説明

シール装置

【課題】シール装置において、シール部分の径に拘わらず適正にシール可能とする。
【解決手段】中空形状のケーシング101に回転軸102を回転自在に支持し、この回転軸102にインペラ106を固定し、インペラ106の軸方向に沿って吸込通路107を形成すると共に、インペラ106の外周側に径方向に沿って吐出通路108を形成して遠心ポンプ100を構成し、ケーシング101とインペラ106との間にシール装置11を設け、このシール装置11として、ケーシング101の内周部に金属製の支持リング12を固定し、この支持リング12の内周部に樹脂製のウエアリング13を固定する一方、インペラ106の外周部に金属製の支持リング14を固定し、ウエアリング13を複数の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学プラント、製鉄プラント、発電所などに用いられる各種ポンプなどの回転機械において、インペラ前後における流体の漏洩を抑制するシール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、遠心ポンプは、ケーシングに回転軸が回転自在に支持され、この回転軸に複数の羽根を有するインペラが固定され、インペラの軸方向に沿って吸込通路が形成される一方、インペラの外周側に径方向に沿って吐出通路が形成されて構成されている。従って、モータにより回転軸を回転すると、インペラが回転し、流体が吸込通路を通して吸い込まれ、このインペラを流過する過程で昇圧された後、吐出通路に吐出される。
【0003】
このような遠心ポンプでは、吸込通路から吸い込んで昇圧した流体が吐出通路に吐出されずに吸込通路側に漏洩しないように、ケーシングとインペラとの間にシール装置としてのウエアリングが設けられている。このウエアリングは、一般的に、金属製であることから、回転体であるロータと静止体側のケーシングに固定されるウエアリングとの間で焼付きが発生して振動が大きくなったり、摩耗が進行して両者の隙間が大きくなったりして流体移送効率が低下してしまうという問題がある。そのため、金属製のウエアリングを樹脂製のウエアリングとすることで、焼付きや摩耗の発生を抑制している。
【0004】
このようなウエアリングとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された自液流体軸受を有するポンプでは、インペラのシュラウド部に装着された回転側ウエアリングを耐焼付性に優れた材料で構成し、この回転側ウエアリングとインナーケーシングの内周面に装着された固定側ウエアリングとの間隙を微小隙間として、ポンプの運転により前記回転側ウエアリング及び固定側ウエアリングとの隙間に発生する自液流体の動的流体力によってロータを支持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−041193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したウエアリングは、所定厚さを有する樹脂製の板材から切り出して製造している。この樹脂製の板材は、その最大の大きさが決まっていることから、製造することができるウエアリングの最大径が決まってしまう。プラントなどで使用されるポンプは、インペラの外径が大きく、使用することができる樹脂製のウエアリングがないのが現状である。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、シール部分の径に拘わらず適正にシール可能なシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明のシール装置は、互いに相対回転自在に支持される一対の内側支持体と外側支持体との間に介装されるシール装置において、前記内側支持体の外周部と前記外側支持体の内周部とのいずれか一方に固定される支持リングと、複数の分割片が周方向に沿ったリング形状をなして前記内側支持体の外周部と前記外側支持体の内周部とのいずれか他方に所定隙間をあけて対向するように前記支持リングに装着される樹脂製のウエアリングと、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、樹脂製のウエアリングを複数の分割片から構成することで、このウエアリングを樹脂プレートから切り出して製造する場合、大きな樹脂プレートを不要として製造コストを低減することができ、シール部分の径に拘わらず適正にシール可能とすることができる。
【0010】
本発明のシール装置では、前記ウエアリングは、前記複数の分割片が前記支持リングの内周部または外周部に密着して配置され、取付ボルトが前記支持リングを貫通して前記分割片に螺合することで、前記支持リングに固定されることを特徴としている。
【0011】
従って、取付ボルトが支持リングを貫通して分割片に螺合することで、ウエアリングが支持リングに固定されており、ウエアリングにおける内側支持体または外側支持体との対向面に取付ボルトが露出することはなく、安定したシール性能を確保することができる。
【0012】
本発明のシール装置では、前記複数の分割片は、端部同士が前記支持リングの径方向に重なるように連結されることを特徴としている。
