説明

ジョイントコネクタ

【課題】端子金具のノイズ除去性能を向上させるとともに該端子金具の針状端子ごとにノイズ除去性能を適宜変更可能とし、かつ、フェライトコアの寸法と段数との組み合わせに対応したジョイントコネクタを提供する。
【解決手段】ジョイントコネクタ1は、ノイズを除去するフェライトコア10が設けられる端子金具3と、前記端子金具3が収容されるコネクタハウジング2と、を備える。前記端子金具3は、バスバ28と、前記バスバ28の長手方向に対して略直交する方向に延長されて設けられているとともに該バスバ28の前記長手方向に互いに間隔をあけて設けられている複数本の針状端子部29と、を備え、前記コネクタハウジング2には、前記複数本の針状端子部29のそれぞれに設けられる前記フェライトコア10が収容可能に形成されたフェライト収容室21,36が設けられ、かつ、前記フェライト収容室21,36が、前記複数本の針状端子部29のそれぞれに沿って複数段で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、CAN(Control Area Network)通信によって、制動装置やエンジンなどの状態、車両速度や故障診断等の情報を転送するためのワイヤハーネスが配索されている。この種のワイヤハーネスは、複数のサブハーネスが電気的に接続されている。サブハーネスには、回路の分岐などを行うジョイントコネクタが設けられている。
【0003】
ジョイントコネクタは、前述したCAN通信によって前記自動車に搭載された各種電装品を制御しており、ノイズの輻射などの信号伝送に及ぼす悪影響を軽減するために、信号に重畳されるノイズを除去するフェライトが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に示されたジョイントコネクタは、一方に開口部が設けられて他のコネクタと嵌合されるコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの開口部から嵌入されて該コネクタハウジング内に固定される端子金具と、前記端子金具に設けられる一段のフェライトと、前記開口部から嵌入されて前記一段のフェライトを前記コネクタハウジング内に固定する固定具と、を備えている。前記端子金具には、前記他のコネクタの端子に電気的に接続される複数本の針状端子部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−218038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に示された従来のジョイントコネクタは、一段のフェライトで端子金具のノイズを除去するため、ノイズ除去性能の向上には限度があるという問題があった。
【0007】
また、従来のジョイントコネクタは、同じ寸法の一段のフェライトで端子金具のノイズを除去するため、複数本の針状端子部のそれぞれのノイズ除去性能を適宜変更することができないという問題があった。
【0008】
また、従来のジョイントコネクタは、開口部から嵌入した固定具で一段のフェライトをコネクタハウジング内に固定するため、複数本の針状端子部に設けられるフェライトの寸法や段数を変更する場合には、寸法と段数の組み合わせ毎に専用の固定具を用意しなければならないという問題が生じる。このため、前述した特許文献1に示された従来のジョイントコネクタの構成では、フェライトの寸法と段数とを適宜変更することによって、ノイズ除去性能を向上させたり、複数本の針状端子部のそれぞれのノイズ除去性能を適宜変更したりすることができない。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、端子金具のノイズ除去性能を向上させるとともに該端子金具の針状端子ごとにノイズ除去性能を適宜変更可能とし、かつ、フェライトコアの寸法と段数との組み合わせに対応したジョイントコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、ノイズを除去するフェライトコアが設けられる端子金具と、前記端子金具が収容されるコネクタハウジングと、を備えたジョイントコネクタにおいて、前記端子金具は、バスバと、前記バスバの長手方向に対して略直交する方向に延長されて設けられているとともに該バスバの前記長手方向に互いに間隔をあけて設けられている複数本の針状端子部と、を備え、前記コネクタハウジングには、前記複数本の針状端子部のそれぞれに設けられる前記フェライトコアが収容可能に形成されたフェライト収容室が設けられ、かつ、前記フェライト収容室が、前記複数本の針状端子部のそれぞれに沿って複数段で設けられていることを特徴とするジョイントコネクタである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、前記複数本の針状端子部のそれぞれには、ノイズ除去性能に応じて、前記フェライトコアが一段または二段で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、前記コネクタハウジングは、前記バスバが嵌入されて固定される第一インナハウジングと、前記複数本の針状端子部に挿通される第二インナハウジングと、