説明

シール部材

【課題】シール性の向上及び組付工数の低減を図ることができるシール部材を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジンのシリンダヘッド2に対してシリンダヘッドカバー1がボルト5により締結される締結構造体に、挿入支持されるインジェクタ3とシリンダヘッドカバーの貫通孔1aとの間をシールするシール部材4であって、
前記シリンダヘッドカバーの前記貫通孔及びこれの近傍に形成される前記ボルト用のボルト挿通孔1bの夫々に対応するインジェクタ用透孔部62及びボルト用ワッシャ部61を備えた基板部6と、該基板部における前記インジェクタ用透孔部の内周縁部分に固着され前記インジェクタの周体3aに弾接する弾性シール部7とよりなり、前記ボルトによって、前記基板部のボルト用ワッシャ部を介して前記シリンダヘッドカバーに締着固定されるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材に関し、詳しくは、エンジンのシリンダヘッドに直立配置されるインジェクタの周体と、シリンダヘッドカバーに形成されインジェクタが挿通される貫通孔との間をシールするシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述のシール部材として、下記特許文献1に記載されているものが挙げられる。下記特許文献1には、補強環とシール本体とを備え、シール本体におけるシールリップの先端部の根元側に蛇腹部を設け、インジェクターチューブに密接させるようにしたシール部材(インジェクションパイプシール)が開示されている。
これによれば、前記蛇腹部を設けることにより、インジェクターチューブに対するシールリップの先端部の偏心追随性が確保されているから、径方向のガタがあっても、インジェクターチューブに対してシールリップの先端部を全周に亙って確実に密接させることができるとされている。
【特許文献1】特開平7−317917号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に記載されているようなシール部材は、補強環に形成されたボルト孔にボルトを挿通させ、シリンダヘッドカバーに形成された螺子穴にボルトを螺着することにより、シール部材をシリンダヘッドカバーに締着させるものである。
この場合、前記ボルトはシリンダヘッドカバーにシール部材を締着させるためだけに機能するものであるため、別途シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに締結固定するボルトが必要であった。よって、これに付随して該ボルトに対応したボルト穴、ワッシャ部材などを別に設ける必要が生じ、インジェクタをシリンダヘッドに支持固定する部材も別途必要であるため、構成部材の部品点数が多くなり、コスト高を招くため、部品点数の削減が求められていた。
また、引用文献1に記載されているようなシール部材は、シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに組み付ける前に予めシール部材をシリンダヘッドカバーに取付ける工程が必要であるため、組付工数が多くなる点も問題視されていた。更に、シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに締結固定させるためのボルト用のワッシャ部材と、インジェクタの周体をシールするシール部材とは別部材となるため、双方に落下防止対策が必要となり、部品点数・組付工数の更なる増加を招くため、改善が求められている。
【0004】
本発明は、前記実情に鑑みなされたものであり、シール性の向上及び組付工数の低減を図ることができるシール部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るシール部材は、エンジンのシリンダヘッドに対してシリンダヘッドカバーがボルトにより締結される締結構造体に、挿入支持されるインジェクタとシリンダヘッドカバーの貫通孔との間をシールするシール部材であって、前記シリンダヘッドカバーの前記貫通孔及びこれの近傍に形成される前記ボルト用のボルト挿通孔の夫々に対応するインジェクタ用透孔部及びボルト用ワッシャ部を備えた基板部と、該基板部における前記インジェクタ用透孔部の内周縁部分に固着され前記インジェクタの周体に弾接する弾性シール部とよりなり、前記ボルトによって、前記基板部のボルト用ワッシャ部を介して前記シリンダヘッドカバーに締着固定されるものであることを特徴とする。
【0006】
本発明において、前記ワッシャ部のシリンダヘッドカバー側の面に弾性ワッシャシール部が固着されているものとすることができる。また前記弾性ワッシャシール部は、前記弾性シール部と一体に形成されているものとすることもできる。