【0013】
従って、支持リングに対して複数の分割片の端部同士が重なるように連結されることで、支持リングに対して各分割片が脱落しにくくなり、装着性を向上することができる。
【0014】
本発明のシール装置では、前記複数の分割片は、一体に形成された係止部が前記支持リングの係止溝に係止することで、前記支持リングに装着されることを特徴としている。
【0015】
従って、複数の分割片の係止部が支持リングの係止溝に係止するため、ウエアリングを安定して支持リングに装着することができる。
【0016】
本発明のシール装置では、前記複数の分割片は、端部同士が前記支持リングの軸方向に重なるように連結されることを特徴としている。
【0017】
従って、複数の分割片の端部同士が支持リングの軸方向に重なることで、各分割片の連結部におけるシール性能の低下を抑制することができる。
【0018】
本発明のシール装置では、前記内側支持体と前記外側支持体との軸心が一致するように調整する調心機構が設けられることを特徴としている。
【0019】
従って、調心機構により内側支持体と外側支持体との軸心が一致することとなり、ウエアリングによるシール性能の低下を抑制することができる。
【0020】
本発明のシール装置では、前記調心機構は、弾性部材を有することを特徴としている。
【0021】
従って、調心機構を弾性部材により構成することで、製造コストの増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシール装置によれば、内側支持体の外周部と外側支持体の内周部とのいずれか一方に固定される支持リングと、複数の分割片が周方向に沿ったリング形状をなして内側支持体の外周部と外側支持体の内周部とのいずれか他方に所定隙間をあけて対向するように支持リングに装着される樹脂製のウエアリングとを設けるので、樹脂製のウエアリングを複数の分割片から構成することで、このウエアリングを樹脂プレートから切り出して製造する場合、大きな樹脂プレートを不要として製造コストを低減することができ、シール部分の径に拘わらず適正にシール可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るシール装置が適用された遠心ポンプを表す概略図である。
【図2】図2は、実施例1のシール装置が装着された遠心ポンプのシール部を表す断面図である。
【図3】図3は、実施例1のシール装置の正面図である。
【図4】図4は、実施例1のシール装置の取付部を表す断面図である。
【図5】図5は、実施例1のシール装置を構成するウエアリングの製造方法を表す概略図である。
【図6】図6は、本発明の実施例2に係るシール装置の正面図である。
【図7】図7は、実施例2のシール装置の要部拡大図である。
【図8】図8は、本発明の実施例3に係るシール装置の要部拡大図である。
【図9】図9は、実施例3の変形例のシール装置の要部拡大図である。
【図10】図10は、本発明の実施例4に係るシール装置を構成するウエアリングの要部拡大図である。
【図11】図11は、実施例4の変形例のウエアリングの要部拡大図である。
【図12】図12は、本発明の実施例5に係るシール装置が適用された遠心ポンプを表す概略図である。
【図13】図13は、本発明の実施例6に係るシール装置を表す断面図である。
【図14】図14は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。
【図15】図15は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。
【図16】図16は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。
【図17】図17は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。
【図18】図18は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。
【図19】図19は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るシール装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係るシール装置が適用された遠心ポンプを表す概略図、図2は、実施例1のシール装置が装着された遠心ポンプのシール部を表す断面図、図3は、実施例1のシール装置の正面図、図4は、実施例1のシール装置の取付部を表す断面図、図5は、実施例1のシール装置を構成するウエアリングの製造方法を表す概略図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、実施例1のシール装置が適用された遠心ポンプ100において、ケーシング101は中空形状をなし、ほぼ中央部には回転軸102が軸受103,104により回転自在に支持されている。この回転軸102は、一端部(図1にて、左端部)に複数の羽根105を有するインペラ106が固定され、他端部(図1にて、右端部)が図示しないモータの出力軸に連結されている。ケーシング101は、インペラ106の軸方向に沿って吸込通路107が形成されており、流体をこの吸込通路107を介してインペラ106の前面部に取込可能となっている。また、ケーシング101は、インペラ106の外周側に径方向に沿って吐出通路108が形成されており、インペラ106により昇圧した流体をこの吐出通路108を介して外部に吐出可能となっている。
