説明

ジエン−ベースのポリマーの水素化

【課題】ジエン−ベースのポリマーの水素化を提供する。
【解決手段】イリジウム含有触媒の存在下に、いかなる有機溶媒も用いないで、水素により、バルク状態にあるジエン−ベースポリマー中の炭素−炭素二重結合を水素化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イリジウム含有触媒の使用により有機溶媒を用いない、バルク形態で存在するジエン−ベースのポリマーの炭素−炭素二重結合の選択的な水素化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー中の炭素−炭素二重結合は、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(非特許文献1)および(特許文献10)に開示されているように、触媒の存在下に有機溶媒中のポリマーを水素で処理することによって成功裡に水素化することができることは公知である。かかる方法は、例えば、芳香族またはナフタレン基中の二重結合は水素化されず、かつ、炭素と窒素または酸素などの他の原子との間の二重または三重結合は影響を受けないように、水素化される二重結合に選択的であることができる。この分野の技術は、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、およびパラジウムをベースとする触媒をはじめとする、かかる水素化に好適な触媒の多くの例を含有する。触媒の好適性は、必要とされる水素化度、水素化反応の速度、ならびにポリマー中の、カルボキシルおよびニトリル基などの、他の基の存在または不存在に依存する。特徴として、かかる水素化方法は常に、水素化されるポリマーを溶解させるために大量の有機溶媒の使用を必要とし、そして比較的高い温度(100℃より上)でうまくいき、それは生産コストおよび環境保護に関して懸念を提起する。環境への懸念を和らげ、そして生産コストを下げることができる、必要な触媒量を最小限にすることを可能にするような非常に効率的な触媒を提供することが当該技術分野ではさらに望ましい。
【0003】
(特許文献11)は、水素およびロジウムバースの触媒の存在下にいかなる有機溶媒も加えない、バルク形態のポリマーおよびコポリマー中のオレフィン系不飽和の選択的な水素化方法を開示している。しかしながら、かかる方法は一般に、100℃をかなり上回る比較的高い温度で行われる必要がある。
【0004】
(特許文献12)、(特許文献13)および(特許文献14)は、水素ゲッターを使用することによる密閉空間内の雰囲気からの水素の除去方法を開示している。この水素ゲッターは、炭素−炭素二重結合を有する有機ポリマー分子と、パラジウムまたは白金などの貴金属触媒からなる水素化触媒とを含む。かかる水素化触媒は、不活性な触媒担体に必ず担持されている。水素の除去の間に、C=C二重結合は水素化される。(特許文献12)、(特許文献13)および(特許文献14)の方法は、最高の水素化度を与えることを意図していないが、環境から望ましくない微量水素を除去するための実行可能な方法である。
【0005】
効率的な触媒として、イリジウムベースの触媒が(非特許文献2)および(非特許文献3)に記載され、たとえそれらが高度に置換されていても低分子量オレフィンの水素化でさえそれらの高い活性のために注目を集めてきた。
【0006】
(特許文献15)は、典型的には有機である溶媒に溶解させられているコポリマーの不飽和炭素−炭素結合を水素化するための金属触媒を開示している。この金属触媒は、イリジウムおよびルテニウムを含むバイメタル錯体である。
【0007】
(非特許文献4)に、有機溶液でのニトリル・ブタジエンゴムの水素化のためのクラブトリー(Crabtree)触媒の使用に関する研究が記載されている。この触媒は、120〜140℃および数百psiの水素圧でニトリル・ブタジエンゴム中のオレフィン基の選択的水素化に効率的であった。
【0008】
水素化操作での大量の有機溶媒の要件を解消するために、(非特許文献5)および(非特許文献6)は、イリジウムベースの触媒[Ir(COD)(py)(tcyp)]PFおよび[Ir(COD)(PMePh]PF(COD=1,5−シクロオクタジエン、Py=ピリジン、tcyp=トリシクロヘキシルホスフィン)を使用するポリマーのバルク水素化を実現しようと試みた。(非特許文献5)で、[Ir(COD)(PMePh]PFが熱可塑性ポリマーを水素化するために使用され、ウィルキンソン(Wilkinson)触媒、すなわち、Rh(PPhClと比較された。水素化研究用のサンプルは溶液からキャストされた。ポリマーは先ずトルエンまたはジクロロメタンに溶解させられ、触媒が加えられ、次に溶媒が除去された。80%の水素化率が達成されたが、反応速度は非常に遅く、反応は比較的高い転化率を達成するために5日または5日以上を要した。さらに、高い触媒使用量のみが最初の5反応時間で十分な水素吸収をもたらすことが分かった。異なる触媒使用量での実施例は、1重量%触媒使用量がいかなる認識できる水素吸収ももたらさないことを示す。3.2重量%の触媒使用量を使用すると、水素吸収は向上するが、9.1重量%で受け入れることができる水素吸収が認められたにすぎなかった。(非特許文献6)では、[Ir(COD)(py)(tcyp)]PFが触媒として使用されている。
【0009】
要約すれば、この分野における研究、すなわち、ジエン−ベースのポリマーの水素化は、ポリマーが有機溶媒に溶解させられた場合または水素化が比較的高い反応温度で実施される場合には非常に成功してきた。バルク形態でのジエン−ベースのポリマーの効率的な水素化に明らかに焦点を合わせた研究活動は、しかしながら今までのところ非常に限定されている。(非特許文献5)および(非特許文献6)では、ロジウムおよびイリジウムベースの触媒が適用されたが、反応速度は非常に遅く、使用されるイリジウムベースの触媒の量は非常に多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,881,797号明細書
【特許文献2】米国特許第6,683,136号明細書
【特許文献3】米国特許第6,410,657号明細書
【特許文献4】米国特許第6,020,439号明細書
【特許文献5】米国特許第5,705,571号明細書
【特許文献6】米国特許第5,057,581号明細書
【特許文献7】米国特許第5,652,191号明細書
【特許文献8】米国特許第5,399,632号明細書
【特許文献9】米国特許第5,164,457号明細書
【特許文献10】米国特許第3,454,644号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/0211826 A1号明細書
【特許文献12】米国特許第6,110,397号明細書
【特許文献13】米国特許第6,063,307号明細書
【特許文献14】米国特許第5,837,158号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2007/0155909 A1号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science、Part A:Polymer Chemistry 第30巻(1992)、No.3、471−484ページ
