説明

シール箔の破断に用いるプラスチック製蓋体及び該蓋体を備えた混合容器蓋

【課題】容器内容物に混合する粉末が収容された混合容器蓋に使用され、この容器蓋内に収容された混合用粉末の吸湿を有効に防止し得る蓋体を提供することにある。
【解決手段】頂板部40と、頂板部40の周縁から下方に降下しているスカート状側壁41とを備え、頂板部40の内面からは、シール箔破断用カッター50が下方に延びているプラスチック製蓋体において、シール箔破断用カッター50は、乾燥剤が分散された吸湿性熱可塑性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール箔の破断に用いるプラスチック製蓋体に関するものであり、より詳細には、容器蓋に設けられているシール箔によって保持されている混合用粉末を、該容器蓋が容器口部に装着されたままの状態でシール箔を破断することにより容器内に落下せしめて容器内に収容されている内容物と混合する混合用容器蓋において、該シール箔を破断するために使用されるプラスチック製蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料、薬剤、化粧料等の容器内容物にある種の添加物を使用時に添加混合する必要がある場合、容器蓋に添加物を収容しておき、容器蓋を容器口部に装着したままの状態で添加物を容器内に落下せしめて容器内容物と混合できる混合容器蓋或いは混合容器は、かなり以前から使用されており、種々の構造のものが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、円筒状のねじ込みキャップを有する第1液用容器本体と、キャップを有しない第2液用容器本体の充填液がアルミニウムフォイル等でシールされ、そのシール面が対向する位置で、両容器本体外周で、他の円筒形ホルダーにより連結された二液混合容器において、上記ホルダー内側に嵌合して、外周から中心で頂点を形成して交叉する複数枚の上下に向かった刃を有するカッターを両容器本体間の接続空間に位置させ、かつ上記第1液用容器本体中央部に、ほぼ上記の両容器本体間の間隔幅をもつリング帯状の差込み安全ピンを備えたことを特徴とする二液混合容器が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、螺子係合により容器口部に装着されるキャップ本体と、螺子係合によりキャップ本体に装着される上蓋と、添加液を収容したサブ容器と、サブ容器を収容しており且つ上蓋内に着脱自在に保持されたサブ容器保持体とからなり、キャップ本体にはサブ容器を破断してサブ容器内の添加液を放出させるための第1のカッターが設けられ、サブ容器保持体には、キャップ本体を破断し、サブ容器から放出された添加液を容器内に導入するための開口を形成する第2のカッターが設けられている2液混合容器が提案されている。
【0005】
上記のような混合容器においては、その構成物品数が多く、また構造が複雑であり、蓋体の組立作業が面倒であるなどの問題がある。
【0006】
例えば、特許文献1では、カッターが蓋体とは全く別個の物品として使用されているため、カッターを容器蓋に組み込むなどの工程が必要となってしまい、生産性の低下を免れない。
【0007】
また、特許文献2で提案されている混合容器は、特許文献1と比較すると、蓋体として機能する部材の構成物品数が少なく、また組み立ても容易であるが、それでも、構成物品数は、キャップ本体、上蓋、サブ容器及びサブ容器保持体の4種であり、構成物品数が少ないとは言い難い。また、構成物品数が4種であることから、その組み立て作業も未だ容易であるとは言えず、さらには、サブ容器内の添加液を容器内容物と混合するために2種のカッターが必要となったり、容器口部への装着、2種のカッターによるサブ容器やキャップ本体の破断操作などを行うために、逆螺子構造を採用しなければならず、その構造も複雑なものとなっている。
さらに、従来公知の混合容器蓋では、容器蓋内に収容されている添加物を容器内に落下させて混合する操作が、一般の消費者には判り難かったり、或いは誤操作により、添加物を容器内に落下させずに、そのまま容器蓋を開封してしまうという問題もあった。
【0008】
このような問題を解決するために、本出願人は、先に容器口部に螺子係合により着脱自在に設けられる中蓋と、該中蓋に装着された上蓋とからなり、該中蓋の内部には、混合用添加物が充填され且つシール箔が底壁となった添加物充填空間が形成されており、該上蓋には、前記シール箔を破断し、前記混合用添加物を容器内に落下させるためのカッターを備えている混合容器蓋を提案した(特願2010−54392号)。
【0009】
この構造の混合容器蓋は、中蓋と上蓋との僅か2種であり、容器内容物に混合すべき添加物(混合用添加物)は、シール箔で仕切られ且つ上蓋によって閉じられている中蓋の内部空間(添加物充填空間)に収容されている。従って、構成物品数が少なく、且つ添加物を容器内に落下するために必要なカッターもシール箔を破断するために上蓋と一体に形成されているもののみであり、その組み立てをいたって容易に行うことができるばかりか、逆螺子等の複雑な係合機構を設ける必要も無いという利点がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2で提案されている従来公知の混合容器蓋や、本出願人が提案した上記の混合容器蓋においては、未だ解決すべき他の課題がある。即ち、これらの混合用容器蓋は、粉末を容器内容液に混合する場合には、この混合用の粉末が吸湿してしまうという問題があった。即ち、容器蓋内に収容されている添加物収容空間に、外部或いは容器内から水分が侵入してしまい、この結果、添加物収容空間に粉末が収容されている場合には、該粉末が吸湿してしまい、例えば該粉末を容器内溶液と混合したときに、速やかに該粉末が溶解しなかったり、或いは該粉末が添加物収容空間内に保存されている状態で品質が低下してしまうなどの不都合を生じ易くなるという問題を有しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公昭57−43785号公報
