スイッチング電源回路及びトランス
【課題】 負荷の急峻な電流立ち上がりに対してオンオフいずれの期間にも必要な電流を直ちに供給できるスイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】 一次コイルと、疎結合の二次コイルと、接続点タップとを具備するトランスと、一次コイル他端に対する直流電圧オンオフを切り替えるスイッチング素子と、一次コイル他端へ電流を流す一次側ダイオードと、二次コイル他端へ向かう電流を流す二次側ダイオードとを有し、オンのとき、一次コイルからタップへ流れる第1電流と、二次コイルに生じる磁気誘導によりタップへ流れる第2電流とを出力し、オフのとき、一次側ダイオードから一次コイルを通りタップへ流れる第3電流と、二次コイルに生じる磁気誘導によりタップへ流れる第4電流とを出力する。
【解決手段】 一次コイルと、疎結合の二次コイルと、接続点タップとを具備するトランスと、一次コイル他端に対する直流電圧オンオフを切り替えるスイッチング素子と、一次コイル他端へ電流を流す一次側ダイオードと、二次コイル他端へ向かう電流を流す二次側ダイオードとを有し、オンのとき、一次コイルからタップへ流れる第1電流と、二次コイルに生じる磁気誘導によりタップへ流れる第2電流とを出力し、オフのとき、一次側ダイオードから一次コイルを通りタップへ流れる第3電流と、二次コイルに生じる磁気誘導によりタップへ流れる第4電流とを出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ付きインダクタを用いたスイッチング電源回路及びこの回路に用いられるトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
降圧型スイッチング電源回路は、多くの用途において大電流、低電圧及び高速応答の出力を要求される。図12は、降圧型スイッチング電源回路の一つであり特許文献1及び非特許文献1等に記載された「タップ付きインダクタ降圧コンバータ」の基本例を示す。図12の降圧型スイッチング電源回路は、直列にチョークコイル結合されたコイルL11とコイルL12との接続点にタップを有するトランスT10を有し、スイッチング素子Q21がコイルL11に対する直流電源Vinからの直流電圧の印加をオンオフする。また、ダイオードD31のカソードがタップへ接続され、アノードは接地点へ接続されている。コイルL12の出力側と接地点との間には平滑コンデンサCが接続され、電圧Voが出力される。スイッチング素子Q21の制御端子にはパルス幅変調信号が入力され、負荷の変動に対してオン期間を調整することにより電源回路の出力電圧を一定に保持する帰還制御を行っている。尚、破線で示すダイオードD32は、後述する問題点の説明のために示しているが実際には接続されない。
【0003】
スイッチング素子Q21がオンのとき、コイルL11及びL12を通して出力端子Voに直流電圧が出力される。Q21がオフになると、コイルL11及びL12に対する電圧供給は停止するが、タップにダイオードD31が接続されているため、コイルL12に生じる逆起電力(フライバック電圧)によりダイオードD31からコイルL12を通って電流が流れ、出力端子Voに直流電圧が出力される。
【0004】
先ず、コイルL11の役割を説明するために、図12の回路においてコイルL11のない(コイルL12とダイオードD31のみ)場合の回路の問題点について説明する。十分な出力電流を得るためにコイルL12のインダクタンスを小さくすると、Q21がオンになった瞬間にコイルL12に流れる電流のピーク値が大きく、回路の配線等から電磁波として放出されるノイズレベルが大きい。このオン時のピーク電流値はオン期間のパルス幅をいかに狭くしても下げることができない。
【0005】
また、コイルL12のインダクタンスが小さいため、オン期間のパルス幅を拡げることができない。パルス幅を拡げると直流電圧が直接印加されたときと同じ作用をもたらし、直流電圧印加時間が長くなるにつれてコイルL12は単なる直流抵抗成分としてのみ働くため、直流電圧が直接負荷に印加されることとなり、低電圧仕様の負荷は破壊される。これを避けるために、非常に狭いパルス幅でスイッチング制御を行おうとすると、スイッチング素子Q21の応答特性が限界となる。
【0006】
上記の問題点を回避するため、図12のようにコイルL12よりもインダクタンスの大きいコイルL11を直列に挿入する必要がある。これによりコイルL11及びコイルL12を流れるオン時のピーク電流値を制限し、スイッチング素子Q21により制御し易い長さのオン期間をとることができるようになった。
【特許文献1】特開2005−101406号公報(図5、0026)
【非特許文献1】コーセル株式会社、「電源について」、p36-37、平成17年7月20日検索、<URL:http://www.cosel.co.jp/jp/products/img/technotes.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図12の回路のようにインダクタンスの大きいコイルL11を挿入したことにより、以下の問題点が新たに生じた。
その1つは、スイッチング素子Q21がオンしたときにインダクタンスの大きいコイルL11の電流値は徐々に上昇するため、負荷の急峻な電流の立ち上がりに対応できないことである。すなわち、オン期間において大電流、低電圧及び短時間での電流の立ち上がりを要求する負荷に対する応答性がよくないという問題が生じる。
【0008】
一方、オフ期間には、オン期間にコイルL11及びコイルL12に蓄積された磁気エネルギーが全てコイルL12に与えられるので、コイルL12から負荷に供給される電流最大値は大きい。このとき、コイルL12→負荷及びC→ダイオードD31→コイルL12の閉回路に電流が流れて負荷に電流が供給される。すなわちコイルL11は両端開放され、コイルL12のみが出力電流に寄与しかつコイルL12はインダクタンスが小さいため、大電流、低電圧及び短時間で負荷へ電流を供給できる。しかしながら、オフ期間のみの動作という点でやはり負荷への電流供給は遅れるといえる。
【0009】
さらに別の問題は、スイッチング素子Q21がオフするときにQ21とコイルL11との接続点(FETではソース、バイポーラトランジスタではエミッタ)に大きなスパイク電圧が発生するため、スイッチング素子Q21を高耐圧とする必要があることである。この対策として仮にスイッチング素子Q21とコイルL11との接続点にダイオードD32(破線)を入れた場合、スパイク電圧は抑制できるが、オフ期間にもコイルL11とL12の大きな合成インダクタンスが電流源となるため、小電流、高電圧、長時間で負荷に電流供給することとなる。オフ期間には、コイルL11→コイルL12→負荷及びC→ダイオードD32→コイルL11→コイルL12の閉回路に電流が流れるためである。この結果、重負荷に対しては負荷電圧を維持できず電圧降下が生じ、また長時間放出電流源であるためにコイルL11とL12の磁気回路の磁束がオフ期間にリセットしきれず磁気飽和してしまい、十分なエネルギーを磁気回路に供給できなくなる。これを避けるためにコイルL11のインダクタンスを小さくすると軽負荷に対して過大電圧が生じる。よって、オフ時のスパイク電圧対策としてダイオードD32を接続する手法は採用できない。
【0010】
オフ時のスパイク電圧対策として、図12の実際の回路では、ダイオードD32の替わりにスナバ回路を用いることが知られている。スナバ回路は、一般に、ダイオード、ダイオードと抵抗の直列回路、コンデンサと抵抗の直列回路、あるいはコンデンサとダイオードの直列回路等からなり、スパイク電圧を吸収またはクランプするものである。しかしながら、スナバ回路はスパイク電圧の抑制ではなくダイオードやコンデンサ等の素子に吸収させるものであるから電力損失となり、スイッチング電源回路の電力変換効率を低下させることとなる。
【0011】
以上述べた従来のタップ付きインダクタを用いたスイッチング電源回路の問題点に鑑み、本発明は、次のことを目的とする。
本発明は、小インダクタンスの二次コイルにおけるオン時のピーク電流値低減等のために大インダクタンスの一次コイルを接続した場合であっても、負荷の急峻な電流立ち上がりに対してオンオフいずれの期間にも必要な電流を直ちに供給できるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
また本発明は、上記に加えて、オン期間のパルス幅を拡げても小インダクタンスの二次コイルから負荷へ過大電流が流れないスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
また本発明は、高耐圧のスイッチング素子やスナバ回路を用いることなくオフ時に一次コイルに生じるスパイク電圧を解消することができるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0013】
(2)請求項2に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子の電流路から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0014】
(3)請求項3に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0015】
(4)請求項4に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0016】
(5)請求項5に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚の各々に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0017】
(6)請求項6に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装され、少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップが設けられ、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0018】
(7)請求項7に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に前記一対の外側脚の内側に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0019】
(8)請求項8に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが該一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が前記磁性体片を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0020】
(9)請求項9に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の各々に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0021】
(10)請求項10に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装された二次コイルとを有し、
少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップを設け、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0022】
(11)請求項11に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の内側にて前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0023】
(12)請求項12に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記磁性体片を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0024】
(13)請求項13に係る電源トランスは、第1磁気回路を有する一次コイルと、第2磁気回路を有しかつ該一次コイルに疎に磁気結合された二次コイルと、前記一次コイルの発生する磁束の一部が前記二次コイルを通過しないで漏洩する漏洩磁気回路とを有し、
前記一次コイルに直流電圧が印加されたとき前記二次コイルに電圧を誘起させると共に前記一次コイルの有する第1磁気回路内に存在する磁束の磁束密度を前記二次コイルの有する第2磁気回路内に存在する磁束の磁束密度より大として保持し、
前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき前記二次コイルに、前記一次コイルに直流電圧が印加されたときと同極性の電圧を誘起させることを特徴とする。
【0025】
