説明

ジアミノジニトロピリジンおよびジアミノジニトロベンゼンの合成

アミノピリジンまたはアミノベンゼンをオレウムおよび硝酸と接触させることにより、ジアミノジニトロピリジンまたはジアミノジニトロベンゼンを調製するための方法であって、上記のアミノピリジンまたはアミノベンゼンに基づき少なくとも約1%モル過剰の硝酸を少なくとも2時間にわたって攪拌しながら添加して、最初に中間体スルホン酸、続いてジアミノジニトロピリジンまたはジアミノジニトロベンゼンを生成する工程を含む方法、ならびに剛直棒状ポリマーの調製における上記の生成物の使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンおよびジアミノジニトロベンゼンは、フィルム、フィラメントおよび糸(yarn)の製造に用いられる「剛直棒状」ポリマー製造用の前駆体の調製用の中間体である。そのような剛直棒状ポリマーの例である、ポリ[ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ヒドロキシ−p−フェニレン)]またはポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)が、米国特許第5,674,969号明細書にSikkemaらにより記載されている。2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンは、低感度(安全)爆薬および多官能価有機試薬としても用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンは、2,6−ジアミノピリジンのニトロ化により調製される。硝酸と硫酸との混合物との反応による2,6−ジアミノピリジンのニトロ化は、独国特許第3,920,336号明細書から知られている。この方法の欠点は、この方法により得られる2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンの収率が、理論の50%以下にしかならないことである。
【0003】
米国特許第5,945,537号明細書において、Sikkemaらは、オレウム(発煙硫酸)を用い、単段階反応において2,6−ジアミノピリジンを2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンに変換するための改良された方法を記載している。ジアミノピリジンをオレウムに添加し、次いで濃硝酸を添加し、その生成物を単離する。90%を超える収率への改善が得られた。
【0004】
2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンおよび対応するジアミノジニトロベンゼンを製造するための先行技術の方法は、様々な量のこれまでに同定されていない不純物を含む生成物を生じる傾向がある。これらの不純物の組成、ならびに2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンおよび対応するジアミノジニトロベンゼンを用いて作製された製品に対するこれらの不純物の影響は知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不純物を含まない高収率を与える、ジアミノジニトロピリジンおよびジアミノジニトロベンゼンの調製のためのニトロ化方法を見出すことが望まれる。不純物の組成を同定することも望まれる。また、約25dL/gの最低内部粘度を有する剛直棒状ポリマーを作製する方法を見出すことも望まれる。本発明は、主要な不純物のうちの1つを同定し、そのような方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1)アミノピリジンまたは2)アミノベンゼンを、オレウムおよび硝酸と接触させることにより、それぞれ、1)ジアミノジニトロピリジンまたは2)ジアミノジニトロベンゼンを調製するための方法であって、それぞれ、アミノピリジンまたはアミノベンゼンに基づき少なくとも約1%モル過剰の硝酸を少なくとも2時間にわたって攪拌しながら添加して、最初に、それぞれ、1)アミノニトロピリジンスルホン酸または2)アミノニトロベンゼンスルホン酸、次いで、それぞれ、1)ジアミノジニトロピリジンまたは2)ジアミノジニトロベンゼンを生成する工程を含む方法を含む。
【0007】
本発明は、2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含む組成物をさらに含む。
【0008】
本発明は、1)2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロピリジン、または2)2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンを精製するための方法であって、それぞれ、1)前記ジアミノジニトロピリジンまたは2)前記ジアミノジニトロベンゼンを、オレウム、およびジアミノジニトロピリジンまたはジアミノジニトロベンゼンに基づき少なくとも約1%モル過剰の硝酸と、少なくとも2時間にわたって攪拌しながら接触させて、それぞれ、1)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を有するジアミノジニトロピリジン、または2)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を有するジアミノジニトロベンゼンを生成する工程を含む方法をさらに含む。
【0009】
本発明は、少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を調製するための方法であって、
A)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロピリジンを水素化してテトラアミノピリジンを生成する工程と、
B)前記テトラアミノピリジンをジヒドロキシテレフタル酸二カリウムとカップリングしてテトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を生成する工程と、
C)前記テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を重合させて少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を生成する工程と
を含む方法をさらに含む。
【0010】
本願発明は、少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラアミノベンゼン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を調製するための方法であって、
A)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンを水素化してテトラアミノベンゼンを生成する工程と、
B)前記テトラアミノベンゼンをジヒドロキシテレフタル酸二カリウムとカップリングしてテトラアミノベンゼンジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を生成する工程と、
C)前記テトラアミノベンゼンジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を重合させて少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラアミノベンゼン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を生成する工程と
を含む方法をさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、商標は大文字を用いて示される。本明細書において用いられる化学略語を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
本発明は、アミノニトロピリジンおよびアミノニトロベンゼンを、それぞれ、アミノピリジンおよびアミノベンゼンから調製するための方法を含む。具体的には、2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンが、2,6−ジアミノピリジンまたはその硫酸との中和生成物である2,6−ジアミノピリジンヘミスルファートから調製される。この反応は、2,6−ジアミノピリジン(DAP)または2,5−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPH)を、少なくとも2時間にわたって攪拌しながらオレウムおよび濃硝酸と接触させることにより行われる。本発明の方法により生成される2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンは、先行技術の方法により生成されるものよりも純粋であり、有害な副生成物を含んでおらず、剛性棒状ポリマー(例えば、ポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)(M5ポリマー))の調製における中間体であるより純粋な2,3,5,6−テトラアミノピリジンを生成する。それにより生成されるM5ポリマーは、より高い内部粘度(IV)、およびg(力)/デニールまたはg(力)/texとして測定される増大したテナシティを有する。高強度の繊維には、高引張強度が望まれる。M5ポリマーには、35〜40g(力)/デニールの値が望まれる。
【0014】
