説明

シール条件算出方法、シール条件算出装置及び製袋機

【課題】適切な内面到達温度となる加熱体温度、シール時間といったシール条件を、迅速にかつ容易に算出でき、生産効率、生産コスト、品質を向上するシール条件算出方法、シール条件算出装置及び製袋機を提供する。
【解決手段】3つのシール条件(内面到達温度、熱板設定温度、シール時間)をそれぞれ座標軸とした座標空間に、3点A,B,Cの3つのシール条件の実測値に基づいて定義されるシール条件平面、テーブルを作成し、入力された内面到達温度に基づいて、シール条件平面、テーブルから熱板設定温度、シール時間を選択した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールのシール条件を算出するシール条件算出方法、シール条件算出装置及び製袋機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からフィルム(シール材)を重ね合わせて、間欠送りで搬送して熱圧着(ヒートシール)し、所定の寸法に断裁することにより、袋状の製品を生産する製袋機があった。この熱圧着による製袋方法は、所定のシール強度を得るため、熱板温度、シール時間、搬送時間、冷却温度、シール圧力、イキ量等のシール条件と呼ばれる機械の設定を適切に決定する必要があった。特に、多品種小ロット化している近年では、新しい材料のシール条件を決定する頻度が多く、それにともなう時間ロスや材料ロス、品質不良が問題となっている。
【0003】
従来の製袋方法は、所定のシール強度を得るためのシール条件を、作業者の経験や勘に頼って決定することが多かった。この方法は、シール条件の修正とシール強度の測定とを何度も繰り返し行うため、適正なシール条件を一回では決定できず、時間ロス、材料ロスにつながっていた。
また、シール強度測定結果からシール条件を決定する方法は、少しのシール温度の低下によって、シール強度不足となる可能性があった。これは、十分なシール強度を得るためには、内面到達温度を所定の温度(例えば、シール材料の融点)以上にする必要があるが、その温度領域でのシール強度の変化は小さく、シール強度不足となる温度に対し、十分に高温であるか、シール強度からは判断できないためである(図7(a)参照)。
【0004】
一方、互いにヒートシールされるフィルム間の温度である内面到達温度を指標として、シール強度が所定以上かを推定する方法があった。この方法は、内面到達温度を測定するために、上下のフィルム間に熱電対等の温度測定子を挟み、フィルムとともにシールする。この方法は、内面到達温度を指標として、シール条件を決定できるため、サンプル作製及びこのシール強度測定の作業を省略することができる。
しかし、シール時間や熱板温度等のシール条件の変更によって、内面到達温度がどのように変化するかわからないため、シール条件の変更は、従来通り、経験と勘に頼るしかなかった。また、シール条件変更の都度、内面到達温度を測定するという作業負荷があった。
【0005】
前述した問題を解決するために、特許文献1は、プラスチックのヒートシール条件の決定方法を開示している。この方式は、ヒートシール加熱試験装置を用いて、熱板温度毎の、各シール時間における内面到達温度変化グラフを作成し、シール条件を決定する手法である(図7(b)参照)。
しかし、特許文献1の方式によるヒートシール加熱試験装置が対象にしているシールプロセスは、加熱を1回しか行なわないものであり、一方、本件で対象としているシールプロセスは、加熱を数回行うものである。このため、特許文献1の方法は、本件のシール条件の設定に適用できない。
【特許文献1】特許第3465741号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、適切な内面到達温度となる加熱体温度、シール時間といったシール条件を、迅速にかつ容易に算出でき、生産効率、生産コスト、品質を向上するシール条件算出方法、シール条件算出装置及び製袋機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、シール材をヒートシールする場合の3つのシール条件である加熱体温度、内面到達温度、シール時間を算出するシール条件算出方法において、前記3つのシール条件をそれぞれ座標軸とした座標空間に、少なくとも3点(A,B,C)の前記3つのシール条件の実測値に基づいて定義又は近似されるシール条件平面を作成するシール条件演算工程と、前記3つのシール条件を、前記シール条件平面上から選択するシール条件選択工程と、を有するシール条件算出方法である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシール条件算出方法において、前記シール条件平面がマトリクス配列されたテーブルを作成するシール条件マトリクス配列工程を有し、前記シール条件選択工程は、マトリクス配列されたテーブルから、前記3つのシール条件を選択すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