(14)請求項14に係る電源トランスは、前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき、前記第1磁気回路から前記第2磁気回路へ磁束が流れ込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
・請求項1〜4に記載のスイッチング電源回路では、疎に磁気結合された一次コイルと二次コイルとを具備するトランスを用い、一次コイルに対してスイッチング素子によりオンオフする直流電圧を印加し、一次コイルの一端と二次コイルの一端を接続した接続点であるタップから出力を得る。一次コイルの他端(直流電圧印加端)は、スイッチング素子がオフのとき逆起電力により負電位となるが、このときに一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオード(または一次側スイッチング素子)が接続されている。さらに、二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオード(または二次側スイッチング素子)が接続されている。本発明の効果は次の通りである。
【0027】
オン期間においては、一次コイルに直流電圧(一次側ダイオード側が正電位、タップ側が負電位)が印加されると、一次コイルのインダクタンスを必要十分に大きくした場合、比較的ゆっくりと電流が立ち上がりタップを通して負荷に供給される(第1電流)。
【0028】
一方、二次コイルは一次コイルとトランス結合されているため一次コイルに電圧が印加されると、一次コイルに生じた磁束が二次コイルを通りこれに抗する相互誘導の起磁力が瞬時に二次コイルに生じ、対応する起電力(タップ側が正電位、二次側ダイオード側が負電位)が発生する。二次コイルのインダクタンスを必要十分に小さくすれば、この起電力による誘導電流は瞬時にタップを通して負荷に供給される(第2電流)。
【0029】
よって本発明では、大インダクタンスの一次コイルを直列接続した場合であっても、トランス結合された小インダクタンスの二次コイルからの誘導電流によりオン時に負荷へ迅速に電流供給することができ、オン期間に負荷において電流の急峻な立ち上がりが生じても対応できる。
【0030】
また、一次コイルと二次コイルとはトランス結合ではあっても疎結合である。「疎結合」とは、一次コイルの磁気回路に発生する磁束の全てを二次コイルの磁気回路に通さず、その一部を意図的に設けた漏洩磁気回路に漏らすことにより二次コイルの磁気回路を通る磁束を少なくするようにトランスが構成されていることを意味する。これにより、オン時に二次コイルに激しいピーク電流を生じることはないため、負荷への激しいピーク電流が抑制できる。この結果、回路の配線等から電磁波として放出されるノイズレベルが低減される。また、従来は必要であったチョークコイルが不要となる。
【0031】
さらに、上記の通りオン時の迅速な電流供給は二次コイルにより確保されるので、一次コイルについてはそのインダクタンスを必要十分に大きくとることができる。これにより、オン期間のパルス幅を拡げても直流電圧が負荷へ直接印加されることが避けられる。また、パルス幅を拡げられることによりスイッチング素子の応答性に対する要求が緩和され制御が容易となる。
【0032】
さらに、一次コイルと二次コイルがトランス結合しているため、一次コイルに幅の広いパルス電圧を印加しても、印加時間の経過と共に磁気回路が磁気飽和して二次コイルの起電力が消失するため二次コイルから負荷への電流は一定値に制限され、過大電流が流れることが防止される。
【0033】
また、一次コイルの磁気回路に生じた磁束の全てを二次コイルの磁気回路に通さず、その一部を漏らすトランス構成により、オン期間の終わりの時点では、一次コイルの磁気回路には大量の磁束が蓄積されて磁束密度が高い状態となる一方、二次コイルの磁気回路の磁束密度は低い状態のままである、両コイルの磁気回路の磁束密度が不均衡状態となることを実現できる。この磁束密度の不均衡状態は、以下に説明するオフ期間に二次コイルに流れる電流の要因となる。
【0034】
次に、オフ期間においては、一次コイルへの直流電圧の印加が停止されることで一次コイルには自己誘導による逆起電力が発生する。本回路ではこのとき、一次コイル→負荷→一次側ダイオード(または一次側スイッチング素子)→一次コイルの閉回路が形成されるため、一次コイルの逆起電力によりタップを通して負荷に電流が流れる(第3電流)。
【0035】
この一次コイルに流れる第3電流は、オン期間に一次コイルの磁気回路に蓄積された磁束を保持する(かしめる)働きがある。このため、一次コイルの磁気回路の磁束は瞬時に消滅することなく緩やかに減少し、その結果、一次コイルと二次コイルの磁束密度の不均衡状態はオフ期間に入ってもしばらく持続する。この両コイルの磁気回路における磁束の不均衡状態が存在することにより、一次コイルの磁気回路の磁束は減少傾向であるにも拘わらず一次コイルから生じて二次コイルを通過する磁束は増加を続ける。
【0036】
そして、この増加する磁束に抗する起磁力が二次コイルの磁気回路に発生する。すなわち、この起磁力に対応して二次コイルにはオン期間と同じ方向の起電力(タップ側が正電位、二次側ダイオード側が負電位)が生じることとなる。本回路ではこのとき二次コイル→負荷→二次側ダイオード(または二次側スイッチング素子)→二次コイルの閉回路が形成されるため、二次コイルの起電力によりタップを通して負荷に電流が流れる(第4電流)。
【0037】
尚、二次コイルにも逆起電力(フライバック電圧)は生じるが、一次コイルにかしめられた磁束により二次コイルに生じる起電力の方が支配的であるため逆起電力は相殺され顕在化しない。よって、本回路における二次コイルでは、オン期間もオフ期間も同方向すなわちフォワード方向に電流が流れて負荷に供給することができる。
【0038】
また、二次コイルのインダクタンスを必要十分に小さくすれば、このオフ期間の電流についても、負荷の電流の急峻な立ち上がりに対応して迅速に電流供給できる。
【0039】
尚、オフ期間において一次コイルの磁気回路の磁束が減少する一方、二次コイルの磁気回路の磁束が増加していくと、両者が均衡した時点で一次コイルから二次コイルへの磁束の流れが停止し両コイルとも磁束がリセット(磁束ゼロ)される。このとき、磁束が急減する二次コイルには逆起電力が生じるが、二次側ダイオード(または二次側スイッチング素子)があるため逆方向電流は流れない。
【0040】
さらに、一次コイルに第3電流が流れてその磁束がかしめられることで、一次コイルにオフ時のスパイク電圧が発生しない。これにより、スイッチング素子のスパイク電圧に対する耐圧性が不要となり低耐圧のものを使用できる。当然、スナバ回路も不要となり回路が簡素化され、スナバ回路による電力損失の問題も解消される。
【0041】
・請求項2及び3において、二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードに替えて二次側スイッチング素子を接続した場合、一次コイルに対する印加電圧のオンオフと同相で同期したスイッチング制御を行うことができる。これにより、オン期間においては電流路を確実にオン状態として十分な第2電流を流すことができる。また、オフ期間においては、負荷と並列の平滑コンデンサから二次コイルの他端へ向かう逆電流を阻止し、二次コイルの磁束リセット時の逆電圧を阻止すると共に、二次側スイッチング素子に寄生するダイオード要素を利用してオン期間の第2電流と同じ方向に第4電流が流れることができる。また、ダイオードを用いる場合に比べてダイオードの順方向電圧降下がない分だけ負荷への出力電圧が大きくなる。
【0042】
・請求項2及び4において、一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードに替えて一次側スイッチング素子を接続した場合、一次コイルに対する印加電圧のオンオフと逆相で同期したスイッチング制御を行うことができる。従って、一次コイルに直流電圧が印加されるオン期間には、一次側スイッチング素子がオフとなることにより直流電圧が接地されることを確実に防止する。この場合もダイオードを用いる場合に比べてダイオードの順方向電圧降下がない分だけ負荷への出力電圧が大きくなる。
【0043】
・請求項5〜8においては、請求項1〜4のスイッチング電源回路におけるトランスのコアが、対向する一対のヨークとこれらを連結する中央脚及び一対の外側脚とで構成されている。そして、中央脚に一次コイルが巻装される。二次コイルは外側脚のいずれか若しくは双方に巻装されるか、一次コイルと同心状に両外側脚の内側に巻装されるか若しくは磁性体片を介して一次コイルの上に重ねて巻装されている。本トランスでは、一次コイルと二次コイルとの間に空隙が形成されるように二次コイルを巻装するか、または、磁性体片を介して二次コイルを巻装することにより、一次コイルと二次コイルとを離隔させている。
【0044】
斯かるトランスでは、スイッチング素子がオンのとき、一次コイルにより中央脚に生じた磁束が二次コイルの磁気回路へ流れ込むことにより二次コイルにはこれに抗する起磁力が瞬時に生じ、これに対応する起電力による電流が二次コイルに流れる。
【0045】
また、斯かるトランスでは、一次コイルと二次コイルが空隙または磁性体片を介して離隔しているため、一次コイルに生じて中央脚から外側脚へ向かう磁束の一部は、漏洩磁気回路となる両コイル間の空隙または磁性体片を通る漏れ磁束となり、二次コイルと鎖交する磁束が減少する。この漏洩磁気回路を通る磁束にはエネルギー損失がほとんどないことから一次コイルの磁束の増加を促進する働きがある。一方、二次コイルを通る磁束が少なくなることで二次コイルの磁束の増加を遅くする。これにより、両コイルの磁束密度に大きな差を生じさせることができる。
【0046】
従って、オン期間の終わりの時点では一次コイルの磁気回路に磁束が蓄積されて磁束密度が高い状態となる一方、二次コイルの磁気回路の磁束密度は低い状態のままであり、両コイルの磁束密度が不均衡状態となっている。この不均衡状態のままオフ期間となり一次コイルにフライバック電流が流れると、一次コイルの磁気回路の磁束はかしめられてその減少が緩慢となる一方、二次コイルの磁気回路の磁束は増加を続ける。この増加する磁束に抗するように、オン期間と同方向の起磁力が二次コイルの磁気回路に生じ、これに対応する起電力による電流がオン期間と同方向に流れる。
【0047】
請求項6において、外側脚の片側のみに二次コイルを巻装した場合は、少なくとも巻装されていない方の外側脚に磁気ギャップを設ける。これにより、巻装されていない方の外側脚へ過度に磁束が流れることを防止すると共に、この外側脚もまた漏洩磁気回路となる。こうして磁気飽和を防止し、十分な大きさの二次コイル出力電流を確保することが可能となる。片側のみに二次コイルを巻装することは製造コスト上、有利である。
【0048】
・請求項9〜12におけるトランスは、対向する一対のヨークとこれらを連結する中央脚及び一対の外側脚とで構成され、中央脚と各外側脚との間には窓空間が形成される。そして、中央脚に一次コイルが巻装される。二次コイルは外側脚のいずれか若しくは双方に巻装されるか、一次コイルと同心状に離隔して両外側脚の内側に巻装されるか若しくは磁性体片を介して一次コイルの上に重ねて巻装されている。本トランスでは、一次コイルと二次コイルとの間に空隙が形成されるように二次コイルを巻装するか、または、磁性体片を介して二次コイルを巻装することにより、一次コイルと二次コイルとを離隔させている。
【0049】
斯かるトランスでは、一次コイルの磁気回路と二次コイルの磁気回路が空隙または磁性体片を介して離隔しているため、一次コイルに生じた磁束の一部は、漏洩磁気回路となる両コイル間の空隙または磁性体片を通る漏れ磁束となり、二次コイルと鎖交する磁束が減少する。これにより、一次コイルと二次コイルとが疎結合となるトランスを実現できる。請求項10において、外側脚の片側のみに二次コイルを巻装し、少なくとも巻装されていない方の外側脚に磁気ギャップを設けた場合は、巻装されていない方の外側脚へ過度に磁束が流れることを防止すると共に、この外側脚もまた漏洩磁気回路となる。
【0050】
請求項13及び14のトランスは、一次コイルに生じる磁束の一部が二次コイルを通過しないで漏洩する漏洩磁気回路を設けたので、一次コイルに電圧を印加したときに生じる磁束の全てが二次コイルに与えられずに一次コイルに蓄積され、一次コイルの磁束密度が二次コイルの磁束密度に対して相対的に大となって保持される。このような磁束密度の差が生じた状態で一次コイルへの電圧印加を停止すると、一次コイルには逆起電力による電流が流れる。これにより二次コイルにも起電力が生じるが、その起電力は、上記磁束密度の差が存在することにより一次コイルに電圧印加したときと同方向に電流を流すように生じる。よって、本トランスでは、一次コイルへの電圧印加時も非印加時も、二次コイルから同方向の出力電流を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
(1)スイッチング電源回路の第1の実施形態
(1−1)回路構成