本発明の改良されたニトロ化方法はまた、m−ジアミノベンゼンをニトロ化してジアミノジニトロベンゼンを提供するためにも利用され得る。後者の生成物の水素化は、類似の剛性棒状コポリマーであるポリ(1,2,4,5−テトラアミノベンゼン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)のための中間体1,2,4,5−テトラアミノベンゼンを生成する。テトラアミノベンゼンおよび最終生成物コポリマーにおける改善は、2,6−ジアミノピリジンの方法の場合と同様に、本発明の方法の使用の結果として生じる。
【0015】
以下の検討および実施例では、ジアミノジニトロピリジンについて詳細に述べる。全てのそのような詳細な記述はまた、ジアミノジニトロベンゼンの調製および使用にも適用される。
【0016】
本方法には、2,6−ジアミノピリジン(DAP)から始まる一連の反応が関与して、第一スルホン酸中間体である2,6−ジアミノピリジン−3−スルホン酸(DAPSA)が生成され、この第一スルホン酸中間体は、第二スルホン酸中間体である2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸(DANPS)に直ちにニトロ化されることが見出された。DAPのニトロ化中の2,6−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPH)の最初の形成は公知であるが、このニトロ化が、2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(DADNP)の合成において、中間体化合物2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸(DANPS)を経由して進行するという事実は、以前には認識も報告もされていなかった。DANPSの比較的迅速な形成の後に、DANPSからDADNPへのより緩慢なニトロ化が続く。この最後の反応を完了させるには、反応混合物を約2時間〜約4時間、好ましくは約4時間にわたり、周囲温度にて攪拌しなければならない。これらの反応を、反応順序1に示す。
【0017】
【化1】

【0018】
反応順序1
2,6−ジアミノピリジン−3−スルホン酸(DAPSA)は、2,6−ジアミノピリジン(DAP)または2,6−ジアミノピリジンヘミ硫酸塩(DAPH)を低温のオレウムと接触させると生成される。オレウム濃度は、約10%〜約30%オレウム、好ましくは約20%である。オレウムは、約−5℃〜約25℃、好ましくは約0℃〜約10℃の温度で添加される。以前には、これは、オレウムへの2,6−ジアミノピリジンヘミ硫酸塩(DAPH)の単純な溶解であると間違って考えられていた。本発明の方法において、濃(98%)硝酸を、オレウム溶液中の2,6−ジアミノピリジン−3−スルホン酸(DAPSA)にゆっくりと添加すると、第1化学量論量の硝酸から、最初の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸(DANPS)が直ちに生成される。第2化学量論量の濃(98%)硝酸を添加すると、第2のニトロ基がスルホン酸基と置換して2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(DADNP)を生成する。第2のニトロ化は、より緩慢な工程である。本発明の方法において、僅かに過剰の硝酸が使用されるが、反応は、スルホン酸基が完全に置換されるのに十分な時間にわたって攪拌される。典型的に、これは、約5℃〜約30℃、好ましくは約20℃〜約25℃の温度において、約2時間〜約4時間である。硝酸は、段階的に増量しながら、または1回添加もしくは連続添加により添加され得る。ごく僅かに過剰の硝酸(約1〜3%)が、スルホン酸基を完全に除去するために必要とされる。周囲温度における長時間の攪拌が用いられる。
【0019】
この中間体の形成の重要性は、DADNP中の残留汚染物としてのDANPSが、このDADNPを用いて作製される、後に続く製品の品質に悪影響を与える点である。先行技術においては攪拌時間の長さの重要性は認識されておらず、その結果、2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(DADNP)生成物は、様々な残留量の2,6−ジアミノ−3−ニトロ−5−スルホン酸(DAPSA)を含んでいた。同様に、そのような化合物から調製されるM5ポリマーには大きなばらつきがあり、相対的に低品質である。本特許の目的のために、M5ポリマーの外観および品質は、淡紫色の、少なくとも25dL/gの内部粘度(IV)を有するポリマーである。M5ポリマーのそのようなより高いIV値は、g(力)/デニールとして測定される、より高い破断強度(テナシティ)を有する高品質の繊維を提供する。本発明の方法により調製されるDADNPのDANPS含有量は、約0.1重量%未満、好ましくは約0.05重量%未満である。HPLCによるDANPSの検出限界は、約0.05重量%である。
【0020】
先行技術の方法によりジアミノジニトロピリジン(DADNP)を作製する場合に起こり得る第2の不純物は、温度の上昇により高められる反応であるアミン基の加水分解によって形成される2−ヒドロキシ−6−アミノ−3,5−ジニトロピリジン(HADNP)である。望まれていない場合には、HADNPは、典型的に、M5ポリマーを作製するために用いられる水素化工程の間およびカップリング工程の間に除去される。HADNPはまた、HADNPを濾過工程および洗浄工程において容易に除去するのに十分に、硫酸および水酸化アンモニウムの水溶液に溶解し得る。本発明の方法により調製されるDADNPのHADNP含有量は、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満である。しかしながら、硫酸および水酸化アンモニウム処理後のHADNP含有量が依然として1%を超えるならば、この不純物は、それから作製されるM5ポリマーの内部粘度および繊維強度を低減させ得る。DADNP中のHADNPの高残留レベル(約1%より高い)は、高温のジメチルアセトアミド(DMAC)からDADNPを再結晶化することにより、または炭酸カリウムの5%水溶液で水性DADNPスラリーを処理し、続いて比較的溶け難いDADNPの水洗および乾燥を行うことにより、1%レベルより下に容易に下げられる。水酸化アンモニウム水溶液を、炭酸カリウム溶液の代わりに用い得る。下記の実施例3は、残留HADNPの除去を示している。HADNP含有量は、1H NMRにより定量される。
【0021】
同様に、主にピリジニウム塩として存在する残留硫酸は、後に続く水素化工程における水酸化アンモニウムとの中和後に除去される。ピリジニウム塩としての残留硫酸の定量は、プロトンNMRまたは塩基滴定により行われる。塩基滴定結果は、スルホン酸不純物の硫酸塩当量も含む。
【0022】
本発明の方法は、約90%〜約96%の収率を提供する。本発明の方法は、2,6−ジアミノピリジンヘミ硫酸塩中間体の調製および単離を、選択肢としては残すが、必要としない。最終的なジアミノジニトロピリジン生成物において望ましくない2,6−ジアミノ−3−ニトロスルホン酸(DANPS)中間体は、長時間の攪拌の結果、硝酸と反応して所望のジアミノジニトロピリジン生成物を生成することになるため、単離される必要はない。したがって、本発明の方法は、下流のポリマーおよびそれから作製される製品を汚染し得る不純物として生成物中にそのような中間体を存在させない。
【0023】
剛性棒状ポリマー(例えば、M5ポリマー)の作製において、DADNPが水素化されてテトラアミノピリジンを生成し、次いで、これをジヒドロキシテレフタル酸二カリウムとカップリングして複合体を生成後、その複合体を重合させる。DADNP中のDANPSが、2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンから2,3,5,6−テトラアミノピリジンへの水素化工程において用いられる貴金属触媒の作用を阻害することも見出された。理論に束縛されることを望むわけではないが、水素化の間にほんの僅かな量(0.25%未満)のスルホン酸中間体DANPSが存在しても、2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンの2,3,5,6−テトラアミノピリジンへの還元の間のヒドロキシルアミンのN−N二量体化の結果として、染料様ジアゾ化合物の形成を引き起こすと考えられる。一旦形成されると、これらのジアゾ不純物の除去は、良くても極めて困難である。このジアゾ不純物が、有色の2,3,5,6−テトラアミノピリジン溶液に繋がり、次いで、2,3,5,6−テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムとの赤茶色の複合体(TAP/K2−DHTA複合体)に繋がると考えられる。DANPS不純物はまた、連鎖停止剤または連鎖移動剤として作用し、その結果、ポリマー鎖中に弱点、従って、低内部粘度(IV)を有するより脆弱な繊維を生じる可能性を有する。先行技術の方法を用いると、約4dL/g〜高くても約21dL/gのIV値しか得られない。この先行技術のIV範囲における高い方の値は、溶媒(例えばテトラヒドロフラン(THF)、アセトン、またはジメチルホルムアミド)を用いた精製工程による、重合前のDANPSの除去後にしか得られない。第一に、高IVのM5ポリマーの調製には、25dL/g以上のIV値を有するDADNPが好ましく、かつ必要である;第二に、DANPS精製工程の必要性を回避することが、非常に好ましい。本発明の方法により調製される2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンを用いる剛性棒状ポリマーおよび繊維の調製において、2,3,5,6−テトラアミノピリジンへの水素化工程は、より速く、より完全に進行し、より少量の貴金属触媒を必要とする。前述のとおり、DANPSの存在は、少量であっても、担持プラチナまたは担持ロジウム貴金属触媒の作用を阻害するようである。本発明の方法により調製される2,3,5,6−テトラアミノピリジンからのポリマーは、一貫して30dL/g以上の高い内部粘度値を生じた。
