説明

ジピロメテン金属錯体化合物、並びに、該ジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物、感熱転写記録用インクシート、カラートナー、インクジェット記録用インク、及びカラーフィルタ

【課題】シャープな吸収スペクトルピークを示し、堅牢性及び溶媒に対する溶解性に優れるジピロメテン金属錯体化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物。一般式中、R〜Rは各々独立に1価の置換基を表し、Mは金属又は金属化合物を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基などを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジピロメテン金属錯体化合物、並びに、該ジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物、感熱転写記録用インクシート、カラートナー、インクジェット記録用インク、及びカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
いまや画像記録はフルカラーでの記録が主流であり、様々な着色剤(染料や顔料などの色素)が開発され、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペンのインク等に適用されている。
また、CCDなどの撮像素子および液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の、カラーフィルタにカラー画像を記録あるいは再現する技術分野においても、カラーフィルタ形成用の着色剤が多種開発されている。
記録材料用やカラーフィルタ形成用の着色剤には、フルカラー画像を記録あるいは再現するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の着色剤が使用されている。しかしながら、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つ様々な使用環境に耐え得る堅牢な着色剤がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
感熱転写記録には、支持体(ベースフィルム)上に熱溶融性インクを含む層を形成した感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱し該インクを溶融させて受像材料上に記録する方式と、支持体上に熱移行性色素を含有する色素供与層を形成した感熱転写材料をサーマルヘッドにより加熱して該色素を受像材料上に熱拡散転写させる方式と、がある。後者の感熱転写方式は、サーマルヘッドに加えるエネルギーを変えることにより色素の転写量を変化させることができるために階調記録が容易であり、高画質のフルカラー記録に特に有利である。しかし、この方式に用いる熱移行性色素には種々の制約があり、必要とされる性能を全て満たすものは極めて少ない。
【0004】
上記で必要とされる性能としては、例えば、色再現上好ましい分光特性を有すること、転写し易いこと、光や熱や湿度に堅牢であること(耐光性、耐熱性、耐湿性)、種々の化学薬品に堅牢であること、合成が容易であること、感熱転写用記録材料を作り易いことなどがある。しかしながら、色再現上好ましい分光特性を有しているとして提案されている従来の色素は、満足できるレベルの分光特性を有しておらず、さらなる改良が強く望まれている。
【0005】
電子写真方式の記録機器であるカラーコピア、カラーレーザープリンターにおいては、一般に樹脂粒子中に着色剤を分散させたトナーが広く用いられている。カラートナーに要求される性能として、好ましい色再現域を実現できる吸収特性、特にオーバーヘッドプロジェクター(以下OHPという)で使用される際に必要とされる高い透過性(透明性)、及び使用環境条件下における堅牢性が挙げられる。顔料を着色剤として粒子に分散させたトナーが提案されているが(例えば、特許文献1〜3参照)、これらのトナーは耐光性には優れるが、不溶性であるため凝集し易く、透明性の低下や透過色の色相変化に問題がある。一方、特定の色素を着色剤として使用したトナーも提案されているが(例えば、特許文献4〜6参照)、これらのトナーは透明性が高く色相変化はないものの、耐光性に問題がある。
【0006】
インクジェット記録方法は、材料費が安価であること、高速記録が可能なこと、記録時の騒音が少ないこと、さらにカラー記録が容易であることから、急速に普及し、さらに発展しつつある。インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式とが有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、及び静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。このようなインクジェット記録用インクに用いられる着色剤に対しては、溶剤に対する溶解性あるいは分散性が良好なこと、高濃度記録が可能であること、色相が良好であること、光、熱、環境中の活性ガス(NOx、SOx、オゾンなどの酸化性ガス)に対して堅牢であること、水や薬品に対する堅牢性に優れていること、受像材料に対して定着性がよく滲みにくいこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性がないこと、純度が高いこと、さらには、安価に入手できることが要求される。しかしながら、これらの要求を高いレベルで満たす着色剤を捜し求めることは、極めて難しい。特に、良好なマゼンタ色を呈し、光、湿度、熱に対して堅牢な着色剤、なかでも好ましい色再現域を実現できる良好なマゼンタ色を呈する着色剤が強く望まれている。
【0007】
カラーフィルタは高い透明性が必要とされるために、染料を用いて着色する染色法と呼ばれる方法が行われてきた。例えば、被染色性のフォトレジストをパターン露光し現像することによりパターンを形成し、次いでフィルタ色の色素で染色する方法を全フィルタ色について順次繰り返すことにより、カラーフィルタを製造することができる。染色法の他にも、ポジ型又はネガ型レジストを用いる方法によってもカラーフィルタを製造することができる。これらの方法により製造されるカラーフィルタは、色素を使用しているために透過率が高く、光学特性も優れているが、耐光性や耐熱性等に限界があり、諸耐性に優れかつ透明性の高い着色剤が望まれていた。なお、色素の代わりに耐光性や耐熱性が優れる有機顔料を用いる方法が広く知られているが、顔料を用いたカラーフィルタでは染料のような光学特性を得ることは困難である。
【0008】
前記の各用途に使用可能な染料には共通して、次のような性質を具備していることが望まれている。即ち、色再現上好ましい色相を有すること、最適な分光吸収を有すること、耐光性、耐湿性、耐熱性、耐薬品性などの堅牢性が良好であること、溶媒に対する溶解性が良好であることなどが挙げられる。
【0009】
一方、着色剤としてカラーフィルタ用途に使用するジピロメテン金属錯体化合物が特許文献7に開示されている。しかしながら、特許文献7には、本発明の一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の記載はなく、ジピロメテン金属錯体化合物の中でも、特に本発明のジピロメテン金属錯体化合物が、優れた特性を有する着色剤として着色組成物に適用され、カラーフィルタ用途をはじめとし各種用途に有用に使用できることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−157051号公報
【特許文献2】特開昭62−255956号公報
【特許文献3】特開平6−118715号公報
【特許文献4】特開平3−276161号公報
【特許文献5】特開平2−207274号公報
【特許文献6】特開平2−207273号公報
【特許文献7】特開2008−292970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の技術に鑑みなされたものである。
即ち、本発明の目的は、シャープな吸収スペクトルピークを示し、堅牢性及び溶媒に対する溶解性に優れるジピロメテン金属錯体化合物を提供することである。
また、本発明の目的は、前記ジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物、感熱転写記録用インクシート、カラートナー、インクジェット記録用インク、及びカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の構成によって上記課題が達成されることを見出した。前記課題を達成するための具体的手段は以下のとおりである。
【0013】
<1> 下記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(1)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、Mは金属又は金属化合物を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、各々独立に0〜5の整数を表し、n3及びn4は、各々独立に0〜3の整数を表す。
【0016】
<2> 下記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(2)中、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
【0019】
<3> 前記<1>又は<2>に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物。
<4> 前記<1>又は<2>に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有する感熱転写記録用インクシート。
<5> 前記<1>又は<2>に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有するカラートナー。
<6> 前記<1>又は<2>に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有するインクジェット記録用インク。
<7> 前記<1>又は<2>に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有するカラーフィルタ。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シャープな吸収スペクトルピークを示し、堅牢性及び溶媒に対する溶解性に優れるジピロメテン金属錯体化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記ジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物、感熱転写記録用インクシート、カラートナー、インクジェット記録用インク、及びカラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例101で合成した例示化合物(1)の吸収スペクトルである。
【図2】実施例401で作製したインクジェット記録用インクによる記録画像の反射スペクトルである。
【図3】実施例501で作製したカラーフィルタの透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に記載する本発明の構成の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
本明細書において、ジピロメテン金属錯体化合物における「ジピロメテン骨格」とは、下記の構造式に示す構造を意味する。本明細書中では、下記構造式に従って、ジピロメテン骨格の置換位置を表記する。
【0024】
【化3】

