説明

ジェル充填クロージャ及び分岐ケーブル接続部

【課題】絶縁性及び防水性を確保しつつ、容易に組み立てることができるとともに、接続部分の、様々な径、形状、分岐数に関係なく1種類のケースで対応でき、コストの低廉化を図ること。
【解決手段】圧縮端子121がそれぞれ取り付けられた電力ケーブル110の端部同士を、ボルト122及びナット124を介してケーブルの接続部分120を形成する、クロージャ130は、端面部131、132から電力ケーブル110を突出させ、中空部140で接続部分120及び接続部分120に連続する部位を収容する。接続配設部150は、クロージャ130内の中空部140で、ジェル160が充填される周囲と仕切られており、第1及び第2ケース130a、130bを閉じた際に、ジェル160は、端面部131、132と電力ケーブル110との隙間からが流出するとともに、接続配設部150の内部にもジェルが流入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルや電気通信ケーブルなどの接続部分に用いられるジェル充填クロージャ及びこれを備える分岐ケーブル接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部では、美観上の理由からも、低圧配電ケーブル幹線の地中化が急速に進められており、地中の低圧配線ケーブルの幹線から分岐して所定の箇所に引き込む分岐工事が増加してきている。
【0003】
低圧地中配電線系統において使用する分岐接続部では、特許文献1に示すように、接続されるケーブル導体同士の接続部分を収縮性成型品(常温収縮チューブ)で被覆して、接続部分の絶縁性及び防水性を確保するものが知られている。
【0004】
このような従来の分岐接続部における収縮性成形品の端部には、収縮チューブまたはパテテープ等が巻き付けられている。
【0005】
このように接続部を収縮成型品で被覆する構成では、端部を収縮チューブまたはパテテープ等で巻き付けられているものの、ケーブル導体を伝って、水分が収縮性成型品の内部に浸入する恐れがある。
【0006】
また、収縮性成型品は、使用前に、拡径された状態で保管されているため、保管期間が長くなるとゴムの応力が緩和され、締め付け力が低下する恐れがある。さらに、収縮性成型品を用いた分岐接続部の構造では、例えば、ケーブルの分岐を増減する場合等、既設の収縮性成型品を破棄して、新たに付け替える必要が生じる。
【0007】
これに対して、特許文献2に示すように、ケーブル端部の導体同士を接続した接続部分を予めジェルやシーラントなどの充填材(ここではジェル)を充填したケースに収容し、接続部分の防水性を確保するクロージャの構造が知られている。
【0008】
このクロージャでは、クロージャ本体を構成するケース内に、ジェルを充填することによって、ケース内の水密性を向上させて、ケーブル導体を伝わりケース内に浸入する水分をくい止めている。
【0009】
このように充填材を用いた接続部では、水密性を確保するためにケーブル、ケーブル導体および圧縮端子部と充填材との界面に規定以上の圧力を加圧させる必要がある。このため、ケーブルが導出されるケースの端面から漏れ出す量のジェルを充填する。
【0010】
この構成によれば、複雑な接続部分の形状に対しても、ジュルが充填されたケースに接続部分を配置するだけで、容易に対応できる。
【特許文献1】特開2000−4516号公報
【特許文献2】特表平11−515160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のジェル等の充填材を用いたクロージャによる分岐接続部の構造では、以下のような問題がある。
【0012】
1)充填する充填材は、長期間経過してもケース外に流出しない粘性を有するため、充填材の界面の圧力を高くするためにケース内に過剰に入れすぎると、ジェル自体の粘性による抵抗により、ケースの端面から外部に十分漏れ出ることなくケース内に残留する場合がある。これにより、ケースを閉めることができず、無理に閉めることで内部圧力によってケースが歪み、変形する恐れがある。
【0013】
2)ケース内に充填する充填材が不足している場合、水密性が低下する。
【0014】
3)ジェルは工場等で事前にケース内に充填され、ケースとともに接続現場に持ち込まれるため、ケース内に収容するケーブル及びケーブル同士の接続部分の、様々な径、形状、分岐数に対応するよう、ケース内に充填するジェル量を最適な量に調整することは困難である。
