説明

シール装置及び該装置を備えたガスタービン

【課題】高いシール性能を有すると共に低コストで組付性が良いシール装置を提供する。
【解決手段】互いに隣接する燃焼器尾筒5の出口フランジ部5aの側面相互に形成されたシール溝5b間に挿入されて前記側面間をシールする差圧応動型のシール装置20において、前記各シール溝5b壁面にそれぞれ円弧面で接触する一対のシール用突条部24を有した耐熱・耐摩耗性材料からなるシールピース21を、柔軟性を付与するために必要最小限の数で長手方向に連接してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置及び該装置を備えたガスタービンに係り、一層詳細には、外力又は熱膨張等により変化する組立部品間の間隙をシールするシール装置で、例えば、ガスタービン燃焼器出口の燃焼器間シールに好適なシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンは、空気圧縮機(以下「圧縮機」と記すことがある)、燃焼器、及びタービンを主な構成要素とし、互いに回転軸で直結された圧縮機とタービンの間に燃焼器が配設されてなり、作動流体となる空気が回転軸の回転により圧縮機に吸入されて圧縮され、その圧縮空気が燃焼器に導入されて燃料とともに燃焼し、その高温高圧の燃焼ガスがタービンに吐出されてタービンとともに回転軸を回転駆動させる。このようなガスタービンは、回転軸の前端に発電機等を接続することでその駆動源として活用される。
【0003】
そして、近年では、大気汚染等の公害対策の面から低NOx(予混合)燃焼器が多く用いられている。この低NOx(予混合)燃焼器にあっては、NOxを低減させるために燃焼用空気をより多く必要とするため、ガスタービンの各部にシール装置を施して厳しい漏れ空気の管理がなされている。
【0004】
ところで、ガスタービン燃焼器出口の燃焼器間シールに用いられるシール装置として、例えば、図5〜図7に示すようなものがある。
【0005】
図5は、ガスタービン燃焼器出口の燃焼器間シール(サイドシール)に用いられるブラシシール102を示す。このブラシシール102は、一方の尾筒壁部に形成した溝に嵌合するレール102aに、先端が他方の尾筒フランジ部裏面に圧接するワイヤブラシ102bを密に植設してなるもので、これにより車室側からタービン側への漏れ空気を低減する。
【0006】
図6は、図5と同様に、隣接する尾筒フランジ部間の間隙を、多数のI型の打ち抜きピース104aを可撓性の薄板104bで数珠つなぎしてなる所謂ワームシール104でシールし、車室側からタービン側への漏れ空気を低減するものである。このワームシール104は、隣接する尾筒相互に形成した溝に挿入されて、車室と燃焼器内の差圧によりワームシール104の一対の円弧状突部104abが溝の壁面に押し付けられることでシールするものである。
【0007】
図7は、一方の部品106Aの端面と他方の部品106Bの端面との接続面(対向面)間をシールするシール装置であって、各々の接続面に形成された溝状の段部の間の空間部に装着される。そして、一方の部品106Aの第2段面106A2と密接する第1シール突部107A1と他方の部品106Bの第2段面106B2と密接する第2シール突部107A2を有する支持部107Aと、該支持部107Aから凸状に形成された保持部107Bとからなる密封本体107と、保持部107Bの側面に固着される第2側部108Cと湾曲状の弾性部108Bと傾斜する第1側部108AとがU字形の板状に形成された第1シール部材108と、保持部107Bの側面に第1シール部材108と対称に配置されて第2側部109Cが固着されると共に第1シール部材108と略同一形状の要件を有する第2シール部材109と、第1シール部材108の第1側部108Aの端部の外側面に一方の部品106Aの第1段面106A1と密接する第1シール面108A1と、第2シール部材109の第1側部109Aの端部の外側面に他方の部品106Bの第1段面106B1と密接する第2シール面109A1とを備え、両第2側部108C,109Cの端部側が保持部107Bに固着されるものであり、これにより、高温流体が流れる各部品の組立間隙叉は振動が伴う各部品の組立間隙を常にシールすることができるようになっている(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2005−76802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、図5に示すものにあっては、燃焼器組み付け時及び運転後のワイヤブラシ102bの変形が顕著で、性能低下が懸念され、低NOx(予混合)燃焼器には適用し難いという問題点があった。即ち、燃焼器組み付け時及び運転中の振動や起動発停時のクリアランス変化時に、ワイヤブラシ102bが潰れたり摩耗することが考えられるのである。また、運転後の変形による取替作業の発生により、燃焼器補修のコストアップを招来するという問題点もあった。
【0010】
また、図6に示すものにあっては、図5のブラシシール102より高いシール性能が確認されているが、加工数及び部品点数の増大でコストアップを招来するという問題点があった。また、図7に示すものにあっては、部品点数の増大でコストアップを招来すると共に、特に、密封本体107が一体形成されて柔軟性が無いことから、狭いスペース内での組付性が悪いという問題点があった。
