説明

ジエン重合体及びその製造方法

【課題】ジエン重合体を提供する。
【解決手段】重合体は、6員環を持つ特定の繰り返し単位及び5員環を持つ特定の繰り返し単位を有し、6員環を持つ特定の繰り返し単位及び5員環を持つ特定の繰り返し単位の総量に対する、6員環を持つ特定の繰り返し単位の量が70モル%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエン重合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジエン重合体としては、例えば、非特許文献1及び2に1,6ヘプタジエン等を環化重合したジエン重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Phillip D. Hustad, Jun Tian, and Geoffrey W. Coates, Mechanism of Propylene Insertion Using Bis(phenoxyimine)-Based Titanium Catalysts: An Unusual Secondary Insertion of Propylene in a Group IV Catalyst System, J. AM. CHEM. SOC. 2002, 124, 3614-3621
【非特許文献2】Daisuke Takeuchi, Ryuichi Matsuura, Sehoon Park, and Kohtaro Osakada, Cyclopolymerization of 1,6-Heptadienes Catalyzed by Iron and Cobalt Complexes: Synthesis of Polymers with Trans- or Cis-Fused 1,2-Cyclopentanediyl Groups Depending on the Catalyst, J. AM. CHEM. SOC. 2007, 129, 7002-7003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジエン重合体は自動車材料、家庭電化製品の部品等として様々な分野での利用が期待され、新たなジエン重合体の開発が強く求められている。
【0005】
本発明の目的は、このような事情に鑑みてなされたものであり、新たなジエン重合体及びこの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1.本発明に係る重合体>
本発明に係る重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有し、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位の総量に対する、下記式(1)で表される繰り返し単位の量が70モル%以上である。
【0007】
【化1】

【0008】
(上記式(1)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【0009】
【化2】

【0010】
(上記式(2)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
また、本発明に係る重合体の製造方法は、下記式(5)で表されるジエン化合物を、下記式(6)で表されるニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物およびホウ素化合物のうち少なくとも一種とを接触させて形成される触媒の存在下で重合させるものである。
【0011】
【化3】

【0012】
(上記式(5)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【0013】
【化4】

【0014】
(上記式(6)において、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、RとRとは互いに結合していてもよい、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数3〜30の炭化水素基を表し、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、または炭化水素チオ基を表す)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、新たなジエン重合体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る重合体は、下記式(1)下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有し、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位の総量に対する、下記式(1)で表される繰り返し単位の量が70モル%以上である。
【0017】
【化5】

【0018】
(上記式(1)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【0019】
【化6】

【0020】
(上記式(2)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
このように本発明に係る重合体は、5員環構造及び6員環構造を含み、且つ6員環構造のモル比率を向上している。これは非特許文献1および2からは得られなかった重合体である。
【0021】
式(1)および(2)中のA〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基であればよい。
【0022】
式(1)および(2)中のA〜Aの炭素原子数1〜6の炭化水素基としては、炭素数が1〜6個であればよい。炭化水素基としては、例えば、直鎖状の炭化水素基、分岐状の炭化水素基、環状の炭化水素基が挙げられる。
【0023】
直鎖状の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を例示することができる。
【0024】
分岐状の炭化水素基としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基等を例示することができる。
【0025】
環状の炭化水素基としては、フェニル基、シクロヘキシル基等を例示することができる。
【0026】
また、上記式(1)および(2)で表される繰り返し単位の、具体例としては、それぞれ下記式(3)および(4)
【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0030】
また、本発明において、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位の総量に対する、上記式(1)で表される繰り返し単位の量(以下、説明の便宜のため「6員環含有量」ということもある)は、70モル%以上であればよい。その上限値は、上記式(1)で表される繰り返し単位及び上記式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であれば限定されず、100モル%未満であるということもできる。
【0031】
なお、6員環含有量は、公知の測定方法により測定することができ、例えば、NMRを用いて測定するとよい。また、後述の実施例1の方法にて測定してもよい。
【0032】
本発明に係る重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜10,000,000であり、より好ましくは2,000〜5,000,000であり、最も好ましくは4,000〜3,000,000である。
【0033】
本発明に係る重合体の分子量分布は、好ましくは1〜100であり、より好ましくは1〜50であり、最も好ましくは1〜20である。
【0034】
本発明に係る重合体のガラス転移点(耐熱性の尺度)は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは250℃以上であり、最も好ましくは300℃以上である。
【0035】
<2.本発明に係る製造方法>
本発明に係る重合体の製造方法は、下記式(5)で表されるジエン化合物を、下記式(6)で表されるニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物およびホウ素化合物のうち少なくとも一種とを接触させて形成される触媒の存在下で重合させることによって、該重合体を製造すればよい。
【0036】
【化9】