【0024】
本発明の方法は、ガラスまたは反応混合物と適合性の他の材料で作られた、好適に攪拌される反応容器中で行われる。ステンレス鋼(例えば、SS304またはSS316ステンレス鋼)が、過剰の硝酸により不動態化されるため使用され得る。反応容器は、三酸化硫黄を凝縮するための還流凝縮器を必要に応じて備えている。湿気の侵入を妨げるために、乾燥デバイスが設けられる。より規模の大きなプロセスにおいては、閉鎖され、僅かに加圧され、窒素パージされる反応器が用いられる。反応容器は、加熱および冷却の方法、および反応塊の温度を測定するための手段をさらに含む。次の発熱ニトロ化反応に備え、2,6−ジアミノピリジンを、約5℃〜約15℃の温度にて過剰の20%オレウム中でスラリーにし、次いで、約0℃に冷却する。20%オレウムの量は、98%硝酸中の水およびニトロ化反応の間に生成される水全てと反応するのに必要とされる量に対して約10%過剰の三酸化硫黄を提供するのに十分な量である。僅かに過剰の濃(98%)硝酸を、15℃を超えない温度にて攪拌しながらゆっくりと添加した。硝酸の量は、アミノピリジンのニトロ化に必要とされる化学量論量および必要とされる置換の程度に基づき約2%〜約5%の過剰モル比の硝酸を提供するのに十分な量である。固体が溶解して均一な暗褐色の溶液を生じるまで(少なくとも15分間)、反応塊を5℃〜15℃にて攪拌する。この反応塊を周囲温度に到達させ、約2時間〜約4時間(4時間が好ましい)攪拌して第2のニトロ化を生じさせる。次いで、この反応塊を、5℃を超えない、好ましくは0℃を超えない温度にて、冷却した(−10℃〜−20℃)20%硫酸(最初の2,6−ジアミノピリジンの約25倍〜約35倍の重量)に浸漬した。脱イオン水(最初の2,6−ジアミノピリジンの約5倍〜約10倍の重量)を室温にて添加し、この混合物を1時間攪拌した。次いで、浸漬した塊を室温にて濾過し、濾過ケークを、脱イオン水、5%NH3水溶液、次いで、脱イオン水で、順に洗浄した。各洗浄液は、最初の2,6−ジアミノピリジンの重量の約5倍と約10倍の間である。固体生成物を、任意の適切な方法(窒素吹き付けおよび真空吸引、遠心分離などを含むが、これらに限定されない)により乾燥させる。2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンの収率は、約95%である。
【0025】
20%H2SO4は、水中でのクエンチと比較して大きな粒径を与え、濾過、洗浄および乾燥を容易にすることから、20%H2SO4中で反応混合物をクエンチすることが、2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンの沈殿に好ましい。
【0026】
第二の実施形態において、本発明は、組成物2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸(DANPS)をさらに含む。これは上記の本発明の方法の間に形成された中間体であり、ジアミノジニトロピリジン生成物において望ましくない。2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸は、オレウムに2,6−ジアミノピリジンまたは2,6−ジアミノピリジンヘミ硫酸塩を溶解させて2,6−ジアミノピリジン−3−スルホン酸を生成し、その結果生じる溶液をある化学量論量の濃(98%)硝酸で処理することにより調製される。その結果生じる2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を、この反応混合物を過剰の20%硫酸にゆっくりと浸漬し、続いて濾過し、濾過ケークを水および5%水酸化アンモニウム水溶液で洗浄し、乾燥させることによって単離する。2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸は、化学中間体として(例えば、染料中間体として)有用である。
【0027】
本発明は、i)0.1%未満、好ましくは0.05%未満のDANPS;および(ii)1%未満、好ましくは0.5%未満のHADNPを含む、上記のとおりの本発明の方法によって調製される2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジンをさらに含む。
【0028】
本発明は、1)2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロピリジン、または2)2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンを精製するための方法であって、それぞれ、1)前記ジアミノジニトロピリジンまたは2)前記ジアミノジニトロベンゼンを、オレウム、およびジアミノジニトロピリジンまたはジアミノジニトロベンゼンに基づき少なくとも約1%モル過剰の硝酸と、少なくとも2時間にわたって攪拌しながら接触させて、それぞれ、1)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を有するジアミノジニトロピリジン、または2)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を有するジアミノジニトロベンゼンを生成する工程を含む方法をさらに含む。
【0029】
したがって、上記のとおりの本発明の方法は、2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸(DANPS)で汚染されている、もしくはDANPSを含むジアミノジニトロピリジンの再ニトロ化、または2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸で汚染されている、もしくは2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンの再ニトロ化のために用いられ得る。そのような汚染されたジアミノジニトロピリジンまたはジアミノジニトロベンゼンは、先に記載した条件と同じ条件を用いる方法において出発物質として用いられる。本発明の再ニトロ化または精製方法は、典型的に、0.1%未満、好ましくは0.05%未満のDANPSを含むジアミノジニトロピリジン、または0.1%未満、好ましくは0.05%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンを生成する。
【0030】
本発明は、上記のとおりの本発明の方法を用いて調製されたジアミノジニトロピリジンを用いて剛性棒状ポリマー、特にM5ポリマーを作製するための方法をさらに含む。そのようなジアミノジニトロピリジンは、DANPSを含まないか、または0.1%未満のDANPSを含むため、得られた剛性棒状ポリマーは、少なくとも25dL/gの内部粘度を有する。M5ポリマーを作製するための本発明の方法は、
A)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロピリジンを水素化してテトラアミノピリジンを生成する工程と、
B)前記テトラアミノピリジンをジヒドロキシテレフタル酸二カリウムとカップリングしてテトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を生成する工程と、
C)前記テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を重合させて、少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を生成する工程と
を含む。
【0031】
上記の工程B)において生成される複合体は、M5モノマーとも呼ばれ、以下の式1の構造を有する。最終M5ポリマーは、下記の式2(式中、nは重合度である)の構造を有する。
【0032】
【化2】

【0033】
テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体(M5モノマー)は、テトラアミノピリジンの水溶液を2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムのアルカリ性溶液に添加することにより調製される。この調製は、脱気脱イオン水および窒素パージを用い、酸素を厳格に排除して実施される。M5モノマーを沈殿させ、濾過する。M5モノマーの調製は、湿潤ケークを脱気脱イオン水で洗浄し、最後に高温窒素で洗い流し、乾燥させることにより完了する。M5モノマーは、乾燥していると、典型的に、非常に優れた品質および安定性を有する。このモノマーを用い、ポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)(M5ポリマー)は、以下の工程を用いて調製される。テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタレートおよびポリリン酸から、スラリーを調製する。そうして得られたスラリーを、約100℃にて約1時間の間、ホモジナイズする。約140℃にて約1時間の間、この混合物の攪拌を続ける。温度を約180℃に急速に上昇させて、残っている2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムを溶解させ、次いで、約180℃にて約0.3時間〜約2.5時間、好ましくは、約1時間〜約2.5時間の間、重合させる。ポリマーは、約10重量%〜約21重量%の範囲内の濃度で調製される。より高い分子量には、ポリリン酸溶液中のポリマー濃度は、好ましくはそれよりも低い(例えば、約14重量%〜約18重量%)。後に続く糸の紡糸には、この濃度は、好ましくは、約12重量%〜約19重量%の範囲内である。
