説明

シールド構造体、シールド構造体を有するコネクタ組立体及びコネクタ構造体、ケーシング組立体、並びに電動圧縮機

【課題】安価に製造できるシールド構造体と、生産性が高く安価に製造できるコネクタ組立体と、信頼性の高いコネクタ構造体と、それらを用いた汎用性の高いケーシング組立体と、これらを有する機種変更にも容易に対応可能な電動圧縮機を提供する。
【解決手段】導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向に外側、内側の少なくとも一方側に向けて突出された、シールド構造体保持部材に係合可能な複数の爪部と、からなることを特徴とするシールド構造体、それを用いたコネクタ組立体とコネクタ構造体、そのコネクタ組立体を有するケーシング組立体、それを備えた電動圧縮機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用等に用いられるコネクタ関連構造に関し、特に車両空調装置用等の電動圧縮機用に好適な、コネクタ用のシールド構造体、そのシールド構造体を有するコネクタ組立体及びコネクタ構造体、そのコネクタ組立体を用いたケーシング組立体、並びにそのケーシング組立体を備えた電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両空調装置用等の電動圧縮機用などに用いられるコネクタとして、各種の構造が提案されている。例えば特許文献1には、筒状の絶縁樹脂製アウタハウジングと、該アウタハウジングの内側に挿入され、係止手段で係着する筒状の金属シェルと、該金属シェルの内側に挿入され、係止手段で係着する絶縁樹脂製のインナハウジングと、該インナハウジングの内部に収容される端子を接続したシールド電線と、該金属シェルの後部に係止手段で嵌合係止して該金属シェルの後部開口を塞ぐリヤシェルと、該金属シェルと該リヤシェルとの後部に延設された対向する半環状の接触部に前記シールド電線のシールド部を挿入した状態で該接触部を挟持する環状の絶縁樹脂キャップと、アウタハウジングの後端部に係止手段で嵌合係止し、該シールド電線を導出させる合成樹脂製のリヤカバーとにより構成されることを特徴とする組立式シールドコネクタが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、冷凍サイクル装置の一部をなすコンプレッサ部と、コンプレッサ部と一体に結合されてコンプレッサ部を駆動するモータ部と、コンプレッサ部およびモータ部を格納するハウジングと、所定個数の電力スイッチング素子を有し直流電力を三相交流電力に変換してモータ部へ給電するインバータ回路部と、を備え、モータ部は、低圧冷媒ガスにより冷却される車両用インバータ一体型電動コンプレッサにおいて、各電力スイッチング素子は、電極端子が突出する側面と、ハウジングのモータ部囲包部分の周壁外周面に直接密着される底面とを有するデスクリートトランジスタにより別々に構成されていることを特徴とする車両用インバータ一体型電動コンプレッサが開示されている。
【特許文献1】実開平5−25678号公報
【特許文献2】特開2003−322082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載の構造においては、シールド構造体とシールドケーブルの編組との電気的な接合は押付け密着によっており、押付け力はエンドキャップをアウターハウジングに押付けながら係止することによって得ている。しかし、エンドキャップやアウターハウジングは絶縁性の樹脂系材料からなり、樹脂系材料は長期間にわたる使用や温度環境による経年劣化は避けられない。また、車両は5年〜10年を越える長期にわたって使用されることが多く、特にエンジンルーム内の環境はエンジンからの排熱、振動によって樹脂系材料にとっては非常に厳しいものである。さらに、車両空調装置の冷凍サイクルに用いられる電動圧縮機はエンジン近傍に取付けられるので、その周囲環境は一層厳しい。したがって、経年劣化の進行は押付け力の低下を促し、シールド構造体とシールド構造体との電気的な結合の信頼性を損なう可能性がある。また、主電極をシールドするシールド構造体は雄側コネクタ、雌側コネクタの双方に設けているので、高価であるという問題もある。
【0005】
また、上記特許文献2に記載の構造においては、制御回路を内設した、樹脂製のケーシングに一体に雄コネクタを形成しているので、ケーシングによって一意的に雄コネクタの向きが定まる。しかし、電動圧縮機の取付け位置や取付け方向は、メーカごと、車両ごとに様々である。雄コネクタの取付け位置または方向を車両に合わせて変更する場合は、ハウジング、ケーシング、制御部品配置などを変更しなければならない。したがって、この変更は、個々の部品レベルの変更にとどまらず、組立工程の変更へも波及する大掛かりなものとなってしまう。
【0006】