【0037】
(上記式(5)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【0038】
【化10】

【0039】
(上記式(6)において、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、RとRとは互いに結合していてもよく、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、またはアリールオキシ基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数3〜30の炭化水素基を表し、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、または炭化水素チオ基を表す)
〔2−1.単量体〕
上記式(5)で表されるジエン化合物は公知の化合物でもよく、好ましくはA〜AのうちAおよびAのうちの一方並びにAおよびAのうちの一方がメチル基であって他は全て水素原子である化合物、A〜AのうちA、A、A、Aがメチル基であって他は全て水素原子である化合物、A〜AのうちAおよびAがメチル基であって他は全て水素原子である化合物、A〜AのうちAが水素原子であって他は全てメチル基である化合物、または1,6−ヘプタジエンであり、より好ましくは、1,6−ヘプタジエンである。該ジエン化合物は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
〔2−2.触媒〕
ジエン化合物の重合に用いる触媒は、上記式(6)で表されるニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物およびホウ素化合物のうち少なくとも一種とを接触させて形成されるものであればよい。
【0041】
式(6)中のRおよびRにおける炭素原子数1〜20の炭化水素基として、アルキル基およびアリール基を例示することができる。これらの基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示することができる。該アルキル基として、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基を例示することができる。直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、およびn−ブチル基等を例示することができる。分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、およびネオペンチル基等を例示することができる。環状アルキル基としては、シクロヘキシル基およびシクロオクチル基等を例示することができる。中でも、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。該アリール基として、フェニル基、ナフチル基、4−トリル基、およびメシチル基を例示することができる。中でも、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基であり、より好ましくは炭素原子数6〜12のアリール基であり、さらに好ましくはフェニル基、またはメシチル基である。
【0042】
式(6)におけるRとRとが互いに結合している場合、該結合によって形成される環として、脂肪族の環および芳香族の環を例示することができる。これらの環は置換基を有していてもよい。脂肪族の環におけるRとRとの結合によって形成される2価の基として、1,2−エチレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,2−ノルボルネン基、2,3−ブテン基、2,3−ジメチル−2,3−ブテン基、および2,4−ペンテン基を例示することができる。芳香族の環におけるRとRとの結合によって形成される2価の基として、1,2−フェニレン基およびアセナフチル基を例示することができ、好ましくはアセナフチル基である。
【0043】
式(6)におけるR〜Rは、炭素原子数3〜30の炭化水素基であればよく、直鎖状の炭化水素基、分岐状の炭化水素基、環式構造を有する炭化水素基等であってもよい。
【0044】
直鎖状の炭化水素基としては、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素原子数3〜30のアルキル基を例示できる。中でもプロピル基、ブチル基が好ましい。
【0045】
分岐状の炭化水素基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基等の炭素原子数3〜30のアルキル基を例示できる。中でもイソプロピル基、イソブチル基が好ましい。
【0046】
環式構造としては単環式構造であってもよく多環式構造であってもよい。また、例えば、ベンゼン、ナフタレン等の芳香属化好物から1個以上の水素原子を除いた芳香族性の環式基であってもよく、脂肪族環式構造の炭化水素基であってもよい。これらの環式構造にさらにアルキル基等の官能基が結合したものであってもよい。中でもシクロヘキシル基、フェニル基等が好ましい。
【0047】
式(6)におけるRおよびR10のハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示できる。中でも、好ましくは塩素原子または臭素原子である。
【0048】
式(6)におけるRおよびR10のアルキル基としては、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基を例示できる。該直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基およびn−ブチル基等を例示できる。分岐状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基およびネオペンチル基等を例示できる。環状アルキル基としては、シクロヘキシルおよびシクロオクチル等を例示できる。該アルキル基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状無置換アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0049】
式(6)におけるRおよびR10のアラルキル基として、ベンジル基およびフェネチル基を例示できる。該アラルキル基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくは炭素原子数7〜12のアラルキル基、より好ましくは炭素原子数7〜12の無置換アラルキル基、さらに好ましくはベンジル基である。
