説明

スイッチスペーサ及び電気機器

【課題】第1の電子基板と第2の電子基板とをスイッチスペーサにより対面間隔をもって連結させた場合において、落下衝撃で第2の電子基板が脱落することを十分に防止することができるスイッチスペーサおよび電気機器を提供する。
【解決手段】スイッチスペーサ1を、基板面にスイッチを配した表示操作基板102に取付けられるフレーム部2に、スイッチ104に対向するスペーサ部7と、表示操作基板102に対面する制御基板103に向けて延びる爪脚部9a、9b、9cとを設け、爪脚部9a、9b、9cは制御基板103の基板面に設けた角穴110に爪係合した状態で表示操作基板102と制御基板103とを対面間隔を保って連結し、制御基板103に向けて延びる弾性脚部12a、12bを設け、この弾性脚部12a、12bと係合状態の爪脚部9a、9bとにより制御基板103を爪係合方向に挟むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器等の調理器その他の電気機器に備わるスイッチのスイッチスペーサ及びそのスイッチスペーサを用いた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用者が機器の外部からスイッチを操作することにより各種の制御を行わせる電気機器(例えば、炊飯器)においては、電子基板にタクトスイッチ等の小型スイッチや発光素子をそれぞれ所要数取付けた表示操作部と、マイコンを始めとする各種制御素子を取付けた制御部とが設けられ、その表示操作部のスイッチを操作パネルの表面から押圧操作するために、操作パネルと電子基板の間にスイッチスペーサが介在される。
【0003】
このように多数の電子部品を1枚の電子基板に実装すると機器内に設置スペースを確保するのが困難になる。そこで、従来から、電子基板の小面積化を図るため、スイッチスペーサにより複数枚の電子基板を対面状態に連結させる場合があった(特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のスイッチスペーサは、第1の電子基板に係合する取付け脚を設けたフレームに、第1の電子基板上のスイッチに対向するスペーサ部を設け、上記フレームに第2の電子基板との連結部を設けたものである。
【0005】
上記の連結部は、上記の取付け脚と同方向に突き出した連結脚により形成されており、その先端部は、第2の電子基板側を貫通してその電子基板に係合する爪状に形成されている。先端部と第2の電子基板とが係合されると、上記2枚の電子基板は、連結脚により一定間隔に保持され、互いの基板面が対面した状態に連結される。
【0006】
【特許文献1】特開2001−198006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようなスイッチスペーサは、電気機器が強い勢いで床等に衝突した場合、第1の電子基板が機器に対して固定されているのに対して、これと連結脚で中空に保持された第2の電子基板は、機器内に伝わった衝撃により瞬間的に強く揺れることがある。この際、爪係合が瞬間的に緩んで連結脚と第2の電子基板との係合が外れる可能性があった。このような状態になると、第2の電子基板が脱落して第1の電子基板と接触したり、他の部材に接触したりする恐れがある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、第1の電子基板と第2の電子基板とをスイッチスペーサにより対面間隔をもって連結させた場合において、落下衝撃で第2の電子基板が脱落することを十分に防止することができるスイッチスペーサおよび電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する手段ため、基板面にスイッチを配した第1の電子基板に取付けられるフレーム部を有し、このフレーム部に、上記スイッチに対向するスペーサ部と、上記第1の電子基板に対面する第2の電子基板に向けて延びる爪脚部とを設け、この爪脚部は、上記第2の電子基板の基板面に設けた係合穴に爪係合した状態で、上記第1の電子基板と上記第2の電子基板とを対面間隔を保って連結するスイッチスペーサにおいて、この発明に係るスイッチスペーサは、上記第2の電子基板に向けて延びる弾性脚部を設け、この弾性脚部と係合状態の爪脚部とにより上記第2の電子基板を爪係合方向に挟むように構成される。
【0010】
この発明の構成によれば、衝撃により第2の電子基板が爪係合の解除方向に揺れた場合でも、弾性脚部と係合状態の爪脚部とにより上記第2の電子基板を爪係合方向に挟むため、係合解除が防止される。
【0011】