前記第一インナハウジングと前記第二インナハウジングとを収容するアウタハウジングと、を備え、前記フェライトコアは、第一フェライトコアと、第二フェライトコアと、を備え、前記第一インナハウジングには、前記第一フェライトコアを収容可能に形成された第一フェライト収容室が設けられ、かつ、前記第二インナハウジングには、前記第二フェライトコアを収容可能に形成された第二フェライト収容室が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のジョイントコネクタである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、前記フェライトコアが、複数の寸法に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のジョイントコネクタである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、ジョイントコネクタは、針状端子部に複数段で設けられるフェライトコアが収容されるフェライト収容室を、コネクタハウジングに複数段で設けたため、複数段のフェライト収容室のそれぞれにフェライトコアを収容することによって、容易にノイズ除去性能を向上することができる。
【0015】
また、ジョイントコネクタは、フェライト収容室をコネクタハウジングに複数段で設けたため、前記フェライト収容室に設けられるフェライトコアの個数を適宜変更することが可能となる。このため、複数本の針状端子部のそれぞれのノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0016】
また、ジョイントコネクタは、前記フェライト収容室に設けられるフェライトコアの個数を適宜変更してノイズ除去性能を適宜変更することができるため、汎用品のフェライトコアを用いることができる。このため、ノイズ除去性能毎に多品種および少量生産の専用品のフェライトコアを使用していた従来のジョイントコネクタよりも安価とすることができる。
【0017】
また、ジョイントコネクタは、フェライト収容室をコネクタハウジングに複数段で設けて、前記フェライト収容室に設けられるフェライトコアの個数を適宜変更可能としたため、ノイズ除去性能に応じて専用の固定具などが必要な従来のジョイントコネクタよりも安価とすることができる。
【0018】
また、ジョイントコネクタは、フェライト収容室をコネクタハウジングに複数段で設けて、前記フェライト収容室に設けられるフェライトコアの個数を適宜変更可能としたため、組立工程を簡略化することができる。
【0019】
また、ジョイントコネクタは、フェライト収容室をフェライトコアが収容可能に形成したため、ノイズ除去性能が不要な場合には、フェライトコアをフェライト収容室に収容しないという選択をすることができる。このため、ノイズ除去性能が不要な汎用品のジョイントコネクタとして用いることができる。
【0020】
請求項2に記載された発明によれば、ジョイントコネクタは、ノイズ除去性能に応じてフェライトコアを一段または二段で複数本の針状端子部のそれぞれに設けたため、それぞれの針状端子部ごとにノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0021】
請求項3に記載された発明によれば、ジョイントコネクタは、第一インナハウジングに端子金具を固定するとともに第一フェライトコアを収容可能とし、第二インナハウジングに第二フェライトコアを収容可能とし、前記第一インナハウジングと前記第二インナハウジングとをアウタハウジングに収容するため、ジョイントコネクタを構成する部材を変更することなく、第一フェライト収容室に第一フェライトコアを収容してフェライトコアを一段としたり、第二フェライト収容室に第二フェライトコアを収容してフェライトコアを一段としたり、第一フェライト収容室に第一フェライトコアを収容するとともに第二フェライト収容室に第二フェライトコアを収容してフェライトコアを二段としたりすることができる。よって、ジョイントコネクタの構成部材を変更することなく、針状端子部のノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0022】
請求項4に記載された発明によれば、ジョイントコネクタは、複数の寸法に形成されたフェライトコアをフェライト収容室に収容することができるため、フェライトコアの段数と寸法との組み合わせを形成することができる。このため、同一寸法で形成されたフェライトコアの段数のみの組み合わせで形成されるノイズ除去性能よりも、幅広いノイズ除去性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるジョイントコネクタの斜視図である。
【図2】図1に示されたジョイントコネクタのII−II矢視断面図である。
【図3】図1に示されたジョイントコネクタの分解断面図である。
【図4】図1に示されたジョイントコネクタの組み立てを説明する斜視図である。
【図5】図1に示されたジョイントコネクタと他のコネクタとが連結される状態を説明する斜視図である。
