説明

シール装置

【課題】シール部材の着脱が容易であると共に、機関の軽量化を図り、樹脂リングが脱落することを確実に防止して、良好な密封性能が維持できるシール装置を提供することを目的とする。
【解決手段】開口を有するエンジンヘッドカバーと、前記開口に挿通する点火プラグ保持チューブと、前記チューブ内に挿入された点火コイルと、前記エンジンヘッドカバー側に保持部分が取付けられ、前記保持部分から伸びる連結部の径方向内端に設けた前記チューブの外周面に密封接触するシールリップを有するゴム状弾性材製プラグチューブシールとよりなるシ−ル装置において、前記保持部分の内周面に嵌着した樹脂リングの外周面に突起を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドのエンジンヘッドカバーに設けられた開口と、この開口に挿通される点火プラグ保持チューブの挿通部材との間の隙間をシールするシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関においては、点火プラグ挿入用の円筒孔を形成するためシリンダヘッド上にプラグチューブが取付けられる。シリンダヘッドカバーがシリンダヘッド上部をほぼ全域にわたって覆う形状の場合、プラグチューブをシリンダヘッドカバー内に設けかつシリンダヘッドカバーに外部に対する開口部を設けている。
このような構成においてはシリンダヘッドカバー内のブローバイガスを外部に対してシールするため、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間には通常プラグチューブシールが装着される。
そして、この種のシール装置としては、たとえば、図3に示すものがあった。
図3は、従来技術に係るシール装置の装着状態を示す部分断面図である。
【0003】
この開示されたシール構造においては、シリンダヘッドカバー100の開口110に、点火プラグ保持チューブ200の上端部の外周面と間隔をもって該外周面と並行に延びる周面131を有する環状段部130が設けられ、該環状段130の周面131と点火プラグ保持チューブ200の外周面との間にシール部材500が介装される。
【0004】
このシール部材500は、図3に示すように、チューブ200の外周面に沿って環状に延び、該外周面に押圧されるリップ部410と、該リップ部410に設けられリップ部410をチューブ200の外周面に向けて付勢する環状のスプリング600と、ヘッドカバー100の環状段部130の周面131に装着される支持体300と、該支持体300とリップ部410とを接続し、チューブ200の外周面と環状段部130の周面131の間隔の変動を吸収するように作動可能な蛇腹部510とから構成されている。
【0005】
しかし、上記のシール装置においては、シール部材500を機関本体の内部側(図上下方)から装着しなければならず、組み立て及びメンテナンスに手間がかかった。
また、シリンダヘッドカバー100は金属材製であるため、機関全体として重くならざるを得ない問題を惹起していた。
【0006】
そこで、図4に示す様なシール装置が提案された。
すなわち、プラグチューブシール500が機関の外側(図上上方)から 着脱可能なシール装置となっている。
この種シール装置は、開口110を有するエンジンヘッドカバー100と、この開口110に挿通する点火プラグ保持チューブ200と、このチューブ200内に挿入された点火コイル300と、エンジンヘッドカバー100側に保持部分510が取付けられ、この保持部分510から伸びる連結部520の径方向内端に設けたチューブ200の外周面に密封接触するシールリップ530を有するゴム状弾性材製プラグチューブシール500とを備えている。
【0007】
更に、保持部分510の内周面511には、樹脂リング400が嵌着されている。
そして、この樹脂リング400とプラグチューブシール500の軸方向一端540とにより、図3に示したシリンダヘッドカバー100の開口110近傍の環状フランジ120の役目を果たしている。
このことにより、機関の軽量化も図れていた。
しかし、樹脂リング400はゴム状弾製材製のプラグチューブシール500の内周面に嵌着しているだけであるため、ゴムの劣化や、振動等により、樹脂リング400がプラグチューブシール500の内周面から離脱する問題が惹起した。
【0008】
【特許文献1】特開2005−330996号公報
【特許文献2】特開平9−133068号公報
【特許文献3】特開2005−69166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、シール部材の着脱が容易であると共に、機関の軽量化を図り、樹脂リングが脱落することを確実に防止して、良好な密封性能が維持できるシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシール装置は、開口を有するエンジンヘッドカバーと、前記開口に挿通する点火プラグ保持チューブと、前記チューブ内に挿入された点火コイルと、前記エンジンヘッドカバー側に保持部分が取付けられ、前記保持部分から伸びる連結部の径方向内端に設けた前記チューブの外周面に密封接触するシールリップを有するゴム状弾性材製プラグチューブシールとよりなるシ−ル装置において、前記保持部分の内周面に嵌着した樹脂リングの外周面に突起を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のシール装置によれば、シール部材の着脱が容易であると共に、機関の軽量化を図り、樹脂リングが脱落することを確実に防止して、良好な密封性能が維持出来る。
【0012】
また、請求項2記載の発明のシール装置によれば、樹脂リングとプラグチュ−ブシールとの係合が容易である。
更に、請求項3記載の発明のシール装置によれば、樹脂リングをプラグチュ−ブシールに嵌合するのは容易であるが、離脱が困難な構成と出来る。
【0013】
更にまた、請求項4記載の発明のシール装置によれば、プラグチュ−ブシール側に特別の加工を施さなくても、確実に樹脂リングをとプラグチュ−ブシールに係合出来る。
また、請求項5記載の発明のシール装置によれば、樹脂リングとプラグチュ−ブシールとの係合がより確実になる。
【0014】
