説明

ジベンゾスベロン誘導体

本発明は、式(I)(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンである)の化合物に関する。本化合物は、CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化5】

【0003】
(式中、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンである)で示される、4−[(6−フルオロ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,5’−[5H]ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン]−5−イル)カルボニル]−モルホリン類に関する。
【0004】
本発明は更に、式(I)の化合物の製造、式(I)の化合物を含む薬剤組成物、並びに医薬、特に肥満症及び他の障害を治療するための医薬としてのこれの使用に関する。
【0005】
式(I)の化合物は、CB1受容体のモジュレーターであることが見い出された。
【0006】
カンナビノイド受容体の2つの異なるサブタイプ(CB1及びCB2)が単離されており、そして両方ともGタンパク質共役受容体スーパーファミリーに属する。CB1の選択的にスプライシングされた形である、CB1A及びCB1Bもまた報告されているが、試験した組織では低レベルでしか発現されない(D. Shire, C. Carrillon, M. Kaghad, B. Calandra, M. Rinaldi-Carmona, G. Le Fur, D. Caput, P. Ferrara, J. Biol. Chem. 270(8)(1995) 3726-31;E. Ryberg, H.K. Vu, N. Larsson, T. Groblewski, S. Hjorth, T. Elebring, S. Sjoegren, P.J. Greasley, FEBS Lett. 579(2005) 259-264)。CB1受容体は、主に脳に局在し、それより少なく幾つかの末梢器官に局在するが、一方CB2受容体は、主として脾臓及び免疫系の細胞に局在する末梢に大部分が分布している(S. Munro, K.L. Thomas, M. Abu-Shaar, Nature 365(1993) 61-61)。よって副作用を回避するために、CB1選択的化合物が望まれる。
【0007】
Δ9−テトラヒドロカンナビノール(Δ9−THC)は、インド大麻(学名:cannabis sativa)(マリファナ)中の主要な精神活性化合物であり(Y. Gaoni, R. Mechoulam, J. Am. Chem. Soc., 86(1964) 1646)、そして長い間、医術において使用されている(R. Mechoulam(編), 「治療薬としてのカンナビノイド」, 1986, pp.1-20, CRC Press)。Δ9−THCは、非選択的CB1/2受容体アゴニストであり、米国では、食欲刺激によって、癌化学療法による嘔吐(CIE)を軽減し、そしてAIDS患者が経験する体重減少を逆転するためのドロナビノール(マリノール(登録商標))として入手できる。英国では、Δ9−THCの合成類似体である、ナボリノン(Nabolinone)(LY−109514、セサメット(Cesamet)(登録商標))がCIE用に使用されている(R.G. Pertwee, Pharmaceut. Sci. 3(11) (1997) 539-545;E.M. Williamson, F.J. Evans, Drugs 60(6) (2000) 1303-1314)。
【0008】
アナンドアミド(Anandamide)(アラキドニルエタノールアミド)は、CB1受容体に対する内在性リガンド(アゴニスト)として同定された(R.G. Pertwee, Curr. Med. Chem., 6(8) (1999) 635-664;W.A. Devane, L. Hanus, A. Breuer, R.G. Pertwee, L.A. Stevenson, G. Griffin, D. Gibson, A. Mandelbaum, A. Etingr, R. Mechoulam, Science 258(1992) 1946-9)。アナンドアミド及び2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)は、シナプス前神経終末でアデニル酸シクラーゼ及び電位感受性Ca2+チャネルを負に調節して、内向き整流性K+チャネルを活性化し(V. Di Marzo, D. Melck, T. Bisogno, L. De Petrocellis, Trends in Neuroscience 21(12)(1998) 521-8)、それによって神経伝達物質の放出及び/又は作用に影響を及ぼし、そしてこれが神経伝達物質の放出を低下させる(A.C. Porter, C.C. Felder, Pharmacol. Ther., 90(1)(2001) 45-60)。
【0009】
Δ9−THCのようにアナンドアミドはまた、CB1受容体介在性機序を介して摂食量を増大させる。CB1受容体選択的アンタゴニストは、アナンドアミドの投与に関連する摂食量の増大をブロックして(C.M. Williams, T.C. Kirkham, Psychopharmacology 143(3) (1999) 315-317;C.C. Felder, E.M. Briley, J. Axelrod, J.T. Simpson, K. Mackie, W.A. Devane, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(16)(1993) 7656-60)、食欲抑制及び減量を引き起こした(G. Colombo, R. Agabio, G. Diaz, C. Lobina, R. Reali, G.L. Gessa, Life Sci. 63(8) (1998) L113-PL117)。
【0010】
レプチンは、一次シグナルであって、それにより視床下部は、栄養状態を感知して、摂食量及びエネルギー均衡を調節する。一時的な食餌制限後、CB1受容体ノックアウトマウスは、その野生型同腹仔よりも少食になり、CB1アンタゴニストのSR141716Aは、野生型の摂餌量を減少させるが、ノックアウトマウスでは減少させない。更に、レプチンシグナル伝達の欠如は、肥満のdb/db及びob/obマウス並びにズッカー(Zucker)ラットにおける視床下部での内在性カンナビノイドレベルの上昇に関係しているが、小脳でのそれには関係しない。正常ラット及びob/obマウスの緊急レプチン処置は、視床下部におけるアナンドアミド及び2−アラキドノイルグリセロールを減少させる。これらの知見は、視床下部の内在性カンナビノイドが、CB1受容体を持続的に活性化することにより、摂食量を維持して、レプチンにより調節される神経回路構成の一部を形成することを示している(V. Di Marzo, S.K. Goparaju, L. Wang, J. Liu, S. Bitkai, Z. Jarai, F. Fezza, G.I. Miura, R.D. Palmiter, T. Sugiura, G. Kunos, Nature 410(6830) 822-825)。