【図6】本発明の第二の実施形態にかかるジョイントコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかるジョイントコネクタ1は、図1および図2に示すように、サブハーネス61(図5に示す)の汎用コネクタ62の端子に電気的に接続される端子金具3と、前記端子金具3を収容し且つ前記汎用コネクタ62が押し込まれて嵌合されるコネクタハウジング2と、を備えている。
【0025】
端子金具3は、図2および図3に示すように、導電性の板金から構成され、プレス加工等によって櫛形状に形成されている。端子金具3は、薄板状に形成されたバスバ28と、前記バスバ28から該バスバ28の長手方向に対して直交する方向に延長された複数本(図示例では、6本)の針状端子部29と、を備えている。端子金具3は、図4に示すように、該端子金具3の厚さ方向に設けられた複数枚(図示例では、2枚)の端子金具3aと端子金具3bとからなる。端子金具3a,3b同士は、互いに平行して配されている。
【0026】
バスバ28は、図2および図3に示すように、該バスバ28の長手方向に沿って複数個(図示例では、10個)の孔31が等間隔で設けられている。バスバ28には、該バスバ28の長手方向の両端部に、後述する第一インナハウジング6のバスバ収容室12の内壁面に係合する係合突起32が設けられている。係合突起32は、前記針状端子部29側に向かって突出量が徐々に増加して形成されている。
【0027】
針状端子部29は、前記バスバ28の長手方向に沿って等間隔で設けられているとともに、互いに平行して設けられている。針状端子部29は、前述した汎用コネクタ62の雌型端子に嵌入しやすいように、先端部29cが先細形状に形成されている。針状端子部29は、図1および図2に示すように、汎用コネクタ62がコネクタハウジング2の嵌合部9に嵌合した際に、前記針状端子部29が、前記汎用コネクタ62の端子と電気的に接続される長さに形成されている。針状端子29同士の間隔は、前記汎用コネクタ62の端子の間隔に形成されている。
【0028】
コネクタハウジング2は、図2および図3に示すように、前記端子金具3のバスバ28を収容するバスバ収容室12が形成された第一インナハウジング6と、前記第一インナハウジング6に並設される第二インナハウジング7と、前記第一インナハウジング6と前記第二インナハウジング7とを収容するアウタハウジング4と、を備えている。コネクタハウジング2は、ポリ塩化ビニル樹脂などの絶縁性の合成樹脂により形成されている。
【0029】
なお、本実施形態は、第一インナハウジング6および第二インナハウジング7に、前記針状端子部29に設けられるフェライトコア10が収容可能に形成されたフェライト収容室21,36が二段で設けられているものを一例として示したものであって、三段のような複数段であっても良い。
【0030】
第一インナハウジング6は、図3に示すように、バスバ収容室12と、前記バスバ収容室12に連通し且つ前記端子金具3の針状端子部29の基端部29a側に設けられるフェライトコア10としての第一フェライトコア10aを収容可能に形成されたフェライト収容室としての複数(図示例では、6つ)の第一フェライト収容室21と、アウタハウジング4に係合する抱持片40と、を備えている。
【0031】
バスバ収容室12は、図2に示すように、前記端子金具3のバスバ28の前記係合突起32が係合する幅に形成され、前記端子金具3a,3b同士が平行して収容される奥行きに形成されている。
【0032】
第一フェライト収容室21は、図2ないし図4に示すように、前記端子金具3の前記バスバ28の長手方向に対して平行に複数(図示例では、6つ)設けられている。複数の第一フェライト収容室21は、前記バスバ28の長手方向に対して平行に等間隔で設けられている。第一フェライト収容室21は、第一フェライトコア10aを収容する長方形状に形成されている。第一フェライト収容室21の底面部には、前記端子金具3a,3bのそれぞれの針状端子部29の各一本が挿通する挿通孔が設けられている。
【0033】
抱持片40は、図3および図4に示すように、前記第一インナハウジング6の長手方向の両端部の下端部から前記針状端子部29の延長方向に沿って延長されて形成されている。抱持片40は、前記下端部の両端からそれぞれ延長された腕部40と、後述するアウタハウジング4の係止爪14に係止される係止部41と、を備えている。抱持片40は、揺動可能に形成されている。このため、アウタハウジング4に係止された第一インナハウジング6の抱持片40を工具等で操作して、前記アウタハウジング4と前記第一インナハウジング6とを分離可能としている。
【0034】
第二インナハウジング7は、前記第一インナハウジング6の第一フェライト収容室21に収容された第一フェライトコア10aのガタツキを防止する複数個(図示例では、6つ)の第一突出部23と、前記第一突出部23に連通し且つ前記端子金具3の前記針状端子部29が挿通される複数(図示例では、6つ)の挿通孔24と、前記挿通孔24に連通し且つ前記針状端子部29が貫通するとともに該針状端子部29の中間部29b側に設けられるフェライトコア10としての第二フェライトコア10bを収容可能に形成されたフェライト収容室としての第二フェライト収容室36と、を備えている。
【0035】
