説明

シールド掘進機の掘削用ビット交換装置

【課題】ビット交換作業を容易に行えて作業性もよく、交換用ビットを接近して配置できる。
【解決手段】カッタヘッドの前面板32に2個の開口部36を形成するとともに、前面板32の背面側に、前面板32に垂直な回動軸心O1周りに回動自在な円柱状の回動支持体41を配置し、回動支持体41に、開口部36から前方に突出する交換用ビット31を出退・固定自在にそれぞれ保持する2個のビット収納穴42を前面から背面に貫通形成し、回動支持体41の前面に、回動支持体41を回動軸心O1周りに交換姿勢に回動させた時に、開口部27を閉鎖する閉鎖面部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削途中に、磨耗したビットを新しいビットに交換するためのシールド掘進機の掘削用ビット交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特許文献1に開示されたシールド掘進機のカッタビット交換装置は、カッタスポークの収納部に、推進方向に垂直な支軸周りに回転自在に軸支された球体ユニットを配置し、球体ユニットの前面に形成された有底状の凹部内に、ビットが突設されたビット付きロッドを収容し、球体ユニットの凹部の底部に、背面から操作してビット付きロッドを出退可能なねじ軸式のビット進退機構を設け、球体ユニットを支軸を中心に反転させるユニット反転機構を設けたものである。
【0003】
上記構成において、ビットが磨耗すると、ビット進退機構によりロッド付きビットを後退させて凹部内に収容し、次いでユニット反転機構により球体ユニットを180°反転させて、凹部の開口面をカッタスポーク内に露出させ、さらに球体ユニットの背面により、収納部をシールして切羽側から泥水の浸入を防止する。そして、ビット付きロッドを凹部から引き出して、新しいビット付きロッドを凹部内に挿入する。さらにユニット反転機構により球体ユニットを180°反転させて凹部を切羽側に露出させ、次いでビット進退機構によりロッド付きビットを突出させるものである。
【特許文献1】実用新案登録第2550406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、
1)球体ユニットは、ビット付きロッド全体を凹部内に収容するが必要であり、ビット付きロッドの長さと凹部の奥行きを考慮すると、球体ユニットに十分な外径を確保する必要がある。この場合、ビット付きロッドの配置間隔を小さくできないため、ビットを配置する距離が制限されるという問題があった。
【0005】
2)球体ユニットの前面に有底状の凹部を形成し、凹部の底部にビット進退機構を背面から操作するように設けたため、180°反転した姿勢では、ビット進退機構は切羽側にあり、操作することができない。このねじ式のビット進退機構のように、凹部の底部軸心位置にねじ軸を有している場合には、ロッド回り止め部材を外して、重量のあるビット付きロッドをその軸心周りに回転させて凹部から取り出すことになり、このため、ビットの着脱作業が重労働となり長い時間を必要とする。
【0006】
3)1個の球体ユニットに凹部は1箇所で、ビット付きロッドをそれぞれ1本ずつしか設けることができない。したがって、1本ずつビット交換作業を行う必要があり、さらに1回の交換作業ごとに球体ユニットを180°×2の回転動作が必要があり、作業性が悪い。しかも交換作業中に、一旦凹部の奥側に後退させたビット付きロッドを、再度引き出すことになり、離脱、装着作業ごとに、出退動作を重複して行うが必要があり作業性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決して、交換作業を容易に行えて作業性もよく、また隣接するビットを接近して配置することができるシールド掘進機の掘削用ビット交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置は、シールド本体の前部にシールド軸心周りに回転自在に支持されるカッタヘッドを備えたシールド掘進機の掘削用ビット交換装置であって、カッタヘッドの前面板に複数の開口部を形成するとともに、前面板の背面側に前面が摺接する円柱状の回動支持体を、前面板に略垂直な回動軸心周りに回動自在に配置し、回動支持体に、前記各開口部にそれぞれ対応して配置されて交換用ビットをそれぞれ出退・固定可能な複数のビット収納穴を、前面から背面にわたって貫通形成し、回動支持体をビット収納穴が開口部に対応する使用姿勢から回動軸心周りに回動して交換姿勢とした時に、各開口部をそれぞれ閉鎖可能な閉鎖面部を、回動支持体の前面に設けたものである。