のシール条件算出方法において、前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、表示部(32)に表示するシール条件表示工程を有すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のシール条件算出方法において、前記シール条件選択工程は、前記シール材の溶着温度に基づいて内面到達温度を選定し、前記加熱体温度、前記シール時間を選択すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のシール条件算出方法において、前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、異なるシール材毎に記憶するシール条件記憶工程を有すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
請求項6の発明は、請求項5に記載のシール条件算出方法において、前記異なるシール材に変更された場合に、前記異なるシール材に対応する前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、読み出すシール条件読み出し工程を有すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載のシール条件算出方法において、前記シール条件記憶工程及び前記シール条件読み出し工程は、前記異なるシール材を層構成に基づいて分類すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
請求項8の発明は、請求項5又は請求項6に記載のシール条件算出方法において、前記シール条件記憶工程及び前記シール条件読み出し工程は、前記異なるシール材を総厚みに基づいて分類すること、を特徴とするシール条件算出方法である。
【0009】
請求項9の発明は、シール材をヒートシールする場合の3つのシール条件である加熱体温度、内面到達温度、シール時間を算出するシール条件算出装置において、前記3つのシール条件をそれぞれ座標軸とした座標空間に、前記少なくとも3点(A,B,C)の前記3つのシール条件の実測値に基づいて定義又は近似されるシール条件平面を作成するシール条件演算部(21)を、備えるシール条件算出装置である。
請求項10の発明は、請求項9に記載のシール条件算出装置において、前記シール条件平面がマトリクス配列されたテーブルを作成するシール条件マトリクス配列部(22)を備えること、を特徴とするシール条件算出装置である。
請求項11の発明は、請求項9又は請求項10に記載のシール条件算出装置において、前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを表示する表示部(32)を備えること、を特徴とするシール条件算出装置である。
請求項12の発明は、請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載のシール条件算出装置において、内面到達温度が入力される入力部(11)と、前記入力された内面到達温度に基づいて、前記シール条件平面及び/又は前記テーブルから、前記加熱体温度、前記シール時間を選択するシール条件選択部(23)とを備えること、を特徴とするシール条件算出装置である。
請求項13の発明は、請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載のシール条件算出装置において、前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、異なるシール材毎に記憶するシール条件記憶部(31)を備えること、を特徴とするシール条件算出装置である。
請求項14の発明は、請求項13に記載のシール条件算出装置において、前記異なるシール材に変更された場合に、前記異なるシール材に対応した前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを読み出すシール条件読み出し部を備えること、を特徴とするシール条件算出装置である。
請求項15の発明は、請求項13又は請求項14に記載のシール条件算出装置において、前記シール条件記憶部(31)及び前記シール条件読み出し部(24)は、前記異なるシール材を層構成に基づいて分類すること、を特徴とするシール条件算出装置である。
請求項16の発明は、請求項13又は請求項14に記載のシール条件算出装置において、前記シール条件記憶部(31)及び前記シール条件読み出し部(24)は、前記異なるシール材を総厚みに基づいて分類すること、を特徴とするシール条件算出装置である。
【0010】