そこで本発明の課題は、とくに、安価に製造できるシールド構造体と、生産性が高く安価に製造できるコネクタ組立体と、信頼性の高いコネクタ構造体と、それらを用いた汎用性の高いケーシング組立体と、これらを有する機種変更にも容易に対応可能な電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るシールド構造体は、導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向に外側、内側の少なくとも一方側に向けて突出された、シールド構造体保持部材に係合可能な複数の爪部と、からなることを特徴とするものからなる。このような構造においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れる。
【0008】
このシールド構造体においては、筒部とアース電極用端子と爪部に相当する部分をプレスにより一体に打ち抜いた後に成型されている構成とすることができる。このような構成により、シールド構造体をより容易に製造できるとともに、一層の部品点数の削減により、コスト低減を図ることができる。
【0009】
また、筒部と爪部に相当する部分をプレスにより一体に打ち抜いた後に成型され、アース電極用端子がカシメもしくは溶接により一体に形成されている構成とすることもできる。このような構成により、部品点数の削減により、コスト低減を図ると共に、アース電極用端子を別部品とすることによって、筒部と爪部からなる略矩形状のプレス品とすることができるので、歩留まりの向上に寄与できる。
【0010】
本発明はまた、上記のようなシールド構造体を備えたことを特徴とするコネクタ組立体Aを提供する。
【0011】
より具体的な態様として、本発明に係るシールド構造体を有するコネクタ組立体Aは、アウターハウジングと、アース電極用端子の挿入孔と主電極を有するインナーハウジングと、アウターハウジングとインナーハウジングとの間に形成された深溝部と、アウターハウジングに一体に形成されたフランジ部とからなるコネクタと、
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向に外側、内側の少なくとも一方側に向けて突出された複数の爪部とからなり、前記深溝部に挿入されるシールド構造体を有し、
前記アース用電極端子が前記挿入孔に挿入され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジング側深溝部側面とインナーハウジング側深溝部側面の少なくともいずれか一方で係止していることを特徴とするものからなる(形態1)。この構成においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れると共に、シールド構造体を深溝部に挿入すると同時に、爪部がアウターハウジング側深溝側面とインナーハウジング側深溝側面の少なくともいずれか一方に係止するので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてシールド構造体の挿入作業と係止作業を一つの作業とできるので、組立性を向上できる。
【0012】
また、本発明に係るシールド構造体を有するコネクタ組立体Aは、アウターハウジングと、アース電極用端子の挿入孔と主電極を有するインナーハウジングと、アウターハウジングとインナーハウジングとの間に形成された深溝部と、アウターハウジングに一体に形成されたフランジ部とからなるコネクタと、
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向外側に向けて突出された複数の爪部とからなり、前記深溝部に挿入されるシールド構造体を有し、
前記アース用電極端子が前記挿入孔に挿入され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジングを固定する構造体(例えば、後述のケーシング)とアウターハウジングのフランジ部の端面によって狭持されることを特徴とするものからなる(形態2)。この構成においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れると共に、シールド構造体に一体に形成された爪部はフランジ部の端面に沿って屈曲することになり、ハウジングを固定する構造体とフランジ部の端面によって狭持されるので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてハウジングを構造体に固定する作業とシールド構造体を固定する作業を一つとでき、組立性を向上できる。
【0013】
また、本発明に係るシールド構造体を有するコネクタ組立体Aは、アウターハウジングと、アース電極用端子の挿入孔と主電極を有するインナーハウジングと、アウターハウジングとインナーハウジングとの間に形成された深溝部と、アウターハウジングに一体に形成されたフランジ部とからなるコネクタと、
