説明

シールドボックスシステムおよびそれを用いたシールドボックスビジネスシステム

【課題】携帯電話機の電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響するのを防止しつつ、携帯電話使用規制建物内での携帯電話機の使用を可能にすることにある。
【解決手段】携帯電話使用規制建物1内に設置され、人が入り得る容積を持つとともに、周囲を電磁シールドされたシールドボックス3と、前記シールドボックス内の携帯電話機と前記建物外の携帯電話中継局との間の、前記建物外のアンテナ2を介する無線通信を、前記建物内で前記シールドボックス外へ電波が漏洩しないように中継する中継手段4と、を具えてなる、シールドボックスシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や医療関係施設の建物等の携帯電話使用規制建物内での携帯電話機の不都合ない使用を可能にするシールドボックスシステムおよびそれを用いたシールドボックスビジネスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状では、病院や医療関係施設等の建物内では、電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響する可能性があることから、特殊なものを除いて携帯電話機の使用は規制(同義的に禁止)されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、病院等の建物内の公衆電話機は台数や設置場所が限られており、緊急で使用した場合でも必ずしも近くにあるとは限らず、近くにあっても全て使用中の場合もある。また、連絡先の電話番号が携帯電話機内だけに記録されている場合もある。
【0004】
それゆえ、病院等の建物内にいて携帯電話機を使用して緊急で連絡を取ることが必要な場合があり得るが、かかる場合でも、従来は一旦病院等の建物外に出るしか対応方法がないという不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、請求項1記載のこの発明のシールドボックスシステムは、携帯電話使用規制建物内に設置され、人が入り得る容積を持つとともに、周囲を電磁シールドされたシールドボックスと、前記シールドボックス内の携帯電話機と前記建物外の携帯電話中継局との間の、前記建物外のアンテナを介する無線通信を、前記建物内で前記シールドボックス外へ電波が漏洩しないように中継する中継手段と、を具えてなるものである。
【0006】
また、請求項4記載のこの発明のシールドボックスビジネスシステムは、請求項1から3までの何れか記載のシールドボックスシステムと、前記シールドボックスを使用する度に課金する課金手段と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
かかるシールドボックスシステムによれば、病院等の携帯電話使用規制建物内に設置され、人が入り得る容積を持つとともに周囲を電磁シールドされたシールドボックス内に、人が入って携帯電話機を使用すると、中継手段が、そのシールドボックス内の携帯電話機とその建物外の携帯電話中継局との間の、その建物外のアンテナを介する無線通信を、その建物内でシールドボックス外へ電波が漏洩しないように中継するので、携帯電話機の電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響するのを防止しつつ、携帯電話使用規制建物内での携帯電話機の使用を可能にすることができる。
【0008】
またかかるシールドボックスビジネスシステムによれば、携帯電話機の電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響するのを防止しつつ、携帯電話使用規制建物内での携帯電話機の使用を可能にすることができるとともに、シールドボックスを使用する度に、シールドボックス内での携帯電話機の使用者やシールドボックスの設置者に対し課金手段により課金して利益を上げることができる。
【0009】
なお、この発明のシールドボックスシステムにおいては、前記中継手段は、前記シールドボックス内のアンテナと、そのシールドボックス内のアンテナを介して前記シールドボックス内の携帯電話機との間で無線通信を行うとともに前記建物外のアンテナを介して携帯電話中継局との間で無線通信を行うことで前記携帯電話機と前記携帯電話中継局との間の無線通信を中継する無線中継装置と、前記シールドボックス内のアンテナおよび前記建物外のアンテナと前記無線中継装置とをそれぞれ接続する、周囲を電磁シールドされた中継ケーブルと、を有していても良く、このようにすれば、建物内のシールドボックスと建物外のアンテナとが比較的離れていても、無線中継装置によって信号の減衰を補って通信を中継することができ、また携帯電話機をそのまま無線で使用できるので、使用を簡単に行うことができる。
【0010】
また、この発明のシールドボックスシステムにおいては、前記中継手段は、前記シールドボックス内の携帯電話機のアンテナと前記建物外のアンテナとを電気的に接続する、周囲をシールドされた中継ケーブルを有していても良く、このようにすれば、建物内のシールドボックスと建物外のアンテナとが極めて近くてケーブルによる減衰がほとんどない場合に、シールドボックスシステムを安価に構成することができる。
【0011】
一方、この発明のシールドボックスビジネスシステムは、請求項2記載のシールドボックスシステムを具え、前記課金手段が、コインの投入により所定時間前記無線中継装置を稼動させるタイマー式スイッチを有していても良く、このようにすれば、シールドボックス内での携帯電話機の使用者等に対し確実に課金することができる。すなわち、コインを現金にすれば携帯電話機の使用者に直接課金でき、コインをシールドボックスの設置者が発行するものとすればその発行枚数に応じてシールドボックスの設置者に課金することができる。