【0009】
請求項2記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置は、請求項1記載の構成において、カッタヘッドの前面板は、カッタヘッド側に設けられたカッタ前面板と、このカッタ前面板に形成された装着穴に着脱可能に取り付けられて開口部が形成されたユニット前面板とからなり、前記ユニット前面板と回動支持体とで、一体に交換可能なビット交換ユニットを構成したものである。
【0010】
請求項3記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置は、請求項1または2記載の構成において、前面板の背面と回動支持体の前面との隙間をシールして開口部から泥水の浸入を防ぐ前面シール部材と、交換用ビットの外周面とビット収納穴の内周面との隙間をシールしてビット収納穴から泥水の浸入を防ぐ内面シール部材とを設け、回動支持体の外周部に設けられた回動用受動ギヤと、この回動用受動ギヤに噛み合う駆動ピニオンとを有し、駆動ピニオンを回転駆動して使用姿勢と交換姿勢との間で回動支持体を回動する姿勢変更装置を設けたものである。
【0011】
請求項4記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、カッタヘッドの前面板の背面側に、作業員が入って交換作業可能な作業空間を形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、交換用ビットをそれぞれ掘削位置から開口部を介してビット収容穴内の中間位置にそれぞれ後退させた後、回動支持体を使用姿勢から回動軸心周りに所定角度回動して交換姿勢にすることにより、前面板の開口部を回動支持体の閉鎖面部でそれぞれ閉鎖することができる。そして、ビット収納穴内の磨耗した交換用ビットを抜き出して新しい交換用ビットを嵌入した後、再度回動支持体を交換姿勢から所定角度回動して使用姿勢とし、さらに交換用ビットをビット収容穴から開口部を介して前方に突出させて掘削位置とすることにより、交換作業を完了することができる。したがって、交換用ビットを、回動支持体の軸心方向に形成されたビット収納穴に沿って抜き出しおよび押し込みするとともに、回動支持体を回動するだけの簡単な交換作業でよく、交換用ビットの着脱作業を容易かつ迅速に行うことができる。また回動支持体に複数のビット収納穴を形成して複数の交換用ビットを保持させるので、複数の交換用ビットを接近して配置することができ、複数個の交換用ビットの交換作業を一度に行うことができ、交換作業の作業性がよい。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、ビット交換ユニットにより、カッタヘッドへの装着や交換作業を容易に行うことができる。
請求項3記載の発明によれば、交換用ビットを掘削位置と中間位置の間で出退させても、内面シール部材により、交換用ビットとビット収納穴との隙間のシール性能を確保することができ、また回動支持体を使用姿勢と交換姿勢の間で回動しても、前面シール部材により前面板と回動支持体との隙間のシール性能を確保することができ、交換作業時に十分なシール性能を確保することができて切羽側からの高圧の泥水が浸入するのを効果的に防止することができる。また姿勢変更装置により、回動支持体を使用姿勢と交換姿勢との間で容易に回動することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、切羽側の土圧、泥水圧をカッタヘッドにより保持しつつ、カッタヘッドに設けられた作業空間から容易に交換用カッタビットを交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るシールド掘進機の掘削用ビット交換装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