また本発明において前記弾性シール部及び基板部は、夫々ゴム材及び金属板からなり、該弾性シール部は、ゴム材の加硫成型により金属板に一体固着形成されたものとすることができる。また前記ボルトは、更に、前記インジェクタをシリンダヘッドに支持固定する為の固定部を備えているものとすることもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシール部材は、シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに締結固定するためのボルトによって、シリンダヘッドカバーに締着されるものであるから、締着に用いられる夫々のボルトがシリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに締結固定し、且つシール部材をシリンダヘッドカバーに締着させる機能を奏するので、部品点数を低減させることができる。
よってシリンダヘッドカバーに予めシール部材を組付けておく工程を省くことができるので、シリンダヘッドにシリンダヘッドカバーを組付ける工程で、シール部材の取付けを行えばよいものとすることができ、部品点数の低減だけでなく、組付工数の低減も図ることができる。
【0008】
またシール部材は、ボルト用ワッシャ部及びインジェクタ用透孔部を備えた基板部と、インジェクタ用透孔部の内周縁部分に固着されインジェクタの周体に弾接するシール部とよりなるから、インジェクタの周体に弾接するシール部によってインジェクタと貫通孔との間を良好にシールすることができるとともに、インジェクタの脱着によりシール部材が脱落してしまうことがないものとすることができる。すなわち、例えばインジェクタをシリンダヘッドから取外しても、シール部材はボルト止めされ且つシール部は基板部に固着されているので、シール部材が脱落することがなく、脱落防止対策を講じる必要がないので、部品点数を低減することができる。
【0009】
更にワッシャ部のシリンダヘッドカバー側の面に弾性ワッシャシール部が固着されているものとすれば、ボルトによる締着力を強めることができるとともに、ボルト部分のシール性を維持することができる。またシリンダヘッドカバーの振動を吸収することができるのでシリンダヘッドカバーのソフト締結支持が可能となり、前記振動に起因する騒音も低減することができる。
【0010】
そして弾性ワッシャシール部は、弾性シール部と一体に形成されたものとすれば、シール部材のシリンダヘッドカバー側の面はシール材で構成されるので、シリンダヘッドカバーとシリンダヘッドとの締結部分のワッシャシール機能及びインジェクタシール機能が、この一体とされたシール部によって発現されることになり、シリンダヘッドカバーとシール部材との間のシール性を高めることができる。
【0011】
また弾性シール部及び基板部は、夫々ゴム材及び金属板からなり、弾性シール部が、ゴム材の加硫成型により金属板に一体固着形成されている場合、弾性シール部を基板部に加硫成型により一体固着させることができるので、簡単に製することができ、弾性シール部が基板部から脱落することがなく、ボルトによるシリンダヘッドカバーへの締着もスムーズに行うことができる。特に、弾性ワッシャシール部と弾性シール部とが一体とされている場合は、上述の両機能(ワッシャシール機能及びインジェクタシール機能)を備えたものが簡易に得られる。
【0012】
更にボルトは、インジェクタをシリンダヘッドに支持固定する為の固定部を備えているものとすれば、上述のように、シリンダヘッドカバーをシリンダヘッドに締結固定し、且つシール部材をシリンダヘッドカバーに締着させるだけでなく、インジェクタをシリンダヘッドに支持固定する機能も奏するものとすることができる。
よって部品点数を大幅に削減できるとともに、組付工程が簡略化することができ、インジェクタの周体をシールしながら、インジェクタをシリンダヘッドに安定して支持固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明における第1の実施形態のシール部材によってシリンダヘッドに挿入されたインジェクタをシールした状態を示す断面図、図2(a)は同シール部材の縦断面図、図2(b)は同シール部材の平面図、図3は同シール部材の変形例を示す図2(a)と同様図、図4は本発明における第2の実施形態のシール部材によってシリンダヘッドに挿入されたインジェクタをシールした状態を示す断面図である。
【0014】
まずは図1〜3に基づいて、本発明の第1の実施形態について説明する。
図は、本発明に係るシール部材4が、エンジンのシリンダヘッドカバー1に形成された貫通孔1aに挿入され、シリンダヘッド2に及ぶよう支持されるインジェクタ3の周体3aと、シリンダヘッドカバー1の貫通孔1aとの間をシールするものとして用いられた例を示している。
燃焼室(不図示)の一部を構成するシリンダヘッド2内に適正量の燃料を噴射する円柱形のインジェクタ3が貫通されるインジェクタ貫通孔2aが形成されており、該インジェクタ貫通孔2aを挟んだ両側にはシリンダヘッドカバー1を貫通したボルト5が挿通されるボルト穴2bが2箇所設けられており、ボルト穴2bには、ボルト5が螺着されるよう雌ねじが形成されている。
【0015】
シリンダヘッド2の上方には、下側開口のシリンダヘッドカバー1が覆い被さるように締結固定されており、シリンダヘッドカバー1には、インジェクタ3が挿通される貫通孔1aがシリンダヘッド2に形成されているインジェクタ貫通孔2aに対応して設けられている。貫通孔1aの近傍、すなわち貫通孔1aを挟んだ両側には前記ボルト穴2bに対応したボルト挿通孔1bが2箇所形成されている。シリンダヘッドカバー1の貫通孔1aの上端側周縁部には段差部1cが形成されており、該段差部1cには、後記するシール部材4のシール部7が、インジェクタ3の周体3aに弾接するよう及んで形成されている。またシリンダヘッドカバー1のボルト挿通孔1bの上端周縁部1eは後記シール部材4のワッシャシール部71の形状に対応して、段差状に形成されている。