【非特許文献2】Platinum Metals Review 第22巻(1978)、No.4、126−129ページ
【非特許文献3】Accounts of Chemical Research 第12巻(1979)、331−337ページ
【非特許文献4】「化学工業(Chemical Industries)」、第104巻(有機反応の触媒作用(Catalysis of Organic Reactions))(2005)、125−134ページ
【非特許文献5】ラウラ R.ギリオム(Laura R.Gilliom)、Macromolecules 第22巻(1989)、No.2、662−665ページ
【非特許文献6】ラウラ R.ギリオム、ケビン G.ホンネル(Kevin G.Honnell)、Macromolecules 第25巻(1992)、No.22、6066−6068ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、許容される短い反応時間内でそして穏やかな反応温度で、高い水素化度でバルク形態でのジエン−ベースのポリマーの選択的な水素化を可能にする新規な、そして改良された方法を提供するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、バルク形態で存在するジエン−ベースのポリマーを、いかなる有機溶媒も用いずに、そして水素化されるべきジエン−ベースのポリマーを基準として、1重量%未満のイリジウム含有触媒の存在下に水素化にかける工程を含むジエン−ベースのポリマー中の炭素−炭素二重結合の選択的水素化方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の方法は、ジエン−ベースのポリマー中に存在する炭素−炭素二重結合の選択的な水素化を可能にする。これは、例えば、芳香族またはナフタレン基中の二重結合が水素化されず、かつ、炭素と窒素または酸素などの他の原子との間の二重または三重結合もまた影響を受けないことを意味する。
【0015】
バルク形態で存在するエチレン性不飽和ポリマーを水素化するためにいかなる有機溶媒も用いずに少量のイリジウム含有触媒を使用するという組み合わせは、本発明による水素化法の良好な性能にとって新規であり重要である。
【0016】
前記新規方法を用いると、高い水素化度が達成され、水素化の速度は高く、そして先行技術から公知の方法で起こる架橋問題が克服される。
【0017】
ギリオム(Gilliom)の報告((非特許文献5)、(非特許文献6))と比較して、本発明は、(非特許文献5)および(非特許文献6)が研究したより、少ない量の触媒を適用してはるかに速い水素化を与え、そしてニトリル・ブタジエンゴムなどの、より飽和しにくいポリマーの水素化にまで及ぶ。
【0018】
本発明の水素化法は、イリジウム含有水素化触媒を使用して行われる。好ましくは本発明の方法は、触媒としてイリジウム錯体触媒、より好ましくは一般式(I)
[Ir(COD)LL’]PF (I)
(式中、
CODは1,5−シクロオクタジエンを意味し、
Lは、Rがアルキル、シクロアルキル、またはアリールであるPRを意味し、そして
L’は、Rがアルキル、シクロアルキル、またはアリールであるPRまたはピリジンを意味する)
で表されるイリジウム錯体を使用して行われる。
【0019】
前述の置換基アルキル、シクロアルキル、またはアリールは場合により、例えばアルキル、シクロアルキルまたはアリール残基のような、1つ以上の置換基でさらに置換されている。
【0020】
さらにより好ましくは、式中RがC〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C24アリールを意味する一般式(I)のイリジウム錯体が使用される。
【0021】
例えば、LおよびL’は、PMePh(Me=メチル、Ph=フェニルである)、PPh、PCy(Cy=シクロヘキシルである)、P(i−Pr)(i−Pr=イソプロピルである)、dpe(ジフェニルエチル)およびピリジン(L’の場合に)を表してもよい。
【0022】
イリジウム含有触媒は、水素化されるべきポリマーを基準として、1重量%未満で存在する。好ましくはイリジウム含有触媒は、水素化されるべきジエン−ベースのポリマーを基準として、0.001重量%〜0.98重量%、より好ましくは0.01重量%〜0.80重量%で存在する。
【0023】
本発明の方法にかけられてもよい炭素−炭素二重結合を有するポリマーは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーをベースとする繰り返し単位を含む。
【0024】
共役ジエンは任意の性質のものであることができる。一実施形態では、(C〜C)共役ジエンが使用される。1,3−ブタジエン、イソプレン、1−メチルブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレン、クロロプレン、またはそれらの混合物が好ましい。1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0025】
さらなる実施形態では、モノマー(a)として少なくとも1つの共役ジエンおよび少なくとも1つのさらなる共重合性モノマー(b)の繰り返し単位を含む、炭素−炭素二重結合を有するポリマーが本発明の方法にかけられてもよい。
【0026】
好適なモノマー(b)の例は、エチレンまたはプロピレンなどのオレフィンである。
【0027】
好適なモノマー(b)のさらなる例は、スチレン、アルファ−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエンなどのビニル芳香族モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルなどの、脂肪族または分岐C〜C18モノカルボン酸のビニルエステルである。
【0028】
本発明に使用される好ましいポリマーは、1,3−ブタジエンとスチレンまたはアルファ−メチルスチレンとのコポリマーである。前記コポリマーはランダムまたはブロック型構造を有してもよい。
【0029】
好適なモノマー(b)のさらなる例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などのエチレン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸の、一般に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノールなどの、C〜C12アルカノール、またはシクロペンタノールまたはシクロヘキサノールなどの、C〜C10シクロアルカノールとのエステル、そしてこれらのうちで好ましくは、例がメタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸第三ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸第三ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルである、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエステルである。