【0011】
また、CB1受容体が、エストロゲン欠乏の結果生じる骨量及び骨量減少の調節において、ある役割を演じることも報告されている。CB1及びCB2受容体のアンタゴニストは、インビボで卵巣摘出術が誘導した骨量減少を防ぎ、そして破骨細胞のアポトーシスを促進し、幾つかの破骨細胞生存因子の産生を阻害することにより、インビトロで破骨細胞阻害を引き起こした(A.I. Idris, R.J. van't Hof, I.R. Greig, S.A. Ridge, D. Baker, R.A. Ross, S.H. Wilson, Nature Medicine 11(7)(2005), 774-779)。よってカンナビノイド受容体アンタゴニストは、骨粗鬆症及び他の骨疾患(癌関連骨疾患及び骨ページェット病など)の治療に有用であることができる。
【0012】
少なくとも2つのCB1選択的アンタゴニスト/逆アゴニスト(SR−141716及びSLV−319)は現在、肥満症及び/又は禁煙の治療の臨床試験中である。二重盲検プラセボ対照試験において、10及び20mg/日の用量で、SR141716は、プラセボに比較して体重を有意に減少させた(F. Barth, M. Rinaldi-Carmona, M. Arnone, H. Heshmati, G. Le Fur, 「カンナビノイドアンタゴニスト:研究ツールから新しい薬物候補へ」, Abstracts of Papers, 222nd ACS National Meeting, シカゴ, イリノイ州, 米国, August 26-30, 2001)。SR−141716は、体重、胴回りを減少させ、そして幾つかの第III相試験(RIO−脂質、RIO−ヨーロッパ及びRIO−北米)では代謝パラメーター(血漿HDL、トリグリセリド及びインスリン感受性)を改善した。更にSR−141716は、禁煙に関する第III相試験において効果を示している(STRATUS−US)。ヒトの薬剤として使用するのに適した薬物動態学及び薬力学特性を有する、強力な低分子量CB1モジュレーターに対するニーズは依然として残っている。
【0013】
CB1受容体アンタゴニスト又は逆アゴニストとして提案されている他の化合物は、6−ブロモ−(WIN54661;F.M. Casiano, R. Arnold, D. Haycock, J. Kuster, S.J. Ward, NIDA Res. Monogr. 105(1991) 295-6)又は6−ヨード−プラバドリン(AM630、K. Hosohata, R.M. Quock, R.M. Hosohata, T.H. Burkey, A. Makriyannis, P. Consroe, W.R. Roeske, H.I. Yamamura, Life Sci. 61(1997) 115-118;R. Pertwee, G. Griffin, S. Fernando, X. Li, A. Hill, A. Makriyannis, Life Sci. 56(23-24)(1995) 1949-55)のような、アミノアルキルインドール類(AAI;M. Pacheco, S.R. Childers, R. Arnold, F. Casiano, S.J. Ward, J. Pharmacol. Exp. Ther. 257(1) (1991) 170-183)である。WO 9602248、US 5596106に開示されているアリールベンゾ[b]チオフェン及びベンゾ[b]フラン(LY320135、C.C. Felder, K.E. Joyce, E.M. Briley, M. Glass, K.P. Mackie, K.J. Fahey, G.J. Cullinan, D.C. Hunden, D.W. Johnson, M.O. Chaney, G.A. Koppel, M. Brownstein, J. Pharmacol. Exp. Ther. 284(1)(1998) 291-7)、3−アルキル−(5,5−ジフェニル)イミダゾリジンジオン類(M. Kanyonyo, S.J. Govaerts, E. Hermans, J.H. Poupaert, D.M. Lambert, Bioorg. Med. Chem. Lett. 9(15)(1999) 2233-2236)並びに3−アルキル−5−アリールイミダゾリジンジオン類(F. Ooms, J. Wouters, O. Oscaro, T. Happaerts, G. Bouchard, P.-A. Carrupt, B. Testa, D.M. Lambert, J. Med. Chem. 45(9)(2002) 1748-1756)は、CB1受容体に拮抗するか、又はhCB1受容体に逆アゴニストとして作用することが知られている。WO 0015609(FR 2783246-A1)、WO 0164634(FR 2805817-A1)、WO 0228346、WO 0164632(FR 2805818-A1)、WO 0164633(FR 2805810-A1)は、CB1のアンタゴニストとして置換1−ビス(アリール)メチル−アゼチジン誘導体を開示した。WO 0170700、WO 02076949、及びWO 0276949A1において、4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール誘導体は、CB1アンタゴニストとして記載されている。幾つかの特許及び刊行物では、架橋及び非架橋3−ピラゾールカルボキサミド誘導体が、CB1アンタゴニスト/逆アゴニストとして開示されている(WO 0132663、WO 0046209、WO 9719063、EP 658546、EP 656354、US 5624941、EP 576357、US 3940418、WO 03020217、WO 0335005、J.M. Mussinuら, Bioorg. Med. Chem. 2003, 11, 251;S. Ruiuら, J. Pharm. Expt. Ther., 2003, 306, 363)。ピロールCB1カンナビノイド受容体アゴニストは、G. Tarziaら, Bioorg. Med. Chem. 2003, 11, 3965に記載されている。フェネチルアミド類は、WO 03077847、WO 03082190、WO 03086288及びWO 03087037においてCB1カンナビノイド受容体アンタゴニスト/逆アゴニストとして特許請求されている。種々のアザ複素環(イミダゾール類、トリアゾール類及びチアゾール類)が、WO 0337332、WO 03040107、WO 03063781、WO 03092833及びWO 03078413に記載されている。ジフェニルピラジンカルボキサミド類は、WO 03051850に、ジフェニルピリジンカルボキサミド類は、WO 03084930に、そしてジフェニルベンゼンカルボキサミド類は、WO 03084943に記載されている。
