説明

ジェミニ型界面活性剤を含有する分散粉末組成物

【課題】建材用途において、特に自己水平性の床下地材もしくは床張り材において使用する際に、施工表面上の起伏、クレーターもしくはピンホールの発生に対抗し、並びに施工層中への空気混入に対抗する代替的な分散粉末組成物を提供する。
【解決手段】1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーの重合体を基礎とする水中に再分散可能な分散粉末組成物であって、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤が含まれていることを特徴とする分散粉末組成物によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェミニ型界面活性剤を含有する水中に再分散可能な分散粉末組成物、その製造方法並びにそれを建材において、特に自己水平性の床下地材(Bodenspachtelmasse)及び床張り材(Estrich)において用いる使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエステル、塩化ビニル、(メタ)アクリレートモノマー、スチレン、ブタジエン及びエチレンを基礎とする重合体は、とりわけ、その水性分散液の形又は水中に再分散可能な重合体粉末の形で、多岐にわたる用途で、例えば種々異なる基体用の被覆剤又は接着剤として使用される。建材、例えばセメント又は石膏を基礎とする建材において、保護コロイドで安定化された分散粉末は、付着性、耐摩耗性、引掻強さもしくは曲げ強度の改善のために使用される(クレイ産業新聞(Tonindustrie−Zeitung)、1985年、9、第698頁)。係る分散粉末は、例えばDE−A2049114号に記載されており、ポリビニルアルコール及び他の添加剤を添加して水性ポリマー分散液を噴霧乾燥することによって製造される。こうして得られた10〜250μmの粒度を有する流動性の良好な粉末は、水中で再び再分散して、0.1〜5μmの粒度を有する分散液となる。係る再分散液は、上述の用途における使用可能性について長期間にわたり安定性を保持せねばならない、すなわち該分散液は、沈殿してはならない。
【0003】
分散粉末についての重要な使用分野は、水硬性の自己水平性の床下地材である。係る床下地材は、DE−A3028559号及びDE−A10061410号から公知であり、それは、一般にセメントもしくは種々のセメントの混合物と、入念に調整された充填剤の組み合わせと、分散粉末と、液化剤(Verfluessiger)と、場合により更なる添加剤とからなる。自己水平性の床下地材は、一般に、現場で乾燥モルタルとして供給され、そこで水と簡単に混ぜ合わせて、床に打ち込まれる。打ち込まれた層は流展して平坦な表面となり、それは直接的に実用層としても又は更なる被覆用の下地としても用いられる。その際に、特に厚い層を施工する際に問題が生ずることがある。施工表面に、クレーター、ピンホールもしくは空気混入のような起伏が形成し、それは負荷がかかった時に強まった摩耗についての作用面となる。この欠点を排除するために、表面の後処理が必要である。
【0004】
係る起伏の発生を妨ぐために、今までは添加剤が使用されていた。ここでEP−A477900号においては、1−アルキルビニルエステル及びビニルエステルからなる完全鹸化されたコポリマーの使用が推奨されている。しかしながら係る添加剤は、製造に費用がかかり、これは相応の分散粉末配合物のためには経済的に多大な難点である。
【0005】
EP−B1133456号においては、ビニル芳香族化合物−1,3−ジエン重合体を基礎とする分散粉末による代替的解決法が記載されている。前記のモノマーの重合に際しては、しかしながら揮発性の副生成物(ディールス・アルダー化合物)が生じ、それは製造工程の間に完全に除去できないため、該副生成物は、後に分散粉末もしくは分散粉末の成果製品を使用する間に放出される。それは、強い臭気をもたらす。特に、床下地材のような大きい表面で使用する場合に、そのことは大きな難点である。
【特許文献1】DE−A2049114号
【特許文献2】DE−A3028559号
【特許文献3】DE−A10061410号
【特許文献4】EP−A477900号
【特許文献5】EP−B1133456号
【非特許文献1】クレイ産業新聞、1985年、9、第698頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の背景に対して、建材用途において、特に自己水平性の床下地材もしくは床張り材において使用する際に、施工表面上の起伏、クレーターもしくはピンホールの発生に対抗し、並びに施工層中への空気混入に対抗する代替的な分散粉末組成物を提供するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーの重合体を基礎とする水中に再分散可能な分散粉末組成物であって、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤が含まれていることを特徴とする分散粉末組成物である。
【0008】
ジェミニ型界面活性剤は、界面活性剤の1つの特定の種類である。ジェミニ型界面活性剤は、スペーサーを介して結合されている2つの親水性のヘッド基と、それぞれ1つの主に疎水性のテイル基とから構成される。
【0009】
ジェミニ型界面活性剤は、1つだけの親水性のヘッド基が1つの疎水性のテイル基に結合されている従来の界面活性剤に対して一連の利点を有する。ジェミニ型界面活性剤は、消泡剤もしくは界面活性剤として、特にあらゆる種類の水系コーティングにおいて使用される(JCT Research,第3巻,第1号,第77〜85頁、2006年;US2287290号;US3325425号;DE−A10326127号,DE−A102004047118号又はDE−A19535833号)。
【0010】
好ましいジェミニ型界面活性剤は、2つのアルコール基を含むアルキン誘導体である。好ましいジェミニ型界面活性剤は、アルコール基の一方もしくは両方がポリエチレングリコール基で置換されているアルキンジオール誘導体でもある。好ましいジェミニ型界面活性剤は、エポキシドとアルキンジオール誘導体との反応生成物であって、アルキンジオール誘導体のアルコール基の一方もしくは両方がエポキシドで変換されていてよいものでもある。
【0011】
特に好ましいジェミニ型界面活性剤は、一般式(1)
RR1(R2O)C−C≡C−C(OR2)R1R (1)
[式中、
