シールドトンネルと立坑の接合方法
【課題】地震時には応力集中すると考えられるシールドトンネルと到達立坑1との接合部の耐震性能を向上させる。
【解決手段】到達立坑1にはシールド掘進機2を受け入れる受け口筒11を設置し、受け口筒11の内面にはリング鋼板12を取り付ける。受け口筒11の地山側には切削が容易な材料で土留壁13を構築する。土留壁13に到達したシールド掘進機2によって、土留壁13にはシールド掘進機2の外径よりも大きい内径の切削部を形成する。その後、シールド掘進機2のスキンプレート21先端をリング鋼板12で包囲された空間の内部で停止させ、リング鋼板12の内面に溶接した止水鉄板15によってスキンプレート21の先端とリング鋼板12の間を溶接し閉塞して止水機能を持たせる。リング鋼板12と鍔板16と各鍔板16に平行して溶接した延長板と、延長板から直交方向に張り出して蓋板14、および蓋板14の先端の間に張り渡した可撓帯3によって閉塞した緩衝室31を形成する。
【解決手段】到達立坑1にはシールド掘進機2を受け入れる受け口筒11を設置し、受け口筒11の内面にはリング鋼板12を取り付ける。受け口筒11の地山側には切削が容易な材料で土留壁13を構築する。土留壁13に到達したシールド掘進機2によって、土留壁13にはシールド掘進機2の外径よりも大きい内径の切削部を形成する。その後、シールド掘進機2のスキンプレート21先端をリング鋼板12で包囲された空間の内部で停止させ、リング鋼板12の内面に溶接した止水鉄板15によってスキンプレート21の先端とリング鋼板12の間を溶接し閉塞して止水機能を持たせる。リング鋼板12と鍔板16と各鍔板16に平行して溶接した延長板と、延長板から直交方向に張り出して蓋板14、および蓋板14の先端の間に張り渡した可撓帯3によって閉塞した緩衝室31を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルと立坑の接合部方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にシールドトンネルは発進立坑から発進して、到達立坑に到達して完了する。
したがってシールドトンネルと立坑との接合部は構造上、大きな変化点であり、各種の工法が開発され実施されている。
【特許文献1】特開平11−247582号公報。
【特許文献2】特開2001−55894号公報。
【特許文献3】特開2008−75328号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シールドトンネルと立坑との接合部には、地震時には応力集中すると考えられるが、従来の接合部は止水性に重点をおいた構造となっており、耐震性能についての配慮は十分とは言いがたい面があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のシールドトンネルと立坑の接合方法は、到達立坑にはシールド掘進機を受け入れる受け口を設置し、受け口の内面にはリング鋼板を取り付け、受け口の地山側には切削が容易な材料で土留壁を構築し、土留壁に到達したシールド掘進機によって、土留壁にはシールド掘進機の外径よりも大きい内径の切削部を形成し、その後、シールド掘進機のスキンプレート先端をリング鋼板で包囲された空間の内部で停止させ、リング鋼板の内面に溶接した止水鉄板によってスキンプレートの先端とリング鋼板の間を閉塞して止水機能を持たせ、リング鋼板と、鍔板と、各鍔板に平行して溶接した延長板と、延長板から直交方向に張り出して蓋板、および蓋板の先端の間に張り渡した可撓帯によって閉塞した緩衝室を形成し、緩衝室の内部には緩衝部材を配置して行うことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシールドトンネルと立坑の接合方法は以上説明したようになるから、少なくとも次のような効果のいくつかを得ることができる。
<1> 地震時に緩衝室が変形することが可能であるため、立坑とシールド掘進機の軸方向の変位を許容することができる。
<2> 地震時に余掘り部に充填した裏込め材などが変形して、立坑とシールド掘進機の鉛直方向の変位を許容することができる。
<3> 地震時に軸方向、鉛直方向の変位が発生した場合にも、止水性を保持することができる。
<4> 土留壁と本体構造が直打設により、切削後の片持ち状態の土留めの安定が事前に確保でき、かつ腹起し材が不要となるので障害とならず、最終構造が安定する構造を得ることができる。
<5> シールド掘進機の蛇行があっても、枠材を、延長板の面に沿ってスライドさせて溶接すれば、蛇行の誤差量を吸収することができる。