【0025】
<ジピロメテン金属錯体化合物>
〔一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物〕
第一の本発明は、下記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である。前記ジピロメテン金属錯体化合物は、シャープな吸収スペクトルピークを示し分光特性が良好である。また、前記ジピロメテン金属錯体化合物は、耐熱性、耐湿性および耐光性に優れ、堅牢である。さらに、前記ジピロメテン金属錯体化合物は、溶媒に対する高い溶解性を有する。
【0026】
【化4】

【0027】
前記一般式(1)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、Mは金属又は金属化合物を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、各々独立に0〜5の整数を表し、n3及びn4は、各々独立に0〜3の整数を表す。n1が2以上の整数の場合、2以上のRは同じであっても異なっていてもよい。n2が2以上の整数の場合、2以上のRは同じであっても異なっていてもよい。n3が2以上の整数の場合、2以上のRは同じであっても異なっていてもよい。n4が2以上の整数の場合、2以上のRは同じであっても異なっていてもよい。
本明細書においてジピロメテン金属錯体化合物の5−位及び5’−位のアミド基は、ケト−エノール互変異性平衡におけるケト型で記載しているが、エノール型であってもよい。
【0028】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物は、ジピロメテン骨格の3−位及び3’−位が、置換若しくは無置換のフェニル基であり、5−位及び5’−位が、2−位置換(一般式(1)におけるR及びRの置換基)かつ6−位無置換のフェニルカルボニルアミノ基である。このような構造のジピロメテン金属錯体化合物はこれまでに知られていなかった。
【0029】
前記一般式(1)中、R〜Rで表される1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、また、シクロアルキルオキシ基であれば、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、また、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基であれば、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、
【0030】
アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、
【0031】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホノ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)が挙げられる。
【0032】
上述した1価の基が更に置換可能な基である場合には、上述した各基のいずれかによって更に置換されていてもよい。なお、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
前記一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数7〜11のアリールカルバモイル基、又はシアノ基であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のフェニルスルホニル基、又はシアノ基であり、特に好ましくは、無置換の炭素数6〜30のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基である。
【0034】
前記一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、又はハロゲン原子であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、塩素原子、又は臭素原子であり、特に好ましくは、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は塩素原子である。
【0035】
前記一般式(1)中、R、R、R及びRは、各々独立に、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0〜30のアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のフェニルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜18のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0〜18のアミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、特に好ましくは、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換のフェニル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、無置換の炭素数2〜12のアシル基、無置換の炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、無置換の炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基である。
【0036】
前記一般式(1)において、n1が2以上の整数の場合、隣り合うRが互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。なお、形成される環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環が挙げられる。n2、n3及びn4がそれぞれ2以上の整数の場合、隣り合うR、隣り合うR、隣り合うRについても上記と同様である。
また、RとRとが隣り合う場合、RとRとは、互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成していてもよい。形成される環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環が挙げられ、好ましくはベンゼン環が挙げられる。RとRとが隣り合う場合についても上記と同様である。
なお、形成される5員、6員及び7員の環が、更に置換可能な基である場合には、前述の1価の置換基のいずれかで置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
前記一般式(1)中、n1及びn2は、各々独立に、0〜5の整数であり、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜2であり、特に好ましくは0又は1である。
前記一般式(1)中、n3及びn4は、各々独立に、0〜3の整数であり、好ましくは0〜2であり、特に好ましくは0又は1である。
【0038】
前記一般式(1)中、Mで表される金属又は金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、B等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)等の金属水酸化物も含まれる。
錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、Mで表される金属又は金属化合物は、好ましくは、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、又はVOであり、より好ましくは、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、又はVOであり、特に好ましくは、Znである。
【0039】
前記一般式(1)中、Xは、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。Xは、好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリールスルホニルオキシ基、又は塩素原子であり、より好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、無置換の炭素数1〜18のアルキルスルホニルオキシ基、無置換の炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基であり、特に好ましくは、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基である。
【0040】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物において、R〜R、M、Xで表される置換基の好ましい組み合わせは、これら置換基の少なくとも1つが前記好ましい基であることが好ましく、より多くの置換基が前記好ましい基であることがより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基であることが最も好ましい。
【0041】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の好ましい態様を以下に示す。即ち、前記一般式(1)において、
及びRが、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数7〜11のアリールカルバモイル基、又はシアノ基であり、
及びRが、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の6〜10のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、又はハロゲン原子であり、
、R、R及びRが、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロ環基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0〜30のアミノ基、シアノ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、
n1、n2、n3及びn4が、各々独立に、0〜3であり、
Mが、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、又はVOであり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリールスルホニルオキシ基、又は塩素原子である組み合わせである。
【0042】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物のより好ましい態様を以下に示す。即ち、前記一般式(1)において、
及びRが共に、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換のフェニルスルホニル基、又はシアノ基であり、
及びRが共に、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、塩素原子、又は臭素原子であり、
及びRが共に、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のフェニルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜18のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0〜18のアミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、
及びRが共に、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のフェニルチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜18のアシル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のアルキルスルホニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜18のカルバモイル基、置換若しくは無置換の炭素数0〜18のアミノ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、又はホスホノ基であり、
n1及びn2が共に0〜2であり、n3及びn4が共に0〜2であり、
Mが、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、又はVOであり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、無置換の炭素数1〜18のアルキルスルホニルオキシ基、又は無置換の炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基である組み合わせである。
【0043】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の最も好ましい態様を以下に示す。即ち、前記一般式(1)において、
及びRが共に、無置換の炭素数6〜30のアルコキシカルボニル基、又はシアノ基であり、
及びRが共に、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は塩素原子であり、
及びRが共に、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換のフェニル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、無置換の炭素数2〜12のアシル基、無置換の炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、無置換の炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基であり、
及びRが共に、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換のフェニル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、無置換の炭素数2〜12のアシル基、無置換の炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、無置換の炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、又はカルボキシ基であり、
n1及びn2が共に0又は1であり、n3及びn4が共に0又は1であり、
MがZnであり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基である組み合わせであるか、
下記の一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である。
【0044】
〔一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物〕
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の中でも、下記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物が、有機溶剤への溶解性、合成の容易さ、熱及びアルカリに対する安定性の点でより優れている。
【0045】
【化5】