【0011】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたもので、高いシール性能を有すると共に低コストで組付性が良いシール装置及び該装置を備えたガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するための本発明に係るシール装置は、互いに隣接する部材の端面相互に形成されたシール溝間に挿入されて前記端面間をシールする差圧応動型のシール装置において、
前記各シール溝壁面にそれぞれ円弧面で接触する一対のシール用突条部を有した耐熱・耐摩耗性材料からなるシールピースを、柔軟性を付与するために必要最小限の数で長手方向に連接してなることを特徴とする。
【0013】
また、前記シールピースは機械加工又はプレス加工等により形成された複数個のものが、各々のフラットな側面間に跨がってそれぞれのシールピースに接合される可撓性を有した薄板で連結されることを特徴とする。
【0014】
また、前記シールピースはプレス加工により形成されたものが最中状に貼り合わせられてなり、この複数個のシールピースが各々の対向する二つのシール用突条部で形成された円孔に挿入されるワイヤでつなぎ止められることを特徴とする。
【0015】
また、前記各シールピースの接続面間にシール用の金属箔が介装されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るガスタービンは、前記シール装置を用いて、ガスタービン燃焼器出口の燃焼器間シールを施工してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシール装置によれば、部品点数が少なく製作が容易であると共に耐摩耗性のシール装置が実現できるので、高いシール性能を有すると共にコストダウンが図れる。また、可撓性の薄板で適度な柔軟性を付与することができるので、組付性も向上させられる。
【0018】
本発明のガスタービンによれば、低NOx(予混合)燃焼器の性能をフルに発揮させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係るシール装置及び該装置を用いたガスタービンを実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1を示すガスタービンの要部概略構成図、図2は同じくシール装置の要部斜視図である。
【0021】
図1に示すように、ガスタービンは、図示しない主軸(回転軸)の周りに低NOx(予混合)型の燃焼器1が複数(例えば16個)配設される。各燃焼器1においては、燃焼器内筒2に臨設された燃料ノズル3から噴射された燃料Fと、空気圧縮機(以下単に圧縮機という)4から吐出され燃焼器内筒2上流側に導入された圧縮空気PAとが混合され、次いで燃焼器内筒2の下流側もしくは燃焼器尾筒5の上流側の燃焼域で燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスCGとしてタービン6に導入する。タービン6では、この燃焼ガスCGを静翼7及び動翼8からなる複数のタービン段落を順次通過・膨張させることで動力を発生させ、圧縮機4を駆動すると共に余剰の駆動力を外部へ出力するようにしている。
【0022】
また、燃焼器内筒2に導入される圧縮空気PAと燃料Fとの比率(空燃比)はガスタービンの運転状態(すなわち投入される燃料量)に応じて最適な値となるよう制御する必要があるが、この目的のため圧縮空気PAの全部を燃焼器1の燃焼域へ導入せず、一部をバイパスさせて車室9から燃焼器尾筒5へ流入させる構成としている。このために設けられるのがバイパス弁10であり、圧縮空気PAの一部が、車室9内に設けたバイパス管11の開口部から燃焼器尾筒5内に流入・供給される。
【0023】
そして、本実施例では、隣接する燃焼器尾筒5の出口フランジ部5a間に、燃焼器間シール(サイドシール)としてのシール装置20が介装される。即ち、隣接する燃焼器尾筒5の側壁には、互いに対向するようにして断面矩形のシール溝5bが形成され、これらのシール溝5b間にシール装置20が遊嵌されるのである。
【0024】
シール装置20は、図2に示すように、同一形状の複数個(2〜4個で図示例では3個以上)のシールピース21が長手方向に連接されてなる。具体的には、各シールピース21の接続面間にシール用の金属箔22を介装すると共に、各々のフラットな側面間に跨がってそれぞれのシールピース21にスポット溶接Wされる、当該シールピース21より短尺で可撓性を有した薄板23で連結されている。
【0025】
各シールピース21のフラットな側面と反対側の側面には、図中左,右両部に位置して断面半円状のシール用突条部24が長手方向に延設されている。このシールピース21は、ハイネス−25(商品名)等の耐熱・耐摩耗性の合金材料を機械加工又はプレス加工等して製作されたものである。また、シールピース21に前記シール溝5bと共に耐摩耗コーティング(クロムカーバイト等)を施工しても良い。尚、シール装置20の長さは、燃焼器尾筒5の出口フランジ部5aの高さと略等しく設定される。また、前記薄板23もシールピース21と同じ材料で製作される。
【0026】
このように構成されるため、シール装置20は、ガスタービン本体に燃焼器1を組み付けた後その隣接する燃焼器尾筒5の出口フランジ部5a間におけるシール溝5b内に挿入される。そして、ガスタービンの運転時には、図1の吹き出しに示すように、車室9と燃焼器1の差圧(図中太矢印参照)により、シール装置20のシールピース21がシール溝5bの壁面に押し付けられて、隣接する出口フランジ部5a間における漏れ空気(図中細矢印参照)がシールされる。