R及びR1は、それぞれ直鎖状もしくは分枝鎖状の、置換もしくは非置換の、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基もしくはアルコキシアルキル基を表し、かつ
2は、水素原子又は式(−CH2−CH2−O)n−CH2−CH2−OHで示されnが0〜50であるポリエチレングリコール鎖を表す]で示されるアルキンである。
【0012】
一般式(1)の全ての前記の記号は、それらの意味をそれぞれ互いに無関係に有する。
【0013】
有利には、Rは、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にイソブチル、ブチル又はプロピルを意味する。有利には、R1は、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にメチル又はエチルを意味する。有利には、R2は、水素原子を表す。
【0014】
最も好ましいジェミニ型界面活性剤は、一般式(2)
【化1】

で示されるアルキンジオール誘導体であり、それはSurfynol 104(Air Products社の商品名)としても知られている。
【0015】
特に好ましいジェミニ型界面活性剤は、エポキシドと、一般式(1)[式中、R2は、それぞれ水素原子を表し、かつアルコール基の一方もしくは両方がエポキシドで変換されていてよい]で示されるアルキンとの反応生成物でもある。
【0016】
殊に好ましいジェミニ型界面活性剤は、一般式(3)
【化2】

[式中、
基R3は、互いに無関係に、水素原子又は直鎖状もしくは分枝鎖状の、置換もしくは非置換の、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表す]で示されるエポキシドと、式(2)[式中、式(2)のアルキンジオール誘導体の一方もしくは両方のアルコール基は、一般式(3)のエポキシドで変換されていてよい]で示されるアルキンジオール誘導体との反応生成物である。
【0017】
特に好ましいジェミニ型界面活性剤は、一般式(4)
【化3】

[式中、
1は、水素原子又は直鎖状、分枝鎖状のもしくは環状の、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
2は、直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
3は、水素原子又は−CH2OR4基を表し、
4は、直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の、2〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基もしくは芳香脂肪族アルキル基(Aralalkylrest)を表し、かつ
(n+m)は、1〜100の代表値であり、かつ
(p+q)は、0.5〜5の代表値である]で示されるアルキンジオール誘導体でもある。
【0018】
有利には、一般式(4)において、R1は、メチル基を表し、かつR2は、直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表す。特に有利には、R1は、メチル基を表し、かつR2は、直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の、4〜5個の炭素原子を有するアルキル基を表す。最も好ましくは、R2は、イソブチル基もしくはイソアミル基を表す。
【0019】
4は、一般式(4)においては、直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の、2〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基もしくは芳香脂肪族アルキル基を表し、特に好ましくは直鎖状の、分枝鎖状のもしくは環状の、4〜12個の炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基もしくは芳香脂肪族アルキル基を表す。好ましい基R4のための例は、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基、フェニル基又はクレシル基である。特に好ましい基R4のための例は、ブチル基、2−エチルヘキシル基又はドデシル基である。
【0020】
(n+m)は、有利には1〜50の値をとり、特に好ましくは10〜30の値をとる。
【0021】
(p+q)は、有利には1〜3の値をとり、特に有利には2の値をとる。
【0022】
最も好ましい一般式(4)で示されるジェミニ型界面活性剤は、ポリエチレングリコールエーテルを有するオキシラン[[(2−エチルヘキシル)オキシ]メチル]2当量と式(2)のアルキンジオール誘導体1当量との反応によって生成する反応生成物である。最後に挙げた反応生成物は、Surfynol(登録商標)MD−20(Air Products社の商品名)としても知られている。
【0023】
分散粉末組成物の全質量に対するジェミニ型界面活性剤の割合は、0.01〜5.00質量%、有利には0.1〜2.0質量%、特に有利には0.1〜0.8質量%である。
【0024】
水中に再分散可能な分散粉末組成物のために好ましいベースポリマーは、1〜15個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、カルボン酸と非分枝鎖状もしくは分枝鎖状の1〜15個の炭素原子を有するアルコールとのメタクリル酸エステルもしくはアクリル酸エステル、オレフィンもしくはジエン、ビニル芳香族化合物又はビニルハロゲン化物を含む群から選択される1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーを基礎とするポリマーである。
【0025】
好ましいビニルエステルは、酢酸ビニル、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチル酢酸ビニル、ビニルピバレート及び5〜13個の炭素原子を有するα分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)又はVeoVa10(登録商標)(Shell社の商品名)である。特に酢酸ビニルが好ましい。
【0026】
好ましいメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールのエステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートである。特に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0027】