【0030】
好適なさらなる共重合性モノマー(b)はα,β−不飽和ニトリルである。任意の公知のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物などの(C〜C)α,β−不飽和ニトリルを使用することが可能である。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0031】
本発明に使用される特に好適なコポリマーはニトリルゴム(「NBR」とまた省略される)であり、これはα,β−不飽和ニトリル、特に好ましくはアクリロニトリルと、共役ジエン、特に好ましくは1,3−ブタジエンと、場合により、α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドなどの、1つ以上のさらなる共重合性モノマーとのコポリマーである。
【0032】
かかるニトリルゴム中のα,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0033】
かかるニトリルゴム中のα,β−不飽和カルボン酸のエステルとして、それらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸第三ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸第三ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸オクチルである。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルコキシアルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルおよび(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。アルキルエステル、例えば上述のものと、例えば上述のものの形態での、アルコキシアルキルエステルとの混合物を使用することもまた可能である。
【0034】
本発明に使用される好ましいターポリマーは、アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸第三ブチルからなる群から選択された第3モノマーとのターポリマーである。
【0035】
水素化にかけられるポリマーが1つ以上の共役ジエンの繰り返し単位のみならず、1つ以上のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位も含む場合には、共役ジエンおよび他の共重合性モノマーの割合は広い範囲内で変わってもよい。
【0036】
水素化のために使用中のNBRポリマーの場合には、共役ジエンのまたはそれらの合計の割合は通常、全体ポリマーを基準として、40〜90重量%の範囲に、好ましくは50〜85重量%の範囲にある。α,β−不飽和ニトリルのまたはそれらの合計の割合は通常、全体ポリマーを基準として、10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%である。モノマーの割合はそれぞれ合計100重量%になる。追加のターモノマーが場合により存在してもよい。使用される場合、それらは典型的には、全体ポリマーを基準として、0超〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在する。この場合には、共役ジエンのおよび/またはα,β−不飽和ニトリルの相当する割合は、全てのモノマーの割合がそれぞれ合計100重量%になる状態で、追加のターモノマーの割合で置き換えられる。
【0037】
上述のモノマーの重合によるニトリルゴムの製造は当業者に十分に知られており、ポリマー文献に包括的に記載されている。
【0038】
本発明の目的のために使用することができるニトリルゴムはまた、例えば、ランクセス・ドイチュラント社(Lanxess Deutschland GmbH)から商品名パーブナン(Perbunan)(登録商標)およびクライナック(Krynac)(登録商標)の製品範囲からの製品として市販品として入手可能である。
【0039】
本発明の別の実施形態では、それらの分子量を下げるためにメタセシス反応にかけられたニトリルゴムを使用することが可能である。かかるメタセシス反応は当該技術分野で公知であり、例えば国際公開第02/100905号パンフレットおよび国際公開第02/100941号パンフレットに開示されている。
【0040】
本発明に従って使用されてもよいニトリルゴムは、3〜75の範囲、好ましくは5〜75の範囲、より好ましくは20〜75の範囲、さらにより好ましくは25〜70の範囲、特に好ましくは30〜50の範囲のムーニー(Mooney)粘度(100℃でML 1+4)を有する。かかるニトリルゴムの重量平均分子量Mは典型的に25,000〜500,000の範囲に、好ましくは200,000〜500,000の範囲に、より好ましくは200,000〜400,000の範囲にある。例えば約34のムーニー粘度を有するニトリルゴムは、約1.1dL/gの、35℃でクロロベンゼン中で測定される、固有粘度を有する。使用されるニトリルゴムはまた、1.5〜6.0、好ましくは1.8〜6.0、およびより好ましくは2.0〜4.0の範囲の多分散性PDI=M/M(ここで、Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。ムーニー粘度の測定は、ASTM(米国材料試験協会)標準D1646に従って実施される。
【0041】
1つ以上の共役ジエンと例えばスチレンまたはアルファ−メチルスチレンのような1つ以上の他の共重合性モノマーとの繰り返し単位を含有するニトリルゴム以外のポリマーが本発明に使用される場合、全てのモノマーの割合がそれぞれ合計して100%になる状態で、共役ジエンの割合は通常15〜100重量%未満であり、共重合性モノマーの合計の割合は0超〜85重量%である。スチレンまたはアルファ−メチルスチレンが他の共重合性モノマーとして使用される場合、スチレンおよび/またはメチルスチレンの割合は好ましくは15〜60重量%であり、一方100重量%への残りは共役ジエンで表される。
【0042】
本発明にバルク形態で使用される炭素−炭素二重結合含有ポリマーは、乳化重合、溶液重合またはバルク重合などの、当業者に公知の任意の方法によって製造されてもよい。
【0043】
ジエン−ベースのポリマーの水素化は、バルク形態で行われる。先行技術に従った水素化反応で慣習的である有機溶媒の使用はなくされ、これは、本発明による方法の実行中に有機溶媒が全く存在しないことを意味する。本発明に従って水素化されるジエン−ベースのポリマーは、任意の粒子または薄膜の形態で使用することができる。粒径および粒子形状またはフィルムの厚さについての限定要件は全くない。しかしながら、粒径が小さいほど、フィルムが薄いほど、水素化は速くなり。一般に、粒径またはフィルムの厚さは、10mm未満、好ましくは3mm未満である。
【0044】
