説明

ジャイロスコープユニット内の光学的チップのためのパッケージ実装組立体

【課題】多機能光学的チップ等を支持するための構造的パッケージ実装組立体をジャイロスコープユニットに取付け可能にする。
【解決手段】例示の組立体は取付け板に取り付けられる筐体を含む。チップは筐体の中に配置され、この筐体が順に取付け板に結合される。筐体は、約3500Hzまたはそれより下の振動範囲などの所定の振動範囲にある加えられた振動に十分に耐えることができる所定の断面係数を有することができる。構造的パッケージ実装組立体は、合わせピンに締め付ける取付け脚を有する取付けシステムを使用し、合わせピンは順に取付け板の中へとプレス嵌めされる。1つの実施形態で、取付け脚は、合わせピンに締め付けられた後では、筐体と取付け板との間の共振減衰を可能とする「C」クランプ機構の形態をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロスコープユニット内の光学的チップのためのパッケージ実装組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、多機能光学的チップ(MFC)が戦略的航法グレードのファイバージャイロスコープに使用されている。1つのこうしたMFCは、その一貫性のある信頼性の高い機能が例えばファイバー光ジャイロスコープなどのジャイロスコープユニットにとって決定的に重要である集積光学チップ(IOC)として知られる光学的チップである。MFCは、より大きな一体化角度誤差およびより低いジャイロスコープ精度の結果になる強度および位相変調誤差を減少させるために動作する。その動作寿命の間にわたって、MFCは、減衰する振動などの慣性負荷、均一な(等温の)温度過渡などの温度負荷および外部負荷さえにもさらされる。さらに、また以下で議論するように、MFCは電気的に絶縁されなければならないので、したがって、特殊化された筐体または構造的パッケージ実装組立体の中に取り付けられる。
【0003】
図1は、MFC(図示せず)をジャイロスコープユニットの取付け板12の上に取り付けるために使用される現在行なわれているタイプの構造的パッケージ実装組立体10を示す。一般に、構造的パッケージ実装組立体10は、それぞれがネジの締め具18を受けるように構成された4つの取付け脚またはボス16を有する矩形形状の筐体14を含む。既存の構造的パッケージ実装組立体10の1つの欠点は、筐体14がジャイロスコープユニットの動作振動範囲に一致する振動範囲の中で共振することである。
【0004】
さらに、現在行なわれているMFC取付け機構は、異なる、加速度方向に依存したMFC取付けの剛性のために、面外方向の望ましくない非線形モードの振動を引き起こす可能性がある。例えば、MFC筐体に加えられた面外動的負荷の結果として、MFC筐体/取付け板の界面で次の2つの状態、(1)振動周期の最初の部分の間における筐体と取付け板との間の機械的接触の一時的欠落、または(2)振動周期の残りの部分の間におけるMFC筐体と取付け板との間の堅固な接触、が引き起こされる可能性がある。非線形振動モードは、望ましくない傾き修正影響のあるジャイロバイアス(すなわち、システムの見かけ上の回転と解釈されるかもしれない平均ジャイロバイアスの動的に誘起されたオフセット)を引き起こす。
【0005】
既存の構造的パッケージ実装組立体10の他の欠点は、筐体が、矩形形状のステンレス鋼筐体14とジャイロスコープユニットのアルミニウム取付け板12との間で熱膨張係数(CTE)不整合を有することである。このCTE不整合は、熱過渡の間に筐体14内に応力/ひずみ状態を生じさせる。これらのひずみ/応力状態は、時間と共に徐々に増加する潜在的なエネルギーの形態で蓄積される。潜在的なエネルギーは、締め具18を通じて任意の時刻に放散されることができ、筐体14の内部に配置されたMFCの物理的な変位を生じさせることがあり、このことが、順に、ジャイロスコープユニットの校正に悪影響を及ぼす恐れがある。潜在的なエネルギーの放散は散発的で予測不能であり、または、衝撃荷重または温度変化の間に生じる可能性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、MFCをジャイロスコープユニットに取り付ける場合の構造的パッケージ実装組立体の振動特性と固定性とを改良するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、多機能光学的チップ等をジャイロスコープユニットの中に取り付けるための組立体および方法を提供する。1つの実施形態で、チップのための構造的パッケージ実装組立体は取付け板に取り付けられた筐体を含む。チップは筐体の中に配置され、この筐体が順に取付け板に結合される。筐体は、約3500Hzまたはそれより下の振動範囲などの所定の振動範囲にある加えられた振動に十分に耐えることができる所定の断面係数を有することができる。