説明

シールド掘進機の縮幅施工方法

【課題】縮幅施工がスムーズに行え、また周辺地盤の変形を最小限に抑えることのできるシールド掘進機の縮幅施工方法を提供する。
【解決手段】シールド掘進機1は、本体ブロック3と、幅方向移動可能な左右掘削ブロック5,7と幅方向移動可能な左右構築ブロック9,11と、から構成されている。本体ブロック3は、前胴部3aと中胴部3bと後胴部3cから構成されている。左右掘削ブロック5,7および左右構築ブロック9,11は、それぞれ拡縮機構21および拡縮機構23を介して幅方向に移動可能に設置されている。シールド掘進機の縮幅工方法を行う場合、左右構築ブロック9,11又は左右掘削ブロック5,7の縮幅方向への移動に伴って、地盤と各ブロックとの間に生じる隙間に、排土管26a,26b,27a,27bからモルタルなどの充填剤を放出して前記隙間に注入するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地中を掘進して断面の変化するトンネルを構築できる拡縮機能を備えたシールド掘進機におけるシールド掘進機の拡幅施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの断面を変化させたいときにシールド掘進機の本体を拡縮させて掘進する多連型シールド掘進機が、例えば特開平6−146776号公報に開示されている。
図7は上記公報に開示された多連型シールド掘進機の切断平面図、図8は図7に示した多連型シールド掘進機のA−A矢視図、図9は図7に示した多連型シールド掘進機のB−B矢視図である。図7乃至図9に示すように、従来の多連型シールド掘進機は、円形の左右の主カッター51,52と、これらの間の背面側に位置させた円形の副カッター53を、これらカッター51乃至53の正面形状と対応する形状を輪郭形状としたシールドフレーム55の前面部に、回転駆動可能に取り付けて、左右の主シールド部57,59と中央の副シールド部61とを有する構成としたものである。
【0003】
シールドフレーム55は、主カッター51,52の軸心と平行な方向に上下位置で3分割されて、両側に配置された主シールドフレーム部55a,55bと中央シールドフレーム部55cの3つのフレーム部から構成されている。そして、各分割部には左右方向へ一定量スライドし得るスライドガイド機構62がそれぞれ設けられて、左右の主シールド部57,59を中央の副シールド部61に対してそれぞれ左右方向へスライド可能に構成されている。スライドガイド機構62は図8,図9から分かるように、主シールドフレーム部55a,55bの表面部にスリットを設け、中央シールドフレーム部55cの端部がこのスリットに挿入されるという構造をしている。
そしてさらに、上記各主シールド部57,59と副シールド部61との間に、それぞれ左右方向へ配した拡縮ジャッキ63を介装させ、該拡縮ジャッキ63の伸長作動で主シールド部57,59が左右方向へスライドすることによりシールドフレーム55が拡縮できるように構成されている。
【0004】
上記のように構成された従来のシールド掘進機によるトンネルを施工方法を概説する。一般部では、シールドフレーム55を拡縮した状態で、左右の主シールド部55a,55bの主カッター51,52にて左右の道路本線部を掘削して行くようにすると共に、中央の副シールド部61の副カッター53にて左右の道路本線部の連絡部を掘削して行くようにする。
【0005】
上記一般部の掘削作業を行っている状態において、拡幅すべき箇所の所要量手前の位置に達したときに、主カッター51,52の外周部からコピーカッター(図示なし)を突出させ、該コピーカッターにより切羽側方部を余堀りしながら掘削を行い、シールドフレーム55の拡幅空間を確保するようにする。所要の範囲に亘って拡幅空間が形成されると、図7乃至図9の左半分に示すように、各拡幅ジャッキ63を所定量伸長させて主シールド部55a,55bを左右方向外方へスライドさせることにより、シールドフレーム55を所定量拡幅させ、拡幅量に見合った形状寸法のトンネル覆工用セグメントを組み付け、以後、さらなる余堀り掘削とシールドフレーム55の拡幅を必要回数繰り返してトンネルの横幅を拡げながら覆工を施工して行く。
【0006】
トンネル横幅が必要幅まで拡げられたところで、次に、シールドフレーム55の拡幅状態を維持しつつ必要長さの直線掘削を行いながら同形状の覆工を施して行くようにする。しかる後、上記拡幅時とは逆に、トンネルを除々に拡縮しながら拡縮量に見合った形状寸法の覆工を施して、非常用駐車帯などの拡幅スペースを完成させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した多連型シールド掘進機においては、コピーカッタによって余堀りを行い、その後、各拡幅ジャッキ63を所定量伸長させてシールドフレーム55を所定量拡幅させているが、実際には余堀りした土砂などが邪魔になりシールドフレーム55をスムーズに拡幅するのは難しい。
また、拡幅状態から拡縮する場合には、地盤とシールド掘進機との間に空隙が出来てしまい、地盤が柔らかい場合には地盤が崩れ、周辺地盤が変形してしまうという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、拡縮施工がスムーズに行え、また周辺地盤の変形を最小限に抑えることのできるシールド掘進機の縮幅施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るシールド掘進機の縮幅施工方法は、拡縮機能を備えたシールド掘進機の縮幅施工の際に、拡幅する外殻と地盤との間に生ずる隙間に充填剤を注入しながら縮幅施工を行うものである。
