説明

スイッチユニット

【課題】カバーフィルムとキートップとの間で生じる摩擦を軽減し、メタルドームを覆うカバーフィルムが接着剤層から剥離したり、カバーフィルムごとメタルドームが接点電極基板から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷してしまうことを防止する。
【解決手段】上面に固定接点電極が形成された電極基板3と、可動接点となる概皿状の導電性ドーム部材4と、この概皿状の導電性ドーム部材4を覆って配置されたカバーフィルム6と、下面に凸部71を有し、上方から押圧されることにより、前記凸部71が前記カバーフィルム6を介して前記概皿状の導電性ドーム部材4を変形させて前記固定接点に押し付けるキートップ7と、を備えたスイッチユニットにおいて、前記キートップ7と前記カバーフィルム6との間の摩擦係数より小さい摩擦係数を有する摩擦軽減部材100を、前記キートップと前記カバーフィルムの間に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器における入力キースイッチ等として使用されるメタルドーム等の導電性ドーム部材を使用したスイッチユニットに関し、更に詳しくは、ゴム等のキートップを用いた場合にも、導電性ドーム部材を覆うカバーフィルムが接着剤層から剥離したり、カバーフィルムごと導電性ドーム部材が接点電極基板から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷することを防止する構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器等のスイッチユニットには、メタルドームスイッチを有するスイッチユニットが使用されている。特に、工場などのフィールドで用いられる電子機器のスイッチユニットには、メタルドームを上方から押圧するキートップに、防水性確保のためのゴム等が用いられることがある。
【0003】
このような従来のスイッチユニットの構成例を、図面を用いて説明する。
図4は従来のスイッチユニットの構成例を示した断面図、図5は従来のスイッチユニットの構成例を示した組み立て図である。
図3および図4において、背面カバー1の上面にプリント基板2が設置される。プリント基板2の上面には、接点電極基板3が半田付け等により取り付けられる。接点電極基板3の上面中央の図示しない接点電極に対応した位置には、薄い金属板によってドーム状(皿状)のメタルドーム4が形成される。メタルドーム4の上面は接着剤層5によって覆われ、更に接着剤層5の上面をカバーフィルム6によって覆うことで、メタルドーム4は接点電極基板3に固定される。
カバーフィルム6の上方には、防水性を有するゴム等で成型されたキートップ7が設置されている。キートップ7は下面に概円錐台状の凸部71を有し、また上面に概円柱状の押しボタン部72を有している。この凸部71と押しボタン部72は、それらの中心が、メタルドーム4の頂点の鉛直上方に位置している。
キートップ7の上方には前面カバー8が設置されている。この前面カバー8は開口部81を有し、押しボタン部72がこの開口部81から外部に突出する。
【0004】
このような装置の動作を、図面を用いて説明する。
押しボタン部72が上方から押圧されると、押しボタン部72の下面に位置する凸部71が、カバーフィルム6と接着材層5を介してメタルドーム4の頂上部分に下方向の応力を加える。この応力により、メタルドーム4は押し潰され、メタルドーム4の下面が接点電極基板3に押し付けられ、接点電極基板3の図示しない接点電極が導通させることができる。
【0005】
特許文献1には、接点電極を有する接点電極基盤の上部に、メタルドームがシート及び接着剤により固定され、キートップが押下されることで、メタルドームが接点電極基盤に押し付けられ、接点電極が導通状態となる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2007−179921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなスイッチユニットでは、
(1)防水性を確保するためにキートップ7がゴム製であるため、キートップ7が弾性変形しやすく、押しボタン部72を押圧した際に、凸部71によって応力を加えられる地点がメタルドーム4の頂上部分から外れたり、または、凸部71によって加えられる応力方向が鉛直方向からずれることがあり、また、
(2)ゴム製のキートップ7とカバーフィルム6との間の摩擦係数が大きい。
これら(1)、(2)のため、カバーフィルム6には、メタルドーム4の皿面と平行に相当の応力が加わることがあり、これが原因でカバーフィルム6が接着剤層5から剥離したり、あるいは、メタルドーム4がカバーフィルム6とともに接点電極基板3から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷してしまうという課題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、カバーフィルム6とキートップ7との間に、摩擦軽減部材を設けることにより、カバーフィルム6とキートップ7との間で生じる摩擦を軽減し、メタルドームを覆うカバーフィルムが接着剤層から剥離したり、カバーフィルムごとメタルドームが接点電極基板から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷してしまうことを防ぐことのできる構成を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
上面に固定接点電極が形成された電極基板と、
前記固定接点電極に対応する位置に配置され、可動接点となる概皿状の導電性ドーム部材と、
この概皿状の導電性ドーム部材を覆って配置されたカバーフィルムと、
下面に凸部を有し、上方から押圧されることにより、前記凸部が前記カバーフィルムを介して前記概皿状の導電性ドーム部材を変形させて前記固定接点に押し付けるキートップと、を備えたスイッチユニットにおいて、
前記キートップと前記カバーフィルムとの間の摩擦係数より小さい摩擦係数を有する摩擦軽減部材を、前記キートップと前記カバーフィルムの間に設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
前記摩擦軽減部材は、前記カバーフィルムを覆う樹脂で形成されるシートであることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
前記摩擦軽減部材は、前記キートップの凸部に塗布された樹脂であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明であって、
