説明

スイッチトキャパシタ回路

【課題】システムの性能劣化を避けつつ、システムの消費電力を低減する。
【解決手段】コンデンサC1と、コンデンサC1の入力側及び出力側にそれぞれ設けられたスイッチSW1〜SW4と、コンデンサC1の出力を受ける後段のオペアンプ204とを備え、スイッチSW1〜SW4の少なくとも一つの開閉状態に応じてオペアンプ204へ供給される電流値を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力を低減したスイッチトキャパシタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチトキャパシタ回路は、離散システムの回路要素として使用されることが多く、フィルタ、コンパレータ、アナログ/デジタル変換器、デジタル/アナログ変換器等へ応用される。また、スイッチトキャパシタ回路は、主にオペアンプと組み合わせて構成される。
【0003】
図25は、スイッチトキャパシタ回路102を応用した正相積分回路100の構成を示す図である。スイッチトキャパシタ回路102は、図2に示すように、クロック信号φ1をハイレベル及びクロック信号φ2をローレベルとすることによってスイッチSW1,SW3をオン状態、スイッチSW2,SW4をオフ状態としてコンデンサC1に入力電圧VINに応じた電荷を保持させるサンプリングモードと、クロック信号φ1をローレベル及びクロック信号φ2をハイレベルとすることによってスイッチSW1,SW3をオフ状態、スイッチSW2,SW4をオン状態としてコンデンサC1にサンプリングされた電荷をコンデンサC2に供給して積分を行う積分モードと、を切り替えて動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイッチトキャパシタ回路が応用されるシステムにおけるオペアンプの消費電力はアナログ/デジタル変換器、デジタル/アナログ変換器などのシステム全体の消費電力に対して大きな割合を占める。そのため、システム全体の低消費電力化のために、オペアンプの消費電力の低減は非常に効果的である。
【0005】
しかしながら、低消費電力化と回路の性能の間にはトレードオフの関係があり、オペアンプに流れる電流を単純に減らすだけではシステムの性能劣化を引き起こしてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、システムの性能劣化を避けつつ、システムの消費電力を低減できるスイッチトキャパシタ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、コンデンサと、前記コンデンサの入力側及び出力側にそれぞれ設けられたスイッチング素子と、前記コンデンサの出力を受ける素子と、前記スイッチング素子の少なくとも一つの開閉状態に応じて前記素子へ供給される電流値を切り替える電流制御回路と、を備えることを特徴とするスイッチトキャパシタ回路である。
【0008】
ここで、前記電流制御回路は、前記スイッチング素子の少なくとも一つの開閉を制御する制御信号に応じてカレントミラー比を切り替えるカレントミラー回路を含むことが好適である。
【0009】
また、前記素子はオペアンプであることが好適である。特に、前記素子は、複数のオペアンプであることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、システムの性能劣化を避けつつ、システムの消費電力を低減できるスイッチトキャパシタ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態における正相積分回路の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるクロックのタイミングチャートを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における正相積分回路の動作を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における正相積分回路の動作を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における逆相積分回路の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における逆相積分回路の動作を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における逆相積分回路の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