本発明によるタップ付きインダクタを用いた降圧型スイッチング電源回路では、例えば、入力直流電圧12Vに対して、出力が1V、100A、立ち上がり1μSという低電圧、大電流、短時間応答が要求される。
【0052】
図1は、本発明による降圧型スイッチング電源回路の第1の実施形態の基本構成回路である。本回路はトランスTを有し、トランスTは、直列接続された一次コイルL1と二次コイルL2とを具備し、その接続点X0にタップを設けている。すなわち一次コイルL1の巻き終わり端子(黒点で示した端子の反対側)と二次コイルL2の巻き始め端子(黒点で示した端子)が接続されている。接続点X0 は出力端子Voへ接続され、ここから出力電圧を得る。一次コイルL1と二次コイルL2とはトランス結合であるが、後述するトランスTの特徴的構成(図6及び図9〜11にて説明)により疎結合である。つまり、一次コイルから二次コイルへ向かう磁束の一部を積極的に漏洩磁気回路に漏洩させるトランス結合である。よって従来のトランスと異なり、本発明のトランスTでは出力電圧が巻数比のみによっては決定されず、漏洩する磁束量にも依存する。しかしながら一般的な設定と同様に、降圧型とするためには、通常、相対的に一次コイルL1のインダクタンスが大きく、二次コイルのインダクタンスが小さくなるように巻き数が設定される。
【0053】
一次コイルL1の巻き始め端子(黒点で示した端子)X1は、スイッチング素子Q1であるNチャネルFET(field effect transistor)のソースと接続されている。このFETのドレインは直流電圧の入力端子Vinと接続される。FETのゲートに対しては、制御信号であるパルス電圧信号が入力される。
【0054】
スイッチング素子Q1の別の実施例として、PチャネルFETを用いる場合は、そのソースを直流電圧Vinと接続し、ドレインを一次コイルL1の巻き始め端子X1と接続する。ゲートに対しては同様に制御信号であるパルス電圧信号(但し、負電圧がオン)を入力する。以下の本発明の他の実施形態においても、直流電圧Vinのスイッチング素子Q1としてNチャネルFETもPチャネルFETも同様に用いることができる。
【0055】
さらに、一次側ダイオードD1のカソードが一次コイルL1の巻き始め端子X1に接続され、アノードが接地点に接続されている。
また、二次側ダイオードD2のカソードが二次コイルL2の巻き終わりX2に接続され、アノードが接地点に接続されている。ダイオードD2の順方向電圧降下(通常0.6V程度)の分だけ負荷への供給電圧が低下するため、ダイオードD2として電圧降下が0.2V程度のショットキーバリアダイオードを用いることが好適である。
【0056】
出力端子Voと接地点との間には平滑コンデンサCが接続されている。図示しないが負荷も出力端子Voと接地点との間に接続される。
【0057】
尚、図1に示したスイッチング電源回路は、正の入力電圧から正の出力電圧を得る回路であるが、負の入力電圧から負の出力電圧を得るには、図1の回路構成を、極性のみ異なる全く同じ構成の回路とすればよいことは、当業者には自明のことである。その場合は、各構成要素(ダイオード及びスイッチング素子)及びオンオフ制御信号の極性を必要に応じて入れ替えればよく、正負の極性が逆となるだけで実質的に同じ動作が実現される。
【0058】
(1−2)動作説明
<オン期間の動作>
スイッチング素子Q1のゲートに入力されるパルス電圧信号は、負荷の変動に対して入力直流電圧のオン期間を調整することにより電源回路の出力電圧を一定に保持する帰還制御を行っている。
【0059】
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオンとなると、ドレイン・ソース間の電流路が導通して直流電圧Vinが一次コイルL1の巻き始め端子X1に印加される。このとき一次コイルL1は、直流電圧Vinの負荷として働く。一次コイルL1の巻き始め端子X1が正電位、巻き終わり端子(タップX0側)が負電位となる。一次側ダイオードD1は逆バイアスとなるため電流は流れない。従って、直流電源Vin→スイッチング素子Q1→一次コイルL1→負荷及びC、という経路で電流が流れる。このオン期間に一次コイルL1を通りタップX0から出力される電流を「第1電流(i1)」と称することとする。
【0060】
一方、一次コイルL1に第1電流が流れると一次コイルL1の磁気回路に磁束が発生する。そしてこの磁束が、トランス結合された二次コイルL2の磁気回路を通ることにより、これに抗する相互誘導による起磁力が二次コイルL2の磁気回路に瞬時に発生する。このとき二次コイルL2の巻き始め端子(タップX0側)が正電位、巻き終わり端子X2が負電位であり、二次側ダイオードD2は順バイアスとなる。この相互誘導による起電力により、二次コイルL2→負荷及びC→二次側ダイオードD2、という経路で電流が流れる。このオン期間に二次コイルL2を通りタップX0から出力される電流を「第2電流(i2)」と称することとする。
【0061】
一次コイルL1のインダクタンスが大きいために第1電流の立ち上がりは比較的遅いが、二次コイルL2のインダクタンスは小さいので第2電流の立ち上がりは迅速であり、瞬時に遅れなく負荷に供給される。また、一次コイルL1と二次コイルL2は疎結合であるので、オン時に一次コイルL1に生じる磁束によって二次コイルL2に激しいピーク電流が流れることはない。さらに、一次コイルのインダクタンスを大きくできるため、パルス幅を広くしても直流電圧が直接負荷に印加されることが避けられる。
【0062】
所要負荷電圧までは、トランス結合作用による一次コイルL1と二次コイルL2の巻き数比設定により二次コイルL2を低インピーダンスで駆動できる。これにより負荷における電流の急峻な立ち上がりにも対応できる。例えば、入力直流電圧が12V、所要負荷電圧が1Vであり、一次コイルL1と二次コイルL2の巻き数比において二次コイルL2に1V発生するように設定すると、1V未満(1Vより若干低い電圧)までは電流が急峻に立ち上がる。負荷電圧が1Vに達すると、二次コイルL2の発生する電圧と負荷電圧(コンデンサCも含む)とバランスするため、電流は流れなくなる。これに対し、従来技術では、電流を急峻に立ち上がらせるため一次コイルと二次コイルのインダクタンスを共に小さくすると直流電圧が負荷に直接印加される事態が発生し、所要負荷電圧を超過して負荷に電圧が印加されることとなっていた。
【0063】
尚、一次コイルL1と二次コイルL2は、トランス構造上疎結合であるので、一次コイルL1に生じた磁束の一部のみが二次コイルL2の磁気回路を通る。この結果、オン期間の終了時点では、一次コイルL1の磁気回路には大量の磁束が蓄積されて磁束密度が高い状態となる一方、二次コイルL2の磁気回路の磁束密度は低い状態のままであり、両コイルの磁気回路の磁束密度が不均衡状態となっている。この不均衡状態は以下のオフ期間における電流の要因となる。
【0064】
<オフ期間の動作>
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオフとなると、ドレイン・ソース間の電流路が直ちに遮断して直流電圧Vinの一次コイルL1への印加が停止される。印加電圧が急に停止されることで一次コイルL1には、自己誘導に基づく逆起電力(フライバック電圧)が発生する。このとき一次コイルL1は電源として働き、その巻き始め端子X1が負電位、巻き終わり端子(タップX0側)が正電位となる。よって一次側ダイオードD1は順バイアスとなる。この結果、一次コイルL1→負荷及びC→一次側ダイオードD1→一次コイルL1、という閉回路に電流が流れる。これは準短絡状態である。このオフ期間に一次コイルL1を通りタップX0から出力される電流を「第3電流(i3)」と称することとする。
【0065】
一次コイルL1の磁気回路の磁束は、スイッチング素子Q1がオフとなる時点で最大となっている。一次コイルL1に流れるフライバック電流である第3電流は、オン期間に一次コイルL1に蓄積された磁束を保持する(かしめる)働きがあり、磁束の減少を緩慢とする。つまり、オフ期間になって一次コイルL1の磁束は減少しつつも、一次コイルL1が二次コイルL2よりも相対的に磁束密度の高い状態がしばらく持続する。この両コイルの磁束密度の不均衡状態が持続する限り、一次コイルL1にかしめられた磁束により二次コイルL2の磁気回路を通過する磁束は増加を続け、これに抗する起磁力が二次コイルL2の磁気回路に生じる。従って、この起磁力の方向はオン期間と同じである。よって二次コイルL2には、オン期間と同じ方向の起電力が生じ、フォワード動作を行う。すなわち、オフ期間においても一次コイルL1が磁束発生源となり二次コイルL2が磁束受領源となり、二次コイルL2は一次コイルL1の磁束を受け続け、しかもその増加率は正である。従って二次コイルL2は、オン期間と同じく巻き始め端子(タップX0側)が正電位、巻き終わり端子X2が負電位となり、二次側ダイオードD2は順バイアスとなる。この結果、二次コイルL2→負荷及びC→二次側ダイオードD2→二次コイルL2、という閉回路に電流が流れる。これも準短絡状態である。このオフ期間に二次コイルL2を通りタップX0から出力される電流を「第4電流(i4)」と称することとする。
【0066】
尚、オフになったときに一次コイルL1に生じる逆起電力によって二次コイルL2にも逆起電力(フライバック電圧)は生じる(一次コイルと同様に巻き始め端子(タップX0側)が負電位、巻き終わり端子X2が正電位)が、上述の第3電流により一次コイルL1にかしめられた磁束によって二次コイルL2に生じる起電力の方が支配的であるため逆起電力は相殺され顕在化しない(これに対し図12の従来回路では、オフ時の二次コイルには逆起電力のみが生じる)。このように、本回路における二次コイルL2では、オン期間もオフ期間も同方向(フォワード方向)に電流が流れて負荷に供給することができる。また、二次コイルL2はインダクタンスが小さいためオフ期間においても低インピーダンスで負荷に迅速に電流を供給できる。
【0067】
その後、オフ期間における時間経過と共に、磁束発生源である一次コイルL1の保持磁束量が減少し、磁束密度が低下していくと、二次コイルL2の磁気回路の磁束密度と均衡する点に達する。両コイルの磁束密度が均衡すると、磁束の流れがなくなり両コイルの磁束がゼロにリセットされる。この時点で一次コイルL1を流れる第3電流及び二次コイルL2を流れる第4電流はゼロとなる。尚、二次コイルL2の磁束が急激にリセットされることによる逆起電力が発生するが、二次側ダイオードD2が逆バイアスとなるため逆方向電流は流れない。その後、次の周期のオン期間を迎える。これらの動作については、後に図6〜8においてトランスTの構成との関係と共にさらに詳細に述べる。
【0068】
(1−3)波形計測結果
図3〜図5は、図1に示した回路図の各測定点M1〜M5における電流または電圧の計測波形である。横軸は時間軸(s)、縦軸は電流または電圧(AまたはV)である。
【0069】
図3(A)は、スイッチング素子Q1のソース側の計測点M1での電流波形である。第1電流i1はスイッチング素子Q1がオンになるとゼロから徐々に増加していき、Q1がオフになると直ちに遮断される。
【0070】
図3(B)は、ダイオードD1のカソード側の計測点M2での電流計測波形である。第3電流i3は、スイッチング素子Q1のオン期間には流れず、Q1がオフになると直ちに最大電流で立ち上がり徐々に減少していく。
【0071】
図3(C)は、一次コイルL1の巻き終わり端子側の計測点M3での電流波形である。計測点M3では一次コイルL1のみを流れる電流が計測される。スイッチング素子Q1のオン期間には第1電流i1がゼロから徐々に増加しオフ期間には第3電流i3に切り替わり徐々に減少する。図3(C)の電流は、図3(A)と図3(B)の電流を足し合わせた波形となっている。
【0072】
ここで図3(A)を参照すると、第1電流i1がオフ時に遮断された直後には、振動するトランジェント波形が観られ、また図3(B)を参照すると、第3電流i3がオフ時に立ち上がった直後にもトランジェント波形が観られる。しかしながら、図3(C)の波形ではこれらのトランジェントが消失している。このように、波形の重ね合わせにより、第1電流i1と第3電流i3の切り替わり時のトランジェントを打ち消し合う効果が得られることがわかる。
【0073】
図3(D)は、タップX0より出力端子Vo側の計測点M4での電流波形である。すなわち図3(D)は、図3(A)及び(B)の一次コイルL1を流れる電流に、二次コイルL2を流れる電流を足し合わせた電流の波形である。オン期間にはゼロから徐々に増加し、オフ期間には最大電流から徐々に減少している。
【0074】
図4(A)は、スイッチング素子Q1のソース電圧波形である。
図4(B)は、図3(C)と同じ、一次コイルL1のみを流れる電流波形である。
図4(C)は、二次コイルL2の巻き始め端子側の計測点M5での電流波形である。スイッチング素子Q1のオン期間には第2電流i2がゼロから徐々に増加して流れ、オフ期間には第4電流i4が直ちに最大電流で立ち上がり徐々に減少しつつ流れる。
【0075】