請求項17の発明は、請求項9から請求項16までのいずれか1項に記載のシール条件算出装置(10)と、前記シール条件算出装置(10)が算出したシール条件に基づいて、シール材を製袋加工する製袋加工部(50)と、を備える製袋機である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、少なくとも3点のシール条件(加熱体温度、内面到達温度、シール時間)の実測値に基づいて定義又は近似されるシール条件平面を作成し、任意のシール条件をシール条件平面上から選択する。
これにより、シール条件平面がなく試行錯誤による条件を決める場合と比べ、少なくとも3点の実測値を採取し、シール条件平面を作成することによりシール条件の算出を容易かつ迅速に行うことができる。このため、生産効率、生産コストを向上することができる。
【0012】
(2)本発明は、シール条件平面をマトリクス配列して、3つのシール条件の関係、値等を明確に示すことができるので、シール条件の選択を容易に行うことができる。
【0013】
(3)本発明は、シール条件平面及び/又はテーブルを、表示部に表示するので、シール条件平面、マトリクス配列等を視認することができる。
【0014】
(4)本発明は、シール材の溶着温度に基づいて、加熱体温度、シール時間を選択しているため、確実にシール材を溶着することができるので、品質を向上することができる。
【0015】
(5)本発明は、シール条件平面及び/又はテーブルを、異なるシール材毎に記憶するので、複数のシール条件のデータベースを作成することができる。
【0016】
(6)本発明は、異なるシール材に変更された場合に、この異なるシール材に対応したシシール条件平面及び/又はテーブルを読み出すので、シール材を変更するときのシール条件の設定を、簡便に行うことができる。
【0017】
(7)本発明は、異なるシール材を層構成に基づいて分類するので、より精密なシール条件平面及び/又はテーブルを記憶、読み出すことができる。
【0018】
(8)本発明は、異なるシール材を総厚みに基づいて分類するので、総厚みによって熱伝導が大きく影響する場合に、より簡便にシール条件を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、適切な内面到達温度となる加熱体温度、シール時間といったシール条件を、迅速にかつ容易に算出でき、生産効率、生産コスト、品質を向上するシール条件算出方法、シール条件算出装置及び製袋機を提供するという目的を、3つのシール条件(内面到達温度、熱板設定温度、シール時間)をそれぞれ座標軸とした座標空間に、3点A,B,Cの3つのシール条件の実測値に基づいて定義されるシール条件平面を作成し、入力された内面到達温度に基づいて、シール条件平面から熱板設定温度、シール時間を選択することによって実現した。
【実施例】
【0020】
以下、図面等を参照して、本発明の製袋機の実施例をあげて、さらに詳しく説明する。
最初に、本実施例の製袋機の構成について説明する。
図1は、製袋機1の制御ブロックを示す図である。
図1に示すように、製袋機1は、シール条件算出装置10と、製袋加工部50とを有している。
シール条件算出装置10は、例えば、内面到達温度(シール溶着面温度)、熱板設定温度(加熱体温度)、シール時間のシール条件を算出するパーソナルコンピュータ等である。シール条件算出装置10は、入力部11と、制御部20と、シール条件記憶部31と、表示部32と、送受信部33とを備えている。
入力部11は、製袋機1を動作させるためのキーボード、タッチパネル等の入力装置である。入力部11には、作業者により内面到達温度等のシール条件が入力される。
【0021】
制御部20は、製袋機1を統括的に制御するための、例えば、CPU(中央処理装置)等の演算装置であり、入力部11からの入力に応じて製袋機1を動作させる。制御部20は、シール条件演算部21と、マトリクス配列部22(シール条件マトリクス配列部)と、シール条件選択部23と、シール条件読み出し部24とを備えている。
シール条件演算部21は、3つのシール条件(内面到達温度、熱板設定温度、シール時間)をそれぞれ座標軸とした座標空間に、3点の3つのシール条件実測値に基づいて定義されるシール条件平面を作成するための制御部である(詳細は、後述する)。
【0022】
マトリクス配列部22は、シール条件演算部21が作成したシール条件平面をマトリクス配列してテーブルを作成するための制御部である(詳細は、後述する)。
シール条件選択部23は、入力された内面到達温度に基づいて、シール条件平面、テーブルから、熱板設定温度、シール時間を選択するための制御部である。
シール条件読み出し部24は、シール材が異なるシール材に変更された場合に、シール条件記憶部31から、この異なるシール材に対応したシール条件平面、テーブルを読み出すための制御部である。
【0023】
シール条件記憶部31は、シール条件平面、テーブルを、異なるシール材毎に記憶するためのハードディスク等の記憶装置である。シール条件記憶部31は、シール材が変更される度に、シール条件平面、テーブルを記憶してデータベースを構成する。なお、異なるシール材毎のシール条件平面、テーブルが既にわかっている場合には、シール条件記憶部31は、予めこれらのシール条件平面、テーブルを記憶していてもよい。