【0012】
また、この発明のシールドボックスビジネスシステムは、請求項3記載のシールドボックスシステムを具え、前記課金手段が、コインの投入により前記シールドボックスのドアを外から開き得るように開錠する施錠機構を有していても良く、このようにしても上記タイマー式スイッチの場合と同様にして、シールドボックス内での携帯電話機の使用者等に対し確実に課金することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明のシールドボックスシステムの一実施例を具える、この発明のシールドボックスビジネスシステムの一実施例を設置した病院の建物を一部切欠いて模式的に示す斜視図、図2(a),(b),(c)および(d)は、上記実施例のシールドボックスシステムを構成するシールドボックスを示す正面図、平面図、左側面図および右側面図、そして図3は、上記実施例のシールドボックスビジネスシステムを示す構成図であり、図中符号1は、携帯電話使用規制建物としての病院の建物、2はその建物1の屋上に設置された建物外のアンテナ、3は上記実施例のシールドボックスシステムを構成するシールドボックスをそれぞれ示す。
【0014】
この実施例のシールドボックスシステムは、図1に示すように、図示例では三階建ての建物1の最上階である三階のフロアに設置されたシールドボックス3と、そのシールドボックス3内の携帯電話機と建物1外の図示しない携帯電話中継局との間の、建物1外の上記アンテナ2を介する無線通信を、建物1内でシールドボックス3外へ電波が漏洩しないように中継する中継手段4とを具えている。
【0015】
ここで、シールドボックス3は、図2(a)〜図2(d)に示すように、各々ステンレス鋼板製の中空のパネルの内部に注入発泡ウレタンを充填して形成した正面ドア3a、左側板3b、右側板3c、背板3d、天井板3eおよび床板3fを有し、それらのうちで左側板3b、右側板3c、背板3d、天井板3eおよび床板3fは相互に固定金具で結合されて正面側が開いた箱状組立体を構成し、その箱状組立体の正面側に正面ドア3aが開閉可能に組み付けられて構成されており、正面ドア3aと左側板3bと右側板3cとにはボックス内を確認可能なように金属メッシュを挟んだガラス板を用いたシールドウインドー3gが嵌着固定され、また左側板3bと右側板3cとにはボックス内を換気可能なように金属メッシュを用いた換気用シールドパネル3hが嵌着固定されている。
【0016】
そして、上記箱状組立体の左側板3b、右側板3c、背板3d、天井板3eおよび床板3fの相互の隙間には金属メッシュを用いた図示しないシールドパッキンが介装され、その箱状組立体の正面側端部と正面ドア3aとの間にも金属メッシュを用いた図示しないシールドパッキンが介装され、さらにその箱状組立体と正面ドア3aとの間には、正面ドア3aが開け放しにされないようスプリングの力でドアを自動的に閉じる図示しないドアクローザーが介装されており、かかる構成によりシールドボックス3は、内部に人が入り得る容積を持つとともに、周囲の金属部分をアースに接続されて内部を電磁シールドされている。なお図2中の寸法は例示であり、その単位はmmである。
【0017】
一方、中継手段4は、図3に示すように、シールドボックス3内に設置されたアンテナ4aと、建物1内に設けられ、そのアンテナ4aを介してシールドボックス3内の携帯電話機5との間で無線通信を行うとともに建物1外のアンテナ2を介して図示しない携帯電話中継局との間で無線通信を行うことで携帯電話機5と上記携帯電話中継局との間の無線通信を中継する通常の無線中継装置4bと、シールドボックス3内のアンテナ4aおよび建物1外のアンテナ2と無線中継装置4bとをそれぞれ接続する、周囲を電磁シールドされた通常の同軸ケーブルからなる中継ケーブル4cとを有しており、各中継ケーブル4cには、基地局からの携帯電話機送信出力抑圧指令を解除するためおよびスプリアスを抑えるためにアッテネーター4dが介装され、また建物1外のアンテナ2と無線中継装置4bとの間の中継ケーブル4cにはアンテナ2側の端部に通常のプリアンプ4eが介装されている。
【0018】
さらに、図3に示すように、シールドボックス3内には課金手段としてのタイマー式スイッチ6が設けられており、このタイマー式スイッチ6は、コインの投入により所定時間無線中継装置4bを商用AC電源に接続して無線中継装置4bを稼動させる。このタイマー式スイッチ6と上記実施例のシールドボックスシステムとを具えて、上記実施例のシールドボックスビジネスシステムは構成されている。
【0019】
かかる実施例のシールドボックスシステムによれば、病院の建物1内に設置され、人が入り得る容積を持つとともに周囲を電磁シールドされたシールドボックス3内に、人が入って携帯電話機5を使用すると、中継手段4が、そのシールドボックス3内の携帯電話機5とその建物1外の携帯電話中継局との間の、その建物1外のアンテナ2を介する無線通信を、その建物1内でシールドボックス3外へ電波が漏洩しないように中継するので、携帯電話機5の電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響するのを防止しつつ、病院の建物1内での携帯電話機5の使用を可能にすることができる。
【0020】
しかもこの実施例のシールドボックスシステムによれば、中継手段4が、シールドボックス3内のアンテナ4aと、建物1内の無線中継装置4bと、シールドボックス3内のアンテナ4aおよび建物1外のアンテナ2と無線中継装置4bとをそれぞれ接続する、周囲を電磁シールドされた中継ケーブル4cとを有しているので、建物1内のシールドボックス3と建物1外のアンテナ2とが比較的離れていても、無線中継装置4bによって信号の減衰を補って通信を中継することができ、また携帯電話機5をそのまま無線で使用できるので、その使用を簡単に行うことができる。
【0021】