【0050】
式(6)におけるRおよびR10のアリール基として、フェニル基、ナフチル基、4−トリル基、メシチル基および4−フェニルフェニル基を例示できる。該アリール基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基、より好ましくは炭素原子数6〜12のアリール基、さらに好ましくはフェニル基、4−トリル基またはメシチル基である。
【0051】
式(6)におけるRおよびR10のシリル基は、置換基を有してもよい。置換されたシリル基として、1置換シリル基、2置換シリル基、3置換シリル基を例示できる。該1置換シリル基としては、メチルシリル基、エチルシリル基およびフェニルシリル基等を例示できる。該2置換シリル基としては、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、およびジフェニルシリル基等を例示できる。該3置換シリル基としては、トリメチルシリル基、トリメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、トリエチルシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソブチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、n−ヘキシルジメチルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、およびトリフェニルシリル基等を例示できる。置換されたシリル基はさらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくはトリアルキルシリル基、さらに好ましくはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、n−ヘキシルジメチルシリル基、またはトリイソプロピルシリル基である。
【0052】
式(6)におけるRおよびR10のシロキシ基は、置換基を有してもよい。置換されたシロキシ基として、トリメチルシロキシ基、トリメトキシシロキシ基、ジメチルメトキシシロキシ基、メチルジメトキシシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリ−n−プロピルシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基、トリ−n−ブチルシロキシ基、トリ−sec−ブチルシロキシ基、tert−ブチルジメチルシロキシ基、トリイソブチルシロキシ基、tert−ブチルジフェニルシロキシ基、n−ヘキシルジメチルシロキシ基、トリシクロヘキシルシロキシ基、ならびにトリフェニルシロキシ基等を例示できる。置換されたシロキシ基はさらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくはトリアルキルシロキシ基、さらに好ましくはトリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基、tert−ブチルジメチルシロキシ基、tert−ブチルジフェニルシロキシ基、n−ヘキシルジメチルシロキシ基、またはトリイソプロピルシロキシ基である。
【0053】
式(6)におけるRおよびR10のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、およびn−エイコシルオキシ基を例示できる。該アルコキシ基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基またはtert−ブトキシ基である。
【0054】
式(6)におけるRおよびR10のアラルキルオキシ基として、ベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2、3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、およびアントラセニルメトキシ基を例示できる。該アラルキルオキシ基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基、より好ましくはベンジルオキシ基である。
【0055】
式(6)におけるRおよびR10のアリールオキシ基として、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2、3−ジメチルフェノキシ基、2、4−ジメチルフェノキシ基、2、5−ジメチルフェノキシ基、2、6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−メチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,4−ジメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,5−ジメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,6−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−3−メチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−4,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,4,6−トリメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−3,4−ジメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−3,5,6−トリメチルフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチル−3,5−ジメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、ナフトキシ基、およびアントラセノキシ基を例示できる。該アリールオキシ基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示できる。中でも、好ましくは炭素原子数6〜20のアリールオキシ基である。
【0056】