【0010】
(2)また、前記シールド掘進機により掘削された土砂を機内側へ取り込むための取込口から前記充填剤を機外側に放出するようにしたものである。
【0011】
(3)また、前記の縮幅施工の際に、拡幅する外殻に作用する土圧を検出して、該検出された土圧に基づいて拡幅の速度を制御するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
(i)以上のように前記(1)においては、縮幅施工の際に、シールド掘進機と地盤との間に生ずる隙間に充填剤を注入しながら施工するようにしたので、地盤が安定して周辺地盤の変形を抑えることができる。
【0013】
(ii)また、前記(2)によれば、拡幅の際には土砂の取込口から掘削土砂を取り込み、縮幅の際には土砂の取込口から充填剤を放出するようにしたので、円滑な拡幅と共に、周辺地盤の変形を抑えた縮幅施工が可能となる。
【0014】
(iii)また、前記(3)によれば、拡幅する外殻に作用する土圧を検出して、該検出された土圧に基づいて前記抵抗となる土砂を前記取込口から機内側に取り込むようにしたので、周辺地盤の変形を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は本発明の一実施の形態である縮幅施工方法に用いるシールド掘進機の斜視図である。図において、1はシールド掘進機であり、シールド掘進機1は平面断面形状が十字状の本体ブロック3、本体ブロック3の前部左右に幅方向移動可能に設置されて前端側に掘削機構を有する左右掘削ブロック5,7、本体ブロック3の後部左右に幅方向移動可能に設置されて後部側にトンネル構築部を有する左右構築ブロック9,11から構成されている。なお、図1は左右掘削ブロック5,7及び左右構築ブロック9,11を拡幅させた状態を示している。
【0016】
本体ブロック3は、前後方向に延びる平面断面が矩形状の前胴部3a、前胴部3aに連続して幅方向に延びる平面断面が矩形状の中胴部3b、中胴部3bに連続して前後方向に延びる平面断面が矩形状の後胴部3cから構成されている。そして、前胴部3aの前端側には、地盤を掘削するための副掘削カッター13が設けられ、後胴部3cの後端側にはトンネルを構築するためのトンネル構築部が設けられている。
左右掘削ブロック5,7は、本体ブロック3の前胴部3aの左右位置に図中破線で示す拡縮機構21を介して幅方向に移動可能に設置されており、それぞれの前端側には主掘削カッター15,17が設けられている。そして、主掘削カッター15,17には余堀り掘削機構である既知のコピーカッタ31,32が内蔵されている。
左右構築ブロック9,11は、本体ブロック3の後胴部3cの左右位置に図中破線で示す拡縮機構23を介して幅方向に移動可能に設置されており、それぞれの後端側にはトンネル構築部が設けられている。
【0017】
図2は図1に示したシールド掘進機1の平面断面図である。以下、図2に基づいてシールド掘進機1の内部構造を説明する。図2において、24は主掘削カッター15,17及び副掘削カッター13の掘削動作によって発生した土砂をシールド掘進機1の後方へ搬出する排土機構である。排土機構24は、左右掘削ブロック5,7に設けられて、それぞれの掘削ブロック5,7の前方近傍で発生する土砂をシールド掘進機1の内部に取り込む左右排土管25a,25b、左右排土管25a,25bを連結して主排土管29に連結する連結管27a,27bとから構成されている。
【0018】
21は左右掘削ブロック5,7を本体ブロック3の前胴部3aに拡幅可能に連結する拡縮機構、23は左右構築ブロック9,11を本体ブロック3の後胴部3cに拡幅可能に連結する拡縮機構である。これら拡縮機構21,23は同一の構成である。
41,42はそれぞれ左右掘削ブロック5,7の側面に設置した土圧計、43,44はそれぞれ左右構築ブロック9,11の側面に設置した土圧計である。
【0019】
図3乃至図5は上述したシールド掘進機の縮幅施工方法の説明図(平面図)であり、図において図1及び図2と同一部分には同一符号が付してある。図において、45はシールド掘進機1の後胴部側で構築されたトンネル、46は地盤、47はコピーカッタ31,32によって余堀りされて流動性の高まった掘削土である。
図3乃至図5に基づいてシールド掘進機の縮幅施工方法を説明する。縮幅状態でシールド掘進機1を屈進させて、拡幅すべき位置に到達すると、コピーカッタ31,32を突出させて余堀りを開始する。そして、余堀りをしながらシールド掘進機1の全長が余堀ゾーンに入るまで掘進する。このシールド掘進機1の全長が余堀ゾーンに入った状態が図3に示してある。
【0020】
次に、図4に示すように左右構築ブロック9,11を幅方向に移動させて後胴側を拡幅させる。このとき、左右構築ブロック9,11の周囲にあった流動性の高まった掘削土47は、左右構築ブロック9,11の外周面に押されて、前方の左右掘削ブロック5,7側へ移動する。そして、左右掘削ブロック5,7の周辺にあった掘削土47は後方からの掘削土47に押されてシールド掘進機1の前端側に移動する。このとき左右排土管25a,25bの排土機構を駆動して、前端側に押されてきた掘削土47を機内側に取り込みシールド掘進機1の後方側へ排土する。
