説明

スイッチングユニット

【課題】 信頼性の向上が可能なスイッチングユニットを提供する。
【解決手段】 スイッチングユニット10は、ケーシング20で包囲され、回路基板11とバスバー回路12とを密着させた回路基板11側の表面にスイッチングデバイス13を実装したユニット本体15を有すると共に、ユニット本体15からケーシング20の外側へ延出する接続端子12Aを備える。さらに、スイッチングユニット10は、ユニット本体15に係るスイッチングデバイス13或いは他の抵抗その他の回路基板11の表面に実装された電子素子の各端子の接合箇所Jの周囲がケーシング20よりも弾性のある被覆部40で覆われているので、ケーシング20に熱応力やスイッチングユニット10の着脱時に生ずる外力等が作用した場合でも、被覆部40の弾性力でもって作用する力を受止めることができ、接合箇所Jへ力が作用し、接合不良等が生ずることを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流のオン/オフを制御可能なスイッチングユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチングユニットとして、例えば特許文献1に示すものがある。このものは、例えば、自動車のバッテリー等の電源とヘッドランプ等の各電子装置との間に配されて電流のオン/オフを切り替えることにより各電子装置の制御を行うものである。これらのスイッチングユニットは、内部の接点やリレーコイル等の構成部品を保護するため、箱状のケーシングに包囲されている。
上記のような箱状のケーシングを用いたスイッチングユニットでは、ケーシングに対する組み付け工程等が必要となってくるが、これに対して、型内で構成部品と共に一体に成形するいわゆるモールド成形によってケーシングを形成することで、ケーシングに対する組み付け工程を省略し、製造効率の向上を図ることが行われている。
【特許文献1】特開2002−324478公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなスイッチングユニットに関し、ケーシング内において、内部の構成部品をハンダ付けや溶接等を用いて接合して導通接続を行うものがある。このようなものに対して、モールド成形でケーシングを形成した場合には、ケーシングを構成する樹脂でもって接合箇所を包囲することになる。
しかしながら、このようなスイッチングユニットが自動車に搭載されたような場合、その使用環境によっては、温度の寒暖差が極めて激しくなり、構成部品とケーシングの樹脂との熱膨張性の相違から接合部分に応力(熱応力)が作用し、場合によってはハンダクラック等が生じてスイッチングユニットの信頼性が損なわれてしまうおそれがあった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、信頼性の向上が可能なスイッチングユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路との双方に対して前記スイッチングデバイスの端子を接合することで導通接続してなる回路体を備え、前記回路体を収容するケーシングがモールド成形によって一体に形成されると共に、前記回路体上の前記スッチングデバイス及び電子部品の端子の接合箇所が、ケーシングよりも弾性のある被覆層で被覆されているところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記被覆層が前記ケーシングで包囲されていることところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記スイッチングデバイスの本体に対してケーシング又は被覆層が密着しているところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記回路体には前記回路体を冷却するための放熱手段を備えると共に、この放熱手段がケーシングから外部に露出されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
接合箇所の周囲はケーシングよりも弾性のある被覆層で覆われているので、ケーシングに熱応力等が作用した場合でも、被覆層の弾性力でもって作用する力を受止めることができ、接合箇所へ力が作用し接合不良等が生ずることを規制する。従って、スイッチングユニットの信頼性の向上が可能となる。
【0010】
<請求項2の発明>
