説明

ジルコニア処理二酸化チタン顔料の製造のための改良された方法

ジルコニア処理二酸化チタン顔料の製造のための改良された方法であって、ジルコニア処理が、二酸化チタンの濾過ケーキまたはプレスケーキを流動体にした後それを乾燥させる工程において、炭酸アンモニウムジルコニル、水溶性アンモニウムジルコニルカルボキシラート、およびこれらの混合物から選択される1以上のアルカリ性水溶性ジルコニウム試薬を濾過ケーキまたはプレスケーキに添加することにより達成される方法が記載される。このようなジルコニウム試薬の水溶液はまた、二酸化チタン材料に対してジルコニア表面処理を施すのに有効であることに加えて、充分な希釈や過度のエネルギー要求なしに噴霧乾燥することができるジルコニア処理二酸化チタン顔料の高濃度固体分散物を形成するための有効な流動化剤でもあることが判明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニアを含む無機表面処理剤を含む二酸化チタン顔料の製造のための改良された方法に関する。本発明の顔料は、コーティング剤、プラスチック、および紙製品において有用である。
【背景技術】
【0002】
無機顔料は、コーティング剤、プラスチック、および紙製品の業界を含む多くの産業において、乳白剤および着色剤として用いられる。一般的に、このような用途における顔料の有効性は、顔料をどれほど均一に分散することができるかに因る。このため、顔料は一般的に、微細に分割された粉末の形態で取り扱われる。例えば、二酸化チタンは、最終製品に調合されると高い乳白度を付与するその能力のために、現在商業界において最も広く用いられる白色顔料であるが、一般的に、微細に分割された粉末の形態で取り扱われる。しかしながら、二酸化チタン粉末は、本来的にダストが多く(dusty)、特に調合、混合、および最終製品の製造の間において、不充分な粉体流れ特性をしばしば示す。既知の製造法によって、低ダスト性を有する流動性(free-flowing)粉末を得ることはできるが、これらの粉末は通常、乳白特性が低下する。
【0003】
このため、二酸化チタン顔料の表面を修飾するための化学的方法が、顔料の乳白度と流れ特性との所望のバランスを達成するために開発されてきた。例えば、当技術分野では、二酸化チタン顔料の濡れ特性および分散特性は、例えば四塩化チタンの気相酸化によって製造される二酸化チタン中間体の表面に、無機金属酸化物および/または金属水酸化物を付着させることにより改善できることが知られている。
【0004】
四塩化チタンの気相酸化のための方法および装置はよく知られており(例えば米国特許第3,208,866号、第3,512,219号、第5,840,112号、第6,207,131号、および第6,350,427号を参照のこと)、二酸化チタン中間体は通常、反応器を出た直後に冷却されて、固体の塊状の物質を生成し、その後さらに加工されて最終生成物をもたらす。通常、塊状の中間体のさらなる加工は、下記のステップを含む。
(1)例えばポリリン酸などの分散剤を用いて、中間体物質(または粗生成物)を水溶性媒質に分散させるステップ、
(2)得られるスラリーを湿式粉砕するステップ、
(3)上記湿式粉砕した二酸化チタンスラリーの粒子表面に、例えばシリカおよび/またはアルミナなどの1以上の無機酸化物を析出(precipitating)させるステップ、
(4)濾過することにより、無機酸化物処理された二酸化チタン顔料を水性スラリーから回収するステップ、
(5)濾過した生成物を洗浄して、残留する塩および不純物を除去するステップ、
(6)洗浄した濾過生成物を乾燥させるステップ、および
(7)流体エネルギーミルを用いて、乾燥顔料を乾式粉砕するステップ。
【0005】
ステップ(3)の無機酸化物の付着により、いくつかの所望される顔料の最終使用特性がもたらされ、一般的にはまた、顔料をさらに加工する際の改良点をもたらす。例えば、シリカは一般的に、着色された最終使用用途品において、紫外線の有害な作用に対する耐性を向上させるために添加され、一方アルミナは一般的に、濾過、乾燥、および流体エネルギーミルを用いた粉砕による円滑な加工を確実にするために、ならびに最終使用用途品における完成品顔料の分散特性を改善するために添加される。
【0006】
本発明に関してより詳細には、当技術分野において、最終顔料製品の光沢特性および耐久性をさらに改善するために、顔料中間体、詳細には二酸化チタンをジルコニウム化合物で化学的に処理することもまた知られている。ジルコニウム化合物がその既知の長所を付与する効率が高いことを考慮すれば、顔料の表面にジルコニアを付着させた顔料(二酸化チタンを含む)を改良する方法について記載する多くの特許が発行されてきたことは驚くことではない。
【0007】
米国特許第4,405,376号は例えば、二酸化チタン顔料を顔料の製造方法と共に開示しており、ここで顔料は、耐久性および分散性の改善を示し、顔料の二酸化チタンコア粒子と、スズおよびジルコニウムの含水酸化物からなる内部コーティングと、アルミニウムの含水酸化物からなる外部コーティングとを含む。
【0008】
米国特許第4,450,012号は、チタン、ジルコニウム、スズ、またはこれらの混合物の酸化物または含水酸化物からなる第1コーティングと、アルミニウムの酸化物または水酸化物からなる次のコーティングとを有するコーティングされた混合層ルチル顔料を開示し、ここで顔料は、酸触媒を用いて硬化されるラッカーに調製する際にフロキュレーションを防止する。
【0009】
米国特許第4,640,716号は、乾燥顔料を含む基体の光学特性を向上させるために、有害な量の結合剤が存在せず少なくとも充分な量のジルコニウムイオン源が存在することを含む条件下で、添加されるジルコニウムイオン源とクレイとを化合させることにより製造される、ジルコニウム処理された、か焼されていないカオリンクレイを含む顔料を特許請求している。好ましいジルコニウムイオン源は、炭酸ジルコニウムアンモニウムである。この顔料は、例えば高品質印刷用紙などの繊維織物基体に、平滑で不透明な表面仕上げを施すのに有用である。
【0010】
米国特許第4,759,800号は、酸化塩化チタン水溶液と、任意に、酸化物を形成する他の水溶性金属塩とを用いて二酸化チタン顔料を処理する後処理によって、ジルコニア処理された二酸化チタン顔料を改良する方法を教唆している。このようにして製造された顔料は、天候に対する耐性および光学特性の向上を示すと言われている。