図7に示すように、円筒形のシールド本体11の前部には、切羽崩壊土圧を保持する圧力隔壁12が設けられ、この圧力隔壁12に旋回軸受13を介して旋回リング体14がシールド軸心O周りに回転自在に支持されている。そして、この旋回リング体14に複数の支持脚15が前方に突出され、これら支持脚15の前端部に円形のカッタヘッド16が支持されている。圧力隔壁12の後部には、カッタヘッド16を回転駆動するカッタ駆動装置17が設けられており、このカッタ駆動装置17は、旋回リング体14の背面に設けられたリングギヤ17aと、このリングギヤ17aに噛み合う複数の駆動ピニオン17bと、前記駆動ピニオン17bをそれぞれ回転駆動する複数の回転駆動装置(油圧式または電動式モータ)17cとで構成されている。さらに圧力隔壁12には、カッタヘッド16により掘削された土砂を、切羽崩壊土圧を保持しつつ後部の大気圧側に排出する排土用スクリュコンベヤ装置18が設けられている。
【0016】
カッタヘッド16は、図8に示すように、シールド軸心O位置に配置された中心部材20から半径方向に延びる複数の主スポーク部材21と、主スポーク部材21の間で半径方向に延びる複数の副スポーク部材22と、シールド軸心Oを中心とする円弧方向に配設されて主スポーク部材21および副スポーク部材22を連結する中間リング部材23および外周リング部材24とを具備し、これら部材21〜24間に土砂取り入れ口25が形成されている。
【0017】
そして主スポーク部材21の前部に、本発明に係るいわゆるリボルバー式の複数のビット交換ユニット30が配列され、各ビット交換ユニット30に2本の交換用ビット(ビット)31がそれぞれ設けられている。また主スポーク部材21の外周端の周方向両側に外周ビット交換ユニット50が設けられている。さらに中心部材20や副スポーク部材22の前面および側面、主スポーク部材21の側面に複数の固定ビット26がそれぞれ設けられている。
【0018】
図7に示すように、前記中心部材20の背面側に、作業員が出入り可能なマンホール27が設けられており、このマンホール27は圧力隔壁12を貫通して大気圧側から出入り可能に開口されている。また各主スポーク部材21の背面側に、スポーク前面板(カッタ前面板)21aの左右側縁から後方に垂設された左右の側板33aと、左右の側板33aの後縁部を連結する背面板33bからなる背面囲い壁33により、作業員が入ってビット交換作業が可能な作業空間35が形成され、マンホール27からこの作業空間35に作業員が行き来できるように連通されている。
【0019】
図1〜図4に示すように、主スポーク部材21に半径方向に沿って所定ピッチで配設されたビット交換ユニット30には、各ビット交換ユニット30に毎にそれぞれ2本ずつの交換用ビット31が半径方向(主スポーク部材21の長さ方向)に配列されている。
【0020】
交換用ビット31は、円柱形の基軸部31bと、基軸部31bの前面に突出された掘削刃部31aと、基軸部31bの後端部から外周側に突設されて掘削位置の突出限を規制するフランジ部31cからなり、掘削刃部31aは、基軸部31bに比較して外形が小さく形成されて、後述のビット収容穴42から出退可能なように構成されている。さらに基軸部31bの背面には、引出し、押込み用工具を係合可能な係合穴31dが形成されている。
【0021】
ビット交換ユニット30は、主スポーク部材21のスポーク前面板21aに略円形連続状に形成された装着穴部21bにそれぞれにユニット前面板32が着脱可能に嵌合装着され、これらユニット前面板32に半径方向に所定間隔をあけて2個の開口部36がそれぞれ形成されており、ユニット前面板32の背面側で作業空間35内に、2個の開口部36を囲むように1個の保持筒37が突設されている。そしてこの保持筒37内に、閉鎖部材兼用で回転式リボルバーに相当する回動支持体41が、シールド軸心Oに平行な回動軸心O1周りに回動自在に保持され、保持筒37の背面の鍔部37aにより抜け止めされている。
【0022】
前記回動支持体41は円柱形に形成されて前面がユニット前面板32の背面に摺接されており、2個の開口部36にそれぞれ対応する回動軸心O1を中心とした対称位置に、2個のビット収納穴42が、前面から後面にかけて回動軸心O1と平行に貫通形成されている。これらビット収納穴42は、交換用ビット31を基軸部31bを介して出退・固定自在に収容、保持するもので、開口部36と同一内径に形成されている。そして、使用位置では、交換用ビット31の基軸部31bがビット収納穴42および開口部36に嵌合されて回動支持体41が回り止めされ、基軸部31bの前面から掘削刃部31aが主スポーク部材21から前面に突出されている。そして、複数本のビット固定ボルト43が交換用ビット31のフランジ部31cに形成された固定穴から回動支持体41のボルト穴に装着されて固定されている。なお、保持筒37の鍔部37aには、フランジ部31cの一部が嵌合される凹部37bが形成され、回動支持体41の回り止めに寄与している。
【0023】