好ましいオレフィン又はジエンは、エチレン、プロピレン及び1,3−ブタジエンである。好ましいビニル芳香族化合物は、スチレン及びビニルトルエンである。好ましいビニルハロゲン化物は、塩化ビニルである。
【0028】
場合により、ベースポリマーの全質量に対して更に0.05〜50質量%、有利には1〜10質量%の補助モノマーが共重合されてよい。補助モノマーのための例は、エチレン性不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、有利にはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン性不飽和のカルボン酸アミド及びカルボン酸ニトリル、有利にはアクリルアミド及びアクリルニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル及びジイソプロピルエステル並びに無水マレイン酸、エチレン性不飽和のスルホン酸もしくはそれらの塩、有利にはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸である。更なる例は、予備架橋性コモノマー、例えば多エチレン性不飽和のコモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドの、N−メチロールメタクリルアミドの、N−メチロールアリルカルバメートのエステルである。また、エポキシ官能性のコモノマー、例えばグリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートも好ましい。更なる例は、ケイ素官能性のコモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン及びメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシランであり、その際、アルコキシ基として、例えばメトキシ基、エトキシ基及びエトキシプロピレングリコールエーテル基が含まれていてよい。また、ヒドロキシ基又はCO基を有するモノマー、例えばメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及びアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシエチル−、ヒドロキシプロピル−もしくはヒドロキシブチル−アクリレート又は−メタクリレート並びにジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチル−アクリレートもしくは−メタクリレートのような化合物が挙げられる。
【0029】
また他の例は、ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル又はイソブチルビニルエーテルである。
【0030】
好適な単独重合体及び混合重合体のための例は、酢酸ビニル−単独重合体、酢酸ビニルとエチレンとの混合重合体、酢酸ビニルとエチレン及び1種以上の他のビニルエステルとの混合重合体、酢酸ビニルとエチレン及びアクリル酸エステルとの混合重合体、酢酸ビニルとエチレン及び塩化ビニルとの混合重合体、スチレン−アクリル酸エステル−共重合体、スチレン−1,3−ブタジエン−共重合体である。
【0031】
酢酸ビニル−単独重合体;酢酸ビニルと1〜40質量%のエチレンとの混合重合体、酢酸ビニルと1〜40質量%のエチレン及び、カルボン酸基中に1〜12個の炭素原子を有するビニルエステル、例えばビニルプロピオネート、ビニルラウレート、5〜13個の炭素原子を有するα位で分枝したカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)、Veova10(登録商標)、Veova11(登録商標)の群からの1種以上の他のコモノマー1〜50質量%との混合重合体、酢酸ビニル、1〜40質量%のエチレン及び有利には1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状又は分枝鎖状のアルコールのアクリル酸エステル、特にn−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレート1〜60質量%の混合重合体、並びに30〜75質量%の酢酸ビニル、ビニルラウレート又は5〜13個の炭素原子を有するα位で分枝したカルボン酸のビニルエステル1〜30質量%及び1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状又は分枝鎖状のアルコールのアクリル酸エステル、特にn−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレート1〜30質量%を有し、更に1〜40質量%のエチレンを有してよい混合重合体;酢酸ビニル、1〜40質量%のエチレン及び1〜60質量%の塩化ビニルを有する混合重合体が好ましく、その際、これらの重合体は、更に前記の補助モノマーを前記の量で含有してよく、かつ質量%の表記は加算して、それぞれ100質量%とする。
【0032】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体、例えばn−ブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートの混合重合体又はメチルメタクリレートとn−ブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレート及び場合によりエチレンとの共重合体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの群からの1種以上のモノマーを有するスチレン−アクリル酸エステル−共重合体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及び場合によりエチレンの群からの1種以上のモノマーを有する酢酸ビニル−アクリル酸エステル−共重合体、スチレン−1,3−ブタジエン−共重合体が好ましく、その際、これらの重合体は、更に前記の補助モノマーを前記の量で含有してよく、かつ質量%の表記は加算して、それぞれ100質量%とする。
【0033】