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向外側に向けて突出された複数の爪部とからなり、前記深溝部に挿入されるシールド構造体を有し、
前記アース用電極端子が前記挿入孔に挿入され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジングを固定する構造体に形成された孔のテーパ状内周面に押し込まれて該孔内周面に係止されることを特徴とするものからなる(形態3)。この構成においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れると共に、シールド構造体に一体に形成された爪部はアウターハウジングの孔内に押し込まれる際、テーパ状内周面に押し込まれて該孔内周面に係止されるので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてハウジングを構造体に固定する作業とシールド構造体を固定する作業を一つとできる、組立性を向上できる。
【0014】
本発明はまた、上記のようなコネクタ組立体Aと、
導入されてくるシールドケーブルと、シールドケーブルの端部に設けられた主電極への接続用の端子と、シールドケーブルの端部に設けられシールド編組にカシメにより固定されたアース電極への接続用の端子と、各端子の挿入孔を配設したメインハウジングと、ハウジングの開口端部を封止すると共にシードケーブルを導出するエンドキャップと、メインハウジングとエンドキャップに狭持され、シールドケーブルを導出しながら、エンドキャップの内周面及びシールドケーブルの外周面を水密的に封止するケーブルシールと、メインハウジングに内包され、コネクタ組立体Aの雄側コネクタのインナーハウジングとメインハウジングとを水密的に封止するハウジングシールとを有するコネクタ組立体Bとからなり、
シールド構造を有するコネクタ組立体Aにコネクタ組立体Bを嵌合係止して機械的かつ電気的に結合されることを特徴とするコネクタ構造体を提供する。このコネクタ構造体においては、主電極をシールドするシールド構造体を雄側コネクタ、雌側コネクタの双方に設け、かつシールド構造体とシールドケーブルの編組との電気的な接合は押付け密着によって行っていた従来構造に比べて、シールド構造体を雄側コネクタにのみ(コネクタ組立体Aにのみ)設けた構造とすることで、部品点数の削減を図れるので、コストを低減できると共に、シールドケーブルの編組とシールド構造体の接続をシールドケーブルの編組にカシメにより固定したアース電極用の端子とシールド構造体に一体に形成したアース電極用の端子との結合により行うので、電気的にかつ機械的にも強固に接続でき、信頼性の高いコネクタ構造を実現できる。
【0015】
本発明はまた、上記のようなコネクタ組立体A(形態1)と、
開口孔を有し、制御回路を内部に配したケーシングと、一端が制御回路に接続され、他端は開口孔より導出された主電極とを有し、主電極は前記インナーハウジングに配設された挿入孔に挿入されながら係止され、ケーシングと前記アウターハウジングのフランジ部が固定されていることを特徴とするケーシング組立体を提供する。このようなケーシング組立体においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れると共に、シールド構造体を深溝部に挿入すると同時に、爪部がアウターハウジング側深溝側面とインナーハウジング側深溝側面の少なくともいずれか一方に係止するので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてシールド構造体の挿入作業と係止作業を一つとできるので、組立性を向上でき、さらに、ケーシングの側面に配設された開口孔部にアウターハウジングのフランジ部が固定されるので、コネクタ組立体の取付け位置、及び方向はケーシングによってのみ決まることとなり、車両によって異なるコネクタ組立体の取付け位置、及び方向を開口孔部位置の異なるケーシングを選択することで、その他の部品は影響を受けることなく組み立てることができるケーシング組立体を実現できる。
【0016】
本発明はまた、上記のようなコネクタ組立体A(形態2)と、
開口孔を有し、制御回路を内部に配したケーシングと、一端が制御回路につながれ、他端は開口孔より導出された主電極と、主電極は前記インナーハウジングに配設された挿入孔に挿入されながら係止され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジングを固定する構造体としてのケーシングとアウターハウジングのフランジ部の端面によって狭持されながら、ケーシングとアウターハウジングのフランジ部が固定されていることを特徴とするケーシング組立体を提供する。