【0034】
重合反応から得られた混合物は、繊維、フィルムもしくはテープへの紡糸または押出のために直接用いられる。直接に紡糸または押出され得る溶液を得るために、P25/H2O溶媒系中のP25の濃度は、反応終了後、少なくとも79.5重量%〜84重量%であることが望ましい。84重量%より高い濃度では、ある状況下において粘度が高く上昇し過ぎることを防ぐために、重合反応中に連鎖停止剤(例えば、安息香酸)を存在させる必要があり得る。最終工程は、水、水酸化アンモニウム溶液、そして水を順に用いる、繊維、フィルムまたはテープの押出を含む。繊維、フィルムまたはテープの調製についての更に詳細な記述が、米国特許第5,674,969号明細書において提供されている。
【0035】
本発明の方法について、バッチ方法が上記され、下記の実施例において記載されるが、本発明は、より大きな生産量の製造のための連続方法をさらに含む。連続方法は、典型的に、反応条件(例えば、温度)のより厳格な制御を提供する。したがって、連続加工は、製品の改善された品質、製品の改善された均質性、および経済的利益をもたらす。
【0036】
さらなる実施形態において、本発明のニトロ化方法は、他のニトロ化に適用し得る。例えば、ジアミノベンゼン、特に、m−ジアミノベンゼンのニトロ化にも有益である。m−ジアミノベンゼンの場合は、生成される1,3−ジアミノ−4,6−ジニトロベンゼンの品質に同様な改善がある。後者の化合物は、類似の剛性棒状コポリマーであるポリ(1,2,4,5−テトラアミノベンゼン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)の調製のための中間体である、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンに、同様に、還元され得る。こうして生成された最終生成物のコポリマーは、改善されたテナシティおよび内部粘度を有する。
【0037】
本発明の方法は、約0.1重量%未満の望ましくない中間体を含むジアミノジニトロピリジンおよびジアミノジニトロベンゼンを調製するのに有用である。そのようなジアミノジニトロピリジンおよびジアミノジニトロベンゼンは、約25dL/g未満の内部粘度を有する剛性棒状ポリマーを作製するための本発明の方法に有用である。
【0038】
材料および試験方法
以下の材料および試験方法が、本明細書の実施例において用いられた。
1)硝酸(98%)を、El Dorado Chemical Company(El Dorado,AR)から入手した。
2)2,6−ジアミノピリジン(DAP)を、Alkali Metals,Inc.(Hyderabad,India)から入手した。
3)20%オレウムを、本件特許出願人(Wilmington,DE)から入手した。
4)2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウム
2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムを、公知の「コルベ−シュミット」型の反応でヒドロキノンから調製した。ヒドロキノンを炭酸カリウムおよびギ酸カリウムと混合し、後者は、溶融すると溶媒として作用した。この混合物を、攪拌しながら200℃に加熱して、均一溶液を生成させた。過剰の二酸化炭素を、約8時間の間、この攪拌された溶液に通気した。過剰の二酸化炭素は、必要に応じ、リサイクルされ得る。反応塊を水に浸漬し、濾過した。この浸漬され、攪拌された反応塊を濾過すると、溶解性の乏しい2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムを、水溶性のギ酸カリウムおよび炭酸カリウムから分離した。
5)2,6−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPH)
2,6−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPH)を以下のとおりに調製した。温度制御手段および液体添加漏斗を備えた5L丸底フラスコに、水(脱イオン水、2L)および2,6−ジアミノピリジン(DAP 500g)を加え、この混合物を攪拌して溶液を生成した。温度を上昇させ、次いで45℃〜55℃に維持する速度で、硫酸(96%、334g、化学量論量)を添加した。硫酸を添加すると、発熱が生じた。この溶液は、恐らくはDAPの少量の水溶性酸化生成物が発生したために、反応の間に褐色になった。2,6−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPHまたはDAP・1/2H2SO4)のオフホワイトの結晶が、硫酸を添加すると沈殿した。終点pHを、約pH3〜約pH5の間、好ましくは約4のpHに調節した。必要な最終調整はいずれも、少量の硫酸を補足的に添加してpHを低下させるか、または少量のDAPを補足的に添加してpHを上昇させることにより行った。次いで、反応混合物を、室温に冷却し、濾過した。湿潤結晶濾過ケークを水(800mL)で一回、工業用変性2Tエタノール(7.5%トルエンで変性させた、7.5%の水を含むエタノール)または水(800mL)で一回洗浄した。次いで、この結晶を、75℃および30.5kPaにて真空オーブンで乾燥させた。25℃において、DAPヘミスルファートの溶解度は、水中で約1.5%、エタノール中では0.15%未満であった。従って、一連の調製において、収率を最大にするために、少量の溶解したDAPHを含む濾過水および洗浄液を、必要に応じ、後に続く調製において再利用し得る。このリサイクルを行った場合、DAPHの収率は、98%〜99%であった。
6)DARCO G60は、液体から色を除くための活性炭粉末であり、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI)から得た。
7)全ての実施例で用いた水は、脱イオン水である。
【0039】
試験方法1.内部粘度の測定
M5ポリマーの内部粘度(IV)を、ASTM D5225−92に基づく自動化方法に従い、50/50重量%トリフルオロ酢酸/塩化メチレンに、19℃にて4g/Lの濃度で溶解させたポリマーについて、Viscotek Forced Flow Viscometer Y900(Viscotek Corporation(Houston,TX))で測定した粘度を用いて決定した。測定されたM5ポリマーのIV値を、ASTM D4603−96に従い、60/40重量%フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンにおいて手動で測定したIV値と関連づけた。
【0040】
試験方法2.テナシティ
以下の実施例において報告される糸の物性を、Instron Corp.Tensile Tester,Model No.1122(Instron Corp.(Canton MI))を用いて測定した。具体的には、テナシティを、ASTM D−2256に従って測定した。
【実施例】
【0041】
実施例1
機械的攪拌器、モイスチャートラップ、熱電対、冷却用ドライアイス/アセトン浴を備えた3L丸底フラスコに、20%オレウム(硫酸に20%三酸化硫黄を含む、1350g)を加えた。このフラスコ中の酸を、10℃に冷却した。2,6−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPH、316.4g、2モル、DAPから調製)を、温度を15℃〜25℃に維持しながら、30分かけて少しずつ添加した。次いで、固体が溶解して暗褐色の均一溶液を生じるまで、反応塊を15℃にて攪拌した。次いで、この溶液を0℃に冷却し、温度を15℃より低く維持しながら98%硝酸(270g、5%過剰)を滴下した。硝酸添加の完了後、ニトロ化生成物を、21℃にて2時間攪拌し、次いで、下記のとおり希硫酸溶液中でクエンチした。
【0042】
機械的攪拌器、オーバーヘッドコンデンサー、熱電対、冷却用ドライアイス/アセトン浴、および添加漏斗を備えた12L丸底フラスコに、20%硫酸(6.7kg)を加えた。実際には、先のニトロ化からの母液をリサイクルし、希釈することによって20%硫酸を調製した。この酸溶液を−5℃〜−10℃に冷却し、上記で調製されたニトロ化生成物を、12Lフラスコ中の温度を−5℃より低く維持しながら、添加漏斗を通して滴下した。2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(DADNP)の明黄色の結晶が沈殿した。この添加の完了後、脱イオン水(1L)を添加し、混合物を室温にし、室温にて1時間攪拌した。このDADNPスラリーを、フリットガラス濾過器で濾過し、湿潤ケークを室温にて水(1L)で3回洗浄した。この濾過ケークを、脱イオン水、5%NH3水溶液、次いで脱イオン水で順に洗浄した。各洗浄液は、最初の2,6−ジアミノピリジンの重量の約5倍〜約10倍の間であった。粗DADNP(360g、収率90%)は、1.05%HADNPを含み、HPLCにより検出可能なDANPSは含まなかった(0.05%未満)。
【0043】