式(6)におけるRおよびR10のアミノ基は、置換基を有してもよい。置換されたアミノ基として、直鎖状アルキルアミノ基、分岐状アルキルアミノ基、環状アルキルアミノ基を例示できる。該直鎖状アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−n−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、およびN,N−ジ−n−ブチルアミノ基等を例示できる。該分岐状アルキルアミノ基としては、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジ−tert−ブチルアミノ基、およびN,N−ジネオペンチルアミノ基等を例示できる。該環状アルキルアミノ基としては、N,N−ジシクロヘキシルアミノ基およびN,N−ジシクロオクチルアミノ基等を例示できる。置換されたアミノ基はさらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シリル基、シロキシ基、スルホニル基、および炭化水素チオ基等を例示できる。
【0057】
式(6)におけるRおよびR10のアミド基は、置換基を有してもよい。置換されたアミド基として、エタンアミド基、N−n−ブチルエタンアミド基、N−メチルエタンアミド基、N−エチルエタンアミド基、N−n−ブチルヘキサンアミド基、イソプロパンアミド基、イソブタンアミド基、tert−ブタンアミド基、およびネオペンタンアミド基、シクロヘキサンアミド基およびシクロオクタンアミド基等を例示できる。置換されたアミド基はさらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シリル基、シロキシ基、スルホニル基、および炭化水素チオ基等を例示できる。
【0058】
式(6)におけるRおよびR10のイミド基は、置換基を有してもよい。置換されたイミド基として、スクシンイミド基、マレイミド基、フタルイミド基等を例示できる。置換されたイミド基はさらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、イミド基、シリル基、シロキシ基、スルホニル基、および炭化水素チオ基等を例示できる。
【0059】
式(6)におけるRおよびR10の炭化水素チオ基として、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基を例示できる。該アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、およびtert−ブチルチオ基等を例示できる。該アリールチオ基としては、フェニルチオ基、およびナフチルチオ基等を例示できる。該アラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、9−フルオレニルメチルチオ基等を例示できる。該炭化水素チオ基は、さらに置換基を有してもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素オキシ基、ニトロ基、スルホニル基、およびシリル基等を例示することができる。
【0060】
式(6)におけるRおよびR10は、好ましくは水素原子またはアルキル基、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12のアルキル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、またはイソブチル基である。
【0061】
式(6)で表されるニッケル化合物としては、例えば、ジブロモ[N,N’−(1,2−ジヒドロアセナフチレン−1,2−ジイリデン)ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン−κN)]ニッケル、ジブロモ[N,N’−(1,2−ジヒドロアセナフチレン−1,2−ジイリデン)ビス(2,6−ジシクロヘキシルアニリン−κN)]ニッケル等を挙げることができる。
【0062】
ジエン化合物の重合において、触媒を生成するための有機アルミニウム化合物としては、公知の有機アルミニウム化合物であってもよい。有機アルミニウム化合物として、下記式(I)〜(III)で表される化合物を例示することができる。ここに例示する化合物は単独で用いてもよく、2種以上を併せて用いてもよい。
AlX3−d (I)
で表される有機アルミニウム化合物;
{−Al(E)−O−} (II)
で表される環状のアルミノキサン;および
{−Al(E)−O−}fAlE (III)
で表される線状のアルミノキサン;
上記式(I)〜(III)において、E、EおよびEはそれぞれ独立して炭化水素基を表し、複数のE、複数のEまたは複数のEが存在する場合、それらはそれぞれ同一であってもよく異なってもよい。Xは水素原子またはハロゲン原子を表し、Xが複数ある場合、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。dは0<d≦3を満たす数を表し、eは2以上の整数であり、好ましくは2〜40の整数であり、fは1以上の整数であり、好ましくは1〜40の整数である。
【0063】
、EおよびEにおける炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1〜8の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1〜8のアルキル基である。炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、およびネオペンチル基等を例示できる。中でも、メチル基またはイソブチル基が好ましい。
【0064】
上式(I)で表される有機アルミニウム化合物として、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライドを例示できる。該トリアルキルアルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウム等を例示できる。該ジアルキルアルミニウムクロライドとしては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、およびジヘキシルアルミニウムクロライド等を例示できる。該アルキルアルミニウムジクロライドとしては、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、およびヘキシルアルミニウムジクロライド等を例示できる。該ジアルキルアルミニウムハイドライドとしては、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、およびジヘキシルアルミニウムハイドライド等を例示できる。中でも、好ましくはトリアルキルアルミニウムであり、より好ましくはトリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムである。
