ4の交換頻度が多くなり、このシーブ4の交換のための費用が高くなっていた。
【0012】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、シーブの交換を要する程度にシーブ溝が摩耗しているかどうかを容易に判断することができるシーブ溝の摩耗量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るシーブ溝の摩耗量測定装置は、乗かごと釣り合いおもりを連結するロープが巻き掛けられるシーブ溝と、このシーブ溝に連設され回転中心側に位置する基部と、この基部と前記回転中心との間に形成される空間部とを有するエレベータのシーブに形成される前記シーブ溝の摩耗量測定に際して用いられるシーブ溝の摩耗量測定装置において、前記シーブ溝に連設される前記基部を貫通し、前記シーブ溝の底面と前記空間部とを連通させ、前記シーブの回転中心に向かって延設させた貫通穴と、前記シーブ溝に巻き掛けられた前記ロープの下端と前記シーブ溝の前記底面との間の寸法が正常範囲内に含まれるか否かを判断するための第1測定指標を有し、前記貫通穴に前記空間部側から前記シーブ溝の前記底面に向かって挿入され、先端部が前記ロープの前記下端に当接する測定ゲージとを備えたことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、シーブ溝の摩耗量の測定に際しては、シーブ溝に巻き掛けたロープの直下に貫通穴を位置させた状態で、測定ゲージをシーブの空間部側からシーブの基部の貫通穴に挿入させ、この測定ゲージの先端部をロープの下端に当接させることが行われる。このとき例えば、測定ゲージの第1測定指標がシーブの基部の端面から空間部側へ突出していなければ、ロープの下端とシーブ溝の底面との間の寸法が正常範囲内に含まれるものであり、シーブ溝の摩耗量が摩耗限界に至っていないと判断することができる。したがってこの場合は、シーブの交換は不要となる。また例えば、測定ゲージの第1測定指標がシーブの基部の端面から空間部側へ突出していれば、ロープの下端とシーブ溝の底面との間の寸法が正常範囲を超えており、シーブ溝の摩耗量が摩耗限界に至っていると判断することができる。したがってこの場合は、シーブの交換が必要となる。すなわち本発明は、シーブ溝に連設される基部の貫通穴に測定ゲージを挿入した際に、シーブの基部の端面からの第1測定指標の突出状態を確認するだけで、シーブの交換を要する程度にシーブ溝が摩耗しているかどうかを容易に判断することができる。
【0015】
また、本発明は、前記発明において、前記シーブの前記基部の前記回転中心側に位置する端面を、前記貫通穴の穿設方向と直交する方向に設けるとともに、前記第1測定指標よりも前記回転中心側に位置する前記測定ゲージ部分に設けられ、かつ、前記シーブ溝に摩耗を生じていないときに前記シーブ溝に前記ロープが巻き掛けられた状態において、前記測定ゲージが前記貫通穴に挿入され、前記測定ゲージの前記先端部が前記ロープの前記下端に当接した際に、前記シーブの前記基部の前記端面に一致するように形成した第2測定指標を設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、シーブの基部の端面と第2測定指標との距離に基づいて、シーブ溝の摩耗量を把握することができる。
【0016】
また、本発明は、前記発明において、前記シーブの前記基部の前記端面は、前記シーブ溝の摩耗に伴う前記第1測定指標の前記空間部方向への突出状態、及び前記第2測定指標の前記空間部方向への突出寸法の測定時の基準面を形成することを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、前記発明において、前記シーブは、前記回転中心を囲むように複数の空間部を有するものから成り、前記複数の空間部のそれぞれに対応する前記基部部分毎に、前記貫通穴を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシーブ溝の摩耗量測定装置は、シーブ溝に連設される基部を貫通し、シーブ溝の底面と空間部とを連通させ、シーブの回転中心に向かって延設させた貫通穴と、シーブ溝に巻き掛けられたロープの下端とシーブ溝の底面との間の寸法が正常範囲内に含まれるか否かを判断するための第1測定指標を有し、貫通穴に空間部側からシーブ溝の底面に向かって挿入され、先端部がロープの下端に当接する測定ゲージとを備えたことから、シーブ溝に連設される基部の貫通穴に測定ゲージを挿入した際に、シーブの基部の端面からの第1測定指標の突出状態を確認するだけで、シーブの交換を要する程度にシーブ溝が摩耗しているかどうかを容易に判断することができる。