説明

スイッチング回路、電子回路及びスイッチング方法

【課題】スイッチング電源における電力損失を最小にするデッドタイムの設定に関して、信頼性をより高める。
【解決手段】DC−DCコンバータのスイッチング部18は、スイッチング駆動部5、温度検出部19、デッドタイム設定部21を有する。温度検出部19は、スイッチング駆動部5の温度Θを示す温度検出信号20をデッドタイム設定部21へ出力する。デッドタイム設定部21は、温度検出部19により出力された温度Θが示す温度検出信号に基づき、スイッチング駆動部5の温度Θがより低いデッドタイムdtを探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路、電子回路及びスイッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば一方が同期整流器として機能する2つの制御スイッチを用いて直流電圧を変換するDC(Direct Current)−DCコンバータ等のスイッチング電源がある。各制御スイッチは、オンから完全にオフになるまでに遅延があるため、各制御スイッチが同時にオンになる状況が発生すると、直列に接続された各制御スイッチ間に貫通電流が流れる。
【0003】
各制御スイッチ間に貫通電流が流れると、スイッチング電源の出力の効率が低下するので、効率の低下を防止すため、各制御スイッチが同時にオンにならないように制御することが一般的である。そこで、一方の制御スイッチがオンになっている期間と、他方の制御スイッチがオンになっている期間との間にデッドタイムと呼ばれる期間を設定することが知られている。
【0004】
しかし、デッドタイムを設定しても、デッドタイムの期間においてコイルの逆起電力により電力損失が発生するので、デッドタイムに比例して電力損失が大きくなるという問題があった。
【0005】
そこで、例えば特許文献1には、次の技術が開示されている。すなわち、デッドタイムの期間における電力損失に関連付けられるパラメータを推定し、第1のデッドタイム及び第2のデッドタイムに係るパラメータと関連付けられる電力損失を比較する。そして、いずれか小さい電力損失に係るデッドタイムを設定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、推定した電力損失に関連付けられるパラメータに基づいて電力損失が小さいデッドタイムを設定するので、推定による誤差等により、スイッチング電源における電力損失を最小にするという点で信頼性が低い。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スイッチング電源における電力損失を最小にするデッドタイムの設定に関して、信頼性をより高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、スイッチング回路であって、 直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有するスイッチ部と、前記スイッチ部の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を出力する温度検出部と、前記温度検出部により出力された温度検出信号に基づき、各前記スイッチをオンにする時刻の差分であるデッドタイムを前記スイッチへの入力信号に設定する設定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、電子回路であって、所定の電子回路と、所定の電子回路と、直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有するスイッチ部と、前記スイッチ部の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を出力する温度検出部と、前記温度検出部により出力された温度検出信号に基づき、各前記スイッチをオンにする時刻の差分であるデッドタイムを算出する算出部と、前記温度検出部により出力された温度検出信号と、前記算出部により該温度検出信号に基づき算出されたデッドタイムとを対応付けて記憶する記憶部と、前記温度検出部により第1の時刻において出力された温度検出信号と、前記記憶部に記憶される前記温度検出部により前記第1の時刻以前の第2の時刻において出力された温度検出信号とのいずれか低い温度を示す温度検出信号に対応付けられるデッドタイムを前記スイッチへの入力信号に設定する設定部と、前記設定部によりデッドタイムが設定された入力信号に基づき前記スイッチ部が生成した駆動信号により駆動して前記所定の電子回路に電源を供給する電源部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、スッチング回路が実