<6> 止水ゴムに硬化材などが侵入していると、地震時にゴムの破壊の可能性があるが、ゴムの蓋をすることによってそのような事故を防止できる。
<7> 地震時に地下水圧が上昇しても、加圧水が噴出する箇所が限定でき漏電等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を施工順序にしたがって詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>立坑の構成。
本発明は、到達立坑1にシールド掘進機2が到達した場合の構造と、施工方法である。
そして到達立坑1はその側面に、シールド掘進機2を受け入れるために、その外径より多少大きい内径を有する短筒を、受け口筒11として突設してある。
この場合に多少大きい内径とは、シールド掘進の誤差を吸収できかつ地震時に止水性を維持しつつその変位を許容できるよう許容すべき変位量だけ大きく開口しておくという意味である。
筒状の受け口筒11の内面には、全周面にわたって帯状の鋼板を、リング鋼板12として取り付けてある。
リング鋼板12の取付は、立坑1の構築時に取り付けることも、あるいは後から取り付けることもできる。
このリング鋼板12は、シールド掘進機2のスキンプレート21の先端と、溶接し止水するための鋼板である。
なお、以下の実施例ではシールド掘進機2が円筒形である場合を説明するが、シールド掘進機2が矩形の場合も同様の構成、施工方法を採用することができる。
【0008】
<2>受け口筒の機能。
立坑1の受け口筒11が、地山側の土留壁13に突設しているために、到達時のシールド掘進機2の推力の反力をここで受けることができ、到達後切削され片持状態となる土留壁13の地山土圧をその先端にて受けることができる。
そのために切削された土留壁13が片持ち状態になることがなく、地山の緩みを最小限に抑えることができる。
さらに後述するように受け口筒11の内側を二次覆工すれば、接合部の剛性を向上させることができる。
【0009】
<3>土留壁13。
受け口筒11の外側の地中には、受け口筒11に接して公知の方法で構築した土留壁13を形成する。
したがって受け口筒11の地中側は、土留壁13によって蓋をしたような状態を呈することになる。
この土留壁13は強度の高い壁ではなく、たとえばその芯材が、ガラス繊維混入発泡ウレタンや、炭素繊維などのシールド掘進機2による切削可能材13aで構成する。
例えば切削可能材で構成した連壁や泥水固化壁が知られており、それらと同様の壁面体である。
【0010】
<4>蓋板の設置。
次に施工方法を説明する。
まず、到達立坑1の受け口筒11の内側に蓋板14を取り付ける。
そして蓋板14と土留壁13の間の空間に流動化処理土等切削可能なものを充填する。
流動化処理土等の充填方法は到達立坑1側からポンプ打設にて、エア抜きを併用しつつ密実に充填する。密実に充填するのは、到達時の漏水や土砂噴出危険を最小化するためである
【0011】
<5>土留壁の余掘り。
前面のカッターを回転して地中を掘進してきたシールド掘進機2の先端は、まず土留壁13まで到達する。
その状態で一端停止し、シールド掘進機2のコピーカッターを使用して、土留壁13にシールド掘進機2の直径よりも大きい直径の穴を切削する。
コピーカッターとは、シールド掘進機2の外周に向けて突出可能なカッターであり、そのカッターを突出状態で回転させることによって、流動化処理土にはシールド掘進機2の外径よりも大きい直径の穴を開設することができる。
そのような余掘りの寸法は、地震時の軸直角面方向に変位を吸収するだけの寸法である。
流動化処理土を切削してシールド掘進機2は受け口筒11の内部まで侵入する。
【0012】
<6>カッターなどの撤去。
シールド掘進機2は、スキンプレート21の前端部がリング鋼板12で包囲された空間の内部に位置して停止している。
そこで立坑1の内部から、蓋板14、流動化処理土を撤去する。
ついで、前面が露出したシールド掘進機2のカッターを上方から解体してゆく。
カッターの解体にあわせてシールド掘進機2の内部においては推進装置、排土装置、などを解体撤去する。
すると、受け口筒11の内部には中空のスキンプレート21だけが位置していることになる。
【0013】
<7>止水鉄板の溶接。
カッターの解体と平行して、止水鉄板15の一端を、リング鋼板12と直交する状態でリング鋼板12に溶接する。
この止水鉄板15は、スキンプレート21の先端に位置させる。