触媒は、例えば、含浸または機械的な混合などの、任意の可能な方法によってジエン−ベースのポリマー中へ導入することができる。触媒とポリマーとの分子混合をもたらし得る任意の手順が好ましい。
【0045】
第1実施形態によれば、例えば、任意の混合方法によって触媒固形分を物理的にポリマー粒子と混合することが可能であり、例えば、ポリマー粒子と触媒固形分とは、触媒固形分とポリマー粒子とをスプーンまたは棒を用いて一緒に混合することによって簡単に混合することさえできる。
【0046】
別の実施形態では、例えば、触媒または触媒溶液をポリマー溶液に加え、そして触媒の効率的な分配および溶解が起こるまで混合することによって触媒を水素化されるジエン−ベースのポリマーと接触させることが可能である。触媒の溶解の後、溶媒は除去され、ポリマーフィルムまたは粒子のいずれかが得られ、それは次に本発明の水素化にかけられる。典型的には温度は、かかる混合および溶媒除去操作の間、0〜30℃の範囲に、好ましくは0〜10℃の範囲にあるように制御される。サンプルが水素化されるであろう反応温度に依存して、このように製造されたサンプルを余り長い時間保持しないことが好ましい。典型的には、水素化前のサンプル保管の時間は、その後の水素化温度が37〜50℃であるとき、大気条件で余り長い時間、好ましくは約70時間よりはるかに長い時間であってはならず、そして水素化温度が37℃より低いとき、大気条件で約20時間よりはるかに長い時間であってはならない。しかしながら、サンプルがより低い温度で保護されるおよび/または酸素と接触するのを防がれる場合、サンプルの保管時間は、水素化が実施される前にはるかに長く保管することができる。このサンプル製造のために、水素化触媒と水素との直接接触は、ポリマー水素化プロセス前には起こらない。
【0047】
第3実施形態では、イリジウム含有触媒は、ポリマー粒子またはフィルムに触媒を含浸させることによって、水素化されるべきジエン−ベースのポリマーと接触させられる。触媒は、有機溶媒またはCOなどの、媒体を使用することによってポリマー粒子またはフィルムに加えることができる。かかる媒体は、ポリマーを溶解させるべきではなく、そしてまたポリマー/触媒系に化学的に不活性であるべきである。含浸の温度は、50℃より低いことが推奨される。含浸操作のための時間は、使用される媒体だけでなく粒径またはフィルム厚さおよび含浸温度に依存して、数分〜10時間であることができよう。含浸工程の後、媒体は放出/除去され、触媒−含浸ポリマーフィルムまたは粒子のいずれかが得られ、それは次に水素化にかけられる。再び、サンプルが水素化されるであろう反応温度に依存して、このように製造されたサンプルを余り長い時間保管しないことが推奨される。一般にこの時間は、水素化温度が37〜50℃であるとき、70時間よりはるかに長い時間であってはならず、水素化温度が37℃より低いとき、20時間よりはるかに長い時間であってはならない。このサンプル製造のために、水素化触媒と水素との間の直接接触は、ポリマー水素化プロセス前には起こらない。
【0048】
本発明の水素化方法は、温度制御および攪拌手段を備えた好適な反応器で行うことができる。本発明によれば、水素化にかけられる材料、すなわち、炭素炭素二重結合含有ポリマーとイリジウム含有触媒との組合せは、通常の刃物(はさみもしくはナイフなど)または任意の粒子発生プロセスを用いることなどの、任意の可能な方法を用いることによってサイズが要望通り合わせられてもよい粒子またはフィルムで使用することができる。
【0049】
本発明の水素化方法は一般に、30℃〜200℃の範囲の、好ましくは50℃〜170℃の範囲の温度で実施される。
【0050】
水素化反応の進行中に水素は反応器に追加される。本発明の水素化方法は典型的には、0.1〜20MPaの圧力で、好ましくは0.5〜16MPaの圧力で実施される。水素ガスは好ましくは本質的に純粋である。
【0051】
反応時間は典型的には、操作条件に依存して、約1/4時間〜約100時間である。しかしながら、本発明は、条件がそれぞれ選ばれる場合、むしろ短い反応時間で優れた水素化度を達成する可能性の点で際立っている。
【0052】
水素化反応が所望の程度まで完了したとき、反応容器を冷却し、ガス抜きすることができ、水素化されたポリマーが得られる。
【0053】
本発明に従って得られた水素化ニトリルゴムは、6〜150の範囲の、好ましくは25〜100の範囲の、より好ましくは35〜100の範囲の、さらにより好ましくは39〜100の範囲の、特に好ましくは40〜100の範囲のムーニー粘度(100℃でML 1+4)を有する。
【0054】
本発明は、特に規定のない限り、全ての部およびパーセンテージは重量基準である以下の実施例によってさらに例示されるが、それによって限定されることを意図されない。
【実施例】
【0055】
実施例に使用した材料を表1に挙げる。
【0056】
【表1】

【0057】
サンプルAの製造:
15gの上述のブタジエン−アクリロニトリルコポリマー溶液(ジクロロメタン中4重量%)を窒素ガスで脱ガスした。0.0030gのクラブトリー触媒[(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,5−シクロオクタジエン)(ピリジン)イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート]を、真空システムに連結することができるアーム付きフラスコへ入れた。フラスコを氷水浴に浸した。フラスコを窒素ガスで脱ガスした後、ポリマー溶液を、ニードルを使用してその中へ移した。クラブトリー触媒の溶解後に、溶液を真空下に約2時間乾燥させた。乾燥操作の後、ポリマーサンプルはフィルム状になり、厚さは約0.1〜2mmであった。ポリマーサンプルをサンプルAと表示し、表2に挙げる条件下の実施例1〜6での水素化のために使用した。
【0058】
サンプルBの製造:
0.0015gのクラブトリー触媒を適用したことを除いて、サンプルAの製造で記載されたものと同じ条件および手順を用いた。得られたポリマーサンプルをサンプルBと表示し、表2に挙げる条件下の実施例7〜21での水素化のために使用した。
【0059】
サンプルCの製造:
0.00075gのクラブトリー触媒を適用したことを除いて、サンプルAの製造で記載されたものと同じ条件および手順を用いた。得られたポリマーサンプルをサンプルCと表示し、表2に挙げる条件下の実施例22〜45での水素化のために使用した。
【0060】
サンプルDの製造:
0.00036gのクラブトリー触媒を適用したことを除いて、サンプルAの製造で記載されたものと同じ条件および手順を用いた。得られたサンプルをサンプルDと表示し、表2に挙げる条件下の実施例46〜54での水素化のために使用した。
【0061】
サンプルEの製造:
15gのSBS(表1を参照されたい)コポリマー溶液(ジクロロメタン中4重量%)を適用したことを除いて、サンプルCの製造で記載されたものと同じ条件および手順を用いた。前記ポリマーは28%の結合スチレン含有率を有した。得られたサンプルをサンプルEと表示し、表2に挙げる条件下の実施例55〜60での水素化のために使用した。
【0062】
サンプルAを使用する水素化例
実施例1