粗DADNP試料を、同様な試験からの別のより少量の試料と合わせ、THF(1L)およびアンモニア水(1.3L、7%アンモニア)中の合わせたDADNP試料(474g)を、週末(2日)の間、50℃にて再度攪拌することにより精製した。湿潤ケークを水(500mL×2)で洗浄し、真空オーブンで85℃にて恒量まで乾燥して、明黄色のふわふわした(fluffy)DADNP(460g、精製収率97%)を得た。HPLC分析は0.5%HADNPを示し、DANPSは検出不可能であったが、1H NMR分析はHADNPまたは硫酸を全く示さなかった。
【0044】
上記のとおりに調製された精製DADNP(97g、0.49モル)の試料を、水素化により、2,3,5,6−テトラアミノピリジン(TAP)に変換した。DANDPを、脱気脱イオン水(500g)、5%担持Pt触媒(Degussa F101、1g乾燥量基準)およびアンモニアガス(10g)とともに1Lオートクレーブに入れた。オートクレーブの閉鎖および不活性化(inert)後、スラリーを65℃に温め、65℃および125psig(963kPa)にて水素ガスを反応塊に通気させて、水素吸収が止まるまで(典型的には1時間〜2時間)処理した。高度に酸素感受性のTAP水溶液(10%〜12%)を、活性炭(DARCO G60、10g)を用い、インサイチューで窒素ブランケット下にて精製し、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウム(K2−DHTA、126g、0.47モル、2.2L 脱気脱イオン水)の塩基性(pH9〜10)水溶液中に濾過した。オートクレーブを2回すすぎ、各すすぎには脱気脱イオン水(100g)を用い、これらの洗浄液を濾液に加えた。
【0045】
以下の、滴定、濾過、洗浄および乾燥のプロセス工程の全てを、酸素を含まない窒素雰囲気下で行った。塩基性TAP/K2−DHTA溶液(3L)および25%リン酸(200mL)溶液を、pHを4.5および温度を50℃に維持しながら、ゆっくりと、同時に、水(700mL)を含むジャケット付き攪拌ガラス反応器に供給した。この滴定により、TAP/K2−DHTA複合体(M5ポリマーを作製するためのM5モノマー)の明黄色の結晶が瞬時に形成された。TAP/K2−DHTA複合体スラリーを半融ガラス濾過器で濾過し、脱気水(400mL×3)および脱気エタノール(100mL×2)で、順に洗浄した。湿潤ケークを、窒素パージ下にて一晩中、濾過器上で乾燥させて、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(151g、収率93%)を得た。
【0046】
次いで、TAP/K2−DHTA複合体の一部を重合させた。この複合体を用い、以下の工程を用いてM5ポリマーを調製した。(i)スラリーを、テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタレート複合体(23g)およびポリリン酸(135g)から調製した。(ii)そのようにして得られたスラリーを、約100℃にて1時間、ホモジナイズした。(iii)この混合物の攪拌を、140℃にて1時間、継続した。(iv)温度を急速に180℃に上昇させて、残っている2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムを溶解させ、次いで、約180℃にて0.3時間〜2.5時間重合させて、32dL/gの内部粘度(IV)を有するM5ポリマーを得た。
【0047】
精製DADNPの別の一部(97g)を水素化し、次いで、K2−DHTA(126g)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(154g、収率94%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の小部分(23g)もまた重合させて、31dL/gのIVを有するM5ポリマーを得た。これら2つのTAP/K2−DHTA複合体試料の残り(250g)を合わせ、合わせた試料を0.7%連鎖停止剤(o−フェニレンジアミン)の存在下で大規模バッチとして重合させて、26dL/gのIVおよび32g(力)/デニールのテナシティを有するM5ポリマーを得た。このような連鎖停止剤の意図的な使用はポリマーのIVを低減してしまうが、その結果生じる繊維は優れた品質を有することに留意されたい。実施例1は、本発明の方法による、DAPHからのDANPSを含まないDADNPの形成の結果、優れた品質のTAP、従って優れた品質のM5ポリマーが得られ、後者は、25dL/gより高いIVおよび30g(力)/デニールより大きいテナシティを有することを示した。
【0048】
比較例A
比較例Aでは、先行技術の方法を用い、DAPHからDADNPを調製した。機械的攪拌器、モイスチャートラップ、熱電対、および冷却用ドライアイス/アセトン浴を備えた3L丸底フラスコに、20%オレウム(硫酸中20%三酸化硫黄を含む、1350g)を加えた。このフラスコ中の酸を10℃に冷却した。2,6−ジアミノピリジンヘミスルファート(DAPH、237.3g、1.5モル、DAPから上記のとおり調製)を、温度を15℃〜25℃に維持しながら、30分かけて少しずつ添加した。次いで、固体が溶解して茶褐色の均一溶液を生じるまで、反応塊を15℃にて攪拌した。次いで、この溶液を0℃に冷却し、温度を15℃より低く維持しながら、98%硝酸(197g、2.06モル、2%過剰)を滴下した。このニトロ化生成物を、15分間だけ攪拌し、次いで、下記のとおり希硫酸溶液中でクエンチした。
【0049】
機械的攪拌器、オーバーヘッドコンデンサー、熱電対、冷却用ドライアイス/アセトン浴、および添加漏斗を備えた12L丸底フラスコに、20%硫酸(5.0kg)を加えた。実際には、先のニトロ化からの母液をリサイクルし、希釈することによって20%硫酸を調製した。この酸溶液を−5℃〜−10℃に冷却し、上記で調製されたニトロ化生成物を、12Lフラスコ中の温度を−5℃より低く維持しながら、添加漏斗を通して滴下した。2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(DADNP)の明黄色の結晶が沈殿した。この添加の完了後、脱イオン水(1L)を添加し、この混合物を室温にし、室温にて1時間攪拌した。このDADNPスラリーを、ブフナー濾過器で濾過し、湿潤ケークを室温にて水(1L)で洗浄した。ブフナー濾過器中の湿潤ケークを窒素雰囲気下で真空吸引により部分的に乾燥させ、次いで、75℃および30.5kPaにて真空オーブンで恒量まで乾燥させて、粗DADNP(293g、収率98%)の黄色固体を得た。1H NMR分析は、試料が2.2%の2−ヒドロキシ−6−アミノ−3,5−ジニトロピリジン(HADNP)および2.2%のH2SO4を含むことを示した。塩基滴定は、この試験において得られたDADNPが3.5%のH2SO4を含むことを示した。先に記載したように、高い方の滴定分析値は、NMR分析値と異なり、あらゆる汚染DANPSの硫酸塩当量を含む。同様に繰り返された例において、黄色固体の粗DADNP(285g、収率95%)を得た。1H NMR分析は、試料が2.7%のHADNPおよび4.5%のH2SO4を含むことを示し、この合成の再現性を証明した。数回繰り返された合成からの複合試料の分析に基づき、平均DANPS含有量は、約2%〜約4%であった。
【0050】
上記の粗DADNPの複合試料(830g、約3%のHADNPを含む)を、12L丸底フラスコに入れた。テトラヒドロフラン(2.2L)および30%アンモニア水(600mL)をこの複合試料に添加した。この混合物を攪拌してスラリーを生成し、45℃にて一晩中攪拌した後、室温にてブフナー濾過器で濾過した。濾過器上の湿潤ケークを、室温にて水(250mL×4)で洗浄し、窒素雰囲気下で真空吸引により部分的に乾燥させた。次いで、このケークを、真空オーブンで75℃および30.5kPaにて恒量まで乾燥させて、精製DADNP(800g、精製収率96%)の明黄色の固体を得た。1H NMR分析は、試料が0.1%のHADNPおよび0.05%のH2SO4を含むことを示した。塩基滴定は、試料が0.4%のH2SO4を含むことを示した。HPLCによる別の分析は、試料が0.3%のHADNPおよび0.8%のDANPSを含むことを示した。
【0051】
上記のように調製された精製DADNP(100g)の試料を、水素化により2,3,5,6−テトラアミノピリジン(TAP)に変換した。DANDP(100g)を、脱気脱イオン水(500g)、5%担持Pt触媒(Degussa F101、1g乾燥量基準)およびアンモニアガス(10g)とともに1Lオートクレーブに入れた。オートクレーブの閉鎖および不活性化後、スラリーを65℃に温め、65℃および125psig(963kPa)にて水素ガスを反応塊に通気させて、水素吸収が止まるまで(典型的には1時間〜2時間)処理した。高度に酸素感受性のTAP水溶液(10%〜12%)を、活性炭(DARCO G60、10g)を用い、インサイチューで窒素ブランケット下にて精製し、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウム(K2−DHTA、126g、2.2L 脱気脱イオン水)の塩基性(pH9〜10)水溶液中に濾過した。オートクレーブを2回すすぎ、各すすぎには脱気DI水(100g)を用い、これらの洗浄液を濾液に加えた。
【0052】