【0046】
前記一般式(2)中、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
【0047】
前記一般式(2)におけるR、R及びXは、それぞれ前記一般式(1)におけるR、R及びXと同じであり、好ましい例も同じである。
【0048】
前記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の好ましい態様を以下に示す。即ち、前記一般式(2)において、
及びRが、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の6〜10のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、又はハロゲン原子であり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリールスルホニルオキシ基、又は塩素原子である組み合わせである。ここで、RとRとは、同じ置換基であることが好ましい。
【0049】
前記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物のより好ましい態様を以下に示す。即ち、前記一般式(2)において、
及びRが、各々独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフェノキシ基、塩素原子、又は臭素原子であり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、無置換の炭素数1〜18のアルキルスルホニルオキシ基、又は無置換の炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基である組み合わせである。ここで、RとRとは、同じ置換基であることが好ましい。
【0050】
前記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の最も好ましい態様を以下に示す。即ち、前記一般式(2)において、
及びRが、各々独立に、無置換の炭素数1〜12のアルキル基、無置換の炭素数1〜12のアルコキシ基、又は塩素原子であり、
Xが、置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基である組み合わせである。ここで、RとRとは、同じ置換基であることが好ましい。
【0051】
以下に前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の具体例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。なお表1〜4中のR101、R102、R103、M及びX101は下記一般式(3)中の置換基を表す。
【0052】
【化6】