【0016】
シール部材4は、SPCC鋼板などの金属材からなる基板部6と、弾性シール部7とよりなり、ボルト5によってシリンダヘッドカバー1に締着される。ボルト5はボルト頭5aの下方にボルト軸51を備えており、ボルト軸51はシリンダヘッドカバー1を貫通する筒部5bと、ボルト穴2bに形成された雌ねじと螺合する雄ねじが形成されたねじ部5cとを備えている。
基板部6は、図2(a)及び図2(b)に示すようにシリンダヘッドカバー1のボルト挿通孔1bに対応するボルト用ワッシャ部61と、貫通孔1aに対応するインジェクタ用透孔部62とを備えており、ワッシャ部61は透孔部62を挟んで2箇所形成されている。シール部7は、FKM、NBR、H−NBR、EPDM、CR、ACM、AEM、VMQ及びFVMQ等のゴム材からなり、ゴム材の加硫成型により基板部6に一体固着形成される。
よって、シール部7は基板部6に一体固着されているからシール部7自体がインジェクタ3の脱着により脱落することがない。
【0017】
シール部材4は、1本のインジェクタ3に対して2本のボルト5によって締着固定され、インジェクタ3の周体3aをシールし、該ボルト5は、シール部材4をシリンダヘッドカバー1に締着するだけでなく、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2に締結固定する機能も有している。
これによれば、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2に締結固定するためのボルト5によって、シリンダヘッドカバー1に締着されるものであるから、締着に用いられる夫々のボルト5がシリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2に締結固定し、且つシール部材4をシリンダヘッドカバー1に締着させる機能を奏するので、部品点数を低減させることができる。
よってシリンダヘッドカバー1に予めシール部材4を組付けておく工程を省くことができるので、シリンダヘッド2にシリンダヘッドカバー1を組付ける工程で、シール部材4の取付けを行えばよいものとすることができ、部品点数の低減だけでなく、組付工数の低減も図ることができる。
【0018】
基板部6におけるワッシャ部61のシリンダヘッドカバー1側の面には、ワッシャシール部71が、透孔部62の内周縁部分にはインジェクタシール部72が固着されている。
ワッシャシール部71は、上述のようにワッシャ部61の内周縁部分も含んでシリンダヘッド1側の面に固着され、インジェクタシール部72と一体に形成されている。ワッシャシール部71は、ワッシャ部61の内周縁部分より挿通されるボルト5に向かって突出した突部71aを備えている。
【0019】
これによれば、シール部材4は、ボルト用ワッシャ部61及びインジェクタ用透孔部62を備えた基板部6と、インジェクタ用透孔部62の内周縁部分に固着されインジェクタ3の周体3aに弾接するインジェクタシール部72を備えているから、インジェクタ3の周体3aに弾接するインジェクタシール部72によってインジェクタ3と貫通孔1aとの間を良好にシールすることができる。また、シール部材4はボルト5によりシリンダヘッドカバー1に締着されているから、インジェクタ3の脱着によりシール部材4が脱落してしまうことがないものとすることができる。すなわち、例えばインジェクタ3をシリンダヘッド2から取外しても、シール部材4はボルト5止めされ、且つワッシャシール部71及びインジェクタシール部72は基板部6に固着されているので、シール部材4が脱落することがなく、脱落防止対策を講じる必要がないので、部品点数を低減することができる。
更にワッシャシール部71は、ボルト5の締結に伴い、シリンダヘッドカバー1の上面と基板部6との間で、圧縮されて、ボルト5の締結部分をシールするとともに、その弾性によりシリンダヘッドカバー1の振動を吸収する。また上記圧縮に伴い突部71aが膨出した状態でボルト5に弾接するので、この部分でのシール性がより強化される。
【0020】
インジェクタシール部72は、シリンダヘッドカバー1に形成された段差部1cに及んでインジェクタ3の周体3aに弾接するように形成されており、周体3aに向けて突出した断面が山型の突出部72aと、段差部1aの側面1dに弾接する周突部72bとを備えている。該周突部72bは2箇所設けられている。
前記インジェクタシール部72によって、インジェクタ3の軸方向に上下振動が生じても、その振動を吸収することができ、インジェクタ3に傾きが生じても、インジェクタシール部72の突出部72aはインジェクタ3の周体3aに向けて突出しているので、インジェクタ3の振動に追従して弾性変形し、シール性を維持することができる。