【0011】
米国特許第5,203,916号は、充分な耐久性および優秀な光学特性を有し、粒子状二酸化チタンベースと、二酸化チタンベース上に付着された含水酸化ジルコニウム層と、含水酸化ジルコニウム層に付着された含水アルミナ層とから本質的に構成される、顔料のチタン複合体について記載している。この発明はまた、このような顔料の製造方法を特許請求している。
【0012】
米国特許第5,755,870号は、二酸化チタンをベースとする複合体の凝集顔料について記載し、これはまた、pH6.0〜10.5の範囲のスラリーにおいて水酸化ジルコニウム複合体剤を用いて二酸化チタンとか焼クレイとを凝集させることにより製造される、化学的に凝集された増量剤顔料複合体としても記載されている。顔料をスラリーから取り出して熱処理した後、顔料には優れた光学特性が備わっている。
【0013】
米国特許第5,814,143号は、オキシ水酸化ジルコニウム化学種を用いて表面修飾された合成アルカリ金属ケイ酸塩顔料、およびその製造方法を開示している。これらの組成物は、光学特性(特に紙製品において)および物理学的特性(特にゴム製品において)に関して、従来の合成アルカリ金属ケイ酸塩顔料を改良していると言われている。さらに、これらの表面修飾された顔料は、有用な増量剤、あるいは二酸化チタンまたは他の合成アルカリ金属もしくはクレイアルミノケイ酸塩顔料の代替となる顔料として示されている。
【0014】
米国特許第5,846,310号は、60nm未満のサイズを有する二酸化チタン、酸化第二鉄、または二酸化ジルコニウム粒子でコーティングされた、5〜500nmのサイズを有する球状の二酸化ケイ素粒子について記載している。コーティングされた粒子は、シランを用いて、またはさらに金属酸化物を用いて後処理コーティングすることができる。得られた製品は、着色塗料、印刷用インク、プラスチック、およびコーティング剤に用いられるか、または日焼け止め剤として用いられる。
【0015】
米国特許第5,976,237号は、塗料およびプラスチック用途品の両方において良好な光学特性、分散性、および化学安定性を有する、耐久性のある、コーティングされた無機顔料を開示しており、ここで顔料は、上記顔料がその等電点を通過する前に上記無機顔料に付着されるアルミナ、シリカ、またはこれらの混合物からなる第1コーティングと、上記顔料がその等電点を通過した後に上記第1コーティング上に付着されるジルコニア、酸化第二スズ、シリカ、チタニア、および酸化セリウム、ならびにこれらの混合物からなる群より選択される任意のコーティングと、上記第1コーティングおよび任意のコーティングの上に付着されるアルミナからなる最終コーティングとを含む。好ましい無機顔料は、二酸化チタンである。
【0016】
米国特許第6,200,375号は、高品質の屋外用塗料に用いるための、表面処理された二酸化チタン顔料に関する。上述の表面処理は、水酸化ジルコニウムまたはオキシ水酸化ジルコニウムの層、その次に、水酸化チタンまたはオキシ水酸化チタンの層、その次に、リン酸塩およびシリカの共沈澱物の層、最後に、オキシ水酸化アルミニウムの層を含む。これらの顔料はまた、プラスチックおよび紙ラミネートにも有用であると記載されている。
【0017】
米国特許第6,656,261 B2号は、光沢および/または耐久性が改善され、アルミナ、ジルコニア、および任意にリン酸塩化合物を含む、実質的に硫酸塩を含まない二酸化チタン顔料、ならびにこれらの顔料を製造する方法について記載している。これらの顔料は、塗料およびプラスチックの製造において有用である。この特許はまた、二酸化チタンを、まずアルミナ化合物で湿式処理してアルミナ層を形成するステップと、それに続いて、ジルコニア化合物で湿式処理してジルコニア層を形成するステップとを含む方法を特許請求しているが、予想される結果に関しては何も教唆していない。外側のジルコニア層について特許請求している点は、ジルコニア無機酸化物処理の使用について記載している、発明者らに知られている他の参考文献とは著しい対照をなし、ここで、ジルコニアの付着は中間ステップとしてのみ実施され、最後のアルミナ処理は、例えば塗料、プラスチック、および紙などに用いられる最新の成分に顔料を確実に適合させるために用いられている。
【0018】
米国特許出願第20060032402号は、良好な光学特性を有し、スズ、ジルコニウム、およびチタンからなる群より選択される金属イオンでドープ処理された多層高密度二酸化ケイ素膜を有し、2以上の高密度二酸化ケイ素層のうちの少なくとも1つがケイ素以外の金属原子を有意な量では含まない、天候に対する耐性を有する二酸化チタン顔料に関する。この顔料は、表面コーティング剤およびプラスチックにおける使用に特に適している。
【0019】
米国特許出願第20060034739号は、良好な光学特性を有し、天候に対する耐性を有する二酸化チタン顔料を生じる二酸化チタンの後処理のための方法であって、スズおよびジルコニウムの含水酸化物と共に、アルミニウム、ケイ素、およびチタンからなる群からの少なくとも1つの他の酸化物を、粒子表面上にさらに析出させる方法に関する。得られる顔料は、塗料、コーティング剤、およびプラスチックにおける使用に特に適している。
【0020】
ジルコニアが顔料表面に付着される条件、および特に二酸化チタン顔料に関して、完全に識別するのに充分な詳細が提供されている上記に引用された文献において、開示された方法は一般的に、例えば米国特許第4,405,376号、第4,450,012号、第5,203,916号、第6,200,375号、第6,656,261号、および米国特許出願公開公報第20060034739号に記載されているように、酸性条件下においてのみ一般的に水溶性であって、かつ、溶解すると通常酸性反応を示す市販のジルコニウム塩を充分に利用するために、ジルコニアが最初は酸性のpH条件下で付着される方法を記載している。したがって、ジルコニアの付着が主として低pHで規定されていることは驚くことではない。例えば米国特許第4,759,800号ならびに米国特許出願公開公報第20060032402号および第20060034739号のように、ジルコニア処理がアルカリ性顔料表面処理条件下で実施されることが教唆されている少数の場合においては、好ましいジルコニウム酸性塩をアルカリ性処理環境中に添加することから何らかの利益が得られるのかどうか、明らかではない。
【0021】