【0065】
上記式(II)および(III)で表される環状および線状のアルミノキサンは、各種の方法で製造することができる。それらの製造方法は、公知の製造方法であってもよい。製造方法として、トリメチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムを、ベンゼンおよび脂肪族炭化水素等の有機溶剤に溶解した溶液を水と接触させて製造する方法、トリメチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウムを、硫酸銅水和物等の結晶水を含んでいる金属塩に接触させて製造する方法を例示することができる。
【0066】
ジエン化合物の重合において、触媒を生成するためのホウ素化合物としては、公知のホウ素化合物であってもよい。ホウ素化合物として、下記式(IV)〜(VI)で表される化合物を例示することができる:
BQ (IV)
で表されるホウ素化合物;
(BQ (V)
で表されるホウ素化合物;および
(J−H)(BQ (VI)
で表されるホウ素化合物。
【0067】
ただし、上記式(IV)〜(VI)において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q〜Qはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基またはアミノ基、アミド基、イミド基を表し、Gは無機または有機のカチオンを表し、Jは中性ルイス塩基を表し、(J−H)はブレンステッド酸を表す。
【0068】
上記式(IV)〜(VI)におけるQ〜Qは、好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20のシリル基、炭素原子数1〜20のシロキシ基、炭素原子数2〜20の炭化水素基で置換されたアミノ基、炭素原子数2〜20の炭化水素基で置換されたアミド基、炭素原子数2〜20の炭化水素基で置換されたイミド基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基または炭素原子数1〜20の炭素原子を含むハロゲン化炭化水素基であり、さらに好ましくは、少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数1〜20のフッ素化炭化水素基であり、特に好ましくは、少なくとも1個のフッ素原子を含む炭素原子数6〜20のフッ素化アリール基である。
【0069】
上記式(IV)で表されるホウ素化合物として、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、およびフェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボランを例示することができる。中でも、最も好ましくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0070】
上記式(V)で表されるホウ素化合物における無機のカチオンであるGとして、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、および銀陽イオンを例示することができる。有機のカチオンであるGとして、トリフェニルメチルカチオンを例示することができる。Gは、好ましくはカルベニウムカチオンであり、特に好ましくはトリフェニルメチルカチオンである。
【0071】
上記式(V)における(BQとして、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、およびテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートを例示することができる。
【0072】
上記式(V)で表されるホウ素化合物として、リチウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、カリウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラブチルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートを例示することができる。中でも、最も好ましくは、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0073】
上記式(VI)中の(J−H)として、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウムおよびトリアリールホスホニウムを例示することができ、(BQの具体例として上記式(V)の説明にて例示したものと同じものを例示することができる。
【0074】
上記式(VI)で表されるホウ素化合物として、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチル−2,4,6−トリメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを例示することができる。中でも、最も好ましくは、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0075】
上記ホウ素化合物は、好ましくは、上記式(V)または上記式(VI)で表されるホウ素化合物であり、特に好ましくはトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0076】
ジエン化合物の重合において、ニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物およびホウ素化合物のうち少なくとも一方との接触方法としては、例えば、単に混合するだけでもよく、適宜攪拌してもよい。また、この接触の際には、式(5)で表される化合物(単量体)を共に混合したり攪拌したりしてもよい。
【0077】