【特許文献2】特開2003−292013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、容器内容物に混合する粉末が収容された混合容器蓋に使用され、この容器蓋内に収容された混合用粉末の吸湿を有効に防止し得る蓋体及び該蓋体を備えた混合容器蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、頂板部と、該頂板部の周縁から下方に降下しているスカート状側壁とを備え、該頂板部の内面からは、シール箔破断用カッターが下方に延びているプラスチック製蓋体において、
前記シール箔破断用カッターは、乾燥剤が分散された吸湿性熱可塑性樹脂組成物により形成されていることを特徴とするプラスチック製蓋体が提供される。
【0014】
上記のプラスチック製蓋体においては、前記乾燥剤がゼオライトであることが好ましい。
【0015】
また、本発明によれば、容器口部に螺子係合により着脱自在に設けられる中蓋と、該中蓋に装着された上蓋とからなり、該中蓋には、容器の内部空間を遮蔽するシール箔が設けられており、該中蓋のシール箔と該上蓋との間に混合用粉末が充填される添加物充填空間が形成されており、該上蓋として、上記のプラスチック製蓋体が使用されていることを特徴とする混合容器蓋が提供される。
【0016】
上記の混合用容器蓋においては、
前記中蓋は、下部筒状側壁と、下部筒状側壁の上端から内方に延びている水平フランジの上面に設けられた上部筒状側壁とから構成されており、
前記上部筒状側壁の内面または前記水平フランジに、前記シール箔が直接または連結部を介して連結されており、該上部筒状側壁の上端面には、前記上蓋との係合用ラチェットが形成され且つ該上部筒状側壁の上端部外面には、前記上蓋との係合用凹部が形成されており、
前記下部筒状側壁の内面には、容器口部の外面と螺子係合する螺条が設けられており、
前記下部筒状側壁の外面、水平フランジの外面若しくは前記上部筒状側壁の外面には、前記上蓋の位置を規制するための第1及び第2の係止突起が形成されており、第1の係止突起は、第2の係止突起よりも上方に位置していると共に、
前記上蓋のスカート状側壁の下端には、ストッパーバンドが引き剥がし可能に連結されており、
前記上蓋の頂板部の内面には、前記カッターに加えて、容器口部に対して閉栓方向に該上蓋を回転したときに先端部分が前記ラチェットと係合し得る弾性片が設けられており、
前記スカート状側壁の内面には、前記第1及び第2の係止突起と係合し得る係合突起が設けられており、
さらに、前記頂板部の内面もしくは前記スカート状側壁の内面には、前記弾性片とラチェットとの係合を阻害しないように、前記係合用凹部と係合し得る係合部材が設けられており、
前記上蓋が中蓋に装着されている状態において、該上蓋の係合突起が前記中蓋の第1の係止突起と係合しており、これにより、該上蓋の中蓋からの離脱が防止されていると共に、該上蓋の係合部材と中蓋の係合用凹部とは係合しておらず、該上蓋の開栓方向への回転が該中蓋に伝達しないように構成されており、
前記中蓋を容器口部に装着する際には、前記上蓋が中蓋に装着されている状態において、該上蓋を閉栓方向に回転せしめることにより、前記弾性片が前記ラチェットと係合し、これにより、該上蓋と一体的に該中蓋が閉栓方向に回転して容器口部に装着され、
前記混合用添加物の容器内容物との混合に際しては、前記上蓋と共に中蓋が容器口部に装着されている未開封状態において、前記ストッパーバンドを該上蓋から切り離し、次いで該上蓋を下方に押し下げ、この押し下げによって前記カッターにより前記シール箔が破断して、前記混合用添加物が落下して容器内容物と混合され、該上蓋が下方に押し下げられた状態で、前記係合突起が第2の係止突起の下方に降下しており、従って、該上蓋の中蓋からの離脱が該係合突起と第2の係止突起との係合により防止されるようになっており、さらに、該上蓋の係合部材は、該上蓋の降下によって前記係合用凹部内に入り込んだ状態に保持されており、
前記中蓋の容器口部からの開封は、前記上蓋が押し下げられて前記シール箔が破断された状態で、前記上蓋を開栓方向に回転させることにより、該上蓋の係合部材と前記中蓋の係合用凹部との係合によって該中蓋が該上蓋と一体に開栓方向に回転し、これによって、該中蓋が該上蓋とともに容器口部から取り除かれること、
が好適である。
【0017】
本発明の混合容器蓋においては、さらに、
前記中蓋の下部筒状側壁の外面には、前記上蓋の位置を規制するための保持突起が、前記第2の係止突起よりも下方位置に形成されており、前記ストッパーバンドが切り離されていない状態において、前記上蓋の降下は、該保持突起とストッパーバンドとの当接により規制され、該保持突起とストッパーバンドとが当接した状態において、前記係合部材は前記係合用凹部よりも上方に位置しており且つ前記シール箔破断用カッターの下端は前記シール箔の上面の近傍に位置していること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のプラスチック製蓋体は、頂板部の内面から下方に延びているシール箔破断用カッターを有しており、この蓋体を降下させることにより、該カッターによりシール箔を破断せしめ、これにより、シール箔上に保持されている容器内容液と混合すべき粉末を容器内に落下せしめて容器内容液と混合することが可能となるわけであるが、最も重要な特徴は、このカッターが、乾燥剤が分散された吸湿性熱可塑性樹脂組成物により形成されているという点にある。
即ち、上記のプラスチック製蓋体を用いた混合容器蓋では、シール箔破断用カッターが混合用粉末が充填される添加物充填空間内に延びている。このため、この添加物充填空間内に水分が浸入したとしても、このような水分は該カッターにより捕捉され、この結果、添加物充填空間に充填されている混合用粉末の吸湿を有効に抑制することができるのである。
