説明

スイッチングレギュレータ

【課題】過電流保護動作などに伴う出力電圧の持ち上がりを抑えることが可能となる、スイッチングレギュレータを提供する。
【解決手段】一端に入力電圧が入力され、他端が出力端子に接続されたインダクタと、インダクタの他端に一端が接続され、他端が接地点に接続された第1スイッチング素子と、出力端子に一端が接続され、他端が接地点に接続されたコンデンサと、を備え、第1スイッチング素子のスイッチング動作により入力電圧を昇圧させて出力端子から出力するものであり、スイッチング動作を停止させて第1スイッチング素子をオフに保持する、スイッチ停止動作を行う制御部を備え、制御部は、スイッチ停止動作を行う際、スイッチング動作を停止させる時、第1スイッチング素子を、所定の設定時間だけオンに維持した後にオフに保持するスイッチングレギュレータとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換を行うスイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧変換を行う各種のスイッチングレギュレータが広く利用されている。ここでスイッチングレギュレータの一例を挙げ、その構成や動作について簡潔に説明する。
【0003】
図4は、当該スイッチングレギュレータの構成を模式的に示している。当該スイッチングレギュレータは、制御信号S1に応じてオン/オフするスイッチング素子SW1、制御信号S2に応じてオン/オフするスイッチング素子SW2、磁気エネルギーの蓄積と放出を行うコイルL1、各ダイオード(D1、D2)、およびコンデンサC3を有し、直流電源VCCの電圧を昇圧または降圧させ、出力端子Voutから出力するように形成されている。
【0004】
つまり昇圧動作時には、スイッチング素子SW2が定常的にオンとなり、スイッチング素子SW1が、オン/オフを繰返し切替えるスイッチング動作を行う。これにより直流電源VCCの電圧が昇圧され、出力端子Voutから出力される。
【0005】
一方、降圧動作時には、スイッチング素子SW1が定常的にオフとなり、スイッチング素子SW2がスイッチング動作を行う。これにより直流電源VCCの電圧が降圧され、出力端子Voutから出力される。なお図4において、コイル電流ILはコイルL1を流れる電流を、出力電流IOは出力端子Voutを流れる電流を、出力電圧VOは出力端子Voutにおける電圧を、それぞれ表している。
【0006】
またスイッチングレギュレータにおいては、過電流による不具合の発生を防止するため、過電流保護機能が設けられることがある。この機能によれば、例えば、過電流が検出されたときにスイッチング動作を停止させ、各スイッチング素子をオフにする動作(過電流保護動作)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−118563号公報
【特許文献2】特開2006−271182号公報
【特許文献3】特開2005−033862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した過電流保護動作によれば、過電流の状態を直ちに解消させて、不具合を極力防ぐことが可能である。しかしながら、昇圧動作時に過電流保護動作が行われると、出力電圧が一時的に高くなる(持ち上がる)という現象が生じ得る。このような出力のオーバーシュートが生じる現象について、図5を参照しながら簡潔に説明する。
【0009】
図5は、先述したスイッチングレギュレータにおいて昇圧動作時に過電流保護動作が行われる際の、制御信号等の波形を表している。図5においては、(A)制御信号S1、(B)制御信号S2、(C)コイル電流ILと出力電流IO、および(D)出力電圧VOの波形が、それぞれ表されている。
【0010】
過電流が検出されると、図5の(A)および(B)に示すように、各制御信号(S1、S2)は、各スイッチング素子(SW1、SW2)をオフにさせる状態となる。その結果、図5の(C)に示すように、コイル電流ILや出力電流IOは減少し、過電流の状態が解消されることとなる。
【0011】
但し各スイッチング素子(SW1、SW2)がオフにされるまでは、スイッチング素子SW1がスイッチング動作を行っているため、コイル電流ILが出力電流IOより大きくなっている。この状況下で各スイッチング素子(SW1、SW2)がオフにされると、コイル電流ILと出力電流IOの差に応じた過電荷がコンデンサC3に溜まり、図5の(D)に示すように出力電圧VOの持ち上がりが発生する。
【0012】