ニッケル化合物と有機アルミニウム化合物とを接触させて重合用触媒を生成させる場合、重合用触媒の活性を高める観点から、有機アルミニウム化合物として、上記式(II)で表される環状のアルミノキサン、上記式(III)で表される線状のアルミノキサン、またはこれらの組合せが好ましい。ニッケル化合物と有機アルミニウム化合物とホウ素化合物とを接触させて重合用触媒を生成させる場合、同じ観点から、有機アルミニウム化合物として、上記式(I)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0078】
有機アルミニウム化合物の使用量は、触媒が生成可能であればよいが、ニッケル化合物1モル部あたり、例えば、0.1〜10000モル部、好ましくは5〜2000モル部である。該使用量が0.1モル部以上であれば十分な重合活性を得ることができ、10000モル部以下であれば、より高い分子量の重合体を得ることができたり(例えば、有機アルミニウム化合物への連鎖移動を抑制することによる)、より高い重合用触媒の活性を得たりすることができる。ホウ素化合物の使用量は、遷移金属化合物1モル部あたり、例えば、0.01〜100モル部であり、好ましくは0.5〜10モル部である。該使用量が0.01モル部以上であると、重合用触媒の活性を十分に得ることができ、100モル部未満とすることでコストを抑えることができる点にて有利である。
【0079】
ジエン化合物の重合において用いるニッケル化合物、有機アルミニウム化合物およびホウ素化合物のそれぞれは、溶液として用いてもよい。該溶液の溶媒として、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、ペンタン、ヘキサン、およびヘプタンを例示することができる。中でも、塩化メチレン、クロロホルム、またはトルエンが好ましい。
【0080】
ニッケル化合物溶液の濃度は、例えば、0.01〜500μmol/Lであり、好ましくは0.05〜100μmol/Lであり、より好ましくは0.05〜50μmol/Lである。有機アルミニウム化合物溶液の濃度は、アルミニウム原子換算で、例えば、0.01〜10000μmol/Lであり、好ましくは0.1〜5000μmol/Lであり、より好ましくは0.1〜2000μmol/Lである。ホウ素化合物溶液の濃度は、例えば、0.01〜500μmol/Lであり、好ましくは0.05〜200μmol/Lであり、より好ましくは0.05〜100μmol/Lである。ニッケル化合物溶液の濃度を0.01μmol/L以上とすることで、有機アルミニウム化合物溶液の濃度をアルミニウム原子換算で0.01μmol/L以上とすることで、また、ホウ素化合物溶液の濃度を0.01μmol/L以上とすることで、溶媒の使用量を低減させることができ、コスト面で有利である。また、ニッケル化合物溶液の濃度を500μmol/L以下とすることで、有機アルミニウム化合物溶液の濃度をアルミニウム原子換算で10000μmol/L以下とすることで、また、ホウ素化合物溶液の濃度を500μmol/L以下とすることで、これら化合物を十分に溶解させることができ、当該化合物の析出を抑制することができる。
【0081】
ジエン化合物の重合において使用する触媒は、無機化合物の粒子状物質または有機化合物の粒子状物質からなる担体と組合せてもよい。無機化合物として、シリカゲルおよびアルミナを例示することができる。有機化合物として、スチレン重合体を例示することができる。
【0082】
〔2−3.重合方法〕
ジエン化合物の重合における重合方法は特に限定されない。該重合方法として、バッチ式または連続式の、気相重合法、塊状重合法、および、適当な重合溶媒を使用しての溶液重合法またはスラリー重合法を例示することができる。重合溶媒は、重合触媒を失活させない溶媒であって、溶媒として、炭化水素溶媒およびハロゲン化溶媒等を例示できる。該炭化水素溶媒として、ベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびシクロヘキサン等を例示できる。該ハロゲン化溶媒として、ジクロロメタンおよびクロロホルム等を例示できる。
【0083】
ジエン化合物の重合における重合温度は、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは−50〜200℃である。該温度が−100℃以上であると、触媒が重合反応に十分な活性を示し、250℃以下であると、より高い分子量の重合体を得ることができたり、副反応の生起を抑制したりすることができる。この副反応として、異性化反応等を例示できる。
【0084】
また、ジエン化合物の重合においては、得られる重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、水素等を例示できる。
【0085】
ジエン化合物の重合における重合時間は、例えば、1分から72時間である。該重合時間が1分以上であれば、十分な収量にて重合体を得ることができ、72時間以下とすることで、重合体の製造コストを抑えることができる点で有利である。
【0086】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0087】
〔実施例1〕
乾燥した25mLシュレンク型フラスコにジブロモ[N,N’−(1,2−ジヒドロアセナフチレン−1,2−ジイリデン)ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン−κN)]ニッケル7.2mg(「レクエ・デ・トラボ・チミク・ドゥ・ペイバ(Recueil des Travaux Chimiques de Pays−Bas)」、第113巻、1994年、88ページを参考に合成した)、トルエン0.59mL、1,6−ヘプタジエン0.0962g(和光純薬工業社製)、およびMMAO(有機アルミニウム化合物)トルエン溶液(MMAO−3A、Al:6.6wt%)1.41mL(東ソーファインケム社製)を加え、0℃で18時間攪拌した。反応後、反応混合物をメタノール(約50mL)に注いでろ別し、得られた固体部分をメタノールで洗浄、真空乾燥することにより生成物0.0470gが得られた(収率48.9%)。数平均分子量(M)は12900、分子量分布(M/M)は1.20であった。生成物中にはトランス−1,2−シクロペンタン構造(26%)およびシス−1,3−シクロヘキサン構造(74%)が含まれていた。生成物は室温において固体であり、71℃にガラス転移点が確認された。5%分解点(T)は240℃(TG分析測定)であった。
【0088】
上記のガラス転移点は、セイコー電子工業(株)社製のSSC−5200なる名称の機種を用いた示差走査熱量(DSC)測定により、以下の条件で測定した:
昇温:25℃から150℃(10℃/分) 5分間保持;