これにより、従来に比べてシーブ溝の摩耗量測定作業の能率を向上させることができるとともに、測定誤差が少なくなり測定精度を高めることができる。また、これに伴って、シーブをシーブ溝の摩耗限界まで、あるいは摩耗限界付近まで使用することが可能になり、シーブの交換頻度を少なくすることができる。これにより、従来に比べてシーブの交換のための費用を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るシーブ溝の摩耗量測定装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1のA−A断面に相応する要部拡大図である。
【図3】経年的にシーブ溝に摩耗を生じたときの第1の状態を示す要部拡大図である。
【図4】経年的にシーブ溝に摩耗を生じたときの第2の状態を示す要部拡大図である。
【図5】エレベータの概略構成を示す側面図である。
【図6】従来のシーブ溝の摩耗量測定装置の第1例を示す図で、(a)図は摩耗量測定装置を構成するディップスゲージを示す図、(b)図は摩耗量測定装置を構成するノギスを示す図である。
【図7】従来のシーブ溝の摩耗量測定装置の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るシーブ溝の摩耗量測定装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係るシーブ溝の摩耗量測定装置の一実施形態を示す全体構成図、図2は図1のA−A断面に相応する要部拡大図である。
【0022】
これらの図1,2に示すように、本実施形態に係るシーブ溝の摩耗量測定装置は、前述した乗かご2と釣り合いおもり6を連結するロープ3が巻き掛けられ、断面がくさび状のシーブ溝10と、このシーブ溝10に連設され回転中心10b側に位置する基部10cと、この基部10cと回転中心10bとの間に形成される空間部10dとを有するエレベータのシーブ4に形成される前述のシーブ溝10の摩耗量測定に際して用いられるものである。図1に示すように、シーブ4は、回転中心10bを囲むように複数、例えば4つの空間部10dを有している。なお、図2はシーブ溝10に摩耗を生じていないときに、シーブ溝10にロープ3が巻き掛けられた状態を示している。
【0023】
本実施形態は、シーブ溝10に連設された基部10cを貫通し、シーブ溝10の底面10aと前述の空間部10dとを連設させ、シーブ4の回転中心10bに向かって延設させた貫通穴50を備えている。例えば4つの空間部10dに対応する4箇所の基部10c部分に、それぞれ1つの貫通穴50を形成してある。
【0024】
また、本実施形態は図2に示すように、シーブ溝10に巻き掛けられたロープ3の下端3aとシーブ溝10の底面10aとの間の寸法が正常範囲内に含まれるか否かを判断するための第1測定指標54を有し、貫通穴50に空間部10d側からシーブ溝10の底面10aに向かって挿入され、先端部がロープ3の下端3aに当接する棒状の測定ゲージ53を備えている。この測定ゲージ53は、例えば図1に示す貫通穴50と回転中心10bとを結ぶ直線的な領域内に含まれる空間部10dの該当する部分の長さ寸法よりも短い長さ寸法に設定してある。
【0025】
測定ケージ53に設けられる第1測定指標54は、シーブ溝10の摩耗限界を規定するものであり、例えば、シーブ溝10の底面10aと基部10cの端面52との距離、すなわち基部10cの厚さ寸法よりもわずかに長い寸法L7を有するように設定してある。
【0026】