行するスイッチング方法であって、直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有するスイッチ部の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を出力する信号出力工程と、前記信号出力工程により出力された温度検出信号に基づき、各前記スイッチをオンにする時刻の差分であるデッドタイムを算出する算出工程と、前記信号出力工程により出力された温度検出信号と、前記算出工程により算出された該温度検出信号に基づくデッドタイムとを対応付けて記憶部に記憶させる記憶工程と、前記信号出力工程により第1の時刻において出力された温度検出信号と、前記記憶部に記憶される前記信号出力工程により前記第1の時刻以前の第2の時刻において出力された温度検出信号とのいずれか低い温度を示す温度検出信号に対応付けられるデッドタイムを前記スイッチへの入力信号に設定する設定工程と、前記設定工程によりデッドタイムが設定された入力信号に基づき駆動信号を生成し、生成した駆動信号を出力して電源部を駆動する電源駆動工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチング電源における電力損失を最小にするデッドタイムの設定に関して、信頼性をより高めるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、DC−DCコンバータの概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、DC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、DC−DCコンバータにおけるデッドタイムの一例を示す図である。
【図4】図4は、DC−DCコンバータのスイッチング駆動部におけるデッドタイム期間の動作の一例を示す図である。
【図5】図5は、DC−DCコンバータにおけるデッドタイム、効率及び温度の関係の一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図7は、実施の形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング駆動部の温度検出部の構成の一例を示すブロック図である。
【図8】図8は、実施の形態の変形例に係るDC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】図9は、実施の形態に係るDC−DCコンバータにおけるデッドタイムの設定値の探索処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、スイッチング回路、電子回路及びスイッチング方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態では、スイッチング回路を適用したスイッチング電源として、直流電圧を変換するDC(Direct Current)−DCコンバータを例示する。しかし、以下の例示に限らず、スイッチング回路は、インバータ回路等、様々なタイプの電子回路に対して広く適用してもよい。また、以下に例示する各実施の形態は、適宜組合せてもよい。
【0014】
[実施の形態]
(DC−DCコンバータの概略構成)
図1は、DC−DCコンバータの概略構成の一例を示すブロック図である。DC−DCコンバータ100は、アンプ1、三角波生成部2、比較器3、スイッチング部8、平滑回路6を有する。DC−DCコンバータ100には、DC−DCコンバータ100が電力を供給する回路である負荷7が接続される。なお、平滑回路6及び負荷7は、グラウンドされる。
【0015】
アンプ1は、平滑回路6から出力される直流出力電圧VOUTと、外部から入力される設定電圧VREFとの差に基づき誤差信号を生成して比較器3へ出力するエラーアンプである。三角波生成部2は、三角波を生成して比較器3へ出力する。
【0016】
比較器3は、アンプ1により生成された誤差信号と、三角波生成部2により生成された三角波とを比較し、ハイレベル及びローレベルを持つパルス信号PWMを生成してスイッチング部8へ出力する。なお、パルス信号PWMは、PWM(Pulse Width Modulation)方式によりパルス幅が可変である。
【0017】
スイッチング部8は、デッドタイム設定部4、スイッチング駆動部5を有する。デッドタイム設定部4は、比較器3により生成されたパルス信号PWMにデッドタイムを付加してスイッチング駆動部5へ出力する。スイッチング駆動部5は、デッドタイム設定部4によりデッドタイムが付加されたパルス信号PWMに基づき平滑回路6を駆動する。平滑回路6は、コイル6a及びグラウンドされるコンデンサ6bを有するLPF(Low Pass Filter)であり、スイッチング駆動部5により駆動され、直流出力電圧VOUTをアンプ1へ出力する。