【0027】
従って、モータにより回転軸102を回転すると、インペラ106が回転し、流体が吸込通路107を通してケーシング101内に吸い込まれる。すると、流体は回転するインペラ106を流過する過程で昇圧された後、吐出通路108を通って外部に吐出される。
【0028】
このように構成された遠心ポンプ100にて、ケーシング101とインペラ106との間にシール装置11が設けられている。このシール装置11は、インペラ106により昇圧された流体が、吐出通路108に流れずに吸込通路107側に漏洩するのを防止するものである。このシール装置11は、外側支持体としてのケーシング101と内側支持体としてのインペラ106との間に介装され、ケーシング101の内周部に固定されている。
【0029】
即ち、シール装置11において、ケーシング101は、支持部101aの内周部にリング形状をなす金属製の支持リング12が固定されており、この支持リング12の内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング13が固定されている。一方、インペラ106は、ボス部106aの外周部にリング形状をなす金属製の支持リング14が固定されている。この場合、ケーシング101側のウエアリング13の内周面と、インペラ106側の支持リング14の外周面との間には、両者が相対回転可能となる所定隙間が設けられている。なお、インペラ106に固定された支持リング14は、ケーシング101側のウエアリング13との所定隙間を確保するものであり、特に設けなくてもよいものである。
【0030】
このウエアリング13は、図3及び図4に示すように、複数(本実施例では、6個)の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fが周方向に沿って直列に並ぶことで、リング形状をなしている。そして、ウエアリング13は、各分割片13a〜13fが支持リング12の内周部に密着して配置され、各取付ボルト15が支持リング12の外周から内周に向けて貫通穴12aを貫通し、先端部が各分割片13a〜13fに螺合することで、支持リング12に固定されている。即ち、複数の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fからなるウエアリング13が取付ボルト15により支持リング12の内周部に固定された後、支持リング12の外周部がケーシング101の支持部101aの内周部に圧入等により固定される。
【0031】
この場合、ウエアリング13を構成する複数の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fは、同形状をなすことから、図5に示すように、所定厚さを有する1枚の樹脂プレート16から切り出しにより形成される。従って、大型の樹脂プレートが不要となる。
【0032】
このように実施例1のシール装置にあっては、中空形状のケーシング101に回転軸102を回転自在に支持し、この回転軸102にインペラ106を固定し、インペラ106の軸方向に沿って吸込通路107を形成すると共に、インペラ106の外周側に径方向に沿って吐出通路108を形成して遠心ポンプ100を構成し、ケーシング101とインペラ106との間にシール装置11を設け、このシール装置11として、ケーシング101の内周部に金属製の支持リング12を固定し、この支持リング12の内周部に樹脂製のウエアリング13を固定する一方、インペラ106の外周部に金属製の支持リング14を固定し、ウエアリング13を複数の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fから構成している。
【0033】
従って、樹脂製のウエアリング13を複数の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fから構成することで、このウエアリング13を樹脂プレート16から切り出して製造する場合、大きな樹脂プレートを不要として製造コストを低減することができ、インペラ106の外径に拘わらず、ケーシング101とインペラ106との間を適正にシールすることができる。
【0034】
また、実施例1のシール装置では、複数の分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fを支持リング12の外周部に密着して配置し、取付ボルト15が支持リング12を貫通して各分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fに螺合することで、ウエアリング13を支持リング12に固定している。従って、取付ボルト15が支持リング12の外側から貫通して分割片13a,13b,13c,13d,13e,13fに螺合してその内周面には貫通していないことから、ウエアリング13の内周面、つまり、支持リング14との対向面に取付ボルト15が露出することはなく、安定したシール性能を確保することができる。