付着させたジルコニアによって二酸化チタン顔料に付与される既知の長所に関連する広範囲の先行技術を考慮して、また、二酸化チタン顔料のための改良されたジルコニア処理方法の開発に関連して既に文献に記載されたすべての研究および努力にもかかわらず、一般的に高いジルコニウム剤の原材料費を特に考慮して、さらなる改良が引き続いて求められている。上述の参考文献においてはいずれも、以下に詳細が記載される本発明によって達成された利点を予想するようなジルコニア処理顔料の製造方法については何も記載されていない。
【発明の概要】
【0022】
本発明は要約すると、アルカリ性条件下および二酸化チタン濾過ケーキ中間体の乾燥工程において付着が実施される、二酸化チタン中間体にジルコニアを付着させるための独自の方法を提供する。さらなる態様において、本発明はまた、上記顔料濾過ケーキ(またはプレスケーキ)の流動体化および効率の良い噴霧乾燥を実施するための改良された方法を提供する。
【0023】
本発明の改良方法は概して下記のステップを含む。
a)水中に二酸化チタン材料を含む混合物を作製するステップと、
b)上記混合物を湿式粉砕するステップと、
c)ステップb)の後任意に、アルミニウム、ホウ素、セリウム、リン、ケイ素、スズ、チタン、およびジルコニウムの酸化物から選択される1以上の無機酸化物を上記湿式粉砕した二酸化チタン材料に付着させるステップと、
d)ステップb)またはc)から得られるスラリーのpHを5〜9に調整して上記二酸化チタン材料を凝集(flocculate)させ、それにより、二酸化チタン材料が、減圧濾過または加圧濾過により回収することができるステップと、
e)ステップd)の後、減圧濾過または加圧濾過により上記混合物から上記二酸化チタン材料を回収するステップと、
f)ステップe)の後、上記二酸化チタン材料を洗浄するステップと、
g)ステップf)の後、炭酸アンモニウムジルコニル、および水溶性アンモニウムジルコニルカルボキシラート、ならびにこれらの混合物から選択される1以上のアルカリ性水溶性ジルコニウム試薬を添加することにより、上記洗浄した二酸化チタン材料を好ましくは高濃度固体流体分散物に変換するステップと、
h)ステップg)の後、分散物を乾燥させて、ジルコニア表面処理二酸化チタン顔料乾燥粉末を得るステップ。
【0024】
顔料粉末はその後任意に、当技術分野で知られているさらなる機能性添加物の存在下または非存在下において、流体エネルギーミルで後処理され、所望されるようにコーティング剤、紙製品、またはプラスチックに組み合わせるのに申し分なく適する乾燥顔料完成品を最終的に得ることができる。
【0025】
一般的に、あらゆる種類の二酸化チタン材料が、本発明に従って加工され得る。好ましいのは、ルチル二酸化チタン材料である。最も好ましいのは、気相酸化工程を用いて四塩化チタンから製造されたルチル二酸化チタンである。二酸化チタン材料はまた、気相酸化工程の間に四塩化チタンと共にルチル化補助剤として従来添加されてきた塩化アルミニウム由来のアルミナを一定量含むことができる。酸化工程中に形成される他の無機酸化物もまた、例えば粒子サイズの制御(例えば米国特許第3,856,929号、第5,201,949号、第5,922,120号、および第6,562,314号を参照のこと)などの様々な目的でいずれかの文献に記載または示唆されているように、当業者が酸化工程において他の酸化可能な無機物質を組み合わせることを望む程度に、存在して良い。好ましくは、このような「焼結(burned-in)」無機酸化物以外には、二酸化チタンは、本発明の方法に従ってこのように処理される前に他の無機酸化物で処理されていない。
【0026】
本発明の方法の湿式粉砕ステップで用いられるシステムは、ディスク型撹拌器、ケージ型撹拌器、または一般的に、当技術分野で通常用いられる任意の他の型の湿式粉砕システムであり得る。用いられる粉砕媒体は、砂、ガラスビーズ、アルミナビーズ、または一般的に、通常用いられる任意の他の粉砕媒体であり得る。粉砕媒体の個々の粒状物、粒子、またはビーズは、好ましくは、二酸化チタン分散物の形成に使用される水性スラリーよりも高密度である。
【0027】
湿式粉砕ステップの後に、二酸化チタンに無機酸化物を付着させる既知の方法のいずれかを用いて、無機コーティングを任意に適用することができる。適用される特定の無機酸化物およびその適用方法は重要ではなく、様々な可能性が当業者によく知られており、よって、この態様についてさらなる詳細な記述は必要でない。既知の無機酸化物処理プロトコールの例として、プラスチック最終使用用途品については米国特許第5,332,433号および第5,700,318号が、コーティング剤最終使用用途品については米国特許第5,203,916号および第5,976,237号が、無機処理プロトコールについて記載している。
【0028】
二酸化チタン分散物のpHはその後調製されて、二酸化チタン材料を凝集させる。好ましくは、このステップの間に充分な量の酸または塩基を分散物に添加し、分散物のpHを5〜9の範囲の値に調製する。最も好ましくは、分散物のpHは、このステップの間に少なくとも5.5で最大8の値に調製される。
【0029】
凝集した二酸化チタンはその後、減圧タイプの濾過システムまたは加圧タイプの濾過システムを用いて濾過され、洗浄される。この時点で、洗浄された通常は固体または半固体の二酸化チタン材料は、一般的には二酸化チタン固体含量が40〜70重量%であり、ブルックフィールド(Brookfield)粘度が10,000 cpsを超えるが、この固体または半固体の二酸化チタン材料は、アルカリ性水溶性ジルコニウム試薬の水溶液および/またはさらなる水を直接添加して混合することにより、流体分散物に変換される。1つの実施形態では、半固体材料は、さらなる水で二酸化チタン材料を実質的に希釈することなく、流体分散物に変換され、二酸化チタン固体含量は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、最も好ましくは少なくとも60%である。好ましくは、このような高濃度固体レベルによって特徴付けられるスラリーの粘度は、1000 cps未満となる。スラリーの粘度は、より好ましくは500 cps未満、最も好ましくは100 cps未満となる。
【0030】