【0018】
なお、直流出力電圧VOUTの電圧値は、設定電圧VREFの電圧値及びパルス信号PWMのハイレベル及びローレベルの時間比で決定される。
【0019】
(DC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成)
図2は、DC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、DC−DCコンバータ100のスイッチング駆動部5は、電界効果トランジスタの一種であるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)9、MOSFET10を有する。なお、スイッチング駆動部5が有するMOSFETは2個に限定されるものではなく、3個以上であってもよい。
【0020】
MOSFET9は、ソース端子が入力電圧V1と接続され、ドレイン端子がMOSFET10のドレイン端子と接続され、ゲート端子が信号線を介してデッドタイム設定部4と接続される。また、MOSFET10は、ドレイン端子がMOSFET9のドレイン端子と接続され、ソース端子がグラウンドされ(図2に示す“G”参照)、ゲート端子が信号線を介してデッドタイム設定部4と接続される。さらに、MOSFET9及びMOSFET10のドレイン端子は、平滑回路6と接続される。なお、MOSFET10は、同期整流用のスイッチとして機能する。
【0021】
スイッチング駆動部5において、MOSFET9及びMOSFET10は、スイッチとして機能する。MOSFET9はハイサイドMOSFETであり、MOSFET10はローサイドMOSFETである。MOSFET9のゲート端子には、信号線を介してデッドタイム設定部4からハイサイド信号11が入力され、MOSFET10のゲート端子には、信号線を介してデッドタイム設定部4からローサイド信号12が入力される。
【0022】
そして、スイッチング駆動部5において、ハイサイド信号11及びローサイド信号12が交互にハイレベル及びローレベルになることにより、MOSFET9及びMOSFET10が交互にオン及びオフとなり、PWM出力13が平滑回路6へ出力される。PWM出力13は、平滑回路6においてフィルタリングされてDC信号となり、後段の負荷7へ出力される。
【0023】
(デッドタイムについて)
図3は、DC−DCコンバータにおけるデッドタイムの一例を示す図である。図3では、横軸は時刻tを示す。なお、ハイサイド信号11がハイレベルになると、MOSFET9がオンになり、ローサイド信号12がハイレベルになると、MOSFET9がオンになる。
【0024】
図3に示すように、時刻t1においてローサイド信号12のパルスがローレベルとなり、続いて時刻t2においてハイサイド信号11のパルスがローレベルとなる。ハイサイド信号11及びローサイド信号12がともにローレベルとなった時刻t2において、PWM出力13のパルスがハイレベルとなる。
【0025】
また、図3に示すように、時刻t3においてハイサイド信号11のパルスがハイレベルとなり、PWM出力13のパルスがハイレベルとなる。続いて時刻t4においてローサイド信号12のパルスがハイレベルとなる。なお、時刻t5〜時刻t8においても、時刻t1〜時刻t4と同様である。図3に示す時刻t2及び時刻t1の差分、時刻t4及び時刻t3の差分、時刻t6及び時刻t5の差分、時刻t8及び時刻t7の差分がデッドタイムである。
【0026】
ところで、スイッチング電源の効率は(出力電圧×負荷電流)/入力電力で表され、高いことが望ましい。図2に示す入力電力V1は、負荷7及び設定電圧VREFにより決まり、効率低下の主な要因は入力電力Vが大きいことにある。図2に示す構成のスイッチング駆動部5は、図3に示すように、ハイサイドのMOSFET9と、ローサイドのMOSFET10の両方が同時にオンとなる期間があり、入力電圧V1からグラウンドGへの電流経路が形成される貫通状態が発生する可能性がある。
【0027】
貫通状態になると、MOSFET9及びMOSFET10の各スイッチングの瞬間にスパイク状の電流が発生し、効率の低下やデバイスの破壊の原因となる。そこで、ハイサイド信号11及びローサイド信号12がオンとなる状態の間に、図3に示すようなデッドタイムを設け、貫通電流を低減する。
【0028】
(スイッチング駆動部におけるデッドタイム期間の動作)
図4は、DC−DCコンバータのスイッチング駆動部におけるデッドタイム期間の動作の一例を示す図である。図4は、ローサイドのMOSFET10がオフとなっている状態で、ハイサイドのMOSFETがオンからオフとされデッドタイム期間に入った瞬間を示す(図4の(1)参照)。
【0029】