温度制御手段、攪拌機、圧力計および水素ガス添加口を備えた、300mlガラス内張りステンレススチール・オートクレーブを反応器として用いた。サンプルA(サンプルAの製造での通り製造した)を反応器へ入れ、反応器を水素ガスで脱ガスした。80℃で、1200psi(8.28MPa)の水素圧を1.0時間かけた。その後反応器を冷却し、圧力を解除し、ポリマー生成物を反応器から取り出した。ポリマー生成物をメチルエチルケトンに溶解させ、そして水素化度を赤外分析によって測定した。74.3%の水素化度を達成した。
【0063】
実施例2
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例1に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、97.3%の水素化度を達成した。
【0064】
実施例3
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例1に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、99.4%の水素化度を達成した。
【0065】
実施例4
90℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例1に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、87.1%の水素化度を達成した。
【0066】
実施例5
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例4に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、99.3%の水素化度を達成した。
【0067】
実施例6
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例4に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、99.9%の水素化度を達成した。
【0068】
サンプルBを使用する水素化例
実施例7
ポリマーサンプルB(サンプルBの製造での通り製造した)を使用し、そして400psi(2.76MPa)の水素圧および100℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例1に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、23.4%の水素化度を達成した。
【0069】
実施例8
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例7に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、53.0%の水素化度を達成した。
【0070】
実施例9
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例7に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、80.0%の水素化度を達成した。
【0071】
実施例10
800psi(5.52MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例7に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、60.2%の水素化度を達成した。
【0072】
実施例11
800psi(5.52MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例8に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、90.0%の水素化度を達成した。
【0073】
実施例12
800psi(5.52MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例9に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、99.2%の水素化度を達成した。
【0074】
実施例13
1200psi(8.28MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例10に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、77.4%の水素化度を達成した。
【0075】
実施例14
1200psi(8.28MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例11に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、99.0%の水素化度を達成した。
【0076】
実施例15
1200psi(8.28MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例12に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、99.8%の水素化度を達成した。
【0077】
実施例16
80℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例13に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、31.3%の水素化度を達成した。
【0078】
実施例17
80℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例14に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、60.9%の水素化度を達成した。
【0079】
実施例18
80℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例15に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、86.6%の水素化度を達成した。
【0080】
実施例19
90℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例16に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、47.0%の水素化度を達成した。
【0081】
実施例20
90℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例17に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、75.0%の水素化度を達成した。
【0082】
実施例21
90℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例18に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、93.5%の水素化度を達成した。
【0083】
サンプルCを使用する水素化例
実施例22