アルカリ性水溶性ジルコニウム試薬は、炭酸アンモニウムジルコニルおよび水溶性アンモニウムジルコニルカルボキシラート(または所望されれば、これらの混合物)から選択され(水溶性アンモニウムジルコニルカルボキシラートの例には酢酸アンモニウムジルコニルおよびギ酸アンモニウムジルコニルが含まれる)、好ましくは、ジルコニウム試薬溶液の20〜50重量%の濃度で水に上記試薬を予め溶解した溶液として添加される。好ましくは、用いられる水溶性ジルコニウム試薬の量は、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.05〜1.5重量%に相当し、最も好ましくはジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.1〜0.5重量%に相当する。これらの好ましい条件下において、必要とするさらなる水が最小量である顔料濾過ケーキ中間体の流動体化と共に、顔料特性の最適バランスを達成することが通常可能である。
【0031】
結果として得られる二酸化チタンの水性分散物はその後、減圧乾燥、スピン-フラッシュ(spin-flash)乾燥、または噴霧乾燥を含む、当技術分野で知られている任意の方法を用いて乾燥され、二酸化チタン顔料の乾燥粉末を生成する。好ましい方法は噴霧乾燥である。このようにして製造された乾燥生成物は、例えば当技術分野で知られているさらなる機能性添加物の存在下または非存在下で蒸気微粒子化法を用いて、従来通り粉砕したりすりつぶしたりして、所望の最終粒子サイズ分布にすることができる。
【0032】
本発明の方法により製造される二酸化チタン顔料粉末は、コーティング剤、化粧品、および熱可塑性樹脂における使用に特に適している。
【0033】
下記の実施例は、本明細書に開示される発明の範囲を限定または制限することを意図することなく、本発明の特定の実施形態を説明する役割を果たす。特に指示がなければ、濃度および百分率は重量によるものである。
【実施例】
【0034】
実施例1および比較例1
その結晶格子に1.0%のアルミナを含む四塩化チタンの気相酸化から得られる粒子状二酸化チタン顔料中間体は、分散物のpHを少なくとも9.5に調整するために充分な量の水酸化ナトリウムと共に(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下、水中に分散させて、固体含量が35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンのスラリーは、ジルコン砂と顔料との重量比を4:1としてサンドミルで粉砕(sand milled)して、Microtrac XlOO 粒子サイズ分析器 (Microtrac Inc. Montgomeryville, PA)を用いて測定された90%を超える粒子が0.63ミクロン未満である体積平均粒子サイズが達成された。
【0035】
固体含量が30重量%に希釈された、得られたスラリーは、90℃に加熱された後、完成品顔料に対して計算された濃度が3.0重量%のシリカを250g/Lのケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2:Na2O)の形態で20分間に渡って添加することにより処理された。温度を90℃に維持しながら、25重量%の硫酸水溶液を用いて、スラリーのpHを徐々に55分間に渡って5.0まで減少させた。15分間の温浸(digestion)の後、25%硫酸水溶液の添加によりスラリーのpHを8.0〜8.5に維持しながら、完成品顔料に対して2.0重量%のアルミナを357g/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液として15分間に渡って添加した。
【0036】
分散物は、スラリーのpHを5.8に再調整して15分間90℃で平衡に達せさせ、その後熱いうちに濾過した。得られた濾過ケーキは、60℃に予め加熱してpHを7.0に予め調整しておいた、回収された顔料の重量と同じ量の水で洗浄した。
【0037】
洗浄された半固体濾過ケーキは続いて、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.1重量%に相当し、顔料に対して0.50重量%の45重量%炭酸アンモニウムジルコニル水溶液(20%活性ジルコニアに相当する)の存在下、撹拌しながら水に再分散させ、約57重量%の顔料を含む二酸化チタンスラリーを得た。得られた顔料分散物は、乾燥機の入口温度を約280℃に維持しながらAPV Nordic PSD52 噴霧乾燥機 (Invensys APV Silkeborg, Denmark)を用いて噴霧乾燥させ、顔料乾燥粉末を得た。顔料乾燥粉末はその後、顔料に対する蒸気の重量比を2.5とし、蒸気注入器の圧力を146 psiに、微粒子化器リング圧力を118 psiに設定して、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で蒸気微粒子化し、完成品顔料の調整を完了した。
【0038】
比較例として、上述したのと同じ方法を繰り返したが、但し、洗浄した半固体濾過ケーキに炭酸アンモニウムジルコニル試薬を添加することなしに行った。炭酸アンモニウムジルコニル試薬を省くことにより、噴霧乾燥するのに充分な流動性を達成するために必要とされる希釈度(水中の固体含量が35重量%)の半固体濾過ケーキを得たが、今度はこれに対応してサイクル時間が長く、エネルギーコストが高くなる結果となった。
【0039】
ジルコニウム試薬がうまく組み込まれたかを確認するために、PANalytical PW2404 分光計 (PANalytical B. V. Almelo, The Netherlands)を用いる既知のX線蛍光技術により、標準補正およびマトリックス補正に対して適切に補正を行って、本発明の実施例に従って製造された顔料のジルコニア含量を測定した。
【0040】
本発明に従って付着されたジルコニアの組み込みの均一度を判定するのを補助するために、米国特許第5,730,796号において参照および記載されているように、T. I. Brownbridge および J. R. Brand, "Photocatalytic Activity of Titanium Dioxide Pigment", Surface Coatings Australia, September 1990, p.6-11 (1990年9月に第32回 SCAA 年次総会, Perth, Wash.にて論文発表された。) に記載された技術を用いて、顔料の光触媒活性を測定した。この技術は、(1)40mlの分光器用等級イソプロパノール中に0.2gのTiO2を置くステップと、(2)TiO2/イソプロパノール組成物を紫外線に曝露するステップと、(3)試験組成物中のアセトンの生成を時間に対してモニターするステップと、(4)線形回帰分析により、試験組成物中のアセトン生成の線形速度を決定するステップと、(5)計算された速度の値を1000倍するステップとを含む。