この止水鉄板15は一定幅の鋼板であり、スキンプレート21とリング鋼板12の間隔を立坑1側から閉塞する状態で設置する。
このようにスキンプレート21とリング鋼板12の間隔を止水鉄板15で閉塞してしまうから、地山からの地下水の流出を阻止して、シールド掘進機2の到達直後の地盤の緩みを防止することができる。
さらに止水鉄板15で止水しておくことによって地下水が流出していないから、その後の二次覆工やジョイントの設置作業も容易に行うことができる。
なお止水鉄板15は、あくまで工事中の止水を担保するものであり、スキンプレート21先端と溶接することにより完結する。
地震時はこの部分は破断すると考えられるが、後述の可撓性帯等の機能により、止水性は別に担保される。
【0014】
<8>鍔板の溶接。
さらにスキンプレート21の内側にはシールド側鍔板22を溶接する。
このシールド側鍔板22は一定幅の鋼板であり、スキンプレート21の全周の内面に内側に向けて突出させた状態で取り付ける。
一方、リング鋼板12の立坑1側の内面には、立坑側鍔板16を取り付ける。
この鍔板16も一定幅の鋼板であり、リング鋼板12の全周の内面に、内側へ向けて突出させた状態で、かつ前記のシールド側鍔板22と平行に取り付ける。
【0015】
<9>延長板の溶接。
各鍔板22、16には面接触した状態で延長板23、17を溶接して取り付ける。
この延長板は、一定幅を有する円弧状の鋼板であり、全円周に沿って、平行に対向させて設置する。
もしシールド掘進機2の蛇行によってその中心と、受け口筒11の中心とが一致していない場合に延長板を、鍔板の面上でスライドさせて溶接することによって誤差の修正を行うことができる。
2枚の延長板23、17の対向する内側には、延長板と直交する方向、すなわちリング鋼板12と平行方向に蓋板24、14を突設する。
蓋板24、14は、リング鋼板12に平行な状態で全円周に沿って設置する。
両蓋板24、14の先端の間には隙間を設け、この隙間には平板を配置する。
この平板は一方の縁だけを蓋板14に取り付けることによってパッキン状フラットバーとして機能させることができる。
この平板は、後述する可撓帯の内部へ裏込材が流入することを阻止する機能も果たす。
【0016】
<10>緩衝室。
平行する鍔板22、16の間を、蓋板24、14と可撓帯3で連結することによって、両側を鍔板22、16と蓋板24、14で囲まれた中空容器が形成される。
この中空の容器を緩衝室31として構成する。
この緩衝室31は、地震時のスキンプレート21と立坑1の受け口筒11との軸方向の相対的な変位、および鉛直方向の変位を吸収するために設ける。
同時に、内部に空間を残さず、地下水の微量な流入を最小限に抑え得るように充填材等で構成しておくことが望ましい。
【0017】
<11>二次覆工コンクリートの打設。
シールド掘進機2のスキンプレート21の内側、および立坑1の受け口筒11の内側に配筋の上、立坑1躯体と機械式接合等により一体化し、その後に一定の厚さのコンクリートを二次覆工コンクリート5として打設する。
二次覆工コンクリート5の内側型枠は、シールド掘進機2あるいは受け口筒11と同心円状の円筒状の型枠を使用する。
二次覆工コンクリート5の妻板の緩衝室31取り合いは、鍔板16と延長板17とによって構成する。
二次覆工コンクリート5の打設前に、緩衝室31からの水抜きパイプを配管して二次覆工コンクリート5の外部に導出し、そこには弁を取り付けておく。
【0018】
<12>裏込材の充填。
緩衝室31の内部に裏込材33を充填する。
緩衝室31は前記したように軸方向、鉛直方向の変位を吸収するためのものであり、緩衝室31がつぶれて内部の裏込材33や緩衝用樹脂などが変位を吸収する。
そのために緩衝室31の内部には一部、あるいは全部に変形が容易な裏込材33や緩衝用樹脂を充填する。
例えば発泡性樹脂、エフレックスパイプなどの緩衝用樹脂製配管材、あるいはそれらとセメント系固化材を併用して充填する。
緩衝用配管材を使用すれば、同時に地下水の導水管としても活用できる。
この導水管を緩衝室31内部の内周に配置することにより万が一の漏水の場合の導水機能を付与できる。
また、地震時に緩衝室31の内圧が可撓帯3の耐圧を超えて高まり、内部の地下水が噴出する場合、その箇所を緩衝用配管材に限定でき、漏電などのトラブルを防止できる。
【0019】
<13>可撓帯3の設置。
蓋板24、14の先端の間を、ゴム板などで構成したΩ状の可撓帯3によって連結する。
両方の蓋板24、14間が可撓帯3で連結しているから、シールド掘進機2と立坑1との相対変位があった場合に、緩衝室31が変形しても止水機能を破損することがない。