モノマーの選択あるいはコモノマーの質量割合の選択は、この場合に、一般に−50℃〜+50℃、有利には−30℃〜+40℃のガラス転移温度Tgが得られるように行われる。該重合体のガラス転移温度Tgは、公知のように、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。Tgは、Foxの式によって近似的に見積もることもできる。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,第123頁(1956)によれば、
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+…+xn/Tgn
[式中、
xnは、モノマーnの質量分率(質量%/100)を表し、かつ
Tgnは、モノマーnの単独重合体のケルビンでのガラス転移温度である]
が適用される。単独重合体についてのTg値は、Polymer Handbook 2nd Edition,J.Wiley&Sons,New York(1975)に挙げられている。
【0034】
本発明の更なる対象は、1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーを水性媒体中で乳化重合もしくは懸濁重合させ、引き続きそこで得られた水性分散液を乾燥させることにより水中に再分散可能な分散粉末組成物を製造する方法において、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を混加することを特徴とする方法である。
【0035】
好ましくは、該重合体の製造は、乳化重合法に従って行われる。重合温度は、有利には40℃〜100℃、特に有利には60℃〜90℃である。気体形のコモノマー、例えばエチレン、1,3−ブタジエンもしくは塩化ビニルの共重合の場合には、圧力下でも、一般に5バール〜100バールで作業することもできる。
【0036】
重合の開始は、乳化重合もしくは懸濁重合に一般に用いられる水溶性もしくはモノマー可溶性の開始剤又はレドックス開始剤組合せを用いて行われる。水溶性の開始剤のための例は、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩、過酸化水素、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキソ二リン酸カリウム、t−ブチルペルオキソピバレート、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルである。モノマー可溶性の開始剤のための例は、ジアセチルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジベンゾイルペルオキシドである。前記の開始剤は、一般に、それぞれモノマーの全質量に対して0.001〜0.02質量%、有利には0.001〜0.01の量で使用される。
【0037】
レドックス開始剤としては、前記の開始剤と還元剤との組合せが使用される。好適な還元剤は、アルカリ金属及びアンモニウムの亜硫酸塩及び重亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウム、スルホキシル酸の誘導体、例えば亜鉛又はアルカリのホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、例えばヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム及びアスコルビン酸である。還元剤の量は、それぞれモノマーの全質量に対して、一般に、0.001〜0.03質量%、有利には0.001〜0.015質量%である。
【0038】
分子量の制御のために、重合の間に、調節物質を使用することができる。調節剤を使用する場合に、これは、通常は、重合されるべきモノマーに対して0.01〜5.0質量%の量で使用され、それは反応成分と別々に又はそれと事前に混合して供給される。係る物質の例は、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステル、イソプロパノール及びアセトアルデヒドである。
【0039】
重合に適した保護コロイドは、ポリビニルアルコール;ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン;水溶性形の多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)、セルロース及びそのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、デキストリン及びシクロデキストリン;タンパク質、例えばカゼイン又はカゼイン塩、大豆タンパク質、ゼラチン;リグニンスルホネート;合成重合体、例えばポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートとカルボキシ官能性のコモノマー単位との共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸及びその水溶性共重合体;メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマーである。
【0040】
部分鹸化もしくは完全鹸化された、加水分解度80〜100モル%を有するポリビニルアルコール、特に部分鹸化された、加水分解度80〜95モル%を有し、かつヘップラ粘度(4%の水溶液中)1〜30mPas(ヘップラによる20℃での方法、DIN53015)を有するポリビニルアルコールが好ましい。また、部分鹸化された、疎水修飾された、加水分解度80〜95モル%を有し、かつヘップラ粘度(4%の水溶液中)1〜30mPasを有するポリビニルアルコールも好ましい。このための例は、酢酸ビニルと疎水性のコモノマー、例えばイソプロペニルアセテート、ビニルピバレート、ビニルエチルヘキサノエート、5又は9〜11個の炭素原子を有する飽和のα位で分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、ジアルキルマレイネート及びジアルキルフマレート、例えばジイソプロピルマレイネート及びジイソプロピルフマレート、塩化ビニル、ビニルアルキルエーテル、例えばビニルブチルエーテル、オレフィン、例えばエテン及びデセンとの部分鹸化された共重合体である。疎水性単位の割合は、部分鹸化されたポリビニルアルコールの全質量に対して、有利には0.1〜10質量%である。また前記のポリビニルアルコールの混合物を使用することもできる。
【0041】