【0014】
本発明の目的は、選択的で直接作用するCB1受容体のアンタゴニスト又は逆アゴニストを提供することである。そのようなアンタゴニスト/逆アゴニストは、薬物療法において、特にCB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防において有用である。
【0015】
特に断りない限り、以下の定義は、本明細書において本発明を記述するために使用される種々の用語の意味と範囲を説明及び定義するために示される。
【0016】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を、好ましくは塩素及びフッ素を意味する。
【0017】
「薬学的に許容しうる塩」という用語は、生物に対して毒性のない、式(I)の化合物と、無機又は有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩を包含する。酸との好ましい塩は、ギ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩及びメタンスルホン酸塩であり、塩酸塩が特に好ましい。
【0018】
1つの実施態様において、本発明は、化合物が、式(Ia):
【0019】
【化6】

【0020】
で示される化合物の4−[(6−フルオロ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,5’−[5H]ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン]−5−イル)カルボニル]−モルホリンである、先に定義された通りの式(I)の化合物に関する。
【0021】
本発明の式(I)の化合物は、当該分野において既知の方法により調製することができるか、又はこれらは、以下に記載した通りの方法により調製することができるが、この方法は、
式(II):
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンである)で示される5,5−ジクロロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテンを、式(III):
【0024】
【化8】

【0025】
で示されるカテコール誘導体と高温で反応させることにより、式(I):
【0026】
【化9】

【0027】
で示される化合物を得ることを含む。
【0028】
高温とは、100℃〜180℃の温度、好ましくは110〜130℃の温度を意味する。
【0029】
よって、式(III)のカテコール中間体は、式(II)のビス置換ジクロロメタン誘導体で、不活性溶媒(例えば、トルエン又はピリジン)中で又はそのままで、塩基(例えば、ピリジン)の存在下又は非存在下で高温(例えば、>100℃)でケタール化することにより、式(I)の化合物を生成することができる。
【0030】
(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノン(III)は、対応する式(VII)のジフェニルメチレン保護ケタールから、適切な不活性溶媒(例えば、塩化メチレン)中で酸(例えば、トリフルオロ酢酸)での処理により、あるいは適切な還元剤(例えば、トリエチルシラン)、そのままか又は適切な不活性溶媒(例えば、塩化メチレン)の存在下で、酸(例えば、トリフルオロ酢酸)での処理により、容易に調製することができる。
【0031】
式(VII)のジフェニルメチレン保護ケタールは、4−フルオロベラトロールから、スキーム1に記載されたとおりの経路により調製される。この一連の反応は、実施例1に更に詳細に記載されている。
【0032】
【化10】

【0033】
式(II)のビス置換ジクロロメタン誘導体は、対応するケトン(VIII)から、DMF又は別のN−ホルミル化剤の存在下での塩化チオニルとの反応により、あるいは適切な溶媒(例えば、オキシ塩化リン)の存在下又は非存在下での五塩化リンとの反応により、当該分野において既知の方法により調製することができる(スキーム2)。
【0034】
【化11】

【0035】
式(VIII)のジベンゾスベロン類は、市販されているか、又は当該分野において既知の方法により調製してもよい。
【0036】
式(I)の幾つかの化合物は、不斉中心を持つ場合があり、そのため2つ以上の立体異性体として存在することができる。よって本発明はまた、1つ以上の不斉中心について実質的に純粋な異性体である化合物、並びにその混合物(ラセミ混合物を含む)に関する。そのような異性体は、不斉合成により、例えば、キラル中間体を用いて調製することができるか、あるいは混合物を、従来法、例えば、クロマトグラフィー(キラル吸着剤又は溶離液でのクロマトグラフィー)により、又は分割剤の使用により分割することができる。
【0037】
先に記載したように、式(I)の化合物は、治療活性物質として、特にCB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防用の治療活性物質として使用することができる。よって1つの実施態様において、本発明は、治療活性物質として、特にCB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防用の治療活性物質として使用するための、先に定義された通りの化合物に関する。
【0038】
本発明はまた、先に定義された通りの化合物並びに薬学的に許容しうる担体及び/又は補助剤を含むことを含む、薬剤組成物に関する。
【0039】
別の実施態様において、本発明は、CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防のための方法に関し、この方法は、先に定義された通りの化合物をヒト又は動物に投与することを含む。
【0040】
本発明は更に、CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防のための、先に定義したような化合物の使用に関する。
【0041】
更に、本発明は、CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防のための医薬の調製のための、先に定義したような化合物の使用に関する。そのような医薬は、先に定義したような化合物を含むことを含む。
【0042】