【0041】
(高感度光触媒活性(すなわちHSPCA)勾配として報告される)結果として得られた値は、紫外線への曝露に対する顔料の光触媒反応に比例し、顔料製品の天候に対する加速劣化特性の評価をもたらす。小さい値を示すほど、顔料表面への効果的かつ均一なジルコニアの取り込みの結果として生じる二酸化チタン顔料の固有の光触媒活性をより大きく抑制することを示す。炭酸アンモニウムジルコニルによるジルコニアを含む本発明の実施例およびこの物質による処理を省いた比較例についての結果を表1に示す。
【表1】

【0042】
上述された詳細な記載およびデータは、先行技術の方法に対して新規の本発明の方法を明確に説明するものであり、本発明の方法によれば、顔料の乾燥もまた行いながら二酸化チタン顔料にジルコニアを付着させるものであり、顔料は、3.0%のシリカと2.0%のアルミナ(両方とも顔料に対する重量%で)からなる無機酸化物表面処理剤を、上述の2つの連続ステップにおいてその顔料に付着させている。ジルコニア処理と乾燥ステップとを組み合わせることにより、ならびに乾燥時間の短縮とエネルギー消費の低減とにより、製造効率の改善が達成される。得られる二酸化チタン顔料は、プラスチックおよびコーティング剤を含む最終使用物品ならびに組成物の製造において特に有用となる。
【0043】
実施例2および比較例2
1.0%の焼結アルミナを含む四塩化チタンの気相酸化から得られる粒子状二酸化チタン顔料中間体は、分散物のpHを少なくとも9.5に調整するために充分な量の水酸化ナトリウムと共に(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下、水中に分散させ、固体含量が35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリーは、ジルコン砂と顔料との重量比を4:1としてサンドミルで粉砕して、Microtrac XlOO 粒子サイズ分析器を用いて測定された90%を超える粒子が0.63ミクロン未満である体積平均粒子サイズが達成された。
【0044】
固体含量が30重量%に希釈された、得られたスラリーは、90℃に加熱された後、完成品顔料に対して計算された濃度が3.0重量%のシリカを250g/Lのケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2:Na2O)の形態で20分間に渡って添加することにより処理された。温度を90℃に維持しながら、25重量%の硫酸水溶液を用いて、スラリーのpHを徐々に55分間に渡って5.0まで減少させた。15分間の温浸の後、25%硫酸水溶液の添加によりスラリーのpHを8.0〜8.5に維持しながら、完成品顔料に対して2.0重量%のアルミナを357g/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液として15分間に渡って添加した。
【0045】
分散物は、スラリーのpHを5.8に再調整して15分間90℃で平衡に達せさせ、その後熱いうちに濾過した。得られた濾過ケーキは、60℃に予め加熱してpHを7.0に予め調整しておいた、回収された顔料の重量と同じ量の水で洗浄した。
【0046】
洗浄された半固体濾過ケーキは続いて、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.2重量%に相当し、顔料に対して1.0重量%の45重量%炭酸アンモニウムジルコニル水溶液(20%活性ジルコニアに相当する)の存在下、撹拌しながら最小量の水に再分散させ、約62重量%の顔料を含む二酸化チタンスラリーを得た。得られた顔料分散物は、乾燥機の入口温度を約280℃に維持しながらAPV Nordic PSD52 噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥させ、顔料乾燥粉末を得た。顔料乾燥粉末はその後、顔料に対する蒸気の重量比を2.5とし、蒸気注入器の圧力を146 psiに、微粒子化器リング圧力を118 psiに設定して、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で蒸気微粒子化し、完成品顔料の調整を完了した。
【0047】
比較例として、上述したのと同じ方法を繰り返したが、但し、洗浄した半固体濾過ケーキに炭酸アンモニウムジルコニル試薬を添加することなしに行った。炭酸アンモニウムジルコニル試薬を省くことにより、噴霧乾燥するのに充分な流動性を達成するために必要とされる希釈度(水中の固体含量が35重量%)の半固体濾過ケーキを得たが、今度はこれに対応してサイクル時間が長く、エネルギーコストが高くなる結果となった。
【0048】
本発明の実施例に従って製造された顔料は、実施例1に記載されたように、そのジルコニア含量について試験され、本発明の顔料および比較例の顔料は両方とも、これもまた実施例1に記載されたように、光触媒活性について試験された。結果を表2に示す。
【表2】

【0049】
実施例2は、新規の本発明の方法についてさらに説明しており、ここで、ジルコニアは、顔料の乾燥もまた行う工程において二酸化チタン顔料に付着させるものであり、当該顔料は、3.0%のシリカと2.0%のアルミナ(両方とも顔料に対する重量%で)からなる無機酸化物表面処理剤を、上述の2つの連続ステップにおいてその顔料に付着させている。ジルコニア処理と乾燥ステップとを組み合わせることにより、ならびに乾燥時間の短縮とエネルギー消費の低減とにより、製造効率の改善が達成される。得られる二酸化チタン顔料は、プラスチックおよびコーティング剤を含む最終使用物品ならびに組成物の製造において特に有用となる。
【0050】
実施例3および比較例3