ここで、弾性脚部は、係合穴から爪係合方向に向けた延長線上において第2の電子基板を挟む態様のものに限定されない。この態様によれば、最も効果的に係合解除が防止されるが、スイッチスペーサには、爪脚部と弾性脚部とが同一線上において対向することになる。ところが、弾性脚部と爪脚部は第2の電子基板を弾性締め付けにより挟むため、爪脚部ないし弾性脚部間の爪係合方向における間隔は、爪係合前のときの方が爪係合状態のときよりも狭い。したがって、この態様では、爪脚部を係合穴に挿入する際、爪脚部ないし弾性脚部を爪係合解除ないし爪係合方向に比較的大きく曲げなければならず、前記の挿入を行い難い。
【0012】
そこで、上記弾性脚部が、上記第2の電子基板の周方向において上記爪脚部とずれ合った状態でこの第2の電子基板を挟む構成を採用すれば、上記の係合解除の防止を奏しながら、上記の両脚部が同一直線上で対向しない分、爪脚部を係合穴に挿入し易くなる。ここで、第2の電子基板に直辺部を設け、この直辺部の法線上に係合穴を配すれば、上記弾性脚部が、上記第2の電子基板の周方向において上記爪脚部とずれ合った状態であっても、上記弾性脚部と第2の電子基板との接触が安定するため、上記の挟み状態の安定を図ることができる。
【0013】
また、この発明に係るスイッチスペーサを備え、上記第1の電子基板を上記第2の電子基板との対面方向に支持する取付け部が機器内に設けられており、この取付け部に上記第1の電子基板が装着されている電気機器は、上記弾性脚部により第2の電子基板の脱落が十分に防止されるものとなる。
【発明の効果】
【0014】
以上に述べたように、この発明によれば、第1の電子基板と第2の電子基板とをスイッチスペーサにより対面間隔をもって連結させた場合において、落下衝撃で第2の電子基板が脱落することを十分に防止することができるスイッチスペーサおよび電気機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明に係るスイッチスペーサおよび電気機器の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る電気機器のスイッチスペーサ部分を抜粋し、前方右斜め上から見た様子を示す。図2は、実施形態に係る電気機器の外観を前方右斜め上方から見た様子を示す。
【0016】
図1、図2に示すように、電気機器100は、電気炊飯器として構成されている。一方、スイッチスペーサ1は、電気機器100の操作パネル101の下方に配置された表示操作基板102(第1の電子基板)に備えられており、表示操作基板102と、これと対面する制御基板103(第2の電子基板)とを対面間隔を保って連結している。
【0017】
図3(a)は、スイッチスペーサ1の上面視を図示すると共に、これと同倍率により表示操作基板102および制御基板103の上面視における外形を2点鎖線で描いた様子を示し、図3(b)は、(a)図の後面視を示す。図4は、電気機器100のスイッチスペーサ1付近を図3(a)のIV−IV線に沿って切断し、矢視した様子を拡大して示す。図5は、スイッチスペーサ1と表示操作基板102とを抜粋し、スイッチスペーサ1を表示操作基板102から取り外した状態を後方左斜め下から見た様子を示す。
【0018】
図3に示すように、表示操作基板102と制御基板103の各外周形状は、上面視において、後端縁b2、b3が直辺状を呈し、側端縁s2、s3が後端縁両端より前方側に向けて平行し、両側端縁間を結ぶ前端縁f2、f3が複数の直辺部により略弓形を呈するように設けられている。両基板102、103の大きさは、両者の後端縁を重ねた場合に、その後端縁以外の部分で制御基板103が表示操作基板102の周りからはみ出すように形成されている。
【0019】
表示操作基板102は、図1に示すように、その上面側の基板面にタクトスイッチ等からなる複数のスイッチ104、発光素子105(図7参照)等が配されている。これらの部品は下面側の基板面においてプリント配線されている。また、制御基板103も基板面に各種の電子素子106が取付けられており、プリント配線がなされている。両基板102、103は、フラットケーブル107により電気的に接続されている。
【0020】
また、表示操作基板102の上面側の基板面には、操作パネル101にエンボス成形された操作ボタン部108の動きをスイッチ104に伝達するスイッチスペーサ1が取付けられている。
【0021】
スイッチスペーサ1は、図1、図4、図5に示すように、弓形棒状のフレーム部2を有する。フレーム部2の下面には、係止部付きの取付け脚3及び位置決め用の突起4がそれぞれ複数設けられている。これらの取付け脚3及び突起4は、表示操作基板102に対応して設けられた挿入孔109a、109bに係合される。
【0022】