また、請求項6記載の発明のシール装置によれば、外部から機関内への水やダストの侵入を防止できる。
また、請求項7記載の発明のシール装置によれば、外部から機関内への水やダストの侵入をより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1及び図2に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明に係るシール装置の装着状態を示す部分断面図である。
図2は、図1に使用した樹脂リングの拡大図である。
【0016】
図1において、本発明に係るシール装置は、開口11を有するエンジンヘッドカバー1と、この開口11に挿通する点火プラグ保持チューブ2と、このチューブ2内に挿入された点火コイル3と、エンジンヘッドカバー1側に保持部分51が取付けられ、保持部分51から伸びる連結部52の径方向内端に設けたチューブ2の外周面に密封接触するシールリップ53とを備えたゴム状弾性材製プラグチューブシール5とを有すると共に、更に、保持部分51の内周面511に嵌着した樹脂リング4の外周面に突起41を形成する構成とした。
【0017】
この突起4の形状は、図2から明らかな様に、断面略三角形状である。
そして、この突起4は、シールリップ53側の面411(図上下方の面)がなだらかな傾斜面で、他方の面412(図上上方の面)が軸線と略直行する面となっている。
この他方の面412は傾斜面であってもよいが、面411の傾斜角度より急傾斜であることが望ましい。
【0018】
これは、樹脂リングをプラグチュ−ブシールに嵌合する際は容易に装着できるが、樹脂リングがプラグチュ−ブシールから離脱することはない構成と出来るからである。
また、樹脂リング4の突起4は、ゴム状弾製材製の保持部分51の内周面に食込む形で保持されるため、樹脂リングがプラグチュ−ブシールから離脱することはないが、突起4が保持部分51の内周面に設けた環状溝512と係合する形とすることで、より強固な係合状態と出来る。
【0019】
一方、樹脂リング4の軸方向一端42は、プラグチューブシール5の軸方向一端54よりも軸方向に突出している構成となっている。
更に、点火コイル本体30と、プラグチューブシール5の軸方向一端54との間隙には、この間隙をシールするガスケット6が配置されている。
このことにより、外部から機関内への水やダストの侵入をより確実に防止できる。
【0020】
また、プラグチューブシール5には、断面L字形状の金属補強環55が埋設されている。
そして、この金属補強環55の径方向フランジ551とエンジンヘッドカバー1の開口11に設けた段部12とが接合して、プラグチューブシール5の軸方向の位置決めをしている。
【0021】
また、シールリップ53の外周側には、シールリップ53をチューブ2側に 押圧するコイルスプリング56が埋設してある。
本実施例では、樹脂リングの材料として、ポリアミド樹脂を使用したが、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂等の他の樹脂材料も使用できる。
【0022】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るシール装置の装着状態を示す部分断面図である。
【図2】図1に使用した樹脂リングの拡大図である。
【図3】従来技術に係るシール装置の装着状態を示す部分断面図である。
【図4】他の従来技術に係るシール装置の装着状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ヘッドカバー
2 チューブ
3 点火コイル
4 樹脂リング
5 プラグチューブシール
11 開口
12 段部
41 突起
411シールリップ側の面
412他方の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口(11)を有するエンジンヘッドカバー(1)と、前記開口(11)に挿通する点火プラグ保持チューブ(2)と、前記チューブ(2)内に挿入された点火コイル(3)と、前記エンジンヘッドカバー(1)側に保持部分(51)が取付けられ、前記保持部分(51)から伸びる連結部(52)の径方向内端に設けた前記チューブ(2)の外周面に密封接触するシールリップ(53)を有するゴム状弾性材製プラグチューブシール(5)とよりなるシ−ル装置において、前記保持部分(51)の内周面(511)に嵌着した樹脂リング(4)の外周面に突起(41)を形成したことを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記突起(4)の形状は、断面略三角形状であることを特徴とする請求項1記載のシール装置。
【請求項3】
前記突起(4)は、前記シールリップ(53)側の面(411)が傾斜面で、他方の面(412)が軸線と略直行する面であることを特徴とする請求項2記載のシール装置。
【請求項4】
前記樹脂リング(4)は、前記突起(4)が前記保持部分(51)の内周面に食込む形で保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項5】
前記突起(4)は、前記保持部分(51)の内周面に設けた環状溝(512)と係合する形で配置されていることを特徴とする請求項4記載のシール装置。
【請求項6】
前記樹脂リング(4)の軸方向一端(42)は、前記プラグチューブシール(5)の軸方向一端(54)よりも軸方向に突出していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のシール装置。
【請求項7】
前記点火コイル本体(30)と、前記プラグチューブシール(5)の軸方向一端(54)との間隙をシールするガスケット(6)が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシール装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−204150(P2009−204150A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49957(P2008−49957)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】