第一突出部23は、前記第一フェライト収容室21に収容された第一フェライトコア10aに当接あるいは近接して該第一フェライトコア10aのガタツキを抑える突出量で形成されている。第一突出部23は、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29の各一本が挿通される挿通孔24の一端側が突出して形成されている。なお、第一突出部23の突出量は、適宜調整しても良い。
【0036】
挿通孔24は、円形状に形成されるとともに前記端子金具3の前記針状端子部29が挿通される直径に形成されている。挿通孔24は、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29の各一本が貫通する。挿通孔24は、図4に示すように、それぞれの第二フェライト収容室36に二つ並んで開孔されている。
【0037】
第二フェライト収容室36は、図2および図3に示すように、前記端子金具3の前記バスバ28の長手方向に対して平行に複数(図示例では、6つ)設けられている。第二フェライト収容室36は、前記バスバ28の長手方向に対して平行に等間隔で設けられている。それぞれの第二フェライト収容室36は、図4に示すように、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29の各一本が貫通し且つ第二フェライトコア10bを収容する長方形状に形成されている。
【0038】
アウタハウジング4は、図2および図3に示すように、前述した汎用コネクタ62と嵌合する嵌合部9と、前述した第一インナハウジング6と第二インナハウジング7とを収容するインナハウジング収容室38と、前記第一インナハウジング6の抱持片40に係止される係止爪14と、を備えている。
【0039】
嵌合部9は、図3および図4に示すように、長方形状の筒状に形成されており、内周面に、前述した汎用コネクタ62を嵌合する際の取付方向を規定するガイド部15が形成されている。嵌合部9には、前記汎用コネクタ62に設けられた図示しない係合手段と係合する係合部が設けられている。
【0040】
インナハウジング収容室38は、前記第一インナハウジング6の抱持片40と係止される係止爪14が設けられて前記嵌合部9側から延長された延長片13と、前記嵌合部9に連通されて前記端子金具3の針状端子部29が挿通される挿通孔18と、前記挿通孔18の前記インナハウジング収容室38側の一端から突出された第二突出部17と、を備えている。
【0041】
延長片13は、前記嵌合部9側から前記第一インナハウジング6の抱持片40に向かって延長して形成され、前記インナハウジング収容室38の外側に突出する係止爪14が設けられている。延長片13は、先端部側にスリットが形成されており、揺動可能に形成されている。
【0042】
挿通孔18は、円形状に形成されるとともに前記端子金具3の針状端子部29が挿通される直径に形成されている。挿通孔18は、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29の各一本が挿通される。
【0043】
第二突出部17は、前記第二フェライト収容室36に収容された第二フェライトコア10bに当接あるいは近接して該第二フェライトコア10bのガタツキを抑える突出量で形成されている。第二突出部17は、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29の各一本が挿通される前記挿通孔18の一端側が突出して形成されている。なお、第二突出部23の突出量は、適宜調整しても良い。
【0044】
係止爪14は、前記延長片13の先端部に向かって徐々に突出量が減少して形成されている。係止爪14は、図5に示すように、前記抱持片40の腕部40a同士の間に侵入可能に形成されている。
【0045】
フェライトコア10は、図3に示すように、第一フェライトコア10aと、第二フェライトコア10bとから構成されている。フェライトコア10は、図3および図4に示すように、直方体状に形成されており、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29が貫通する貫通孔11が設けられている。フェライトコア10は、高周波ノイズを除去する所謂フェライトコアとされ、公知の金属酸化物の強磁性体から構成され、公知の製法によって製造されている。
【0046】
第一フェライトコア10aが前記針状端子部29の基端部側に設けられるとともに第二フェライトコア10bが該針状端子部29の中間部側に設けられて、前記第一フェライトコア10aと前記第二フェライトコア10bとが前記針状端子部29の長手方向に二段で設けられている。
【0047】
貫通孔11は、端子金具3aの針状端子部29の一本が挿通される貫通孔と、端子金具3bの針状端子29の一本が挿通される貫通孔と、を備え、並んで開孔されて形成されている。
【0048】
第一フェライトコア10aは、前記針状端子部29の長手方向に対して平行する方向の寸法が厚肉の厚さD1に形成されている。第一フェライトコア10aは、複数個(図示例では、6個)使用される。
【0049】