このビット交換ユニット30には、回動支持体41を、ビット収納穴42を半径方向に並べて開口部36に合致する使用姿勢と、回動軸心O1周りに90°旋回してビット収納穴42を周方向に並べた交換姿勢との間で旋回させる姿勢変更装置45が設けられている。この姿勢変更装置45は、回動支持体41の外周部で背面寄りに設けられた回動用受動ギヤ(リングギヤまたは円弧状ギヤ)45aと、保持筒37に設けられたギヤボックス内で回動用受動ギヤ45aに噛み合う駆動ピニオン45bとで構成され、駆動ピニオン45bの駆動軸45cに、図示しない手動式ラチェットレンチや油圧式トルクレンチなどの回転工具を装着して駆動される。
【0024】
またユニット前面板32に摺接する回動支持体41の前面に、ビット収納穴42に対して回動軸心O1を中心に90°隔てられて交換姿勢で開口部36を全面閉鎖可能な閉鎖面部48が設けられて、土砂の流入を防ぎ、切羽崩壊土圧を支持するように構成されている。
【0025】
切羽側の高圧の泥水の浸入を防止するために、交換用ビット31の基軸部31bの前面近傍の外周部にリングシール(内面シール部材)46が設けられており、掘削位置において、リングシール46が開口部36内に位置し、また交換用ビット31が後方に引き出された中間位置において、リングシール46がビット収容穴42内に位置して、泥水が開口部36から作業空間35内に浸入するのをそれぞれ防止している。またユニット前面板32の背面で開口部36の周囲に沿って第1前面シール材(前面シール部材)47Aが配設され、開口部36の周囲のユニット前面板32と回動支持体41との摺接隙間をシールし、さらにユニット前面板32の背面側で外周部に、回動支持体41の前面外周部に摺接する第2前面シール材(前面シール部材)47Bが設けられ、泥水が開口部36から摺接隙間を介して作業空間35内に浸入するのを防止している。なお、第2前面シール材47Bは、回動支持体41の前面の外周部に設けることもできる。
【0026】
外周ビット交換ユニット50は、図9,図10に示すように、ビット交換ユニット30とほぼ同一構成であるが、交換用外周ビット51が1本である点、交換用外周ビット51を保持する回動支持体52のビット収容穴53が、回動軸心O1に対してθ°たとえば45°傾斜されている点で相違しており、ビット交換ユニット30と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
すなわち、回動支持体52の前面外周側から背面内周側にビット収容穴53が回動軸心O1に対してθ°たとえば45°傾斜して形成されており、ビット収容穴53内に固定された交換用外周ビット51の掘削刃部31aの先端部が、シールド本体11の外周に達するように構成される。また回動支持体52の前面に設けられた閉鎖面部48は、回動軸心O1を中心としてビット収容穴53から90°隔てた位置に設けられている。
【0028】
なお、ビット交換ユニット30にも、図11に示すように、ビット収容穴53をそれぞれ回動軸心O1に対してθ°傾斜して形成し、交換用ビット31を傾斜して取り付けることもできる。
【0029】
次にビット交換ユニット30の交換作業を説明する。
図1〜図4に示すように、交換用ビット31は、トンネルの掘削状態では掘削位置(使用姿勢)で固定されている。掘削が進み、交換用ビット31が磨耗すると、カッタ駆動装置17を停止してカッタヘッド16を停止する。そして、作業員がマンホール27から主スポーク部材21の背面囲い壁33内の作業空間35に入り交換作業を行う。
【0030】
1)目的のビット交換ユニット30において、2個の交換用ビット31を回動支持体41にそれぞれ固定した複数のビット固定ボルト43のうち、鍔部37aの凹部37b内以外の任意位置、たとえば周方向の対称位置の2本を外し、ビット固定ボルト43に代えて交換用ビット31を固定穴を介して長尺のスタッドボルト(案内部材)49をボルト穴にそれぞれ取り付け、スタッドボルト49により交換用ビット31の引出しを案内させる。次いで、残りのビット固定ボルト43を取り外した後、図1,図2に仮想線で示すように、ジャッキなどの引出し、押し込み用工具を係合穴31dに装着して、掘削位置の交換用ビット31をそれぞれスタッドボルト49に沿って中間位置までそれぞれ引き出し、掘削刃部31aの前端部をビット収容穴42内に収容する。この時、シールシリング46によりシールされており、切羽側の泥水が開口部36からビット収容穴42を介して作業空間35に漏入することがない。
【0031】