また、フレーム部2には、ねじ止め用スリーブ5と、片持ち式の弾性アーム6とが複数設けられている。各弾性アーム6の先端はスペーサ部7となっている。スペーサ部7は表示操作基板102のスイッチ104に対向する位置に設けられている。さらに、フレーム部2には発光素子カバー8が表示操作基板102の発光素子105に対向して設けられている。各スペーサ部7は各スイッチ104に接近し、また発光素子105は発光素子カバー8の内側に挿入されている。
【0023】
フレーム部2の3か所には、制御基板103に向けて延びる爪脚部9a、9b、9cが設けられている。各爪脚部9a、9b、9cは、取付け脚3よりも下方に延び、その下端部10は爪形状となっている。また、各爪脚部9a、9b、9cは、爪形状と逆側に突出する間隔保持リブ11を有する。この間隔保持リブ11と下端部10との間隔gは、制御基板103の厚さと等しいか若干大きく形成されている。
【0024】
一方、制御基板103には、各爪脚部9a、9b、9cに対応した3か所の係合用の角穴110が設けられている。爪脚部9は、表示操作基板102の前端縁f2越しに突き出されており、各爪脚部9a、9b、9cの下端部10が対応する角穴110に爪係合されている。この状態で、各間隔保持リブ11は、制御基板103の基板面に軽く当たり、表示操作基板102と制御基板103との対面間隔を保つ。これにより、両基板102、103がスイッチスペーサ1の各爪脚部9a、9b、9cにより連結された状態となっている。
【0025】
さらに、フレーム部2の外側面には、表示操作基板102の前端縁f2越しに制御基板103に向けて延びる弾性脚部12a、12bが設けられている。各弾性脚部12a、12bは、爪脚部9a、9bの側方から爪脚部9a、9bに沿うようにして制御基板103の前端縁f3よりも下方まで突き出されている。これにより、各弾性脚部12a、12bは、係合状態の各爪脚部9a、9bに対して制御基板103の周方向においてずれ合った状態で前端縁f3に外掛かりするようになっている。また、各弾性脚部12a、12bは、自然状態で制御基板103の前端縁f3よりも内方に入り込むように緩やかに湾曲されており、各爪脚部9a、9bないし各弾性脚部12a、12b間の爪係合方向Cにおける間隔は、爪係合前の状態において、角穴110を通る前端縁f3の法線長さよりも短く設けられている。これにより、各弾性脚部12a、12bは上記の外掛かり状態で内向きの弾性締付け力を奏し、係合状態の各爪脚部9a、9bと共に制御基板103を爪係合方向Cに挟むようになっている。
【0026】
なお、スイッチスペーサ1は、爪脚部9a、9b、9cと弾性脚部12a、12bが要する弾性を満足させる樹脂からなる一体成形品である。
【0027】
次に、上記のスイッチスペーサ1、表示操作基板102及び制御基板103の取付けについて説明する。図6は、電気機器100の組立作業において、表示操作基板102及び制御基板103を取付ける段階を前方右斜め上から見た様子を示し、図7(a)は、電気機器100のスイッチスペーサ1付近を図3(a)のVII−VII線に沿って切断し、矢視した様子を拡大して示し、(b)図は、(a)図のb−b線に沿って切断し、矢視した様子を縮小して示す。
【0028】
図6、図7に示すように、電気炊飯器100の肩部111の内壁面には、表示操作基板102を制御基板103との対面方向Aに支持する取付け部112が設けられている。この取付け部112は、肩部111の内壁面両側の面に設けられた対向一対の位置決め部113a、113aと、操作パネル101の貼付け部分の裏側に設けられた一対のねじ止め用ボス114、114とからなる。また、位置決め部113a、113aの下方には、対面方向Aにおいて表示操作基板102及び制御基板103間の対面間隔に対応させて、位置決め部113a、113aと同様の位置決め部113b、113bが設けられている。
【0029】
上記取付け部112への表示操作基板102の取付けは次の通りである。先ず、取付け脚3及び突起4を表示操作基板102の挿入孔109a、109bに係合してスイッチスペーサ1を表示操作基板102に取付ける。次に、スイッチスペーサ1側を操作パネル101側に向けた状態で表示操作基板102の側端縁s2を位置決め部113a、113aのテーパ面に押し込むようにしてここを通過させる。次に、ねじ止め用ボス114、114をスイッチスペーサ1のねじ止め用スリーブ5の一端と突き合わせ、表示操作基板102の下面側から挿入したビス115をねじ止め用ボス114に螺入させると、表示操作基板102は取付け部112に装着された状態になる。この状態で、上記の各スペーサ部7、肩部111に設けた所要の穴116を通り、操作パネル101の操作ボタン部108の下面に接触する。また、発光素子カバー8は、他の穴116の下方に臨む。
【0030】