構造的パッケージ実装組立体は、合わせピンに締め付ける取付け脚を有する取付けシステムを使用し、合わせピンは順に取付け板の中へとプレス嵌めされる。1つの実施形態で、取付け脚は、合わせピンに締め付けられた後では、筐体と取付け板との間の共振減衰を可能とする「C」クランプ機構の形態をとる。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、ジャイロスコープユニットの中に光学的チップを取り付けるための筐体は、構造的カバーと複数の側壁とを含む。側壁は構造的カバーから延在し且つそれに固定的に取り付けられる。側壁および構造的カバーは、筐体がジャイロスコープユニットの動作振動範囲内にある第1の振動範囲にさらされたときに、かなりの大きさの変形に抗することができる筐体断面係数を生じさせるように構造的に構成される。さらに、いくつかの取付け脚が側壁に結合され且つそこから延在する。
【0009】
本発明、すなわち光学的チップをジャイロスコープユニットの中に取り付けるためのパッケージ実装組立体の他の実施形態において、パッケージ実装組立体は、取付け板と、取付け板に固定され且つそれから延在する複数の合わせピンと、側壁とこの側壁から延在する取付け脚とを有する筐体とを備え、各取付け脚は、それぞれの合わせピンのうちの1つの部分を受けるための第1開口を備えた第1部分と第1部分から延在する締め付け部分とを有し、締め付け部分は締め具デバイスを受けるための第2開口を有し、締め具デバイスを堅く締めることが筐体を取付け板に固定的に結合させる一方、ジャイロスコープユニットが第1の振動範囲内で動作するときに筐体を取付け板から実質的に振動的に切り離す。
【0010】
本発明の好適な実施形態および代替の実施形態が、以降の図面を参照して以下で詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
一般に、多機能光学的チップ(MFC)は、戦略的航法グレードのファイバージャイロスコープなどのジャイロスコープユニットに使用されている。好適には、MFCは、さもなければより大きな一体化角度誤差と全体的により低いジャイロスコープ精度をもたらすかもしれない強度および位相変調誤差を減少させるためにパッケージ実装されるべきである。本発明の1つの好適な実施形態によると、MFCは、MFCをその動作寿命にわたって強い衝撃および過大な振動から保護するように構成された構造的パッケージ実装組立体と共にジャイロスコープユニットの中にパッケージ実装されまたは取り付けられる。
【0012】
例えば極端な温度環境を含むことがある航空宇宙用途などの多くの用途または環境において、通常、MFCは、所定のパッケージ適確性基準または水準を超えない均一(等温)温度過渡および減衰振動環境にさらされ且つそれを克服できなければならない。MFCパッケージ実装に関する基準のいくつかは、構造的パッケージ実装組立体の筐体は電気伝導性であるべきであり、構造的パッケージ実装組立体はニオブ酸リチウムチップのCTEにできる限り近づいて整合する熱膨張係数(CTE)を有すべきであり、約2500ヘルツ(Hz)を超える構造的共振に耐え且つ持ちこたえるのに十分な大きさの剛性を有すべきであり、電気伝導性筐体はジャイロスコープユニットの取付け板から電気的に絶縁されていなければならず、取り付けられたときのMFCの位置の安定性は任意の負荷条件で線形に予測され得るべきであり(例えば、好適には、動作、輸送、貯蔵および施工中にずれまたは内部発生の変位がないこと)、構造的パッケージ実装組立体の振動特性は、クリープ、降伏、または応力緩和のために変化するにせよそうでないにせよ、保存条件(5℃〜60℃)において少なくとも25年間にわたり変化すべきではない、ことである。
【0013】
図2および図3は、既存の構造的パッケージ実装組立体100のいくつかの欠点を克服し、全部ではないが多くの上述の適格性基準または水準を満たす構造的パッケージ実装組立体100を示す。構造的パッケージ実装組立体100は取付け板102と筐体104とを含む。取付け板102はアルミニウムでできていることができる。1つの実施形態による筐体104はステンレス鋼316で作られ、加えられた曲げモーメントおよびねじり応力のためのものなどの振動性強制作用が約3500Hzまたはそれより下で生じたとき、あるいは構造的パッケージ実装組立体100にとっての振動感応範囲の外にある振動周波数またはそれ以下で生じたときに、こうした振動性強制作用が構造的パッケージ実装組立体100に悪影響を及ぼさないことを保証するように構成された所定の長さ、幅、および高さ対壁厚さの関係を含む。
【0014】