図4(D)は、図3(D)と同じく計測点M4での電流波形である。図4(D)の電流は、図4(B)と図4(C)の電流を足し合わせた電流の波形である。スイッチング素子Q1のオン期間には第1電流i1と第2電流i2とを足し合わせた電流がゼロから徐々に増加して流れ、オフ期間には第3電流i3と第4電流i4とを足し合わせた最大電流が直ちに立ち上がり徐々に減少しつつ流れる。
【0076】
図5(A)は、図4(A)と同じくスイッチング素子Q1のソース電圧波形である。
図5(B)は、図4(B)、図4(C)及び図4(D)の電流波形を同じベースライン上に示した図である。
【0077】
(2)スイッチング電源回路の第2の実施形態
(2−1)回路構成
図2は、本発明による降圧型スイッチング電源回路の第2の実施形態の基本構成回路である。本回路は、上記の第1の実施形態において二次側ダイオードD2に替えて二次側スイッチング素子Q2を接続し、一次側ダイオードD1に替えて一次側スイッチング素子Q3を接続している点が異なる。他の構成要素については第1の実施形態と同様である。
【0078】
二次側スイッチング素子Q2としてはFETを用いており、二次コイルL2の巻き終わり端子X2にドレインを接続し、ソースを接地点に接続している。二次側スイッチング素子Q2の制御端子であるゲートに対しては、スイッチング素子Q1のゲートに入力するパルス電圧信号と同じ信号を入力する。従って、二次側スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1のオン及びオフと同じタイミングでドレイン・ソース間の電流路が導通及び遮断されることとなる。
【0079】
二次側スイッチング素子Q2のFETは、オン期間にはドレイン・ソース間のいずれの方向にも電流が流れることができる。オフ期間にはドレインからソースへの電流は遮断されるが、寄生ダイオードによりソースからドレインへは電流が流れることができる。二次側スイッチング素子Q2は、電流の流れに関して第1の実施形態のダイオードD2と同様に動作するため、オンオフいずれの期間にもソースからドレインへ電流が流れることとなる。本回路は大電流出力を目的とするので、二次側スイッチング素子Q2のFETは、スイッチング素子Q1のFETよりも大電流用とすることが好適である。
【0080】
一次側スイッチング素子Q3として用いるFETは、一次コイルL1の巻き始め端子X1にドレインを接続し、ソースを接地点に接続している。一次側スイッチング素子Q3のゲートには、スイッチング素子Q1のゲートに入力するパルス電圧信号と逆相の信号を入力する。そのために、パルス電圧信号を反転回路INVを介してQ3のゲートに入力している。従って、一次側スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q1のオン及びオフと逆のタイミングでドレイン・ソース間が遮断及び導通することとなる。
【0081】
(2−2)動作説明
<オン期間の動作>
第2の実施形態の回路動作は、二次側スイッチング素子Q2及び一次側スイッチング素子Q3の動作を除いて、第1の実施形態の回路動作と同じであり、オン期間に流れる第1電流及び第2電流、並びにオフ期間に流れる第3電流及び第4電流の発生原理は同じであるので、簡略的に説明する。
【0082】
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオンとなると、ドレイン・ソース間の電流路が導通して直流電圧Vinが一次コイルL1の巻き始め端子に印加される。このとき一次コイルL1の巻き始め端子X1が正電位、巻き終わり端子(タップX0側)が負電位となる。このとき一次側スイッチング素子Q3はオフとなりドレイン・ソース間は遮断され電流は流れない。従って、第1の実施形態と同様に、直流電源Vin→スイッチング素子Q1→一次コイルL1→負荷及びC、という経路で第1電流i1が流れる。
【0083】
一方、一次コイルL1に流れる第1電流i1による磁束に起因して、トランス結合された二次コイルL2に生じる相互誘導による起電力により、二次コイルL2→負荷及びC→二次側スイッチング素子Q2、という経路で第2電流i2が流れる。このとき二次側スイッチング素子Q2はオンでありドレイン・ソース間は導通している。
【0084】
<オフ期間の動作>
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオフとなると、ドレイン・ソース間の電流路が直ちに遮断して直流電圧Vinの一次コイルL1への印加が停止される。一次コイルL1には自己誘導に基づく逆起電力が発生する。このとき一次側スイッチング素子Q3はオンとなりドレイン・ソース間が導通するため、一次コイルL1→負荷及びC→一次側スイッチング素子Q3→一次コイルL1、という閉回路に第3電流i3が流れる。
【0085】
一次コイルL1に流れる第3電流i3は、オン期間に一次コイルL1に蓄積された磁束をかしめる。そして一次コイルL1にかしめられた磁束が二次コイルL2の磁気回路を増加しつつ通過することにより二次コイルL2には、オン期間と同じ方向の起電力が生じる。二次側スイッチング素子Q2のゲートへのパルス電圧信号は、スイッチング素子Q1のゲートと同時にオフとなるが、二次側スイッチング素子Q2は大電流用であるためやや遅れてオフとなる。そして二次側スイッチング素子Q2はオフとなっても寄生ダイオードによりソースからドレインへ電流が流れることができる。よって、二次コイルL2→負荷及びC→二次側スイッチング素子Q2→二次コイルL2、という閉回路に電流が流れる。
【0086】
(3)スイッチング電源回路の第3の実施形態
本発明による降圧型スイッチング電源回路の第3の実施形態は、図示しないが、第1の実施形態の回路において二次側ダイオードD2を、第2の実施形態の二次側スイッチング素子Q2に置き換えた形態である。この第3の実施形態における二次側スイッチング素子Q2の接続及び動作は第2の実施形態と同様である。
【0087】
(4)スイッチング電源回路の第4の実施形態
本発明による降圧型スイッチング電源回路の第4の実施形態は、図示しないが、第1の実施形態の回路において一次側ダイオードD1を、第2の実施形態の一次側スイッチング素子Q3に置き換えた形態である。この第4の実施形態における一次側スイッチング素子Q3の接続及び動作は第2の実施形態と同様である。
【0088】
(5)トランスの第1の実施形態
(5−1)トランスの構成
図6は、上記のスイッチング電源回路の第1〜第4の実施形態に好適に用いられるトランスTの第1の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【0089】
トランスTのコアは、対向する一対のヨーク21a、21bと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚22と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚23a、23bとから構成され、さらに両ヨーク間の中間位置にて外側脚23a、23bに磁気ギャップ24a、24bをそれぞれ設けている。中央脚22と外側脚23a、23bとの間にはそれぞれ窓空間25a、25bが形成されている。
【0090】
一次コイルL1は中央脚22に巻装され、巻き始め端子X1が引き出されている。X1端子には、図1のスイッチング素子Q1のソース及び一次側ダイオードD1のカソードが接続される。二次コイルL2は、第1の二次コイルL2aと第2の二次コイルL2bに分割されて双方の外側脚23a、23bにそれぞれ巻装されている。第1の二次コイルL2aの巻き終わりと第2の二次コイルL2bの巻き始めは接続されている。第2の二次コイルL2bは、その巻き終わり端子X2が引き出されている。X2端子には、図1の二次側ダイオードD2のカソードが接続される。一次コイルL1の巻き終わり端子と第1の二次コイルL2aの巻き始め端子とは接続され、この接続点からタップX0すなわち出力端子Voが引き出されている。一次コイルL1と二次コイルL2a、L2bとは、ほぼ窓空間25a、25bの幅だけそれぞれ離隔して(当然であるが、コイルを巻装した厚み分は減じられる)巻装されており、これにより疎のトランス結合が実現される。以下、第1及び第2の二次コイルL2a、L2bはまとめて「二次コイルL2」と称する。
【0091】
(5−2)トランスの動作説明
図7及び図8を参照しつつ、磁気回路と電気回路との関係を含めて図6に示したトランスTの動作を説明する。
図7(A)は、中央脚22の磁気回路(以下「中心磁極磁気回路」と称する)の磁束φ1と、外側脚23a、23bの各磁気回路(以下「両脚磁気回路」と称する)に流れ込む磁束φ1aの各々の磁束密度の時間変化を模式的に示した図である。
図7(B)は、図7(A)と時間軸を揃えた二次コイルL2の第2及び第4電流i2、i4の時間変化と、参考のために一次コイルL1のフライバック電流である第3電流i3の時間変化を模式的に示した図である。
図8(A)は、スイッチング素子Q1のソース電圧波形である。図8(B)は、二次側ダイオードD2のカソード電位すなわち二次コイルL2の巻き終わり端子X2の電位波形である。図8(C)は、一次コイルL1のフライバック電流(第3電流)波形である。図8(D)は、二次コイルL2の電流波形(第2及び第4電流)である。
【0092】
<オン期間の動作>
一次コイルL1の巻き始め端子X1に直流電圧が印加されて電流(図1の第1電流i1)が流れると、中心磁極磁気回路に磁束φ1(破線)が発生する。第1電流i1は、図6のトランスTの底面からみて一次コイルL1を時計回りに流れる。
【0093】
磁束φ1の一部である磁束φ1a(実線)が、両脚磁気回路へ流れ込むことにより、二次コイルL2には相互誘導により磁束φ1aに抗する起磁力による磁束φ2が生じる。二次コイルL2の電流(図7(B)の第2電流i2)は、この磁束φ2を生じる方向に流れる。よって、第2電流i2は、トランスTの底面からみて二次コイルL2を時計回りに流れる。第1電流i1と第2電流i2は共にタップX0へと流れ、出力される。
【0094】
トランスTでは、中心磁極磁気回路に生じた磁束φ1の一部である磁束φ1b(二点破線)が、一次コイルL1と二次コイルL2の間の空隙である漏洩磁気回路を通ることにより、両脚磁気回路を通る磁束φ1aは少なくなっている。漏洩磁気回路は磁束φ1の迂回路である。
【0095】
図7(A)に示すように、直流電圧が一次コイルL1に印加されると中心磁極磁気回路の磁束密度は急速に増加する。このとき、両脚磁気回路の磁束密度も一次コイルL1の磁束φ1の影響により増加するが、この増加は中心磁極磁気回路のそれよりも少ない。これは、次のように説明される。中心磁極磁気回路に生じた磁束φ1は、本来、二次コイルが巻装された両脚磁気回路を通り難いものであり、従来のトランスではこの通り難い磁束をできるだけ漏れなく通すことを理想としている。これに対し、本発明のトランスでは中心磁極磁気回路に生じた磁束φ1の一部φ1bを積極的に漏洩磁気回路へ迂回させることにより、二次コイルと鎖交する磁束φ1aを減少させている。そして、漏洩磁気回路に迂回させられる磁束φ1bは、そのエネルギー損失がほとんどないことから中心磁極磁気回路の磁束密度の増加を促進することに寄与する。一方、鎖交する磁束φ1aが相対的に減少した両脚磁気回路の磁束密度の増加は低く抑えられることとなる。この結果、中心磁極磁気回路と両脚磁気回路の磁束密度に大きな差が生じる。
【0096】
従来のトランスであれば中心磁極磁気回路から両脚磁気回路へ与えられるべき磁束が、本トランスにおいては、両脚磁気回路へ与えられず中心磁極磁気回路に蓄積するが、この中心磁極磁気回路に蓄積されたエネルギーは、後述するオフ期間になってから両脚磁気回路へと放出されるので、エネルギーの損失はない。
【0097】
尚、両脚磁気回路の磁束密度の増加自体は少ないが、これに抗して生じる起磁力φ2の変化率は二次コイルL2に瞬時に電流を流すために十分な大きさであるので、図7(B)に示すように十分な第2電流i2が流れる。
【0098】
こうして、図7(A)の通り、オン期間の終了時点t1では、中心磁極磁気回路に大量の磁束が蓄積されて磁束密度が最大となる一方、両脚磁気回路の磁束密度は相対的に低い不均衡状態となっている。
【0099】
尚、外側脚23a、23bに磁気ギャップ24a、24bを設けたのは、磁気抵抗を大きくして磁気飽和を防止するために好適だからであり、必要に応じて設けても設けなくともよい。
【0100】
<オフ期間の動作>
一次コイルL1への直流電圧印加が停止され第1電流i1が遮断されると、通常であれば磁束φ1は瞬時に消失するが、一次コイルL1に生じる逆起電力により即座に外部との閉回路(L1は準短絡状態)に電流が流れる(図7(B)の第3電流i3)。そして第3電流i3が一次コイルL1に流れ始めることで磁束φ1は強固に保持され(かしめられ)、図7(A)の通り、φ1の磁束密度は最大値から比較的緩やかに減少していく。従って、オフ期間になっても、中心磁極磁気回路と両脚磁気回路の磁束密度の不均衡状態は持続し、この不均衡状態が持続する限り、中心磁極磁気回路から両脚磁気回路へ流れ込む磁束φ1aは増加傾向を維持する。
【0101】