ポリマーサンプルC(サンプルCの製造での通り製造した)を適用したことを除いて、実施例19に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、23.1%の水素化度を達成した。
【0084】
実施例23
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例22に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、56.7%の水素化度を達成した。
【0085】
実施例24
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例22に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、81.5%の水素化度を達成した。
【0086】
実施例25
100℃の反応温度および400psiの水素圧をかけたことを除いて、実施例23に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、29.2%の水素化度を達成した。
【0087】
実施例26
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例25に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、53.1%の水素化度を達成した。
【0088】
実施例27
100℃の反応温度および800psiの水素圧をかけたことを除いて、実施例22に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、34.1%の水素化度を達成した。
【0089】
実施例28
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例27に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、64.8%の水素化度を達成した。
【0090】
実施例29
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例27に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、87.7%の水素化度を達成した。
【0091】
実施例30
1200psi(8.28MPa)の水素圧をかけたことを除いて、実施例27に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、52.5%の水素化度を達成した。
【0092】
実施例31
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例30に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、85.2%の水素化度を達成した。
【0093】
実施例32
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例30に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、96.7%の水素化度を達成した。
【0094】
実施例33
120℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例30に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、66.3%の水素化度を達成した。
【0095】
実施例34
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例33に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、92.0%の水素化度を達成した。
【0096】
実施例35
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例33に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、98.2%の水素化度を達成した。
【0097】
実施例36
130℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例30に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、73.5%の水素化度を達成した。
【0098】
実施例37
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例36に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、95.5%の水素化度を達成した。
【0099】
実施例38
140℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例36に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、79.5%の水素化度を達成した。
【0100】
実施例39
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例38に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、95.8%の水素化度を達成した。
【0101】
実施例40
150℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例38に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、96.1%の水素化度を達成した。
【0102】
実施例41
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例40に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、98.4%の水素化度を達成した。
【0103】
実施例42
160℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例40に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、95.6%の水素化度を達成した。
【0104】
実施例43
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例42に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、98.4%の水素化度を達成した。
【0105】
実施例44
170℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例42に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、93.5%の水素化度を達成した。