における非反転アンプの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における非反転アンプの動作を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における非反転アンプの動作を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるサンプリングホールド回路の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるサンプリングホールド回路の動作を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態におけるサンプリングホールド回路の動作を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態におけるユニティゲインサンプリング回路の構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態におけるユニティゲインサンプリング回路の動作を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態におけるユニティゲインサンプリング回路の動作を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態におけるデルタシグマ変調方式アナログ/デジタル変換器の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態におけるデルタシグマ変調回路の構成を示す図である。
【図19】本発明の実施の形態におけるデルタシグマ変調回路の構成を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態におけるデルタシグマ変調回路の動作を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態におけるデルタシグマ変調回路の動作を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態における電流制限回路の構成を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態における電流制限回路の構成を示す図である。
【図24】本発明の実施の形態における電流制限回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図25】従来の正相積分回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<正相積分回路>
本実施の形態における正相積分回路200は、図1に示すように、スイッチトキャパシタ回路202、オペアンプ204及びコンデンサ206を含んで構成される。
【0013】
スイッチトキャパシタ回路202は、スイッチSW1〜SW4及びコンデンサC1を含んで構成される。スイッチSW1は、クロック信号Φ1に応じて、入力電圧VINの入力端子とコンデンサC1の第1端子との接続を開閉する。スイッチSW2は、クロック信号Φ2に応じて、コンデンサC1の第1端子と接地との接続を開閉する。スイッチSW3は、クロック信号Φ1に応じて、コンデンサC1の第2端子と接地との接続を開閉する。スイッチSW4は、クロック信号Φ2に応じて、オペアンプの反転入力端子(−)とコンデンサC1の第2端子との接続を開閉する。
【0014】
オペアンプ204及びコンデンサ206は積分回路を構成する。すなわち、オペアンプ204の非反転入力端子(+)は接地され、反転入力端子(−)と出力端子とはコンデンサ206を介して接続される。これにより、スイッチトキャパシタ回路202から反転入力端子(−)に入力される信号が積分されて出力端子から出力電圧VOUTとして出力される。
【0015】
正相積分回路200は、4つのスイッチ(SW1〜SW4)によって、サンプリングモードと積分モードを制御する構成になっている。図2のクロックタイミングチャートに示すように、Φ1とΦ2は互いに重なり合わない2相クロックであるとする。サンプリングモードでは、クロックΦ1がハイレベルとなってSW1,SW3をオンさせ、クロックΦ2がローレベルとなってSW2,SW4をオフさせる。このとき、正相積分回路200は、図3に示すように、入力電圧VINをコンデンサC1でサンプリングするサンプリング状態となる。
【0016】