尚、周突部72bの段差部1aの側面1dに対する締め代を適宜設定すれば、インジェクタシール部72のシリンダヘッドカバー1への仮組み付けを可能なものとすることができる。また基板部6及びシール部7の構成、形状は図例のものに限定されるものではなく、例えば3本のボルトで締着可能なようにワッシャ部を3箇所設けたもの、或いは突出部72aが複数形成されたものとしてもよい。更に周突部72bは2箇所に限定されるものではなく、1箇所或いは3箇所以上備えたものとしてもよい。
【0021】
シール部材4の組付手順は、まずシリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2の上方に配置する。このとき、シリンダヘッド2に形成されているインジェクタ貫通孔2a、ボルト穴2bと、シリンダヘッドカバー1に形成されている貫通孔1a、ボルト挿通孔1bとが対応するように位置合わせを行う。シール部材4を所定の組付箇所に配置し、シール部材4のボルト用ワッシャ部61の夫々にボルト5を挿通し、ボルト5を締着する。ボルト5はシール部材4の基板部6、シール部7、シリンダヘッドカバー1を貫通して、シリンダヘッド2のボルト穴2bに至り、ボルト穴2bに形成された雌ねじと螺着され、シリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー1とを締結固定するとともに、シール部材4をシリンダヘッドカバー1に締着させることができる。
【0022】
そして、シール部材4をシリンダヘッドカバー1に組付け、ボルト5による締着を行った後、インジェクタ3を透孔部62、貫通孔1a及びインジェクタ貫通孔2aに上方から挿入し、インジェクタ3の下方先端部からシリンダヘッド2内に適正量の燃料が噴射されるようインジェクタ3を配備し、不図示の固定具によりインジェクタ3を支持固定する。
このとき、インジェクタ3の周体には、インジェクタシール部72の突出部72aが弾接して圧縮変形し、インジェクタ3の周体に向かって復元弾力が生じる。また、インジェクタシール部72の周突部72bはインジェクタ3が配備されることにより、段差部1cの側面1dに圧接され圧縮変形する。そしてその復元弾力がインジェクタ3の周体に向かう押圧力となり、前記突出部72aの復元弾力との相乗効果により、インジェクタ3の周体とシリンダヘッドカバーの貫通孔1aとの間を強固にシールすることができる。
尚、シール部材4の組付手順は上述に限定されるものではない。
【0023】
図3はシール部材4の変形例を示すものであり、シール部7のインジェクタシール部72において、周突部72bが1箇所にしか設けられていない点と、インジェクタシール部72が基板部6の折曲部61cに回り込んで形成されている点が異なる。またワッシャシール部71とインジェクタシール部72とが一体形成されていない点でも異なる。
このように周突部72bが1箇所であっても、突出部72aがインジェクタ3の周体3aに弾接することにより、シール性を確保することができ、ワッシャ部61にボルト5を挿通し締着すれば、シリンダヘッドカバー1とシリンダヘッド2及び、シール部材4とシリンダヘッドカバー2を強固に締着することができる。
その他の構成は前記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0024】
次に図4に基づいて、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態におけるシール部材4のボルト9は、更に、前記インジェクタ3をシリンダヘッド2に支持固定する為の固定部8を備えている点及びボルトの構成が前記実施形態とは異なるものである。
ボルト9は上方と下方の両端に雄ねじ部9b、9cが形成されたスタッドボルトが用いられ、ボルト9の下端部は、基板部6のワッシャ部61、シリンダヘッドカバー1のボルト挿通孔1bを通じて、シリンダヘッド2に形成されたボルト穴2bに螺着される。図中、92はシリンダヘッドカバー1の押さえ部材である。
【0025】
ボルト9の上端部は、六角に形成された工具作用部9aが形成されており、ボルト9をシリンダヘッド2に締着させるための締付工具(不図示)に嵌合されるようになっている。固定部91はボルト9の上端の雄ねじ部9bと、これに螺合されるナット91とよりなる。図中8はインジェクタ3を固定する固定部材8であり、ナット91の鍔部91aによって押さえつけられている。固定部材8はインジェクタ3が挿通される貫通孔8aと、ボルト9が挿通されるボルト挿通孔8bとを備えており、ボルト挿通孔8bは前記貫通孔8aを挟んで両側2箇所に形成されており、インジェクタ3を支持固定するようにインジェクタ3の段部3bの上に配置される。
【0026】
シール部材4の組付手順及びインジェクタ3の固定支持工程を説明する。
まずシリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2の上方に配置する。このとき、シリンダヘッド2に形成されているインジェクタ貫通孔2a、ボルト穴2bの夫々と、シリンダヘッドカバー1に形成されている貫通孔1a、ボルト挿通孔1bとが対応するように位置合わせを行い、その後、シール部材4を所定の組付位置に配置する。シリンダヘッドカバー1の所定箇所を複数のボルト(不図示)によってシリンダヘッド2に締結固定するとともに、ボルト9をシール部材4のワッシャ部61及びシリンダヘッドカバー1のボルト挿通孔1bを介し、シリンダヘッド2のボルト穴2bに向けて挿入する。締付工具を工具作用部9aに嵌合させ、締付操作することにより、ボルト9の下端部の雄ねじ9cと、ボルト穴2bに形成された雌ねじが螺合し、締着される。このとき、押さえ部材92によってシール部材4がシリンダヘッドカバー1に強固に押し付けられ締結状態となる。