このような出力電圧の持ち上がりが発生すると、後段側の回路に悪影響(過剰な電圧入力による破損など)を及ぼすおそれがある。なおこの問題は、過電流保護動作が行われる場合に限られず、他の目的(例えば過電圧保護や過熱防止)のために各スイッチング素子をオフにする場合も該当し得る。
【0013】
本発明は上述した問題に鑑み、過電流保護動作などに伴う出力電圧の持ち上がりを抑えることが可能となる、スイッチングレギュレータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るスイッチングレギュレータは、一端に入力電圧が入力され、他端が出力端子に接続されたインダクタと、前記インダクタの他端に一端が接続され、他端が接地点に接続され、両端間を導通させるオンの状態と導通させないオフの状態が切替わる、第1スイッチング素子と、前記出力端子に一端が接続され、他端が接地点に接続されたコンデンサと、を備え、第1スイッチング素子のスイッチング動作により、前記インダクタに磁気エネルギーの蓄積と放出を行わせ、前記入力電圧を昇圧させて前記出力端子から出力するスイッチングレギュレータであって、前記スイッチング動作を停止させて第1スイッチング素子をオフに保持する、スイッチ停止動作を行う制御部を備え、前記制御部は、スイッチ停止動作を行う際、前記スイッチング動作を停止させる時、第1スイッチング素子を、所定の設定時間だけオンに維持した後にオフに保持する構成とする。
【0015】
本構成によれば、過電流保護動作などに伴う出力電圧の持ち上がりを抑えることが可能となる。
【0016】
また上記構成としてより具体的には、前記制御部は、前記出力端子から出力される電流についての過電流が検出されたときに、スイッチ停止動作を行う構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、前記入力電圧が入力される入力端子に一端が接続され、他端が前記インダクタの一端に接続され、両端間を導通させるオンの状態と導通させないオフの状態が切替わる、第2スイッチング素子を備えている構成としてもよい。
【0017】
また上記構成としてより具体的には、第2スイッチング素子をオンに維持し、第1スイッチング素子にスイッチング動作を行わせることにより、前記入力電圧を昇圧させて前記出力端子から出力する昇圧動作と、第1スイッチング素子をオフに維持し、第2スイッチング素子にスイッチング動作を行わせることにより、前記入力電圧を降圧させて前記出力端子から出力する降圧動作と、を行う構成としてもよい。
【0018】
また上記構成としてより具体的には、前記制御部は、スイッチ停止動作を行う際、第2スイッチング素子をオフに保持する構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、第1スイッチング素子および第2スイッチング素子は、MOSトランジスタである構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、第2スイッチング素子を制御する制御信号の伝送ラインに設けられたドライバと、前記ドライバの第1電源端子の電圧と第2電源端子の電圧との差を略一定に保つ、電圧調整回路と、を備えた構成としてもよい。
【0019】
また上記構成としてより具体的には、前記設定時間は、前記コイルのインダクタンスの値L、前記スイッチング動作を停止させた時点で前記コイルを流れることとなる電流の値ILS、および、前記スイッチング動作を停止させた時点で前記コイルの前段側に生じることとなる電圧の値Vf、に基づいて設定されている構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、前記設定時間は、ILS×L/Vfで求められる時間に設定されている構成としてもよい。また上記構成としてより具体的には、車載用の電源装置に適用される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述した通り、本発明に係るスイッチングレギュレータによれば、過電流保護動作などに伴う出力電圧の持ち上がりを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るスイッチングレギュレータの構成図である。
【図2】VL電圧生成回路の構成例を示す説明図である。
【図3】過電流保護動作時の制御信号等の波形に関する説明図である。
【図4】従来のスイッチングレギュレータに関する説明図である。
【図5】従来のスイッチングレギュレータに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0023】