また、蓋体自体を乾燥剤が分散された吸湿性熱可塑性樹脂組成物により形成することも考えられるが、この場合には、容器等との螺子係合部分などが摩耗し易くなり、シール性の低下などを生じるおそれがあるが、本発明においては、シール箔破断用カッターのみを吸湿性熱可塑性樹脂組成物により形成することができるため、このような不都合を生じるおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のプラスチック製蓋体を上蓋として備えた混合容器蓋の側面図。
【図2】図1の混合容器蓋を中蓋と上蓋とに分解した状態での斜視図。
【図3】図2の中蓋の側断面図。
【図4】図2の中蓋の平面図。
【図5】図2の上蓋の側断面図。
【図6】図2の上蓋の底面図。
【図7】図1の混合容器蓋を容器口部に装着された状態を示す側断面図。
【図8】図1の混合容器蓋の組み立て及び容器口部に装着するキャッピング工程を示す側断面図。
【図9】容器口部に装着された図1の混合容器蓋から添加物を容器内に落下させ、次いで開封するまでの工程を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<吸湿性熱可塑性樹脂組成物>
本発明において、シール箔破断用カッターの形成に用いる吸湿性熱可塑性樹脂組成物は、乾燥剤を、成形可能な熱可塑性樹脂に分散させたものである。
【0021】
乾燥剤としては、吸湿性、即ち、水分吸着性を有する各種の無機吸着剤が使用される。
このような無機吸着剤の例としては、これに限定されるものではないが、その代表例として、各種のゼオライト(例えば、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライトなど)、シリカゲル、メソポーラスシリカ、活性白土、アルミナ、活性炭、竹炭、木炭、ケイソウ土、結晶性ケイ酸亜鉛化合物、含アルミニウムフィロケイ酸亜鉛乃至そのケイ酸質複合体、フィロケイ酸マグネシウム、含アルミニウムフィロケイ酸マグネシウムなどを例示することができ、これらは、1種単独或いは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明において、最も好適に使用されるのは、吸湿量が多く且つ吸湿速度が速いなどの観点から、ゼオライトである。このようなゼオライトは、天然及び合成の何れであってもよく、さらに、銀、銅、亜鉛などが担持された所謂抗菌ゼオライトであってもよい。
【0022】
さらに、乾燥剤が分散される熱可塑性樹脂は、カッター形状への成形が可能であれば特に制限されず、例えば、キャップなどの成形に使用されているオレフィン系樹脂(ポリエチレンやポリプロピレンなど)であってもよいが、特に乾燥剤の吸湿性を効果的に発揮させ得ることから、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸−アクリロニトリル−スチレン共重合体が好適であり、これらは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0023】
また、上記の共重合体には、成形加工性や成形体の強度を向上させるために、適宜の量(例えば10重量%以下)で他の樹脂がブレンドされていてもよい。このような他の樹脂としては、低、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルーブチレン−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。
【0024】
このような吸湿性熱可塑性樹脂組成物において、前述した熱可塑性樹脂成分100重量部当り、40乃至300重量部、特に50乃至200重量部の量で、前述した乾燥剤を含有していることが、優れた成形性を示すと同時に、優れた吸湿性を確保し且つ得られるカッターとしての強度を満足させる上で好適である。
【0025】
また、上記の吸湿性熱可塑性樹脂組成物には、乾燥剤を熱可塑性樹脂中に均一に分散させる目的で、分散剤を配合することもできる。このような分散剤としては、一般に、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の金属石ケンや、エチレンビスステアリルアマイド、低分子量ポリエチレンワックス、流動パラフィン、パラフィン合成ワックス、ポリプロピレンワックス、シリコーンオイル等を挙げることができる。これらの分散剤は、一般に、熱可塑性樹脂成分100重量部当り0.5乃至5重量部、特に1乃至3重量部の量で使用される。
【0026】
勿論、上記の吸湿性熱可塑性樹脂組成物中には、その優れた吸湿性や成形性等を損なわない限りの量で、それ自体公知の各種配合剤、例えば滑剤、帯電防止剤、紫外線防止剤、酸化防止剤等を適宜配合することもできる。
【0027】
本発明のプラスチック製蓋体は、上記のような吸湿性樹脂組成物から形成されたシール箔破断用カッターが頂板部の内面から下方に延びており、このカッターをシール箔上の空間に混合用粉末と共に保持せしめることにより、混合用粉末の吸湿を効果的に防止することができる。また、このカッターを降下させることにより、シール箔を破断し、シール箔上に保持されている混合用粉末を容器内に落下せしめ、容器内に収容されている内容液を混合することができる。
【0028】
本発明のプラスチック製蓋体を備えた混合用容器蓋の最も好適な形態を示す図1乃至図7を参照して、この混合容器蓋は、全体として1で示す中蓋と、全体として3で示す上蓋とからなっている。中蓋1は、容器口部80に螺子係合により着脱自在に設けられるものであり、その内部には、容器内容物と混合すべき粉末が収容された添加物収容空間Xが形成されており、上蓋3は、この中蓋1に嵌め込まれるようになっている。この上蓋3として、本発明のプラスチック製蓋体が使用されるわけである。
【0029】