1.0%の焼結アルミナを含む四塩化チタンの気相酸化から得られる粒子状二酸化チタン顔料中間体は、分散物のpHを少なくとも9.5に調整するために充分な量の水酸化ナトリウムと共に(顔料に対して)0.15重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下、水中に分散させ、固体含量が35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリーは、ジルコン砂と顔料との重量比を4:1としてサンドミルで粉砕して、Microtrac XlOO 粒子サイズ分析器を用いて測定された90%を超える粒子が0.63ミクロン未満である体積平均粒子サイズが達成された。
【0051】
固体含量が30重量%に希釈された、得られたスラリーは、90℃に加熱された後、完成品顔料に対して計算された濃度が3.0重量%のシリカを250g/Lのケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2:Na2O)の形態で20分間に渡って添加することにより処理された。温度を90℃に維持しながら、25重量%の硫酸水溶液を用いて、スラリーのpHを徐々に55分間に渡って5.0まで減少させた。15分間の温浸の後、25%硫酸水溶液の同時添加によりスラリーのpHを8.0〜8.5に維持しながら、完成品顔料に対して2.0重量%のアルミナを357g/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液として15分間に渡って添加した。
【0052】
分散物は、スラリーのpHを5.8に再調整して15分間90℃で平衡に達せさせ、その後熱いうちに濾過した。得られた濾過ケーキは、60℃に予め加熱してpHを7.0に予め調整しておいた、回収された顔料の重量と同じ量の水で洗浄した。
【0053】
洗浄された半固体濾過ケーキは続いて、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.5重量%に相当し、顔料に対して2.5重量%の45重量%炭酸アンモニウムジルコニル水溶液(20%活性ジルコニアに相当する)の存在下、撹拌しながら再分散させ、約63重量%の顔料を含む二酸化チタンスラリーを得た。得られた顔料分散物は、乾燥機の入口温度を約280℃に維持しながらAPV Nordic PSD52 噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥させ、顔料乾燥粉末を得た。顔料乾燥粉末はその後、顔料に対する蒸気の重量比を2.5とし、蒸気注入器の圧力を146 psiに、微粒子化器リング圧力を118 psiに設定して、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンの存在下で蒸気微粒子化し、完成品顔料の調整を完了した。
【0054】
比較例として、上述したのと同じ方法を繰り返したが、但し、洗浄した半固体濾過ケーキに炭酸アンモニウムジルコニル試薬を添加することなしに行った。この比較例においては、噴霧乾燥するのに充分な流動性を達成するために、水中の固体含量が35重量%となるように半固体濾過ケーキを希釈することが必要であったが、今度はサイクル時間が長く、エネルギーコストが高くなる結果となった。
【0055】
本発明の実施例に従って製造された顔料は、実施例1に記載されたように、そのジルコニア含量について試験され、本発明の顔料および比較例の顔料は両方とも、これもまた実施例1に記載されたように、光触媒活性について試験された。結果を表3に示す。
【表3】

【0056】
実施例3は、新規の本発明の方法についてさらにまた説明しており、ここで、ジルコニアは、顔料の乾燥を行う工程において二酸化チタン顔料に付着させるものであり、当該顔料は、3.0%のシリカと2.0%のアルミナ(両方とも顔料に対する重量%で)からなる無機酸化物表面処理剤を、上述の2つの連続ステップにおいてその顔料に付着させている。ジルコニア処理と乾燥ステップとを組み合わせることにより、ならびに乾燥時間の短縮とエネルギー消費の低減とにより、製造効率の改善が達成される。得られる二酸化チタン顔料は、プラスチックおよびコーティング剤を含む最終使用物品ならびに組成物の製造において特に有用となる。
【0057】
実施例4および比較例4
0.6%のアルミナをその結晶格子中に含む四塩化チタンの気相酸化から得られる粒子状二酸化チタン顔料中間体は、分散物のpHを少なくとも9.5に調整するために充分な量の水酸化ナトリウムと共に(顔料に対して)0.18重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下、水中に分散させ、固体含量が35重量%の水性分散物を得た。
【0058】
得られた二酸化チタンスラリーは、ジルコン砂と顔料との重量比を4:1としてサンドミルで粉砕して、Microtrac XlOO 粒子サイズ分析器を用いて測定された90%を超える粒子が0.63ミクロン未満である体積平均粒子サイズが達成された。スラリーを50℃に加熱し、濃硫酸を用いてpHを約5.0に酸性化した後、200g/Lのオルト硫酸ジルコニウム水溶液として5分間に渡って急速に添加することにより0.25%ジルコニアで処理した。オルト硫酸ジルコニウムを添加した後、スラリーを50℃に維持し、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを8.0に調整した後、357g/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液として15分間に渡り添加することにより2.8%アルミナで処理した。アルミン酸ナトリウム溶液を添加している間、硫酸の添加によりスラリーのpHを8.0〜8.5に維持し、その後50℃でさらに15分間温浸した。分散物をその後、熱いうちに濾過した。
【0059】
得られた濾過ケーキを、60℃に予め加熱してpHを7.0に予め調整した、回収された顔料の重量に等しい量の水で洗浄した。洗浄した濾過ケーキは続いて、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンと、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.2重量%に相当し、顔料に対して1.0重量%の45重量%炭酸アンモニウムジルコニル水溶液(20%活性ジルコニアに相当する)との存在下、撹拌しながら水中に再分散させ、約35重量%の顔料を含む二酸化チタンスラリーを得た。
【0060】