[スイッチングレギュレータの全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係るスイッチングレギュレータ(昇降圧スイッチングレギュレータ)1の構成図である。本図に示すようにスイッチングレギュレータ1は、レギュレータ用IC10、各スイッチング素子(SW1、SW2)、コイル(インダクタ)L1、各ダイオード(D1、D2)、各コンデンサ(C1〜C5)、各抵抗(R1、R2)、電源入力端子Vin、および電圧出力端子Voutなどを有している。
【0024】
なお各スイッチング素子(SW1、SW2)は、入力される制御信号に応じて、オン/オフ(両端間の導通/非導通)を切替えるスイッチング動作を行う。一例としてMOSトランジスタの場合、スイッチング動作は、ゲートに入力される制御信号に応じて、ソース‐ドレイン間の導通/非導通を切替える動作となる。本実施形態では、スイッチング素子SW1はNチャネルMOSFETであり、スイッチング素子SW2はPチャネルMOSFETであるとするが、これに限定されるものではない。
【0025】
またレギュレータ用IC10は、内部電源生成回路21、バンドギャップ電圧生成回路22、低電圧誤動作防止回路23、サーマルシャットダウン回路24、発振回路31、スロープ回路32、ソフトスタート回路33、誤差増幅器34、オペアンプ35、各比較器(36、37)、各抵抗(38a、38b)、ショート回路保護用比較器41、過電圧保護用比較器42、制御回路51、過電流検出回路52、ドライバ53、VL電圧生成回路54、およびドライバ55などを有している。
【0026】
レギュレータ用IC10は、これらを集積化した半導体集積回路装置(半導体装置)である。またレギュレータ用IC10は、接地点に接続される接地用端子TGNDの他、外部との接続に用いられる各端子(T1〜T13)を有している。
【0027】
端子T1は、電源入力端子Vinに接続されている。なお電源入力端子Vinは、外部のバッテリ等から直流電源VCC(例えば4〜40Vの電源)が入力されるようになっている。また端子T1と電源入力端子Vinの間には、コンデンサC1の一端、コンデンサC2の一端、および抵抗R1の一端が接続されている。
【0028】
コンデンサC1の他端は接地されており、コンデンサC2の他端は端子T5に接続されている。抵抗R1の他端は、スイッチング素子SW2のソースに接続されている。なお抵抗R1の両端は、それぞれ端子T2および端子T3にも接続されている。スイッチング素子SW2のドレインは、ダイオードD1のカソードおよびコイルL1の一端に接続されている。ダイオードD1のアノードは接地されている。
【0029】
またコイルL1の他端は、ダイオードD2のアノードおよびスイッチング素子SW1のドレインに接続されている。スイッチング素子SW1のソースは接地されている。ダイオードD2のカソードはコンデンサC3の一端および電圧出力端子Voutに接続されている。なお電圧出力端子Voutからは、スイッチングレギュレータ1の出力電圧VOが出力される。またコンデンサC3の他端は接地されている。
【0030】
またスイッチング素子SW2のゲートは端子T4に接続されており、スイッチング素子SW1のゲートは端子T7に接続されている。抵抗R2は、発振回路31が生成する矩形波の周波数調整に用いられる抵抗であり、一端が端子T11に接続され他端が接地されている。コンデンサC4は、主に後述する内部電源VREGの位相補償に用いられるコンデンサであり、一端が端子T12に接続され他端が接地されている。また端子T9には、出力電圧VOに応じた電圧VFBが入力される。また端子T9と端子T10は、外部のコンデンサ等を介して接続されている。
【0031】
内部電源生成回路21は、端子T12およびイネーブル信号が入力される端子T13に接続されており、直流電源VCCを用いて、レギュレータ用IC10において使用される直流の内部電源VREGを生成する。内部電源VREGは、直流電源VCCに比べて電圧値等の精度が高くなるように生成される。内部電源VREGは、サーマルシャットダウン回路24やドライバ55の駆動電源等として用いられる。
【0032】
また内部電源生成回路21は、生成した内部電源VREGを、端子T12に接続された外部ライン(レギュレータ用IC10の外部に設けられた伝送ライン)を介してレギュレータ用IC10の外部に一旦送出した後、レギュレータ用IC10内に引き込む。例えば外部ラインに送出された内部電源VREGは、端子T6を介してレギュレータ用IC10内に戻り、ドライバ55の電源端子に入力される。なおこの外部ラインには、位相補償用のコンデンサC4が接続されている。
【0033】