被覆層が被覆層よりも剛性のあるケーシングで包囲されているので、被覆層が外部に露出することなく保護ができ、延いては、接合部を確実に保護ができるので、スイッチングユニットの信頼性が一層向上する。
【0011】
<請求項3の発明>
ケーシング又は被覆層がスイッチングデバイスの本体に対して密着しているので、スイッチングデバイスで生じた熱がケーシング外部へ伝え易くなり、放熱性が向上する。
【0012】
<請求項4の発明>
回路体を冷却するための放熱手段が外部に露出されているので、回路体の冷却効率が向上し、スイッチングユニット全体の放熱性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。
スイッチングユニット10は、図1,2に示すように、ケーシング20で包囲されたユニット本体(本発明の「回路体」に相当する)15を有し、ユニット本体15からケーシング20の外側へ延出する接続端子12Aが相手側接続端子(図示なし)と接続することで電気接続箱(図示なし)等に着脱可能に装着されるようになっている。
【0014】
ユニット本体15は、回路基板11とバスバー回路12とを密着させた回路基板11側の表面にスイッチングデバイス13を実装してなるものである(図2参照)。
スイッチングデバイス13は、電流のオン/オフを制御可能なものであって、本実施形態では半導体スイッチング素子を用いており、特に本実施形態では、半導体デバイス中にパワーMOSFET部と、過熱保護機能或いはPWM信号発信部等を有する制御部とをワンチップ上に配設したものを用いている。
【0015】
回路基板11は、図1に示すように、略方形状の絶縁基板上にスクリーン印刷等で導電路が形成された印刷回路を備え、その所定箇所には貫通孔11Aが穿設されている。スイッチングデバイス13或いは他の抵抗その他の回路基板11の表面に実装された電子素子は、それぞれの素子が備える複数の端子のうち、一方を回路基板11に接続させると共に、他方を貫通孔11Aを介して次述のバスバー回路12に直接端子を接続させるようになっている(図2参照)。ここで、回路基板11或いは次述のバスバー回路12への接続はハンダ付け或いは溶接によって接合されるようになっており、図2及び図3において接合箇所は符号Jで示されている。
また、本実施形態では回路基板11の片側(図1の右側)にスイッチングデバイス13を実装すると共に、その反対側(図1の左側)に(詳細には図示しないが)制御系の回路を配設している。
【0016】
バスバー回路12は、金属平板を打抜いて形成された複数本のバスバーによって所定回路形状に形成されてなるものである(図1の破線参照)。バスバー回路12は全体形状が回路基板11と同様の略方形状をなしており、回路基板11のほぼ全体に亘る領域をバスバー回路12で支持することでユニット本体15の強度を確保できるようになっている。
さらに、バスバー回路12を構成するバスバーには、ユニット本体15から延出する接続端子12Aが一体に形成されており、この接続端子12Aによって、図示しない電気接続箱等の相手側接続端子と嵌合可能となっている。尚、本実施形態では、図1に示すように、5本の接続端子12Aを備えているが、これらのうち図1における左側の3本が制御系端子として用いられ右側の2端子が電力系端子として用いられている。また、制御系端子(図1の左側3本の端子)の先端部はプレス加工によって電力系端子(図1の右側2本の端子)よりも薄く形成されている。
【0017】
ユニット本体15の下側には図2に示すように放熱板(本発明の「放熱手段」に相当する)25を備える。放熱板25はアルミ製の金属板でユニット本体15のバスバーの下面に接着剤(例えばシリコーン系接着剤若しくはエポキシ系接着剤)又は接着シート(例えば絶縁シートの両面に接着剤を塗布して接着性をもたせたもの)により接着し、かつ絶縁されており(これらの接着剤又は接着シートが本発明の「絶縁物」に相当する)、ユニット本体15で生じた熱をバスバー回路12を介して伝熱させて、外部へ放出するようになっている。これらの接着剤はアルミナフィラー等熱伝導性の高い材料を含有したものを用いることでより伝熱性を向上させることが可能となる。
【0018】
また、接続端子12Aのユニット本体15からの基端部分には、放熱板25との間に絶縁部材30が配設されている(図2参照)。