図4に示す状態では、MOSFET9及びMOSFET10は、ともに、ゲート端子及びソース端子間の電圧がゼロとなりオフとなる。このとき、平滑回路6のコイル6aで発生する逆起電力によりPWM出力13の電位が低下する。そして、PWM出力13の電位が0[V]を下回り、同期整流用のMOSFET10の所定閾値以下になったときにMOSFET10をオンにする(図4の(2)参照)。
【0030】
すると、MOSFET10のソース端子からドレイン端子を経て平滑回路6のコイル6aへの逆向きの電流15が流れる。このとき、MOSFET10のゲート端子及びソース端子間の電圧に応じてMOSFET10のオン抵抗14が発生する。電流15の電流値をI、オン抵抗14の抵抗値をRとすると、IRで表される電力がオン抵抗14により熱として消費される。これは無駄な電力消費であり、スイッチング電源の効率の低下を招くことになる。したがって、効率の観点から、デッドタイムはできるだけ短く設定することが望ましい。
【0031】
(デッドタイム、効率及び温度の関係について)
図5は、DC−DCコンバータにおけるデッドタイム、効率及び温度の関係の一例を示す図である。なお、図5では、横軸でデッドタイムdtを示し、縦軸でMOSFET9及びMOSFET10の各素子を有するスイッチング駆動部5の効率η及び温度Θを示す。図5では、デッドタイムdtと効率ηとの関係をグラフ16で示し、デッドタイムdtと温度Θとの関係をグラフ17で示す。すなわち、スイッチング駆動部5は、図5に示す効率特性及び温度特性を持つ。
【0032】
図5に示すように、スイッチング駆動部5の効率ηは、デッドタイムdt=a2のとき極大値η2となり、スイッチング駆動部5の温度Θは、デッドタイムdt=a2のとき極小値Θ2となる。よって、デッドタイムdtとしてa2を設定することにより、効率が最大になり、温度が最低となる。デッドタイムdt<aのときは、貫通電流により効率ηが低下し、デッドタイムdt>aのときは、デッドタイム期間により効率が低下する。
【0033】
すなわち、図5に示す効率特性及び温度特性によれば、a2より十分小さいa1をデッドタイムの初期値として設定し、デッドタイムの設定値を徐々に大きく設定していくことにより、温度Θが最低かつ効率ηが最大となる最適なデッドタイムa2を検出する。例えば、図5に示すように、デッドタイムの設定値を十分小さな初期値a1から所定値ずつ徐々に大きく設定していき、温度Θが最低かつ効率ηが最大となる最適なデッドタイムa2を検出することを、デッドタイムの探索と呼ぶこととする。
【0034】
スイッチング電源の消費電力は、同期整流用のMOSFET10で消費される割合がほとんどであり、その熱による素子の温度特性は、効率ηとは逆の傾向を示す。したがって、素子の温度特性がより低いデッドタイムを設定することで回路の効率ηを最大化する。
【0035】
(実施の形態に係るスイッチング駆動部の構成)
図6は、実施の形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成の一例を示すブロック図である。実施の形態に係るDC−DCコンバータ200のスイッチング部18は、スイッチング駆動部5、温度検出部19、デッドタイム設定部21を有する。なお、DC−DCコンバータ200の説明では、DC−DCコンバータ100と同一の構成には同一の参照符号を付与し、説明を省略する。
【0036】
温度検出部19は、スイッチング駆動部5の温度Θを示す温度検出信号20をデッドタイム設定部21へ出力する。なお、温度検出部19は、スイッチング駆動部5の温度Θをより正確に検出するように、スイッチング部18の回路上において、スイッチング駆動部5の周辺の適切な位置に配置される。デッドタイム設定部21は、温度検出部19により出力された温度Θに基づく温度検出信号に基づき、スイッチング駆動部5の温度Θがより低いデッドタイムdtを探索する。
【0037】
(実施の形態に係る温度検出部の構成)
図7は、実施の形態に係るDC−DCコンバータのスイッチング駆動部の温度検出部の構成の一例を示すブロック図である。図7では、絶対温度に比例する電流であるPTAT(Proportional To Absolute Temperature)電流を用いる。温度検出部19は、P型MOSFET22〜24、差動アンプ25、抵抗26、電流−電圧変換用抵抗27、バイポーラトランジスタ28〜29を有する。
【0038】
P型MOSFET22〜24は、各ソース端子が入力電圧V2と接続される。また、P型MOSFET22〜24の各ゲート端子は、作動アンプ25の出力端子と接続される。P型MOSFET22のドレイン端子は、作動アンプ25のマイナス端子と、バイポーラトランジスタ28のエミッタ端子とに接続される。
【0039】