このようにレギュレータ用IC10では、内部電源VREGの伝送ラインの少なくとも一部をレギュレータ用IC10の外側に設け、位相補償用のコンデンサC4を外付けとすることにより、レギュレータ用IC10の省スペース化等が容易となっている。
【0034】
バンドギャップ電圧生成回路22は、内部電源生成回路21から内部電源VREGの供給を受け、これを用いてバンドギャップ電圧を生成する。バンドギャップ電圧は、半導体のバンドギャップを利用して内部電源VREGの電圧より更に安定するよう生成され、レギュレータ用IC10内の各部において利用される。
【0035】
低電圧誤動作防止回路23は、レギュレータ用IC10においてUVLO[Under Voltage Lock Out]機能を発揮させる回路である。低電圧誤動作防止回路23は、入力電圧が低過ぎることに起因する誤動作を防ぐため、例えば、一定電圧以上の直流電源VCCが入力されないとレギュレータ用IC10がオンしないようにする。
【0036】
サーマルシャットダウン回路24は、過熱(過度な温度上昇)によるスイッチングレギュレータ1の熱暴走等を防止する回路である。サーマルシャットダウン回路24は、例えば、温度センサを用いて温度を継続的に検知し、検知温度が上限値を超えた場合に、各スイッチング素子(SW1、SW2)のスイッチング動作が停止されるようにする。なおサーマルシャットダウン回路24の動作精度等の観点から、サーマルシャットダウン回路24を駆動させる電源としては、直流電源VCCではなく、より電圧値等の精度が高い内部電源VREGが用いられる。
【0037】
発振回路31は、一定周波数の矩形波の電圧を生成して後段側に送出する。なお当該矩形波の周波数は、抵抗R2を用いて調整可能となっている。またスロープ回路32は、発振回路31が生成した矩形波の電圧に対して、立上り(或いは立下り)に傾斜を付ける処理を施し、処理済みの電圧(鋸波或いはこれに準じた波形の電圧)を各比較器(36、37)の非反転入力端子に出力する。
【0038】
ソフトスタート回路33は、出力電圧VOのオーバーシュートや突入電流の発生等を防ぐため、ソフトスタート機能を発揮する回路である。ソフトスタート回路33は、スイッチングレギュレータ1の起動時に誤差増幅器34へ適切な電圧を供給し、出力電圧VOが緩やかに立ち上がるようにする。なおソフトスタート回路33は、例えば、過電流検出回路52から受取る信号SSに基づいて動作する。またソフトスタート回路33には、ソフトスタート時間設定用のコンデンサC5が接続されている。コンデンサC5は、一端が端子T8を介してソフトスタート回路33に接続されており、他端が接地されている。
【0039】
誤差増幅器34は、反転入力端子に電圧VFBが、非反転入力端子に所定電圧V1がそれぞれ入力され、各入力端子の電圧値の差に応じた電圧を出力する。なおスイッチングレギュレータ1の起動時には、誤差増幅器34の非反転入力端子に入力される電圧として、ソフトスタート回路33の出力電圧が優先される。誤差増幅器34の出力側は、抵抗38aを介してオペアンプ35の反転入力端子に接続されているとともに、比較器37の反転入力端子および端子T10に接続されている。
【0040】
オペアンプ35は、非反転入力端子に所定電圧V2が入力され、各入力端子の電圧値の差に応じた電圧を出力する。なおオペアンプ35の出力側は、比較器36の反転入力端子に接続されているとともに、抵抗38bを介して、抵抗38aとオペアンプ35の反転入力端子の間に接続されている。抵抗38a、抵抗38b、およびオペアンプ35は、反転増幅器を形成していると見ることができる。また各比較器(36、37)は、各入力端子の電圧値の比較結果に応じた電圧を、制御回路51に出力する。
【0041】
ショート回路保護用比較器41は、非反転入力端子に電圧VFBが、反転入力端子に所定電圧V3がそれぞれ入力され、これらの電圧の比較結果をショート回路保護用の信号SCPとして出力する。また過電圧保護用比較器42は、非反転入力端子に電圧VFBが、反転入力端子に所定電圧V4がそれぞれ入力され、これらの電圧の比較結果を過電圧保護用の信号OVPとして出力する。
【0042】
制御回路51は、各比較器(36、37)から受ける信号に基づいて、各スイッチング素子(SW1、SW2)のPWM制御を行う。より具体的には、制御回路51は、比較器36の出力信号に応じて、スイッチング素子SW1のスイッチング動作を制御するための制御信号S1を出力する。制御信号S1は、ドライバ55および端子T7を介して、スイッチング素子SW1に入力される。
【0043】