次に、クロックΦ1をローレベルにしてSW1,SW3をオフし、クロックΦ2をハイレベルにしてSW2,SW4をオンさせる。このとき、正相積分回路200は、図4に示すように、コンデンサC1にサンプリングされた電圧を積分する積分モードとなる。
【0017】
正相積分回路200の伝達特性は、時刻tがt=nT(n=1,2,3・・・:T=クロック周期)のときの入力電圧及び出力電圧をそれぞれVIN(nT),VOUT(nT)とすると、電荷保存則より数式(1)の差分方程式が成り立つ。
【0018】
(数1)
-C2*VOUT(nT)=-C2*VOUT((n-1)T)-C1*VIN((n-1)T)...(1)
ここで、VIN(nT),VOUT(nt)のZ変換をそれぞれVIN(Z),VOUT(Z)とすると上記のZ変換は数式(2)で表される。
【0019】
(数2)
-C2*VOUT(Z)=-C2*Z-1*VOUT(Z)-C1*Z-1*VIN(Z)...(2)
*Z-1:遅延演算子
【0020】
上記を整理すると伝達関数H(Z)は数式(3)で表される。
【0021】
(数3)
H(Z)=VOUT(Z)/VIN(Z)=(C1/C2)*Z-1/(1-Z-1)...(3)
【0022】
積分モードでは、クロックΦ1及びΦ2の半周期内に積分動作が完了しなければならない(コンデンサ206の容量を充放電しなくてはならない)ため、多くの電流を必要とする。一方、サンプリングモードでは、オペアンプ204の出力電圧VOUTを保持できればよいので、オペアンプ204に必要な電流は積分モードと比べて比較的少なくてよい。
【0023】
従来のオペアンプでは、性能を維持するために電流を必要とする状態(ここでは積分モードにおいて必要な電流)に合わせて、サンプリングモード及び積分モードにおいて電流を変化させない。すなわち、サンプリングモードでは電流が少ない状態で動作するにもかかわらず積分モードと同じ電流設定となっており、サンプリングモードでは過剰電流である。
【0024】
正相積分回路200は、クロックΦ1,Φ2の動作タイミングでサンプリング/積分を繰り返すので、それに合わせてオペアンプ204に流れる電流を変化させることが可能である。そこで、正相積分回路200において、クロックΦ1,Φ2のハイ/ロー期間でオペアンプ204に流れる電流を切り替える。すなわち、サンプリングモードではオペアンプ204への供給電流を少なく設定し、積分モードではオペアンプ204への供給電流を通常に戻す。これにより、回路性能を劣化させることなく回路全体での消費電力を低減することができる。
【0025】
<逆相積分回路>
本実施の形態における逆相積分回路300は、図5に示すように、スイッチトキャパシタ回路302、オペアンプ204及びコンデンサ206を含んで構成される。
【0026】
スイッチトキャパシタ回路302は、正相積分回路200のスイッチトキャパシタ回路202と同様の構成を有するが、スイッチトキャパシタ回路302の含まれるスイッチSW1,SW2に印加されるクロックΦ1,Φ2が異なる。
【0027】
スイッチトキャパシタ回路302は、スイッチSW1〜SW4及びコンデンサC1を含んで構成される。スイッチSW1は、クロック信号Φ2に応じて、入力電圧VINの入力端子とコンデンサC1の第1端子との接続を開閉する。スイッチSW2は、クロック信号Φ1に応じて、コンデンサC1の第1端子と接地との接続を開閉する。スイッチSW3は、クロック信号Φ1に応じて、コンデンサC1の第2端子と接地との接続を開閉する。スイッチSW4は、クロック信号Φ2に応じて、オペアンプの反転入力端子(−)とコンデンサC1の第2端子との接続を開閉する。
【0028】
逆相積分回路300は、4つのスイッチ(SW1〜SW4)によって、サンプリングモードと積分モードを制御する構成になっている。図2のクロックタイミングチャートに示すように、Φ1とΦ2は互いに重なり合わない2相クロックであるとする。サンプリングモードでは、クロックΦ1がハイレベルとなってSW2,SW3をオンさせ、クロックΦ2がローレベルとなってSW1,SW4をオフさせる。このとき、積分回路300は、図6に示すように、コンデンサC1の充電電圧を維持するサンプリング状態となる。
【0029】
次に、クロックΦ1をローレベルにしてSW2,SW3をオフし、クロックΦ2をハイレベルにしてSW1,SW4をオンさせる。このとき、積分回路300は、図7に示すように、入力電圧VINがコンデンサC1を介してサンプリングされた電圧がオペアンプに供給される積分モードとなる。
【0030】
積分回路300の伝達特性は、時刻tがt=nT(n=1,2,3・・・:T=クロック周期)のときの入力電圧及び出力電圧をそれぞれVIN(nT),VOUT(nT)とすると、電荷保存則より数式(4)の差分方程式が成り立つ。