また、P型MOSFET23のドレイン端子は、作動アンプ25のプラス端子と、抵抗26とに接続される。抵抗26のP型MOSFET23のドレイン端子との接続端ではない他方の接続端は、バイポーラトランジスタ29のエミッタ端子と接続される。
【0040】
また、P型MOSFET24のドレイン端子は、電流−電圧変換用抵抗27と接続される。電流−電圧変換用抵抗27のP型MOSFET24のドレイン端子との接続端ではない他方の接続端は、グラウンドされる。また、バイポーラトランジスタ28〜29のベース端子及びコレクタ端子は、グラウンドされる。
【0041】
このように、実施の形態では、温度検出部19は、バイポーラトランジスタのバイアス電流が絶対温度に比例することを利用し、PTAT電流30を生成する。そして、温度検出部19は、電流−電圧変換用抵抗27によりPTAT電流30を変換したPTAT電圧31を温度検出信号とし、デッドタイム設定部21へ出力する。このような温度検出部19の構成は、簡易な回路構成で実現することができ、コスト低減を実現する。
【0042】
(実施の形態の変形例に係るスイッチング駆動部の構成)
図8は、実施の形態の変形例に係るDC−DCコンバータのスイッチング駆動部の構成の一例を示すブロック図である。実施の形態の変形例に係るDC−DCコンバータ300のスイッチング部38は、スイッチング駆動部5、温度検出部29、デッドタイム設定部41を有する。なお、DC−DCコンバータ300の説明では、DC−DCコンバータ200と同一の構成には同一の参照符号を付与し、説明を省略する。
【0043】
温度検出部29は、図7に示す構成に加え、AD(Analog Digital)コンバータ32を有する。温度検出部29は、図7に示すPTAT電圧31をADコンバータ32にてサンプリングし、温度検出信号20をデジタル信号に変換してデッドタイム設定部41へ出力する。デッドタイム設定部41は、温度検出信号20をデジタル回路である論理回路33にて演算処理する。
【0044】
論理回路33は、スイッチング駆動部5の温度がより低くなるデッドタイムの設定値を探索する。ここで、スイッチング駆動部5の周辺温度と、負荷条件とが一定であることを前提とする。論理回路33は、温度がより低くなるデッドタイムの設定値に対応するデッドタイムをハイサイド信号11及びローサイド信号12に付与してスイッチング駆動部5へ出力する。このときのハイサイド信号11及びローサイド信号12は、デジタル信号である。
【0045】
スイッチング駆動部5は、ハイサイド信号11及びローサイド信号12がパルス信号(PWM信号)であるので、論理回路33から出力されたデジタル信号であるハイサイド信号11及びローサイド信号12を用いてもよい。
【0046】
このように、温度検出部29が検出した温度検出信号をデジタル処理することで、例えば図8に示すようにデッドタイム設定部41に記憶部34を設けてデッドタイム設定値を記憶させてもよい。以前のデッドタイムの設定値を記憶しておくことで、温度検出部29により検出された温度を示す温度検出信号に対応付けられたデッドタイムの設定値を記憶部34から読み出してスイッチング駆動部5へ出力する。
【0047】
このように、デッドタイム設定部41が、過去のデッドタイム及び対応する前記温度検出信号を記憶部34に記憶させておくことで、最適なデッドタイムの探索を容易に行うことができ、または、最適なデッドタイム設定値を探索するための時間を短縮する。または、デッドタイム設定部34は、温度検出信号をデジタル処理するように構成されることで、設計コストや部品点数を低減し、また、多機能化に容易に対応できる。
【0048】
(デッドタイムの設定値の探索処理)
図9は、実施の形態に係るDC−DCコンバータにおけるデッドタイムの設定値の探索処理を示すフローチャートである。図9は、DC−DCコンバータ200のスイッチング部18及びDC−DCコンバータ300のスイッチング部38が行うデッドタイムの設定値の探索処理を示す。スイッチング部18(38)は、デッドタイムの設定値の探索処理を、例えば起動時に実行する。なお、図9に示すデッドタイムの設定値の探索処理では、スイッチング駆動部5が、図5に示す効率特性及び温度特性を持つとする。
【0049】
先ず、スイッチング部18(38)は、デッドタイムdtのインデックスiに0をセットし、デッドタイムの初期値としてa1を選択する(ステップS11)。なお、i=0は、十分小さなデッドタイムの初期値a1に対応するインデックスである。
【0050】
続いて、スイッチング部18(38)は、現在選択されているデッドタイムを設定する(ステップS12)。続いて、スイッチング部18(38)は、検出したスイッチング駆動部5の温度に基づき温度検出信号S[i]を生成し、インデックスiに対応付けて記憶する(ステップS13)。
【0051】