制御信号S1がH(High)レベルのとき、スイッチング素子SW1はオンとなり、制御信号S1がL(Low)レベルのとき、スイッチング素子SW1はオフとなる。これにより比較器36の出力信号のデューティに応じて、スイッチング素子SW1のスイッチング動作が行われる。
【0044】
また制御回路51は、比較器37の出力信号に応じて、スイッチング素子SW2のスイッチング動作を制御するための制御信号S2を出力する。制御信号S2は、ドライバ53および端子T4を介して、スイッチング素子SW2に入力される。このようにドライバ53は、制御回路51とスイッチング素子SW2を結んでいる、制御信号S2の伝送ラインに設けられている。
【0045】
制御信号S2がHレベルのとき、スイッチング素子SW2はオフとなり、制御信号S2がLレベルのとき、スイッチング素子SW2はオンとなる。これにより比較器37の出力信号のデューティに応じて、スイッチング素子SW2のスイッチング動作が行われる。
【0046】
過電流検出回路52は、端子T2および端子T3の電圧に基づいて抵抗R1を流れる電流の値を検出する。そして過電流検出回路52は、当該検出値が所定の上限値を超えたとき(つまり端子Voutから出力される電流についての過電流を検出したとき)に、過電流検出信号を制御回路51に出力する。なお制御回路51は、過電流検出信号に応じて過電流に起因する不具合を防止するための動作(過電流保護動作)を行う。過電流保護動作の内容については、改めて詳細に説明する。
【0047】
またドライバ53の第1電源端子は、端子T1に接続されており、直流電源VCCが入力される。VL電圧生成回路54は、ドライバ53の第2電源端子および端子T5に接続されており、直流電源VCCの電圧を一定電圧Vsだけ減少させた電圧VLを生成し、ドライバ53の第2電源端子に供給する。なおこの電圧Vsは、ドライバ53の駆動電圧(第1電源端子の電圧と第2電源端子の電圧との差)として適正な大きさの電圧である。
【0048】
図2は、VL電圧生成回路54の構成を示している。VL電圧生成回路54では、直流電源VCCの入力端と接地点の間において、各ツェナーダイオード(54a、54b)および定電流源54cが直列に接続された形態で設けられている。なお、各ツェナーダイオード(54a、54b)のツェナー電圧の和は電圧Vsに設定されており、定電流源54cは、電圧VLの生成に必要な電流Iを流すように設定されている。
【0049】
VL電圧生成回路54によれば、各ツェナーダイオード(54a、54b)と定電流源54cの間にて電圧VL(=VCC−Vs)が生成され、ドライバ53の第2電源端子に供給される。なお、VL電圧生成回路54の構成は上述した形態に限られることなく、他の形態となっていても構わない。
【0050】
VL電圧生成回路54によれば、直流電源VCCの電圧変動などに関わらずドライバ53に適正な駆動電圧を供給し、ドライバ53に過剰な電圧が加わることは防止される。このようにVL電圧生成回路54は、ドライバ53の第1電源端子の電圧と第2電源端子の電圧との差を略一定に保つ、電圧調整回路としての役割を果たす。
【0051】
[スイッチングレギュレータの基本動作]
次に、スイッチングレギュレータ1の基本動作について説明する。スイッチングレギュレータ1の動作形態は、基本的に、出力電圧VOが目標電圧より小さいときには昇圧動作が行われる昇圧モードとなり、逆に目標電圧より大きい場合には降圧動作が行われる降圧モードとなる。
【0052】
昇圧モードにおいては、誤差増幅器34の出力電圧が、スロープ回路32の出力電圧より定常的に大きくなる。したがって、昇圧モードにおいては、比較器37から出力される電圧が定常的にLレベルになり、スイッチング素子SW2は定常的にオンになる。
【0053】
そしてオペアンプ35の出力電圧がスロープ回路32の出力電圧より大きいときは、比較器36の出力電圧はLレベルとなり、逆にスロープ回路32の出力電圧より小さいときは、比較器36の出力電圧はHレベルとなる。これにより、比較器36の出力電圧はレベル変動を生じ、スイッチング素子SW1は、このレベル変動に応じてオン/オフが切替わる。
【0054】
スイッチング素子SW1がオンになると、コイルL1に磁気エネルギーが蓄積され、逆にスイッチング素子SW1がオフになると、コイルL1に蓄積されていた磁気エネルギーが放出される。昇圧モードでは、スイッチング素子SW1のオン/オフの切替が繰り返されることにより、コイルL1における磁気エネルギーの蓄積と放出が繰り返される。このような昇圧動作がなされる結果、直流電源VCCの電圧は昇圧されて出力電圧VOとなり、電圧出力端子Voutから出力される。
【0055】