【0027】
この際、シールピース21の一対のシール用突条部24が互いに隣接するシール溝5bの壁面に1個宛それぞれ接触するので、隣接する出口フランジ部5a間に熱膨張による変形により漏れ空気の流れ方向にずれが生じたとしても、円弧面での接触が保持され、エッジ部が接触することによる摩耗等が効果的に回避される。
【0028】
このようにして、本実施例では、部品点数が少なく製作が容易であると共に耐摩耗性のシール装置20が実現できるので、高いシール性能を有すると共にコストダウンが図れ、低NOx(予混合)燃焼器に用いて最適である。また、可撓性の薄板23で適度な柔軟性を付与することができるので、狭い取付スペース内での組付性も向上させられる。
【0029】
尚、金属箔22は特に介装しなくとも良い。また、スポット溶接Wに代えてロー付け等の他の接合手段を用いても良い。
【実施例2】
【0030】
図3は本発明の実施例2を示すシール装置の平面図である。
【0031】
これは、実施例1におけるシールピース21を薄板23の両面に対称に配置した例である。これによれば、漏れ空気の流れ方向がシール溝5bにおいて逆転する場合の部品間のシール装置として用いることができる。
【実施例3】
【0032】
図4は本発明の実施例3を示すシール装置の構成図である。
【0033】
これは、実施例1におけるシールピース21Aを、そのシール用突条部24Aが断面半円環状になるように、プレス加工により形成したものを最中状にスポット溶接Wで貼り合わせ、これを複数個に亙って長手方向に2本のワイヤ25でつなぎ止めた(連結した)例である。即ち、各ワイヤ25は、二つのシール用突条部24Aが向かい合って形成される円孔内に挿入されるのである。
【0034】
これによるも、実施例1と同様に、部品点数が少なく製作が容易であると共に耐摩耗性のシール装置20が実現できるので、高いシール性能を有すると共にコストダウンが図れる。また、心材がワイヤ25であるので適度な柔軟性を付与することができ、組付性も向上させられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るシール装置は、ガスタービン燃焼器出口のシール装置に限らず、他の流体が流れる各部品の組立間隙叉は振動が伴う各部品の組立間隙のシール装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1を示すガスタービンの要部概略構成図である。
【図2】同じくシール装置の要部斜視図である。
【図3】本発明の実施例2を示すシール装置の平面図である。
【図4】本発明の実施例3を示すシール装置の構成図である。
【図5】従来のブラシシールの構成図である。
【図6】従来のワームシールの構成図である。
【図7】従来の更に異なったシール装置の構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 燃焼器
2 燃焼器内筒
3 燃料ノズル
4 空気圧縮機
5 燃焼器尾筒
5a フランジ部
5b シール溝
6 タービン
7 静翼
8 動翼
9 車室
10 バイパス弁
11 バイパス管
20 シール装置
21,21A シールピース
22 金属箔
23 薄板
24,24A シール用突条部
25 ワイヤ
W スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する部材の端面相互に形成されたシール溝間に挿入されて前記端面間をシールする差圧応動型のシール装置において、
前記各シール溝壁面にそれぞれ円弧面で接触する一対のシール用突条部を有した耐熱・耐摩耗性材料からなるシールピースを、柔軟性を付与するために必要最小限の数で長手方向に連接してなることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記シールピースは機械加工又はプレス加工により形成された複数個のものが、各々のフラットな側面間に跨がってそれぞれのシールピースに接合される可撓性を有した薄板で連結されることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記シールピースはプレス加工により形成されたものが最中状に貼り合わせられてなり、この複数個のシールピースが各々の対向する二つのシール用突条部で形成された円孔に挿入されるワイヤでつなぎ止められることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項4】
前記各シールピースの接続面間にシール用の金属箔が介装されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のシール装置。
【請求項5】
前記請求項1,2,3又は4に記載のシール装置を用いて、ガスタービン燃焼器出口の燃焼器間シールを施工してなることを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−218375(P2007−218375A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41012(P2006−41012)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】