第二フェライトコア10bは、前記針状端子部29の長手方向に対して平行する方向の寸法が薄肉の厚さD2に形成されている。第二フェライトコア10bは、前記第一フェライトコア10aの約半分程度の厚さに形成されている。第二フェライトコア10bは、複数個(図示例では、6個)使用される。
【0050】
本発明でいう、第一フェライトコア10aが厚肉の厚さD1に形成され、かつ、第二フェライトコア10bが薄肉の厚さD2に形成されているとは、第一フェライトコア10aが第二フェライトコア10bよりも相対的に厚肉に形成され、第二フェライトコア10bが第一フェライトコア10aよりも相対的に薄肉に形成されていることをいう。即ち、相対的な厚さがD1>D2とされている。
【0051】
なお、第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとの厚さは、図示例に限定されるものではなく、ノイズ除去性能に応じて適宜変更しても良く、第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとを同じ厚さに形成しても良い。また、第一フェライトコア10aおよび第二フェライトコア10bと異なる寸法のフェライトコアを用いても良い。
【0052】
次に、上述の如く構成されたジョイントコネクタ1の組み立てについて、以下に説明する。
ジョイントコネクタ1を構成するアウタハウジング4と、第一インナハウジング6と、第二インナハウジング7と、端子金具3a,3bと、第一フェライトコア10aと、第二フェライトコア10bとは、予めそれぞれ製造される。
【0053】
図4に示すように、第一インナハウジング6内に端子金具3a,3bを嵌合して固定し、前記第一インナハウジング6の複数の第一フェライト収容室21のそれぞれに第一フェライトコア10aを収容する。このとき、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29が前記第一フェライトコア10aの貫通孔11を貫通する。
【0054】
次いで、第一インナハウジング6上に第二インナハウジング7を配し、前記第二インナハウジング7の複数の挿通孔24に前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29を挿通し、複数の第二フェライト収容室36のそれぞれに第二フェライトコア10bを収容する。このとき、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29が前記第二フェライトコア10bの貫通孔11を貫通する。このとき、第一インナハウジング6と第二インナハウジング7とが積み重ねられた状態となる。
【0055】
次いで、前記第一インナハウジング6と前記第二インナハウジング7とをアウタハウジング4のインナハウジング収容室38内に押し込んで該インナハウジング収容室38内に固定する。このとき、第一インナハウジング6の抱持片40がアウタハウジング4の係止爪14を乗り越えて該係止爪14に係止し、前記端子金具3a,3b同士のそれぞれの針状端子部29がアウタハウジング4の挿通孔18を挿通し、前記第一インナハウジング6と前記第二インナハウジング7とを前記アウタハウジング4内に固定する。このようにして、ジョイントコネクタ1を組み立てる。
【0056】
上述の如く組み立てられたジョイントコネクタ1は、図5に示すように、複数本(図示例では、12本)の電線63と該電線63の端末に設けられた汎用コネクタ62(雄型コネクタ)とを備えたサブハーネス61に接続される。このとき、汎用コネクタ62の端子同士の間隔と、本発明のジョイントコネクタ1の端子金具3の針状端子部29同士の間隔とが同じ間隔とされているため、汎用コネクタ62がジョイントコネクタ1の嵌合部9に嵌合されて、両コネクタ1,62の端子同士が電気的に接続される。
【0057】
本実施形態によれば、ジョイントコネクタ1は、ノイズを除去するフェライトコア10が設けられる端子金具3と、前記端子金具3が収容されるコネクタハウジング2と、を備えており、前記端子金具3は、バスバ28と、前記バスバ28の長手方向に対して略直交する方向に延長されて設けられているとともに該バスバ28の前記長手方向に互いに間隔をあけて設けられている複数本の針状端子部29と、を備え、前記コネクタハウジング2には、前記複数本の針状端子部29のそれぞれに設けられる前記フェライトコア10が収容可能に形成されたフェライト収容室21,36が設けられ、かつ、前記フェライト収容室21,36が、前記複数本の針状端子部29のそれぞれに沿って複数段で設けられている。
【0058】
このため、ジョイントコネクタ1は、針状端子部29に複数段で設けられるフェライトコア10が収容されるフェライト収容室21,36を、コネクタハウジング2に複数段で設けたため、複数段のフェライト収容室21,36のそれぞれにフェライトコア10を収容することによって、容易にノイズ除去性能を向上することができる。
【0059】
(第二の実施形態)
次に、本発明にかかるジョイントコネクタ1の第二の実施形態について、図6を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