上記の中蓋1は、特に図2乃至図4に詳細に示されているように、全体として内部が空洞の筒状形態を有しており、下部筒状側壁10と、下部筒状側壁10の上端から内方に延びている短い水平フランジ11の上面に形成されている上部筒状側壁13とからなっている。
【0030】
中蓋1の下部筒状側壁10の内面には、螺条15が形成されており、この螺条15と、容器口部80の外面に設けられている螺条81との螺子係合により、中蓋1は容器口部80に着脱自在に装着される(図7参照)。
【0031】
また、下部筒状側壁10の下端には、弱化ライン(例えば複数個の破断可能なブリッジとスリット)17を介してタンパーエビデントバンド(TEバンド)19が設けられている。このTEバンド19は、その内面に内方且つ上向きの突片19aを備えており、中蓋1が容器口部80に装着された状態において、この突片19aが容器口部80の外面(前記螺条81よりも下方部分)に設けられている周状突起83の下面と係合するようになっている。即ち、中蓋1を開栓方向に回転させて容器口部80から取り出すときには、上記の係合により、TEバンド19の上昇が制限され、この結果、中蓋1の開栓方向への回転を続けていくと、弱化ライン17におけるブリッジが破断し、TEバンド19が切り離された状態で中蓋1が容器口部80から取り外されることとなる。従って、一般消費者は、TEバンド19が切り離されていることにより、この中蓋1が開封されたという事実を認識できることとなる。但し、後述するように中蓋1に上蓋3が被さった状態においてはストッパーバンドを外して、中蓋1を下方に押し下げて係合用リブと係合用凹部とを係合しないと混合容器蓋を開栓方向に回転させることができないのである。
【0032】
下部筒状側壁10の上端から内方に延びている水平フランジ11の下面には、下部筒状側壁10とは間隔をおいて下方に延びているインナーリング20が設けられており、図7に示されているように、このインナーリング20と下部筒状側壁10との間の空間に容器口部80の上方部分が入り込み、インナーリング20の外面が容器口部80の内面と密着することにより、密封性が確保されるようになっている。
また、水平フランジ11の下面には、密封性を補強するために、アウターリング21が下部筒状側壁10とインナーリング20との間の部分に設けられ、さらに、インナーリング20とアウターリング21との間には、偏平状の周状小突起23が設けられている。即ち、中蓋1が容器口部80に装着されたとき、アウターリング21の内面が容器口部80の上端部外面に密着し、また周状突起23が容器口部80の上端面に密着することにより、密封性が補強されるようになっている。
【0033】
一方、図2乃至図4から理解されるように、下部筒状側壁10と上部筒状側壁13との境界部分の内面には、水平フランジ11の内側端部が若干内方に突出してシール箔接合部25が設けられており、この接合部25の下面に、シール箔27が溶着されて設けられている。即ち、このシール箔27が底壁となって、中蓋1と上蓋3との間に容器内容物に添加混合すべき混合用粉末を充填するための添加物充填空間Xが形成されることとなる。
本発明においては、シール箔27を接合するための連結部を環状形状とし、このような形状の連結部を上部筒状側壁13の内面から下方に降下させ、この下端にシール箔を接合することも可能であるが、図に示されているように、水平フランジ11の内側端部分の下面にシール箔27を設けることが、容器内からの添加物充填空間への水分の侵入を有効に防止する上で好適である。
【0034】
尚、このシール箔27は、一般に樹脂コートされたアルミ箔などの金属箔により形成され、ヒートシールにより連結部である接合部25の下面に貼着される。
【0035】
上部筒状側壁13には、樹脂量の低減及び軽量化のために、その上端から下方に向かって厚み部分を下方に延びている空洞部29が肉抜きにより形成されているが、このような空洞部29は必ずしも形成する必要はない。
【0036】
また、上部筒状側壁13の上端面には、図2からよく理解されるように、上蓋3との係合用ラチェット30が、適当な間隔で複数(図の例では4個)設けられている。また、ラチェット30は、開栓方向下流側の垂直面と、その上流側の緩やかな傾斜面とから形成されており、傾斜面は、垂直面上端から閉栓方向にむかって下方に高さが低くなるように延びている。即ち、このラチェット30は、中蓋1に装着された上蓋3を閉栓方向に回転した場合には上蓋3と係合し、中蓋1を上蓋3と共に閉栓方向に回転せしめ、上蓋3を開栓方向に回転した場合には、上蓋3とは係合せず、従って、上蓋3のみが空回りするようになっている。また、図の例では、垂直面から開栓方向側の上部筒状側壁13上端面には、垂直面側から開栓方向側に向かって上方に傾斜した面からなる補助凹部32が設けられていて、中蓋1を閉栓方向に回転せしめる際に、ラチェット30に係止し易くなっている。
【0037】
上部筒状側壁13の上端部の外面には、上蓋3との係合用凹部31が複数(図の例では4個)形成されており、この係合用凹部31は、それぞれ、上記のラチェット30が設けられている部分の間に位置している。この係合用凹部31は、上蓋3との係合により、中蓋1を上蓋3と一体的に回転(特に開栓方向)させるためのものである。また、この係合用凹部31の上端部の一方側には、後述する上蓋3に設けられている係合用リブ(係合用凹部31との係合部材)55を係合用凹部31内に導入するためのガイド面31aが形成されている。ラチェット30間に設けられているガイド面31aは、上部筒状側壁13の上端部から、より詳細には開栓方向上流側に位置するラチェット30の形成箇所の近傍(図の例では補助凹部32の開栓方向下流側端部)から、開栓方向にむかって下方に傾斜して形成され、係合用凹部31に連続するように延びている。また、ラチェット30間に設けられている係合用凹部31は、開栓方向下流側に位置するラチェット30側に設けられている。(特に図2参照)
【0038】