この絶縁部材30は、絶縁性を備えた樹脂で略角柱形状に形成されており、放熱板25の接続端子12A側(図2の左側)の端部に形成された切欠き部26に嵌め込まれている。切欠き部26は放熱板25の幅方向に亘って絶縁部材30の形状に合わせて略角柱形状に切削して形成されており、絶縁部材30を嵌め込むことにより、放熱板25の上面(バスバー回路12の貼付け面)は絶縁部材30の上面と略面一となる。これにより、放熱板25の上面とバスバー回路12の下面との接着においても段差等が生ずることなく確実に接着ができるようになっている。また、接続端子12Aに電流が流れた場合でも、接続端子12Aの基端部と放熱板25との間には絶縁部材30が介在しているので、接続端子12Aと放熱板25との間に短絡等が生ずることがないようになっている。
【0019】
ケーシング20は、合成樹脂製で全体略直方体形状をなしている。ここで、ケーシング20の成形は、放熱板25を組付けたユニット本体15を成形型内に挿入してユニット本体15等と共に一体に成形するいわゆるモールド成形によって形成されており、全周に亘って隙間なく包囲されている。特に、本実施形態では、接続端子12Aの基端部も隙間なく導出されていると共に、放熱板25はその放熱性を高めるために外部に露出するようにして形成されているが、放熱板25の端縁もケーシング20と隙間なく密着するように形成されている。
【0020】
さて、本実施形態に係るスイッチングユニット10は、ユニット本体15に係るスイッチングデバイス13或いは他の抵抗その他の回路基板11の表面に実装された電子素子の端子の接合箇所Jが被覆部40で被覆されている(図2参照)。
この被覆部40は、シリコン系ゲル或いはブチレン系ゴムで形成されており、ケーシング20を構成する樹脂よりも弾性を備えると共に、ケーシング20の成形時にもケーシング20の樹脂の熱で溶融しない特性を備えるものである。そして、被覆部40はケーシング20の成形前に各端子の接合箇所Jの周囲全体を包囲するように塗布されることで形成され(図3参照)、その後、ケーシング20の成形工程がなされる。これにより、被覆部40は、図2に示すように、各端子の接合箇所Jを包囲すると共に、この被覆部40はその周囲をケーシング20によって取り囲まれて外部には露出しないようになっている。
【0021】
上記のように構成されたスイッチングユニット10は図しない電気接続箱に対して着脱可能に組みつけられて、制御系端子から所定の電気信号を受け取てスイッチングデバイス13を動作させることにより、電力系端子の入力側から入力された電流を適宜調整して電力系端子の出力側から出力し電子装置(図示なし)を動作させる。
尚、電気接続箱(図示なし)のメンテナンス時等において、スイッチングユニット10は抜脱可能であり、必要に応じて交換されて使用できるようになっている。
【0022】
このように、本実施形態のスイッチングユニット10によれば、各端子の接合箇所Jの周囲がケーシング20よりも弾性のある被覆部40で覆われているので、ケーシング20に熱応力やスイッチングユニット10の着脱時に生ずる外力等が作用した場合でも、被覆部40の弾性力でもって作用する力を受止めることができ、接合箇所Jへ力が作用し接合不良等が生ずることを規制する。さらに、この被覆部40が被覆部40よりも剛性のあるケーシング20でその周囲を包囲されて外部に露出することがないので、被覆部40を確実に保護することができ、延いては、接合箇所Jを確実に保護ができる。従って、本実施形態によれば、スイッチングユニット10の信頼性の向上が可能となる。
【0023】
さらに、本実施形態では、ユニット本体15を冷却するための放熱板25が外部に露出されているので、ユニット本体15の冷却効率が向上し、スイッチングユニット10全体の放熱性が向上する。
それに加えて、ケーシング20がスイッチングデバイス13の本体に対して密着しているので、スイッチングデバイス13で生じた熱がケーシング20外部へ伝え易くなるので、放熱性が一層向上する。
【0024】
また、本実施形態ではスイッチングデバイス13に半導体スイッチング素子を用いたのでいわゆるメカリレーにおいて、接点のオン/オフ時に発生する動作音が生じないので、静音化が図れる。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4によって説明する。
本実施形態のスイッチングユニット10Aは、被覆部40Aの形状が上記実施形態1と相違するものであるが、他の同様の構成については同様の符号を付し、重複した説明は省略する。
本実施形態では、被覆部40Aがユニット本体15の上面側全体を覆うように層状に形成されている。また、さらに本実施形態では被覆部40Aアルミナ等のフィラーが添加されていることで、被覆部40Aの放熱性を高めることができる。
【0026】