最も有利には、加水分解度85〜94モル%と、ヘップラ粘度(4%の水溶液中)3〜15mPas(ヘップラによる20℃での方法、DIN53015)を有するポリビニルアルコールである。前記の保護コロイドは、当業者に公知の方法により得ることができ、一般に、該保護コロイドは、重合に際して、モノマーの全質量に対して全体で1〜20質量%の量で添加される。
【0042】
乳化剤の存在下に重合させる場合には、その量は、モノマー量に対して1〜5質量%である。好適な乳化剤は、アニオン系、カチオン系の乳化剤と同様に、非イオン系の乳化剤でもあり、例えばアニオン系界面活性剤、例えば8〜18個の炭素原子の鎖長を有するアルキルスルフェート、疎水性基中に8〜18個の炭素原子を有し、かつ40個までのエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位を有するアルキルエーテルスルフェート又はアルキルアリールエーテルスルフェート、8〜18個の炭素原子を有するアルキルスルホネート又はアルキルアリールスルホネート、スルホコハク酸と一価のアルコール又はアルキルフェノールとのエステル及び半エステル、又は非イオン系界面活性剤、例えば8〜40個のエチレンオキシド単位を有するアルキルポリグリコールエーテル又はアルキルアリールポリグリコールエーテルである。
【0043】
重合の完了後に、残留モノマーの除去のために、この用途で知られた方法で後重合させてよく、一般にレドックス触媒により開始された後重合によって行ってよい。揮発性の残留モノマーは、蒸留によって、有利には減圧下で、かつ場合により不活性なエントレイナーガス(Schleppgasen)、例えば空気、窒素又は水蒸気を中に又は上に導きつつ除去することもできる。
【0044】
こうして得られた水性分散液は、30〜75質量%、有利には50〜60質量%の固体含量を有する。
【0045】
また場合により、水不溶性の被膜形成性の重付加ポリマー及び重縮合ポリマー、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ナフタリンホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂が重合のための保護コロイドとして適しており、これらはまた場合によりそのオリゴマー型の前駆生成物の形であってもよい。
【0046】
水中に再分散可能なポリマー粉末の製造のために、該水性分散液を、場合により乾燥助剤として保護コロイドを添加した後に、例えば流動床乾燥、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって乾燥させる。分散液を噴霧乾燥させることが好ましい。噴霧乾燥は、この場合に、通常の噴霧乾燥装置中で行われ、その際、噴霧は、1成分、2成分又は多成分ノズルを用いて又は回転ディスクを用いて実施することができる。出口温度は、一般に、装置と樹脂のTgと所望の乾燥度に応じて、45℃〜120℃の範囲、有利には60℃〜90℃の範囲で選択される。
【0047】
一般に、乾燥助剤(保護コロイド)は、分散液のポリマー成分割合に対して3〜30質量%の全量で使用される。有利には、ポリマー割合に対して5〜20質量%で使用される。
【0048】
適した乾燥助剤は、部分鹸化されたポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;水溶性形の多糖類、例えばデンプン(アミロース及びアミロペクチン)、セルロース及びそのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体;タンパク質、例えばカゼイン又はカゼイン塩、大豆タンパク質、ゼラチン;リグニンスルホネート;合成重合体、例えばポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートとカルボキシ官能性のコモノマー単位との共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸及びその水溶性コポリマー;メラミンホルムアルデヒドスルホネート、ナフタリンホルムアルデヒドスルホネート、スチレンマレイン酸コポリマー及びビニルエーテルマレイン酸コポリマーである。有利には、ポリビニルアルコールとは別の保護コロイドを乾燥助剤として使用せず、その際、保護コロイドとして有利なポリビニルアルコールは、有利には乾燥助剤としても使用される。
【0049】
ジェミニ型界面活性剤は、重合の開始前に、エチレン性不飽和モノマーと一緒に混合してよい。それに代えて、ジェミニ型界面活性剤を、エチレン性不飽和モノマーの重合の間に添加してもよい。同様に、ジェミニ型界面活性剤の一部を、重合の開始前にエチレン性不飽和モノマーに混加し、そして残りの部分のジェミニ型界面活性剤を、エチレン性不飽和モノマーの重合の間に添加してよい。
【0050】
有利には、ジェミニ型界面活性剤を、重合の完了後に相応の重合分散液に添加することが行われる。特に好ましくは、ポリマー分散液の乾燥前にジェミニ型界面活性剤を添加することが行われる。そのために、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を水性ポリマー分散液に添加して、引き続きそうして得られた混合物を上述の方法に相応して乾燥させる。代替的な特に好ましい一実施態様においては、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を、水性ポリマー分散液の乾燥の間に添加してもよい。
【0051】
それに代えて、乾燥されたポリマー粉末と1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤とを混合してもよい。
【0052】
水性ポリマー分散液の乾燥のための噴霧において、しばしば、ベースポリマーに対して3質量%までの消泡剤の含有率が有利であると見なされる。特に低いガラス転移温度を有するポリマー粉末の場合に、ブロッキング安定性の改善により貯蔵性を高めるために、得られたポリマー粉末をブロッキング防止剤(凝結防止剤)と、ポリマー成分の全質量に対して有利には30質量%までで混合することができる。ブロッキング防止剤のための例は、有利には10nm〜100μmの範囲の粒度を有する炭酸カルシウムもしくは炭酸マグネシウム、タルク、石膏、ケイ酸、カオリン、メタカオリン、焼結カオリン、ケイ酸塩である。
【0053】
乾燥されるべき混合物の粘度は、固体含有率を介して、1500mPas未満(20回転及び23℃でのブルックフィールド粘度)、有利には500mPas未満の値が得られるように調整される。乾燥されるべき混合物の固体含有率は、35%より高い、好ましくは40%より高い。