【0024】
表示部32は、シール条件平面、テーブルを表示するLCD(液晶表示装置)等の表示装置である。
送受信部33は、シール条件の情報を、製袋加工部50との間で送受信するための電気回路、入出力端子等である。
【0025】
製袋加工部50は、送受信部33との間で、電気ケーブル等を介して、シール条件の情報を通信可能であり、実際に製袋加工(ヒートシール)を行うための装置である。製袋加工部50は、シール条件算出装置10から、シール条件平面、テーブルの情報を受信し、この情報に基づいてシール条件の設定を行う。製袋加工部50は、熱板51(加熱体)と、シール条件設定部52と、条件入力部53等を備えている。
シール条件設定部52は、シール条件算出装置10の送受信部33から受信したシール条件の情報、又は条件入力部53に入力されたシール条件の情報に基づいて熱板設定温度(加熱体温度)、シール時間等の製袋加工の設定をする電気回路等である。
条件入力部53は、作業者が製袋加工部50から直接シール条件を入力するための入力装置である(入力部11と兼用してもよい)。条件入力部53は、例えば、前述した3点のシール条件を実測する場合、シール条件の微調整をする場合等に使用され、このときの入力情報は、適宜シール条件算出装置10の送受信部33に送信され、シール条件記憶部31に記憶される。
【0026】
次に、本実施例によるシール条件算出方法の概略について図2〜図3を用いて説明する。
図2は、シール条件の相関を示すグラフである。図3(a)は、シール条件平面を示すグラフであり、図3(b)は、シール条件の実測値を示す表である。
なお、以下の説明で「内面到達温度」とは、対象となる製袋機のシールプロセスに即した最終到達温度をいう。つまり、製袋機のシールプロセスが例えば、「加熱→送り→加熱→送り→冷却」であるならば、2回目の加熱時のシール溶着面到達温度である。
シール条件は、製袋機の設定項目であり、その中でも内面到達温度に対し影響の大きい設定項目は、熱板設定温度と、シール時間である。実験結果から、製袋機、材料等の条件が同一であれば、内面到達温度は熱板設定温度とシール時間(実生産で使用するシール時間領域に限定する)に対し、図2(a),(b)のように、各々ほぼ比例関係にあることがわかっている。よって、図3(a)に示すように、内面到達温度、熱板設定温度、シール時間の関係は、シール条件平面で示すことができる。
一般的な数式を用いてこの平面をあらわすと、以下のようになる。
ax+by+cz+d=0・・・・・式(1)
ここで、
x:熱板設定温度(℃)
y:シール時間(msec)
z:内面到達温度(℃)
a,b,c,d:係数
である。
従って、係数a,b,c,dを求めるためには、A(xA,yA,zA)、B(xB、yB、zB)、C(xC,yC,zC)の情報が必要であり、熱板設定温度、シール時間をそれぞれ変更した3点の測定点で内面到達温度を測定すれば、係数を算出し、シール条件平面を定義することができる。(ただしこの3点は、任意の直線上にあってはならない)。
そして、この3点の測定点以外の熱板設定温度、シール時間及び内面到達温度を、測定しなくても算出することができる。
【0027】
次に、具体的なシール条件の算出手順について図3〜図6を用いて説明する。
図4は、シール条件平面をマトリクス配列したテーブルで示す表であり、図5は、本実施例による内面到達温度と時間との関係を示すグラフであり、図6は、製袋機1の動作を示す流れ図である。
図5に示すように、製袋機1による製袋加工は、「加熱→送り→加熱→送り→加熱→送り→冷却→送り→冷却」(3回加熱2回冷却)の工程からなる。
図6に示すように、ステップS1において、製袋機1は、作業者からの入力部11(図1参照)の操作に応じて、動作を開始する。
【0028】
ステップS2において、作業者により採取、測定された3点のシール条件の情報(データ)が、入力部11から入力される。本実施例では、熱板設定温度、シール時間の条件を変更して、内面到達温度の測定を行い、点A,B,Cの3点のシール条件のデータを採取し、この情報を入力した(図3(b)に、そのデータを表にして示す。)。これにより、3つのシール条件の関係がシール条件平面で定義される(図3(a)に、点A,B,Cを示す。)。
【0029】
ステップS3において、シール条件演算部21は、式(1)から、係数の値を算出し(a=1030,b=126,c=−2000,d=18700)、下記のシール条件平面の式(2)を求める。
50x+7y−100z−1000=0・・・・・(2)
これにより、図3(a)に示すように、3つのシール条件をそれぞれ座標軸とした座標空間にシール条件平面が作成された(シール条件演算工程)。
また、作業者は、3点のシール条件の情報と同時に、送り時間と希望の内面到達温度とを入力する。この希望の内面到達温度は、シール溶着面の融点(溶着温度)に基づいて設定され、通常、確実にシール溶着するために、シール溶着面の融点から例えば、10℃位高い温度に設定される。なお、直接、希望の内面到達温度を入力するのではなく、シール溶着面の融点を入力することにより、制御部20がシール溶着面の融点に基づいて、内面到達温度を算出してもよい。