構造的パッケージ実装組立体100は、組立体100の長さおよび/または幅を決定する場合に全ての4つの取付け脚108および114が含まれることを考慮した場合でも、好都合に最小サイズの外囲器で最大の光学長をもたらす4点取付けシステム106を使用する。前方取付け脚108および後方取付け脚114は、筐体104から延在し、取付け板102との正確な位置合わせを可能とし取付け板102に対する高度な共振取付け方法を提供するための「C」クランプ・ブロックなどのクランプ機構110を含む。前方取付け脚108は、筐体104と取付け板102との間の制御された位置合わせをもたらすために正確に寸法公差が決められたものであることができる。後方取付け脚114は、筐体104と取付け板102との間のCTE不整合を補償するために、パッケージの柔軟性を可能にするためにネック部115を含む。パッケージの長手に沿った付加的なCTE補償が、筐体104に対する小さな前方または後方に傾いた角度をネック部115に含むことによって(取付け板102に対して同じ面内で回転される)追加されることができる。
【0015】
図3で最も良く分かるように、取付け脚108は少なくとも取付け板102の中へプレス嵌めされる合わせピン112を使用して取付け板102に取り付けられる。さらに、合わせピン112は、取付け板102と筐体104との間にある大きさの熱伝導をもたらす。1つの実施形態で、合わせピン112は、取付け板102を筐体104から電気的に絶縁させる手段として真空蒸着工程によって塗布された炭化チタン(TiC)コーティング114を含む。さらに、合わせピン112の上部の自由表面116は、真空蒸着工程によって塗布された酸化ケイ素などのハードコーティングまたは類似のコーティングの層で塗布されることができ、ここでハードコートは電気的絶縁体として作用する。合わせピン112は、筐体104を取付け板102にしっかりと係合させるために円形または他のタイプの断面形状を有するように構成されることができるステンレス鋼合わせピンの形態をとることができる。
【0016】
先に述べたように、多機能光学的チップ(MFC)は筐体104の中に配置され、したがってそれぞれの図面では見ることができない。組み立て中に、筐体104は、筐体104に係合させるために取付け脚108のクランプ110に配置された開口を貫いて延在する締め具118にねじりを与えこれにより堅く締めることによって取付け板102に取り付けられる。締め具118は、事前に選択されたトルクレベルに堅く締めつけられ、これが、筐体104を取付け板102に固定的に結合する。
【0017】
1つの実施形態で、2つまたは3つの合わせピン112が最初に取付け板102の中へと圧入され、ここで1つの合わせピン112は直径が他の2つの合わせピン112よりも大きい。異なるサイズの合わせピン112を持つことの1つの目的は、筐体104を取付け板102に対して適切に方向を向けさせることである。より大きなサイズの合わせピン112を持つことの他の目的は、出力リードを大きい方の合わせピン112を介して取付け板102に接続させるためである。さらに、合わせピン112は、プレス嵌め、焼きばめ、ねじ切り、接合などを含むがこれらに限定されないいくつかの機械的技法を介して取付け板102に取り付けられ得ることも理解されよう。
【0018】
組立工程の一部として、空隙120が筐体104と取付け板102との間に備え付けられることができる。空隙120を達成する1つの方法は、電気的に絶縁されたスペーサー122を合わせピン112の周りに設け且つ筐体104と取付け板102との間に配置することである。図3で最も良く分かるように、空隙120の厚さは概ねスペーサー122の厚さに等しい。スペーサー122に付け加えてまたはその代替として、構造に関係しないプラスチックワッシャ(図示せず)が空隙120を調整または設けるために含まれることができる。
【0019】
有利には、上述の構造的パッケージ実装組立体100は、0〜20,000Hzの間の20GRMS(すなわち、実効重力加速度)までの衝撃および振動レベルに耐えることができ、これは、多機能光学的チップ(MFC)の構造的一体性を宇宙船およびミサイル発射条件の下で確実にすることが意図されている。さらに、構造的パッケージ実装組立体100は、例えば、敵対する軍事環境下での戦略的航法誘導中のジャイロスコープユニットの一貫して向上された光学的性能をもたらすことも意図されている。さらに、有利には、構造的パッケージ実装組立体100は、30年より長くとまでは行かなくともそれと概ね同じでありうるMFCの動作寿命を通して、繊細なMFCに対する実質的な大きさの熱的および構造的応力除去をもたらすことができる。最後に、構造的パッケージ実装組立体100は、組立体の内部に熱伝導性の経路をさらに形成することができる一方、実用的で費用効果の高い製造技法を使用して筐体104と取付け板102との間の電気的絶縁を維持することができる。例として、構造的パッケージ実装組立体100は、光学的チップの不要な変位または移動を引き起こすことなくより高い衝撃および振動水準を持続することができ、したがって、光学的エラーを5000ppm(パルス−位置変調)と同じ高さに減少させることができる。
