説明

ジエポキシ化合物の製造方法

【課題】式(3)


で表わされるジエポキシ化合物を効率的に製造する方法の提供。
【解決手段】アンモニウム塩、無機塩基および脂肪族アルコールの存在下、式(1)


で示される化合物と、式(2)


(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)で示される化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とするジエポキシ化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエポキシ化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
式(3)

で表わされるジエポキシ化合物(以下、化合物(3)と記すことがある)と硬化剤とを硬化させることにより得られる硬化物は、機械的特性に優れることが非特許文献1に記載されている。また、化合物(3)の製造方法としては、テトラブチルアンモニウムクロリドの存在下、式(1)

で示される化合物とエピクロロヒドリンとを無溶媒で反応させた後、得られた反応混合物と水酸化ナトリウム水溶液とを混合することにより、化合物(3)を収率25%で取得可能であることが非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M.Giamberini,et,al.,Mol.Cryst. Liq. Cryst.,vol.266,9(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1記載の製造方法では化合物(3)の収率が必ずしも十分ではない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
<1> アンモニウム塩、無機塩基および脂肪族アルコールの存在下、式(1)

で示される化合物と、式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする式(3)

で示されるジエポキシ化合物の製造方法。
【0006】
<2> 脂肪族アルコールが、脂肪族2級アルコ−ルおよび脂肪族3級アルコ−ルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする<1>記載の製造方法。
<3> 前記工程が、下記工程A及び工程Bを含むことを特徴とする<1>又は<2>記載のジエポキシ化合物の製造方法。
工程A:前記式(1)で示される化合物、前記式(2)で示される化合物、脂肪族アルコール及びアンモニウム塩を混合する工程。
工程B:工程Aで得られた混合物に無機塩基を混合する工程。
<4> 無機塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか記載の製造方法。
<5> アンモニウム塩が、4級アンモニウムハライドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【0007】
<6> 酸及び有機溶媒の存在下に、式(4)

で表わされるヒドロキシカルボン酸と式(5)

で表わされるヒドロキノンとを混合する工程を含むことを特徴とする式(1)

で表わされるジヒドロキシ化合物の製造方法。
<7> 酸が、硫酸及びトルエンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸であることを特徴とする<6>記載の製造方法。
<8> 前記式(1)で示される化合物が、<6>又は<7>記載の製造方法で得られた式(1)で示される化合物であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、化合物(3)を高い収率で製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、アンモニウム塩、無機塩基及び脂肪族アルコールの存在下、式(1)