【0015】
このため、ケーブルサイズや分岐数毎に、それぞれに対応した複数のジェル充填ケースを用意し、適宜選択して使用している。
【0016】
さらに、無理してケースを閉じた際に加圧されるジェルによる歪み発生に対応して、ケース自体の設計強度を上げる必要がありその分、コストが嵩むという問題がある。
【0017】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、絶縁性及び防水性を確保しつつ、容易に組み立てることができるとともに、接続部分の、様々な径、形状、分岐数に関係なく1種類のケースで対応でき、コストの低廉化が図られたジェル充填クロージャ及びこれを備える分岐ケーブル接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のジェル充填クロージャは、少なくとも2本の電力ケーブルの端部同士が接続部材によって脱着自在に電気的に接続されてなる接続部分を囲み、当該接続部分を被覆するジェル充填クロージャであって、それぞれ底面部、当該底面部から立設された2つの長手方向の側面部及び2つの端面部で規定された中空部を有し、互いの中空部を閉じるように固定して、前記端面部のうち少なくとも一つに前記電力ケーブルを挿通して外部に突出させた状態で前記接続部分及び前記電力ケーブルにおいて前記接続部分に連続する部位を収容する第1ケース及び第2ケースと、前記第1ケース及び第2ケースの少なくとも一方の底面部から立設する仕切壁部によって中空部内で仕切られ、前記接続部分が配設される前記接続配設部と、前記第1ケース及び第2ケースの中空部において、前記接続配設部を除く領域に充填されたジェルとを有し、前記接続配設部に前記接続部分を配設して前記第1ケース及び第2ケースを固定した際に、前記電力ケーブルが突出した端面部と、この端面部を挿通する電力ケーブルとの間からジェルが流出するとともに、前記仕切壁部には前記接続部分における接続部材の一部が挿通され、この一部が挿通された前記仕切壁部の隙間から内部領域にジェルが流入する構成を採る。
【0019】
本発明の分岐ケーブル接続部は、端部同士が接続部材によって脱着自在に電気的に接続された少なくとも2本の電力ケーブルと、前記少なくとも2本の電力ケーブルの接続部分を囲み、当該接続部分を被覆する上記構成のジェル充填クロージャとを有し、前記ジェル充填クロージャでは、前記接続配設部に前記接続部分を配設して前記第1ケース及び第2ケースが、互いの中空部を閉じるように固定されることによって、前記第1ケース及び第2ケースの端面部のうち少なくとも一つから前記電力ケーブルが突出するとともに、前記中空部で、前記接続部分及び前記電力ケーブルにおいて前記接続部分に連続する部位が収容され、前記接続配設部では、前記仕切壁部には前記接続部分における接続部材の一部が挿通され、この一部が挿通された前記仕切壁部の隙間から、前記中空部において前記接続配設部を除く領域に充填されたジェルが内部領域に流入している構成を採る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、絶縁性及び防水性を確保しつつ、容易に組み立てることができるとともに、接続部分の、様々な径、形状、分岐数に関係なく1種類のケースで対応でき、コストの低廉化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係るジェル充填クロージャを用いた分岐接続部の構成を示す図、図2は分岐接続部の側面図である。なお、図2では、便宜上、クロージャにおいて断面部分を示すハッチングは省略している。
【0023】
図1及び図2に示す分岐接続部(分岐ケーブル接続部)100は、幹線ケーブル111と、幹線ケーブル111に接続される分岐線ケーブル(ここでは第1〜第3分岐線ケーブル)112〜114との接続部分120と、当該接続部分120を収容するクロージャ(ジェル充填クロージャ)130と、クロージャ130内に充填されたジェル160とを有する。
【0024】
幹線ケーブル111及び第1〜第3分岐線ケーブル112〜114のそれぞれの端部には、露出された導体に、圧縮端子121がそれぞれかしめて取り付けられている。なお、互いに接続される電力ケーブルにおいて、幹線ケーブルを幹線ケーブル111としたが、複数のケーブル接続されるものであれば、どのケーブルを幹線ケーブル又は分岐線ケーブルとしてもよい。例えば、ケーブル111を分岐線ケーブル、ケーブル112〜114の何れかを幹線ケーブルとしてもよい。
【0025】