【実施例2】
【0035】
図6は、本発明の実施例2に係るシール装置の正面図、図7は、実施例2のシール装置の要部拡大図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
実施例2において、図6及び図7に示すように、シール装置21は、遠心ポンプのインペラにより昇圧された流体が吸込通路側に漏洩するのを防止するものであり、外側支持体としてのケーシングと内側支持体としてのインペラとの間に介装され、ケーシングの内周部に固定されている。即ち、このシール装置21において、ケーシングの内周部にリング形状をなす金属製の支持リング22が固定され、この支持リング22の内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング23が固定されている。一方、インペラの外周部にリング形状をなす金属製の支持リングが固定され、ケーシング側のウエアリング23の内周面と、インペラ側の支持リングの外周面との間に所定隙間が設けられている。
【0037】
このウエアリング23は、複数(本実施例では、5個)の分割片23a,23b,23c,23d,23eが周方向に沿って直列に並ぶことで、リング形状をなしている。そして、ウエアリング23は、各分割片23a〜23eが支持リング22の内周部に密着して配置され、図示しない取付ボルトが支持リング22の外周から内周に向けて貫通し、先端部が各分割片23a〜23eに螺合することで、支持リング22に固定されている。また、ウエアリング23は、複数の分割片23a〜23eの端部同士が支持リング22の径方向に重なるように連結されている。
【0038】
即ち、各分割片23a〜23eは、長手方向(ウェアリング23の周方向)における各端部にて、外周面側の周方向位置と内周面側の周方向位置が相違しており、この各端部が径方向及び周方向に対して傾斜した連結面24a,24b,24c,24d,24eとなっている。そのため、複数の分割片23a,23b,23c,23d,23eが支持リング22の内周部で組み合わされたとき、取付ボルトがなくても、各分割片23a,23b,23c,23d,23eにより内周側に脱落しないようになっている。
【0039】
このように実施例2のシール装置にあっては、シール装置21として、ケーシングの内周部に金属製の支持リング22を固定し、この支持リング22の内周部に樹脂製のウエアリング23を固定し、このウエアリング23を複数の分割片23a,23b,23c,23d,23eから構成すると共に、複数の分割片23a〜23eの端部同士が支持リング22の径方向に重なるように連結している。
【0040】
従って、樹脂製のウエアリング23を複数の分割片23a,23b,23c,23d,23eから構成し、支持リング22に対して端部同士が径方向に重なるように連結することで、支持リング22に対して各分割片23a〜23eが脱落しにくくなり、装着性を向上することができる。
【実施例3】
【0041】
図8は、本発明の実施例3に係るシール装置の要部拡大図、図9は、実施例3の変形例のシール装置の要部拡大図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
実施例3のシール装置において、図8に示すように、ケーシングの内周部にリング形状をなす金属製の支持リング32が固定され、この支持リング32の内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング33が固定されている。このウエアリング33は、複数の分割片33a(図8では、1つだけ記載)が周方向に沿って直列に並ぶことで、リング形状をなしている。そして、ウエアリング33は、各分割片33aの外周側にT字形状をなす係止部34aが一体に形成される一方、支持リング32は、内周面に開口するT字形状をなす係止溝32aが形成されている。そのため、ウエアリング33は、各分割片33aの係止部34aが支持リング32の係止溝32aに係止することで、取付ボルトがなくても内周側に脱落せずに、支持リング32に装着されることとなる。
【0043】
なお、ウエアリング33における係止部34aや支持リング32における係止溝32aの形状は、これらに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、ケーシングの内周部にリング形状をなす金属製の支持リング42が固定され、この支持リング42の内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング43が固定されている。このウエアリング43は、複数の分割片43a(図9では、1つだけ記載)が周方向に沿って直列に並ぶことで、リング形状をなしている。そして、ウエアリング43は、各分割片43aの外周側に扇形状をなす係止部44aが一体に形成される一方、支持リング42は、内周面に開口する扇形状をなす係止溝42aが形成されている。そのため、ウエアリング43は、各分割片43aの係止部44aが支持リング42の係止溝42aに係止することで、取付ボルトがなくても内周側に脱落せずに、支持リング32に装着されることとなる。