一方、降圧モードにおいては、オペアンプ35の出力電圧が、スロープ回路32の出力電圧より定常的に大きくなる。したがって、降圧モードにおいては、比較器36から出力される電圧が定常的にLレベルになり、スイッチング素子SW1は定常的にオフになる。
【0056】
そして誤差増幅器34の出力電圧がスロープ回路32の出力電圧より大きいときは、比較器37の出力電圧はLレベルとなり、逆にスロープ回路32の出力電圧より小さいときは、比較器37の出力電圧はHレベルとなる。これにより、比較器37の出力電圧はレベル変動を生じ、スイッチング素子SW2は、このレベル変動に応じてオン/オフが切替わる。
【0057】
スイッチング素子SW2がオンになると、コイルL1に磁気エネルギーが蓄積され、逆にスイッチング素子SW2がオフになると、コイルL1に蓄積されていた磁気エネルギーが放出される。降圧モードでは、スイッチング素子SW2のオン/オフの切替が繰り返されることにより、コイルL1における磁気エネルギーの蓄積と放出が繰り返される。このような降圧動作がなされる結果、直流電源VCCの電圧は降圧されて出力電圧VOとなり、電圧出力端子Voutから出力される。なおスイッチングレギュレータ1は、昇圧動作と降圧動作が切替えられて行われる、昇降圧モードの動作形態ともなり得る。
【0058】
[過電流保護動作について]
次に、スイッチングレギュレータ1において行われる過電流保護動作について、より詳細に説明する。
【0059】
制御回路51は、過電流検出回路52から過電流検出信号を受けると、スイッチ停止動作が行われるように各制御信号(S1、S2)を生成して出力する。なおスイッチ停止動作は、現在行われているスイッチング動作を停止させ、各スイッチング素子(SW1、SW2)をオフに保持する動作である。
【0060】
スイッチ停止動作が行われると、各比較器(36、37)の出力状態に関わらず、次に昇圧または降圧動作が再開されるまで、何れのスイッチング素子(SW1、SW2)もオフに維持されることとなる。これにより過電流の状態が解消され、過電流による不具合を防止することが可能である。なお何れのスイッチング素子(SW1、SW2)もオフに維持されるため、スイッチ停止動作の際に出力電圧VOの過剰な変動が回避されるとともに、次に昇圧または降圧動作を再開するとき、各スイッチング素子(SW1、SW2)がオフである状態から再開することが可能である。
【0061】
また制御回路51は、昇圧モード或いは昇降圧モードにおいて、昇圧動作が行われているときに過電流検出信号を受けた場合には、スイッチ停止動作が行われるように、図3の(A)および(B)に示すような波形の各制御信号(S1、S2)を生成して出力する。
【0062】
すなわちこの場合のスイッチ停止動作は、スイッチング素子SW2については、スイッチング動作を停止させた後に直ちにオフに保持するが、スイッチング素子SW1については、スイッチング動作を停止させた後、所定の設定時間Tsだけオンに維持した後にオフとする動作となっている。その結果、図3の(C)に示すように、コイル電流IL(コイルL1を流れる電流)や出力電流IO(出力端子Voutを流れる電流)は減少し、過電流の状態が解消されることとなる。
【0063】
なお昇圧動作がなされている状態(スイッチ停止動作が行われる前の状態)では、スイッチング素子SW1がスイッチング動作を行っており、コイル電流ILは出力電流IOより大きくなっている。そのため、仮にこの状態から直ちにスイッチング素子SW1がオフになるとすれば、過電荷がコンデンサC3に溜まり、出力電圧VOの持ち上がり(図5の(D)を参照)が生じるおそれがある。
【0064】
しかし本実施形態のスイッチ停止動作によれば、スイッチング素子SW1がスイッチング動作の停止後に直ちにオフとされるのではなく、設定時間Tsが経過するまではオンに維持される。これにより設定時間Tsの間、コイルL1の一端がスイッチング素子SW1を介して接地されるため、接地点に電荷が放出され、過電荷がコンデンサC3に溜まることは抑制される。
【0065】
その結果、図3の(D)に示すように、出力電圧VOの持ち上がりは抑えられるようになっている。そのためスイッチングレギュレータ1によれば、昇圧動作が行われているときにスイッチ停止動作が実行された場合でも、出力電圧VOの持ち上がりが後段側の回路に悪影響(過剰な電圧入力による破損など)を及ぼすことは、未然に防止される。
【0066】
またスイッチング素子SW1をオンに維持する設定時間Tsは、出来るだけ過不足のないように設定されることが望ましい。すなわち設定時間Tsは、出力電圧VOの持ち上がりが十分に抑えられる範囲で、長くなり過ぎないように設定されることが望ましい。一例として設定時間Tsは、次の(1)式で求められる値に予め設定される。