略並行に配置された第1分岐線ケーブル112及び幹線ケーブル111の端部と、略並行に配置された第2分岐線ケーブル113及び第3分岐線ケーブル114の端部とが突き合わせられ、幹線ケーブル111及び第1〜第3分岐線ケーブル112〜114は、同一方向に延在するように配置されている。
【0026】
これら幹線ケーブル111及び第1〜第3分岐線ケーブル112〜114の端部の導体にそれぞれ取り付けられた圧縮端子121は、先端側に突出した平板部121aを備える。
【0027】
それぞれのケーブル111〜114は、それぞれの圧縮端子121の平板部121aを止着部材122、124により互いに導通するように接合され、これら止着部材122、124と、止着部材で止着された圧縮端子121の先端の平板部121aによりケーブルの接続部分120が形成されている。
【0028】
ここでは止着部材は、平板部121aに形成されたネジ穴を挿通するボルト122と、当該ボルトに螺合されるナット124とにより構成されている。
【0029】
それぞれの平板部121a同士は積層され、同一方向に連通したボルト穴に挿通されたボルト122にナット124を螺合することによって、平板部121a同士は導通させた状態で着脱自在に接合されている。
【0030】
このように接続されたケーブル111〜114は、内部にジェル160が充填されたクロージャ130に、ケーブル、ケーブル導体部および圧縮端子121が収容され、接続部分120はジェルが充填されていない接続配設部150に配設しつつ、クロージャ130の両端面部131,132のそれぞれを挿通して、それぞれ離間する方向に、第1分岐線ケーブル112及び幹線ケーブル111と、第2分岐線ケーブル113及び第3分岐線ケーブル114とが導出するように薄肉の挿通壁131a、132aで固定されている。
【0031】
クロージャ130は、図2に示すように、ケーブルを挟み2分割され、それぞれ空隙体である第1ケース130a及び第2ケース130bにより形成されている。
【0032】
クロージャ130は、第1ケース130a及び第2ケース130bを、空隙部分140a,140b(図2参照)同士が対向するように閉じて固定することで平面視矩形平板状に形成される。
【0033】
なお、第1ケース130a及び第2ケース130bは、中空部140を囲む開口縁において、ケーブルの延在方向に沿う辺部に形成された爪部及び係止孔の位置のみ異なり、主要部はほぼ同様の構成である。したがって、ここでは図1に示す第1ケース130aの構成のみ説明し、第2ケース130b(図2参照)の説明は省略する。
【0034】
図3〜図6は、クロージャを構成するケースの説明に供する図であり、図3は、ジェルが充填された第1ケースを示す図、図4は図3のケースの側面図、図5(a)は、図3のA−A’線矢視断面図、図5(b)は図3のB−B’線矢視断面図、図6は図3のC−C’線矢視断面図である。
【0035】
第1ケース130aにおいてケーブルの延在方向に沿う側面部133、134には、閉じた際に、第2ケース130bの両側面部に形成された係止孔及び爪部にそれぞれ係合する爪部135及び係止孔136が形成されている。
【0036】
第1ケース130aの爪部135及び係止孔136を、第2ケース130bにおいてそれぞれ互いに対応する爪部及び係止孔に係合することによって、第1ケース130aは、第2ケース130bに、ケーブルの接続部分120(図1参照)を覆う箱状に形成される。
【0037】
これら第1ケース130a及び第2ケース130bのそれぞれ内部にジェル160を充填してケーブル110(図1、幹線ケーブル111、分岐線ケーブル112〜114)を挟み込むことで当該ケーブル110を収容している。
【0038】
第1ケース130aは、図3、図5、図6に示すように、矩形板状の底面部137と底面部137の周囲に立設される端面部131、132及び側面部133、134とで空隙部分140a(第2ケース130bでは空隙部分140b)が規定されている。
【0039】
また、第1ケース130aでは、ケーブル110の延在方向で離間する端面部131、132は、ケーブル111〜114を押圧して破断させることで、それぞれのケーブルが挿通される薄肉の挿通壁131a、132aが形成され、さらに挿通壁の外側には切欠部131b、132bが形成されている(図3及び図6参照)。
【0040】
これら挿通壁131a、132aおよび切欠部131b、132bを介してそれぞれの端面部131、132から幹線ケーブル111及び第1分岐線ケーブル112と、第2分岐線ケーブル113及び第3分岐線ケーブル114が外方に導出されている(図1参照)。