【0044】
このように実施例3のシール装置にあっては、ケーシングの内周部に金属製の支持リング32,42を固定し、この支持リング32,42の内周部に樹脂製のウエアリング33,43を固定し、このウエアリング33,43を複数の分割片33a,43aから構成すると共に、複数の分割片33a,43aの係止部34a,44aが支持リング32,42の係止溝32a,42aに係止するように支持リング32,42に装着している。
【0045】
従って、樹脂製のウエアリング33,43を複数の分割片33a,43aから構成し、分割片33a,43aの係止部34a,44aが支持リング32,42の係止溝32a,42aに係止することで、支持リング32,42に対して各分割片33a,43aが脱落しにくくなり、ウエアリング33,43を安定して支持リング32,42に装着することができ、装着性を向上することができる。
【実施例4】
【0046】
図10は、本発明の実施例4に係るシール装置を構成するウエアリングの要部拡大図、図11は、実施例4の変形例のウエアリングの要部拡大図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0047】
実施例4のシール装置において、図10に示すように、ケーシングの内周部にリング形状をなす金属製の支持リングが固定され、この支持リングの内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング51が固定されている。このウエアリング51は、複数の分割片51a,51b(図10では、2つだけ記載)が周方向に沿って直列に並ぶことで、リング形状をなしている。そして、ウエアリング51は、各分割片51a,51bが支持リングの内周部に密着して配置され、図示しない取付ボルトにより固定されている。また、ウエアリング51は、複数の分割片51a,51bの端部同士が支持リングの軸方向に重なるように連結されている。
【0048】
即ち、図10は、ウエアリング51を内側から見た図であり、左右方向が支持リング及びウエアリング51の軸方向となっており、各分割片51a,51bは、長手方向(ウエアリング51の周方向)における各端部にて、一側面側の周方向位置と他側面側の周方向位置が相違しており、この各端部が周方向に対して傾斜した連結面52aとなっている。そのため、複数の分割片51a,51bが支持リングの内周部で組み合わされたとき、軸方向に沿った隙間が形成されないようになっている。
【0049】
なお、ウエアリング51における各分割片51a,51bにおける連結面52aの形状はこれらに限定されるものではない。例えば、図11に示すように、この図11は、ウエアリング56を内側から見た図であり、左右方向が支持リング及びウエアリング56の軸方向となっており、各分割片56a,56bは、長手方向(ウエアリング56の周方向)における各端部にて、一側面側の周方向位置と他側面側の周方向位置が相違しており、この各端部が段付き形状をなす段付き面57aとなっている。そのため、複数の分割片56a,56bが支持リングの内周部で組み合わされたとき、軸方向に沿った隙間が形成されないようになっている。
【0050】
このように実施例4のシール装置にあっては、ケーシングの内周部に金属製の支持リングを固定し、この支持リングの内周部に樹脂製のウエアリング51,56を固定し、このウエアリング51,56を複数の分割片51a,51b,56a,56bから構成すると共に、複数の分割片51a,51b,56a,56bの端部同士が支持リングの軸方向に重なるように連結している。
【0051】
従って、樹脂製のウエアリング51,56を複数の分割片51a,51b,56a,56bから構成し、支持リングに対して端部同士が軸方向に重なるように連結することで、各分割片51a,51b,56a,56bの連結部にて、軸方向に沿った隙間が形成されないことから、各分割片51a,51b,56a,56bからなるウエアリング51,56における流体の軸方向漏れが抑制され、シール性能の低下を抑制することができる。
【実施例5】
【0052】
図12は、本発明の実施例5に係るシール装置が適用された遠心ポンプを表す概略図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
図12に示すように、実施例5のシール装置が適用された遠心ポンプ200において、ケーシング201は中空形状をなし、ほぼ中央部には回転軸202が図示しない軸受により回転自在に支持されている。この回転軸202は、複数のインペラ203,204が軸方向に沿って固定され、端部が図示しないモータの出力軸に連結されている。
【0054】
従って、モータにより回転軸202を回転すると、複数のインペラ203,204が回転し、ケーシング201内に吸い込まれた流体は、まず、回転するインペラ203を流過する過程で昇圧された後、次に、回転するインペラ204を流過する過程で昇圧される。
【0055】
このように構成された遠心ポンプ200にて、ケーシング201とインペラ203,204との間にシール装置11が設けられている。このシール装置11は、インペラ203,204により昇圧された流体が、上流側に戻るのを防止するものである。このシール装置11は、外側支持体としてのケーシング201と内側支持体としてのインペラ203,204との間に介装され、ケーシング201の内周部に固定されている。