ジョイントコネクタ1は、図6に示すように、第一フェライトコア10aが設けられた針状端子部29Aと、第二フェライトコア10bが設けられた針状端子部29Bと、第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとが設けられた針状端子部29Cと、を備えている。
【0061】
即ち、針状端子部29Aには第一フェライトコア10aが一段設けられ、針状端子部29Bには第二フェライトコア10bが一段設けられ、針状端子部29Cには第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとが各々一段設けられてフェライトコア10として二段設けられている。
【0062】
第一フェライトコア10aは、前記針状端子部29の長手方向に対して平行する方向の寸法が厚肉の厚さD1に形成されている。第二フェライトコア10bは、前記針状端子部29の長手方向に対して平行する方向の寸法が薄肉の厚さD2に形成されている。なお、第一フェライトコア10aの厚さD1と第二フェライトコア10bの厚さD2とが、D1<D2であっても良い。
【0063】
このため、第二フェライトコア10bが設けられた針状端子部29Aは軽度のノイズ除去性能を発揮し、第一フェライトコア10aが設けられた針状端子部29Bは中度のノイズ除去性能を発揮し、第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとが設けられた針状端子部29Cは強度のノイズ除去性能を発揮する。よって、三通りの組み合わせでノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0064】
また、前述した三通りの組み合わせの他に、針状端子部29に第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとが設けられていない組み合わせを形成することで、四通りの組み合わせとすることができる。このため、それぞれの針状端子部29,29A,29B,29Cごとにノイズ除去性能を四通りの組み合わせで適宜変更することができる。
【0065】
なお、フェライトコア10aとフェライトコア10bとが同じ厚さに形成されている場合には、針状端子部29にフェライトコア10aおよび第二フェライトコア10bを設けない組み合わせと、針状端子部29に第一フェライトコア10aまたは第二フェライトコア10bを設けた組み合わせと、針状端子部29に第一フェライトコア10aと第二フェライトコア10bとを設けた組み合わせと、を形成することができる。このため、三通りの組み合わせによって、それぞれの針状端子部29ごとにノイズ除去性能を三段階で適宜変更することができる。
【0066】
本実施形態によれば、ジョイントコネクタ1は、前記複数本の針状端子部29のそれぞれには、ノイズ除去性能に応じて、フェライトコア10が一段または二段で設けられている。
【0067】
このため、ジョイントコネクタ1は、ノイズ除去性能に応じてフェライトコア10を一段または二段で複数本の針状端子部29のそれぞれに設けたため、それぞれの針状端子部29ごとにノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、ジョイントコネクタ1は、前記コネクタハウジング2は、前記バスバ28が嵌入されて固定される第一インナハウジング6と、前記複数本の針状端子部29に挿通される第二インナハウジング7と、前記第一インナハウジング6と前記第二インナハウジング7とを収容するアウタハウジング4と、を備え、前記フェライトコア10は、第一フェライトコア10aと、第二フェライトコア10bと、を備え、前記第一インナハウジング6には、前記第一フェライトコア10aを収容可能に形成された第一フェライト収容室21が設けられ、かつ、前記第二インナハウジング7には、前記第二フェライトコア10bを収容可能に形成された第二フェライト収容室36が設けられている。
【0069】
このため、ジョイントコネクタ1は、第一インナハウジング6に端子金具3を固定するとともに第一フェライトコア10aを収容可能とし、第二インナハウジング7に第二フェライトコア10bを収容可能とし、前記第一インナハウジング6と前記第二インナハウジング7とをアウタハウジング4に収容するため、ジョイントコネクタ1を構成する部材を変更することなく、第一フェライト収容室21に第一フェライトコア10aを収容してフェライトコア10を一段としたり、第二フェライト収容室36に第二フェライトコア10bを収容してフェライトコア10を一段としたり、第一フェライト収容室21に第一フェライトコア10aを収容するとともに第二フェライト収容室36に第二フェライトコア10bを収容してフェライトコア10を二段としたりすることができる。よって、ジョイントコネクタ1の構成部材を変更することなく、針状端子部29のノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、ジョイントコネクタ1は、ノイズ除去性能に応じて複数の寸法に形成されたフェライトコア10a,10bをフェライト収容室21,36に収容することができるため、フェライトコア10a,10bの段数と寸法との組み合わせを形成することができる。このため、同一寸法で形成されたフェライトコアの段数のみの組み合わせで形成されるノイズ除去性能よりも、幅広いノイズ除去性能を発揮することができる。