このようなケーシング組立体においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れると共に、シールド構造体に一体に形成された爪部はフランジ部の端面に沿って屈曲することになり、ハウジングを固定する構造体とフランジ部の端面によって狭持されるので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてアウターハウジングを構造体(ケーシング)に固定する作業とシールド構造体を固定する作業を一つとできるので、組立性を向上でき、さらに、ケーシングの側面に配設された開口孔部にアウターハウジングのフランジ部が固定されるので、コネクタ組立体の取付け位置、及び方向はケーシングによってのみ決まることとなり、車両によって異なるコネクタ組立体の取付け位置、及び方向を開口部位置の異なるケーシングを選択することで、その他の部品は影響を受けることなく組み立てることができるケーシング組立体を実現できる。
【0017】
本発明はまた、上記のようなコネクタ組立体A(形態3)と、
開口孔を有し、制御回路を内部に配したケーシングと、一端が制御回路につながれ、他端は開口孔より導出された主電極と、主電極は前記インナーハウジングに配設された挿入孔に挿入されながら係止され、前記シールド構造体の爪部が、前記開口孔のテーパ状内周面に押し込まれて該孔内周面に係止されながら、ケーシングとアウターハウジングのフランジ部が固定されていることを特徴とするケーシング組立体を提供する。このようなケーシング組立体においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れると共に、シールド構造体に一体に形成された爪部は、アウターハウジングをケーシングに取り付ける際に、開口孔のテーパ状内周面に押し込まれて該孔内周面に係止されるので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてアウターハウジングを構造体(ケーシング)に固定する作業とシールド構造体を固定する作業を一つとできるので、組立性を向上でき、さらに、ケーシングの側面に配設された開口孔部にアウターハウジングのフランジ部が固定されるので、コネクタ組立体の取付け位置、及び方向はケーシングによってのみ決まることとなり、車両によって異なるコネクタ組立体の取付け位置、及び方向を開口部位置の異なるケーシングを選択することで、その他の部品は影響を受けることなく組み立てることができるケーシング組立体を実現できる。
【0018】
上記のようなケーシング組立体においては、シールド構造体の筒部はケーシングの開口孔より大なることが好ましい。シールド構造体の筒部がケーシングの開口孔より大なることにより、シールド構造体は深溝部とケーシングの側面とに囲撓されるので、万が一、爪部の破損によりシールド構造体の係止が外れてもシールド構造体がコネクタ組立体からはずれ、飛び出すことはないので、信頼性の高いケーシング組立体を実現できる。
【0019】
このようなケーシング組立体においては、ケーシングが導電性材料で作られており、シールド構造体の筒部もしくは爪部の少なくともいずれか一方はケーシングに当接していることが好ましい。ケーシングが導電性材料で作られており、シールド構造体の筒部もしくは爪部の少なくともいずれか一方はケーシングに当接していることにより、ケーシングはシールド構造体と電気的に接続するので、ケーシングに対して別途のアース手段を講じなくてよいこととなり、組立性の向上に寄与する。
【0020】
本発明はまた、密閉容器状体と、密閉容器状体の内部に配設した電動要素と圧縮要素と、密閉容器状体の外部に電動要素を駆動制御する制御回路を内部に配した、上述のようなケーシング組立体と、からなる電動圧縮機を提供する。これにより、上述のようなシールド構造体、コネクタ組立体、コネクタ構造体、ケーシング組立体における各効果を組み合わせ発現できる電動圧縮機を実現できる。
【0021】
このような電動圧縮機においては、ケーシング組立体の同一側面に、電動要素の駆動電源である高電圧コネクタ組立体と制御回路の駆動電源である低電圧コネクタ組立体とを配設した構成とすることが好ましい。このような構成においては、例えばエンジンルーム内に取り付けられた電動圧縮機の配線に要する空間をコネクタ組立体の取り付け方向の一方向のみに限定できるので、必要取り付け空間を狭小化でき、取り付け性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明に係るシールド構造体においては、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることにより、部品点数の削減によるコスト低減が図れる。
【0023】
また、本発明に係るコネクタ組立体においては、上記シールド構造体による効果に加え、組立においてシールド構造体の挿入作業と係止作業を一つの作業とでき、組立性を向上できる。
【0024】
また、本発明に係るコネクタ構造体においては、シールド構造体を雄側コネクタにのみ(コネクタ組立体Aにのみ)設ける構造とでき、部品点数の削減を図り、コストを低減できると共に、コネクタ同士を電気的にかつ機械的にも強固に接続でき、信頼性の高いコネクタ構造を実現できる。