【0041】
また、これら端面部131、132の挿通壁131a、132aとケーブル110との隙間は、第1ケース130a及び第2ケース130b内に充填されるジェル160が内部から漏れ出すことによって充填される。これにより、ケーブルの接続部分120は密閉された状態となっている。切欠部131b、132bはクロージャーの組立や分岐工事の際にクロージャー近傍でケーブルを曲げても接続部分120等が動かないよう、ケーブル110の上下左右方向の動きを抑制する役目がある。
【0042】
また、第1ケース130aの略中央部分に形成された接続配設部150は、第1ケース130a及び第2ケース130bの底面部137と仕切壁部152とによって、箱状に形成され、ジェル160が充填される領域と仕切られている。
【0043】
ジェル160が充填される領域と接続配設部150において接続部分が配設される内部領域とを仕切る仕切壁部152は、底面部137からケーブルの配設方向に沿って互いに平行に延在するように立設された側壁部153、154と、側壁部153、154のそれぞれの両端部から直交して立設され、破断されることによりケーブル110を挿通させる薄板の挿通壁部156、157と、を有する。
【0044】
ここでは、側壁部153、154は、それぞれの両端部を互いに対向する方向に突出させることによって、底面からコ字状に立設されてなり、互いに向かい合うコ字状の内部にケーブルの接続部分120が配設される。これらコ字状の側壁部153、154は、ケーブルの接続部分120の位置決めを行う。
【0045】
挿通壁部156,157は、ケーブル110の延在方向と交差する方向(ここでは直交する方向)に配置され、第1ケース130aの空隙部分140aの開口方向からケーブル110を押圧することで破断される。この破断によって、挿通壁部156、157には、接続部分120を接続配設部150内に配置させた状態で、当該接続部分120から延びるケーブル110が挿通される。
【0046】
本実施の形態において充填材として用いたジェル160は、グリースから、チキソトロピック組成物ないし流動性のエキステンダーを配合した(extended)ポリマー系までの幅広い系列の材料をカバーするものであり、ここでは、流体のエキステンダーが配合された固形物質である材料のカテゴリーに関して用いている。また、ジェル160は、定常状態流れを示さない実質的には希釈された系である。例えば、ジェル160としては、ポリマーゲル、流体エキステンダーを配合した系等のシリコーン(オルガノポリシロキサン)ゲル等が挙げられ、特に好ましいジェル160としては、ジビニル末端ポリジメチルシロキサン、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン、ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体、ポリジメチルシロキサン、及び1,3,5,7−テトラビニル−テトラメチルシクロテトラシロキサン(適当なポットライフを付与するための反応抑制剤)等の混合物から製造されるものが挙げられる。また、ポリウレタンゲル、並びにナフテン系若しくは非芳香族系の又は低芳香族化合物含量の炭化水素油のエキステンダー油が配合されているスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレン(SEPS)又はスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレン(SEBS)系のものを使用してもよい。
【0047】
次に、本実施の形態に係る分岐接続部の組立方法について説明する。
【0048】
まず、相互接続されるケーブル110(ここでは幹線ケーブル111、第1〜第3分岐線ケーブル112〜114)の端部において導体を被覆する絶縁体部分を段剥ぎして導体を露出させ、これら導体に圧縮端子121をそれぞれかしめて取り付ける。
【0049】
これらケーブル110のそれぞれに取り付けられた圧縮端子121を重ね合わせて、それぞれのネジ穴にボルトを挿入し、挿入したボルトにナットを螺合することによって、ケーブル同士を接続する。
【0050】
ここでは、幹線ケーブル111と第1分岐線ケーブル112とを互いの圧縮端子121を並べて並行に配置し、これら幹線ケーブル111と第1分岐線ケーブル112のそれぞれに、圧縮端子121を重ね合わせて第2分岐線ケーブル113及び第3分岐線ケーブル114を互いに並行に配置する。