図7(A)に示すように、中心磁極磁気回路から両脚磁気回路へ供給される磁束φ1aの単位時間あたりの増加率は、オン期間に比べれば小さくはなるが、オン期間と同様に正である。この結果、オフ期間においても磁束φ1aに抗する起磁力φ2の方向はオン期間と同じであり、よって、二次コイルL2にはオン期間と同じ方向に起電力が誘起され続け、同じ方向に電流が流れる(図7(B)の第4電流i4)。こうして、第3電流i3と第4電流i4は共にタップX0へと流れ、出力される。
因みに、従来のトランスであれば、オフとなった時点で中心磁極磁気回路と両脚磁気回路に磁束密度の不均衡状態は生じていないため、両脚磁気回路の磁束密度も直ちに減少し、二次コイルL2にフライバック電圧のみが生じてオン期間とは逆方向に電流を流そうとする。本発明では、これと全く逆の動作を実現している。
【0102】
やがて、図7(A)のt2の時点で、中心磁極磁気回路のφ1の磁束密度と両脚磁気回路のφ1aの磁束密度とが均衡し、磁束の流れが停止する。これにより、図7(B)に示すように一次コイルL1及び二次コイルL2の電流はゼロとなり、この瞬間は両コイルがオープン状態となる。
【0103】
ここで、図7(A)に示すように、t2の時点においては両脚磁気回路へ与えられる磁束φ1aがそれまでの増加傾向から急激にゼロとなるために、その磁束変化率は負の最大値となる。この結果、それまでと逆方向に大きな起磁力が生じ、二次コイルL2に逆起電力が発生する。尚、二次側ダイオードD2が逆バイアスとなるために、この逆起電力による電流は流れない。
【0104】
図8の波形を参照すると、この二次コイルL2に生じる逆起電力は、図8(B)の二次コイルL2の巻き終わり端子の電位波形に現れている。図8(B)の波形に大きな逆起電力が観られる時点は、図8(C)の一次コイルL1のフライバック電流(第3電流)が消失する時点、及び、図8(D)の二次コイルL2のフォワード電流(第4電流)が消失する時点と一致することがわかる。この波形観測結果から、オフ期間においても中心磁極磁気回路から両脚磁気回路への磁束の供給が増加傾向を維持していることが証明できる。
【0105】
(6)トランスの第2の実施形態
図9は、トランスTの第2の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図6との相違点は、二次コイルL2が片側の外側脚23bにのみ巻装されている点である。その他の構成については、図6の実施形態と同様である。
【0106】
図9のトランスTでは、二次コイルL2を巻装された外側脚23bには、一次コイルL1に生じた磁束φ1が通り難く、巻装されていない外側脚23aには通り易い。この結果、二次コイルL2から必要な大きさの出力電流が得られなくなる。そこで、二次コイルL2から十分な出力電流を得るためには、巻装されない外側脚23aの磁気ギャップ24aを広くするか、巻装された外側脚23bに磁気ギャップ24bを設けないことが有効である。巻装されていない外側脚23aは、一次コイルL1と二次コイルL2の間の空隙と同様に、磁束の迂回路となる漏洩磁気回路として働く。このように、片側のみに二次コイルL2を巻装することは、製造コストを低減できる利点がある。
【0107】
(7)トランスの第3の実施形態
図10は、トランスTの第3の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図6との相違点は、図6との相違点は、二次コイルL2が一次コイルL1と同心状に巻装される点である。図10では二次コイルL2が両外側脚の内壁に密着して巻装されているがこれに限定されず、両外側脚の内側であれば両外側脚から離れていてもよい。本発明のトランスでは二次コイルL2を一次コイルL1に密着させないで、一次コイルL1と二次コイルL2を離隔して巻装し、この離隔空隙に漏洩磁気回路を構成させることが特徴であるので、二次コイルL2を両外側脚の内壁に密着して巻装する必要はない。その他の構成については、図6の実施形態と同様である。
【0108】
図10のトランスTでは、二次コイルL2が一次コイルL1と同心状に巻装されているので、一次コイルL1に生じた磁束φ1に抗する起磁力φ2が外側脚23a、23bの磁気回路に生じ、これに対応する電流が二次コイルL2に流れる。この場合、図10のトランスTの底面からみて、第1電流i1は一次コイルL1を時計回りに流れ、第2電流i2は二次コイルL2を反時計回りに流れる。但し、結線は同じであるので電気回路の動作は同じである。また上記と同様に、一次コイルL1による磁束φ1の一部φ1bが、一次コイルL1と二次コイルL2の間の空隙を漏洩磁気回路として漏れる。
【0109】
(8)トランスの第4の実施形態
図11は、トランスTの第4の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図6との相違点は、二次コイルL2が、一次コイルL1の外側に配置された一対の磁性体片26a、26bを介して一次コイルL1と同心状に巻装されている点である。磁性体片26a、26bはトランスTの底面側から見てそれぞれ円弧状断面を有する。その他の構成については、図6の実施形態と同様である。
【0110】
図11のトランスTでは、二次コイルL2が一次コイルL1と同心状に巻装されているので、一次コイルL1に生じた磁束φ1に抗する起磁力φ2が外側脚23a、23bの磁気回路に生じ、これに対応する電流が二次コイルL2に流れる。この場合、図11のトランスTの底面からみて、第1電流i1は一次コイルL1を時計回りに流れ、第2電流i2は二次コイルL2を反時計回りに流れる。但し、結線は同じであるので電気回路の動作は同じである。また、一次コイルL1による磁束φ1の一部φ1bが双方の磁性体片26a、26bを通り漏れる。この場合、双方の磁性体片26a、26bが漏洩磁気回路として作用する。
【0111】
(9)トランスの特徴のまとめ
本発明のトランスは、一次コイルL1と二次コイルL2との間に漏洩磁気回路を形成するように、空隙または磁性体片を介して両コイルが巻装されている。そして、漏洩磁束の量をどの程度にするかによって、一次コイルL1と二次コイルL2を離隔する距離を決定する。この点において本発明のトランスは、従来のトランスが一次コイルと二次コイルの結合率を限りなく100%(結合度=1)になるように一次コイルと二次コイルを密着して巻装する点と大きく相違する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明による降圧型スイッチング電源回路の第1の実施形態の基本構成回路である。
【図2】本発明による降圧型スイッチング電源回路の第2の実施形態の基本構成回路である。
【図3】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図4】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図5】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図6】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第1の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】(A)は、中心磁極磁気回路及び両脚磁気回路の磁束密度の時間変化を模式的に示した図である。(B)は、二次コイルL2と一次コイルL1の電流の時間変化を模式的に示した図である。
【図8】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図9】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第2の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第3の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第4の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】従来の降圧型スイッチング電源回路の基本例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0113】
T トランス
Q1 スイッチング素子
Q2 二次側スイッチング素子
Q3 一次側スイッチング素子
D1 一次側ダイオード
D2 二次側ダイオード
L1 一次コイル
L2 二次コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ付きインダクタを用いたスイッチング電源回路及びこの回路に用いられるトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
降圧型スイッチング電源回路は、多くの用途において大電流、低電圧及び高速応答の出力を要求される。図12は、降圧型スイッチング電源回路の一つであり特許文献1及び非特許文献1等に記載された「タップ付きインダクタ降圧コンバータ」の基本例を示す。図12の降圧型スイッチング電源回路は、直列にチョークコイル結合されたコイルL11とコイルL12との接続点にタップを有するトランスT10を有し、スイッチング素子Q21がコイルL11に対する直流電源Vinからの直流電圧の印加をオンオフする。また、ダイオードD31のカソードがタップへ接続され、アノードは接地点へ接続されている。コイルL12の出力側と接地点との間には平滑コンデンサCが接続され、電圧Voが出力される。スイッチング素子Q21の制御端子にはパルス幅変調信号が入力され、負荷の変動に対してオン期間を調整することにより電源回路の出力電圧を一定に保持する帰還制御を行っている。尚、破線で示すダイオードD32は、後述する問題点の説明のために示しているが実際には接続されない。
【0003】
スイッチング素子Q21がオンのとき、コイルL11及びL12を通して出力端子Voに直流電圧が出力される。Q21がオフになると、コイルL11及びL12に対する電圧供給は停止するが、タップにダイオードD31が接続されているため、コイルL12に生じる逆起電力(フライバック電圧)によりダイオードD31からコイルL12を通って電流が流れ、出力端子Voに直流電圧が出力される。
【0004】
先ず、コイルL11の役割を説明するために、図12の回路においてコイルL11のない(コイルL12とダイオードD31のみ)場合の回路の問題点について説明する。十分な出力電流を得るためにコイルL12のインダクタンスを小さくすると、Q21がオンになった瞬間にコイルL12に流れる電流のピーク値が大きく、回路の配線等から電磁波として放出されるノイズレベルが大きい。このオン時のピーク電流値はオン期間のパルス幅をいかに狭くしても下げることができない。
【0005】
また、コイルL12のインダクタンスが小さいため、オン期間のパルス幅を拡げることができない。パルス幅を拡げると直流電圧が直接印加されたときと同じ作用をもたらし、直流電圧印加時間が長くなるにつれてコイルL12は単なる直流抵抗成分としてのみ働くため、直流電圧が直接負荷に印加されることとなり、低電圧仕様の負荷は破壊される。これを避けるために、非常に狭いパルス幅でスイッチング制御を行おうとすると、スイッチング素子Q21の応答特性が限界となる。
【0006】
上記の問題点を回避するため、図12のようにコイルL12よりもインダクタンスの大きいコイルL11を直列に挿入する必要がある。これによりコイルL11及びコイルL12を流れるオン時のピーク電流値を制限し、スイッチング素子Q21により制御し易い長さのオン期間をとることができるようになった。
【特許文献1】特開2005−101406号公報(図5、0026)
【非特許文献1】コーセル株式会社、「電源について」、p36-37、平成17年7月20日検索、<URL:http://www.cosel.co.jp/jp/products/img/technotes.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図12の回路のようにインダクタンスの大きいコイルL11を挿入したことにより、以下の問題点が新たに生じた。
その1つは、スイッチング素子Q21がオンしたときにインダクタンスの大きいコイルL11の電流値は徐々に上昇するため、負荷の急峻な電流の立ち上がりに対応できないことである。すなわち、オン期間において大電流、低電圧及び短時間での電流の立ち上がりを要求する負荷に対する応答性がよくないという問題が生じる。
【0008】
一方、オフ期間には、オン期間にコイルL11及びコイルL12に蓄積された磁気エネルギーが全てコイルL12に与えられるので、コイルL12から負荷に供給される電流最大値は大きい。このとき、コイルL12→負荷及びC→ダイオードD31→コイルL12の閉回路に電流が流れて負荷に電流が供給される。すなわちコイルL11は両端開放され、コイルL12のみが出力電流に寄与しかつコイルL12はインダクタンスが小さいため、大電流、低電圧及び短時間で負荷へ電流を供給できる。しかしながら、オフ期間のみの動作という点でやはり負荷への電流供給は遅れるといえる。