【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
前記例示化合物のうち、例示化合物(1)〜(10)は、前記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の具体例でもある。
【0058】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物は、米国特許第4,774,339号明細書、同5,433,896号明細書、特開2001−240761号公報、同2002−155052号公報、特許第3614586号公報、Aust. J. Chem, 1965, 11, 1835〜1845、J. H. Boger et al, Heteroatom Chemistry, Vol.1, No.5, 389(1990)、特開2008−292970号公報の段落番号0131〜0157の記載を参照して合成することができる。
【0059】
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の最大吸収波長λmax、及び前記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の最大吸収波長λmaxは、好ましくは500〜620nmの範囲であり、より好ましくは520〜600nmの範囲であり、特に好ましくは530〜580nmの範囲である。なお、最大吸収波長λmaxは、分光光度計UV−2400PC(島津製作所社製)により測定されるものである。
【0060】
本発明のジピロメテン金属錯体化合物は、カラー画像形成材料用途では、3原色のうちのマゼンタ色として使用されることが好ましい。
本発明のジピロメテン金属錯体化合物は、カラーフィルタ材料用途では、例えば輝線カット用途(YAGレーザーの発振波長1064nmの2倍波である532nm光の遮断用途)や、赤色フィルタの長波長端の色補正用途、青色フィルタの短波長端の色補正用途として使用されることが好ましい。
【0061】
<着色組成物>
第二の本発明は、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物である。前記着色組成物は、感熱転写記録用インクシート、インクジェット記録用インク、カラートナー、カラーフィルタ、筆記用ペン、着色プラスチック、その他インク液などのことを指す 。本発明の着色組成物は、特に感熱転写記録用インクシート、インクジェット記録用インク、カラートナー、カラーフィルタとして好適に適用できる。
以下、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する、感熱転写記録用インクシート、インクジェット記録用インク、カラートナー、カラーフィルタについて詳細に説明する。
【0062】
<感熱転写記録用インクシート>
本発明の感熱転写記録用インクシートは、一般に支持体上に色素供与層が形成された構造を有しており、その色素供与層中に前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する。前記感熱転写記録用インクシートは、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物をバインダーとともに溶媒中に溶解するか、あるいは溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インク液を支持体上に塗設し、適宜乾燥して色素供与層を形成することにより製造することができる。また、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物に加え、その他の色素化合物を同時に用いてもよい。
【0063】
本発明の感熱転写記録用インクシートをフルカラー画像記録が可能な感熱転写記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成することが好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートがさらに形成されていてもよい。
前記シアンインクシートとしては、例えば、特開平3−103477号公報や特開平3−150194号公報などに記載されるものを好ましく用いることができる。前記イエローインクシートとしては、例えば、特許第4468907号などに記載されるものを好ましく用いることができる。そして、前記マゼンタインクシートとして、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する本発明の感熱転写記録用インクシートを用いる。
【0064】
(支持体)
前記感熱転写記録用インクシートの支持体には、インクシート用支持体として従来から用いられているものを適宜選択して用いることができる。例えば特開平7−137466号公報の段落番号0050に記載される材料を好ましく用いることができる。支持体の厚みは、2〜30μmが好ましい。
【0065】
(色素供与層)
前記感熱転写記録用インクシートの色素供与層に用いることができるバインダー樹脂は、耐熱性が高く、加熱されたときに前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物やその他の色素化合物が受像材料へ移行するのを妨げないものであれば、特にその種類は制限されない。例えば、特開平7−137466号公報の段落番号0049に記載されたものを好ましい例として挙げることができる。
また、色素供与層形成用の溶剤についても、従来公知の溶剤を適宜選択して用いることができ、特開平7−137466号公報の実施例に記載されるものを好ましく用いることができる。色素供与層中における前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の含有量は、0.03〜1.0g/mが好ましく、0.1〜0.6g/mがより好ましい。また、色素供与層の厚みは、0.2〜5μmが好ましく、0.4〜2μmがより好ましい。
【0066】
(機能層)
前記感熱転写記録用インクシートは、本発明の効果を過度に阻害しない範囲内であれば、色素供与層以外の層を有するものであってもよい。例えば、支持体と色素供与層との間に中間層を有するものであってもよいし、色素供与層とは反対側の支持体面(以下「背面」ともいう。)にバック層を有するものであってもよい。中間層としては、例えば下塗り層や、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物やその他の色素化合物の支持体方向への拡散を防止するための拡散防止層(親水性バリアー層)を挙げることができる。また、バック層としては、例えば耐熱スリップ層を挙げることができ、サーマルヘッドのインクシートへの粘着防止を図ることができる。
【0067】
(感熱転写記録方法)
前記感熱転写記録用インクシートを用いて感熱転写記録を行う際には、サーマルヘッド等の加熱手段と受像材料を組み合わせて用いる。すなわち、画像記録信号に従ってサーマルヘッドから熱エネルギーがインクシートに加えられ、該熱エネルギーが加えられた部分の前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物やその他の色素化合物が受像材料に移行し固定されることによって画像記録がなされることを特徴とする、感熱転写記録方法である。受像材料は、通常は支持体上にポリマーを含有するインク受容層を設けた構成を有している。受像材料の構成や使用材料については、例えば特開平7−137466号公報の段落番号0056〜0074に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0068】
<カラートナー>
本発明のカラートナーは、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する。前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては、トナー用に一般に使用される全てのバインダーが使用できる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。トナーに対して流動性向上や帯電制御等を付与する目的で、無機微粉末、有機微粒子を外部添加してもよい。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子サイズが10〜500nmのものが好ましく、さらにはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0069】
前記カラートナーに用いられる離型剤としては、トナー用に従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0070】
前記カラートナーに用いられる荷電制御剤としては、必要に応じて添加してもよいが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどが挙げられる。
【0071】
前記カラートナーに用いられるキャリヤとしては、鉄やフェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリヤ、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリヤのいずれを使用してもよい。このキャリヤの平均粒子サイズは体積平均粒子サイズで30〜150μmが好ましい。
【0072】
前記カラートナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い、画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等が挙げられる。
【0073】
<インクジェット記録用インク>
本発明のインクジェット記録用インクは、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する。前記インクジェット記録用インクは、親油性媒体や水性媒体中に前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を溶解及び/又は分散させることによって作製することができ、好ましくは、水性媒体を用いる。
前記インクジェット記録用インクは、分光特性や堅牢性等に優れている上、さらに溶解性までもが優れた色素化合物(前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物)を含有するので、インクジェット記録用インクとして好適である。
【0074】
(添加剤)
前記インクジェット記録用インクには、必要に応じてその他の添加剤が、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、色素化合物分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0075】
前記乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口において該インクジェット記録用インクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
前記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0076】
前記浸透促進剤は、インクジェット記録用インクを紙によりよく浸透させる目的で好適に使用される。前記浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0077】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3,214,463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0078】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許文献に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0079】
前記防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0080】
前記pH調整剤としては前記中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調整剤はインクジェット記録用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット記録用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0081】
前記表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。尚、本発明のインクジェット記録用インクの表面張力は、20〜60mN/mが好ましく、25〜45mN/mがより好ましい。また、本発明のインクジェット記録用インクの粘度は、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
【0082】
前記界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(商品名、AirProducts&Chemicals社製)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。さらに、特開昭59−157636号公報の第37〜38頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げられたものも使うことができる。
【0083】
前記消泡剤としては、フッ素系及びシリコーン系化合物や、EDTAに代表されるキレート剤等を必要に応じて使用することができる。
【0084】
(インクジェット記録用インクの調製方法)
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763号、同2001−262039号、同2001−247788号の各公報に記載のように、ジピロメテン金属錯体化合物と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散したり、特開2001−262018号、同2001−240763号、同2001−335734号、同2002−80772号の各公報に記載のように、高沸点有機溶媒に溶解したジピロメテン金属錯体化合物を水性媒体中に分散することが好ましい。前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤及びそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、ジピロメテン金属錯体化合物を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0085】
分散装置としては、スターラーや、インペラー攪拌装置、インライン攪拌装置、ミル(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波攪拌装置、高圧乳化分散装置(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000(BEEインターナショナル社製)等)を使用することができる。インクジェット記録用インクの調製方法については、前述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003号の各公報に詳細が記載されており、本発明に適用できる。
【0086】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。なお、前記水混和性有機溶剤は、二種類以上を併用してもよい。
【0087】
<カラーフィルタ>
本発明のカラーフィルタは、前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物を含有する。前記カラーフィルタは、前記ジピロメテン金属錯体化合物を含有することにより、透過率が高い。
【0088】
前記カラーフィルタの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、あるいは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号、特開2008−292970号などの各公報で開示されているように、着色剤を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物をカラーフィルタに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いてもよいが、特開平4−175753号公報や特開平6−35182号公報に記載されている方法、即ち、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、着色剤及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物を基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルタの形成方法が好ましい。また、特開2008−292970号公報に記載されている方法、即ち、重合性化合物、重合開始剤、現像樹脂、着色剤及び溶剤を含有してなるネガ型レジスト組成物を基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してネガ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のネガ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルタの形成方法も好ましい。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはYMC補色系カラーフィルタを得ることができる。
【0089】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、重合性化合物、重合開始剤、現像樹脂、及び溶剤とそれらの使用量については、前記各公報に記載されているものを好ましく使用することができる。
【実施例】
【0090】
以下に合成例と実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0091】
<実施例101>
[例示化合物(1)の合成]
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である、既述の例示化合物(1)を、以下に記載の方法で合成した。
【0092】
−中間体Aの合成−
下記構造式の中間体Aを、米国特許出願公開2008/0076044号明細書に記載の方法により合成した。
【0093】
【化7】