図1,2に示すように、シーブ4の基部10cの回転中心10b側に位置する端面52は、貫通穴50の穿設方向と直交する方向に設けてある。例えば、4つの空間部10dに対応する4箇所の基部10c部分に、それぞれ貫通穴50の穿設方向と直交する端面52を形成してある。
【0027】
また、本実施形態は、第1測定指標54よりも回転中心10b側に位置する測定ゲージ53部分に設けられ、かつ、シーブ溝10に摩耗を生じていないときにシーブ溝10にロープ3が巻き掛けられた状態において、測定ゲージ53が貫通穴50に挿入され、測定ゲージ53の先端部がロープ3の下端3aに当接した際に、シーブ4の基部10cの端面52に一致するように形成した線状の第2測定指標55を設けてある。
【0028】
前述したシーブ4の基部10cの端面52は、シーブ溝10の摩耗に伴う第1測定指標54の空間部10d方向への突出状態、及び第2測定指標55の空間部10d方向への突出寸法の測定時における基準面を形成している。
【0029】
このように構成した本実施形態に係る測定ゲージ53を用いてシーブ溝10の摩耗量を測定するに際しては、図2に示すように、シーブ溝10に巻き掛けたロープ3の直下に貫通穴50を位置させた状態で、測定ゲージ53を空間部10d側からシーブ4の基部10cの貫通穴50に挿入させ、この測定ゲージ53の先端部をロープ3の下端3aに当接させることが行われる。なお、図2は前述したようにシーブ溝10に摩耗を生じていないときの状態を示している。このようにシーブ溝10の摩耗量がゼロのときには、ロープ3の下端3aとシーブ溝10の底面との間の寸法は初期値L1aとなっている。
【0030】
図3は、経年的にシーブ溝に摩耗を生じたときの第1の状態を示す要部拡大図である。
【0031】
エレベータの稼動に伴って、図3に示す第1の状態のようにシーブ溝10に経年的に摩耗が生じたとき、ロープ3は基部10c側に沈下した状態となる。この第1の状態にあっては、ロープ3の下端3aはシーブ溝10の底面10aに近づくものの、シーブ溝10の底面10aに接触するまでには至っていない。この第1の状態のときに測定ゲージ53を貫通穴50に挿入して摩耗量の測定を行った際には、測定ゲージ53の第2測定指標55は基部10cの端面52から寸法L21だけ突出する。このときの寸法L21は、シーブ溝10に対するロープ3の沈下量L20に等しい。この第1の状態のように、シーブ溝10に摩耗を生じ始めているものの、第1測定指標54が基部10cの端面52から突出していないときには、ロープ3の下端3aとシーブ溝10の底面10aとの間の寸法が正常範囲内に含まれるものであり、シーブ溝10の摩耗状態はまだ摩耗限界に至っていないと判断することができる。したがってこの場合は、シーブ4の交換は不要となる。
【0032】
なお、シーブ溝10の摩耗状態は、前述した第2測定指標55の基部10cの端面52からの突出寸法L21によって把握できる。したがって、この突出寸法L21に応じてシーブ4の交換を要する時期、すなわち最終的なシーブ溝10の摩耗量測定時期を予測することができる。
【0033】
図4は、経年的にシーブ溝に摩耗を生じたときの第2の状態を示す要部拡大図である。
【0034】
前述の図3に示す第1の状態からシーブ溝10の摩耗がさらに進むと、図4に示す第2の状態のようにロープ3がシーブ溝10の底面10aに接触する。このような第2の状態のときに測定ゲージ53を貫通穴50に挿入してシーブ溝10の摩耗量の測定を行った際には、測定ゲージ53の第2測定指標55が基部10cの端面52から突出するとともに、測定ゲージ53の第1測定指標54が基部10cの端面52から寸法L24だけ突出する。このように寸法L24だけ第1測定指標54が端面52から突出したとき、ロープ3の下端3aとシーブ溝10の底面10aとの間の距離はゼロと判断される。したがって、ロープ3の下端3aとシーブ溝10の底面10aとの間の寸法が正常範囲を超えており、シーブ溝10の摩耗量が摩耗限界に至ったと判断することができる。したがってこの場合は、シーブ4の交換が必要になる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、シーブ溝10に連設される基部10cの貫通穴50に測定ゲージ53を挿入した際に、シーブ4の基部10cの端面52からの突出状態を確認するだけで、シーブ4の交換を要する程度にシーブ溝10が摩耗しているかどうかを容易に判断することができる。これにより、摩耗量測定作業の能率を向上させることができるとともに、測定誤差が少なくなり測定精度を高めることができる。また、これに伴って、シーブ4をシーブ溝10の摩耗限界まで、あるいは摩耗限界付近まで使用することが可能になり、シーブ4の交換頻度を少なくすることができる。これにより、シーブ4の交換のための費用を低減させることができる。