道路トンネルの場合、可撓帯3の外側には、耐火板32を取り付ける。
すなわち、スキンプレート21の内側に打設した二次覆工コンクリート5の端部と、受け口筒11の内側に打設した二次覆工コンクリート5の端部との間に、耐火板32を取り付けることによって、可撓帯3のトンネル内側面をコンクリートの耐火板32で被覆して耐火機能を持たせる。
【0020】
<14>変位の吸収機能。
上記したように地震時におけるシールドトンネルの軸方の変位、および軸直角面方向の変位を緩衝室31の変形で吸収する。
ここで、土留壁13をシールド掘進機2の外径以上の形状に余掘りしているので、その間隔によって地震時の軸直角面方向の変位を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】シールドトンネルと立坑と土留壁の配置の説明図。
【図2】本発明のリング鋼板に取り付けた部材の説明図。
【図3】施工状態の説明図。
【図4】図3のIV部分の拡大図。
【図5】施工状態の説明図。
【図6】図5のVI部分の拡大図。
【図7】施工状態の説明図。
【図8】図7のVIII部分の拡大図。
【図9】施工状態の説明図。
【図10】図9のX部分の拡大図。
【図11】施工状態の説明図。
【図12】図11のXII部分の拡大図。
【図13】施工状態の説明図。
【図14】図13のXIV部分の拡大図。
【図15】施工状態の説明図。
【図16】図15のXVI部分の拡大図。
【図17】施工状態の説明図。
【図18】図17のXVIII部分の拡大図。
【図19】施工状態の説明図。
【図20】図19のXX部分の拡大図。
【符号の説明】
【0022】
1:到達立坑
11:受け口筒
12:リング鋼板
13:土留壁
14:蓋板
15:止水鉄板
16:立坑側鍔板
17:立坑延長板
2:シールド掘進機
21:スキンプレート
22:シールド側鍔板
23:シールド側延長板
24:蓋板
3:可撓帯
31:緩衝室
32:耐火板
4:流動化処理土
5:二次覆工コンクリート
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルと立坑の接合部方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にシールドトンネルは発進立坑から発進して、到達立坑に到達して完了する。
したがってシールドトンネルと立坑との接合部は構造上、大きな変化点であり、各種の工法が開発され実施されている。
【特許文献1】特開平11−247582号公報。
【特許文献2】特開2001−55894号公報。
【特許文献3】特開2008−75328号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シールドトンネルと立坑との接合部には、地震時には応力集中すると考えられるが、従来の接合部は止水性に重点をおいた構造となっており、耐震性能についての配慮は十分とは言いがたい面があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のシールドトンネルと立坑の接合方法は、到達立坑にはシールド掘進機を受け入れる受け口を設置し、受け口の内面にはリング鋼板を取り付け、受け口の地山側には切削が容易な材料で土留壁を構築し、土留壁に到達したシールド掘進機によって、土留壁にはシールド掘進機の外径よりも大きい内径の切削部を形成し、その後、シールド掘進機のスキンプレート先端をリング鋼板で包囲された空間の内部で停止させ、リング鋼板の内面に溶接した止水鉄板によってスキンプレートの先端とリング鋼板の間を閉塞して止水機能を持たせ、リング鋼板と、鍔板と、各鍔板に平行して溶接した延長板と、延長板から直交方向に張り出して蓋板、および蓋板の先端の間に張り渡した可撓帯によって閉塞した緩衝室を形成し、緩衝室の内部には緩衝部材を配置して行うことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシールドトンネルと立坑の接合方法は以上説明したようになるから、少なくとも次のような効果のいくつかを得ることができる。
<1> 地震時に緩衝室が変形することが可能であるため、立坑とシールド掘進機の軸方向の変位を許容することができる。
<2> 地震時に余掘り部に充填した裏込め材などが変形して、立坑とシールド掘進機の鉛直方向の変位を許容することができる。
<3> 地震時に軸方向、鉛直方向の変位が発生した場合にも、止水性を保持することができる。