これに関連して、「CB1受容体の調節に関連する疾患」という表現は、CB1受容体の調節により治療及び/又は予防することができる疾患を意味する。そのような疾患は、特に限定されないが、精神障害、特に不安、精神病、統合失調症、鬱病、向精神薬の濫用、例えば、アルコール依存及びニコチン依存を含む、薬物の濫用及び/又は依存、神経障害、多発性硬化症、片頭痛、ストレス、てんかん、ジスキネジア、パーキンソン病、健忘症、認知障害、記憶障害、老年性認知症、アルツハイマー病、摂食障害、肥満症、II型糖尿病又はインスリン非依存型糖尿病(NIDD)、胃腸疾患、嘔吐、下痢、泌尿器障害、心血管障害、不妊性障害、炎症、感染症、癌、神経炎症(特にアテローム動脈硬化における)、又はギラン・バレー症候群、ウイルス性脳炎、脳血管発作及び頭蓋外傷、並びに骨疾患、例えば骨粗鬆症、特に遺伝的素因、ホルモン欠乏若しくは加齢に関連する骨粗鬆症、癌関連骨疾患及び骨ページェット病を包含する。
【0043】
好ましい態様において、「CB1受容体の調節に関連する疾患」という表現は、摂食障害、肥満症、II型糖尿病又はインスリン非依存型糖尿病(NIDD)、神経炎症、下痢、アルコール依存及びニコチン依存を含む、薬物の濫用及び/又は依存に関する。更に好ましい態様において、該用語は、摂食障害、肥満症、II型糖尿病又はインスリン非依存型糖尿病(NIDD)、アルコール依存及びニコチン依存を含む、薬物の濫用及び/又は依存に関し、肥満症が特に好ましい。
【0044】
別の好ましい態様において、「CB1受容体の調節に関連する疾患」という表現は、骨疾患、例えば骨粗鬆症、特に遺伝的素因、ホルモン欠乏又は加齢に関連する骨粗鬆症、癌関連骨疾患及び骨ページェット病に関する。
【0045】
更に別の好ましい目的は、肥満症及び肥満関連障害の治療又は予防のための方法を提供することであり、この方法は、一緒にして有効な救済が得られるように、治療有効量の肥満症又は摂食障害の治療用の他の薬物と組合せるか、又は併用する、治療有効量の式(I)の化合物の投与を含む。適切な他の薬物は、特に限定されないが、食欲減退薬、リパーゼ阻害薬及び選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を含む。上記薬剤の組合せ又は併用は、別々の、連続の、又は同時の投与を包含してもよい。
【0046】
好ましいリパーゼ阻害薬は、テトラヒドロリプスタチンである。
【0047】
本発明の化合物と組合せて使用するのに適切な食欲減退薬は、特に限定されないが、アミノレックス、アンフェクロラール、アンフェタミン、ベンズフェタミン、クロルフェンテルミン、クロベンゾレクス、クロホレクス、クロミノレクス、クロルテルミン、シクルエキセドリン、デクスフェンフルラミン、デキストロアンフェタミン、ジエチルプロピオン、ジフェメトキシジン、N−エチルアンフェタミン、フェンブトラザート、フェンフルラミン、フェニソレクス、フェンプロポレクス、フルドレクス、フルミノレクス、フルフリルメチルアンフェタミン、レバンフェタミン、レボファセトペラン、マジンドール、メフェノレクス、メタンフェプラモン、メタンフェタミン、ノルシュードエフェドリン、ペントレックス、フェンジメトラジン、フェンメトラジン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、ピシロレクス及びシブトラミン、並びにその薬学的に許容しうる塩を含む。
【0048】
最も好ましい食欲減退薬は、シブトラミン及びフェンテルミンである。
【0049】
本発明の化合物と組合せて使用するのに適切な選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリン、並びにその薬学的に許容しうる塩を含む。
【0050】
更に別の好ましい目的は、治療有効量のリパーゼ阻害薬と組合せるか、又は併用する(特にリパーゼ阻害薬がオルリスタット(Orlistat)である)、治療有効量の式(I)の化合物の投与を含む、ヒトにおけるII型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病(NIDDM))の治療又は予防の方法を提供することである。また本発明の目的は、式(I)の化合物及びリパーゼ阻害薬、特にテトラヒドロリプスタチンの同時の、別々の又は連続の投与のための、先に記載したような方法である。
【0051】
更に別の好ましい目的は、治療有効量の抗糖尿病薬[1)ピオグリタゾン又はロシグリタゾンなどのようなPPARγアゴニスト;2)メトホルミンなどのようなビグアニド類;3)グリベンクラミドなどのようなスルホニル尿素;4)GW−2331などのようなPPARα/γアゴニスト;5)LAF−237(ビルダグリプチン(Vildagliptin))又はMK−0431などのようなDPP−IV阻害薬;6)例えば、WO 00/58293 A1に開示される化合物などのようなグルコキナーゼ活性化薬よりなる群から選択される]と組合せるか、又は併用する、治療有効量の式(I)の化合物の投与を含む、ヒトにおけるII型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病(NIDDM))の治療又は予防の方法を提供することである。また本発明の目的は、式(I)の化合物及び治療有効量の抗糖尿病薬、例えば1)PPARγアゴニスト、例えばピオグリタゾン又はロシグリタゾンなど;2)ビグアニド類、例えばメトホルミンなど;3)スルホニル尿素、例えばグリベンクラミドなど;4)PPARα/γアゴニスト、例えばGW−2331など;5)DPP−IV阻害薬、例えばLAF−237(ビルダグリプチン)又はMK−0431など;6)グルコキナーゼ活性化薬、例えば、WO 00/58293 A1に開示される化合物などの同時の、別々の又は連続の投与のための、先に記載したような方法である。
【0052】
更に別の好ましい目的は、治療有効量の脂質低下剤[1)コレスチラミンなどのような胆汁酸捕捉剤;2)アトルバスタチンなどのようなHMG−CoAレダクターゼ阻害薬;3)エゼチミブなどのようなコレステロール吸収阻害薬;4)トルセトラピブ、JTT705などのようなCETP阻害薬;5)ベクロフィブラート(beclofibrate)、フェノフィブラートなどのようなPPARαアゴニスト;6)ナイアシンなどのようなリポタンパク質合成阻害薬;及び7)ナイアシン受容体アゴニストなど]と組合せるか、又は併用する、治療有効量の式(I)の化合物の投与を含む、ヒトにおける異常脂質血症の治療又は予防の方法を提供することである。また本発明の目的は、式(I)の化合物及び治療有効量の脂質低下薬[1)コレスチラミンなどのような胆汁酸抑制薬;2)アトルバスタチンなどのようなHMG−CoAレダクターゼ阻害薬;3)エゼチミブなどのようなコレステロール吸収阻害薬;4)トルセトラピブ、JTT705などのようなCETP阻害薬;5)ベクロフィブラート、フェノフィブラートなどのようなPPARαアゴニスト;6)ナイアシンなどのようなリポタンパク質合成阻害薬;及び7)ナイアシン受容体アゴニストなど]の同時の、別々の又は連続の投与のための、上述した方法である。
【0053】