【0094】
−中間体Bの合成−
中間体A 225.8g(0.55mol)にアセトニトリル690mlを加え、氷冷下で攪拌した。この溶液に、o−トルオイルクロリド93.5g(0.61mol)を滴下して加えた。その後、ピリジン52.2g(0.66mol)を滴下して加え、氷冷下で1時間、室温で2時間攪拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、ろ物をアセトニトリルで洗浄し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Bを229g(収率79%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.04(d、2H)、7.64(d、1H)、7.45〜7.23(m、8H)、6.37(d、1H)、5.86(s、1H)、2.60(s、3H)、1.27〜1.12(m、3H)、1.06〜0.92(m、2H)0.84(s、18H)、0.70(d、3H)、0.63〜0.47(m、2H)であった。
【0095】
【化8】

【0096】
−中間体Cの合成−
無水酢酸420ml中に、中間体Bを222.1g(0.42mol)、オルトギ酸トリエチルを31.1g(0.21mol)加え、室温で攪拌した。この溶液に、トリフルオロ酢酸630mlを滴下して加え、室温で3時間攪拌した。反応終了後、反応液を、水6400mlに炭酸水素ナトリウム940gを加えた溶液中に注ぎ、酢酸エチル3200mlで抽出し、その後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。硫酸ナトリウムにて乾燥後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた固体に、メタノール2600mlを加え、60℃で1時間加熱攪拌し、その後、熱いままろ過し、再度メタノールで洗浄し、得られた固体を乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Cを170.3g(収率76%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.10(s、2H)、7.72(d、2H)、7.39〜7.13(m、16H)、6.12(s、1H)、5.85(s、2H)、2.70(s、6H)、1.29〜1.08(m、6H)、1.02〜0.92(m、4H)0.80(s、36H)、0.64(d、6H)、0.44〜0.31(m、4H)であった。
【0097】
【化9】

【0098】
−例示化合物(1)の合成−
テトラヒドロフラン22mlに中間体Cを3.1g(2.9mmol)加え、室温下で攪拌し、その液中に、メタノール22mlに酢酸亜鉛2水和物を0.70g(3.2mmol)加えた液を添加し、3時間攪拌した。反応液をロータリーエバポレータで濃縮し、得られた残渣をメタノール80ml中に加え、60℃で1時間攪拌した。続いて、ろ過を行い、ろ物を乾燥した。このようにして、例示化合物(1)を2.34g(収率67%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:σ11.6(s、2H)、7.73(d、2H)、7.4〜7.1(16H)、6.4(s、1H)、5.8(s、2H)、2.8(s、6H)、2.0(s,3H)、1.3〜1.1(m、6H)、1.05〜0.95(m、4H)、0.85(s、36H)、0.7(d、6H)、0.6〜0.25(m、4H)であった。
【0099】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(1)を下記表5に記載の測定溶媒に溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(1)の吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表5に示す。
【0100】
<実施例102〜110>
[例示化合物(2)〜(10)の合成]
実施例102〜110に係る、既述の例示化合物(2)〜(10)を、実施例101に準じた方法で合成した。なお、例示化合物(2)〜(10)以外の前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物も、化学的な見地から、実施例101に準じた方法で合成することができる。
【0101】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(2)〜(10)を下記表5に記載の測定溶媒にそれぞれ溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(2)〜(10)の吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表5に示す。
【0102】
<実施例111>
[例示化合物(36)の合成]
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である、既述の例示化合物(36)を、以下に記載の方法で合成した。
【0103】
−中間体Dの合成−
2,4−ジメチル安息香酸165.2g(1.1mol)にジメチルアセトアミド200ml、アセトニトリル300mlを加え、氷冷下で攪拌した。この溶液に塩化チオニル130.9g(1.1mol)を滴下し、氷冷下で30分、続いて室温で1時間攪拌することで反応液Aを得た。続いて、410.6g(1mol)の前記中間体Aにジメチルアセトアミド800mlを加え、氷冷下で攪拌した。この溶液に、先に調製した反応液Aを滴下して加え、滴下終了後室温に戻し、2時間攪拌した。反応終了後、反応液を水6L中に注ぎ、析出した固体をろ過し、ろ物を水、アセトニトリルで洗浄し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Dを510.8g(収率94%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.04(d、2H)、7.57(d、1H)、7.38〜7.12(m、7H)、6.36(s、1H)、5.87(s、1H)、2.58(s、3H)、2.39(s、3H)、1.27〜1.12(m、3H)、1.04〜0.97(m、2H)0.84(s、18H)、0.71(d、3H)、0.63〜0.47(m、2H)であった。
【0104】
【化10】