【0054】
応用技術的特性の改善のために、乾燥に際して他の添加剤を添加することができる。有利な実施態様で含まれる分散粉末組成物の他の成分は、例えば顔料、充填剤、気泡安定剤、疎水化剤又はセメント液化剤である。
【0055】
水中に再分散可能な分散粉末組成物は、特に建築化学製品に使用するのに適している。該組成物は、単独で又は従来のポリマー分散液もしくは分散粉末と組み合わせて、場合により水硬性結合剤、例えばセメント(ポルトランドセメント、アルミン酸セメント、火山土セメント、スラグセメント、マグネシアセメント、リン酸塩セメント)、石膏及び水ガラスと組み合わせて、レベリング材(Verlaufsmasse)、建築用接着剤、プラスター、下地材、目地モルタル、封止スラリー又はペイントの製造のために使用することができる。建築用接着剤とは、タイル用接着剤又は断熱用接着剤であり、それらは該分散粉末組成物の好ましい使用分野である。分散粉末組成物のために好ましい使用分野は、レベリング材であり、特に好ましいレベリング材は、自己水平性の床下地材及び床張り材である。
【0056】
レベリング材で使用するためには、分散粉末組成物を相応の配合物に混加する。有利には、0.5〜10質量%の分散粉末組成物を添加する。前記配合物は、更に5〜80質量%の無機の、水硬性の結合剤、例えばセメント、石膏もしくはそれらの混合物を含有する;好ましくはセメントが結合剤として使用される。更なる配合成分は、5〜80質量%の無機充填材、例えば砂、石英粉、白亜、石灰岩粉、フィルター灰又はそれらの混合物である。レベリング特性の更なる改善のために、乾燥混合物に、場合によりなおもカゼインもしくはセメント液化剤のようなレベリング促進性添加剤を添加してよい。質量%での表示は、その際、常にその都度のレベリング材についての配合の100質量%乾燥質量に対するものである。即使用可能なレベリング材は、最後に、水を上述の乾燥混合物に混加することによって得られる。
【0057】
その即使用可能なレベリング材は、自己水平性の被覆の製造のために使用することができる。自己水平性の床下地材としての使用もしくは床張り材の製造のための使用が好ましい。
【0058】
自己水平性の被覆の適用によって、下地を、平坦化し、平らにし又は平滑化することができる。このために、即使用可能なレベリング材を、相応の下地上に注ぎ込み、広げ、そして最後に乾燥させる。一般に、層厚0.5〜30.0mmが得られる。本発明による様式では、しかしながらより厚い層を適用した場合でさえも、例えば40.0mm又は50.0mmの層厚でさえも、優れた機械的強度及び硬度を有する平坦な表面が得られる。
【0059】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、本発明の如何なる制限も行うものではない。
【実施例】
【0060】
分散粉末組成物の製造:
該粉末を、エチレン−酢酸ビニル−共重合体(FG=50%)の水性分散液と、鹸化度88モル%及びヘップラによる粘度4〜13mPasを有するポリビニルアルコール8質量%とからなり、場合により0.4質量%の添加剤が添加された混合物の噴霧乾燥によって製造したが、その際、質量%での表示は、それぞれエチレン−酢酸ビニル−共重合体の使用される量に対するものである。
【0061】
該混合物を、2成分ノズルによって4バールの噴霧圧縮空気と一緒に噴霧した。形成された小滴を、125℃に加熱された空気で並流において乾燥させた。得られた乾燥粉末を、20質量%の商慣習のブロッキング防止剤と混合した。
【0062】
実施例1:
添加剤として式(2)
【化4】

のアルキンジオール誘導体(Surfynol(登録商標)104(Air Products社の商品名)としても知られている)を有する分散粉末組成物。
【0063】
実施例2:
添加剤としてSurfynol(登録商標)MD−20(Air Products社の商品名)を有する分散粉末組成物。Surfynol(登録商標)MD−20は、ポリエチレングリコールエーテルを有するオキシラン[[(2−エチルヘキシル)オキシ]メチル]2当量と、式(2)のアルキンジオール誘導体1当量との反応生成物である。
【0064】
比較例3:
添加剤としてSilfoam(登録商標)SD860(Wacker Chemie社の商品名)を有する分散粉末組成物。Silfoam(登録商標)SD860は、低い割合の有機官能性シリコーン油を有する、有機成分を基礎とする自己分散性のシリコーン消泡剤である。
【0065】
比較例4:
添加剤を添加していない分散粉末組成物。
【0066】
調査の過程において、実施例1〜2並びに比較例3〜4により得られた分散粉末組成物の粉末特性を測定し(第1表を参照)、自己水平性の床下地材における加工特性と表面特性を調べた(第2表を参照)。
【0067】
耐ブロッキング性(BF)の測定:
耐ブロッキング性の測定のために、調査される粉末をねじ込み口金を有する鉄管中に充填し、次いで金属製ポンチで負荷をかけた。負荷をかけつつ、乾燥棚において50℃で16時間貯蔵した。室温に冷却した後に、該粉末を管から取り出し、ブロッキング安定性を定性的に粉末の圧壊によって測定した(第1表を参照)。ブロッキング安定性は、以下のとおり階級付けした:
1 = 非常に良好なブロッキング安定性
2 = 良好なブロッキング安定性
3 = 十分なブロッキング安定性
4 = ブロッキング安定性なし;粉末は圧壊後にはもはや易流動性でない。
【0068】
沈降挙動(RA)の測定:
再分散液の沈降挙動は、再分散可能な粉末の再分散可能性についての尺度として用いられる。調査されるべき粉末を、50質量%の濃度で水中に、強い剪断力の作用によって再分散させた。
【0069】
沈降挙動を、次いで希釈された再分散液(0.5%固体含量)で測定した。このために、この分散液100mlを目盛管中に充填し、そして固体の沈降高さを測定する。結果は、24時間後のmmの沈降で報告される。7より大きな値は、粉末の不十分な再分散を示している(第1表を参照)。
【0070】
応用技術的調査のために、以下の組成の床下地材を使用した。
ポルトランドセメント 20質量%
EFA−充填材(静電フィルター灰−充填材) 4質量%
石英砂 50質量%
炭酸カルシウム充填材 22.7質量%
カゼイン 0.3質量%
場合により(比較例)実施例で挙げた添加剤
床下地材の列記された成分及び(比較例)実施例で挙げた添加剤から、激しい混合によって乾燥混合物を製造した。
【0071】
その乾燥混合物を水と混合し(乾燥混合物100質量%に対して16〜18質量%の水)、そして激しく混和した。こうして得られたモルタルを注ぎ込み、4mmの層厚の塗膜とした。