得られた顔料分散物は、乾燥機の入口温度を約280℃に維持しながらAPV Nordic PSD52 噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥させ、顔料乾燥粉末を得た。顔料乾燥粉末はその後、顔料に対する蒸気の重量比を2.5とし、蒸気注入器の圧力を146 psiに、微粒子化器リング圧力を118 psiに設定して蒸気微粒子化し、完成品顔料の調整を完了した。
【0061】
比較例として、上述したのと同じ方法を繰り返したが、但し、洗浄した半固体濾過ケーキに炭酸アンモニウムジルコニル試薬を添加することなしに行った。
【0062】
本発明の実施例に従って製造された顔料および比較例の顔料は、実施例1に記載されたように、そのジルコニア含量および光触媒活性について試験された。結果を表4に示す。
【表4】

【0063】
実施例4は、新規の本発明の方法についてさらにまた説明しており、ここで、ジルコニアは、顔料の乾燥を行う工程において二酸化チタン顔料に付着させるものであり、顔料は、0.25%のジルコニアと2.8%のアルミナ(両方とも顔料に対する重量%で)からなる無機酸化物表面処理剤を、上述の2つの連続ステップにおいてその顔料に付着させている。第2のジルコニア処理と乾燥ステップとを組み合わせることにより、製造効率の改善が達成される。得られる二酸化チタン顔料は、コーティング剤の製造において特に有用となる。
【0064】
実施例5および比較例5
1.5%のアルミナをその結晶格子中に含む四塩化チタンの気相酸化から得られる粒子状二酸化チタン顔料中間体は、分散物のpHを少なくとも9.5に調整するために充分な量の水酸化ナトリウムと共に(顔料に対して)0.18重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下、水中に分散させ、固体含量が35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリーは、ジルコン砂と顔料との重量比を4:1としてサンドミルで粉砕して、Microtrac XlOO 粒子サイズ分析器を用いて測定された90%を超える粒子が0.63ミクロン未満である体積平均粒子サイズが達成された。
【0065】
固体含量が30重量%に希釈された、得られたスラリーは、60℃に加熱され、濃硫酸を用いてpH2.0に酸性化された後、60℃で30分間温浸した。この後、20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、顔料スラリーのpHを6.2に調整し、その後60℃でさらに30分間温浸し、必要あればpHを最終的に6.2に再調整した。この時点で、分散物を熱いうちに濾過した。
【0066】
得られた濾過ケーキを、60℃に予め加熱してpHを7.0に予め調整した、回収された顔料の重量に等しい量の水で洗浄した。洗浄した濾過ケーキは続いて、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンと、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.2重量%に相当し、顔料に対して1.0重量%の45重量%炭酸アンモニウムジルコニル水溶液(20%活性ジルコニアに相当する)との存在下、撹拌しながら水中に再分散させ、約35重量%の顔料を含む二酸化チタンスラリーを得た。得られた顔料分散物は、乾燥機の入口温度を約280℃に維持しながらAPV Nordic PSD52 噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥させ、顔料乾燥粉末を得た。顔料乾燥粉末はその後、顔料に対する蒸気の重量比を2.5とし、蒸気注入器の圧力を146 psiに、微粒子化器リング圧力を118 psiに設定して蒸気微粒子化し、完成品顔料の調整を完了した。
【0067】
比較例として、上述したのと同じ方法を繰り返したが、但し、洗浄した半固体濾過ケーキに炭酸アンモニウムジルコニル試薬を添加することなしに行った。
【0068】
本発明の実施例に従って製造された顔料は、実施例1に記載されたように、そのジルコニア含量について試験され、両方の顔料は、これもまた実施例1に記載されたように、光触媒活性について試験された。結果を表5に示す。
【表5】

【0069】
実施例5は、新規の本発明の方法についてさらに説明しており、ここで、ジルコニアは、顔料の乾燥を行う工程において二酸化チタン顔料に付着させるものであるが、しかしながら、この実施例のジルコニア処理は、顔料中間体に適用される無機酸化物の湿式処理のみである。ジルコニア処理と乾燥ステップとを組み合わせることにより、製造効率の改善がまた達成される。得られる二酸化チタン顔料は、着色されたプラスチックを含む最終使用物品および組成物の製造において特に有用となる。
【0070】
実施例6および比較例6
0.8%のアルミナをその結晶格子中に含む四塩化チタンの気相酸化から得られる粒子状二酸化チタン顔料中間体は、分散物のpHを少なくとも9.5に調整するために充分な量の水酸化ナトリウムと共に(顔料に対して)0.18重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム分散剤の存在下、水中に分散させ、固体含量が35重量%の水性分散物を得た。得られた二酸化チタンスラリーは、ジルコン砂と顔料との重量比を4:1としてサンドミルで粉砕して、Microtrac XlOO 粒子サイズ分析器を用いて測定された90%を超える粒子が0.63ミクロン未満である体積平均粒子サイズが達成された。
【0071】
固体含量が30重量%に希釈された、得られたスラリーは、60℃に加熱され、濃硫酸を用いてpH2.0に酸性化された後、357g/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液として添加することにより、二酸化チタンに対して1%のアルミナで処理した。アルミン酸ナトリウム水溶液を添加している間、さらなる硫酸の添加によりスラリーのpHを8.0〜8.5に維持し、その後60℃で15分間温浸した。この後、さらなる硫酸の添加により、スラリーのpHを6.2に調整し、その後60℃でさらに15分間温浸した後、スラリーのpHを最終的に6.2に調整した。分散物は、熱いうちに濾過した。
【0072】