上記のような構造の中蓋1において、上部筒状側壁13の外面或いは下部筒状側壁10の外面には、この中蓋1に装着される上蓋3の位置を規制するための第1の係止突起33及び第2の係止突起35が周状に形成されており、第1の係止突起33は、第2の係止突起35よりも上方に位置している。また、第2の係止突起35よりもさらに下方には、上蓋3の位置を規制するための第3の係止突起37が周状に形成されている。これら第1〜第3の係止突起33,35,37において、第3の係止突起37は、上蓋3の降下位置を規制するためのものであるため、これらの係止突起の中で最も低い位置に形成され且つ下部筒状側壁10の外面に形成されていることが必要である。しかしながら、第1の係止突起33及び第2の係止突起35の位置は、上蓋3のハイト等によって適宜決定することができ、第1の係止突起33が第2の係止突起35の上方に位置している限り、これらの係止突起33,35は、下部筒状側壁10及び上部筒状側壁13の何れに設けられていてもよい。例えば、図の例では、第1の係止突起33が水平フランジの外面から上部筒状側壁13の外面に掛けて形成され、第2の係止突起35及び第3の係止突起37が下部筒状側壁10の外面に形成されているが、第1の係止突起33及び第2の係止突起35の何れをも下部筒状側壁10の外面に形成することもできるし、その何れをも上部筒状側壁13の外面に形成することも可能である。
【0039】
さらに、図2、図5及び図6と共に図7を参照して、本発明のプラスチック製蓋体である上蓋3は、頂板部40と、頂板部40の周縁から下方に降下しているスカート状側壁41とを備えており、スカート状側壁41の下端には、引裂き可能な弱化線(薄肉のスコアやブリッジ)43を介してストッパーバンド45が設けられている。
【0040】
ストッパーバンド45の外面には、連結部47を介して摘み片49が設けられており、更にストッパーバンド45には、連結部47の閉栓方向側基部近傍に軸方向に延びるスリット48が形成されている。この摘み片49を持っての引っ張りにより、上記の弱化線43がスリット48から引裂かれることとなる。
【0041】
かかる上蓋3において、頂板部40の内面には、その中心部分から下方に延びているシール箔破断用カッター(以下、単にカッターと呼ぶ)50が設けられている。このカッター50は、前述したシール箔27を破断して混合用の粉末を容器内に落下するためのものである。
【0042】
図5及び図6から理解されるように、その平断面は十字型形状を有しており、且つその先端は中心から外方に向かって上方に傾斜して延びる鋭利な形状を有している。即ち、このような形状のカッター50により、シール箔27を破断し、且つ破断したシール箔27の断片を押し広げて大きな開口を形成することができ、添加物充填用空間Xに充填されている混合用粉末を速やかに容器内に落下させることができる。
【0043】
本発明においては、かかるカッター50は、前述した吸湿性熱可塑性樹脂組成物から形成されている。即ち、吸湿性熱可塑性樹脂組成物から形成されているカッター50は、添加物充填用空間X内を延びているため、この空間X内に侵入した水分は、カッター50により有効に捕捉され、この結果、空間X内に充填されている混合用粉末の吸湿を有効に防止することができるのである。
【0044】
このようなカッター50の形状は、特に制限されるものではなく、例えば先端が鋭利に形成されており、カッター50の降下(押し込み)によるシール箔27の破断が効果的である限りにおいて、例えば一端が切り欠かれた円柱形であってもよいが、その表面積が大きい程、その吸湿性が大きくなる。従って、カッター50の表面には、凹部や凸部の形成により表面積が大きくなっていることが好ましく、例えば図に示されているように、その平断面が十字型の凸部などが形成された形状が好適となる。
【0045】
また、上蓋3の頂板部40の内面には、前記カッター50を取り囲むようにしてシールリング51(シール用周状突起)が下方に延びている。このシールリング51は、図7に示されているように、上蓋3を中蓋1に装着したとき、中蓋1の上部筒状側壁13の内面と密着するものであり、これにより、中蓋1内に形成されている添加物充填空間Xが密封され、この空間Xからの混合用粉末の漏洩を有効に防止することが可能となっている。
【0046】
さらに、頂板部40の内面には、前述した中蓋1に設けられているラチェット30と係合し得る弾性片53と、前述した中蓋1の上部筒状側壁13に形成されている係合用凹部31と係合する係合用リブ55が設けられている。
【0047】
弾性片53は、ラチェット30に対応する数だけ設けられており(図の例では4個)、弾性片53のそれぞれは、その付け根部分が頂板部40の内面に接続され、上記のシールリング51の外側に位置する部分から該シールリング51を閉栓方向に沿って回り込むように下方に傾斜して延びており、弾性片53の先端部分が、それぞれ、ラチェット30と係合するようになっている。即ち、この弾性片53は、中蓋1に装着されている上蓋3を閉栓方向に回転したときには、ラチェット30と係合し、この結果、中蓋1は上蓋3と一体に閉栓方向に回転するが、上蓋3を開栓方向に回転したときには、弾性片53はラチェット30とは係合せず、従って、中蓋1が開栓方向に回転することはない。
また、かかる弾性片53の先端部分は自由端となっている為、上下方向にバネ状に撓むようになっている。
【0048】
一方、係合用リブ55は、ストッパーバンド45が設けられている上蓋3が中蓋1に装着されている状態では、中蓋1の係合用凹部31とは係合していないが、ストッパーバンド45が切り離された状態で上蓋3を中蓋1に押し込んだ状態で係合用凹部31内に入り込んで係合するものである。従って、この係合用リブ55は、係合用凹部31に対応する数(図の例では4個)だけ設けられており、係合用凹部31内に入り込むような大きさを有しており、且つ上蓋3を中蓋1に押し込んだときに各係合用リブ55は、各係合用凹部31内に入り込むように、下方に延びている。即ち、係合用リブ55と係合用凹部31との係合により、中蓋1に装着されている上蓋3を中蓋1と一体的に回転させることが可能となる。