【0025】
また、本発明に係るケーシング組立体においては、組立においてアウターハウジングを構造体(ケーシング)に固定する作業とシールド構造体を固定する作業を一つとできるので、組立性を向上でき、さらに、ケーシングの側面に配設された開口孔部にアウターハウジングのフランジ部が固定されるので、コネクタ組立体の取付け位置、及び方向はケーシングによってのみ決まることとなり、車両によって異なるコネクタ組立体の取付け位置、及び方向を開口部位置の異なるケーシングを選択することで、その他の部品は影響を受けることなく組み立てることができるケーシング組立体を実現できる。
【0026】
さらに、本発明に係る電動圧縮機においては、上記シールド構造体、コネクタ組立体、コネクタ構造体、ケーシング組立体における各効果を組み合わせ発現するでき、電動圧縮機の組立性、生産性の向上、コストダウン等に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係るコネクタ構造体を示しており、このコネクタ構造体には、本発明の一実施態様に係るシールド構造体、本発明の一実施態様に係るコネクタ組立体Aが含まれている。図1において、1はコネクタ構造体全体を示しており、該コネクタ構造体1は、本発明の一実施態様に係るコネクタ組立体Aとしての雄コネクタ2と、該雄コネクタ2と嵌合される本発明におけるコネクタ組立体Bの雌コネクタ3を備えている。雄コネクタ2および雌コネクタ3は例えば樹脂製のものからなり、樹脂としては例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)が使用される。雄コネクタ2は、アウターハウジング4と、インナーハウジング5と、アウターハウジング4に一体に形成されたフランジ部6とを有しており、アウターハウジング4とインナーハウジング5との間には深溝部7が形成されている。また、インナーハウジング5には、アース電極用端子の挿入孔8と主電極の挿入孔9が設けられており、挿入孔9内に主電極10が設けられる。主電極10は、図示のような端子構造に限らず、接合要素を持つ構造であればよい。
【0028】
雄コネクタ2の深溝部7に、導電性材料からなり、筒部11と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子12と、筒部11に一体に形成され筒部11から径方向に外側、内側の少なくとも一方側に向けて(図示例では径方向外側に向けて)突出され、シールド構造体保持部材(雄コネクタ2のアウターハウジング4または/およびインナーハウジング5、あるいはアウターハウジング4の端面と後述のケーシング、あるいは後述のケーシングに形成された開口孔内周面など)に係合可能な複数の爪部13とからなるシールド構造体14が挿入される。アース用電極端子12は上記挿入孔8に挿入され、爪部13は、アウターハウジング側深溝部側面とインナーハウジング側深溝部側面の少なくともいずれか一方で(本実施態様では、アウターハウジング側深溝部側面で)係止される。このシールド構造体14には、とくにその筒部11には、例えば、黄銅にNi・錫めっきを施した導電性材料が用いられる。
【0029】
シールド構造体14は、例えば図2に示すように、板状素材15に対し、筒部11とアース電極用端子12と爪部13に相当する部分をプレスにより一体に打ち抜いた後に、アース電極用端子12を所定の接続可能形態に形成し、アース電極用端子12を所定方向に折り曲げた後、筒部相当部分を丸めて筒部11を形成することにより、筒部11とアース電極用端子12と爪部13とは一体に構成されたシールド構造体14に成型することができる。あるいは、例えば図3に示すように、板状素材15aに対し、筒部11と爪部13に相当する部分をプレスにより一体に打ち抜いた後に、アース電極用端子12aをカシメもしくは溶接(図示例では、溶接)により一体に形成し、筒部11とアース電極用端子12aと爪部13とが一体に構成されたシールド構造体14aに成型することもできる。
【0030】
このようなシールド構造体14、14aにおいては、筒部11とアース電極用端子12、12a、爪部13の一体化により、シールド構造体として必要な機能(シールド、接続、係止)を一体に備えることができ、部品点数の削減によるコスト低減を図ることができる。また、このようなシールド構造体14、14aを備えたコネクタ組立体Aとしての雄コネクタ2においては、加えて、シールド構造体14、14aを深溝部7に挿入すると同時に、爪部13がアウターハウジング側深溝側面とインナーハウジング側深溝側面の少なくともいずれか一方に係止するので、その他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてシールド構造体14、14aの挿入作業と係止作業を一つの作業とできるので、組立性を向上できる。
【0031】