【0031】
(数4)
-C2*VOUT(nT)-C1*VIN(nT)=-C2*VOUT((n-1)T)...(4)
【0032】
ここで、VIN(nT),VOUT(nt)のZ変換をそれぞれVIN(Z),VOUT(Z)とすると上記のZ変換は数式(5)で表される。
【0033】
(数5)
-C2*VOUT(Z)-C1*VIN(Z)=-C2*Z-1*VOUT(Z)...(5)
*Z-1:遅延演算子
【0034】
上記を整理すると伝達関数H(Z)は数式(6)で表される。
【0035】
(数6)
H(Z)=VOUT(Z)/VIN(Z)=-(C1/C2)*1/(1-Z-1)...(6)
【0036】
逆相積分回路300では、クロックΦ1,Φ2の動作タイミングでサンプリング/積分を繰り返すので、それに合わせてオペアンプ204に流れる電流を変化させることが可能である。積分回路300において、クロックΦ1,Φ2のハイ/ロー期間で電流を切り替える。すなわち、サンプリングモードではオペアンプ204への供給電流を少なく設定し、積分モードではオペアンプ204への供給電流を通常に戻す。これにより、回路性能を劣化させることなく回路全体での消費電力を低減することができる。
【0037】
<非反転アンプ>
本実施の形態における非反転アンプ400は、図8に示すように、スイッチトキャパシタ回路402及びオペアンプ204を含んで構成される。
【0038】
スイッチトキャパシタ回路402は、スイッチSW1〜SW3及びコンデンサC1,C2を含んで構成される。スイッチSW1は、クロック信号Φ1に応じて、入力電圧VINの入力端子とコンデンサC1の第1端子との経路を開閉する。スイッチSW2は、クロック信号Φ2に応じて、コンデンサC1の第1端子への動作コモン電圧VCの供給路を開閉する。スイッチSW3は、クロック信号Φ1に応じて、コンデンサC2の両端子間の接続を開閉する。
【0039】
コンデンサC1の第2端子はオペアンプ204の反転入力端子(−)に接続される。さらに、コンデンサC2の第1端子はオペアンプ204の反転入力端子(−)に接続され、第2端子はオペアンプの出力端子に接続される。オペアンプ204の非反転入力端子(+)には動作コモン電圧VCが供給される。
【0040】
非反転アンプ400は、3つのスイッチ(SW1〜SW3)によって、サンプリングモードと増幅モードを制御する構成になっている。図2のクロックタイミングチャートに示すように、Φ1とΦ2は互いに重なり合わない2相クロックであるとする。サンプリングモードでは、クロックΦ1がハイレベルとなってSW1,SW3をオンさせ、クロックΦ2がローレベルとなってSW2をオフさせる。このとき、正相積分回路200は、図9に示すように、このモードでは出力電圧VOUT=Vx≒動作コモン電圧VC(X点での電圧)であり、コンデンサC1の端子間電圧は入力電圧VIN−コモン電圧VCとなるため、入力電圧VINに追従する。
【0041】
次に、クロックΦ1をローレベルにしてSW1,SW3をオフし、クロックΦ2をハイレベルにしてSW2をオンさせる。このとき、正相積分回路200は、図10に示すように、コンデンサC1にサンプリングされた電圧を増幅する増幅モードとなる。
【0042】
このとき、コンデンサC1の第1端子の電圧Vp(=P点での電圧)は電圧VIN0+動作コモン電圧VC(VIN0:サンプリングモードにおけるコンデンサC1の最終端子間電圧)から動作コモン電圧VCへ移行するが、オペアンプ204の高い利得によってコンデンサC1の第2端子Xのノードは仮想接地となり、かつコンデンサC1に電荷は保存される。そのため、出力電圧VOUTはコンデンサC1の端子間電圧VIN0を電圧利得C1/C2倍した電圧と等しくなるようにオペアンプによって充電が行われ、出力電圧VOUT=(C1/C2)×VIN0+VCとなる。そして、この電圧は保持され、次の段での処理が可能となる。
【0043】
これらの動作により、回路の最終電圧は電圧VIN0と同じ極性でオペアンプ204の動作範囲内で任意の利得をとることができる。また、サンプリングモードから増幅モードへ移行する際、スイッチSW3はスイッチSW1よりも少し早くオフするようにクロックタイミングを制御すれば、スイッチによるチャージインジェクションの影響を大幅に緩和できる。
【0044】
増幅モードでは入力電圧と回路の電圧利得(C1/C2)に応じた電圧をクロックの半周期内に出力しなければならない(コンデンサC2の容量を充電しなくてはならない)ため、多くの電流を必要とする。一方、サンプリングモードではオペアンプ204の反転入力端子(−)と出力端子をショートさせ、動作コモン電圧VCを維持するのみなので、オペアンプ204に必要な電流は増幅モードと比べて比較的少なくてすむ。