【0049】
尚、この係合用リブ55は、上述した弾性片53とラチェット30との係合を阻害しないように、頂板部40の内面の周縁部であって、弾性片53の付け根部よりやや外側で且つ弾性片53の間の位置から下方に延びている。勿論、この係合用リブ55は、上蓋3のスカート状側壁41の内面に設けられていてもよい。図の例では、頂板部40の内面周縁とスカート状側壁41の内面上端部とのコーナー部に係合用リブ55が設けられている。
【0050】
さらに、上蓋3のスカート状側壁41の下方部分(ストッパーバンド45よりもやや上方部分)の内面には、前述した第1或いは第2の係止突起33,35との係合により、上蓋3を位置決めするための係合突起57が設けられている。
【0051】
上述した構造を有する本発明の混合容器蓋は、図7に示されているように、上蓋3が中蓋1に装着されている状態で中蓋1を容器口部80に螺子係合により装着することにより使用に供される。
尚、図7及び以降の説明で引用する図8、図9では、図を判りやすくするために一部の部材の番号は省略されている。
【0052】
即ち、図7において、中蓋1の下部筒状側壁10の内面に形成されている螺条15が容器口部80の外面に形成されている螺条81と螺子係合しており、これにより、中蓋1は容器口部80に固定されている。
この状態においては、既に述べた通り、容器口部80の上端部分は、中蓋1のインナーリング20と下部筒状側壁10との間の空間に嵌め込まれており、これにより、容器口部80の密封が確保される。また、中蓋1に設けられているTEバンド19の突片19aは、容器口部80に設けられている周状突起83の下面側に位置しており、従って、この中蓋1が開栓方向に回転して容器口部80から取り除いて開放されたときには、TEバンド19は中蓋1(下部筒状側壁10)から切り離されることとなり、一般消費者が開封履歴を認識することができる。
【0053】
一方、中蓋1に装着されている上蓋3は、頂板部40の内面に設けられている弾性片53の先端部分が上部筒状側壁13の上端に圧接しているため、その弾性力によって上方に賦勢されており、このため、上蓋3のスカート状側壁41の内面に形成されている係合突起57が中蓋1の第1の係止突起33と係合した状態にあり、これにより、上蓋3は、上蓋3の中蓋1に対しての上昇(即ち中蓋1からの離脱)が有効に防止され、図7に示す位置に安定に位置決めされている。
また、この状態において、上蓋3に設けられているストッパーバンド45の下端は、中蓋1の下部筒状側壁10の外面に設けられている第3の係止突起37のやや上方に位置している。即ち、図7に示されている状態で、上蓋3を下方に押し込んだとしても、ストッパーバンド45の下端が直ちに第3の係止突起37と係合し、上蓋3の降下が規制されることとなる。この結果、上蓋3に設けられているカッター50の降下が抑制され、カッター50によるシール箔27の破断が生じることはないのである。換言すると、ストッパーバンド45を切り離さない限り、シール箔27が破断して混合用粉末が容器内に落下することはない。
【0054】
上記の説明から理解されるように、ストッパーバンド45の下端が、上蓋3の降下位置を規制する第3の係止突起37と係合した状態において、カッター50の下端がシール箔27に接触しないように、カッター50の長さは設定されていればよい。この場合において、カッター50の長さは可及的に長い方が、その吸湿性を最大限に発揮できる。従って、ストッパーバンド45の下端が第3の係止突起37と係合した状態で、カッター50の下端がシール箔27の近傍に位置するように、カッター50の長さを設定しておくことが最も好適である。
【0055】
尚、図7の状態では、上蓋3のシールリング51は、中蓋1の上部筒状側壁13の内面に密着しており、混合用粉末が充填されている添加物充填空間Xの密封性が保持されている。
さらに、上蓋3の係合用リブ55は、係合用凹部31の上方に位置している。即ち、図7の状態では、上蓋3を開栓方向に回転させても、弾性片53がラチェット30とは係合せず、また係合用リブ55は係合用凹部31とは係合していないため、上蓋3が空回りするだけで、中蓋1が開栓方向に回転することはない。従って、添加物充填空間Xから混合用粉末を落下させて容器内容物と混合せずに、中蓋1を容器口部80から取り除くことはできない。
【0056】
上述した構造の混合容器蓋に混合用粉末を充填し且つ図7に示されているように、容器口部80に装着するためには、図8に示すプロセスでキャッピングが行われる。
即ち、図8(a)に示されているように、予め成形された上蓋3を倒立状態に保持しておき、この上蓋3内に、別個に成形された中蓋1を倒立状態で押し込む。尚、この段階では、中蓋1にシール箔27は設けられていない。
【0057】
上記のようにして中蓋1を上蓋3内に押し込んだときには、図8(b)に示されているように、中蓋1と上蓋3との位置関係は、図7と同じ状態にある。例えば、ストッパーバンド45の下端が、中蓋1の第3の規制突起37のやや上方に位置しており、また、上蓋3の係合突起57は、中蓋1の第1の係止突起33の下側面に係合している。また、シールリング51は、中蓋1の上部筒状側壁13の内面に密着している。
尚、図8(b)では、上蓋3及び中蓋1が倒立状態に保持されているため、上下関係は、図7とは逆になっている。
【0058】
図8(b)の状態で、容器内容液に混合すべき混合用粉末60を上蓋3の頂板部40及びシールリング51と中蓋1の上部筒状側壁13とで囲まれた添加物収容空間X内に充填し、この後、ヒートシールによりシール箔27を水平フランジ11の先端のシール箔接合部25に貼着し、これにより、混合用粉末60が充填されている添加物充填空間Xが完全に密封される。
【0059】