シールド構造体の係止あるいは保持構造は、上記のように深溝部7内で係止させる構造の他にも、例えば図4に示すように、シールド構造体14bの爪部13aが、アウターハウジング4を固定する構造体21(例えば、後述のケーシング、とくに金属ケーシング)とアウターハウジング4のフランジ部6の端面によって狭持される構成とすることもできる。この場合にも、他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてシールド構造体14bを固定する作業とアウターハウジング4を構造体21に固定する作業を一つとでき、組立性を向上できる。
【0032】
また、シールド構造体の係止あるいは保持構造は、例えば図5に示すように、シールド構造体14cの爪部13bが、アウターハウジング4を固定する構造体21(例えば、後述のケーシング、とくに金属ケーシング)に形成された孔22のテーパ状内周面23に押し込まれて該孔内周面23に係止される構成とすることもできる。この場合にも、他の係止手段を講じる必要がなく、組立においてシールド構造体14c固定する作業とアウターハウジング4を構造体21に固定する作業を一つとでき、組立性を向上できる。この場合、爪部13bは孔22のテーパ状内周面23のテーパ面に沿って同芯状に押し込まれ、内側に変形されて係合されるので、爪部13bは強固に保持され、シールド構造体14cの構造体21側へのアースもより確実なものとされる。この場合、〔爪部13bの外接円径φb>構造体21の孔22の径φa>シールド構造体14cの筒部11の外径φc〕を満足することが好ましい。
【0033】
再び図1を参照するに、コネクタ構造体1は、上記のようなシールド構造を有するコネクタ組立体Aとしての雄コネクタ2と、該雄コネクタ2と嵌合係止されて機械的かつ電気的に結合されるコネクタ組立体Bの雌コネクタ3を備えている。雌コネクタ3側には、シールドケーブル31(2芯)が導入され、シールドケーブル31の端部には、主電極への接続用のメス端子32と、シールドケーブル31の端部に設けられシールド編組にカシメにより固定されたアース電極への接続用のオス端子33が設けられている。雌コネクタ3のメインハウジング34にはメス端子32が挿入される挿入孔35とオス端子33が挿入される挿入孔36が設けられている。このメインハウジング34に対し、ハウジングの開口端部を封止すると共にシードケーブル31を導出するエンドキャップ37と、メインハウジング34とエンドキャップ37に狭持され、シールドケーブル31を導出しながら、エンドキャップ37の内周面及びシールドケーブル31の外周面を水密的に封止するゴム等からなるケーブルシール38と、メインハウジング34に内包され、コネクタ組立体Aである雄側コネクタ2のインナーハウジング5とメインハウジング34とを水密的に封止するゴム等からなるハウジングシール39とが設けられている。
【0034】
シールドケーブル31の端部におけるメス端子32およびオス端子33(アース端子)の接続構造は、例えば図6に示すように、シールドケーブル31の端子引出し端部をたとえばフェノール樹脂40で固めておく構造とすることができる。
【0035】
このようなコネクタ構造体1においては、従来構造に比べて、シールド構造体14を雄側コネクタ2にのみ(コネクタ組立体Aにのみ)設けた構造とすることで、部品点数の削減を図れるので、コストを低減できる。また、シールドケーブル31の編組とシールド構造体14の接続をシールドケーブル31の編組にカシメにより固定したアース電極用の端子33とシールド構造体14に一体に形成したアース電極用の端子12との結合により行うことになるので、電気的にかつ機械的にも強固に接続でき、信頼性の高いコネクタ構造を実現できる。
【0036】
さて、上記のようなコネクタ構造体1におけるコネクタ組立体Aは、ケーシング組立体に組み込むことができる。この場合、ケーシング組立体におけるケーシングを、コネクタ組立体Aのアウターハウジングを固定する構造体とみなせば、前述の形態1、形態2、形態3のいずれのコネクタ組立体Aの形態も採用し得る。
【0037】
例えば、図7に、本発明を適用した電動圧縮機41を示すように、本発明に係るコネクタ組立体Aは電動圧縮機41のケーシング42に取り付けて、電動圧縮機41用のケーシング組立体43として構成できる。図示例では、ケーシング42は導電性材料で作られており、シールド構造体14の筒部11もしくは爪部13の少なくともいずれか一方はケーシング42に当接されている。電動圧縮機41は、密閉容器状体44と、密閉容器状体44の内部に配設した電動要素と圧縮要素(図示略)と、密閉容器状体44の外部に電動要素を駆動制御する制御回路(図示略)を内部に配したケーシング組立体43とからなる。このケーシング組立体43の同一側面に、電動要素の駆動電源である、コネクタ組立体Aからなる高電圧側コネクタ組立体45と、制御回路の駆動電源である、コネクタ組立体Aからなる低電圧側コネクタ組立体46とが配設されている。