【0105】
−中間体Eの合成−
無水酢酸60ml中に、中間体Dを27.14g(0.05mol)、オルトギ酸トリエチルを3.71g(0.025mol)加え、室温で攪拌した。この溶液に、トリフルオロ酢酸75mlを滴下して加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を、酢酸エチル200ml及び水750mlに炭酸水素ナトリウム112gを加えた溶液中に注ぎ、室温で2時間攪拌した。続いて、析出した固体をろ過し、ろ物を酢酸エチルで洗浄し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Eを14.8g(収率54%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.14(s、2H)、7.67(d、2H)、7.31〜7.12(m、14H)、6.12(s、1H)、5.87(s、2H)、2.71(s、6H)、2.40(s、6H)、1.28〜1.12(m、6H)、1.01〜0.96(m、4H)0.82(s、36H)、0.66(d、6H)、0.45〜0.33(m、4H)であった。
【0106】
【化11】

【0107】
−例示化合物(36)の合成−
テトラヒドロフラン30mlに中間体Eを4.93g(4.5mmol)加え、室温下で攪拌し、続いて酢酸亜鉛2水和物を1.09g(4.95mmol)加え、1時間攪拌した。続いて、その液中にメタノール100mlを加え、さらに2時間攪拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、ろ物をメタノールで洗浄し、乾燥した。このようにして、例示化合物(36)を4.8g(88%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.59(s、2H)、7.65(d、2H)、7.28〜7.12(m、14H)、6.30(s、1H)、5.86(s、2H)、2.69(s、6H)、2.38(s、6H)、1.97(s、3H)、1.26〜1.15(m、6H)、0.99〜0.94(m、4H)、0.83(s、18H)、0.76(s、18H)、0.65(d、6H)、0.55〜0.43(m、2H)、0.32〜0.20(m、2H)であった。
【0108】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(36)を下記表5に記載の測定溶媒に溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(36)の吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表5に示す。
【0109】
<実施例112>
[例示化合物(35)の合成]
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である、既述の例示化合物(35)を、以下に記載の方法で合成した。
【0110】
−中間体Fの合成−
米国特許出願公開2008/0076044号明細書に記載の方法で得た184.77g(0.45mol)の中間体A、及びオルトギ酸トリエチル40g(0.27mol)にトルエン1Lを加え、氷冷下で攪拌した。この溶液にメタンスルホン酸21.62g(0.225mol)を滴下して加えた後、90℃で8時間加熱攪拌した。反応終了後、溶媒を留去した後、析出した固体をメタノールで洗浄し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Fを152.3g(収率73%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.63(br、2H)、7.48(br、4H)、7.30〜7.02(m、5H)、7.02〜6.99(m、5H)、5.84(s、2H)、5.73(s、1H)、3.00(s、3H)、1.25〜1.19(m、6H)、0.99〜0.95(m、4H)0.78(s、36H)、0.64(d、6H)、0.35〜0.28(m、4H)であった。
【0111】
【化12】

【0112】
−中間体Gの合成−
2,5−ジメチル安息香酸30g(0.2mol)にトルエン100ml、ジメチルホルムアミド1.46g(0.02mol)を加え、室温で攪拌した。この溶液に塩化チオニル23.8g(0.2mol)を滴下して加え、50℃で1時間攪拌することで反応液Bを得た。続いて、25%水酸化ナトリウム水溶液216gに、トルエン100ml及び中間体Fを23.2g(0.025mol)加え、室温で攪拌した。この溶液に、先に調製した反応液Bを滴下して加え、室温で10時間攪拌した。反応終了後、水層を除き、反応液を10%水酸化ナトリウム水溶液200mlで3回洗浄し、続いて5%酢酸水200mlで1回洗浄した。続いて、この溶液にメタノールを200ml加え、2時間攪拌した後、析出した固体をろ過し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Gを19.4g(収率71%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.05(s、2H)、7.53(s、2H)、7.30〜7.13(m、14H)、6.12(s、1H)、5.86(s、2H)、2.62(s、6H)、2.36(s、6H)、1.25〜1.18(m、6H)、0.99〜0.95(m、4H)、0.79(s、36H)、0.63(d、6H)、0.43〜0.31(m、4H)であった。
【0113】
【化13】

【0114】
−例示化合物(35)の合成−
テトラヒドロフラン50gに中間体Gを11.0g(0.01mol)加え、50℃で攪拌し、続いて酢酸亜鉛2水和物を2.42g(0.011mol)加え、50℃で1時間攪拌した。続いて、その液中にメタノール200mlを加え、室温に戻して2時間攪拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、ろ物をメタノールで洗浄し、乾燥した。このようにして、例示化合物(35)を9.0g(収率74%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.57(s、2H)、7.53(s、2H)、7.28〜7.17(m、14H)、6.32(s、1H)、5.88(s、2H)、2.65(s、6H)、2.38(s、6H)、1.99(s、3H)、1.25〜1.18(m、6H)、0.99〜0.95(m、4H)0.81(d、36H)、0.65(d、6H)、0.48〜0.21(m、4H)であった。
【0115】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(35)を下記表5に記載の測定溶媒に溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(35)の吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表5に示す。
【0116】
<実施例113>
[例示化合物(37)の合成]
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である、既述の例示化合物(37)を、以下に記載の方法で合成した。
【0117】
−中間体Hの合成−
2,3−ジメチル安息香酸30g(0.2mol)にトルエン100ml、ジメチルホルムアミド1.46g(0.02mol)を加え、室温で攪拌した。この溶液に塩化チオニル23.8g(0.2mol)を滴下して加え、50℃で1時間攪拌することで反応液Cを得た。続いて、25%水酸化ナトリウム水溶液216gに、トルエン100ml及び、実施例112で得た中間体Fを23.2g(0.025mol)加え、室温で攪拌した。この溶液に、先に調製した反応液Cを滴下して加え、室温で10時間攪拌した。反応終了後、水層を除き、反応液を10%水酸化ナトリウム水溶液200mlで3回洗浄し、続いて5%酢酸水200mlで1回洗浄した。続いて、この溶液にメタノールを200ml加え、2時間攪拌した後、析出した固体をろ過し、乾燥した。このようにして、下記構造式の中間体Hを15.9g(収率58%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:10.94(s、2H)、7.50(s、2H)、7.31〜7.13(m、14H)、6.13(s、1H)、5.83(s、2H)、2.52(s、6H)、2.33(s、6H)、1.26〜1.18(m、6H)、0.98〜0.94(m、4H)、0.79(s、36H)、0.63(d、6H)、0.43〜0.31(m、4H)であった。
【0118】
【化14】