そして、上記実施例のシールドボックスビジネスシステムによれば、上記実施例のシールドボックスシステムの効果が得られるのに加えて、コインの投入により所定時間無線中継装置4bを稼動させるタイマー式スイッチ6により、シールドボックス3内での携帯電話機5の使用者等に対し確実に課金することができる。
【0022】
以上、図示例に基づき説明してが、この発明は上記例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、建物は、病院の建物に限られず医療関係施設等の建物でも良く、また中継手段は、一台の無線中継装置に対し分配器を介して、複数個のシールドボックス内に設置されたアンテナをそれぞれ接続するようにしても良い。さらに中継手段は、シールドボックス内の携帯電話機のアンテナと建物外のアンテナとを電気的に接続する、周囲をシールドされた中継ケーブルを有するものでも良く、また課金手段は、コインの投入によりシールドボックスのドアを外から開き得るように開錠する施錠機構を有するものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
かくしてこの発明のシールドボックスシステムによれば、病院等の携帯電話使用規制建物内に設置され、人が入り得る容積を持つとともに周囲を電磁シールドされたシールドボックス内に、人が入って携帯電話機を使用すると、中継手段が、そのシールドボックス内の携帯電話機とその建物外の携帯電話中継局との間の、その建物外のアンテナを介する無線通信を、その建物内でシールドボックス外へ電波が漏洩しないように中継するので、携帯電話機の電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響するのを防止しつつ、携帯電話使用規制建物内での携帯電話機の使用を可能にすることができる。
【0024】
またこの発明のシールドボックスビジネスシステムによれば、携帯電話機の電波が医療機器やペースメーカー等の作動に影響するのを防止しつつ、携帯電話使用規制建物内での携帯電話機の使用を可能にすることができるとともに、シールドボックスを使用する度に、シールドボックス内での携帯電話機の使用者やシールドボックスの設置者に対し課金手段により課金して利益を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明のシールドボックスシステムの一実施例を具える、この発明のシールドボックスビジネスシステムの一実施例を設置した病院の建物を一部切欠いて模式的に示す斜視図である。
【図2】(a),(b),(c)および(d)は、上記実施例のシールドボックスシステムを構成するシールドボックスを示す正面図、平面図、左側面図および右側面図である。
【図3】上記実施例のシールドボックスビジネスシステムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1 建物
2 アンテナ
3 シールドボックス
3a 正面ドア
3b 左側板
3c 右側板
3d 背板
3e 天井板
3f 床板
3g シールドウインドー
3h 換気用シールドパネル
4 中継手段
4a アンテナ
4b 無線中継装置
4c 中継ケーブル
4d アッテネーター
4e プリアンプ
5 携帯電話機
6 タイマー式スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話使用規制建物内に設置され、人が入り得る容積を持つとともに、周囲を電磁シールドされたシールドボックスと、
前記シールドボックス内の携帯電話機と前記建物外の携帯電話中継局との間の、前記建物外のアンテナを介する無線通信を、前記建物内で前記シールドボックス外へ電波が漏洩しないように中継する中継手段と、
を具えてなる、シールドボックスシステム。
【請求項2】
前記中継手段は、
前記シールドボックス内のアンテナと、
そのシールドボックス内のアンテナを介して前記シールドボックス内の携帯電話機との間で無線通信を行うとともに前記建物外のアンテナを介して携帯電話中継局との間で無線通信を行うことで前記携帯電話機と前記携帯電話中継局との間の無線通信を中継する無線中継装置と、
前記シールドボックス内のアンテナおよび前記建物外のアンテナと前記無線中継装置とをそれぞれ接続する、周囲を電磁シールドされた中継ケーブルと、
を有している、請求項1記載のシールドボックスシステム。
【請求項3】
前記中継手段は、
前記シールドボックス内の携帯電話機のアンテナと前記建物外のアンテナとを電気的に接続する、周囲をシールドされた中継ケーブルを有している、請求項1記載のシールドボックスシステム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか記載のシールドボックスシステムと、
前記シールドボックスを使用する度に課金する課金手段と、
を具えてなる、シールドボックスビジネスシステム。
【請求項5】
請求項2記載のシールドボックスシステムを具え、
前記課金手段は、コインの投入により所定時間前記無線中継装置を稼動させるタイマー式スイッチを有することを特徴とする、請求項4記載のシールドボックスビジネスシステム。
【請求項6】
請求項3記載のシールドボックスシステムを具え、
前記課金手段は、コインの投入により前記シールドボックスのドアを外から開き得るように開錠する施錠機構を有することを特徴とする、請求項4記載のシールドボックスビジネスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−121271(P2006−121271A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305407(P2004−305407)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000231925)日本コムシス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】