<4> 土留壁と本体構造が直打設により、切削後の片持ち状態の土留めの安定が事前に確保でき、かつ腹起し材が不要となるので障害とならず、最終構造が安定する構造を得ることができる。
<5> シールド掘進機の蛇行があっても、枠材を、延長板の面に沿ってスライドさせて溶接すれば、蛇行の誤差量を吸収することができる。
<6> 止水ゴムに硬化材などが侵入していると、地震時にゴムの破壊の可能性があるが、ゴムの蓋をすることによってそのような事故を防止できる。
<7> 地震時に地下水圧が上昇しても、加圧水が噴出する箇所が限定でき漏電等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を施工順序にしたがって詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>立坑の構成。
本発明は、到達立坑1にシールド掘進機2が到達した場合の構造と、施工方法である。
そして到達立坑1はその側面に、シールド掘進機2を受け入れるために、その外径より多少大きい内径を有する短筒を、受け口筒11として突設してある。
この場合に多少大きい内径とは、シールド掘進の誤差を吸収できかつ地震時に止水性を維持しつつその変位を許容できるよう許容すべき変位量だけ大きく開口しておくという意味である。
筒状の受け口筒11の内面には、全周面にわたって帯状の鋼板を、リング鋼板12として取り付けてある。
リング鋼板12の取付は、立坑1の構築時に取り付けることも、あるいは後から取り付けることもできる。
このリング鋼板12は、シールド掘進機2のスキンプレート21の先端と、溶接し止水するための鋼板である。
なお、以下の実施例ではシールド掘進機2が円筒形である場合を説明するが、シールド掘進機2が矩形の場合も同様の構成、施工方法を採用することができる。
【0008】
<2>受け口筒の機能。
立坑1の受け口筒11が、地山側の土留壁13に突設しているために、到達時のシールド掘進機2の推力の反力をここで受けることができ、到達後切削され片持状態となる土留壁13の地山土圧をその先端にて受けることができる。
そのために切削された土留壁13が片持ち状態になることがなく、地山の緩みを最小限に抑えることができる。
さらに後述するように受け口筒11の内側を二次覆工すれば、接合部の剛性を向上させることができる。
【0009】
<3>土留壁13。
受け口筒11の外側の地中には、受け口筒11に接して公知の方法で構築した土留壁13を形成する。
したがって受け口筒11の地中側は、土留壁13によって蓋をしたような状態を呈することになる。
この土留壁13は強度の高い壁ではなく、たとえばその芯材が、ガラス繊維混入発泡ウレタンや、炭素繊維などのシールド掘進機2による切削可能材13aで構成する。
例えば切削可能材で構成した連壁や泥水固化壁が知られており、それらと同様の壁面体である。
【0010】
<4>蓋板の設置。
次に施工方法を説明する。
まず、到達立坑1の受け口筒11の内側に蓋板14を取り付ける。
そして蓋板14と土留壁13の間の空間に流動化処理土等切削可能なものを充填する。
流動化処理土等の充填方法は到達立坑1側からポンプ打設にて、エア抜きを併用しつつ密実に充填する。密実に充填するのは、到達時の漏水や土砂噴出危険を最小化するためである
【0011】
<5>土留壁の余掘り。
前面のカッターを回転して地中を掘進してきたシールド掘進機2の先端は、まず土留壁13まで到達する。
その状態で一端停止し、シールド掘進機2のコピーカッターを使用して、土留壁13にシールド掘進機2の直径よりも大きい直径の穴を切削する。
コピーカッターとは、シールド掘進機2の外周に向けて突出可能なカッターであり、そのカッターを突出状態で回転させることによって、流動化処理土にはシールド掘進機2の外径よりも大きい直径の穴を開設することができる。
そのような余掘りの寸法は、地震時の軸直角面方向に変位を吸収するだけの寸法である。
流動化処理土を切削してシールド掘進機2は受け口筒11の内部まで侵入する。
【0012】
<6>カッターなどの撤去。
シールド掘進機2は、スキンプレート21の前端部がリング鋼板12で包囲された空間の内部に位置して停止している。
そこで立坑1の内部から、蓋板14、流動化処理土を撤去する。
ついで、前面が露出したシールド掘進機2のカッターを上方から解体してゆく。
カッターの解体にあわせてシールド掘進機2の内部においては推進装置、排土装置、などを解体撤去する。
すると、受け口筒11の内部には中空のスキンプレート21だけが位置していることになる。
【0013】
<7>止水鉄板の溶接。