【0119】
−例示化合物(37)の合成−
テトラヒドロフラン55gに中間体Hを16.4g(0.015mol)加え、50℃で攪拌し、続いて酢酸亜鉛2水和物を3.62g(0.0165mol)加え、50℃で1時間攪拌した。続いて、その液中にメタノール120mlを加え、室温に戻して2時間攪拌した。反応終了後、析出した固体をろ過し、ろ物をメタノールで洗浄し、乾燥した。このようにして、例示化合物(37)を7.2g(収率39%)得た。
なお、H−NMR(CDCl)の詳細は、δ:11.50(s、2H)、7.53(s、2H)、7.31〜7.14(m、14H)、6.34(s、1H)、5.85(s、2H)、2.56(s、6H)、2.35(s、6H)、2.02(s、3H)、1.29〜1.19(m、6H)、0.99〜0.95(m、4H)0.80(d、36H)、0.65(d、6H)、0.48〜0.21(m、4H)であった。
【0120】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(37)を下記表5に記載の測定溶媒に溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(37)の吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表5に示す。
【0121】
<実施例114>
[例示化合物(39)の合成]
前記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である、既述の例示化合物(39)を、例示化合物(36)を合成した実施例111に準じた方法で合成した。
【0122】
−極大吸収波長の評価−
例示化合物(39)を下記表5に記載の測定溶媒に溶かし(濃度1×10−6mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。例示化合物(39)の吸収スペクトルの極大吸収波長を下記表5に示す。
【0123】
【表5】

【0124】
また、図1に例示化合物(1)の吸収スペクトルを示す。図1に示す吸収スペクトルから明らかなように、本発明のジピロメテン金属錯体化合物は、シャープな吸収スペクトルピークを示す。
【0125】
<実施例201>
[感熱転写記録用インクシートの作製]
裏面に熱硬化アクリル樹脂(厚み1μm)を用いて耐熱滑性処理が施された厚み6.0μmのポリエステルフィルム(商品名ルミラー、(株)東レ製)を支持体として使用し、フィルムの表面側に実施例101で得られた例示化合物(1)を含む下記組成の色素供与層形成用塗料組成物をワイヤーバーコーティングにより乾燥時の厚みが1μmとなるように塗布し、実施例201の感熱転写記録用インクシートを作製した。
【0126】
「色素供与層形成用塗料組成物」
・例示化合物(1) 5.5質量部
・ポリビニルブチラール樹脂 4.5質量部
(商品名エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン/トルエン(1/1[v/v]) 90質量部
【0127】
−感熱転写記録画像の作製−
上記のようにして得られた感熱転写記録用インクシートと富士フイルム(株)製ASK2000用受像材料とを、色素供与層と受像層とが接するようにして重ね合わせ、色素供与材料の背面側からサーマルヘッドを使用し、サーマルヘッドの出力0.25W/ドット、パルス巾0.15〜15ミリ秒、ドット密度6ドット/mmの条件で印字を行い、受像材料の受像層にマゼンタ色の色素を像状に染着させたところ、転写むらのない鮮明な感熱転写記録画像が得られた。
【0128】
<実施例301、比較例301>
[カラートナーの作製]
実施例102で得られた例示化合物(2)3質量部と、トナー用樹脂(スチレン−アクリル酸エステル共重合体;商品名ハイマーTB−1000F、三洋化成(株)製)100質量部とをボールミルで混合粉砕後、150℃に加熱して熔融混和を行い、冷却後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。分級して1〜20μmの粒子を選択し、実施例301のカラートナーとした。
さらに、上記カラートナー10質量部に対しキャリヤ鉄粉(商品名EFV250/400、日本鉄粉(株)製)900質量部を均一に混合し、実施例301の現像剤とした。
【0129】
実施例301において、例示化合物(2)をC.I.ピグメントレッド122(商品名クロモフタルジェットマゼンタDMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に替えた以外は実施例301と同様にして、比較例301のカラートナー及び現像剤を作製した。
【0130】
実施例301、比較例301の現像剤を用いて、乾式普通紙電子写真複写機(商品名NP−5000、キャノン(株)製)で複写を行った。複写サンプルについて分光濃度計(商品名X−Rite939、エックスライト社製)を用いて分光測色した結果を表6に示す。
【0131】
【表6】

【0132】
表6に示すとおり、本発明のジピロメテン金属錯体化合物を用いたカラートナーは、汎用顔料であるピグメントレッド122を用いたカラートナーと比較して、a及びbの絶対値が高く、広い色再現域を実現可能であることがわかった。
【0133】
<実施例401>
[インクジェット記録用インクの作製]
実施例103で得られた例示化合物(3)5.63gと、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム7.04gとを、高沸点有機溶媒(S−2)4.22g、高沸点有機溶媒(S−11)5.63g及び酢酸エチル50mlの混合溶媒中に70℃にて溶解させた。この溶液中に500mlの脱イオン水をマグネチックスターラーで撹拌しながら添加し、水中油滴型の粗粒分散物を作製した。
なお、高沸点有機溶媒(S−2)及び(S−11)は、下記構造式の化合物である。
【0134】
【化15】