【0045】
そこで、本実施の形態における非反転アンプ400では、クロックΦ1,Φ2の動作タイミングに応じたサンプリング/増幅を繰り返しにおいて、それに合わせてオペアンプ204に流れる電流を変化させることが可能である。本実施の形態では、クロックΦ1,Φ2のHハイ/ロー期間で電流を切り替える(サンプリングモードは電流を少なく設定し、増幅モードでは通常電流に設定する)ことにより、回路性能を劣化させることなく回路全体での消費電力を低減することができる。
【0046】
<サンプリングホールド回路>
本実施の形態におけるサンプリングホールド回路500は、図11に示すように、スイッチトキャパシタ回路502及びオペアンプ204を含んで構成される。
【0047】
スイッチトキャパシタ回路502は、スイッチSW1〜SW3及びコンデンサC1を含んで構成される。スイッチSW1は、クロック信号Φ1に応じて、入力電圧VINの入力端子とコンデンサC1の第1端子との経路を開閉する。スイッチSW2は、クロック信号Φ2に応じて、コンデンサC1の第1端子とオペアンプ204の出力端子との経路を開閉する。スイッチSW3は、クロック信号Φ1に応じて、コンデンサC1の第2端子とオペアンプ204の出力端子との経路を開閉する。
【0048】
コンデンサC1の第2端子はオペアンプ204の反転入力端子(−)に接続される。オペアンプ204の非反転入力端子(+)は接地される。
【0049】
サンプリングモードでは、クロックΦ1がハイレベルとなってSW1,SW3をオンさせ、クロックΦ2がローレベルとなってSW2をオフさせる。このとき、サンプリングホールド回路500は、図12に示すように、サンプリングモードとなる。次に、クロックΦ1をローレベルにしてSW1,SW3をオフし、クロックΦ2をハイレベルにしてSW2をオンさせる。このとき、サンプリングホールド回路500は、図13に示すように、ホールドモードとなる。
【0050】
本実施の形態におけるサンプリングホールド回路500でも、クロックΦ1,Φ2の動作タイミングに応じたサンプリング/ホールドを繰り返しにおいて、それに合わせてオペアンプ204に流れる電流を変化させる。本実施の形態では、サンプリングモードは電流を少なく設定し、ホールドモードでは通常電流に設定することにより、回路性能を劣化させることなく回路全体での消費電力を低減することができる。
【0051】
<ユニティゲインサンプリング回路>
本実施の形態におけるユニティゲインサンプリング回路505は、図14に示すように、スイッチトキャパシタ回路507及びオペアンプ204を含んで構成される。
【0052】
スイッチトキャパシタ回路507は、スイッチSW1〜SW4及びコンデンサC1,C2を含んで構成される。スイッチSW1は、クロック信号Φ1に応じて、入力電圧VINの入力端子とコンデンサC1の第1端子との経路を開閉する。スイッチSW2は、クロック信号Φ2に応じて、コンデンサC1の第2端子とオペアンプ204の反転入力端子(−)との経路を開閉する。スイッチSW3は、クロック信号Φ1に応じて、コンデンサC1の第2端子と接地端子との経路を開閉する。スイッチSW4は、クロック信号Φ2に応じて、コンデンサC1の第1端子とオペアンプ204の出力端子との経路を開閉する。
【0053】
オペアンプ204の反転入力端子(−)はコンデンサC2を介してオペアンプ204の出力端子に接続される。さらに、オペアンプ204の非反転入力端子(+)は接地される。
【0054】
サンプリングモードでは、クロックΦ1がハイレベルとなってSW1,SW3をオンさせ、クロックΦ2がローレベルとなってSW2,SW4をオフさせる。このとき、ユニティゲインサンプリング回路505は、図15に示すように、サンプリングモードとなる。次に、クロックΦ1をローレベルにしてSW1,SW3をオフし、クロックΦ2をハイレベルにしてSW2をオンさせる。このとき、ユニティゲインサンプリング回路505は、図16に示すように、ホールドモードとなる。
【0055】
本実施の形態におけるユニティゲインサンプリング回路505でも、クロックΦ1,Φ2の動作タイミングに応じたサンプリング/ホールドを繰り返しにおいて、それに合わせてオペアンプ204に流れる電流を変化させる。本実施の形態では、サンプリングモードは電流を少なく設定し、ホールドモードでは通常電流に設定することにより、回路性能を劣化させることなく回路全体での消費電力を低減することができる。
【0056】
<デルタシグマ変調方式アナログ/デジタル変換器>