【0051】
そして、重ね合わされたそれぞれのケーブル111〜114の圧縮端子121をボルトナット122、124により導通させた状態で脱着自在に接続する。これにより、ケーブルの接続部分120が形成される。
【0052】
なお、これらケーブル111〜114同士の接続は、端子接続バー等の治具を用いて行うようにしてもよい。
【0053】
このように圧縮端子121同士を接続したケーブル111〜114を第1ケース130a及び第2ケース130bのうちの一方(ここでは図3に示す第1ケース130a)にセットする。
【0054】
このセットは、接続部分120をジェルが充填されていない第1ケース130a内の接続配設部150内に配置して、接続部分120の両端側から延びるケーブルを、それぞれジェル160が充填された第1ケース130a内の端面上に配置する。
【0055】
次いで、これらケーブルを端面部131、132の挿通壁131a、132aに押圧して第1ケース130aに固定し、接続部分120が配設された第1ケース130aに、第2ケース130bを、接続部分120を覆うように取り付ける。
【0056】
このとき、第1ケース130a及び第2ケース130b内のジェル160は、中空部140内に配置されたケーブル110によって、中空部140外に押し出され、端面部131、132の挿通壁131a、132aの破断部から外に漏れ出て、ケーブル110との隙間を充填する。また、挿通壁131a、132aから漏れ出せないジェル160は、接続配設部150内に流れる。
【0057】
本実施の形態の分岐接続部100によれば、使用するクロージャ130は、2分割され、内部にジェル160が充填された第1ケース130a及び第2ケース130bで、ケーブルの接続部分120を挟み込むことによって当該接続部分120を被覆してなる。
【0058】
このため、クロージャ130の外部で露出するケーブルにおいて、例えば、ケーブル導体を伝ってクロージャ130内に水分が浸入しようとしても、クロージャ130内のケーブル導体が露出する部分(図1に示す各ケーブル111〜114の端部のケーブル導体において、外周を被覆する絶縁体から導出されて圧縮端子121に至るまでの部分111a〜114a)に接しているジェル160で防ぐことができる。また、常温収縮チューブと異なり、保管による物性の低下は発生せず、常温収縮チューブと比較して、クロージャ130の製造から接続作業に至るまでの保管期間を長くすることができる。
【0059】
さらに、分岐接続部100を開ける必要が生じた場合、容易かつ圧縮端子121およびケーブル111〜114へ損傷を与えることなく開閉することができる。
【0060】
また、クロージャ130内に収容するケーブル110が様々な径、形状、分岐数となっても、クロージャ130内の略中央部分にジェル160が充填されない接続配設部150が形成されているため、ジェル160が端面部131、132の挿通壁131a、132aからの漏出の他に接続配設部150内にも移動できるため、第1及び第2ケース同士を閉めた際に、ケース内に充填するジェル量は最適な量に調整されることとなる。よって、ケーブルサイズや分岐数に応じて複数のケースを用意することなく、1種類のクロージャ130を用いて対応することができ、コストの低廉化を図ることができる。
【0061】
仮に現地で分岐接続部を組み立てる際、第1ケース130a及び第2ケース130b内に、ジェル160を過剰に入れすぎたクロージャを用いた場合でも、ジェル160はケースの端面部131、132の挿通壁部131a、132aの破断部とケーブルの隙間から外部に漏れ出すとともに、ケース略中央部の挿通壁部156、157の破断部とケーブルとの隙間を介して、接続配設部150内に流すことができる。このため、第1ケース130a及び第2ケース130bを変形させることなく、爪部135と爪部と対応する係止孔136とを係合させ閉めることができる。
【0062】
また、組立時における歪み発生に対応して、ケース自在の設計強度を上げる必要はなく、従来と異なり、その分のコストの削減を図ることができる。
【0063】
なお、本実施の形態のジェル充填クロージャにおいて、クロージャ130内で、互いに接続されるケーブルの圧縮端子121の平板部121aは、第1ケース130a及び第2ケース130bの底面部137に対して垂直に配置した状態でボルトナット122、124の締結により接続されたものとしたが、これに限らない。
【0064】