得られた濾過ケーキは、回収された顔料の重量に等しい量の60℃でpH7.0の水で洗浄した。洗浄した半固体濾過ケーキは続いて、顔料に対して0.35重量%のトリメチロールプロパンと、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.2重量%に相当し、顔料に対して1.0重量%の45重量%炭酸アンモニウムジルコニル水溶液(20%活性ジルコニアに相当する)との存在下、撹拌しながら水中に再分散させ、約35重量%の顔料を含む二酸化チタンスラリーを得た。得られた顔料分散物は、乾燥機の入口温度を約280℃に維持しながらAPV Nordic PSD52 噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥させ、顔料乾燥粉末を得た。顔料乾燥粉末はその後、顔料に対する蒸気の重量比を2.5とし、蒸気注入器の圧力を146 psiに、微粒子化器リング圧力を118 psiに設定して蒸気微粒子化し、完成品顔料の調整を完了した。
【0073】
比較例として、上述したのと同じ方法を繰り返したが、但し、洗浄した半固体濾過ケーキに炭酸アンモニウムジルコニル試薬を添加することなしに行った。
【0074】
本発明の実施例の顔料はそのジルコニア含量について、両方の顔料は光触媒活性について、いずれも実施例1に記載されたように試験された。結果を表6に示す。
【表6】

【0075】
実施例6は、新規の本発明の方法についてさらにまた説明しており、ここで、ジルコニアは、顔料の乾燥を行う工程において二酸化チタン顔料に付着させるものであり、顔料は、1.0%のアルミナ(顔料に対する重量%で)からなる無機酸化物表面処理剤を、上述の1つのステップにおいてその顔料に付着させている。ジルコニア処理と乾燥ステップとを組み合わせることにより、製造効率の改善が達成される。得られる二酸化チタン顔料は、着色されたプラスチックを含む最終使用物品および組成物の製造において特に有用となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水中に二酸化チタン材料を含む混合物を作製するステップと、
b)前記混合物を湿式粉砕するステップと、
c)ステップb)の後任意に、アルミニウム、ホウ素、セリウム、リン、ケイ素、スズ、チタン、およびジルコニウムの酸化物から選択される1以上の無機酸化物を前記湿式粉砕した二酸化チタン材料に付着させるステップと、
d)ステップb)またはc)から得られるスラリーのpHを5〜9に調整して、それにより、二酸化チタン材料が、減圧濾過または加圧濾過により回収することができる程度に充分に凝集するステップと、
e)減圧濾過または加圧濾過により前記混合物から前記二酸化チタン材料を回収するステップと、
f)濾過により回収された二酸化チタン材料を洗浄するステップと、
g)炭酸アンモニウムジルコニル、水溶性アンモニウムジルコニルカルボキシラート、およびこれらの混合物から選択される1以上のアルカリ性水溶性ジルコニウム試薬を添加することにより、前記洗浄した二酸化チタン材料を流体分散物に変換するステップと、
h)分散物を乾燥させて、ジルコニア表面処理二酸化チタン乾燥粉末を得るステップ
とを含む、ジルコニア処理二酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
前記二酸化チタン材料が、気相酸化工程を用いて四塩化チタンから製造されるルチル二酸化チタン中間体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
処理される二酸化チタン材料が結晶格子を有し、かつ、任意のステップc)またはステップg)の前において、気相酸化工程における二酸化チタン中間体の前記結晶格子中に形成される任意の無機酸化物以外の無機酸化物が、前記二酸化チタン材料に実質的に付着していないことをさらなる特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1以上のアルカリ性水溶性ジルコニウム試薬を添加した後に、得られる流体分散物が、少なくとも50重量%の二酸化チタン固体含量によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記得られる流体分散物が、少なくとも55重量%の二酸化チタン固体含量によって特徴付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記得られる流体分散物が、少なくとも60重量%の二酸化チタン固体含量によって特徴付けられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1以上のアルカリ性水溶性ジルコニウム試薬が、炭酸アンモニウムジルコニル、酢酸アンモニウムジルコニル、ギ酸アンモニウムジルコニル、およびこれらのいずれかの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上のアルカリ性水溶性ジルコニウム試薬が、1以上のジルコニウム試薬が20〜50%の濃度で存在する水溶液の形態で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
使用される水溶性ジルコニウム試薬の量が、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.05〜1.5重量%に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
使用される水溶性ジルコニウム試薬の量が、ジルコニアを付着させた完成品顔料に対して0.1〜0.5重量%に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
乾燥ステップが、分散物の噴霧乾燥によって実施される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−510349(P2010−510349A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537146(P2009−537146)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/022059
【国際公開番号】WO2008/063326
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(500002799)トロノックス エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】