【0021】
左右構築ブロック9,11の移動が終了すると、次に左右掘削ブロック5,7の移動を行う。左右掘削ブロック5,7を拡幅方向に移動させると、左右構築ブロック9,11の移動の場合と同様に左右掘削ブロック5,7の周辺の掘削土47はシールド掘進機1の前端側に移動して左右排土管25a,25bから後方に排出される。左右掘削ブロック5,7を幅方向に最大移動させた状態が図5に示す状態である。
【0022】
なお、左右構築ブロック9,11及び左右掘削ブロック5,7の拡幅時においては、土圧計41乃至44によって各ブロックの周面に作用する土圧を検出し、該土圧が一定以上にならないように各ブロックの移動スピードを制御する。これによって、各ブロックの周面の土圧が急激に高まって周辺地盤が変化するのを防止することができる。
【0023】
なお、上記の実施の形態においては、予め余堀りを行う例であるが、シールド掘進機の周辺地盤が柔らかいような場合には、余堀りを行わずに拡幅施工を行うこともできる。
【0024】
実施の形態2.
図6は本発明の他の実施の形態に使用するシールド掘進機の平面断面図である。図において、図2と同一部分には同一符号が付してある。図6に示すシールド掘進機は図2に示した構造のものに、掘削ブロック5,7のそれぞれに外周部に土砂取り込み口を有する排土管26a,26bを備え、構築ブロック9,11のそれぞれに外周部に土砂取り込み口を有する排土管27a,27bを備えたものである。
【0025】
図6に示したシールド掘進機を用いて拡幅施工を行う場合の動作は、基本的に実施の形態1と同様であるが、左右構築ブロック9,11又は左右掘削ブロック5,7を移動させる際に、土圧計41乃至44の検出値により、土圧が高くなったような場合には適宜排土管26a,26b,27a,27bから掘削土砂を取り込むようにする。このようにすることによって、左右構築ブロック9,11又は左右掘削ブロック5,7の移動をよりスムーズに行うことができる。
【0026】
また、縮幅施工を行う場合には、左右構築ブロック9,11又は左右掘削ブロック5,7の縮幅方向への移動に伴って、地盤と各ブロックとの間に隙間が生ずることになる。そこで、この隙間に排土管26a,26b,27a,27bからモルタルなどの充填剤を放出して前記隙間に注入するようにする。これによって、地盤を安定させながら、かつ極めてスムーズな縮幅施工ができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は以上であるから、地中を掘進して断面の変化するトンネルを構築できる拡縮機能を備えた各種シールド掘進機の縮幅施工方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に使用するシールド掘進機の斜視図である。
【図2】図1の水平断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態の説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態の説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に使用するシールド掘進機の平面断面図である。
【図7】従来の多連型シールド掘進機の切断平面図である。
【図8】図7に示した多連型シールド掘進機のA−A矢視図である。
【図9】図7に示した多連型シールド掘進機のB−B矢視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シールド掘進機
3 本体ブロック
5 左掘削ブロック
7 右掘削ブロック
9 左構築ブロック
11 右構築ブロック
13 副掘削カッタ
15,17 主掘削カッタ
21,23 拡縮機構
25a,25b,26a,26b,27a,27b 排土管
41,42,43,44 土圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡縮機能を備えたシールド掘進機の縮幅施工の際に、拡幅する外殻と地盤との間に生ずる隙間に充填剤を注入しながら縮幅施工を行うことを特徴とするシールド掘進機の縮幅施工方法。
【請求項2】
前記シールド掘進機により掘削された土砂を機内側へ取り込むための取込口から前記充填剤を機外側に放出するようにしたことを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機の縮幅施工方法。
【請求項3】
前記の縮幅施工の際に、拡幅する外殻に作用する土圧を検出して、該検出された土圧に基づいて拡幅の速度を制御するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のシールド掘進機の縮幅施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−274804(P2006−274804A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199637(P2006−199637)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【分割の表示】特願平9−238597の分割
【原出願日】平成9年9月3日(1997.9.3)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】