【0027】
そして、インジェクタ3を透孔部62、貫通孔1a及びインジェクタ貫通孔2aに上方から挿入し、インジェクタ3の下方先端部からシリンダヘッド2内に適正量の燃料が噴射されるようインジェクタ3を配備する。
この状態で固定部材8のボルト挿通孔8bをボルト9に挿通し、固定部材8をインジェクタ3の段部3bに配置して、ボルト挿通孔8bにナット91を挿通させて、固定部材8をナット91で固定する。
【0028】
以上によれば、ボルト9は、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2に締結固定し、且つシール部材4をシリンダヘッドカバー2に締着固定させるだけでなく、インジェクタ3をシリンダヘッド2に支持固定する機能も奏するものとすることができる。
よって部品点数を大幅に削減できるとともに、組付工程が簡略化することができ、インジェクタ3の周体3aを確実にシールしながら、インジェクタ3をシリンダヘッド2に安定して支持固定することができる。
【0029】
尚、インジェクタ3、シリンダヘッド2、シリンダヘッドカバー1、シール部材4などの構成、形状は図例のものに限定されず、エンジンもDOHC式エンジン、SOHC式エンジンのシリンダヘッド2に配置されるインジェクタ3のシール部材として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における第1の実施形態のシール部材によってシリンダヘッドに挿入されたインジェクタをシールした状態を示す断面図である。
【図2】(a)は同シール部材の基板部とシール部の縦断面図、(b)は同シール部材の基板部とシール部の平面図である。
【図3】同シール部材の基板部とシール部の変形例を示す図2(a)と同様図である。
【図4】本発明における第2の実施形態のシール部材によってシリンダヘッドに挿入されたインジェクタをシールした状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 シリンダヘッドカバー
1a 貫通孔
1b ボルト挿通孔
2 シリンダヘッド
3 インジェクタ
3a 周体
4 シール部材
5、9 ボルト
6 基板部
61 (ボルト用)ワッシャ部
62 (インジェクタ用)透孔部
7 (弾性)シール部
71 (弾性)ワッシャシール部
72 (インジェクタ)シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダヘッドに対してシリンダヘッドカバーがボルトにより締結される締結構造体に、挿入支持されるインジェクタとシリンダヘッドカバーの貫通孔との間をシールするシール部材であって、
前記シリンダヘッドカバーの前記貫通孔及びこれの近傍に形成される前記ボルト用のボルト挿通孔の夫々に対応するインジェクタ用透孔部及びボルト用ワッシャ部を備えた基板部と、該基板部における前記インジェクタ用透孔部の内周縁部分に固着され前記インジェクタの周体に弾接する弾性シール部とよりなり、
前記ボルトによって、前記基板部のボルト用ワッシャ部を介して前記シリンダヘッドカバーに締着固定されるものであることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
請求項1に記載のシール部材において、
前記ワッシャ部のシリンダヘッドカバー側の面に弾性ワッシャシール部が固着されていることを特徴とするシール部材。
【請求項3】
請求項2に記載のシール部材において、
前記弾性ワッシャシール部は、前記弾性シール部と一体に形成されていることを特徴とするシール部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシール部材において、
前記弾性シール部及び基板部は、夫々ゴム材及び金属板からなり、該弾性シール部は、ゴム材の加硫成型により金属板に一体固着形成されたものであることを特徴とするシール部材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のシール部材において、
前記ボルトは、更に、前記インジェクタをシリンダヘッドに支持固定する為の固定部を備えていることを特徴とするシール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−236219(P2009−236219A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83157(P2008−83157)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(390033835)広島アルミニウム工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】