【0056】
即ち、シール装置11において、ケーシング201は、支持部201a,201b,201c,201dの内周部にリング形状をなす金属製の支持リング12がそれぞれ固定され、この支持リング12の内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング13が固定されている。一方、インペラ203,204は、ボス部203a,203b,204a,204bの外周部にリング形状をなす金属製の支持リング14が固定されている。この場合、ケーシング201側のウエアリング13の内周面と、インペラ203,204側の支持リング14の外周面との間には、両者が相対回転可能となる所定隙間が設けられている。
【0057】
なお、このシール装置11は、上述した実施例1で説明したものであり、同様の説明は省略する。なお、このシール装置11に代えて、実施例2〜4に説明したものを適用してもよいものである。
【0058】
このように実施例5のシール装置にあっては、中空形状のケーシング201に回転軸202を回転自在に支持し、この回転軸202にインペラ203,204を固定し、ケーシング201とインペラ203,204との間にシール装置11を設けている。
【0059】
従って、回転軸202に複数のインペラ203,204が固定されている構成であっても、ケーシング201とインペラ203,204の間にシール装置11を設けることで、両者の間を適正にシールすることができる。
【実施例6】
【0060】
図13は、本発明の実施例6に係るシール装置を表す断面図、図14から図19は、実施例6の変形例の調心機構を表す断面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
図13に示すように、実施例6のシール装置が適用された遠心ポンプの軸受部において、ケーシング301は中空形状をなし、ほぼ中央部には回転軸302が回転自在に支持され、ケーシング301と回転軸302との間にシール装置61が設けられている。このシール装置61は、流体が回転軸302の軸方向に沿って流れて漏洩するのを防止するものである。このシール装置61は、外側支持体としてのケーシング301と内側支持体としての回転軸302との間に介装され、ケーシング301の内周部に固定されている。
【0062】
即ち、シール装置61において、ケーシング201は、内周部にリング形状をなす金属製の支持リング62が固定されており、この支持リング62の内周部にリング形状をなす樹脂製のウエアリング63が固定されている。この場合、ケーシング301側のウエアリング63の内周面と、回転軸302の外周面との間には、両者が相対回転可能となる所定隙間が設けられている。
【0063】
支持リング62は、ケーシング301と回転軸302との軸心が一致するように調整する調心機構を有しており、本実施例では、調心機構を弾性部材により構成し、この弾性部材を弾性リング64としている。即ち、支持リング62は、内側リング65と外側リング66とより構成され、内側リング65の外周面に凹部65aが形成されると共に、外側リング66の内周面に凹部66aが形成されている。弾性リング64は、例えば、ゴム部材により形成され、断面が円形状をなしており、内側リング65の凹部65aと外側リング66の凹部66aとの空間に収容されており、内側リング65と外側リング66との間に所定隙間が確保されている。
【0064】
従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じて弾性リング64が変形することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。
【0065】
なお、本実施例のウエアリング63は、上述した実施例1〜4に説明したように、複数の分割片が周方向に沿って直列に並ぶことでリング形状をなしていることが望ましい。
【0066】
なお、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致するように調整する調心機構は、この構成に限定されるものではない。例えば、図14に示すように、支持リング62は、凹部65aを有する内側リング65と凹部66aを有する外側リング66とから構成され、内側リング65の凹部65aと外側リング66の凹部66aとの間に、調心機構及び弾性部材としての弾性リング67が設けられている。この弾性リング67は、例えば、ゴム部材により形成され、断面が矩形状をなしている。従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じて弾性リング67が変形することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。
【0067】