続いて、スイッチング部18(38)は、i≧1であってS[i−1]<S[i]であるか否かを判定する(ステップS14)。すなわち、スイッチング部18(38)は、i≧1の場合、iについてワンステップ前に記憶した過去の温度検出信号S[i−1]と、ステップS13で生成した温度検出信号S[i]とを比較する。
【0052】
スイッチング部18(38)は、i≧1であってS[i−1]<S[i]であると判定した場合(ステップS14Yes)には、デッドタイムの設定値の探索処理を終了する。一方、スイッチング部18(38)は、i≧1であってS[i−1]<S[i]であると判定しなかった場合(ステップS14No)には、ステップS15を実行する。ステップS15では、スイッチング部18(38)は、iをインクリメントし、ステップS12を実行する。
【0053】
図9に示すデッドタイムの設定値の探索処理によれば、スイッチング部18(38)は、1ステップ前の温度検出信号S[i−1]と、最新の温度検出信号S[i]との比較を行う。そして、スイッチング部18(38)は、温度検出信号S[i]が1ステップ前の温度検出信号S[i−1]よりも高ければ、1ステップ前のデッドタイムを最適なデッドタイムとして採用する。デッドタイムを総当たりで探索する場合と比較して、記憶部34の記憶容量や探索処理時間を低減する。
【0054】
なお、上述した実施の形態では、スイッチング駆動部5の回路の温度を検出するとしたが、回路の温度に限らず、回路に含まれる各素子の各温度を検出することとしてもよい。この場合、温度検出部19及び29は、回路に含まれる素子の温度を検出するべく、スイッチング部18及び28の回路上において、MOSFET9又はMOSFET10の周辺の適切な位置に配置される。例えば、温度検出部19及び29がMOSFET10の周辺の適切な位置に配置される場合には、MOSFET10の温度Θをより反映した温度検出信号を出力する。
【0055】
また、温度検出部19及び29をスイッチング駆動部5の素子毎に設け、デッドタイムの最適値の探索は、各素子の温度の平均や最大値等の統計値に基づいて行ってもよい。もしくは、回路に含まれる素子から一又は複数の素子を予め選択しておき、選択した素子から検出した温度に基づいてデッドタイムの最適値を探索することとしてもよい。
【0056】
なお、スイッチング部18及び28の回路上において、温度検出部19及び29が温度を検出する対象とする回路又は素子に応じて、図5に示すようなデッドタイム、効率及び温度の関係が異なることは言うまでもない。
【0057】
また、上述した実施の形態では、スイッチング駆動部5の同期整流用の素子としてMOSFET10を用いた例を示した。MOSFETは、抵抗が小さいので、DC−DCコンバータ200(300)の効率をより高める。しかし、MOSFETに限らず、同期整流用の素子として整流用ダイオードを用いてもよい。
【0058】
(実施の形態による効果)
以上のように、実施の形態に係るDC−DCコンバータ200(300)は、電力損失の指標として、スイッチング駆動部5の回路の温度というパラメータを用いてデッドタイムの最適値を探索する。このため、効率が最大となるようデッドタイムを容易にかつより正確に設定可能とする。
【0059】
また、実施の形態に係るDC−DCコンバータ200(300)を半導体回路の給電装置に適用することで、より効率を高めることで半導体回路全体の消費電力を低減する。これは、スイッチング電源、特にスイッチング駆動部5の消費電力が半導体回路全体の中でも大きいためである。
【符号の説明】
【0060】
4、21、41 デッドタイム設定部
5 スイッチング駆動部
6 平滑回路
7 負荷
8、18、38 スイッチング部
9 MOSFET(ハイサイドMOSFET)
10 MOSFET(ローサイドMOSFET)
11 ハイサイド信号
12 ローサイド信号
13 PWM出力
19、29 温度検出部
20 温度検出信号
31 PTAT電圧
32 ADコンバータ
33 論理回路
34 記憶部
100、200、300 DC−DCコンバータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特表2007−535286号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有するスイッチ部と、
前記スイッチ部の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を出力する温度検出部と、
前記温度検出部により出力された温度検出信号に基づき、各前記スイッチをオンにする時刻の差分であるデッドタイムを前記スイッチへの入力信号に設定する設定部と
を備えることを特徴とするスイッチング回路。
【請求項2】