【0036】
また、シーブ4の回転中心10bを囲む4つの空間部10dそれぞれに対応する4箇所の基部10c部分に、貫通穴50を形成してあることから、シーブ溝10の摩耗量測定時にそれ程シーブ4を回転させなくても、シーブ溝10に巻き掛けられたロープ3の直下に貫通穴50を位置させることができ、摩耗量測定作業を能率良く行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 昇降路
2 乗かご
3 ロープ
3a 下端
4 シーブ
4a 機械加工面
5 そらせ車
6 釣り合いおもり
7 駆動装置
10 シーブ溝
10a 底面
10b 回転中心
10c 基部
10d 空間部
50 貫通穴
52 端面
53 測定ゲージ
54 第1測定指標
55 第2測定指標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗かごと釣り合いおもりを連結するロープが巻き掛けられるシーブ溝と、このシーブ溝に連設され回転中心側に位置する基部と、この基部と前記回転中心との間に形成される空間部とを有するエレベータのシーブに形成される前記シーブ溝の摩耗量測定に際して用いられるシーブ溝の摩耗量測定装置において、
前記シーブ溝に連設される前記基部を貫通し、前記シーブ溝の底面と前記空間部とを連通させ、前記シーブの回転中心に向かって延設させた貫通穴と、
前記シーブ溝に巻き掛けられた前記ロープの下端と前記シーブ溝の前記底面との間の寸法が正常範囲内に含まれるか否かを判断するための第1測定指標を有し、前記貫通穴に前記空間部側から前記シーブ溝の前記底面に向かって挿入され、先端部が前記ロープの前記下端に当接する測定ゲージとを備えたことを特徴とするシーブ溝の摩耗量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシーブ溝の摩耗量測定装置において、
前記シーブの前記基部の前記回転中心側に位置する端面を、前記貫通穴の穿設方向と直交する方向に設けるとともに、
前記第1測定指標よりも前記回転中心側に位置する前記測定ゲージ部分に設けられ、かつ、前記シーブ溝に摩耗を生じていないときに前記シーブ溝に前記ロープが巻き掛けられた状態において、前記測定ゲージが前記貫通穴に挿入され、前記測定ゲージの前記先端部が前記ロープの前記下端に当接した際に、前記シーブの前記基部の前記端面に一致するように形成した第2測定指標を設けたことを特徴とするシーブ溝の摩耗量測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシーブ溝の摩耗量測定装置において、
前記シーブの前記基部の前記端面は、前記シーブ溝の摩耗に伴う前記第1測定指標の前記空間部方向への突出状態、及び前記第2測定指標の前記空間部方向への突出寸法の測定時の基準面を形成することを特徴とするシーブ溝の摩耗量測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシーブ溝の摩耗量測定装置において、
前記シーブは、前記回転中心を囲むように複数の空間部を有するものから成り、
前記複数の空間部のそれぞれに対応する前記基部部分毎に、前記貫通穴を設けたことを特徴とするシーブ溝の摩耗量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−246242(P2011−246242A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121759(P2010−121759)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】