で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)と、式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物(以下、エピハロヒドリン(2)と記すことがある)とを、反応させる工程(以下、本工程と記すことがある)を含むことを特徴とする化合物(3)の製造方法である。
【0010】
アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、テトラエチルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、ベンジルトリブチルアンモニウムヨーダイド等の炭素数1〜20の炭化水素基が窒素原子に4つ結合した4級アンモニウムハライド塩等が挙げられる。
本工程には、二種以上のアンモニウム塩を混合して用いてもよい。
好ましいアンモニウム塩としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミドおよびベンジルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0011】
本工程におけるアンモニウム塩の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.0001〜1モルの範囲等が挙げられ、好ましくは0.001〜0.5モルの範囲等が挙げられる。
【0012】
無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。二種以上の無機塩基を混合して用いてもよい。
好ましい無機塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物等を挙げることができ、より好ましは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0013】
本工程における無機塩基の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、0.1〜20モルの範囲等が挙げられ、好ましくは0.5〜10モルの範囲等が挙げられる。
無機塩基として、例えば、粒状等の固体の形態の無機塩基を用いてもよいし、約1〜約60重量%の濃度の水溶液の形態の無機塩基を用いてもよい。
【0014】
脂肪族アルコールとしては、例えば、炭素数1〜12の脂肪族アルコールを挙げることができ、好ましくは、脂肪族2級アルコールおよび脂肪族3級アルコールが挙げられる。具体的には、例えば、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ドデカノールなどの脂肪族2級アルコール、例えば、2−メチル−2−プロパノール、3−メチル-2−ブタノール、3,3−ジメチル-2−ブタノール、3−メチル-2−ペンタノール、5−メチル-2−ヘキサノール、4−メチル-3−ヘプタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノールおよび3,7−ジメチル−3−オクタノール等の脂肪族3級アルコール等を挙げることができる。
脂肪族アルコールとして、二種以上の脂肪族アルコールを混合して用いてもよい。
より好ましくは、脂肪族3級アルコールであり、とりわけより好ましくは、炭素数4〜10の脂肪族3級アルコールである。
【0015】
本工程における脂肪族アルコールの使用量は、化合物(1)1重量部に対して、例えば、0.01〜100重量部の範囲等を挙げることができ、好ましくは0.1〜50重量部の範囲等、より好ましくは1〜50重量部の範囲等が挙げられる。
【0016】
エピハロヒドリン(2)の式中、Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。エピハロヒドリン(2)としては、エピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンが挙げられ、エピクロロヒドリンが好ましい。
エピハロヒドリン(2)の使用量は、化合物(1)1モルに対して、例えば、2〜200モルの範囲を挙げることができ、好ましくは、例えば、5〜150モルの範囲が挙げられる。
【0017】
本工程は、無溶媒で行ってもよいし、溶媒の存在下で行ってもよい。
溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、例えば、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル溶媒、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられ、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
本工程に用いられる溶媒は、二種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
溶媒を用いる場合の使用量としては、化合物(1)1重量部に対して、例えば、0.01〜100重量部の範囲等を挙げることができ、好ましくは0.1〜50重量部の範囲等が挙げられる。
【0018】
本工程は、常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよいし、あるいは、減圧条件下で行ってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
本工程は、化合物(1)、エピハロヒドリン(2)、脂肪族アルコール、アンモニウム塩及び無機塩基、並びに、必要に応じて溶媒を任意の順序で混合すればよい。
本工程の反応温度としては、例えば、−20℃〜150℃の範囲を挙げることができ、好ましくは−10℃〜120℃の範囲が挙げられる。
また、本工程における反応の進行は、液体クロマトグラフィー等の分析手段により、化合物(1)の減少量または化合物(3)の生成量で確認することができ、化合物(3)の増加が認められなくなるまで反応を行うことが好ましい。具体的な反応時間としては、例えば、1〜150時間の範囲内を挙げることができる。
【0019】
本工程としては、下記工程A及び工程Bを含む方法が好ましい。
工程A:ジヒドロキシ化合物(2)、エピハロヒドリン(3)、脂肪族アルコール及びアンモニウム塩、並びに、必要に応じて溶媒を混合する工程。
工程B:工程Aで得られた混合物に、無機塩基を混合する工程。
工程Aは、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
工程Aの反応温度としては、例えば、−10℃〜150℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、0℃〜120℃の範囲等が挙げられる。
工程Aの反応時間は、反応温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
【0020】
工程Bは、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
工程Bの反応温度としては、例えば、−20℃〜120℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、−10℃〜80℃の範囲等が挙げられる。
工程Bの反応時間は、液体クロマトグラフィーなどの測定により追跡することができ、化合物(3)の増加が認められなくなるまで反応を行うことが好ましい。具体的には、混合温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
【0021】
工程B終了後、例えば、得られた反応液に、水を加えた後、必要に応じて水に不溶な溶媒を加えて化合物(1)を含む層を得、水洗した後、必要に応じて不溶分を濾過で除去し、該層から過剰のエピハロヒドリン(2)及び溶媒を留去して、化合物(3)を得る方法等が挙げられる。
また、化合物(3)は、必要に応じて再結晶等の精製手段を施すことにより、さらに精製することもできる。
【0022】
ここで、水に不溶な溶媒とは、水と分液し得る溶媒であって、化合物(3)を溶解し得る溶媒であり、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒等を挙げることができる。
水に不溶な溶媒の使用量としては、例えば、化合物(3)1重量部に対して、例えば、1〜200重量部の範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば、10〜50重量部の範囲等が挙げられる。
【0023】
化合物(1)の製造方法としては、例えば、酸の存在下、式(4)