【0135】
次に、この粗粒分散物を、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX Inc社製)にて60MPaの圧力で5回通過させることで微粒子化を行い、さらにでき上がった乳化物をロータリーエバポレータにて酢酸エチルの臭気が無くなるまで脱溶媒を行った。こうして得られた微細乳化物に、ジエチレングリコール140g、グリセリン50g、SURFYNOL465(商品名、AirProducts&Chemicals社製)7g、脱イオン水900mlを添加して実施例401のインクジェット記録用インクを得た。
【0136】
上記インクジェット記録用インクをインクジェットプリンタ(商品名PM−G800、セイコーエプソン(株)製)のカートリッジに詰め、同機にてインクジェット用記録媒体(商品名 画彩写真仕上げPro、富士写真フイルム(株)製)に画像を記録した。
【0137】
図2に実施例401のインクジェット記録用インクによる記録画像の反射スペクトルを示す。図2に示す反射スペクトルから明らかなように、本発明のインクジェット記録用インクは、シャープな吸収スペクトルピークを示し、インクジェット記録用インクとして優れた性質を示すことがわかった。
【0138】
<実施例501>
[カラーフィルタの作製]
−ポジ型レジスト組成物の調製−
m−クレゾール/p−クレゾール/ホルムアルデヒド混合物から得たクレゾールノボラック樹脂(反応モル比=5/5/7.5、ポリスチレン換算質量平均分子量4300)3.4質量部、下記構造式のフェノール化合物を用いて製造したo−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル(平均2個の水酸基がエステル化されている)1.8質量部、ヘキサメトキシメチロール化メラミン0.8質量部、乳酸エチル20質量部、及び実施例101で得られた例示化合物(1)を1質量部混合して、ポジ型レジスト組成物を得た。
【0139】
【化16】

【0140】
−カラーフィルタの作製−
得られたポジ型レジスト組成物をガラス基板にスピンコートした後、溶剤を蒸発させた。次いで、マスクを通してシリコンウエハを露光し、キノンジアジド化合物を分解させた。その後100℃で加熱し、次いでアルカリ現像により露光部を除去して0.8μmの解像度を有するポジ型着色パターンを得た。これを全面露光後、220℃、30分加熱して実施例501のマゼンタ単色のカラーフィルタを得た。露光は、i線露光ステッパーHITACHI LD−5010−i(商品名、日立製作所(株)製、NA=0.40)により行った。また、現像液は、SOPD又はSOPD−B(いずれも商品名、住友化学工業(株)製)を用いた。
【0141】
−評価−
色素化合物の溶解性と、カラーフィルタの性状を、以下の方法で評価した。評価結果を下記表7に示す。
【0142】
(溶解性)
ポジ型レジスト組成物作製時の乳酸エチルに対する色素化合物の溶解性を目視観察し、完全に溶解するものを○、一部溶け残るものを△、溶解しないものを×の3段階で評価した。
【0143】
(加熱工程での色変化)
カラーフィルタ作製時の加熱工程前後の色変化を目視観察し、ほぼ変化しないものを○、やや変色するものを△、明らかに変色するものを×の3段階で評価した。
【0144】
(カラーフィルタの面状)
作製したカラーフィルタの面状を目視観察し、均一であるものを○、一部ヘイズがあるものを△、明らかなヘイズ(もしくは析出)があるものを×の3段階で評価した。
【0145】
(透過スペクトル)
図3に実施例501のカラーフィルタの透過スペクトルを示す。図3に示す透過スペクトルから明らかなように、実施例501のカラーフィルタは、シャープな吸収スペクトルピークを示した。また、実施例501のカラーフィルタは、良好な光の透過性を示した。
【0146】
<実施例502〜509、比較例501〜503>
実施例501の例示化合物(1)を既述の例示化合物(2)〜(5)、(35)〜(37)及び(39)並びに下記の比較用色素(1)〜(3)に替えた以外は実施例501と同様にして、ポジ型レジスト組成物を作製し、カラーフィルタを作製した。更に実施例501と同様の評価を行った。評価結果を下記表7に示す。
【0147】
【化17】

【0148】
【化18】

【0149】
【化19】

【0150】
【表7】

【0151】
表7から明らかなように、本発明のジピロメテン金属錯体化合物は、溶媒に対する溶解性に優れることがわかる。
本発明のジピロメテン金属錯体化合物を用いた実施例501〜509は、カラーフィルタ作製時の加熱工程での色変化が少なく、また作製したカラーフィルタの面状がよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明によれば、シャープな吸収スペクトルピークを示し、堅牢性及び溶媒に対する溶解性に優れるジピロメテン金属錯体化合物、及び前記ジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物を提供することができる。また、本発明によれば、感熱転写記録用インクシート、カラートナー、インクジェット記録用インク、及びカラーフィルタを提供することができる。本発明は、高画質のフルカラー記録等に用いられることが期待され、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジピロメテン金属錯体化合物。
【化1】


[一般式(1)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、Mは金属又は金属化合物を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、各々独立に0〜5の整数を表し、n3及びn4は、各々独立に0〜3の整数を表す。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるジピロメテン金属錯体化合物。
【化2】


[一般式(2)中、R及びRは、各々独立に1価の置換基を表し、Xは置換若しくは無置換の炭素数2〜3のアシルオキシ基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールスルホニルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。]
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有する着色組成物。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有する感熱転写記録用インクシート。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有するカラートナー。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有するインクジェット記録用インク。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のジピロメテン金属錯体化合物を含有するカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140586(P2012−140586A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180561(P2011−180561)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】