【0071】
また、ジョイントコネクタ1は、フェライト収容室21,36をコネクタハウジング2に複数段で設けたため、前記フェライト収容室21,36に設けられるフェライトコア10a,10bの個数を適宜変更することが可能となる。このため、複数本の針状端子部29のそれぞれのノイズ除去性能を適宜変更することができる。
【0072】
また、ジョイントコネクタ1は、前記フェライト収容室21,36に設けられるフェライトコア10a,10bの個数を適宜変更してノイズ除去性能を適宜変更することができるため、汎用品のフェライトコアを用いることができる。このため、ノイズ除去性能毎に多品種および少量生産の専用品のフェライトコアを使用していた従来のジョイントコネクタよりも安価とすることができる。
【0073】
また、ジョイントコネクタ1は、フェライト収容室21,36をコネクタハウジング2に複数段で設けて、前記フェライト収容室21,36に設けられるフェライトコア10a,10bの個数を適宜変更可能としたため、ノイズ除去性能に応じて専用の固定具などが必要な従来のジョイントコネクタよりも安価とすることができる。
【0074】
また、ジョイントコネクタ1は、フェライト収容室21,36をコネクタハウジング2に複数段で設けて、前記フェライト収容室21,36に設けられるフェライトコア10a,10bの個数を適宜変更可能としたため、組立工程を簡略化することができる。
【0075】
また、ジョイントコネクタ1は、フェライト収容室21,36をフェライトコア10a,10bが収容可能に形成したため、ノイズ除去性能が不要な場合には、フェライトコア10a,10bをフェライト収容室21,36に収容しないという選択をすることができる。このため、ノイズ除去性能が不要な汎用品のジョイントコネクタとして用いることができる。
【0076】
また、ジョイントコネクタ1は、ノイズ除去性能に応じてフェライトコア10が一段または二段で設けられているとともに、ノイズ除去性能に応じて前記フェライトコア10が複数の寸法に形成されているため、フェライトコア10の段数と寸法との組み合わせによって、多数のノイズ除去性能の組み合わせを形成することができる。よって、ノイズ除去性能を最適なものに適宜変更することができる。
【0077】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 ジョイントコネクタ
2 コネクタハウジング
3 端子金具
6 第一インナハウジング
7 第二インナハウジング
10 フェライトコア
10a 第一フェライトコア
10b 第二フェライトコア
21 第一フェライト収容室(フェライト収容室)
28 バスバ
29 針状端子部
36 第二フェライト収容室(フェライト収容室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズを除去するフェライトコアが設けられる端子金具と、前記端子金具が収容されるコネクタハウジングと、を備えたジョイントコネクタにおいて、
前記端子金具は、バスバと、前記バスバの長手方向に対して略直交する方向に延長されて設けられているとともに該バスバの前記長手方向に互いに間隔をあけて設けられている複数本の針状端子部と、を備え、
前記コネクタハウジングには、前記複数本の針状端子部のそれぞれに設けられる前記フェライトコアが収容可能に形成されたフェライト収容室が設けられ、かつ、
前記フェライト収容室が、前記複数本の針状端子部のそれぞれに沿って複数段で設けられていることを特徴とするジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記複数本の針状端子部のそれぞれには、ノイズ除去性能に応じて、前記フェライトコアが一段または二段で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記コネクタハウジングは、前記バスバが嵌入されて固定される第一インナハウジングと、前記複数本の針状端子部に挿通される第二インナハウジングと、前記第一インナハウジングと前記第二インナハウジングとを収容するアウタハウジングと、を備え、
前記フェライトコアは、第一フェライトコアと、第二フェライトコアと、を備え、
前記第一インナハウジングには、前記第一フェライトコアを収容可能に形成された第一フェライト収容室が設けられ、かつ、
前記第二インナハウジングには、前記第二フェライトコアを収容可能に形成された第二フェライト収容室が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記フェライトコアが、ノイズ除去性能に応じて複数の寸法に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のジョイントコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−25914(P2013−25914A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157465(P2011−157465)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】