【0009】
さらに別の問題は、スイッチング素子Q21がオフするときにQ21とコイルL11との接続点(FETではソース、バイポーラトランジスタではエミッタ)に大きなスパイク電圧が発生するため、スイッチング素子Q21を高耐圧とする必要があることである。この対策として仮にスイッチング素子Q21とコイルL11との接続点にダイオードD32(破線)を入れた場合、スパイク電圧は抑制できるが、オフ期間にもコイルL11とL12の大きな合成インダクタンスが電流源となるため、小電流、高電圧、長時間で負荷に電流供給することとなる。オフ期間には、コイルL11→コイルL12→負荷及びC→ダイオードD32→コイルL11→コイルL12の閉回路に電流が流れるためである。この結果、重負荷に対しては負荷電圧を維持できず電圧降下が生じ、また長時間放出電流源であるためにコイルL11とL12の磁気回路の磁束がオフ期間にリセットしきれず磁気飽和してしまい、十分なエネルギーを磁気回路に供給できなくなる。これを避けるためにコイルL11のインダクタンスを小さくすると軽負荷に対して過大電圧が生じる。よって、オフ時のスパイク電圧対策としてダイオードD32を接続する手法は採用できない。
【0010】
オフ時のスパイク電圧対策として、図12の実際の回路では、ダイオードD32の替わりにスナバ回路を用いることが知られている。スナバ回路は、一般に、ダイオード、ダイオードと抵抗の直列回路、コンデンサと抵抗の直列回路、あるいはコンデンサとダイオードの直列回路等からなり、スパイク電圧を吸収またはクランプするものである。しかしながら、スナバ回路はスパイク電圧の抑制ではなくダイオードやコンデンサ等の素子に吸収させるものであるから電力損失となり、スイッチング電源回路の電力変換効率を低下させることとなる。
【0011】
以上述べた従来のタップ付きインダクタを用いたスイッチング電源回路の問題点に鑑み、本発明は、次のことを目的とする。
本発明は、小インダクタンスの二次コイルにおけるオン時のピーク電流値低減等のために大インダクタンスの一次コイルを接続した場合であっても、負荷の急峻な電流立ち上がりに対してオンオフいずれの期間にも必要な電流を直ちに供給できるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
また本発明は、上記に加えて、オン期間のパルス幅を拡げても小インダクタンスの二次コイルから負荷へ過大電流が流れないスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
また本発明は、高耐圧のスイッチング素子やスナバ回路を用いることなくオフ時に一次コイルに生じるスパイク電圧を解消することができるスイッチング電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0013】
(2)請求項2に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子の電流路から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0014】
(3)請求項3に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0015】
(4)請求項4に係るスイッチング電源回路は、一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とする。
【0016】
(5)請求項5に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚の各々に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0017】
(6)請求項6に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装され、少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップが設けられ、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0018】
(7)請求項7に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に前記一対の外側脚の内側に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0019】
(8)請求項8に係るスイッチング電源回路は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが該一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が前記磁性体片を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする。
【0020】
(9)請求項9に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の各々に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0021】
(10)請求項10に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装された二次コイルとを有し、
少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップを設け、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0022】
(11)請求項11に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の内側にて前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0023】
(12)請求項12に係る電源トランスは、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記磁性体片を漏洩磁気回路とすることを特徴とする。
【0024】
(13)請求項13に係る電源トランスは、第1磁気回路を有する一次コイルと、第2磁気回路を有しかつ該一次コイルに疎に磁気結合された二次コイルと、前記一次コイルの発生する磁束の一部が前記二次コイルを通過しないで漏洩する漏洩磁気回路とを有し、
前記一次コイルに直流電圧が印加されたとき前記二次コイルに電圧を誘起させると共に前記一次コイルの有する第1磁気回路内に存在する磁束の磁束密度を前記二次コイルの有する第2磁気回路内に存在する磁束の磁束密度より大として保持し、
前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき前記二次コイルに、前記一次コイルに直流電圧が印加されたときと同極性の電圧を誘起させることを特徴とする。
【0025】
(14)請求項14に係る電源トランスは、前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき、前記第1磁気回路から前記第2磁気回路へ磁束が流れ込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
・請求項1〜4に記載のスイッチング電源回路では、疎に磁気結合された一次コイルと二次コイルとを具備するトランスを用い、一次コイルに対してスイッチング素子によりオンオフする直流電圧を印加し、一次コイルの一端と二次コイルの一端を接続した接続点であるタップから出力を得る。一次コイルの他端(直流電圧印加端)は、スイッチング素子がオフのとき逆起電力により負電位となるが、このときに一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオード(または一次側スイッチング素子)が接続されている。さらに、二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオード(または二次側スイッチング素子)が接続されている。本発明の効果は次の通りである。
【0027】
オン期間においては、一次コイルに直流電圧(一次側ダイオード側が正電位、タップ側が負電位)が印加されると、一次コイルのインダクタンスを必要十分に大きくした場合、比較的ゆっくりと電流が立ち上がりタップを通して負荷に供給される(第1電流)。
【0028】
一方、二次コイルは一次コイルとトランス結合されているため一次コイルに電圧が印加されると、一次コイルに生じた磁束が二次コイルを通りこれに抗する相互誘導の起磁力が瞬時に二次コイルに生じ、対応する起電力(タップ側が正電位、二次側ダイオード側が負電位)が発生する。二次コイルのインダクタンスを必要十分に小さくすれば、この起電力による誘導電流は瞬時にタップを通して負荷に供給される(第2電流)。
【0029】
よって本発明では、大インダクタンスの一次コイルを直列接続した場合であっても、トランス結合された小インダクタンスの二次コイルからの誘導電流によりオン時に負荷へ迅速に電流供給することができ、オン期間に負荷において電流の急峻な立ち上がりが生じても対応できる。
【0030】
また、一次コイルと二次コイルとはトランス結合ではあっても疎結合である。「疎結合」とは、一次コイルの磁気回路に発生する磁束の全てを二次コイルの磁気回路に通さず、その一部を意図的に設けた漏洩磁気回路に漏らすことにより二次コイルの磁気回路を通る磁束を少なくするようにトランスが構成されていることを意味する。これにより、オン時に二次コイルに激しいピーク電流を生じることはないため、負荷への激しいピーク電流が抑制できる。この結果、回路の配線等から電磁波として放出されるノイズレベルが低減される。また、従来は必要であったチョークコイルが不要となる。
【0031】
さらに、上記の通りオン時の迅速な電流供給は二次コイルにより確保されるので、一次コイルについてはそのインダクタンスを必要十分に大きくとることができる。これにより、オン期間のパルス幅を拡げても直流電圧が負荷へ直接印加されることが避けられる。また、パルス幅を拡げられることによりスイッチング素子の応答性に対する要求が緩和され制御が容易となる。
【0032】
さらに、一次コイルと二次コイルがトランス結合しているため、一次コイルに幅の広いパルス電圧を印加しても、印加時間の経過と共に磁気回路が磁気飽和して二次コイルの起電力が消失するため二次コイルから負荷への電流は一定値に制限され、過大電流が流れることが防止される。
【0033】
また、一次コイルの磁気回路に生じた磁束の全てを二次コイルの磁気回路に通さず、その一部を漏らすトランス構成により、オン期間の終わりの時点では、一次コイルの磁気回路には大量の磁束が蓄積されて磁束密度が高い状態となる一方、二次コイルの磁気回路の磁束密度は低い状態のままである、両コイルの磁気回路の磁束密度が不均衡状態となることを実現できる。この磁束密度の不均衡状態は、以下に説明するオフ期間に二次コイルに流れる電流の要因となる。
【0034】
次に、オフ期間においては、一次コイルへの直流電圧の印加が停止されることで一次コイルには自己誘導による逆起電力が発生する。本回路ではこのとき、一次コイル→負荷→一次側ダイオード(または一次側スイッチング素子)→一次コイルの閉回路が形成されるため、一次コイルの逆起電力によりタップを通して負荷に電流が流れる(第3電流)。
【0035】
この一次コイルに流れる第3電流は、オン期間に一次コイルの磁気回路に蓄積された磁束を保持する(かしめる)働きがある。このため、一次コイルの磁気回路の磁束は瞬時に消滅することなく緩やかに減少し、その結果、一次コイルと二次コイルの磁束密度の不均衡状態はオフ期間に入ってもしばらく持続する。この両コイルの磁気回路における磁束の不均衡状態が存在することにより、一次コイルの磁気回路の磁束は減少傾向であるにも拘わらず一次コイルから生じて二次コイルを通過する磁束は増加を続ける。
【0036】
そして、この増加する磁束に抗する起磁力が二次コイルの磁気回路に発生する。すなわち、この起磁力に対応して二次コイルにはオン期間と同じ方向の起電力(タップ側が正電位、二次側ダイオード側が負電位)が生じることとなる。本回路ではこのとき二次コイル→負荷→二次側ダイオード(または二次側スイッチング素子)→二次コイルの閉回路が形成されるため、二次コイルの起電力によりタップを通して負荷に電流が流れる(第4電流)。
【0037】
尚、二次コイルにも逆起電力(フライバック電圧)は生じるが、一次コイルにかしめられた磁束により二次コイルに生じる起電力の方が支配的であるため逆起電力は相殺され顕在化しない。よって、本回路における二次コイルでは、オン期間もオフ期間も同方向すなわちフォワード方向に電流が流れて負荷に供給することができる。
【0038】
また、二次コイルのインダクタンスを必要十分に小さくすれば、このオフ期間の電流についても、負荷の電流の急峻な立ち上がりに対応して迅速に電流供給できる。
【0039】