本発明の化合物の更なる生物学的活性の証明は、当該分野において周知のインビトロ、エクスビボ、及びインビボ測定法により達成してもよい。例えば、糖尿病、X症候群、又はアテローム動脈硬化症及び関連障害(高トリグリセリド血症及び高コレステロール血症など)のような肥満関連障害の治療用の薬剤の効力を証明するために、下記の測定法を利用してもよい。
【0054】
血中グルコースレベルの測定方法
db/dbマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ(Jackson Laboratories)、バーハーバー(Bar Harbor)、メイン州から入手)を出血させ(眼又は尾静脈のいずれかにより)、等価平均血中グルコースレベルにより群分けする。これらに、試験化合物を1日1回7〜14日間経口投与(薬学的に許容しうるビヒクル中で経管栄養法により)する。この時点で、動物を再び眼又は尾静脈により出血させ、血中グルコースレベルを決定する。
【0055】
トリグリセリドレベルの測定方法
hApoA1マウス(ジャクソン・ラボラトリーズ、バーハーバー、メイン州から入手)を出血させ(眼又は尾静脈のいずれかにより)、等価平均血清トリグリセリドレベルにより群分けする。これらに、試験化合物を1日1回7〜14日間経口投与(薬学的に許容しうるビヒクル中で経管栄養法により)する。次に動物を再び眼又は尾静脈により出血させ、血清トリグリセリドレベルを測定する。
【0056】
HDL−コレステロールレベルの測定方法
HDL−コレステロールレベルを測定するために、hApoA1マウスを出血させ、等価平均血漿HDL−コレステロールレベルにより群分けする。マウスに、ビヒクル又は試験化合物を1日1回7〜14日間経口投与し、次いで翌日に出血させる。血漿をHDL−コレステロールに関して分析する。
【0057】
更に、本発明の化合物のCNS活性を証明するために、以下のインビボ測定法を利用することができる。
【0058】
タスク学習及び空間記憶の試験方法
モリス水迷路(Morris Water Maze)は、タスク学習及び空間記憶を評価するためにごく普通に利用されている(Jaspersら, Neurosci. Lett. 117:149-153, 1990;Morris, J. Neurosci. Methods 11:47-60, 1984)。このアッセイにおいて、動物を、四分割されている水プール中に入れる。四分割の1つには、プラットホームが隠されている。動物を水プールに入れて、隠されたプラットホームを所定時間内に探し出すのを待つ。数回の訓練試験の間に、動物は、プラットホームの位置を学習して、プールから避難する。動物に、このタスクで複数回の試験を行う。移動した総距離、プラットホームを探し出すための試行の回数、プラットホームを見つけだすまでの待ち時間、及び遊泳経路を各動物について記録する。動物の学習能力は、隠されたプラットホームを見つけだすのに要する時間の長さ又は試行の回数により測定する。記憶障害又は増進は、取得後の所定の遅延時間での、プラットホームを見つけだすための試行の回数又は待ち時間により求める。学習及び記憶は、取得段階の間に、動物が、プラットホームのある四分割部を横断する回数により測定することができる。
【0059】
薬物依存の試験方法
動物における自己投与は、ヒトにおける化合物の濫用可能性の予測因子である。この手順の変法もまた、濫用可能性を持つ薬物の強化作用を予防又はブロックする化合物を同定するために利用してもよい。薬物の自己投与を絶やす化合物は、薬物の濫用又はその依存を防ぐ場合がある。(Ranaldiら, Psychopharmacol. 161:442-448, 2002;Campbellら, Exp. Clin. Psychopharmacol. 8:312-25, 2000)。自己投与試験では、動物を、活動及び非活動レバーの両方を含有するオペラントチャンバーに入れる。活動レバーへの各応答は、試験化合物又は自己投与することが知られている薬物のいずれかの注入を招く。非活動レバーを押すと、何も作用がないが、これもまた記録される。次いで動物は、毎日のセッション中に薬物に接触させることにより、一定期間にわたり、化合物/薬物を自己投与するように訓練する。チャンバーの照明の点灯が、セッションの開始及び化合物/薬物の入手可能の合図になる。セッションが終わると、照明を消灯する。当初は、薬物注入は、活動レバーを押す毎に発生させる。一旦レバー押し行動が確立したら、薬物注入を招くためのレバー押しの回数が増加する。安定な化合物/薬物の自己投与の獲得後、薬物強化行動に及ぼす第2の化合物の効果を評価してもよい。セッションに先立つこの第2の化合物の投与は、自己投与行動を増強するか、絶やすか、又は変化を生じさせないかのいずれかであることができる。
【0060】
以下の試験は、式(I)の化合物の活性を求めるために行った。
【0061】
カンナビノイドCB1受容体に対する本発明の化合物の親和性は、放射性リガンドとして[3H]−CP−55,940と結合させたセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus)系を用いて、ヒト大麻CB1受容体が一過性にトランスフェクトされている、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞の膜調製物を用いて求めた。本発明の化合物を加えるか又は加えない、[3H]−リガンドで新たに調製した細胞膜調製物のインキュベーション後、ガラス繊維フィルターでの濾過により、結合及び遊離リガンドの分離を実施した。フィルター上の放射活性は、液体シンチレーション計数により測定した。
【0062】
カンナビノイドCB2受容体に対する本発明の化合物の親和性は、放射性リガンドとして[3H]−CP−55,940と結合させたセムリキ森林熱ウイルス系を用いて、ヒト大麻CB2受容体が一過性にトランスフェクトされている、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞の膜調製物を用いて求めた。本発明の化合物を加えるか又は加えない、[3H]−リガンドで新たに調製した細胞膜調製物のインキュベーション後、ガラス繊維フィルターでの濾過により、結合及び遊離リガンドの分離を実施した。フィルター上の放射活性は、液体シンチレーション計数により測定した。
【0063】
本発明の化合物のカンナビノイドCB1アンタゴニスト活性は、ヒトカンナビノイドCB1受容体を安定に発現するCHO細胞を用いた機能試験により求めた(M.Rinaldi-Carmonaら, J. Pharmacol. Exp. Ther. 278(1996) 871を参照のこと)。細胞系中のヒトカンナビノイド受容体の安定な発現は、最初にそれぞれNature 1990, 346, 561-564(CB1)及びNature 1993, 365, 61-65(CB2)に記載された。アデニリルシクラーゼは、フォルスコリンを用いて刺激して、蓄積したサイクリックAMPの量を定量することにより測定した。CB1受容体アゴニスト(例えば、CP−55,940又は(R)−WIN−55212−2)によるCB1受容体の随伴する活性化は、フォルスコリン誘導性のcAMPの蓄積を濃度依存的に減少させることができる。このCB1受容体介在性応答は、本発明の化合物のようなCB1受容体アンタゴニストにより拮抗させることができる。