冷却:150℃から−60℃(20℃/分) 5分間保持;
測定:−60℃から150℃(10℃/分で昇温)。
【0089】
上記の数平均分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記の条件で測定した。また、検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した:
測定機 :JASCO社製(デガッサー:DG−980−50、ポンプ:PU−980、オートサンプラー:AS−950、カラムオーブン:CO−966、RI検出器:RI−930、UV検出器:UV−975)
カラム :昭和電工(株)製のShodex−806L×2本
測定温度:40℃
溶媒 :クロロホルム
サンプル濃度:1mg/1ml。
【0090】
得られた重合体が式(3)および(4)で表される繰り返し単位を有することは、日本電子社製のLA−500なる名称の機種を用いた13C−NMR解析のスペクトルにおける15〜60ppmの範囲のシグナル群が、式(3)および(4)で表される構造の直鎖炭化水素および環状炭化水素として帰属できることによって確認した:
測定溶媒:クロロホルム−d1
測定温度:室温
試料濃度:50mg/0.5ml
基準物質:クロロホルム−d1(77ppm)。
【0091】
上記の環状構造およびその立体規則性の存在比率は、日本電子社製のLA−500なる名称の機種を用いた13C−NMR解析により、以下の手順からなる方法で求めた。
(1)重合体の重クロロホルム溶液(濃度は286mg/mL)を調製した。
(2)該溶液の13C−NMRスペクトルを測定した。
(3)重クロロホルムのピーク位置を77ppmとして、該スペクトルの22.5〜23.5ppmに現れるピークの面積(A5C)および23.8〜24.8ppmに現れるピークの面積(A5T)、26.0〜27.5ppmに現れるピークの面積(A6C)および21.0〜22.0ppmに現れるピークの面積(A6T)をそれぞれ求めた。
(4)立体規則性を、次式に基づいて算出した:
トランス−1,2−シクロペンタン(%)=100A5T/(A5T+A5C+A6T+A6C
シス−1,2−シクロペンタン(%)=100A5C/(A5T+A5C+A6T+A6C
トランス−1,3−シクロヘキサン(%)=100A6T/(A5T+A5C+A6T+A6C
シス−1,3−シクロヘキサン(%)=100A6C/(A5T+A5C+A6T+A6C)。
【0092】
〔実施例2〕
実施例1において、ジブロモ[N,N’−(1,2−ジヒドロアセナフチレン−1,2−ジイリデン)ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン−κN)]ニッケル7.2mgをジブロモ[N,N’−(1,2−ジヒドロアセナフチレン−1,2−ジイリデン)ビス(2,6−ジシクロヘキシルアニリン−κN)]ニッケル8.8mgに、また18時間の反応時間を3時間に変更したこと以外は実施例1同様に行い、生成物0.0364gが得られた(収率37.8%)。数平均分子量(M)は9500、分子量分布(M/M)は1.52であった。生成物中にはトランス−1,2−シクロペンタン構造(28%)およびシス−1,3−シクロヘキサン構造(72%)が含まれていた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る重合体は、自動車部品、家庭電化製品の部品、光学材料等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有し、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位の総量に対する、下記式(1)で表される繰り返し単位の量が70モル%以上である重合体。
【化1】

(上記式(1)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【化2】

(上記式(2)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【請求項2】
上記式(1)で表される繰り返し単位が、下記式(3)で表される繰り返し単位であり、上記式(2)で表される繰り返し単位が下記式(4)で表される繰り返し単位である請求項1に記載の重合体。
【化3】

【化4】

【請求項3】
下記式(5)で表されるジエン化合物を、下記式(6)で表されるニッケル化合物と、有機アルミニウム化合物およびホウ素化合物のうち少なくとも一種とを接触させて形成される触媒の存在下で重合させて、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位を有し、下記式(1)で表される繰り返し単位及び下記式(2)で表される繰り返し単位の総量に対する、下記式(1)で表される繰り返し単位の量が70モル%以上である重合体を製造する製造方法。
【化5】

(上記式(5)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【化6】

(上記式(6)において、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、RとRとは互いに結合していてもよく、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、またはアリールオキシ基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に炭素原子数3〜30の炭化水素基を表し、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シリル基、シロキシ基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、または炭化水素チオ基を表す)
【化7】

(上記式(1)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)
【化8】

(上記式(2)において、A〜Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す)

【公開番号】特開2009−227995(P2009−227995A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47101(P2009−47101)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】