前記摩擦軽減部材は、前記キートップの凸部に取り付けられた樹脂であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明であって、
前記樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カバーフィルムとキートップとの間に、キートップとカバーフィルムとの間の摩擦係数よりも小さい摩擦係数を有する摩擦軽減部材を設けることにより、キートップからカバーフィルムに加えられるメタルドームの皿面方向の応力を軽減し、メタルドームを覆うカバーフィルムが接着剤層から剥離したり、メタルドームがカバーフィルムごと接点電極基板から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷してしまうことを防ぐことのできる構成を実現することにある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例の構成を示した断面図である。
【図2】本発明の一実施例の構成を示した組み立て図である。
【図3】本発明の他の実施例の構成を示した断面図である。
【図4】従来のスイッチユニットの構成例を示した断面図である。
【図5】従来のスイッチユニットの構成例を示した組み立て図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の構成を示した断面図である。図2は本発明の一実施例の構成を示した組み立て図である。ここで、それぞれ図4および図5と同一のものは同一符号を付し、説明を省略する。
図1および図2において、カバーフィルム6とキートップ7の凸部71との間に、カバーフィルム6との間の摩擦係数が、キートップ7とカバーフィルム6との間の摩擦係数に比べ小さい摩擦軽減部材、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(以下PET樹脂)、で形成されたのシート100を設けている。
このような装置の動作例を、図1を用いて説明する。
押しボタン部72が上方から押圧されると、押しボタン部72の下面に位置する凸部71が、シート100とカバーフィルム6と接着材層5と、を介してメタルドーム4の頂上付近に下向きの応力を加える。この応力により、メタルドーム4は押し潰され、メタルドーム4の下面が接点電極基板3に押し付けられ、接点電極基板3の図示しない接点電極が導通させることができる。
【0017】
このときに、キートップ7の凸部71によって応力を加えられる地点がメタルドーム4の頂上部分から外れたり、または、凸部71によって加えられる応力方向が鉛直方向からずれることがあっても、凸部71とカバーフィルム6との間の摩擦係数に比べ、シート100とカバーフィルム6との間の摩擦係数のほうが小さいので、凸部71によってカバーフィルム6に加わる、メタルドーム4の皿面と平行な応力は低減されることになる。したがって、カバーフィルム6が接着剤層5から剥離したり、メタルドーム4がカバーフィルム6とともに接点電極基板3から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷することを防ぐことができる。
【0018】
このように、キートップ7の凸部71とカバーフィルム6との間に、キートップとカバーフィルムとの間の摩擦係数より小さい摩擦係数を有するシート100(摩擦軽減部材)を設けることにより、カバーフィルム6に加わる、メタルドーム4の皿面と平行な応力は低減され、カバーフィルム6が接着剤層5から剥離したり、あるいは、カバーフィルム6とともにメタルドーム4が接点電極基板3から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷することを防ぐことができる。
【0019】
なお、本発明はこれに限定されるものではなく、図3(a)に示されるように、摩擦軽減部材としてPET樹脂からなる樹脂片101、または金属材料からなる金属片を使用し、これを凸71部の先端に取り付ける構成でもよいし、図3(b)に示されるように、摩擦軽減部材は凸部71に塗布されたPET樹脂等の塗布樹脂102、または金属材料の塗布金属である構成でもよい。これらの場合にも、摩擦軽減部材とカバーフィルム6の間の摩擦係数が、キートップ7とカバーフィルム6との間の摩擦係数に比べ小さいので、カバーフィルム6に加わる、メタルドーム4の皿面と平行な応力は低減され、カバーフィルム6が接着剤層5から剥離したり、あるいは、カバーフィルム6ごとメタルドーム4が接点電極基板3から脱落するなどして、スイッチユニットが損傷することを防ぐことができる。
【0020】
また、実施例では導電性ドーム部材がメタルドームである場合について説明したが、これに限らず導電性ドーム部材として導電性プラスチックのドーム部材を用いてもよい。
【符号の説明】
【0021】
3 接点電極基板
4 メタルドーム
6 カバーフィルム
7 キートップ
71 凸部
72 樹脂片
73 塗布樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に固定接点電極が形成された電極基板と、
前記固定接点電極に対応する位置に配置され、可動接点となる概皿状の導電性ドーム部材と、
この概皿状の導電性ドーム部材を覆って配置されたカバーフィルムと、
下面に凸部を有し、上方から押圧されることにより、前記凸部が前記カバーフィルムを介して前記概皿状の導電性ドーム部材を変形させて前記固定接点に押し付けるキートップと、を備えたスイッチユニットにおいて、
前記キートップと前記カバーフィルムとの間の摩擦係数より小さい摩擦係数を有する摩擦軽減部材を、前記キートップと前記カバーフィルムの間に設けたことを特徴とするスイッチユニット。
【請求項2】
前記摩擦軽減部材は、前記カバーフィルムを覆う樹脂で形成されるシートであることを特徴とする請求項1記載のスイッチユニット。
【請求項3】
前記摩擦軽減部材は、前記キートップの凸部に塗布された樹脂であることを特徴とする請求項1記載のスイッチユニット。
【請求項4】
前記摩擦軽減部材は、前記キートップの凸部に取り付けられた樹脂であることを特徴とする請求項1記載のスイッチユニット。
【請求項5】
前記樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のスイッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108449(P2011−108449A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261106(P2009−261106)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】