【0106】
実施例45
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例44に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、98.9%の水素化度を達成した。
【0107】
サンプルDを使用する水素化例
実施例46
ポリマーサンプルD(サンプルDの製造での通り製造した)を適用したことを除いて、実施例33に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、27.5%の水素化度を達成した。
【0108】
実施例47
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例46に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、39.4パーセントの水素化度を達成した。
【0109】
実施例48
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例47に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、61.1%の水素化度を達成した。
【0110】
実施例49
140℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例46に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、33.3%の水素化度を達成した。
【0111】
実施例50
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例49に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、45.6%の水素化度を達成した。
【0112】
実施例51
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例50に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、63.5%の水素化度を達成した。
【0113】
実施例52
160℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例49に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、43.3%の水素化度を達成した。
【0114】
実施例53
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例52に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、58.6%の水素化度を達成した。
【0115】
実施例54
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例53に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、65.6%の水素化度を達成した。
【0116】
サンプルEを使用する水素化例
実施例55
400psi(2.76MPa)の水素圧および80℃の反応温度をかけ、そしてサンプルEを用いたことを除いて、実施例52に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをベンゼンに溶解させ、92.8%の水素化度を達成した。
【0117】
実施例56
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例55に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをベンゼンに溶解させ、96.4%の水素化度を達成した。
【0118】
実施例57
6.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例56に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをベンゼンに溶解させ、98.5%の水素化度を達成した。
【0119】
実施例58
100℃の反応温度をかけたことを除いて、実施例55に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをベンゼンに溶解させ、98.0%の水素化度を達成した。
【0120】
実施例59
3.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例58に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをベンゼンに溶解させ、99.4%の水素化度を達成した。
【0121】
実施例60
60℃の反応温度および100psiの水素圧をかけたことを除いて、実施例58に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをベンゼンに溶解させ、54.9%の水素化度を達成した。
【0122】
触媒固形分とポリマー粒子とを物理的に混合することによる水素化例
実施例61
0.6gの上述のブタジエン−アクリロニトリルコポリマーを、はさみを使用することによって約1.5mmの平均直径の粒子へカットした。前記ポリマー粒子を、ポリマー粒子と触媒固形分とを一緒にスプーンで撹拌することによって0.0050gのクラブトリー触媒固形分と物理的に混合した。
【0123】
温度制御手段、攪拌機、圧力計および水素ガス添加口を備えた、300mlガラス内張りステンレススチール・オートクレーブを反応器として用いた。触媒固形分とポリマー粒子との混合物を反応器へ入れ、反応器を水素ガスで脱ガスした。145℃で、500psi(3.45MPa)の水素圧を3時間かけた。その後反応器を冷却し、圧力を解除し、ポリマー生成物を反応器から取り出した。ポリマー生成物をメチルエチルケトンに溶解させ、幾らかの不溶性ゲルを観察した。可溶性部分の水素化度を赤外分析によって測定した。可溶性部分の52.4%の水素化度を達成した。
【0124】
実施例62
5.3時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例61に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、幾らかの不溶性ゲルを観察した。可溶性部分の水素化度を赤外分析によって測定した。可溶性部分の67.9%の水素化度を達成した。
【0125】
実施例63
130℃の反応温度、1000psi(6.90MPa)の水素圧および5.0時間の反応時間をかけたことを除いて、実施例62に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、幾らかの不溶性ゲルを観察した。可溶性部分の水素化度を赤外分析によって測定した。可溶性部分の61.1%の水素化度を達成した。
【0126】
実施例64