尚、オフ期間において一次コイルの磁気回路の磁束が減少する一方、二次コイルの磁気回路の磁束が増加していくと、両者が均衡した時点で一次コイルから二次コイルへの磁束の流れが停止し両コイルとも磁束がリセット(磁束ゼロ)される。このとき、磁束が急減する二次コイルには逆起電力が生じるが、二次側ダイオード(または二次側スイッチング素子)があるため逆方向電流は流れない。
【0040】
さらに、一次コイルに第3電流が流れてその磁束がかしめられることで、一次コイルにオフ時のスパイク電圧が発生しない。これにより、スイッチング素子のスパイク電圧に対する耐圧性が不要となり低耐圧のものを使用できる。当然、スナバ回路も不要となり回路が簡素化され、スナバ回路による電力損失の問題も解消される。
【0041】
・請求項2及び3において、二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードに替えて二次側スイッチング素子を接続した場合、一次コイルに対する印加電圧のオンオフと同相で同期したスイッチング制御を行うことができる。これにより、オン期間においては電流路を確実にオン状態として十分な第2電流を流すことができる。また、オフ期間においては、負荷と並列の平滑コンデンサから二次コイルの他端へ向かう逆電流を阻止し、二次コイルの磁束リセット時の逆電圧を阻止すると共に、二次側スイッチング素子に寄生するダイオード要素を利用してオン期間の第2電流と同じ方向に第4電流が流れることができる。また、ダイオードを用いる場合に比べてダイオードの順方向電圧降下がない分だけ負荷への出力電圧が大きくなる。
【0042】
・請求項2及び4において、一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードに替えて一次側スイッチング素子を接続した場合、一次コイルに対する印加電圧のオンオフと逆相で同期したスイッチング制御を行うことができる。従って、一次コイルに直流電圧が印加されるオン期間には、一次側スイッチング素子がオフとなることにより直流電圧が接地されることを確実に防止する。この場合もダイオードを用いる場合に比べてダイオードの順方向電圧降下がない分だけ負荷への出力電圧が大きくなる。
【0043】
・請求項5〜8においては、請求項1〜4のスイッチング電源回路におけるトランスのコアが、対向する一対のヨークとこれらを連結する中央脚及び一対の外側脚とで構成されている。そして、中央脚に一次コイルが巻装される。二次コイルは外側脚のいずれか若しくは双方に巻装されるか、一次コイルと同心状に両外側脚の内側に巻装されるか若しくは磁性体片を介して一次コイルの上に重ねて巻装されている。本トランスでは、一次コイルと二次コイルとの間に空隙が形成されるように二次コイルを巻装するか、または、磁性体片を介して二次コイルを巻装することにより、一次コイルと二次コイルとを離隔させている。
【0044】
斯かるトランスでは、スイッチング素子がオンのとき、一次コイルにより中央脚に生じた磁束が二次コイルの磁気回路へ流れ込むことにより二次コイルにはこれに抗する起磁力が瞬時に生じ、これに対応する起電力による電流が二次コイルに流れる。
【0045】
また、斯かるトランスでは、一次コイルと二次コイルが空隙または磁性体片を介して離隔しているため、一次コイルに生じて中央脚から外側脚へ向かう磁束の一部は、漏洩磁気回路となる両コイル間の空隙または磁性体片を通る漏れ磁束となり、二次コイルと鎖交する磁束が減少する。この漏洩磁気回路を通る磁束にはエネルギー損失がほとんどないことから一次コイルの磁束の増加を促進する働きがある。一方、二次コイルを通る磁束が少なくなることで二次コイルの磁束の増加を遅くする。これにより、両コイルの磁束密度に大きな差を生じさせることができる。
【0046】
従って、オン期間の終わりの時点では一次コイルの磁気回路に磁束が蓄積されて磁束密度が高い状態となる一方、二次コイルの磁気回路の磁束密度は低い状態のままであり、両コイルの磁束密度が不均衡状態となっている。この不均衡状態のままオフ期間となり一次コイルにフライバック電流が流れると、一次コイルの磁気回路の磁束はかしめられてその減少が緩慢となる一方、二次コイルの磁気回路の磁束は増加を続ける。この増加する磁束に抗するように、オン期間と同方向の起磁力が二次コイルの磁気回路に生じ、これに対応する起電力による電流がオン期間と同方向に流れる。
【0047】
請求項6において、外側脚の片側のみに二次コイルを巻装した場合は、少なくとも巻装されていない方の外側脚に磁気ギャップを設ける。これにより、巻装されていない方の外側脚へ過度に磁束が流れることを防止すると共に、この外側脚もまた漏洩磁気回路となる。こうして磁気飽和を防止し、十分な大きさの二次コイル出力電流を確保することが可能となる。片側のみに二次コイルを巻装することは製造コスト上、有利である。
【0048】
・請求項9〜12におけるトランスは、対向する一対のヨークとこれらを連結する中央脚及び一対の外側脚とで構成され、中央脚と各外側脚との間には窓空間が形成される。そして、中央脚に一次コイルが巻装される。二次コイルは外側脚のいずれか若しくは双方に巻装されるか、一次コイルと同心状に離隔して両外側脚の内側に巻装されるか若しくは磁性体片を介して一次コイルの上に重ねて巻装されている。本トランスでは、一次コイルと二次コイルとの間に空隙が形成されるように二次コイルを巻装するか、または、磁性体片を介して二次コイルを巻装することにより、一次コイルと二次コイルとを離隔させている。
【0049】
斯かるトランスでは、一次コイルの磁気回路と二次コイルの磁気回路が空隙または磁性体片を介して離隔しているため、一次コイルに生じた磁束の一部は、漏洩磁気回路となる両コイル間の空隙または磁性体片を通る漏れ磁束となり、二次コイルと鎖交する磁束が減少する。これにより、一次コイルと二次コイルとが疎結合となるトランスを実現できる。請求項10において、外側脚の片側のみに二次コイルを巻装し、少なくとも巻装されていない方の外側脚に磁気ギャップを設けた場合は、巻装されていない方の外側脚へ過度に磁束が流れることを防止すると共に、この外側脚もまた漏洩磁気回路となる。
【0050】
請求項13及び14のトランスは、一次コイルに生じる磁束の一部が二次コイルを通過しないで漏洩する漏洩磁気回路を設けたので、一次コイルに電圧を印加したときに生じる磁束の全てが二次コイルに与えられずに一次コイルに蓄積され、一次コイルの磁束密度が二次コイルの磁束密度に対して相対的に大となって保持される。このような磁束密度の差が生じた状態で一次コイルへの電圧印加を停止すると、一次コイルには逆起電力による電流が流れる。これにより二次コイルにも起電力が生じるが、その起電力は、上記磁束密度の差が存在することにより一次コイルに電圧印加したときと同方向に電流を流すように生じる。よって、本トランスでは、一次コイルへの電圧印加時も非印加時も、二次コイルから同方向の出力電流を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
(1)スイッチング電源回路の第1の実施形態
(1−1)回路構成
本発明によるタップ付きインダクタを用いた降圧型スイッチング電源回路では、例えば、入力直流電圧12Vに対して、出力が1V、100A、立ち上がり1μSという低電圧、大電流、短時間応答が要求される。
【0052】
図1は、本発明による降圧型スイッチング電源回路の第1の実施形態の基本構成回路である。本回路はトランスTを有し、トランスTは、直列接続された一次コイルL1と二次コイルL2とを具備し、その接続点X0にタップを設けている。すなわち一次コイルL1の巻き終わり端子(黒点で示した端子の反対側)と二次コイルL2の巻き始め端子(黒点で示した端子)が接続されている。接続点X0 は出力端子Voへ接続され、ここから出力電圧を得る。一次コイルL1と二次コイルL2とはトランス結合であるが、後述するトランスTの特徴的構成(図6及び図9〜11にて説明)により疎結合である。つまり、一次コイルから二次コイルへ向かう磁束の一部を積極的に漏洩磁気回路に漏洩させるトランス結合である。よって従来のトランスと異なり、本発明のトランスTでは出力電圧が巻数比のみによっては決定されず、漏洩する磁束量にも依存する。しかしながら一般的な設定と同様に、降圧型とするためには、通常、相対的に一次コイルL1のインダクタンスが大きく、二次コイルのインダクタンスが小さくなるように巻き数が設定される。
【0053】
一次コイルL1の巻き始め端子(黒点で示した端子)X1は、スイッチング素子Q1であるNチャネルFET(field effect transistor)のソースと接続されている。このFETのドレインは直流電圧の入力端子Vinと接続される。FETのゲートに対しては、制御信号であるパルス電圧信号が入力される。
【0054】
スイッチング素子Q1の別の実施例として、PチャネルFETを用いる場合は、そのソースを直流電圧Vinと接続し、ドレインを一次コイルL1の巻き始め端子X1と接続する。ゲートに対しては同様に制御信号であるパルス電圧信号(但し、負電圧がオン)を入力する。以下の本発明の他の実施形態においても、直流電圧Vinのスイッチング素子Q1としてNチャネルFETもPチャネルFETも同様に用いることができる。
【0055】
さらに、一次側ダイオードD1のカソードが一次コイルL1の巻き始め端子X1に接続され、アノードが接地点に接続されている。
また、二次側ダイオードD2のカソードが二次コイルL2の巻き終わりX2に接続され、アノードが接地点に接続されている。ダイオードD2の順方向電圧降下(通常0.6V程度)の分だけ負荷への供給電圧が低下するため、ダイオードD2として電圧降下が0.2V程度のショットキーバリアダイオードを用いることが好適である。
【0056】
出力端子Voと接地点との間には平滑コンデンサCが接続されている。図示しないが負荷も出力端子Voと接地点との間に接続される。
【0057】
尚、図1に示したスイッチング電源回路は、正の入力電圧から正の出力電圧を得る回路であるが、負の入力電圧から負の出力電圧を得るには、図1の回路構成を、極性のみ異なる全く同じ構成の回路とすればよいことは、当業者には自明のことである。その場合は、各構成要素(ダイオード及びスイッチング素子)及びオンオフ制御信号の極性を必要に応じて入れ替えればよく、正負の極性が逆となるだけで実質的に同じ動作が実現される。
【0058】
(1−2)動作説明
<オン期間の動作>
スイッチング素子Q1のゲートに入力されるパルス電圧信号は、負荷の変動に対して入力直流電圧のオン期間を調整することにより電源回路の出力電圧を一定に保持する帰還制御を行っている。
【0059】
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオンとなると、ドレイン・ソース間の電流路が導通して直流電圧Vinが一次コイルL1の巻き始め端子X1に印加される。このとき一次コイルL1は、直流電圧Vinの負荷として働く。一次コイルL1の巻き始め端子X1が正電位、巻き終わり端子(タップX0側)が負電位となる。一次側ダイオードD1は逆バイアスとなるため電流は流れない。従って、直流電源Vin→スイッチング素子Q1→一次コイルL1→負荷及びC、という経路で電流が流れる。このオン期間に一次コイルL1を通りタップX0から出力される電流を「第1電流(i1)」と称することとする。
【0060】
一方、一次コイルL1に第1電流が流れると一次コイルL1の磁気回路に磁束が発生する。そしてこの磁束が、トランス結合された二次コイルL2の磁気回路を通ることにより、これに抗する相互誘導による起磁力が二次コイルL2の磁気回路に瞬時に発生する。このとき二次コイルL2の巻き始め端子(タップX0側)が正電位、巻き終わり端子X2が負電位であり、二次側ダイオードD2は順バイアスとなる。この相互誘導による起電力により、二次コイルL2→負荷及びC→二次側ダイオードD2、という経路で電流が流れる。このオン期間に二次コイルL2を通りタップX0から出力される電流を「第2電流(i2)」と称することとする。
【0061】
一次コイルL1のインダクタンスが大きいために第1電流の立ち上がりは比較的遅いが、二次コイルL2のインダクタンスは小さいので第2電流の立ち上がりは迅速であり、瞬時に遅れなく負荷に供給される。また、一次コイルL1と二次コイルL2は疎結合であるので、オン時に一次コイルL1に生じる磁束によって二次コイルL2に激しいピーク電流が流れることはない。さらに、一次コイルのインダクタンスを大きくできるため、パルス幅を広くしても直流電圧が直接負荷に印加されることが避けられる。
【0062】
所要負荷電圧までは、トランス結合作用による一次コイルL1と二次コイルL2の巻き数比設定により二次コイルL2を低インピーダンスで駆動できる。これにより負荷における電流の急峻な立ち上がりにも対応できる。例えば、入力直流電圧が12V、所要負荷電圧が1Vであり、一次コイルL1と二次コイルL2の巻き数比において二次コイルL2に1V発生するように設定すると、1V未満(1Vより若干低い電圧)までは電流が急峻に立ち上がる。負荷電圧が1Vに達すると、二次コイルL2の発生する電圧と負荷電圧(コンデンサCも含む)とバランスするため、電流は流れなくなる。これに対し、従来技術では、電流を急峻に立ち上がらせるため一次コイルと二次コイルのインダクタンスを共に小さくすると直流電圧が負荷に直接印加される事態が発生し、所要負荷電圧を超過して負荷に電圧が印加されることとなっていた。