このように、本実施形態のスイッチングユニット10Aは、被覆部40Aがユニット本体15の上面側全体を覆っているので、ユニット本体15における接合箇所Jのみならず、回路基板12全体が被覆部40Aを介してケーシング20に包囲されている。これにより、回路基板12上の配線構造やバスバー回路12との密着構造等ユニット本体15全体を保護できるので、スイッチングユニット10Aの信頼性の一層の向上が可能となる。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では被覆層として各端子の接合箇所Jの周囲のみを覆う被覆部40又は、ユニット本体15の上面側全体を覆う層状の被覆部40Aを挙げたが、これに限らず、どのような形状の被覆層であってもよい。また、被覆層はケーシング20に内包されるものに限らず、外部に露出されるものであってもよい。
【0028】
(2)上記実施形態ではスイッチングユニット10,10Aはスイッチングデバイス13に半導体スイッチング素子を実装するものであったが、これに限らず、例えばIC等を実装するものであってもよい。
(3)上記実施形態において、制御系回路にIC、マイコン等を実装するものであってもよい。
(4)上記実施形態では放熱板25を備えるものであったが、これに限らず、放熱板25のような放熱手段を備えていないものであってもよい。
(5)上記実施形態では別体の絶縁部材30を備えるものであったが、ケーシング20と一体に形成した絶縁部材30を備えるものであってもよい。
(6)上記実施形態において、さらに放熱面積を増加するため放熱板に放熱フィン等の放熱手段を追加する構造のものであってもよい。
(7)上記実施形態ではスイッチングデバイス13に半導体スイッチング素子を用いるものであったが、これに限らず、ベアチップ等を実装するものであってもよい。
(8)上記実施形態ではケーシング20が樹脂製のものであったが、例えば金属製のものであってもよい。この場合、例えば、金属製ケーシングの表面に絶縁被膜を形成する等してケーシングとユニット本体との間の絶縁を図る構成とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態1のスイッチングユニットの平断面図
【図2】スイッチングユニットの縦断面図
【図3】ケーシングの成形前のユニット本体の縦断面図
【図4】実施形態2のスイッチングユニットの縦断面図
【符号の説明】
【0030】
10…スイッチングユニット
11…回路基板
12…バスバー回路
12A…接続端子
13…スイッチングデバイス
15…ユニット本体(回路体)
20…ケーシング
25…放熱板(放熱手段)
40…被覆部(被覆層)
J…接合箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流のオン/オフを制御可能なスイッチングデバイスと、外部との接続を行うための接続端子とを備えるスイッチングユニットにおいて、
絶縁物を介して互いに密着された回路基板とバスバー回路との双方に対して前記スイッチングデバイスの端子を接合することで導通接続してなる回路体を備え、
前記回路体を収容するケーシングがモールド成形によって一体に形成されると共に、
前記回路体上の前記スッチングデバイス及び電子部品の端子の接合箇所が、ケーシングよりも弾性のある被覆層で被覆されていることを特徴とするスイッチングユニット。
【請求項2】
前記被覆層が前記ケーシングで包囲されていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチングユニット。
【請求項3】
前記スイッチングデバイスの本体に対してケーシング又は被覆層が密着していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスイッチングユニット。
【請求項4】
前記回路体には前記回路体を冷却するための放熱手段を備えると共に、この放熱手段がケーシングから外部に露出されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のスイッチングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−288118(P2006−288118A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106376(P2005−106376)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】