2)ラチェットレンチなどの回転工具を使用して姿勢変更装置45を駆動し、回動支持体41を回動軸心O1周りに図1,図2に示す使用姿勢から図5,図6に示す交換姿勢に90°回転させ、開口部36を閉鎖面部48で閉鎖する。この閉鎖面部48で、開口部36から土砂の浸入を防止するとともに、切羽崩壊土圧を支持させる。さらに第1,第2前面シール部材47A,47Bによりユニット前面板32と回動支持体41の摺接隙間がシールされて開口部36から作業空間35に泥水が漏入するのが防止される。
【0032】
3)スタッドボルト49を取り外し、図5,図6に仮想線で示すように、磨耗した交換用ビット31を中間位置からそれぞれ作業空間35内に取り出す。そして、新しい交換用ビット31をビット収容穴42に嵌め込み、中間位置で押込みを案内するスタッドボルト49を再度取り付ける。
【0033】
4)ラチェットレンチなどにより姿勢変更装置45を駆動して、回動支持体41を交換姿勢から逆方向に90°回転させて使用姿勢とし、開口部36にビット収容穴42をそれぞれ合致させる。
【0034】
5)新しい交換用ビット31を中間位置から掘削位置まで押出し、基軸部31bの前端部をビット収容穴42から開口部36に嵌め込み、掘削刃部31aを主スポーク部材21の前面に突出させる。そして、ビット固定ボルト43により新しい交換用ビット31をそれぞれ回動支持体41に固定する。
【0035】
外周ビット交換ユニット50についても、同様にして交換用外周ビット51を交換することができる。
上記実施の形態によれば、交換用ビット31を掘削位置から中間位置に引き込んで掘削刃部31aをビット収容穴42内に引き込み、さらに回動支持体41を使用姿勢から回動軸心O1周りに90°回動して交換姿勢とすることにより、開口部36をそれぞれ回動支持体41の閉鎖面部48により閉鎖して切羽崩壊土圧を支持させるとともに、土砂などの浸入を防止することができる。また中間位置の交換用ビット31をそれぞれビット収納穴42から抜き出し、新しい交換用ビット31と容易に交換することができる。このように、交換用ビット31を、回動支持体41の軸心方向に形成されたビット収納穴42に沿って出し入れするだけの単純な交換動作ですみ、交換用ビット31の着脱作業を容易に能率よく行うことができて作業性がよい。
【0036】
また、回動支持体41に2個のビット収容穴42を形成してそれぞれ交換用ビット31を保持させることができ、複数の交換用ビット31を十分に接近して配置することができるとともに、回動支持体41を90°往復回動させる一度の交換動作で、2個の交換用ビット31を同時に交換することができ、短時間で交換作業を行うことができ、作業性がよい。
【0037】
さらに、交換用ビット31の出退動作や回動支持体41の回動動作を行っても、リングシール46と第1,第2前面シール部材47A,47Bとにより、シール性能を十分に確保することができ、切羽側の高圧の泥水が開口部36やビット収納穴42を介して作業空間35内に漏入するのを効果的に防止することができる。
【0038】
さらにまた、姿勢変更装置45により、回動支持体41を掘削姿勢と交換姿勢との間で容易に回動でき、しかも90°の回動ですむので作業性がよい。
さらにまた、カッタヘッド16の土砂取り入れ口25から取り込まれた土砂を取り除くことなく、切羽側の土圧、泥水圧をカッタヘッド16により保持しつつ、作業員がマンホール27から作業空間35に入って、交換用カッタビット31を交換することができ、交換作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0039】
また、ビット交換ユニット30を主スポーク部材21のスポーク前面板21aに着脱自在に構成したので、カッタヘッド16の組立作業を容易に行うことができるとともに、損傷したり磨耗したビット交換ユニット30の交換を容易に行うことができる。
【0040】
なお、実施の形態1では、1つのビット交換ユニット30に2本の交換用ビット31を設けたが、図12に示すように、回動支持体41に回動軸心O1を中心に120°ごとに3本の、またはそれ以上のビット収納穴36を形成してそれぞれ交換用ビット31を保持させることもできる。ここで閉鎖面部48は、回動支持体41の前面で各ビット収納穴36間の中間位置に設けられる。これにより、1つのビット交換ユニット30の交換作業で、一度に3本以上の交換用ビット31を交換することができ、交換作業の効率を向上させることができる。
【0041】