【0064】
式(I)の化合物は、Devaneら, Mol. Pharmacol. 34(1988) 605-613に記載された実験条件で求めると、CB1受容体に対する優れた親和性を示す。本発明の化合物又は薬学的に許容しうる塩若しくは溶媒和物は、CB1受容体に対するアンタゴニストであり、IC50=1μM未満、好ましくは0.100μM未満である親和性でCB1受容体に対して選択的である。これらは、CB2受容体に対照させると少なくとも10倍の選択性を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
NMRIマウスにおけるCP55,940誘導性低体温に対するCB1受容体アンタゴニスト/逆アゴニストの効果
動物
オスのNMRIマウスを、本試験に使用し、フーリンスドルフ(Fuellinsdorf)(スイス)のリサーチ・コンサルティング・カンパニー社(Research Consulting Company Ltd)(RCC)から入手した。本試験では体重30〜31gのマウスを使用した。周囲温度は、約20〜21℃であり、相対湿度は55〜65%である。明相で実施した全試験で部屋は12時間の明暗サイクルに維持する。水道水及び飼料への接触は任意とする。
【0067】
方法
全ての測定は、12:00amと5:00pmの間に行った。マウスは、この環境に引き出して、実験開始前の少なくとも2時間慣らした。マウスには飼料と水に常に自由に接触させた。各用量につき、マウス8匹を使用した。直腸内体温測定は、直腸探針(フィジテンプ(Physitemp)のRET2)及びディジタル温度計(コール・パーマー(Cole Parmer)(シカゴ、米国)のディジ−センス(Digi-sense)8528−20番)を用いて記録した。この探針は、各マウスに約3.5cm挿入した。
【0068】
体温は、ビヒクル又はCB1受容体アンタゴニスト/逆アゴニストのいずれかの投与の15分前に計った。この化合物のそれぞれ腹腔内又は経口投与の30又は90分後、化合物自体の何らかの影響を評価するために、直腸内体温を記録した。CB受容体アゴニストのCP55,940(0.3mg/kg)を直ちに静脈内投与し、次にCP55940の静脈内投与の20分後に、再び体温を測定した。
【0069】
式(I)の化合物のインビボ活性は、飼料欠乏動物における飼料消費量を記録することにより、摂餌行動を調節するその能力について評価した。
【0070】
ラットは、1日に2時間飼料に接触するように訓練して、22時間は飼料を欠乏させた。このスケジュール下でラットを訓練したとき、この2時間の摂餌セッションの間に毎日摂取する飼料の量は、毎日一定であった。
【0071】
摂餌量を低下させる式(I)の化合物の能力を試験するために、交差試験において動物8匹を使用した。ラットは、床に格子のついたプレキシガラスの箱に個々に収容して、流出物を回収するためにケージの床の下に紙を敷いた。予め秤量した量の飼料を満たした飼料のディスペンサー(ビーカー)をラットに2時間与えた。摂餌セッションの最後に、ラットは各自のケージに戻した。各ラットは、実験開始前に秤量して、この2時間の摂餌セッション中に消費した飼料の量を記録した。種々の用量の試験化合物又はビヒクルのいずれかを、2時間の摂餌セッションの60分前に経口投与した。陽性対照のリモナバント(Rimonabant)(SR141716)を実験に含めた。反復測定による分散分析を利用し、続いてポストホック(posthoc)検定のスチューデント・ノイマン−クールズ(Student Neumann-Keuls)を行った。生理食塩水処置ラットに比較して*P<0.05。
【0072】
更に、疾患又は障害における式(I)の化合物の有用性は、文献に報告されている動物疾患モデルにおいて証明してもよい。以下は、そのような動物疾患モデルの例である:a)マーモセットにおける甘い飼料の摂取量の減少(Behavioural Pharm, 1998, 9, 179-181;b)マウスにおけるショ糖及びエタノール摂取量の減少(Psychopharm. 1997, 132, 104-106);c)ラットにおける運動活動及び場所の条件付けの増大(Psychopharm. 1998, 135, 324-332;Psychopharmacol 2000, 151:25-30);d)マウスにおける自発運動(J. Pharm. Exp. Ther. 1996, 277, 586-594);e)マウスにおけるアヘンの自己投与の減少(Sci. 1999, 283, 401-404);
【0073】
式(I)の化合物及び/又はその薬学的に許容しうる塩は、医薬として、例えば、経腸、非経口又は局所投与用の製剤の形で使用することができる。これらは、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で経口的に、例えば、坐剤の剤形で直腸内に、例えば、注射液又は輸液の剤形で非経口的に、あるいは例えば、軟膏剤、クリーム剤又は油剤の剤形で局所的に投与することができる。経口投与が好ましい。
【0074】
製剤の製造は、当業者であれば精通しているやり方で、記載されている式(I)の化合物及び/又はその薬学的に許容しうる塩を、場合により他の治療有用物質と組合せて、適切な非毒性の不活性な治療適合性の固体又は液体担体材料、及び所望であれば通常の製剤補助剤と一緒にして、ガレヌス製剤の投与剤形にすることにより達成することができる。
【0075】
適切な担体材料は、無機担体材料だけでなく、有機担体材料もある。よって、例えば、乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩は、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤用の担体材料として使用することができる。軟ゼラチンカプセル剤用に適切な担体材料は、例えば、植物油、ロウ、脂肪並びに半固体及び液体ポリオール類である(しかし活性成分の性質に応じて、軟ゼラチンカプセル剤の場合には担体を必要としないかもしれない)。液剤及びシロップ剤の製造に適した担体材料は、例えば、水、ポリオール類、ショ糖、転化糖などである。注射液に適した担体材料は、例えば、水、アルコール類、ポリオール類、グリセロール及び植物油である。坐剤に適した担体材料は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪及び半液体又は液体ポリオール類である。局所製剤に適した担体材料は、グリセリド類、半合成及び合成グリセリド類、水素化油、液体ロウ、流動パラフィン、液体脂肪アルコール類、ステロール類、ポリエチレングリコール類及びセルロース誘導体である。