前記設定部は、前記温度検出部により出力された温度検出信号が示す温度より低い温度を示す温度検出信号に基づきデッドタイムを設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
前記スイッチ部は、前記設定部によりデッドタイムが設定された入力信号に基づき駆動信号を生成し、生成した駆動信号により電源部を駆動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記温度検出部により出力された温度検出信号と、前記設定部により設定されたデッドタイムとを対応付けて記憶する記憶部
をさらに備え、
前記設定部は、前記温度検出部により出力された温度検出信号に対応するデッドタイムを前記記憶部から読み出して設定する
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記設定部は、前記温度検出部により第1の時刻において出力された温度検出信号と、前記記憶部に記憶される前記温度検出部により前記第1の時刻以前の第2の時刻において出力された温度検出信号とのいずれか低い温度を示す温度検出信号に基づきデッドタイムを設定する
ことを特徴とする請求項4に記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記温度検出部は、PTAT(Proportional To Absolute Temperature)回路である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記温度検出部は、デジタル信号で温度検出信号を出力し、
前記設定部は、前記温度検出部により出力された温度検出信号をデジタル処理することでデッドタイムを設定する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載のスイッチング回路。
【請求項8】
前記スイッチは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載のスイッチング回路。
【請求項9】
所定の電子回路と、
直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有するスイッチ部と、
前記スイッチ部の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を出力する温度検出部と、
前記温度検出部により出力された温度検出信号に基づき、各前記スイッチをオンにする時刻の差分であるデッドタイムを算出する算出部と、
前記温度検出部により出力された温度検出信号と、前記算出部により該温度検出信号に基づき算出されたデッドタイムとを対応付けて記憶する記憶部と、
前記温度検出部により第1の時刻において出力された温度検出信号と、前記記憶部に記憶される前記温度検出部により前記第1の時刻以前の第2の時刻において出力された温度検出信号とのいずれか低い温度を示す温度検出信号に対応付けられるデッドタイムを前記スイッチへの入力信号に設定する設定部と、
前記設定部によりデッドタイムが設定された入力信号に基づき前記スイッチ部が生成した駆動信号により駆動して前記所定の電子回路に電源を供給する電源部と
を備えることを特徴とする電子回路。
【請求項10】
スッチング回路が実行するスイッチング方法であって、
直列に接続された少なくとも2つのスイッチを有するスイッチ部の温度を検出し、検出した温度を示す温度検出信号を出力する信号出力工程と、
前記信号出力工程により出力された温度検出信号に基づき、各前記スイッチをオンにする時刻の差分であるデッドタイムを算出する算出工程と、
前記信号出力工程により出力された温度検出信号と、前記算出工程により算出された該温度検出信号に基づくデッドタイムとを対応付けて記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記信号出力工程により第1の時刻において出力された温度検出信号と、前記記憶部に記憶される前記信号出力工程により前記第1の時刻以前の第2の時刻において出力された温度検出信号とのいずれか低い温度を示す温度検出信号に対応付けられるデッドタイムを前記スイッチへの入力信号に設定する設定工程と、
前記設定工程によりデッドタイムが設定された入力信号に基づき駆動信号を生成し、生成した駆動信号を出力して電源部を駆動する電源駆動工程と
を含むことを特徴とするスイッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−62952(P2013−62952A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199840(P2011−199840)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】