Ts=ILS×L/Vf ・・・(1)
【0067】
ここでLは、コイルL1のインダクタンスの値を表す。またILSは、スイッチ停止動作により各スイッチング素子のスイッチング動作を停止させた時点で、コイルLを流れることとなる電流の値を表す。またVfは、スイッチ停止動作により各スイッチング素子のスイッチング動作を停止させた時点で、コイルL1の前段側(スイッチング素子SW2とコイルL1の間)に生じることとなる電圧の値を表す。
【0068】
(1)式によれば、比較的良好な設定時間Tsを求めることが可能である。なお制御回路51は、設定時間Tsをカウントするカウンタを備えている。制御回路51は、このカウンタを用いて、図3の(A)に示すような波形の制御信号S1を生成し、スイッチング素子SW1を設定時間Tsだけオンに制御することが可能である。
【0069】
[その他]
以上に説明した通り、スイッチングレギュレータ1は、一端に直流電源VCCの電圧が入力され、他端が電圧出力端子Voutに接続されたコイルL1と、コイルL1の当該他端に一端が接続され、他端が接地点に接続され、両端間を導通させるオンの状態と導通させないオフの状態が切替わるスイッチング素子SW1と、電圧出力端子Voutに一端が接続され、他端が接地点に接続されたコンデンサC3と、を備えている。そしてスイッチングレギュレータ1は、スイッチング素子SW1のスイッチング動作により、コイルL1に磁気エネルギーの蓄積と放出を行わせ、直流電源VCCを昇圧させて電圧出力端子Voutから出力する。
【0070】
更にスイッチングレギュレータ1は、スイッチ停止動作を行う制御部(主に制御回路51によって実現される)を備えている。なおスイッチ停止動作は、スイッチング素子SW1のスイッチング動作を停止させてスイッチング素子SW1をオフに保持する動作となっている。また制御部は、スイッチ停止動作を行う際、スイッチング素子SW1のスイッチング動作を停止させる時、スイッチング素子SW1を、設定時間Tsだけオンに維持した後にオフに保持する。
【0071】
そのためスイッチングレギュレータ1によれば、スイッチ停止動作に伴う出力電圧VOの持ち上がりを抑えることが可能となっている。なおスイッチ停止動作は、本実施形態のように過電流保護のための動作として行われる他、例えば、過電圧保護や過熱防止等のための動作として行われるようにしても良い。
【0072】
またスイッチングレギュレータ1は、直流電源VCCの電圧が入力される電源入力端子Vinに一端が接続され、他端がコイルL1の一端に接続され、両端間を導通させるオンの状態と導通させないオフの状態が切替わるスイッチング素子SW2をも備えている。
【0073】
そしてスイッチングレギュレータ1は、スイッチング素子SW2をオンに維持し、スイッチング素子SW1にスイッチング動作を行わせることにより、直流電源VCCの電圧を昇圧させて出力端子Voutから出力する昇圧動作と、スイッチング素子SW1をオフに維持し、スイッチング素子SW2にスイッチング動作を行わせることにより、直流電源VCCの電圧を降圧させて出力端子Voutから出力する降圧動作と、を行う。また制御部は、スイッチ停止動作を行う際、スイッチング素子SW1とともにスイッチング素子SW2をもオフに維持する。
【0074】
なお本実施形態のスイッチングレギュレータ1は、このように昇降圧チョッパレギュレータとなっているが、本発明の適用範囲は昇降圧チョッパレギュレータに限られるものではなく、降圧動作を行わない昇圧チョッパレギュレータ等にも適用可能である。
【0075】
またスイッチングレギュレータ1は、車載用の電源装置に好適であり、更に各種電気機器の電源装置などにも広く適用可能である。車載用の電源装置に適用される場合、スイッチングレギュレータ1は、例えば、電源入力端子Vinに車載のバッテリが接続され、電圧出力端子Voutに車載の電気機器が接続された形態で用いられる。
【0076】
なお本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、各種電気機器の電源装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 スイッチングレギュレータ
10 レギュレータ用IC
21 内部電源生成回路
22 バンドギャップ電圧生成回路
23 低電圧誤動作防止回路
24 サーマルシャットダウン回路
31 発振回路
32 スロープ回路
33 ソフトスタート回路
34 誤差増幅器
35 オペアンプ
36、37 比較器
38a、38b 抵抗
41 ショート回路保護用比較器
42 過電圧保護用比較器
51 制御回路
52 過電流検出回路
53 ドライバ