本実施の形態におけるデルタシグマ変調方式アナログ/デジタル変換器600は、図17に示すように、アナログ信号を量子化するデルタシグマ変調回路(アナログ回路)602と量子化された低ビットデータを処理しデジタル信号を出力するデジタルフィルタ(デジタル回路)604を含んで構成される。アナログ処理を行うデルタシグマ変調回路602は信号周波数よりもかなり高い周波数でサンプリングを行う「オーバーサンプリング技術」と量子化雑音に周波数特性(量子化雑音を信号帯域外へ押しやる)をもたせ、雑音分布を変える「ノイズシェーピング技術」と呼ばれる2つの高精度化技術を用いることによって、信号帯域内の量子化雑音を減少させる。次に、デジタル処理を行う後段のデジタルフィルタ604は、信号帯域外量子化雑音を除去し、高分解能A/D変換を達成する。
【0057】
デルタシグマ変調回路602は、図18に示すように、低消費電力スイッチキャパシタ回路を適用できるデルタシグマ変調回路はループフィルタの構成(フィードフォワード型、フィードバック型、カスケード型)、伝達特性(ローパス型、バンドパス型)、フィルタの次数、量子化レベル(シングルビット、マルチビット)によらず、あらゆるシステムで対応可能である。本実施の形態では、デルタシグマ変調回路602の構成としてスイッチトキャパシタ回路を2個使用した2次の分散フィードバック型とし、量子化レベルは1ビットとして例に挙げる。
【0058】
入力電圧Xに対しては、フォワードパスの2次積分作用(Z−1/1−Z−12とフィードバックによる2次微分作用(1−Z−12が働き、入力電圧X=出力電圧Yとなる(遅延演算子Z−1は省略する)。量子化によって発生する量子化雑音Qに対しては、フィードバックによる2次微分作用のみが働くので、(1−Z−12×Qとなる。従って、回路全体の伝達特性はY=X+(1−Z−12×Qとなる。
【0059】
動作原理を説明する。入力電圧Xが2個の積分器を通って1ビット量子化器に入力される。量子化器は第2積分器から出力された信号を正/負で判定し、1ビットの出力電圧Yを出力する。この出力電圧Yの2値(1,0)は正/負のフルスケール値を意味しており、後段のデジタルフィルタへ出力されると同時に1ビットD/A変換器を介して各積分器の入力へ反転信号としてフィードバックされる。この反転信号は各積分器の入力電圧と加算され次回サンプリング信号の入力となる。
【0060】
デルタシグマ変調回路602は、図19に示すように、正相積分回路606、608、比較器610及びフリップ・フロップ612を含んで構成することができる。
【0061】
正相積分回路606,608は、それぞれ図1に示した正相積分回路200と同様の構成を有しており、スイッチトキャパシタ回路を含んで構成される。
【0062】
正相積分回路606は、4つのスイッチ(SW1〜SW4)によって、サンプリングモードと積分モードを制御する構成になっている。正相積分回路608は、4つのスイッチ(SW5〜SW8)によって、サンプリングモードと積分モードを制御する構成になっている。図2のクロックタイミングチャートに示すように、Φ1とΦ2は互いに重なり合わない2相クロックであるとする。サンプリングモードでは、クロックΦ1がハイレベルとなってSW1,SW3,SW5,SW7をオンさせ、クロックΦ2がローレベルとなってSW2,SW4,SW6,SW8をオフさせる。このとき、正相積分回路606,608は、図20に示すように、それぞれ入力電圧をコンデンサC1,C3でサンプリングするサンプリング状態となる。次に、クロックΦ1をローレベルにしてSW1,SW3,SW5,SW7をオフし、クロックΦ2をハイレベルにしてSW2,SW4,SW6,SW8をオンさせる。このとき、正相積分回路606,608は、図21に示すように、それぞれコンデンサC1,C3にサンプリングされた電圧を積分する積分モードとなる。
【0063】
比較器610は、正相積分回路608からの出力信号を非反転入力端子(+)に受け、反転入力端子(−)に印加させる電圧との差分に応じた信号を出力する。フリップ・フロップ612は、比較器610からの出力信号を受けて、クロックΦ1がローレベルからハイレベルに変化したタイミングに同期して比較器610からの出力信号を保持し、その値を出力する。
【0064】
ここで、正相積分回路606,608は、クロックΦ1,Φ2の動作タイミングでサンプリング/積分を繰り返すので、それに合わせて正相積分回路606,608に含まれるオペアンプに流れる電流を変化させることが可能である。正相積分回路606,608において、クロックΦ1,Φ2のハイ/ロー期間で電流を切り替える。すなわち、サンプリングモードでは正相積分回路606,608に含まれるオペアンプへの供給電流を少なく設定し、積分モードでは正相積分回路606,608に含まれるオペアンプへの供給電流を通常に戻す。これにより、回路性能を劣化させることなく回路全体での消費電力を低減することができる。