また、図15に示すように、ケーシング301の内周部に金属製の支持リング72が固定され、この支持リング72の内周部に樹脂製のウエアリング73が固定され、ウエアリング73と回転軸302との間に所定隙間が設けられている。そして、支持リング72は、ケーシング301と回転軸302との軸心が一致するように調整する調心機構を有しており、本実施例では、調心機構を弾性部材により構成し、この弾性部材を弾性リング74としている。即ち、支持リング72は、凹部75a,75bを有する内側リング75と凹部76a,76bを有する外側リング76とから構成され、内側リング75の凹部75a,75bと外側リング76の凹部76a,76bとの間に、弾性リング74が設けられている。この弾性リング74は、例えば、ゴム部材により形成され、断面が円形状をなしている。従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じて2つの弾性リング74が変形することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。なお、弾性リング74の形状や個数はこの実施例に限定されるものではない。
【0068】
また、図16に示すように、ケーシング301の内周部に金属製の支持リング82が固定され、この支持リング82の内周部に樹脂製のウエアリング63が固定され、ウエアリング63と回転軸302との間に所定隙間が設けられている。そして、支持リング82は、ケーシング301と回転軸302との軸心が一致するように調整する調心機構を有しており、本実施例では、調心機構を球面軸受により構成している。即ち、支持リング82は、球面凸部85を有する内側リング83と球面凹部86を有する外側リング84とから構成され、内側リング83の球面凸部85と外側リング84の球面凹部86とが摺動自在に嵌合している。従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じて内側リング83と外側リング84が摺動することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。なお、支持リング82の形状はこの実施例に限定されるものではなく、例えば、内側リング83に球面凹部を設け、外側リング84に球面凸部を設けてもよい。
【0069】
また、図17に示すように、支持リング62は、凹部65aを有する内側リング65と凹部66aを有する外側リング66とから構成され、内側リング65の凹部65aと外側リング66の凹部66aとの間に、調心機構及び弾性部材としての弾性リング68が設けられている。この弾性リング68は、例えば、ゴム部材により形成され、断面がH字形状をなしている。従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じて弾性リング68が変形することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。
【0070】
上述した各実施例では、支持リングを内側リングと外側リングとから構成し、両者の間に形成された各凹部に調心機構及び弾性部材としての弾性リングを装着したが、支持リングとウエアリングとの間に凹部を形成し、この各凹部に調心機構及び弾性部材としての弾性リングを装着してもよい。また、弾性部材は、一体のリング形状をなす弾性リングに限らず、周方向に分割された弾性部材であってもよい。
【0071】
また、図18に示すように、ケーシング301の内周部に金属製の支持リング91が固定され、この支持リング91の内周部に樹脂製のウエアリング92が固定され、ウエアリング92と回転軸302との間に所定隙間が設けられている。そして、ウエアリング92は、ケーシング301と回転軸302との軸心が一致するように調整する調心機構を有している。即ち、ウエアリング92は、軸方向の中間部に外側への凸部92aが形成され、支持リング91に密着して固定されている。そのため、ウエアリング92は、軸方向の中間部の凸部92aにより、軸方向の各端部、つまり、凸部92aにおける軸方向の両側の各端部92bと支持リング91との間に隙間が形成されている。従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じてウエアリング92の各端部92bが支持リング91側に弾性変形することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。
【0072】
また、図19に示すように、ケーシング301の内周部に金属製の支持リング96が固定され、この支持リング96の内周部に樹脂製のウエアリング97が固定され、ウエアリング97と回転軸302との間に所定隙間が設けられている。そして、支持リング96及びウエアリング97は、ケーシング301と回転軸302との軸心が一致するように調整する調心機構を有している。即ち、支持リング96は、軸方向の中間部に内側への凸部96aが形成され、ウエアリング97に密着して固定されている。そのため、ウエアリング97は、支持リング96の凸部96aにより、軸方向の各端部、つまり、凸部96aにおける軸方向の両側の各端部97aと支持リング96との間に隙間が形成されている。従って、回転軸302の撓みなどにより、ケーシング301の軸心に対して回転軸302との軸心がずれたとしても、このずれに応じてウエアリング97の各端部97aが支持リング96側に弾性変形することで調心し、ケーシング301と回転軸302との軸心を一致させることができる。