カッターの解体と平行して、止水鉄板15の一端を、リング鋼板12と直交する状態でリング鋼板12に溶接する。
この止水鉄板15は、スキンプレート21の先端に位置させる。
この止水鉄板15は一定幅の鋼板であり、スキンプレート21とリング鋼板12の間隔を立坑1側から閉塞する状態で設置する。
このようにスキンプレート21とリング鋼板12の間隔を止水鉄板15で閉塞してしまうから、地山からの地下水の流出を阻止して、シールド掘進機2の到達直後の地盤の緩みを防止することができる。
さらに止水鉄板15で止水しておくことによって地下水が流出していないから、その後の二次覆工やジョイントの設置作業も容易に行うことができる。
なお止水鉄板15は、あくまで工事中の止水を担保するものであり、スキンプレート21先端と溶接することにより完結する。
地震時はこの部分は破断すると考えられるが、後述の可撓性帯等の機能により、止水性は別に担保される。
【0014】
<8>鍔板の溶接。
さらにスキンプレート21の内側にはシールド側鍔板22を溶接する。
このシールド側鍔板22は一定幅の鋼板であり、スキンプレート21の全周の内面に内側に向けて突出させた状態で取り付ける。
一方、リング鋼板12の立坑1側の内面には、立坑側鍔板16を取り付ける。
この鍔板16も一定幅の鋼板であり、リング鋼板12の全周の内面に、内側へ向けて突出させた状態で、かつ前記のシールド側鍔板22と平行に取り付ける。
【0015】
<9>延長板の溶接。
各鍔板22、16には面接触した状態で延長板23、17を溶接して取り付ける。
この延長板は、一定幅を有する円弧状の鋼板であり、全円周に沿って、平行に対向させて設置する。
もしシールド掘進機2の蛇行によってその中心と、受け口筒11の中心とが一致していない場合に延長板を、鍔板の面上でスライドさせて溶接することによって誤差の修正を行うことができる。
2枚の延長板23、17の対向する内側には、延長板と直交する方向、すなわちリング鋼板12と平行方向に蓋板24、14を突設する。
蓋板24、14は、リング鋼板12に平行な状態で全円周に沿って設置する。
両蓋板24、14の先端の間には隙間を設け、この隙間には平板を配置する。
この平板は一方の縁だけを蓋板14に取り付けることによってパッキン状フラットバーとして機能させることができる。
この平板は、後述する可撓帯の内部へ裏込材が流入することを阻止する機能も果たす。
【0016】
<10>緩衝室。
平行する鍔板22、16の間を、蓋板24、14と可撓帯3で連結することによって、両側を鍔板22、16と蓋板24、14で囲まれた中空容器が形成される。
この中空の容器を緩衝室31として構成する。
この緩衝室31は、地震時のスキンプレート21と立坑1の受け口筒11との軸方向の相対的な変位、および鉛直方向の変位を吸収するために設ける。
同時に、内部に空間を残さず、地下水の微量な流入を最小限に抑え得るように充填材等で構成しておくことが望ましい。
【0017】
<11>二次覆工コンクリートの打設。
シールド掘進機2のスキンプレート21の内側、および立坑1の受け口筒11の内側に配筋の上、立坑1躯体と機械式接合等により一体化し、その後に一定の厚さのコンクリートを二次覆工コンクリート5として打設する。
二次覆工コンクリート5の内側型枠は、シールド掘進機2あるいは受け口筒11と同心円状の円筒状の型枠を使用する。
二次覆工コンクリート5の妻板の緩衝室31取り合いは、鍔板16と延長板17とによって構成する。
二次覆工コンクリート5の打設前に、緩衝室31からの水抜きパイプを配管して二次覆工コンクリート5の外部に導出し、そこには弁を取り付けておく。
【0018】
<12>裏込材の充填。
緩衝室31の内部に裏込材33を充填する。
緩衝室31は前記したように軸方向、鉛直方向の変位を吸収するためのものであり、緩衝室31がつぶれて内部の裏込材33や緩衝用樹脂などが変位を吸収する。
そのために緩衝室31の内部には一部、あるいは全部に変形が容易な裏込材33や緩衝用樹脂を充填する。
例えば発泡性樹脂、エフレックスパイプなどの緩衝用樹脂製配管材、あるいはそれらとセメント系固化材を併用して充填する。
緩衝用配管材を使用すれば、同時に地下水の導水管としても活用できる。
この導水管を緩衝室31内部の内周に配置することにより万が一の漏水の場合の導水機能を付与できる。
また、地震時に緩衝室31の内圧が可撓帯3の耐圧を超えて高まり、内部の地下水が噴出する場合、その箇所を緩衝用配管材に限定でき、漏電などのトラブルを防止できる。
【0019】
<13>可撓帯3の設置。