例えば、図7に示すように、平板部121aを第1ケース130a及び第2ケース130bの底面部137と平行に並べて配置し、導電性を有する水平板部(接続部材)159を介してボルトナット122、124により導通するように接続されてもよい。
【0065】
図7は、圧縮端子121を介したケーブルの接続部分120の変形例を示す図であり、図7(a)は、同変形例の平面図、図7(b)は同変形例の側面図である。
【0066】
図7に示すように、クロージャ130内に配設されるケーブル同士では、同一直線上で、端部を互いに突き合わせた状態で配置されたケーブル115、116と平行に、端部を互いに突き合わせた状態で配置された別のケーブル117、118を配置し、それぞれの端部に水平な平板部121aを有する圧縮端子121を取り付ける。これら圧縮端子121の平板部121aを水平板部159に、それぞれ止着部材(ボルト122及びナット124)を介して互い導通させた状態で接合する。この構成では、接続部分120は板状となり、厚みを薄くすることができ、かつ、幹線ケーブル111を切ることなく、その作業を行うことができる。
【0067】
また、クロージャ130を用いた分岐接続部の変形例として図8を用いて説明する。なお、この変形例では、図1に示す分岐接続部と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図8に示すように、分岐接続部200では、同一方向に延在し、重ねられた互いの先端部に取り付けられた圧縮端子121を介して接続された第1及び第2幹線ケーブル111、111Aの接続部分120Aに、これら幹線ケーブル111よりも径が小さい第4分岐線ケーブル119が接続されている。
【0069】
このように構成されたクロージャ130の端面部131、132は、それぞれ幹線ケーブル111、111Aを押圧して破断させることで、ケーブルが挿入される薄肉の挿通壁131a、132aと挿通壁の外側には幹線ケーブル111、111Aとほぼ同径のケーブルが挿入される形状の切欠部131b、132bを有している。
【0070】
この際、第1幹線ケーブル111と対向して平行に配置される第4分岐線ケーブル119において、端面部131の挿通壁および切欠部の内側に位置する部位には、筒状のシース径合わせ用部材(径合わせ用チューブ)174が外嵌されており、挿通壁部131aとの間に、内部から漏れ出るジェル160により密閉されている。
【0071】
これにより、第4分岐線ケーブル119は、端面部131近傍において幹線ケーブル111と同径のものとなっており、切欠部131bとのクリアランスが狭まり、外部からの曲げに対するケーブルの動きを抑制することができる。
【0072】
また、他方の端面部132には、幹線ケーブル111と同径の模擬ケーブル176が挿入されて固定されており、他方の端面部132も内部に充填されるジェル160が漏れ出ることによって挿通壁部132aとの間で密閉された状態となる。
【0073】
このようにシース径合わせ用部材や模擬ケーブルを用いることによって、細径ケーブルの接続や分岐数が少ない場合でも、ジェル160の充填量を調整する必要はなく、1種類のクロージャ130で対応でき、さらにジェル充填量を抑えたクロージャにもなる。
【0074】
また、本実施の形態の分岐接続部100、200に用いられるクロージャ130は、少なくとも2本の電力ケーブル110(幹線ケーブル111、111A、分岐線ケーブル112〜114、119)の端部同士が接続部材(圧縮端子121、ボルトナット122、124)によって脱着自在に電気的に接続されてなる接続部分120、120Aを囲み、接続部分120、120Aを被覆するジェル充填クロージャ130である。これらクロージャ130では、第1ケース130a及び第2ケース130bは、それぞれ底面部137と、底面部137から立設された2つの長手方向の側面部133、134と2つの端面部131、132とで規定された中空部140(空隙部分140a、140b)を有し、互いの中空部140を閉じるように固定して、端面部131、132のうち少なくとも一方から電力ケーブル110を突出させるとともに、接続部分120、120A及び電力ケーブル110において接続部分120、120Aに連続する部位を収容する中空部140を形成する。接続配設部150は、第1ケース130a及び第2ケース130bの少なくとも一方の底面部137から立設する仕切壁部152によって中空部140内で仕切られ、接続部分120、120Aが配設される。
【0075】