【0065】
特に、本実施の形態におけるデルタシグマ変調方式アナログ/デジタル変換器600のように、正相積分回路606,608を複数含む場合には、消費電力をより大幅に低減させることができる。
【0066】
なお、ここでは正相積分回路606,608を複数含むデルタシグマ変調方式アナログ/デジタル変換器600を例に説明したが、上記スイッチトキャパシタ回路を含む正相積分回路、逆相積分回路、非反転アンプ、サンプリングホールド回路、ユニティゲインサンプリング回路等の回路を複数含む場合には消費電力の低減効果は大きくなる。
【0067】
また、上記本実施の形態における各回路では、2相クロックの代わりに各スイッチを独立に制御できる4相クロックを使用し、適切なタイミング設定にすることで積分器の性能を向上させることもできる。この場合も、クロックの切り替えに応じて回路に含まれる素子への供給電流も切り替えることによって消費電力を低減することができる。
【0068】
<電流制限回路>
上記実施の形態における回路において、クロックΦ1,Φ2のハイ/ローの切り替えに応じて素子に流れる電流を切り替える電流制限回路が必要とされる。以下、この電流制限回路について説明する。
【0069】
電流制限回路700は、図22に示すように、基準電流発生回路702と電流制御回路704とオペアンプ706を含んで構成される。基準電流発生回路702は、電流制御回路704へ供給される基準電流を生成する。電流制御回路704は、基準電流発生回路702で生成された基準電流をクロックΦ1に応じてスイッチング制御し、オペアンプ706への供給電流を切り替える機能をもつ。図22の電流制限回路700は、電流制御はPチャネル・トランジスタで行う構成となっている。オペアンプ706は、スイッチトキャパシタ回路のクロックに応じて電流制限される素子である。オペアンプ706に流れる電流は、電流制御回路704からの供給電流に応じて増減する。
【0070】
例えば、基準電流発生回路702で生成される基準電流Iとし、Nチャネル・トランジスタM11,M12のカレントミラー比をM11:M12=1:1とする。電流制御回路704に含まれるPチャネル・トランジスタM31,M32,M33はクロックΦ1によって制御されるスイッチとして機能する。Pチャネル・トランジスタM31,M32,M33は、クロックΦ1がハイレベルのときはオフし、ローレベルのときはオンする。クロックΦ1Bは、クロックΦ1と逆位相のクロック信号である。また、Pチャネル・トランジスタMP1,MP2,MP3はトランジスタサイズ、マルチ数が等しいとする。電流制御回路704に含まれるNチャネル・トランジスタMN1とオペアンプ706に含まれるNチャネル・トランジスタM5のカレントミラー比をMN1:M5=1:2とする。オペアンプに含まれるPチャネル・トランジスタM3,M4のトランジスタサイズ、マルチ数は等しいとし、Pチャネル・トランジスタM3,M6及びM4,M7のカレントミラー比をM3:M6=M4:M7=1:1とする。また、Nチャネル・トランジスタM8,M9のカレントミラー比をM8:M9=1:1とする。このような回路構成において、基準電流発生回路702で生成した基準電流Iを電流制御回路704へ供給する。
【0071】
クロックΦ1がハイレベルである場合、電流制御回路704に含まれるPチャネル・トランジスタM311はオフ、M32,M33はオン状態となり、MP1はダイオード接続の状態となる。このとき、Pチャネル・トランジスタMP1,MP2のゲート−ドレイン間はショートされ、Pチャネル・トランジスタMP1及びMP2全体に対して電流Iが流れる。この状態は、Pチャネル・トランジスタMP1及びMP2と、Pチャネル・トランジスタMP3とがカレントミラー回路を構成していることと等価である。カレントミラー比は2:1となり、Pチャネル・トランジスタMP3には0.5Iの電流が流れる。Nチャネル・トランジスタMN1とオペアンプ706のNチャネル・トランジスタM5のカレントミラー比は1:2であるので、トランジスタM5には電流Iが流れる。Pチャネル・トランジスタM3,M6及びPチャネル・トランジスタM4,M7のカレントミラー比は1:1なのでオペアンプ706に流れる全電流は2Iとなる。
【0072】