0.0025グラムの触媒を適用したことを除いて、実施例63に記載したものと同じ手順および条件を用いた。得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解させ、幾らかの不溶性ゲルを観察した。可溶性部分の水素化度を赤外分析によって測定した。可溶性部分の40.2%の水素化度を達成した。
【0127】
実施例1〜64のまとめをまた表2に示す。
【0128】
【表2−A】

【表2−B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルク形態で存在するジエン−ベースのポリマーを、いかなる有機溶媒も用いずに、そして水素化されるべきポリマーを基準として、1重量%未満のイリジウム含有触媒の存在下に水素化にかける工程を含むジエン−ベースのポリマー中の炭素−炭素二重結合の選択的水素化方法。
【請求項2】
イリジウム錯体、好ましくは一般式(I)
[Ir(COD)LL’]PF (I)
(式中、
CODは1,5−シクロオクタジエンを意味し、
Lは、Rがアルキル、シクロアルキル、またはアリールであるPRを意味し、
L’は、Rがアルキル、シクロアルキル、またはアリールであるPRまたはピリジンを意味する)
を有するイリジウム錯体が触媒として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
LおよびL’が同一であるかまたは異なり、そしてPMePh(Me=メチル、Ph=フェニル)、PPh、PCy(Cy=シクロヘキシル)、P(i−Pr)(i−Pr=イソプロピル)、またはdpe(ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)を意味し、そしてL’もまたピリジンを表してもよい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水素化されるべきポリマーをベースにして、0.001重量%〜0.95重量%、好ましくは0.01重量%〜0.8重量%のイリジウム含有触媒が使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化にかけられる炭素−炭素二重結合含有ポリマーがモノマー(a)としての少なくとも1つの共役ジエンと少なくとも1つのさらなる共重合性モノマー(b)との繰り返し単位を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
モノマー(b)オレフィンとして、好ましくはエチレンまたはプロピレン、ビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン、アルファ−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエン、脂肪族または分岐C〜C18モノカルボン酸のビニルエステル、より好ましくは酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルが使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1,3−ブタジエンとスチレンまたはアルファ−メチルスチレンとのコポリマーが水素化にかけられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
モノマー(b)としてエチレン性不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸と、C〜C12アルカノール、より好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、第三ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、またはC〜C10シクロアルカノール、より好ましくはシクロペンタノールまたはシクロヘキサノールとのエステル、そしてこれらのうちでさらにより好ましくはアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、そして最も好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸第三ブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸第三ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルが使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
モノマー(b)としてα,β−不飽和ニトリル、好ましくは(C〜C)α,β−不飽和ニトリル、より好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物が使用される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
α,β−不飽和ニトリル、特に好ましくはアクリロニトリルと、共役ジエン、特に好ましくは1,3−ブタジエンと場合により少なくとも1つのさらなる共重合性モノマー、特に好ましくはα,β−不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、それのエステルまたはアミドとのコポリマーであるニトリルゴム(「NBR」)が水素化にかけられる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
アクリロニトリルと、1,3−ブタジエンと、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸第三ブチルからなる群から選択される第3モノマーとのターポリマーが水素化にかけられる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化が0℃〜100℃の範囲の、好ましくは15℃〜70℃の範囲の温度でおよび0.1〜20MPaの、好ましくは1〜16MPaの水素圧で実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
イリジウム含有触媒が、触媒もしくは触媒溶液をジエン−ベースのポリマーの溶液と接触させ、そして次に溶媒を除去することによってか、またはイリジウム含有触媒固形分とジエン−ベースのポリマーとの直接の機械的混合によってか、または媒体中の触媒を使用することにより、より好ましくは溶媒もしくはCOを使用することによりジエン−ベースのポリマーに触媒を含浸させることによってジエン−ベースのポリマー中へ導入される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

【公開番号】特開2009−149886(P2009−149886A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−320191(P2008−320191)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(506241042)ランクセス・インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】