54 VL電圧生成回路
55 ドライバ
C1〜C5 コンデンサ
D1、D2 ダイオード
L1 コイル(インダクタ)
SW1 スイッチング素子(第1スイッチング素子)
SW2 スイッチング素子(第2スイッチング素子)
R1、R2 抵抗
1〜T13 端子
GND 接地用端子
Vin 電源入力端子
Vout 電圧出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に入力電圧が入力され、他端が出力端子に接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端に一端が接続され、他端が接地点に接続され、両端間を導通させるオンの状態と導通させないオフの状態が切替わる、第1スイッチング素子と、
前記出力端子に一端が接続され、他端が接地点に接続されたコンデンサと、を備え、
第1スイッチング素子のスイッチング動作により、前記インダクタに磁気エネルギーの蓄積と放出を行わせ、前記入力電圧を昇圧させて前記出力端子から出力するスイッチングレギュレータであって、
前記スイッチング動作を停止させて第1スイッチング素子をオフに保持する、スイッチ停止動作を行う制御部を備え、
前記制御部は、スイッチ停止動作を行う際、
前記スイッチング動作を停止させる時、第1スイッチング素子を、所定の設定時間だけオンに維持した後にオフに保持することを特徴とするスイッチングレギュレータ。
【請求項2】
前記制御部は、
前記出力端子から出力される電流についての過電流が検出されたときに、スイッチ停止動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項3】
前記入力電圧が入力される入力端子に一端が接続され、他端が前記インダクタの一端に接続され、両端間を導通させるオンの状態と導通させないオフの状態が切替わる、第2スイッチング素子を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項4】
第2スイッチング素子をオンに維持し、第1スイッチング素子にスイッチング動作を行わせることにより、前記入力電圧を昇圧させて前記出力端子から出力する昇圧動作と、
第1スイッチング素子をオフに維持し、第2スイッチング素子にスイッチング動作を行わせることにより、前記入力電圧を降圧させて前記出力端子から出力する降圧動作と、
を行うことを特徴とする請求項3に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項5】
前記制御部は、スイッチ停止動作を行う際、
第2スイッチング素子をオフに保持することを特徴とする請求項4に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項6】
第1スイッチング素子および第2スイッチング素子は、MOSトランジスタであることを特徴とする請求項3から請求項5の何れかに記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項7】
第2スイッチング素子を制御する制御信号の伝送ラインに設けられたドライバと、
前記ドライバの第1電源端子の電圧と第2電源端子の電圧との差を略一定に保つ、電圧調整回路と、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項8】
前記設定時間は、
前記コイルのインダクタンスの値L、前記スイッチング動作を停止させた時点で前記コイルを流れることとなる電流の値ILS、および、前記スイッチング動作を停止させた時点で前記コイルの前段側に生じることとなる電圧の値Vf、に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項9】
前記設定時間は、ILS×L/Vfで求められる時間に設定されていることを特徴とする請求項8に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項10】
車載用の電源装置に適用されることを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のスイッチングレギュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99197(P2013−99197A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242222(P2011−242222)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】