蓋板24、14の先端の間を、ゴム板などで構成したΩ状の可撓帯3によって連結する。
両方の蓋板24、14間が可撓帯3で連結しているから、シールド掘進機2と立坑1との相対変位があった場合に、緩衝室31が変形しても止水機能を破損することがない。
道路トンネルの場合、可撓帯3の外側には、耐火板32を取り付ける。
すなわち、スキンプレート21の内側に打設した二次覆工コンクリート5の端部と、受け口筒11の内側に打設した二次覆工コンクリート5の端部との間に、耐火板32を取り付けることによって、可撓帯3のトンネル内側面をコンクリートの耐火板32で被覆して耐火機能を持たせる。
【0020】
<14>変位の吸収機能。
上記したように地震時におけるシールドトンネルの軸方の変位、および軸直角面方向の変位を緩衝室31の変形で吸収する。
ここで、土留壁13をシールド掘進機2の外径以上の形状に余掘りしているので、その間隔によって地震時の軸直角面方向の変位を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】シールドトンネルと立坑と土留壁の配置の説明図。
【図2】本発明のリング鋼板に取り付けた部材の説明図。
【図3】施工状態の説明図。
【図4】図3のIV部分の拡大図。
【図5】施工状態の説明図。
【図6】図5のVI部分の拡大図。
【図7】施工状態の説明図。
【図8】図7のVIII部分の拡大図。
【図9】施工状態の説明図。
【図10】図9のX部分の拡大図。
【図11】施工状態の説明図。
【図12】図11のXII部分の拡大図。
【図13】施工状態の説明図。
【図14】図13のXIV部分の拡大図。
【図15】施工状態の説明図。
【図16】図15のXVI部分の拡大図。
【図17】施工状態の説明図。
【図18】図17のXVIII部分の拡大図。
【図19】施工状態の説明図。
【図20】図19のXX部分の拡大図。
【符号の説明】
【0022】
1:到達立坑
11:受け口筒
12:リング鋼板
13:土留壁
14:蓋板
15:止水鉄板
16:立坑側鍔板
17:立坑延長板
2:シールド掘進機
21:スキンプレート
22:シールド側鍔板
23:シールド側延長板
24:蓋板
3:可撓帯
31:緩衝室
32:耐火板
4:流動化処理土
5:二次覆工コンクリート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
到達立坑にはシールド掘進機を受け入れる受け口を設置し、
受け口の内面にはリング鋼板を取り付け、
受け口の地山側には切削が容易な材料で土留壁を構築し、
土留壁に到達したシールド掘進機によって、土留壁にはシールド掘進機の外径よりも大きい内径の切削部を形成し、
その後、シールド掘進機のスキンプレート先端をリング鋼板で包囲された空間の内部で停止させ、
リング鋼板の内面に溶接した止水鉄板によってスキンプレートの先端とリング鋼板の間を閉塞して止水機能を持たせ、
リング鋼板と、
鍔板と、各鍔板に平行して溶接した延長板と、
延長板から直交方向に張り出して蓋板、
および蓋板の先端の間に張り渡した可撓帯によって閉塞した緩衝室を形成し、
緩衝室の内部には緩衝部材を配置して行う、
シールドトンネルと立坑の接合方法。
【請求項1】
到達立坑にはシールド掘進機を受け入れる受け口を設置し、
受け口の内面にはリング鋼板を取り付け、
受け口の地山側には切削が容易な材料で土留壁を構築し、
土留壁に到達したシールド掘進機によって、土留壁にはシールド掘進機の外径よりも大きい内径の切削部を形成し、
その後、シールド掘進機のスキンプレート先端をリング鋼板で包囲された空間の内部で停止させ、
リング鋼板の内面に溶接した止水鉄板によってスキンプレートの先端とリング鋼板の間を閉塞して止水機能を持たせ、
リング鋼板と、
鍔板と、各鍔板に平行して溶接した延長板と、
延長板から直交方向に張り出して蓋板、
および蓋板の先端の間に張り渡した可撓帯によって閉塞した緩衝室を形成し、
緩衝室の内部には緩衝部材を配置して行う、
シールドトンネルと立坑の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−31485(P2010−31485A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192704(P2008−192704)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【Fターム(参考)】
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