クロックΦ1がローレベルの場合、電流制御回路704に含まれるPチャネル・トランジスタM31はオン、Pチャネル・トランジスタM32,M33はオフ状態となり、Pチャネル・トランジスタMP1はオフの状態となって電流が流れなくなる。このとき、Pチャネル・トランジスタMP2には電流Iが流れる。Pチャネル・トランジスタMP2,MP3のカレントミラー比は1:1であるので、Pチャネル・トランジスタMP3には電流Iが流れる。Nチャネル・トランジスタMN1とオペアンプ706内のNチャネル・トランジスタM5のカレントミラー比は1:2であるのでNチャネル・トランジスタM5には電流2Iが流れる。Pチャネル・トランジスタM3,M6及びM4,M7のカレントミラー比は1:1であるのでオペアンプに流れる全電流は4Iとなる。
【0073】
このような制御によって、図24に示すように、クロックΦ1の動作によってオペアンプ706を流れる全電流は変化し、クロックΦ1がローレベルにおけるオペアンプ706の電流4Iを基準としたとき、クロックΦ1がハイレベルではオペアンプ706を流れる全電流は2Iとなる。電流制御回路704で利用されるクロックΦ1をデルタシグマ変調回路602のクロックタイミングに同期させ、サンプリングモードでは電流を少なく、積分モードでは電流を多くなるように制御することで、システム性能を劣化させることなく低消費電力化が実現できる。
【0074】
図23は、Nチャネル・トランジスタで電流制御を行う電流制御回路708の例を示す。図22に示したPチャネル・トランジスタで電流制御を行う電流制御回路704と同様に、電流制御回路708においてもクロックΦ1のハイ/ローレベルの切り替えに応じてオペアンプの消費電流を制御することができる。
【0075】
また、オペアンプの構成はNチャネル・トランジスタ入力タイプをPチャネル・トランジスタ入力タイプで置き換えても可能であり、回路トポロジー、カレントミラー比を変更しても適用できる。切り替えられる電流の比も回路構成によって任意に設定できる。スイッチトキャパシタ回路を複数個使用してシステムを構成する場合、1つの電流制御回路でそれぞれのオペアンプの消費電流を制御することもできるし、各スイッチトキャパシタ回路に対して独立して電流制御回路を設けてもよい。また、種類の異なるスイッチトキャパシタ回路が組み合わさったシステム構成でも適用できる。また、スイッチトキャパシタ回路及びオペアンプはシングルエンド型であってもよいし、完全差動型であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 正相積分回路、102 スイッチトキャパシタ回路、200 正相積分回路、202 スイッチトキャパシタ回路、204 オペアンプ、206 コンデンサ、300 逆相積分回路、300 積分回路、302 スイッチトキャパシタ回路、400 非反転アンプ、402 スイッチトキャパシタ回路、500 サンプリングホールド回路、502 スイッチトキャパシタ回路、505 ユニティゲインサンプリング回路、507 スイッチトキャパシタ回路、600 デジタル変換器、602 デルタシグマ変調回路、604 デジタルフィルタ、606 正相積分回路、606,608 正相積分回路、610 比較器、612 フリップ・フロップ、700 電流制限回路、702 基準電流発生回路、704 電流制御回路、706 オペアンプ、708 電流制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサと、
前記コンデンサの入力側及び出力側にそれぞれ設けられたスイッチング素子と、
前記コンデンサの出力を受ける素子と、
前記スイッチング素子の少なくとも一つの開閉状態に応じて前記素子へ供給される電流値を切り替える電流制御回路と、
を備えることを特徴とするスイッチトキャパシタ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチトキャパシタ回路であって、
前記電流制御回路は、前記スイッチング素子の少なくとも一つの開閉を制御する制御信号に応じてカレントミラー比を切り替えるカレントミラー回路を含むことを特徴とするスイッチトキャパシタ回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスイッチトキャパシタ回路であって、
前記素子はオペアンプであることを特徴とするスイッチトキャパシタ回路。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチトキャパシタ回路であって、
前記素子は、複数のオペアンプであることを特徴とするスイッチトキャパシタ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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