【0076】
通常の安定化剤、保存料、湿潤剤及び乳化剤、粘稠度改善剤、香味改善剤、浸透圧を変化させる塩、緩衝剤、可溶化剤、着色料及びマスキング剤及び酸化防止剤が、製剤補助剤として考えられる。
【0077】
式(I)の化合物の用量は、制御すべき疾患、患者の年齢と個々の症状及び投与の様式に応じて広い範囲内で変化させることができ、そして当然、各特定の症例における個々の要求に適合させられよう。成人患者には、約1〜1000mg、特に約1〜100mgの1日用量が考えられる。疾患の重篤度及び正確な薬物動態プロフィールに応じて、化合物は、1日に1〜数回の用量単位で、例えば、1〜3回の用量単位で投与することができる。
【0078】
製剤は、好都合には約1〜500mg、好ましくは1〜100mgの式(I)の化合物を含む。
【0079】
以下の実施例は、本発明を更に詳細に説明するためのものである。しかしこれらは、本発明の範囲をどのようにも限定するものではない。
【0080】
実施例
MS=質量分析、EI=電子衝撃、ISP=イオンスプレー(陽イオン)。全ての実験は、不活性雰囲気(窒素又はアルゴン)下で行った。
【0081】
実施例1
(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの調製
a) 4−ブロモ−5−フルオロ−ベンゼン−1,2−ジオールの調製
ジクロロメタン(106ml)中の4−フルオロベラトロール(5.0g、32mmol)の冷却した(−78℃)溶液に、ジクロロメタン中の三塩化ホウ素の溶液(1M、96ml、96mmol、3.0当量)をゆっくり加えた。反応混合物を20℃に温め、一晩撹拌した。反応混合物を氷水中に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出(3回)した。合わせた有機層を重炭酸ナトリウムの水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して濾過した。揮発性成分を真空で除去した。褐色の固体をクロロホルム(50ml)及びジクロロメタン(10ml)で希釈した。四塩化炭素中の臭素の溶液(5ml)をゆっくり加えた。室温で3時間撹拌後、揮発性成分を真空で除去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物(6.51g、98%)を褐色の固体として得た。
ISP MS:m/e=207.9([M+H]+)。
【0082】
b) 5−ブロモ−6−フルオロ−2,2−ジフェニル−ベンゾ[1,3]ジオキソールの調製
4−ブロモ−5−フルオロ−ベンゼン−1,2−ジオール(12g、58.0mmol)とジフェニルジクロロメタン(1.2当量、16.50g)の混合物を、気体の発生が止むまで室温で撹拌した。混合物を180℃で20分間撹拌しながら加熱した。反応混合物を室温に冷却させておいて、メタノール(50ml)で希釈して激しく撹拌した。沈殿物を濾過により回収して、トルエン(50ml)に溶解した。メタノール(100ml)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。沈殿物を濾過により集め(収量10.3g、48%)、母液から更なるバッチ(6.4g、30%)を回収した。
ISP MS:m/e=370.0([M+H]+)。
【0083】
c) (6−フルオロ−2,2−ジフェニル−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−モルホリン−4−イル−メタノンの調製
ジエチルエーテル(300ml)中の5−ブロモ−6−フルオロ−2,2−ジフェニル−ベンゾ[1,3]ジオキソール(17.59g、47.4mmol)の冷却された(−78℃)溶液に、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの溶液(1.6M、30ml、48mmol、1.0当量)をゆっくり加えた。4−モルホリンカルボニルクロリド(8.5g、56.9mmol、1.2当量)を加える前に、反応混合物を−78℃で1時間撹拌した。反応混合物を20℃に温めておいて、重炭酸ナトリウムの水溶液中に注ぎ入れた。水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄した。揮発性成分を真空で除去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、(6−フルオロ−2,2−ジフェニル−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−モルホリン−4−イル−メタノン化合物(13.0g、68%)を明黄色の固体として得た。
ISP MS:m/e=406.2([M+H]+)。
【0084】
d) (2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンの調製
トリフルオロ酢酸(60ml)中の(6−フルオロ−2,2−ジフェニル−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−モルホリン−4−イル−メタノン(5.70g、14.06mmol)の冷却(氷浴)溶液に、トリエチルシラン(2.1当量、4.7ml)を10分間で加えた。混合物を0℃で20分間及び室温で4時間撹拌した。揮発性成分を減圧下で除去して、残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(2:1酢酸エチル/ヘプタン−酢酸エチル−10:1酢酸エチル/メタノール)により精製して、(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシ−フェニル)−モルホリン−4−イル−メタノンを明褐色の固体として得た(3.19g、94%)。
ISP MS:m/e=242.2([M+H]+)。
【0085】
実施例2
5,5−ジクロロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテンの調製
5,5−ジクロロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテンは、J.J. Looker, J. Org. Chem. 1966, 31, 3599により調製した: 5−ジベンゾスベレノン(2g、9.7mmol)をオキシ塩化リン(4.5ml)に溶解して、五塩化リン(3.13g、15.03mmol)を加えた。混合物を120℃で4時間加熱した。混合物を室温に冷却させておき、減圧下で溶媒を除去した。粗生成物は、更に精製することなく使用した。
【0086】
実施例3