で表わされるヒドロキシカルボン酸(以下、化合物(4)と記すことがある)とヒドロキノン(以下、ヒドロキノン(5)と記すことがある)とを反応させる工程(以下、エステル化工程と記すことがある)を含む方法等を挙げることができる。
ヒドロキノン(5)の使用量は、化合物(4)1モルに対して、例えば、1〜30モルの範囲等が挙げられ、好ましくは、2〜10モルの範囲等が挙げられる。
【0024】
エステル化工程に用いる酸としては、例えば、硫酸、リン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは、例えば、硫酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。その使用量は、化合物(4)1モルに対して、例えば、0.0001〜1モルの範囲等が挙げられ、好ましくは、例えば、0.001〜0.5モルの範囲等が挙げられる。必要に応じて、2種類以上の酸を併用してもよい。
【0025】
エステル化工程は、有機溶媒存在下に行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド溶媒等が挙げられる。2種類以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
その使用量は、化合物(4)1重量部に対して、例えば、1〜200重量部の範囲等が挙げられ、好ましくは5〜100重量部の範囲等が挙げられる。
【0026】
エステル化工程は、常圧条件下でおこなってもよいし、加圧条件下でおこなってもよいし、あるいは減圧条件下でおこなってもよい。また、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下でおこなってもよい。
エステル化工程の反応温度としては、例えば、80〜180℃の範囲等を挙げることができ、好ましくは、例えば、100〜150℃の範囲等が挙げられる。
エステル化工程の反応時間は、反応温度等によっても異なるが、例えば、0.5〜72時間の範囲等を挙げることができる。
エステル化工程によって水が生成するが、生成する水を反応系外へ除去しながら、反応を行うことが好ましい。生成する水を反応系外へ除去する方法としては、例えば、共沸蒸留法、モレキュラーシブス等の脱水剤を用いる方法等が挙げられる。
【0027】
化合物(1)は、例えば、エステル化工程で得られた反応生成物を冷却すると、化合物(1)を結晶として析出するので、濾過等の固液分離して、取り出すことができる。化合物(1)の結晶は、水やメタノールなどの溶媒でさらに洗浄してもよい。
また、化合物(1)は、必要に応じて再結晶等の精製手段を施すことにより、さらに精製することもできる。
本工程に用いられる化合物(1)は、上記製造方法によって得られる化合物(1)が好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
[実施例1:化合物(1)の製造例]
ディーンスターク装置を取り付けた反応容器に、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸3.54g、ヒドロキノン9.46g、98%硫酸0.16gおよびトルエン50mLを約25℃で混合した。得られた混合物を還流条件下で4時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応混合物中に析出した固体を濾過により取り出し、メタノール20mLで洗浄した後、イオン交換水20mLでさらに洗浄した。得られた固体をメタノール40mLでさらに洗浄した後、減圧乾燥し、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)の白色固体4.22gを得た。
該固体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、純度(面積百分率)は、97.2%であった。該純度を該固体中の4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)の含有量と仮定して、収率を算出した。収率:81%(4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸基準)
【0030】
[実施例2:化合物(3)の製造例1]
冷却装置を取り付けた反応容器に、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)0.50g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.03g、エピクロロヒドリン6.24gおよび2−メチル−2−プロパノール13.3gを約25℃で混合した。得られた混合物を70℃で7時間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた混合物に、15重量%水酸化ナトリウム水溶液1.74gを加えた。得られた混合物を室温で3時間攪拌した。得られた反応混合物に、イオン交換水10mLおよびクロロホルム20mLを加え、抽出を行った。得られた有機層をイオン交換水10mLで3回洗浄した後、濃縮し、粗生成物を得た。
得られた粗生成物に、トルエンおよび2−プロパノールを加え、再結晶を行い、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}安息香酸{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}の白色固体0.36gを得た。該固体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、純度(面積百分率)は93.9%であった。該純度を該固体中の4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}安息香酸{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}の含有量と仮定して、収率を算出した。収率:49%(4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)基準)。
【0031】
[実施例3:化合物(3)の製造例2]
冷却装置を取り付けた反応容器に、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)21.00g、テトラメチルアンモニウムブロミド1.11g、エピクロロヒドリン182.22gおよび2−メチル−2−プロパノール250.56gを室温で混合した。得られた混合物を70℃で7時間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた反応混合物を減圧濃縮した。得られた濃縮残渣に、メタノール100mLを加えた。得られた混合物を攪拌したところ、固体が析出した。析出した固体を濾過により取り出した。取り出した固体に、クロロホルム200mLおよび15重量%水酸化ナトリウム水溶液73.13gを加えた。得られた混合物を室温で3時間攪拌した後、イオン交換水200mLを加えた。得られた混合物を攪拌した後、分液し、有機層を得た。有機層をイオン交換水200mLで3回洗浄した後、濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物に、トルエンおよび2−プロパノールを加え、再結晶を行い、4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}安息香酸{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}の白色固体17.35gを得た。得られた白色固体を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、純度(面積百分率)は94.0%であった。該純度を該固体中の4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}安息香酸{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}の含有量と仮定して、収率を算出した。収率:57%(4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸(4−ヒドロキシフェニル)基準)。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の製造方法によれば、化合物(3)を高い収率で製造可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウム塩、無機塩基および脂肪族アルコールの存在下、式(1)

で示される化合物と、式(2)

(式中、Xはハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする式(3)

で示されるジエポキシ化合物の製造方法。
【請求項2】
脂肪族アルコールが、脂肪族2級アルコ−ルおよび脂肪族3級アルコ−ルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程が、下記工程A及び工程Bを含むことを特徴とする請求項1又は2記載のジエポキシ化合物の製造方法。
工程A:前記式(1)で示される化合物、前記式(2)で示される化合物、脂肪族アルコール及びアンモニウム塩を混合する工程。
工程B:工程Aで得られた混合物に無機塩基を混合する工程。
【請求項4】
無機塩基が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
アンモニウム塩が、4級アンモニウムハライドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
酸存在下、式(4)

で示されるカルボン酸化合物と、ヒドロキノンとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(1)

で示されるジヒドロキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
酸が、硫酸及びトルエンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸であることを特徴とする請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記式(1)で示される化合物が、請求項6又は7記載の製造方法で得られた式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−98952(P2011−98952A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204072(P2010−204072)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】