ジェル160は、第1ケース130a及び第2ケース130bの中空部140において、接続配設部150を除く領域に充填される。また、接続配設部150では、接続部分120、120Aを配設して第1ケース130a及び第2ケース130bを固定した際に、仕切壁部152に接続部分120、120Aが挿通するとともに、内部領域にジェルが流入する。
【0076】
これにより、電力ケーブルの接続部分をクロージャ130で被覆する際には、第1ケース130a及び第2ケース130bを、電力ケーブルの接続部分120、120Aを挟み、接続部分120、120Aを接続配設部150に配置して、固定して取り付ける。すると、第1ケース130a及び第2ケース130bに充填されたジェル160は、端面部131、132の挿通壁部131a、132aの破断部と、端面部131、132を挿通する電力ケーブル部分との間に漏れ出てこれらの隙間を充填するとともに、接続配設部150内に流入する。
【0077】
具体的には、仕切壁部152は、接続配設部150に接続部分120、120Aを配設して押圧した際に、破断して接続部分120、120Aに連続する部位を挿通させるとともに、破断部分から内側領域にジェル160を流入させる薄肉板である挿通壁部156、157を備える。この挿通壁部156、157を介して、接続配設部150内にジェル160が流入する。
【0078】
よって、第1ケース130a及び第2ケース130bを固定する際に、第1ケース130a及び第2ケース130bに充填するジェル(充填材)を、ジェルの界面の圧力を高くするために過剰に入れすぎても、接続配設部150にて、その余剰分を吸収して、第1及び第2ケース130a、130bを変形させることなく、閉めることができる。よって、水密性を確保しつつ最適なジェル量を調整してケース内に充填することが容易となり、組み立て作業を容易に行うことができる。
【0079】
このため、第1及び第2ケース130a、130b内に収容する電力ケーブル及び電力ケーブル同士の接続部分が様々な径、形状、分岐数となっても、第1及び第2ケース130a、130b内に充填するジェル量を最適な量にすることができる。これにより、従来のように、ケーブルサイズや分岐数に応じて複数のケースを用意する必要がない。また、組立時における歪みが発生しにくいため、クロージャを形成するケース自体の設計強度を上げる必要はない。
【0080】
なお、本実施の形態によれば、クロージャ130を構成する第1ケース130a及び第2ケース130bは、略同様の構成としたが、これに限らず、例えば、第1ケース130a及び第2ケース130bの一方の側面部133,134及び端面部131、132の高さを異なる高さにしてもよい。また、仕切壁部152を第1及び第2ケース130a、130bのそれぞれに設けたが、いずれか一方に設け、第1及び第2ケース130a、130bを固定した際に、本実施の形態の仕切壁部と同様の機能を有するようにしてもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、クロージャ130は2分割された第1及び第2ケース130a、130bの構成としたが、ヒンジを介して第1及び第2ケースを互いに接続した一体形の構成でもよい。
【0082】
さらに、本実施の形態では、幹線ケーブル111及び第1〜第3分岐線ケーブル112〜114の端部に接続される接続部材を構成する端子として圧縮端子としたが、これに限らず、圧着端子としてもよい。さらに、ケーブル110をより強固にクロージャ130に固定するため、端面部131、132から導出した部分をケーブルタイ172で締結してもよい。
【0083】
本発明に係るジェル充填クロージャは上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態では、地中配線ケーブルの分岐接続部を想定しているが、これに限らず、架空配線ケーブルの分岐接続部等への適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係るジェル充填クロージャは、絶縁性及び防水性を確保しつつ、容易に組み立てることができるととともに、接続部分の、様々な径、形状、分岐数に関係なく1種類のケースで対応でき、コストの低廉化を図ることができる効果を有し、ケーブルを分岐する分岐接続部に用いられるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態に係るジェル充填クロージャを用いた分岐接続部の構成を示す図