4−[(6−フルオロ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,5’−[5H]ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン]−5−イル)カルボニル]−モルホリンの調製
5,5−ジクロロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン(0.783g、3.0mmol)をトルエン(8ml)に溶解して、120℃に加熱した。トルエン(4ml)中の4−(2−フルオロ−4,5−ジヒドロキシベンゾイル)−モルホリン(0.36g、1.5mmol)の溶液を20分間で滴下により加えた。添加の終了後、混合物を120℃で更に1時間加熱した。混合物を室温に冷却させておいて、蒸発させた。残渣をシリカゲルのカラムクロマトグラフィー(1:0〜10:1のジクロロメタン/酢酸エチル溶離液)により精製して、標記化合物をオフホワイト色の泡状物として得た。
MS:m/e=430.4([M+H]+
【0087】
【表2】

【0088】
ガレヌス製剤実施例
実施例A
以下の成分を含有するフィルムコーティング錠は、従来法で製造することができる:
成分 1錠中
核:
式(I)の化合物 10.0mg 200.0mg
微結晶性セルロース 23.5mg 43.5mg
含水乳糖 60.0mg 70.0mg
ポビドンK30 12.5mg 15.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 12.5mg 17.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg 4.5mg
(核重量) 120.0mg 350.0mg
フィルムコート:
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3.5mg 7.0mg
ポリエチレングリコール6000 0.8mg 1.6mg
タルク 1.3mg 2.6mg
酸化鉄(鉄黄) 0.8mg 1.6mg
二酸化チタン 0.8mg 1.6mg
【0089】
活性成分は、ふるいにかけて、微結晶性セルロースと混合し、混合物を水中のポリビニルピロリドンの溶液と共に造粒する。顆粒をデンプングリコール酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムと混合して、打錠することにより、それぞれ120又は350mgの核を得る。核を、上述したフィルムコートの水性溶液/懸濁液で塗って仕上げる。
【0090】
実施例B
以下の成分を含むカプセル剤は、従来法で製造することができる:
成分 1カプセル中
式(I)の化合物 25.0mg
乳糖 150.0mg
トウモロコシデンプン 20.0mg
タルク 5.0mg
【0091】
成分は、ふるいにかけて混合し、そしてサイズ2のカプセルに充填する。
【0092】
実施例C
注射液は、以下の組成を有することができる:
式(I)の化合物 3.0mg
ポリエチレングリコール400 150.0mg
酢酸 pH5.0まで適量
注射液用の水 全量1.0ml
【0093】
活性成分は、ポリエチレングリコール400と注射用水(一部)の混合物に溶解する。酢酸の添加によりpHを5.0に調整する。残量の水の添加により容量を1.0mlに調整する。溶液を濾過して、適切な過多量を用いてバイアルに充填して滅菌する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


(式中、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンである)で示される化合物。
【請求項2】
1及びR2が、水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
4−[(6−フルオロ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,5’−[5H]ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン]−5−イル)カルボニル]−モルホリンである、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
式(II):
【化2】


(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンである)で示される5,5−ジクロロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテンを、式(III):
【化3】


で示されるカテコール誘導体と高温で反応させることにより、式(I):
【化4】


で示される化合物を得ることを含む方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法により製造される、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物並びに薬学的に許容しうる担体及び/又は補助剤を含む、薬剤組成物。
【請求項7】
CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防のための、請求項6記載の薬剤組成物。
【請求項8】
治療活性物質として使用するための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防用の治療活性物質として使用するための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防のための方法であって、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物をヒト又は動物に投与することを含む方法。
【請求項11】
CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防のための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項12】
CB1受容体の調節に関連する疾患の治療及び/又は予防用の医薬の製造のための、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項13】
本明細書に実質的に記載されている、新規な化合物、製造法及び方法並びにこのような化合物の使用。

【公表番号】特表2008−519082(P2008−519082A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540539(P2007−540539)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011681
【国際公開番号】WO2006/050842
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】