以下の、滴定、濾過、洗浄および乾燥のプロセス工程の全てを、酸素を含まない窒素雰囲気下で行った。TAP/K2−DHTA複合体は酸素感受性であり、空気に暴露されると赤茶色に変色し、次いで、1週間以内に明褐色に変色する。塩基性TAP/K2−DHTA溶液(3L)および25%リン酸(200mL)溶液を、pHを4.5および温度を50℃に維持しながら、ゆっくりと、同時に、水(700mL)を含むジャケット付き攪拌ガラス反応器に供給した。この滴定により、TAP/K2−DHTA複合体(M5ポリマーを作製するためのM5モノマー)の明黄色の結晶が瞬時に形成された。TAP/K2−DHTA複合体スラリーを半融ガラス濾過器で濾過し、脱気水(400mL×3)および脱気エタノール(100mL×2)で、順に洗浄した。湿潤ケークを、窒素パージ下にて一晩中、濾過器上で乾燥させて、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(157g、収率96%)を得た。TAPとK2−DHTAの比率は、TAPの約3%〜約5%過剰に相当した。この僅かなTAPの過剰分は洗浄工程にて除去され、さもなければTAP/K2−DHTA複合体とともに沈殿することになる、いかなる過剰DHTA(遊離酸)の存在も妨げた。
【0053】
次いで、TAP/K2−DHTA複合体を、実施例1に記載される手順を用いて重合させた。この複合体を用い、M5ポリマーを、以下の工程を用いて調製した。(i)スラリーを、テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタレート(23g)およびポリリン酸(135g)から調製した。(ii)そのようにして得られたスラリーを、約100℃にて1時間、ホモジナイズした。(iii)この混合物の攪拌を、140℃にて1時間、継続した。(iv)温度を急速に180℃に上昇させて、残っている2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二カリウムを溶解させ、次いで、約180℃にて0.3時間〜2.5時間重合させて、22dL/gの内部粘度(IV)を有するM5ポリマーを得た。測定可能な量のDANPSの存在は、低品質のTAPおよび低品質のM5ポリマーを生じさせた。同様の例において、同じ精製DADNPを用い、別のTAP/K2−DHTA複合体試料(152g、収率93%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体試料は、乾燥させた時の最初の色は明赤茶色であり、より低い17dL/gのIVを有するM5ポリマーを生じた。変色およびより低いIVは、空気との不慮の接触によるものと考えられ、酸素排除の重要性を強調している。前述のとおり、許容し得るM5ポリマーは、少なくとも25dL/gのIVを有する。
【0054】
比較例B
比較例Bにおいて、DADNPを先行技術の方法を用いてDAPから調製した。DAPH(1.5モル)をDAP(2,6−ジアミノピリジン、163.7g、1.5モル)と換えたこと以外は、比較例Aに記載されたニトロ化試験を繰り返して黄色の粗DADNP(277g、収率93%)を得た。1H NMR分析は、試料が、比較例AにおいてDAPHを用いて得られたものと同一であり、2%のHADNPおよび1.4%のH2SO4を含むことを示した。それに続くHPLC分析は、この試料が2.8%のDANPSを含むことを示した。
【0055】
比較例Bを、3分の1規模(DAP、54.55g、0.5モル)で、それぞれ、1Lフラスコ(ニトロ化)および3Lフラスコ(クエンチ)中で繰り返した。このより小規模の試験で得られた黄色の粗DADNP(94g、94%)は、1H NMRにより決定される場合、2.6%のHADNPおよび1%の硫酸を含んでいた。HPLC分析は、試料が2.5%のDANPSを含むことを示した。
【0056】
DAPから調製された粗DADNP試料を合わせ、比較例Aに記載されるとおりTHFおよびアンモニア水を用いて精製して、0.3%のHADNPおよび0.7%のH2SO4を含む精製DADNP(950g)を得た。HPLC分析は、これが0.5%のDANPSも含むことを示した。
【0057】
上記の精製DADNP(100g)を比較例Aに記載されるとおりに用い、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(152g、91%)およびM5ポリマーを順に作製した。M5ポリマーは、23dL/gのIVを有していた。
【0058】
実施例2
実施例1の手順に従って調製された、HPLCにより決定される場合に1.1%のDANPSおよび0.3%のHADNPを含むDADNP(400g)を、3L丸底フラスコ中の96%H2SO4(1.125kg)と20%オレウム(1.125kg)との混合物中に、少しずつ溶解させた。温度を0℃〜10℃の間に維持した。この混合物を、全ての固体が溶解するまで攪拌した。この溶液に、98%HNO3(15g)を、0℃〜10℃にて滴下した。褐色〜暗紅色の溶液を、さらに4時間、10℃にて攪拌した。この混合物を、実施例1に記載されるとおり、12L丸底フラスコ中の0℃±2℃の20%H2SO4溶液(10.4kg)に添加した。明黄色のスラリーを得た。このスラリーを攪拌し、1.67kgの脱イオン水で希釈し、実施例1に記載されるとおりフリットガラス濾過器を用いて濾過し、1.67kgの洗浄液で3回、1回目と3回目の洗浄液は脱イオン水、2回目の洗浄液もやはり5%アンモニア水で洗浄した。乾燥後、明黄色のDADNP(389g)を得た。HPLC分析は、試料が0.7%のHADNPを含み、検出可能なDANPSを含まないことを示した。
【0059】
上記の粗DADNP試料を、他の同様のDADNP試料と合わせ、この場合もまた実施例1に記載されるのと同比率のTHFおよびアンモニア水中で攪拌により精製し、乾燥させて明黄色のふわふわしたDADNPを得た。HPLC分析は、0.4%のHADNP、検出不可能なDANPSを生じたが、1H NMR分析は、0.5%HADNPおよび0.07%硫酸を示した。
【0060】
上記の精製DADNPの一部(130g、0.65モル)を、実施例1の水素化手順に従って水素化した。その結果生じたTAP水溶液は、まず、DARCO G60(15g)で色処理し、次いで、実施例1の場合と同様に調製されたK2−DHTA(165g、0.60モル)と複合体化し、淡黄色TAP/K2−DHTA複合体(209g、収率98%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を実施例1に記載されるとおり重合させて、31dL/gのIVを有するM5ポリマーを得た。同じ精製DADNPの別の一部(130g)を水素化し、次いで、K2−DHTA(165g)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(209g、収率98%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の小部分を重合させて、29dL/gのIVを有する高品質のM5ポリマーを得た。
【0061】
上記された手順を用い、1.1%のDANPSおよび0.3%のHADNPを含む本実施例のための出発DADNPもまた水素化し、次いで、K2−DHTAとカップリングしてTAP/K2−DHTA複合体を作製した。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を実施例1に記載されるとおり重合すると、標準以下の23dL/gのIVを有するM5ポリマーが得られ、IVの上昇がDADNPの精製と関連することが証明された。実施例2は、0.1%を超えるDANPSを含むDADNPをさらにニトロ化してDANPS不純物をDADNPに変換する結果、良質のTAP、従って、良質のM5ポリマーを生じ得ることを証明した。
【0062】
実施例3
実施例2に記載された手順と同じ再ニトロ化によりDANPSを除去する手順を、1%のDANPSおよび1.5%のHADNPを含むDADNP(500g)を用いて繰り返して、2.2%のHADNPを含み、検出可能なDANPSを含まない粗再ニトロ化DADNP(473g、95%)を得た。実施例1に記載されるとおりの手順を用い、この再ニトロ化粗DADNPの一部(53g)も水素化し、その結果生じたTAP水溶液をK2−DHTA(63g,0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(80g、98収率)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を実施例1の場合と同様に重合させて、24dL/gのIVを有するM5ポリマーを得た。次いで、再ニトロ化粗DADNPの一部(200g)を高温のDMAC(1.2L)に溶解させ、次いで、5%K2CO3水溶液(100mL)で処理してHADNPを除去した。100%のDADNPを含み、HADNPおよびDANPSを含まない、精製DADNP(187g、96%)を得た。実施例1に記載されるとおり、この純DADNPの一部(50g)を水素化し、次いで、K2−DHTA(63g,0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(78g、収率95%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を実施例1に記載されるとおり重合させて、31dL/gのM5ポリマーIVを得た。比較のため、1%のDANPSおよび1.5%のHADNPを含む出発DADNPを、最終的にTAP/K2−DHTA複合体に変換し、次いで重合させると、17dL/gのIVを生じた。実施例3は、0.1%を超えるDANPSを含む結果、25dL/g未満のIVを有するM5ポリマーを生じたDADNPが、この汚染DANPSを除去するために再ニトロ化され得ることを証明した。再ニトロ化DADNPは、許容し得るIVを有するM5ポリマーに変換され得る。