【図2】同分岐接続部の側面図
【図3】クロージャを構成するケースの説明に供する図
【図4】クロージャを構成するケースの説明に供する図
【図5】クロージャを構成するケースの説明に供する図
【図6】クロージャを構成するケースの説明に供する図
【図7】圧縮端子を介したケーブルの接続部分の変形例を示す図
【図8】クロージャを用いた分岐接続部の変形例を示す図
【符号の説明】
【0086】
100、200 分岐接続部
110 ケーブル
111 幹線ケーブル
112、113、114 分岐線ケーブル
119 分岐線ケーブル
120、120A ケーブルの接続部分
121 圧縮端子
121a 平板部
122 ボルト
124 ナット
130 クロージャ
130a 第1ケース
130b 第2ケース
131、132 端面部
135 爪部
136 係止孔
137 底面部
140 中空部
140a、140b 空隙部分
150 接続配設部
152 仕切壁部
156、157 挿通壁部
159 水平板部
160 ジェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の電力ケーブルの端部同士が接続部材によって脱着自在に電気的に接続されてなる接続部分を囲み、当該接続部分を被覆するジェル充填クロージャであって、
それぞれ底面部、当該底面部から立設された2つの長手方向の側面部及び2つの端面部で規定された中空部を有し、互いの中空部を閉じるように固定して、前記端面部のうち少なくとも一つに前記電力ケーブルを挿通して外部に突出させた状態で前記接続部分及び前記電力ケーブルにおいて前記接続部分に連続する部位を収容する第1ケース及び第2ケースと、
前記第1ケース及び第2ケースの少なくとも一方の底面部から立設する仕切壁部によって中空部内で仕切られ、前記接続部分が配設される前記接続配設部と、
前記第1ケース及び第2ケースの中空部において、前記接続配設部を除く領域に充填されたジェルとを有し、
前記接続配設部に前記接続部分を配設して前記第1ケース及び第2ケースを固定した際に、前記電力ケーブルが突出した端面部と、この端面部を挿通する電力ケーブルとの間からジェルが流出するとともに、前記仕切壁部には前記接続部分における接続部材の一部が挿通され、この一部が挿通された前記仕切壁部の隙間から内部領域にジェルが流入することを特徴とするジェル充填クロージャ。
【請求項2】
前記仕切壁部は、前記接続配設部に前記接続部分を配設して前記第1ケース及び第2ケースを閉じた際に、破断して前記接続部分の一部を挿通させるとともに、破断部分から前記内部領域にジェルを流入させる挿通壁部を備えることを特徴とする請求項1記載のジェル充填クロージャ。
【請求項3】
前記電力ケーブルが突出する端面部は、前記接続配設部に前記接続部分を配設して前記第1ケース及び第2ケースを閉じた際に、破断して前記電力ケーブルを挿通させることを特徴とする請求項1又は2記載のジェル充填クロージャ。
【請求項4】
端部同士が接続部材によって脱着自在に電気的に接続された少なくとも2本の電力ケーブルと、
前記少なくとも2本の電力ケーブルの接続部分を囲み、当該接続部分を被覆する請求項1乃至3のうちいずれか1項記載のジェル充填クロージャとを有し、
前記ジェル充填クロージャでは、前記接続配設部に前記接続部分を配設して前記第1ケース及び第2ケースが、互いの中空部を閉じるように固定されることによって、前記第1ケース及び第2ケースの端面部のうち少なくとも一つから前記電力ケーブルが突出するとともに、前記中空部で、前記接続部分及び前記電力ケーブルにおいて前記接続部分に連続する部位が収容され、
前記接続配設部では、前記仕切壁部には前記接続部分における接続部材の一部が挿通され、この一部が挿通された前記仕切壁部の隙間から、前記中空部において前記接続配設部を除く領域に充填されたジェルが内部領域に流入していることを特徴とする分岐ケーブル接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−148010(P2009−148010A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320053(P2007−320053)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(502122521)株式会社エクシム (25)
【出願人】(592142669)タイコ エレクトロニクス レイケム株式会社 (14)
【Fターム(参考)】