上記のようにして混合用粉末60を添加物充填空間X内に充填し且つシール箔27を設けた後、この上蓋3が装着されたままの状態で中蓋1を正立状態に復帰させ、この中蓋1を容器口部80に被せ、この状態で上蓋3を閉栓方向に回転せしめる。上蓋3を閉栓方向に回転せしめると、上蓋3の弾性片53の先端が中蓋1のラチェット30と係合するため、中蓋1も閉栓方向に回転し、この結果、中蓋1の螺条15と容器口部80の外面に形成されている螺条81と螺子係合し、図8(c)に示されているように、上蓋3が装着されたままの状態で中蓋1が容器口部80に装着されることとなる。
【0060】
図8(c)の状態は、図7に示された状態と全く同じであり、中蓋1のインナーリング20と下部筒状側壁10との間の空間に容器口部80が嵌め込まれ、容器口部80の密封性が確保され、さらに、上蓋3の係合突起57と第1の係止突起33との係合により中蓋1の上蓋3内からの脱落が有効に防止されている。また、ストッパーバンド45の降下が、上蓋3の第3の係止突起37との係合により規制されるため、カッター50の降下によるシール箔27の破断が生じるような上蓋3の降下は有効に防止されている。
さらには、上蓋3の係合用リブ55は、中蓋1の係合用凹部31とは係合しておらず、従って、この状態で上蓋3を開栓方向に回転しても中蓋1が開栓方向に回転することはなく、この状態で中蓋1を容器口部80から取り除くことはできない。
【0061】
上記のようにして容器口部80に装着された混合容器蓋からの混合用粉末を落下させての容器内容液との混合及びこの混合容器蓋の容器口部80からの開封は、図9に示すプロセスで行われる。
【0062】
先ず、図9(a)に示されているように、市販に供されている状態は、図7に示されている状態と全く同じである。
【0063】
この状態から、図9(b)に示されているように、摘み片49を持って引っ張ることにより、ストッパーバンド45を上蓋3(スカート状側壁41)から切り離す。これにより、上蓋3のスカート状側壁41の下端と中蓋1の保持突起37との間に空間が形成されるため、この分だけ、上蓋3を中蓋1に対して降下させることが可能となる。
【0064】
従って、図9(b)に示されている状態から上蓋3を下方に押し込み、図9(c)に示す状態まで押し下げる。この押し下げにより、上蓋3に設けられているカッター50が降下し、シール箔27が破断され、内容物充填空間X内に収容されている混合用粉末は落下することとなる。
【0065】
混合用粉末が容器内に落下した状態では、図9(c)に示されているように、上蓋3は降下し、上蓋3に設けられている係合突起57は中蓋1の第2の係止突起35と係合し、これにより、上蓋3の上昇が抑制されており、またシールリング51は中蓋1の上部筒状側壁13の内面に密着しているため、容器内容物の漏洩を生じることなく、容器を振とうさせ、容器内に落下した添加物を容器内容物と均一に混合することができる。
【0066】
また、上記のようにして上蓋3を押し下げてシール箔27を破断せしめた状態では、弾性片53は上方向に撓んだ状態となり、上蓋3に設けられている係合用リブ55が中蓋1の上部筒状側壁13の上端に設けられている係合用凹部31と係合した状態にある。即ち、上蓋3が中蓋1に対して降下することにより、係合用リブ55は、傾斜したガイド面31a(図2参照)により係合用凹部31内に案内され、該凹部31内に入り込むこととなる。従って、図(c)に示されている状態では、上蓋3を回転させることにより、中蓋1も一体的に回転させることが可能な状態となっている。
【0067】
従って、図9(c)に示されている状態から、上蓋3を開栓方向に回転させると、弾性片53とラチェット30との係合は生じないが、係合用リブ55と係合用凹部31とががっちりと係合しているため、中蓋1は、上蓋3と一体的に開栓方向に回転し、この結果、図9(d)に示されているように、中蓋1は上昇し、上蓋3と共に容器口部80から取り除かれることとなる。
【0068】
このようにして混合容器蓋を開封した後は、混合用粉末が混合された容器内容液を容器口部80から取り出される。また、この混合容器蓋は、容器口部80から取り除いた後、再び、中蓋1に装着されている上蓋3を閉栓方向に回転させることにより、中蓋1を閉栓方向に回転させることができ、これにより、容器口部80のリシールに用いることもできる。
また、この混合容器蓋が、一旦、容器口部80から取り除かれたときには、中蓋1からTEバンド19が切り離されており、これを見て、一般の消費者は開封の事実を認識することが可能となる。
【0069】
このように、上述した構造の混合容器蓋は、上蓋3のカッター50が吸湿性樹脂組成物で形成されているため、中蓋1内の添加物充填空間に充填されている混合用粉末の吸湿を有効に防止することができる。
また、シール箔27を破断し、中蓋1内の添加物充填空間に充填されている混合用粉末を容器内に落下せしめた後でなければ開封することができず、混合用粉末を混合せずに混合容器蓋を開封して容器内容液を取り出してしまうという一般消費者の誤操作を確実に防止することができる。
さらに、この混合容器蓋は、逆螺子のような複雑な機構を採用しておらず、構成物品数も少なく(実質的に中蓋1と上蓋3との2つである)、さらにはカッターもシール箔27を破断するために設けられているもののみであり、従って混合用粉末の容器内への落下操作(シール箔27の破断)も、単にストッパーバンド45を切り離して上蓋3を押し込むだけの簡単な操作でよく、さらに、キャッピングや開封操作も、単に上蓋3を閉栓方向或いは開栓方向に回転させるのみであり、極めて容易であり、一般消費者にも極めて判りやすい。
【0070】
尚、本発明において、上述した構造の中蓋1は、それぞれ各種のプラスチック、例えば、低−、中−または高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、スチレン系樹脂、ΑΒS樹脂等を用いての射出成形、圧縮成形等の一体成形により成形される。