【0072】
実施例5:
添加剤として実施例1からの分散粉末組成物を有する床下地材(床下地材の全質量に対して3質量%)。
【0073】
実施例6:
添加剤として実施例2からの分散粉末組成物を有する床下地材(床下地材の全質量に対して3質量%)。
【0074】
比較例7:
添加剤として比較例3からの分散粉末組成物を有する床下地材(床下地材の全質量に対して3質量%)。
【0075】
比較例8:
添加剤として比較例4からの分散粉末組成物を有する床下地材(床下地材の全質量に対して3質量%)。
【0076】
比較例9:
比較例4からの分散粉末組成物2.988質量%及び添加剤としての式(2)のアルキンジオール誘導体(キャリア材料に対して75%;Air Products社の商品名Surfynol(登録商標)104としても知られる)0.012質量%を有する床下地材(質量%での表示は、床下地材の全質量に対するものである)。
【0077】
比較例10:
比較例4からの分散粉末組成物2.988質量%と添加剤としてのSurfynol(登録商標)MD−20(Air Produkts社の商品名)0.012質量%を有する床下地材(質量%での表示は、床下地材の全質量に対するものである)。Surfynol(登録商標)MD−20は、ポリエチレングリコールエーテルを有するオキシラン[[(2−エチルヘキシル)オキシ]メチル]2当量と、式(2)のアルキンジオール誘導体1当量との反応生成物である。
【0078】
比較例11:
0.12質量%のSurfynol(登録商標)MD−20を添加剤として有する床下地材(質量%での表示は、床下地材の全質量に対するものである)。Surfynol(登録商標)MD−20は、ポリエチレングリコールエーテルを有するオキシラン[[(2−エチルヘキシル)オキシ]メチル]2当量と、式(2)のアルキンジオール誘導体1当量との反応生成物である。
【0079】
比較例12:
どの添加剤も有さない床下地材。
【0080】
表面性質(OB)の試験
その評価は、視覚的に以下の評価スケールで行った:
1 = 非常に平滑、クレーター及びピンホールなし
2 = 非常に平滑、クレーターなし、わずかなピンホール
3 = 平滑、僅かなクレーター、多くのピンホール
4 = 平滑、幾らかのクレーター、多くのピンホール
硬度と引掻強さ(HK)の試験:
硬度と引掻強さは、ナイフによる引っ掻きによって検査した。それは、下地材の耐摩耗性に関する情報ともなる。
【0081】
評価スケール:
1 = 非常に硬質、非常に強い結合、非常に引っ掻きに強い
2 = 硬質、強い結合、引っ掻きに強い
3 = 適度に硬質、適度に結合、適度に引っ掻きに強い
4 = 適度に硬質、不十分な結合、僅かな引掻強さ
分散粉末組成物もしくは分散粉末の耐ブロッキング性BF及び沈殿挙動PAの検査結果を、第1表にまとめる。そしてモルタルの表面性質OB並びに硬度及び引掻強さHKの結果を、第2表にまとめる。
【0082】
第1表:分散粉末組成物:
【表1】

【0083】
第1表から、分散粉末組成物(第1表、実施例1〜2)の粉末特性と標準製品(第1表、比較例3〜4)の相応の特性は、同等の高い水準にあることが分かる。
【0084】
しかしながら、本発明による床下地材(第2表、実施例5〜6)の応用技術的特性は、商慣習の添加剤を有する分散粉末組成物(第2表、比較例7)又は添加剤を有さない分散粉末組成物(第2表、比較例8)を含有する床下地材の相応の特性よりも明らかに良好である。乾燥混合物の製造に際してのジェミニ型界面活性剤の直接的な添加(第2表、比較例9及び10)の場合には、本発明による床下地材(第2表、実施例5〜6)の応用技術的特性は達成されない。
【0085】
モルタルに分散粉末を添加しなかった全ての場合において、非常に不十分な表面特性及び硬度を有するモルタルが得られた(第2表、比較例11〜12)。特に不十分なのは、分散粉末もジェミニ型界面活性剤も含まない、比較例12(第2表)に記載されるモルタルの場合の応用技術的特性であった。
【0086】
第2表:自己水平性の床下地材:
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーの重合体を基礎とする水中に再分散可能な分散粉末組成物であって、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤が含まれていることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項2】
請求項1記載の分散粉末組成物であって、1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルカルボン酸のビニルエステル又はメタクリル酸もしくはアクリル酸と1〜15個の炭素原子を有する非分枝鎖状もしくは分枝鎖状のアルコールとのエステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、ジエン又はビニルハロゲン化物を含む群から選択される1もしくは複数のエチレン性不飽和のモノマーが使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の分散粉末組成物であって、酢酸ビニル、又は酢酸ビニルとエチレン、又は酢酸ビニルと5〜13個の炭素原子を有するα分枝したモノカルボン酸とのビニルエステル、又は酢酸ビニルとVeoVa9(登録商標)と場合によりエチレン、又は酢酸ビニルとVeoVa10(登録商標)と場合によりエチレン、又は酢酸ビニルとラウリン酸ビニルと場合によりエチレン、又はエチレンと5〜13個の炭素原子を有するα分枝したモノカルボン酸のビニルエステルを含む群から選択される1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーが使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の分散粉末組成物であって、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートもしくはt−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートもしくはt−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はノルボルニルアクリレートを含む群から選択される1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーが使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の分散粉末組成物であって、ジェミニ型界面活性剤としてアルキンジオール誘導体が使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項記載の分散粉末組成物であって、ジェミニ型界面活性剤として、アルコール基の一方もしくは両方がポリエチレングリコール基で置換されているアルキンジオール誘導体が使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項7】