【0020】
本発明の好適な実施形態が示され説明されてきたが、上述されたように、多くの変更が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされることができる。したがって、本発明の範囲は好適な実施形態の開示によっては限定されない。そうではなく、本発明は添付した特許請求の範囲を参照することによって完全に決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ジャイロスコープユニットのための既存の構造的パッケージ実装組立体の等角図である。
【図2】本発明の実施形態によるジャイロスコープユニットのための構造的パッケージ実装組立体の等角図である。
【図3】筐体をジャイロスコープユニットの取付け板に取り付けるために使用される合わせピンをより良く分からせるために、取付け脚の切欠図を示す図2の構造的パッケージ実装組立体の部分的に拡大された等角図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造的カバーと、
前記構造的カバーから延在し且つ前記カバーに固定的に取り付けられた複数の側壁であって、前記側壁および前記構造的カバーは、筐体がジャイロスコープユニットの動作振動範囲内にある第1の振動範囲にさらされたときに、実質的な大きさの変形に抗することができる筐体断面係数を生じさせるように構造的に構成された側壁と、
前記側壁に結合され且つ前記側壁から延在する複数の取付け脚と、
を備えた前記ジャイロスコープユニットの中に光学的チップを取り付けるための筐体。
【請求項2】
前記筐体断面係数は、曲げ負荷および捩れによる負荷に起因する変形に耐える、請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記第1の振動範囲は約0〜3500ヘルツの範囲内にある、請求項1に記載の筐体。
【請求項4】
前記取付け脚は、前記筐体への加えられた振動負荷に対する共振減衰をもたらすために締め金として構成された、請求項1に記載の筐体。
【請求項5】
取付け板と、
前記取付け板に固定され且つ前記取付け板から延在する複数の合わせピンと、
側壁と前記側壁から延在する取付け脚とを有する筐体であって、各取付け脚は、それぞれの合わせピンのうちの1つの部分を受けるための第1開口を備えた第1部分と前記第1部分から延在する締め付け部分とを有し、前記締め付け部分は締め具デバイスを受けるための第2開口を有し、前記締め具デバイスを堅く締めることが前記筐体を前記取付け板に固定的に結合させる一方、ジャイロスコープユニットが第1の振動範囲内で動作するときに前記筐体を前記取付け板から実質的に振動的に切り離す筐体と、
を備えた、光学的チップを前記ジャイロスコープユニットの中に取り付けるためのパッケージ実装組立体。
【請求項6】
前記第1の振動範囲は、前記ジャイロスコープユニットの動作振動範囲の内側にある、請求項5に記載のパッケージ実装組立体。
【請求項7】
前記筐体と前記取付け板とを空間的に離隔させた関係に維持するために各合わせピンの周りに配置され前記筐体と前記取付け板との間に配置された複数のインシュレータをさらに備える、請求項5に記載のパッケージ実装組立体。
【請求項8】
光学的チップを複数の取付け脚を有する筐体の内部に配置するステップと、
複数の合わせピンを取付け板に固定するステップであって、各合わせピンの部分は前記取付け板から延在するステップと、
パッケージ実装組立体を製作するために前記取付け脚のそれぞれを前記それぞれの合わせピンのそれぞれに締め付けるステップであって、前記パッケージ実装組立体はジャイロスコープユニットの動作振動範囲の外側にある共振周波数を含むステップと、
を含む、前記光学的チップを前記ジャイロスコープユニットの内部に取り付けるための方法。
【請求項9】
前記複数の合わせピンを前記取付け板に固定するステップは前記合わせピンを前記取付け板の開口の中へプレス嵌めするステップを含む、請求項8に記載に方法。
【請求項10】
前記筐体と前記取付け板とを空間的に離隔された関係に維持するために前記筐体と前記取付け板との間にスペーサーを挿入するステップをさらに含む、請求項8に記載に方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−286795(P2008−286795A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−128101(P2008−128101)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】