【0073】
この場合、ウエアリング92,97の軸方向長さをL、ウエアリング92(端部92b),97厚さをTとすると、ウエアリング92の凸部92aと支持リング91との密着軸方向長さ及び支持リング96の凸部96aとウエアリング97との密着軸方向長さAは、軸方向長さをLの1/2〜1/3に設定し、支持リング91,96とウエアリング92,97との径方向隙間Bは、厚さをTの1/5〜1/10に設定することが望ましい。
【0074】
このように実施例6のシール装置にあっては、ケーシング301の内周部に支持リング91を固定し、この支持リング91の内周部に樹脂製のウエアリング92を固定し、ウエアリング92と回転軸302との間に所定隙間が設けると共に、ケーシング101と回転軸302との軸心が一致するように調整する調心機構として、弾性リング64,67,68,74、球面凸部85、凸部92a,96aを設けている。
【0075】
従って、調心機構によりケーシング101と回転軸302との軸心が一致することとなり、ウエアリング63,73,92,97によるシール性能の低下を抑制することができる。
【0076】
また、実施例6のシール装置にでは、調心機構としての弾性部材として、弾性リング64,67,68,74、ウエアリング92,97を設けている。従って、製造コストの増加を抑制することができる。
【0077】
なお、上述した各実施例では、静止体であるケーシング側に本発明のシール装置を設け、回転体であるインペラや回転軸側との間でシール性を確保するように構成したが、回転体であるインペラや回転軸側に本発明のシール装置を設け、静止体であるケーシング側との間でシール性を確保するように構成してもよい。また、回転体側に本発明のシール装置を設け、別の回転体側との間でシール性を確保するように構成してもよい。
【0078】
また、上述した各実施例では、本発明のシール装置を遠心ポンプに適用して説明したが、遠心ポンプに限らず、別のポンプを有する回転機械に適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
11,21,61 シール装置
12,22,32,42,62,72,82,91,96 支持リング
13,23,33,43,51,56,63,73,92,97 ウエアリング
14 支持リング
15 取付ボルト
24a,24b,24c,24d,24e 傾斜連結面
32a,42a 係止溝
34a,44a 係止部
52a 傾斜連結面
57a 段付き面
64,67,68,74 弾性リング(調心機構、弾性部材)
85 円形突起部
101,201,301 ケーシング(外側支持体)
102,202 回転軸
106,203,204 インペラ(内側支持体)
302 回転軸(内側支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対回転自在に支持される一対の内側支持体と外側支持体との間に介装されるシール装置において、
前記内側支持体の外周部と前記外側支持体の内周部とのいずれか一方に固定される支持リングと、
複数の分割片が周方向に沿ったリング形状をなして前記内側支持体の外周部と前記外側支持体の内周部とのいずれか他方に所定隙間をあけて対向するように前記支持リングに装着される樹脂製のウエアリングと、
を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記ウエアリングは、前記複数の分割片が前記支持リングの内周部または外周部に密着して配置され、取付ボルトが前記支持リングを貫通して前記分割片に螺合することで、前記支持リングに固定されることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記複数の分割片は、端部同士が前記支持リングの径方向に重なるように連結されることを特徴とする請求項1または2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記複数の分割片は、一体に形成された係止部が前記支持リングの係止溝に係止することで、前記支持リングに装着されることを特徴とする請求項1または2に記載のシール装置。
【請求項5】
前記複数の分割片は、端部同士が前記支持リングの軸方向に重なるように連結されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のシール装置。
【請求項6】
前記内側支持体と前記外側支持体との軸心が一致するように調整する調心機構が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のシール装置。
【請求項7】
前記調心機構は、弾性部材を有することを特徴とする請求項6に記載のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−53542(P2013−53542A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191580(P2011−191580)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】