目標とするシールド構造を備えた各コネクタ組立体45、46が取り付けられるとともに、これらをケーシング組立体43の同一側面に配設することにより、エンジンルーム内等に取り付けられた電動圧縮機41の配線に要する空間をコネクタ組立体45、46の取り付け方向の一方向のみに限定できるので、必要取り付け空間を狭小化でき、取り付け性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るコネクタ関連構造は、通常一般的な機器用コネクタに適用可能であり、特に車両空調装置用等の電動圧縮機用に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施態様に係るコネクタ構造体の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施態様に係るシールド構造体の製造方法の一例を示す工程フロー図である。
【図3】本発明の一実施態様に係るシールド構造体の製造方法の別の例を示す工程フロー図である。
【図4】本発明の一実施態様に係るコネクタ組立体Aの分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施態様に係るシールド構造体の固定方法の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明におけるシールドケーブルの端部の端子接続構造の一例を示す概略平面図である。
【図7】本発明の一実施態様に係るケーシング組立体およびそれを備えた電動圧縮機の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 コネクタ構造体
2 コネクタ組立体Aとしての雄コネクタ
3 コネクタ組立体Bの雌コネクタ
4 アウターハウジング
5 インナーハウジング
6 フランジ部
7 深溝部
8 アース電極用端子の挿入孔
9 主電極の挿入孔
10 主電極
11 筒部
12、12a アース電極用端子
13、13a、13b 爪部
14、14a、14b、14c シールド構造体
15、15a 板状素材
21 構造体
22 孔
23 孔内周面(テーパ状内周面)
31 シールドケーブル
32 主電極への接続用のメス端子
33 アース電極への接続用のオス端子
34 メインハウジング
35、36 挿入孔
37 エンドキャップ
38 ケーブルシール
39 ハウジングシール
40 フェノール樹脂
41 電動圧縮機
42 ケーシング
43 ケーシング組立体
44 密閉容器状体
45 高電圧側コネクタ組立体
46 低電圧側コネクタ組立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向に外側、内側の少なくとも一方側に向けて突出された、シールド構造体保持部材に係合可能な複数の爪部と、からなることを特徴とするシールド構造体。
【請求項2】
筒部とアース電極用端子と爪部に相当する部分をプレスにより一体に打ち抜いた後に成型されていることを特徴とする、請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項3】
筒部と爪部に相当する部分をプレスにより一体に打ち抜いた後に成型され、アース電極用端子がカシメもしくは溶接により一体に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシールド構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシールド構造体を備えたことを特徴とするコネクタ組立体A。
【請求項5】
アウターハウジングと、アース電極用端子の挿入孔と主電極を有するインナーハウジングと、アウターハウジングとインナーハウジングとの間に形成された深溝部と、アウターハウジングに一体に形成されたフランジ部とからなるコネクタと、
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向に外側、内側の少なくとも一方側に向けて突出された複数の爪部とからなり、前記深溝部に挿入されるシールド構造体を有し、
前記アース用電極端子が前記挿入孔に挿入され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジング側深溝部側面とインナーハウジング側深溝部側面の少なくともいずれか一方で係止していることを特徴とするシールド構造体を有するコネクタ組立体A。
【請求項6】
アウターハウジングと、アース電極用端子の挿入孔と主電極を有するインナーハウジングと、アウターハウジングとインナーハウジングとの間に形成された深溝部と、アウターハウジングに一体に形成されたフランジ部とからなるコネクタと、
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向外側に向けて突出された複数の爪部とからなり、前記深溝部に挿入されるシールド構造体を有し、