また、実施の形態1では、主スポーク部材21のスポーク前面板21aの装着穴部21bにユニット前面板32を着脱可能に設けたが、変形例として、スポーク前面板とユニット前面板とを一体としたスポーク面板を設け、このスポーク面板の背面に、保持筒と回動支持体からなるビット交換ユニットを取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るビット交換装置の実施の形態1を示すビット交換ユニットの縦断面図である。
【図2】ビット交換ユニットの平面視の断面図である。
【図3】ビット交換ユニットの正面図である。
【図4】ビット交換ユニットの背面図である。
【図5】ビット交換ユニットの交換作業を示す縦断面図である。
【図6】ビット交換ユニットの交換作業を示す平面視の断面図である。
【図7】ビット交換装置を有するシールド掘進機の縦断面図である。
【図8】ビット交換装置を有するシールド掘進機の正面図である。
【図9】外周ビット交換ユニットの正面図である。
【図10】外周ビット交換ユニットの縦断面図である。
【図11】ビット交換ユニットの変形例を示し、回動軸心に対して傾斜して交換用ビットを設けたビット交換ユニットの縦断面図である。
【図12】3個の交換用ビットを有するビット交換ユニットの他の実施の形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0043】
O シールド軸心
O1 回動軸心
11 シールド本体
16 カッタヘッド
17 カッタ駆動装置
20 中心部材
21 主スポーク部材
21a スポーク前面板
21b 装着穴
26 固定ビット
27 マンホール
30 ビット交換ユニット
31 交換用ビット
31a 掘削刃部
31b 基軸部
32 ユニット前面板
36 開口部
37 保持筒
41 回動支持体
42 ビット収容穴
43 ビット固定ボルト
45 姿勢変更装置
46 リングシール
47A 第1前面シール部材
47B 第2前面シール部材
48 閉鎖面部
49 スタッドボルト
50 外周ビット交換ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド本体の前部にシールド軸心周りに回転自在に支持されるカッタヘッドを備えたシールド掘進機の掘削用ビット交換装置であって、
カッタヘッドの前面板に複数の開口部を形成するとともに、前面板の背面側に前面が摺接する円柱状の回動支持体を、前面板に略垂直な回動軸心周りに回動自在に配置し、
回動支持体に、前記各開口部にそれぞれ対応して配置されて交換用ビットをそれぞれ出退・固定可能な複数のビット収納穴を、前面から背面にわたって貫通形成し、
回動支持体をビット収納穴が開口部に対応する使用姿勢から回動軸心周りに回動して交換姿勢とした時に、各開口部をそれぞれ閉鎖可能な閉鎖面部を、回動支持体の前面に設けた
シールド掘進機の掘削用ビット交換装置。
【請求項2】
カッタヘッドの前面板は、カッタヘッド側に設けられたカッタ前面板と、このカッタ前面板に形成された装着穴に着脱可能に取り付けられて開口部が形成されたユニット前面板からなり、
前記ユニット前面板と回動支持体とで、一体に交換可能なビット交換ユニットを構成した
請求項1記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置。
【請求項3】
前面板の背面と回動支持体の前面との隙間をシールして開口部から泥水の浸入を防ぐ前面シール部材と、交換用ビットの外周面とビット収納穴の内周面との隙間をシールしてビット収納穴から泥水の浸入を防ぐ内面シール部材とを設け、
回動支持体の外周部に設けられた回動用受動ギヤと、この回動用受動ギヤに噛み合う駆動ピニオンとを有し、駆動ピニオンを回転駆動して使用姿勢と交換姿勢との間で回動支持体を回動する姿勢変更装置を設けた
請求項1または2記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置。
【請求項4】
カッタヘッドの前面板の背面側に、作業員が入って交換作業可能な作業空間を形成した
請求項1乃至3のいずれかに記載のシールド掘進機の掘削用ビット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−63801(P2008−63801A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242202(P2006−242202)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】