【0063】
実施例4
実施例2に記載された手順と同じ再ニトロ化によりDANPSを除去する手順を、4%のDANPSおよび3.5%のHADNPを含むDADNP(400g)を用いて再度繰り返して、3.2%のHADNPを含み、検出可能なDANPSを含まない粗再ニトロ化DADNP(380g、95%)を得た。この再ニトロ化粗DADNP(379g)を、5%K2CO3水溶液(100mL)で処理してHADNPを除去し、99.7%のDADNPおよび0.2%のHADNPを含み、DANPSを含まない精製DADNP(356g、94%)を得た。実施例1に記載されるとおり、この純DADNPの一部(50g)を水素化し、次いで、K2−DHTA(63g、0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(798g、収率97%)を得た。次いで、このTAP/K2−DHTA複合体の一部を、実施例1に記載されるとおり重合させて、31dL/gのIVを有するM5ポリマーを得た。実施例4は、0.1%を超えるDANPSを含む結果、25dL/g未満のIVを有するM5ポリマーを生じたDADNPが、この汚染DANPSを除去するために再ニトロ化され得ることを証明した。再ニトロ化されたDADNPは、許容し得るIVを有するM5ポリマーに変換され得る。
【0064】
実施例5および比較例C
半分の配合材料を用い、実施例1に記載されるとおり、DAPHのニトロ化を繰り返した。例えば、DAPを用いて上記のとおり調製されたDAPH(158.2g、1モル)を用いた。同様に、20%オレウム(900g)、98%HNO3(135g)を同じ装置中で用いた。ニトロ化の終了まで、実施例1に記載される同じ手順を用いた。ニトロ化後、この反応混合物(1.19kg)を15分間攪拌し、次いで、半分に分けた。ニトロ化反応生成物の第1の半分(比較例C、596g)を、1.675kgの20%H2SO4溶液中に0℃±2℃にて即座にクエンチした。次いで、この溶液に250gの脱イオン水を加えてDADNP生成物の沈殿を完了させた。次いで、この生成物を濾過し、水(300g)、5%NH3溶液(300g)、次いで水(300g)を用いて3回洗浄した。粗DADNP(82g、収率82%)は、HPLCに基づき、1.2%のHADNPおよび10.3%のDANPSを含んでいた。ニトロ化反応混合物の第2の半分(実施例5、596g)を、さらに2.5時間、20℃〜23℃にて攪拌した。反応混合物の第1の半分の場合と同じ手順を用いて、HPLCに基づき、0.5%のHADNPを含み、検出可能なDANPSを含まない(0.05%未満)粗DADNP(93g、収率93%)を得た。
【0065】
実施例6および比較例D
実施例5に記載された試験を、DAPHの代わりにDAP(109.1g、1モル)を用いて繰り返した。その他は、同じ装置および手順を用いた。ニトロ化後、反応塊(1.144kg)を30分間攪拌してニトロ化生成物を得て、次いで、半分に分けた。ニトロ化生成物の第1の半分(比較例D、570g)を、1.675kgの20%H2SO4溶液中に0℃±2℃にて即座にクエンチした。次いで、この溶液に250gの脱イオン水を加えてDADNP生成物の沈殿を完了させた。次いで、この生成物を濾過し、水(300g)、5%NH3溶液(300g)、次いで水(300g)を用いて3回洗浄した。粗DADNP(87g、収率88%)は、HPLCに基づき、0.9%のHADNPおよび5.1%のDANPSを含んでいた。ニトロ化生成物の第2の半分(実施例6、596g)を、さらに2時間、20℃〜23℃にて攪拌した。反応混合物の第1の半分の場合と同じ手順を用いて、HPLCに基づき、0.3%のHADNPを含み、検出可能なDANPSを含まない(0.05%未満)粗DADNP(92g、収率92%)を得た。
【0066】
上記のニトロ化生成物の第1の半分(比較例D)(30分攪拌)からの粗DADNPの一部(50g、0.25モル)を水素化し、その結果生じたTAP水溶液を、実施例1に記載されるとおり、まずDARCO G60(5g)で色処理し、次いで、K2−DHTA(63g、0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(74g、収率91%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を、実施例1に記載されるとおり重合させて、16dL/gの低ポリマーIVを得た。
【0067】
上記のニトロ化生成物の第2の半分(実施例6)(合計2.5時間攪拌)からの粗DADNPの一部(51g、0.26モル)を水素化し、その結果生じたTAP水溶液を、実施例1に記載されるとおり、まずDARCO G60(5g)で色処理し、次いで、K2−DHTA(63g、0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(78g、収率96%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を、実施例1に記載されるとおり重合させて、32dL/gのIVを有する優れたM5ポリマーを得た。強度試験において、32dL/gのIVを有するポリマー試料は、破断強度が40g(力)/デニールを超える高品質の繊維をもたらした。
【0068】
実施例7および比較例E
実施例5の手順を、DAP(163.65g、1.5モル)を用いて繰り返した。同じ手順および同比率の20%オレウム(1.35kg)および98%硝酸(202.5g、3.15モル、5%過剰)を用いた。
【0069】
ニトロ化後、ニトロ化生成物(1.716kg)を35分間攪拌し、次いで、半分に分けた。ニトロ化生成物の第1の半分(比較例E、850g)を、2.5kgの20%H2SO4溶液中に0℃±2℃にて即座にクエンチした。次いで、この溶液に375gの脱イオン水を加えて、DADNP生成物の沈殿を完了させた。次いで、この生成物を濾過し、水(500g)、5%NH3水溶液(500g)、次いで水(500g)を用いて3回洗浄した。粗DADNP(136g、収率92%)は、HPLCに基づき、0.6%のHADNPおよび2.5%のDANPSを含んでいた。ニトロ化生成物の第2の半分(実施例7、858g)を、さらに2時間、5℃〜10℃にて攪拌した。ニトロ化生成物の第1の半分についてと同じ手順を用いて、HPLCに基づき、0.5%のHADNPおよび0.3%のDANPSを含む粗DADNP(140g、収率93%)を得た。ニトロ化生成物の第2の半分(実施例7、2.5時間攪拌)からの粗DADNP(135g)を、1.2Lの高温のDMF(140℃)を用い、3L丸底フラスコ中に溶解させ、次いで、この溶液を冷却して再沈殿させることにより精製して、0.2%のHADNPを含み、DANPSを含まず、99.7%のDADNPを含む、精製DADNP(130g、収率96%)を得た。
【0070】
上記のニトロ化生成物の第1の半分(比較例E)(35分攪拌)からの粗DADNPの一部(50g、0.25モル)を水素化し、その結果生じたTAP水溶液を、実施例1に記載されるとおり、まずDARCO G60(5g)で色処理し、次いで、K2−DHTA(63g、0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(76g、収率93%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部を、実施例1に記載されるとおり重合させて、17dL/gの低IVを有するポリマーを得た。
【0071】
この実施例7のDMF精製DADNPの一部(50g、0.25モル)を水素化し、その結果生じたTAP水溶液を、実施例1に記載されるとおり、まずDARCO G60(5g)で変色させ、次いで、K2−DHTA(63g、0.23モル)とカップリングして、淡黄色のTAP/K2−DHTA複合体(78g、収率96%)を得た。このTAP/K2−DHTA複合体の一部(25g)を、実施例1に記載されるとおり重合させて、33dL/gのIVを有する優れたM5ポリマーを得た。強度試験において、33dL/gのIVを有するポリマー試料は、破断強度が42g(力)/デニールを超える高品質の繊維をもたらした。
【0072】
表2に、実施例1〜7および比較例A〜Eからのデータを要約する。
【0073】
【表2】

【0074】
表2中のデータは、以下のことを証明している。比較例AおよびBは、先行技術のニトロ化方法が、DADNP中に、そのDADNPから調製されたM5ポリマーの品質に低IVという悪影響を与えるのに十分なDANPSを形成することを示した。実施例1は、本発明のより時間の長いニトロ化方法が、かなり低いDANPS含有量を有するDADNPを提供し、それに続き、高品質のM5ポリマーを提供することを示した。実施例2、3および4は、有害レベルのDANPSを含むDADNPが、再ニトロ化されるとDANPS含有量を減少させ得、高品質のM5ポリマーを生じ得ることを示した。しかしながら、ニトロ化工程を繰り返すことは好ましくない。比較例C、DおよびEで用いられた短いニトロ化時間を、実施例5、6および7で用いられた本発明のより長いニトロ化時間と比較した。より長いニトロ化時間は、その結果生じたM5ポリマー中のDANPS汚染の減少およびIV値の上昇と関連づけられた。
【0075】
実施例8