前記アース用電極端子が前記挿入孔に挿入され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジングを固定する構造体とアウターハウジングのフランジ部の端面によって狭持されることを特徴とするシールド構造体を有するコネクタ組立体A。
【請求項7】
アウターハウジングと、アース電極用端子の挿入孔と主電極を有するインナーハウジングと、アウターハウジングとインナーハウジングとの間に形成された深溝部と、アウターハウジングに一体に形成されたフランジ部とからなるコネクタと、
導電性材料からなり、筒部と、筒部に電気的に一体に形成されたアース電極用端子と、筒部に一体に形成され筒部から径方向外側に向けて突出された複数の爪部とからなり、前記深溝部に挿入されるシールド構造体を有し、
前記アース用電極端子が前記挿入孔に挿入され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジングを固定する構造体に形成された孔のテーパ状内周面に押し込まれて該孔内周面に係止されることを特徴とするシールド構造体を有するコネクタ組立体A。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載のコネクタ組立体Aと、
導入されてくるシールドケーブルと、シールドケーブルの端部に設けられた主電極への接続用の端子と、シールドケーブルの端部に設けられシールド編組にカシメにより固定されたアース電極への接続用の端子と、各端子の挿入孔を配設したメインハウジングと、ハウジングの開口端部を封止すると共にシードケーブルを導出するエンドキャップと、メインハウジングとエンドキャップに狭持され、シールドケーブルを導出しながら、エンドキャップの内周面及びシールドケーブルの外周面を水密的に封止するケーブルシールと、メインハウジングに内包され、コネクタ組立体Aの雄側コネクタのインナーハウジングとメインハウジングとを水密的に封止するハウジングシールとを有するコネクタ組立体Bとからなり、
シールド構造を有するコネクタ組立体Aにコネクタ組立体Bを嵌合係止して機械的かつ電気的に結合されることを特徴とするコネクタ構造体。
【請求項9】
請求項5に記載のコネクタ組立体Aと、
開口孔を有し、制御回路を内部に配したケーシングと、一端が制御回路に接続され、他端は開口孔より導出された主電極とを有し、主電極は前記インナーハウジングに配設された挿入孔に挿入されながら係止され、ケーシングと前記アウターハウジングのフランジ部が固定されていることを特徴とするケーシング組立体。
【請求項10】
請求項6に記載のコネクタ組立体Aと、
開口孔を有し、制御回路を内部に配したケーシングと、一端が制御回路につながれ、他端は開口孔より導出された主電極と、主電極は前記インナーハウジングに配設された挿入孔に挿入されながら係止され、前記シールド構造体の爪部が、アウターハウジングを固定する構造体としてのケーシングとアウターハウジングのフランジ部の端面によって狭持されながら、ケーシングとアウターハウジングのフランジ部が固定されていることを特徴とするケーシング組立体。
【請求項11】
請求項7に記載のコネクタ組立体Aと、
開口孔を有し、制御回路を内部に配したケーシングと、一端が制御回路につながれ、他端は開口孔より導出された主電極と、主電極は前記インナーハウジングに配設された挿入孔に挿入されながら係止され、前記シールド構造体の爪部が、前記開口孔のテーパ状内周面に押し込まれて該孔内周面に係止されながら、ケーシングとアウターハウジングのフランジ部が固定されていることを特徴とするケーシング組立体。
【請求項12】
シールド構造体の筒部はケーシングの開口孔より大なることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載のケーシング組立体。
【請求項13】
ケーシングが導電性材料で作られており、シールド構造体の筒部もしくは爪部の少なくともいずれか一方はケーシングに当接していることを特徴とする、請求項12に記載のケーシング組立体。
【請求項14】
密閉容器状体と、密閉容器状体の内部に配設した電動要素と圧縮要素と、密閉容器状体の外部に電動要素を駆動制御する制御回路を内部に配した請求項9〜12のいずれかに記載のケーシング組立体と、からなる電動圧縮機。
【請求項15】
ケーシング組立体の同一側面に、電動要素の駆動電源である高電圧コネクタ組立体と制御回路の駆動電源である低電圧コネクタ組立体とを配設した請求項14に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−16364(P2008−16364A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187627(P2006−187627)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】