【0030】
ステップS4において、図4に示すように、マトリクス配列部22は、シール条件演算部21が作成したシール条件シール条件平面を、式(2)に基づいてマトリクス配列する(シール条件マトリクス配列工程)。このマトリクス配列は、熱板設定温度(縦)とシール時間(横)により内面到達温度をテーブルで表すように作成される。(なお、図4には、点A,B,Cのデータを破線枠で示す。)。このとき、制御部20は、作成したシール条件平面、テーブルを、シール条件記憶部31に記憶させる(シール条件記憶工程)。なお、マトリクス配列は、図4の形式に限られず、例えば、横欄を内面到達温度、縦欄を熱板設定温度とし、シール時間を縦横に配列するものでもよい。
【0031】
次に、制御部20は、シール条件平面、テーブルを、グラフ及び表で表示部32に表示する(シール条件表示工程)。これにより、作業者は、所望の内面到達温度を得るためのシール条件を一目瞭然で確認することができる。
【0032】
次に、ステップS5において、シール条件選択部23は、シール条件を設定する。シール条件選択部23は、ステップS2において入力された希望の内面到達温度に基づいて、シール条件平面、テーブルから、熱板設定温度(加熱体温度)とシール時間とを選択する(シール条件選択工程)。例えば、入力された希望の内面到達温度が127℃の場合、これに合致する熱板設定温度とシール時間とは、図4に示す2点鎖線付近に分布している。シール条件選択部23は、熱板設定温度とシール時間とのバランスから条件を選択する。シール時間は、短い方が製袋加工の効率がよいが、熱板設定温度を高くする必要があるので、シール材の熱板と接する面に、シワができてしまう等の可能性があるためである。図4に、シール条件選択部23が、内面到達温度が温度不足、OK条件(適温)、温度過剰の3種類に分類した状態を示す。本実施例では、シール条件演算部21は、このバランスから判断して、入力された内面到達温度127℃に対応し、その中でもシール時間の短い(表の左寄り)、熱板設定温度210℃、シール時間450msecを選択した例を示す。なお、ここでは、シール条件選択部23によるシール条件の選択は、図4のマトリクス配列を用いる例を説明したが、これに限定されない。シール条件平面、シール条件平面の式(2)のどれを用いたとしても、同様な選択条件を設定することができる。
【0033】
また、シール条件の選択は、作業者が自ら行ってもよい。この場合、作業者は、表示部32にシール条件平面のグラフ、テーブルが表示されているので、容易にシール条件を選択できる。さらに、シール条件平面の式(2)から計算によって求めてもよく、必要に応じて使い分けが可能である。通常は、前述したようにシール溶着面の融点に基づいて内面到達温度が予めわかっているので、内面到達温度と熱板設定温度の2条件から、最適なシール時間が簡単に得られる。
【0034】
ステップS6において、送受信部33は、決定したシール条件の情報を、製袋加工部50に送信し、次に、シール条件設定部52は、受信したシール条件の情報に基づいて、熱板設定温度、シール時間等の製袋加工の設定をする。
そして、ステップS7において、製袋機1は、シール材の製袋加工(ヒートシール)を開始する。
【0035】
なお、以上の工程(ステップ)は、シール材が変更される度に行なわれ、シール条件記憶部31には、異なるシール材毎にシール条件平面、テーブルが記憶され(シール条件記憶工程)、データベースが構成される。そして、変更されたシール材料がデータベース内に存在する場合、シール条件読み出し部24は、この材料に対応したシール条件平面、テーブルを読み出す(シール条件読み出し工程)。これにより、製袋機1は、さらに迅速かつ容易にシール条件の算出をすることができ、また、作業者は、改めて3点のシール条件を測定(採取)する必要がないので、作業性を向上することができる。また、これらのデータを、データシートとして紙で保存する場合に比べ、読み出しの作業が容易であり、作業が煩雑となることを防止することができる。
【0036】
また、シール条件記憶部31及びシール条件読み出し部24は、異なるシール材を、例えば、層構成(例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンフォームシート、アルミニウムシート等からなる積層構成)、総厚み等によって分類する。シール材を、層構成により分類する場合は、より精細に分類できるので、精度のよいシール条件を算出することができる。総厚みにより分類する場合は、熱伝導が、材料の違いよりも、厚みの違いによって大きく影響されるときに有効である。