表示操作基板102の装着後、制御基板103を、表示操作基板102に対してフラットケーブル107で折り返すようにしながら上記と同様にして位置決め部113b、113bを通過させ、表示操作基板102と対面状態にさせる。そして、弾性脚部12a、12bを少し外側へ曲げながら弾性脚部12a、12bを制御基板103の前端縁f3に掛け、各爪脚部9a、9b、9cの下端部10を制御基板103の角穴110に挿入して制御基板103に爪係合させる(図1参照)。これにより、間隔保持部11が制御基板103に当たり、表示操作基板102と制御基板103とは、スイッチスペーサ1により相互に対面間隔を保つように連結され、操作パネル101の下方に配置された状態になる。
【0031】
その後、図1に示すように、制御基板103の各端子117に蓋118側へのリード線119等を接続させる(図8(a)〜(c)参照)。このリード線119は、機器内部空間を通して肩ヒンジ部120に導かれており、ヒンジピン121よりも上方に形成された肩ヒンジ部120のリード掛部122に通される。このリード掛部122は、フック状に設けられており、リード線119は、引掛け部122により束ねられた状態で蓋118内に至っている。これにより、蓋118の開閉時、リード線119がヒンジピン121の上方においてヒンジばね123に噛み込まれることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係るスイッチスペーサの全体斜視図。
【図2】実施形態に係る電気機器の全体斜視図。
【図3】(a)同上のスイッチスペーサの上面図、(b)(a)図の後面図。
【図4】図2のスイッチスペーサ付近を図3(a)のIV−IV線に沿って切断した断面の部分拡大縦断側面図。
【図5】同上のスイッチスペーサの分解斜視図。
【図6】同上の電気機器の表示操作基板の取付け段階の組立図。
【図7】(a)図2のスイッチスペーサ付近を図3(a)のVII−VII線に沿って切断した断面の部分拡大縦断側面図、(b)(a)図のb−b線の断面矢視図。
【図8】(a)同上の電気機器の肩ヒンジ部を一部切欠いて示す後方斜視図、(b)(a)図のリード掛部の拡大上面図、(b)(a)図のリード掛部の拡大後面図。
【符号の説明】
【0033】
1 スイッチスペーサ
2 フレーム
3 取付け脚
4 突起
5 ねじ止め用スリーブ
6 弾性アーム
7 スペーサ部
8 発光素子カバー
9a、9b、9c 爪脚部
10 下端部
11 間隔保持リブ
12a、12b 弾性脚部
100 電気機器
101 操作パネル
102 表示操作基板
103 制御基板
104 スイッチ
105 発光素子
106 電子素子
107 フラットケーブル
108 操作ボタン部
109a、109b 挿入孔
110 角穴
111 肩部
112 取付け部
113a、113b 位置決め部
114 ねじ止め用ボス
115 ビス
116 穴
117 端子
118 蓋
119 リード線
120 肩ヒンジ部
121 ヒンジピン
122 リード掛部
123 ヒンジばね
b2、b3 後端縁
s2、s3 側端縁
f2、f3 前端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板面にスイッチを配した第1の電子基板に取付けられるフレーム部を有し、このフレーム部に、上記スイッチに対向するスペーサ部と、上記第1の電子基板に対面する第2の電子基板に向けて延びる爪脚部とを設け、この爪脚部は、上記第2の電子基板の基板面に設けた係合穴に爪係合した状態で、上記第1の電子基板と上記第2の電子基板とを対面間隔を保って連結するスイッチスペーサにおいて、上記第2の電子基板に向けて延びる弾性脚部を設け、この弾性脚部と係合状態の爪脚部とにより上記第2の電子基板を爪係合方向に挟むことを特徴とするスイッチスペーサ。
【請求項2】
上記弾性脚部が、上記第2の電子基板の周方向において上記爪脚部とずれ合った状態でこの第2の電子基板を挟むことを特徴とする請求項1に記載のスイッチスペーサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスイッチスペーサを備え、上記第1の電子基板を上記第2の電子基板との対面方向に支持する取付け部が機器内に設けられており、この取付け部に上記第1の電子基板が装着されている電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−185850(P2006−185850A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380778(P2004−380778)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】