さらに、上蓋3は、前述した吸湿性樹脂組成物でカッター3が成形されることを除けば、それ自体公知の方法で成形される。例えば、上記の中蓋1と同様の樹脂を用いての射出成形、圧縮成形等の一体成形により、頂板部40、スカート状側壁41及びストッパーバンド45等を備えた基本形状の成形体を成形した後、この成形体を型内に配置して吸湿性熱可塑性樹脂組成物を射出することにより、吸湿性熱可塑性樹脂組成物からなるカッター50を頂板部40の内面に成形することにより成形することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:中蓋
3:上蓋
10:下部筒状側壁
11:水平フランジ
13:上部筒状側壁
20:インナーリング
27:シール箔
30:ラチェット
31:係合用凹部
33:第1の係止突起
35:第2の係止突起
37:保持突起
40:頂板部
41:スカート状側壁
45:ストッパーバンド
50:シール箔破断用カッター
51:シールリング
53:弾性片
55:係合用リブ
80:容器口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂板部と、該頂板部の周縁から下方に降下しているスカート状側壁とを備え、該頂板部の内面からは、シール箔破断用カッターが下方に延びているプラスチック製蓋体において、
前記シール箔破断用カッターは、乾燥剤が分散された吸湿性熱可塑性樹脂組成物により形成されていることを特徴とするプラスチック製蓋体。
【請求項2】
前記乾燥剤がゼオライトである請求項1に記載のプラスチック製蓋体。
【請求項3】
容器口部に螺子係合により着脱自在に設けられる中蓋と、該中蓋に装着された上蓋とからなり、該中蓋には、容器の内部空間を遮蔽するシール箔が設けられており、該中蓋のシール箔と該上蓋との間に混合用粉末が充填される添加物充填空間が形成されており、該上蓋として、請求項1または2に記載のプラスチック製蓋体が使用されていることを特徴とする混合容器蓋。
【請求項4】
前記中蓋は、下部筒状側壁と、下部筒状側壁の上端から内方に延びている水平フランジの上面に設けられた上部筒状側壁とから構成されており、
前記上部筒状側壁の内面または前記水平フランジに、前記シール箔が直接または連結部を介して連結されており、該上部筒状側壁の上端面には、前記上蓋との係合用ラチェットが形成され且つ該上部筒状側壁の上端部外面には、前記上蓋との係合用凹部が形成されており、
前記下部筒状側壁の内面には、容器口部の外面と螺子係合する螺条が設けられており、
前記下部筒状側壁の外面、水平フランジの外面若しくは前記上部筒状側壁の外面には、前記上蓋の位置を規制するための第1及び第2の係止突起が形成されており、第1の係止突起は、第2の係止突起よりも上方に位置していると共に、
前記上蓋のスカート状側壁の下端には、ストッパーバンドが引き剥がし可能に連結されており、
前記上蓋の頂板部の内面には、前記カッターに加えて、容器口部に対して閉栓方向に該上蓋を回転したときに先端部分が前記ラチェットと係合し得る弾性片が設けられており、
前記スカート状側壁の内面には、前記第1及び第2の係止突起と係合し得る係合突起が設けられており、
さらに、前記頂板部の内面もしくは前記スカート状側壁の内面には、前記弾性片とラチェットとの係合を阻害しないように、前記係合用凹部と係合し得る係合部材が設けられており、
前記上蓋が中蓋に装着されている状態において、該上蓋の係合突起が前記中蓋の第1の係止突起と係合しており、これにより、該上蓋の中蓋からの離脱が防止されていると共に、該上蓋の係合部材と中蓋の係合用凹部とは係合しておらず、該上蓋の開栓方向への回転が該中蓋に伝達しないように構成されており、
前記中蓋を容器口部に装着する際には、前記上蓋が中蓋に装着されている状態において、該上蓋を閉栓方向に回転せしめることにより、前記弾性片が前記ラチェットと係合し、これにより、該上蓋と一体的に該中蓋が閉栓方向に回転して容器口部に装着され、
前記混合用添加物の容器内容物との混合に際しては、前記上蓋と共に中蓋が容器口部に装着されている未開封状態において、前記ストッパーバンドを該上蓋から切り離し、次いで該上蓋を下方に押し下げ、この押し下げによって前記カッターにより前記シール箔が破断して、前記混合用添加物が落下して容器内容物と混合され、該上蓋が下方に押し下げられた状態で、前記係合突起が第2の係止突起の下方に降下しており、従って、該上蓋の中蓋からの離脱が該係合突起と第2の係止突起との係合により防止されるようになっており、さらに、該上蓋の係合部材は、該上蓋の降下によって前記係合用凹部内に入り込んだ状態に保持されており、
前記中蓋の容器口部からの開封は、前記上蓋が押し下げられて前記シール箔が破断された状態で、前記上蓋を開栓方向に回転させることにより、該上蓋の係合部材と前記中蓋の係合用凹部との係合によって該中蓋が該上蓋と一体に開栓方向に回転し、これによって、該中蓋が該上蓋とともに容器口部から取り除かれる請求項3に記載の混合容器蓋。
【請求項5】
前記中蓋の下部筒状側壁の外面には、前記上蓋の位置を規制するための保持突起が、前記第2の係止突起よりも下方位置に形成されており、前記ストッパーバンドが切り離されていない状態において、前記上蓋の降下は、該保持突起とストッパーバンドとの当接により規制され、該保持突起とストッパーバンドとが当接した状態において、前記係合部材は前記係合用凹部よりも上方に位置しており且つ前記シール箔破断用カッターの下端は前記シール箔の上面の近傍に位置している請求項4に記載の混合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−12030(P2012−12030A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147819(P2010−147819)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】