請求項1から4までのいずれか1項記載の分散粉末組成物であって、ジェミニ型界面活性剤として、エポキシドとアルキンジオール誘導体との反応生成物が使用され、その際、アルキンジオール誘導体のアルコール基の一方もしくは両方がエポキシドで変換されていてよいことを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の分散粉末組成物であって、ジェミニ型界面活性剤として、一般式(1)
RR1(R2O)C−C≡C−C(OR2)R1R (1)
[式中、
R及びR1は、それぞれ、直鎖状もしくは分枝鎖状の、置換もしくは非置換の、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基もしくはアルコキシアルキル基を表し、かつ
2は、水素原子又は式(−CH2−CH2−O)n−CH2−CH2−OH(n=0.5〜50)のポリエチレングリコール鎖を表し、その際、
個々の基R、R1及びR2は、それらの意味をそれぞれ互いに無関係にとりうる]で示されるアルキン誘導体が使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項9】
請求項8記載の分散粉末組成物であって、ジェミニ型界面活性剤として、一般式(1)で示され、その式中、Rが、イソブチル基、ブチル基もしくはプロピル基を意味し、かつR1が、メチル基もしくはエチル基を意味することを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項10】
請求項1から4までのいずれか1項記載の分散粉末組成物であって、ジェミニ型界面活性剤として、式(2)
【化1】

で示されるアルキンジオール誘導体が、又はSurfynol(登録商標)MD−20(ポリエチレングリコールエーテルを有するオキシラン[[(2−エチルヘキシル)オキシ]メチル]2当量と式(2)のアルキンジオール誘導体1当量との反応生成物)と一緒に使用されることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の分散粉末組成物であって、分散粉末組成物の全質量に対するジェミニ型界面活性剤の割合が、0.01〜5.00質量%であることを特徴とする分散粉末組成物。
【請求項12】
1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーを水性媒体中で乳化重合もしくは懸濁重合させ、引き続きそこで得られた水性分散液を乾燥させることにより水中に再分散可能な分散粉末組成物を製造する方法において、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を混加することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12記載の分散粉末組成物の製造方法において、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーと混合し、そして引き続きエチレン性不飽和モノマーを重合させることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12記載の分散粉末組成物の製造方法において、1もしくは複数のエチレン性不飽和モノマーを重合させ、そしてその間に1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12記載の分散粉末組成物の製造方法において、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を乾燥されたポリマー粉末と混合することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12記載の分散粉末組成物の製造方法において、1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を水性ポリマー分散液と混合し、そしてこうして得られた混合物を乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項12記載の分散粉末組成物の製造方法において、水性ポリマー分散液を乾燥させ、そしてその間に1もしくは複数のジェミニ型界面活性剤を添加することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1から11までのいずれか1項記載の分散粉末組成物を、建築化学製品において用いる使用。
【請求項19】
請求項1から11までのいずれか1項記載の分散粉末組成物を、レベリング材、建築用接着剤、タイル用接着剤、断熱接着剤、プラスター、下地材、目地モルタル、封止スラリー又はペイントにおいて用いる使用。
【請求項20】
請求項1から11までのいずれか1項記載の分散粉末組成物を、自己水平性の床下地材又は床張り材において用いる使用。

【公開番号】特開2008−111125(P2008−111125A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278071(P2007−278071)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(300006412)ワッカー ポリマー システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (29)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Polymer Systems GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johannes−Hess−Strasse 24, D−84489 Burghausen, Germany
【Fターム(参考)】