さらに、シール条件読み出し部24は、特定のシール材のシール条件がシール条件読み出し部24に存在しなくても、この特定のシール材に層構成、総厚み等が似たシール材のシール条件を読み出してもよい。これにより、読み出したシール条件を参照することができるので、特定のシール材のシール条件を設定するための作業効率を向上することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施例の製袋機1は、3つのシール条件をそれぞれ座標軸とした座標空間に、3点(A,B,C)の3つのシール条件の実測値に基づいて定義されるシール条件平面と、シール条件平面をマトリクス配列して示すテーブルとを作成する。そして、シール条件選択部23は、入力された内面到達温度に基づいて、シール条件平面、テーブルから、熱板設定温度(加熱体温度)、シール時間を選択する。
これにより、製袋機1は、入力された3点の実測値からシール条件平面を求めることにより、容易かつ迅速にシール条件の算出、選択をすることができるので、製品の生産効率、生産コストを向上することができる。また、内面到達温度がシール材の溶着温度に基づいて求められているので、シール材を確実に溶着することができるので、品質を向上することができる。
【0038】
また、製袋機1は、シール条件平面、テーブルを、表示部32に明確に表示することができるので、作業者は、自らシール条件を選択する場合にも、容易に行うことができる。
【0039】
さらに、製袋機1は、シール条件記憶部31に、異なるシール材と、これに対応したシール条件平面、テーブルを記憶させ、データベースを構成するので、シール材料を変更した場合におけるシール条件の設定を、さらに容易に行うことができる。
【0040】
(変形例)
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施例において、シール条件算出装置は、内面到達温度に基づいて、熱板設定温度、シール時間を算出、選択する例を示したが、これに限定されない。シール条件算出装置は、熱板設定温度、シール時間に基づいて、他の条件を算出、選択してもよい。例えば、シール材の選択の幅があるが、熱板設定温度、シール時間が拘束されている場合、この2つの条件に基づいて適切な内面到達温度を算出し、この内面到達温度に適合するシール材を選択してもよい。また、シール材が限定され、生産効率の要求によりシール時間が拘束されている場合、内面到達温度、シール時間の条件から、熱板設定温度を算出することができる。このように、シール条件算出装置は、様々な拘束条件等に柔軟に対応することができる。
【0041】
(2)本実施例において、3点の3つのシール条件の実測値に基づいてシール条件平面を求める例を示したが、これに限定されず、4点以上の実測値に基づいて近似されるシール条件平面を求めてもよい。これにより、より正確なシール条件平面を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による実施例の製袋機のブロック図である。
【図2】シール条件の相関示すグラフである。
【図3】シール条件平面を示すグラフ等である。
【図4】シール条件平面をマトリクス配列したテーブルを示す表である。
【図5】内面到達温度と時間との関係を示すグラフである。
【図6】実施例の製袋機の動作を示す流れ図である。
【図7】従来技術によるシール条件を決定するためのグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 製袋機
10 シール条件算出装置
11 入力部
20 制御部
21 シール条件演算部
22 マトリクス配列部
23 シール条件選択部
24 シール条件読み出し部
31 シール条件記憶部
32 表示部
33 送受信部
50 製袋加工部
51 熱板
52 シール条件設定部
53 条件入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材をヒートシールする場合の3つのシール条件である加熱体温度、内面到達温度、シール時間を算出するシール条件算出方法において、
前記3つのシール条件をそれぞれ座標軸とした座標空間に、少なくとも3点の前記3つのシール条件の実測値に基づいて定義又は近似されるシール条件平面を作成するシール条件演算工程と、
前記3つのシール条件を、前記シール条件平面上から選択するシール条件選択工程と、
を有するシール条件算出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシール条件算出方法において、
前記シール条件平面がマトリクス配列されたテーブルを作成するシール条件マトリクス配列工程を有し、
前記シール条件選択工程は、マトリクス配列されたテーブルから、前記3つのシール条件を選択すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシール条件算出方法において、
前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、表示部に表示するシール条件表示工程を有すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のシール条件算出方法において、