実施例8は、DAPHからのDANPSの調製を示した。機械的攪拌器、モイスチャートラップ、熱電対、および冷却用ドライアイス/アセトン浴を備えた1L丸底フラスコに、20%オレウム(20%の溶解させたSO3を含む発煙硫酸、450g)を加えた。このフラスコ中の酸を0℃に冷却した。2,6−ジアミノピリジン(DAP)を用いて自家調製された2,6−ジアミノピリジンヘミサルファート(DAPH、79.1g、0.5モル)を、温度を0℃〜10℃に維持しながら30分にわたって少しずつ添加した。固体が溶解して暗褐色の均一溶液を生じるまで、反応塊を15℃にて攪拌した。次いで、この溶液を0℃に冷却し、98%硝酸(33g、0.51モル、2%過剰)を、温度を10℃より低く維持しながら45分かけて滴下した。試料をさらに2時間攪拌し、下記のとおり希硫酸溶液中でクエンチした。
【0076】
機械的攪拌器、オーバーヘッドコンデンサー、熱電対、および冷却用ドライアイス/アセトン浴を備えた3L丸底フラスコに、20%硫酸(1.7kg)溶液を加えた。この酸溶液を0℃に冷却し、上記の3L丸底フラスコからのニトロ化反応塊を、3Lフラスコ中の温度を2℃より低く維持しながら、液体添加漏斗を通して1.5時間かけて滴下した。明黄色結晶の生成物が3Lフラスコ中に沈殿した。この添加の完了後、脱イオン水を添加し(250mL)、この混合物を室温にし、室温にて1時間、攪拌した。この明黄色のスラリーをフリットガラス濾過器で濾過し、湿潤ケークを室温にて3回、1回目は水(300g)で、2回目は5%NH3水溶液(300g)で、3回目は再度水(300g)で洗浄した。各洗浄は、湿潤ケークのスラリーを作製し、15分間攪拌し、次いで、濾過することを伴った。濾過器中の湿潤ケークを、窒素吹き付けおよび真空吸引により部分的に乾燥させ、次いで、真空オーブンで恒量まで乾燥させて、黄色固体の生成物を得た(112g、試料がDANPSであることに基づき、収率96%、MW=234)。
【0077】
この試料に対して行ったLC/MS分析は2つのピークの存在を示し、小さい方のDADNPピークは199の分子量を有し、大きい方のピークは234の分子量を有していた。親イオンの同位体分布は、この不純物中の硫黄の存在を示唆した。このLC/MS分析に基づき、234の分子イオンピークの最も論理的な説明は、2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸(DANPS)である。続いて、二次元13C NMRは、このピークが確かにDANPSであることを裏付けた。続くHPLC分析は、この試料が、3%のDADNPを含み、HADNPを含まず、97%のDANPSを含むことを示した。
【0078】
数パーセントのDANPSしか含まない試料であっても、深刻な触媒作用阻害およびTAP形成の失敗を引き起こすため、この試料を水素化または重合する試みはなされなかった。
【0079】
実施例9
実施例9において、DANPSをDAPから調製した。実施例8に記載された手順を、DAPH(79.1g、0.5モル)をDAP(54.6g、0.5モル)と換えたこと以外は、同じ装置、手順および化学薬品を用いて採用した。また、湿潤ケークの3回の洗浄の各々において、洗浄液量を300gから500gに増加した。
【0080】
洗浄後、濾過器中の湿潤ケークを、窒素吹き付けおよび真空吸引により部分的に乾燥させ、次いで、真空オーブンで恒量まで乾燥させて、黄色固体の生成物を得た(91g、試料がDANPSであることに基づき、収率86%、MW=234)。HPLC分析は、この試料が3%のDADNPを含み、HADNPを含まず、97%のDANPSを含むことを示した。この試料を水素化または重合する試みはなされなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アミノピリジンまたは2)アミノベンゼンを、オレウムおよび硝酸と接触させることにより、それぞれ、1)ジアミノジニトロピリジンまたは2)ジアミノジニトロベンゼンを調製するための方法であって、それぞれ、前記アミノピリジンまたはアミノベンゼンに基づき少なくとも約1%モル過剰の硝酸を少なくとも2時間にわたって攪拌しながら添加して、最初に、それぞれ、1)アミノニトロピリジンスルホン酸または2)アミノニトロベンゼンスルホン酸、続いて、それぞれ、1)ジアミノジニトロピリジンまたは2)ジアミノジニトロベンゼンを生成する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記アミノピリジンまたはアミノベンゼンを、硝酸と接触させる前にオレウムと接触させ、前記硝酸の増量分を2回に分けて添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硝酸の前記モル過剰が、約1%〜約3%である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記攪拌が、約2時間〜約4時間にわたって続けられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ジアミノジニトロピリジンが、0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含み、前記ジアミノジニトロベンゼンが、0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含む組成物。
【請求項7】
ジアミノピリジンまたはジアミノピリジンヘミスルファートをオレウムと接触させてジアミノピリジンスルホン酸を生成する工程、および前記ジアミノピリジンに基づいて少なくとも1%モル過剰の硝酸を添加してジアミノニトロピリジンスルホン酸を生成する工程により調製される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
1)2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロピリジン、または2)2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンを精製するための方法であって、それぞれ、1)前記ジアミノジニトロピリジンまたは2)前記ジアミノジニトロベンゼンを、オレウム、および前記ジアミノジニトロピリジンまたはジアミノジニトロベンゼンに基づき少なくとも約1%モル過剰の硝酸と、少なくとも2時間にわたって攪拌しながら接触させて、それぞれ、約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を有するジアミノジニトロピリジン、または2)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を有するジアミノジニトロベンゼンを生成する工程を含む、方法。
【請求項9】
硝酸の前記モル過剰が、約1%〜約3%であり、前記攪拌が、約2時間〜約4時間にわたって続けられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各々少なくとも25dL/gの内部粘度を有する、ポリ(2,3,5,6−テトラアミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)またはポリ(2,3,5,6−テトラアミノベンゼン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を調製するための方法であって、
A)約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロピリジンを水素化してテトラアミノピリジンを生成する工程、または約0.1重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロベンゼン−5−スルホン酸を含むジアミノジニトロベンゼンを水素化してテトラアミノベンゼンを生成する工程と、
B)前記テトラアミノピリジンまたはテトラアミノベンゼンをジヒドロキシテレフタル酸二カリウムとカップリングして、それぞれ、テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体、またはテトラアミノベンゼンジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を生成する工程と、
C)前記テトラアミノピリジニウムジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を重合させて、少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラミノピリジン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を生成する工程、または前記テトラアミノベンゼンジヒドロキシテレフタル酸二カリウム複合体を重合させて、少なくとも25dL/gの内部粘度を有するポリ(2,3,5,6−テトラアミノベンゼン−コ−2,5−ジヒドロキシテレフタレート)を生成する工程と
を含む、方法。
【請求項11】
前記ジアミノジニトロピリジンが、約0.05重量%未満の2,6−ジアミノ−3−ニトロピリジン−5−スルホン酸を含み、前記ジアミノジニトロピリジンが、約1重量%未満の2−ヒドロキシ−6−アミノ−3,5−ジニトロピリジンを含む、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2011−505360(P2011−505360A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536085(P2010−536085)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/084459
【国際公開番号】WO2009/070515
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】