前記シール条件選択工程は、前記シール材の溶着温度に基づいて内面到達温度を選定し、前記加熱体温度、前記シール時間を選択すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のシール条件算出方法において、
前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、異なるシール材毎に記憶するシール条件記憶工程を有すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項6】
請求項5に記載のシール条件算出方法において、
前記異なるシール材に変更された場合に、前記異なるシール材に対応する前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、読み出すシール条件読み出し工程を有すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のシール条件算出方法において、
前記シール条件記憶工程及び前記シール条件読み出し工程は、前記異なるシール材を層構成に基づいて分類すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載のシール条件算出方法において、
前記シール条件記憶工程及び前記シール条件読み出し工程は、前記異なるシール材を総厚みに基づいて分類すること、
を特徴とするシール条件算出方法。
【請求項9】
シール材をヒートシールする場合の3つのシール条件である加熱体温度、内面到達温度、シール時間を算出するシール条件算出装置において、
前記3つのシール条件をそれぞれ座標軸とした座標空間に、前記少なくとも3点の前記3つのシール条件の実測値に基づいて定義又は近似されるシール条件平面を作成するシール条件演算部を備えること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項10】
請求項9に記載のシール条件算出装置において、
前記シール条件平面がマトリクス配列されたテーブルを作成するシール条件マトリクス配列部を備えること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載のシール条件算出装置において、
前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを表示する表示部を備えること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載のシール条件算出装置において、
内面到達温度が入力される入力部と、
前記入力された内面到達温度に基づいて、前記シール条件平面及び/又は前記テーブルから、前記加熱体温度、前記シール時間を選択するシール条件選択部とを備えること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項13】
請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載のシール条件算出装置において、
前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを、異なるシール材毎に記憶するシール条件記憶部を備えること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項14】
請求項13に記載のシール条件算出装置において、
前記異なるシール材に変更された場合に、前記異なるシール材に対応した前記シール条件平面及び/又は前記テーブルを読み出すシール条件読み出し部を備えること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載のシール条件算出装置において、
前記シール条件記憶部及び前記シール条件読み出し部は、前記異なるシール材を層構成に基づいて分類すること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項16】
請求項13又は請求項14に記載のシール条件算出装置において、
前記シール条件記憶部及び前記シール条件読み出し部は、前記異なるシール材を総厚みに基づいて分類すること、
を特徴とするシール条件算出装置。
【請求項17】
請求項9から請求項16までのいずれか1項に記載のシール条件算出装置と、
前記シール条件算出装置が算出したシール条件に基づいて、シール材を製袋加工する製袋加工部と、
を備える製袋機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−331792(P2007−331792A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165228(P2006−165228)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】