【0063】
尚、一次コイルL1と二次コイルL2は、トランス構造上疎結合であるので、一次コイルL1に生じた磁束の一部のみが二次コイルL2の磁気回路を通る。この結果、オン期間の終了時点では、一次コイルL1の磁気回路には大量の磁束が蓄積されて磁束密度が高い状態となる一方、二次コイルL2の磁気回路の磁束密度は低い状態のままであり、両コイルの磁気回路の磁束密度が不均衡状態となっている。この不均衡状態は以下のオフ期間における電流の要因となる。
【0064】
<オフ期間の動作>
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオフとなると、ドレイン・ソース間の電流路が直ちに遮断して直流電圧Vinの一次コイルL1への印加が停止される。印加電圧が急に停止されることで一次コイルL1には、自己誘導に基づく逆起電力(フライバック電圧)が発生する。このとき一次コイルL1は電源として働き、その巻き始め端子X1が負電位、巻き終わり端子(タップX0側)が正電位となる。よって一次側ダイオードD1は順バイアスとなる。この結果、一次コイルL1→負荷及びC→一次側ダイオードD1→一次コイルL1、という閉回路に電流が流れる。これは準短絡状態である。このオフ期間に一次コイルL1を通りタップX0から出力される電流を「第3電流(i3)」と称することとする。
【0065】
一次コイルL1の磁気回路の磁束は、スイッチング素子Q1がオフとなる時点で最大となっている。一次コイルL1に流れるフライバック電流である第3電流は、オン期間に一次コイルL1に蓄積された磁束を保持する(かしめる)働きがあり、磁束の減少を緩慢とする。つまり、オフ期間になって一次コイルL1の磁束は減少しつつも、一次コイルL1が二次コイルL2よりも相対的に磁束密度の高い状態がしばらく持続する。この両コイルの磁束密度の不均衡状態が持続する限り、一次コイルL1にかしめられた磁束により二次コイルL2の磁気回路を通過する磁束は増加を続け、これに抗する起磁力が二次コイルL2の磁気回路に生じる。従って、この起磁力の方向はオン期間と同じである。よって二次コイルL2には、オン期間と同じ方向の起電力が生じ、フォワード動作を行う。すなわち、オフ期間においても一次コイルL1が磁束発生源となり二次コイルL2が磁束受領源となり、二次コイルL2は一次コイルL1の磁束を受け続け、しかもその増加率は正である。従って二次コイルL2は、オン期間と同じく巻き始め端子(タップX0側)が正電位、巻き終わり端子X2が負電位となり、二次側ダイオードD2は順バイアスとなる。この結果、二次コイルL2→負荷及びC→二次側ダイオードD2→二次コイルL2、という閉回路に電流が流れる。これも準短絡状態である。このオフ期間に二次コイルL2を通りタップX0から出力される電流を「第4電流(i4)」と称することとする。
【0066】
尚、オフになったときに一次コイルL1に生じる逆起電力によって二次コイルL2にも逆起電力(フライバック電圧)は生じる(一次コイルと同様に巻き始め端子(タップX0側)が負電位、巻き終わり端子X2が正電位)が、上述の第3電流により一次コイルL1にかしめられた磁束によって二次コイルL2に生じる起電力の方が支配的であるため逆起電力は相殺され顕在化しない(これに対し図12の従来回路では、オフ時の二次コイルには逆起電力のみが生じる)。このように、本回路における二次コイルL2では、オン期間もオフ期間も同方向(フォワード方向)に電流が流れて負荷に供給することができる。また、二次コイルL2はインダクタンスが小さいためオフ期間においても低インピーダンスで負荷に迅速に電流を供給できる。
【0067】
その後、オフ期間における時間経過と共に、磁束発生源である一次コイルL1の保持磁束量が減少し、磁束密度が低下していくと、二次コイルL2の磁気回路の磁束密度と均衡する点に達する。両コイルの磁束密度が均衡すると、磁束の流れがなくなり両コイルの磁束がゼロにリセットされる。この時点で一次コイルL1を流れる第3電流及び二次コイルL2を流れる第4電流はゼロとなる。尚、二次コイルL2の磁束が急激にリセットされることによる逆起電力が発生するが、二次側ダイオードD2が逆バイアスとなるため逆方向電流は流れない。その後、次の周期のオン期間を迎える。これらの動作については、後に図6〜8においてトランスTの構成との関係と共にさらに詳細に述べる。
【0068】
(1−3)波形計測結果
図3〜図5は、図1に示した回路図の各測定点M1〜M5における電流または電圧の計測波形である。横軸は時間軸(s)、縦軸は電流または電圧(AまたはV)である。
【0069】
図3(A)は、スイッチング素子Q1のソース側の計測点M1での電流波形である。第1電流i1はスイッチング素子Q1がオンになるとゼロから徐々に増加していき、Q1がオフになると直ちに遮断される。
【0070】
図3(B)は、ダイオードD1のカソード側の計測点M2での電流計測波形である。第3電流i3は、スイッチング素子Q1のオン期間には流れず、Q1がオフになると直ちに最大電流で立ち上がり徐々に減少していく。
【0071】
図3(C)は、一次コイルL1の巻き終わり端子側の計測点M3での電流波形である。計測点M3では一次コイルL1のみを流れる電流が計測される。スイッチング素子Q1のオン期間には第1電流i1がゼロから徐々に増加しオフ期間には第3電流i3に切り替わり徐々に減少する。図3(C)の電流は、図3(A)と図3(B)の電流を足し合わせた波形となっている。
【0072】
ここで図3(A)を参照すると、第1電流i1がオフ時に遮断された直後には、振動するトランジェント波形が観られ、また図3(B)を参照すると、第3電流i3がオフ時に立ち上がった直後にもトランジェント波形が観られる。しかしながら、図3(C)の波形ではこれらのトランジェントが消失している。このように、波形の重ね合わせにより、第1電流i1と第3電流i3の切り替わり時のトランジェントを打ち消し合う効果が得られることがわかる。
【0073】
図3(D)は、タップX0より出力端子Vo側の計測点M4での電流波形である。すなわち図3(D)は、図3(A)及び(B)の一次コイルL1を流れる電流に、二次コイルL2を流れる電流を足し合わせた電流の波形である。オン期間にはゼロから徐々に増加し、オフ期間には最大電流から徐々に減少している。
【0074】
図4(A)は、スイッチング素子Q1のソース電圧波形である。
図4(B)は、図3(C)と同じ、一次コイルL1のみを流れる電流波形である。
図4(C)は、二次コイルL2の巻き始め端子側の計測点M5での電流波形である。スイッチング素子Q1のオン期間には第2電流i2がゼロから徐々に増加して流れ、オフ期間には第4電流i4が直ちに最大電流で立ち上がり徐々に減少しつつ流れる。
【0075】
図4(D)は、図3(D)と同じく計測点M4での電流波形である。図4(D)の電流は、図4(B)と図4(C)の電流を足し合わせた電流の波形である。スイッチング素子Q1のオン期間には第1電流i1と第2電流i2とを足し合わせた電流がゼロから徐々に増加して流れ、オフ期間には第3電流i3と第4電流i4とを足し合わせた最大電流が直ちに立ち上がり徐々に減少しつつ流れる。
【0076】
図5(A)は、図4(A)と同じくスイッチング素子Q1のソース電圧波形である。
図5(B)は、図4(B)、図4(C)及び図4(D)の電流波形を同じベースライン上に示した図である。
【0077】
(2)スイッチング電源回路の第2の実施形態
(2−1)回路構成
図2は、本発明による降圧型スイッチング電源回路の第2の実施形態の基本構成回路である。本回路は、上記の第1の実施形態において二次側ダイオードD2に替えて二次側スイッチング素子Q2を接続し、一次側ダイオードD1に替えて一次側スイッチング素子Q3を接続している点が異なる。他の構成要素については第1の実施形態と同様である。
【0078】
二次側スイッチング素子Q2としてはFETを用いており、二次コイルL2の巻き終わり端子X2にドレインを接続し、ソースを接地点に接続している。二次側スイッチング素子Q2の制御端子であるゲートに対しては、スイッチング素子Q1のゲートに入力するパルス電圧信号と同じ信号を入力する。従って、二次側スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1のオン及びオフと同じタイミングでドレイン・ソース間の電流路が導通及び遮断されることとなる。
【0079】
二次側スイッチング素子Q2のFETは、オン期間にはドレイン・ソース間のいずれの方向にも電流が流れることができる。オフ期間にはドレインからソースへの電流は遮断されるが、寄生ダイオードによりソースからドレインへは電流が流れることができる。二次側スイッチング素子Q2は、電流の流れに関して第1の実施形態のダイオードD2と同様に動作するため、オンオフいずれの期間にもソースからドレインへ電流が流れることとなる。本回路は大電流出力を目的とするので、二次側スイッチング素子Q2のFETは、スイッチング素子Q1のFETよりも大電流用とすることが好適である。
【0080】
一次側スイッチング素子Q3として用いるFETは、一次コイルL1の巻き始め端子X1にドレインを接続し、ソースを接地点に接続している。一次側スイッチング素子Q3のゲートには、スイッチング素子Q1のゲートに入力するパルス電圧信号と逆相の信号を入力する。そのために、パルス電圧信号を反転回路INVを介してQ3のゲートに入力している。従って、一次側スイッチング素子Q3は、スイッチング素子Q1のオン及びオフと逆のタイミングでドレイン・ソース間が遮断及び導通することとなる。
【0081】
(2−2)動作説明
<オン期間の動作>
第2の実施形態の回路動作は、二次側スイッチング素子Q2及び一次側スイッチング素子Q3の動作を除いて、第1の実施形態の回路動作と同じであり、オン期間に流れる第1電流及び第2電流、並びにオフ期間に流れる第3電流及び第4電流の発生原理は同じであるので、簡略的に説明する。
【0082】
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオンとなると、ドレイン・ソース間の電流路が導通して直流電圧Vinが一次コイルL1の巻き始め端子に印加される。このとき一次コイルL1の巻き始め端子X1が正電位、巻き終わり端子(タップX0側)が負電位となる。このとき一次側スイッチング素子Q3はオフとなりドレイン・ソース間は遮断され電流は流れない。従って、第1の実施形態と同様に、直流電源Vin→スイッチング素子Q1→一次コイルL1→負荷及びC、という経路で第1電流i1が流れる。
【0083】
一方、一次コイルL1に流れる第1電流i1による磁束に起因して、トランス結合された二次コイルL2に生じる相互誘導による起電力により、二次コイルL2→負荷及びC→二次側スイッチング素子Q2、という経路で第2電流i2が流れる。このとき二次側スイッチング素子Q2はオンでありドレイン・ソース間は導通している。
【0084】
<オフ期間の動作>
スイッチング素子Q1のゲートに印加されるパルス電圧信号がオフとなると、ドレイン・ソース間の電流路が直ちに遮断して直流電圧Vinの一次コイルL1への印加が停止される。一次コイルL1には自己誘導に基づく逆起電力が発生する。このとき一次側スイッチング素子Q3はオンとなりドレイン・ソース間が導通するため、一次コイルL1→負荷及びC→一次側スイッチング素子Q3→一次コイルL1、という閉回路に第3電流i3が流れる。
【0085】
一次コイルL1に流れる第3電流i3は、オン期間に一次コイルL1に蓄積された磁束をかしめる。そして一次コイルL1にかしめられた磁束が二次コイルL2の磁気回路を増加しつつ通過することにより二次コイルL2には、オン期間と同じ方向の起電力が生じる。二次側スイッチング素子Q2のゲートへのパルス電圧信号は、スイッチング素子Q1のゲートと同時にオフとなるが、二次側スイッチング素子Q2は大電流用であるためやや遅れてオフとなる。そして二次側スイッチング素子Q2はオフとなっても寄生ダイオードによりソースからドレインへ電流が流れることができる。よって、二次コイルL2→負荷及びC→二次側スイッチング素子Q2→二次コイルL2、という閉回路に電流が流れる。
【0086】
(3)スイッチング電源回路の第3の実施形態
本発明による降圧型スイッチング電源回路の第3の実施形態は、図示しないが、第1の実施形態の回路において二次側ダイオードD2を、第2の実施形態の二次側スイッチング素子Q2に置き換えた形態である。この第3の実施形態における二次側スイッチング素子Q2の接続及び動作は第2の実施形態と同様である。
【0087】
(4)スイッチング電源回路の第4の実施形態
本発明による降圧型スイッチング電源回路の第4の実施形態は、図示しないが、第1の実施形態の回路において一次側ダイオードD1を、第2の実施形態の一次側スイッチング素子Q3に置き換えた形態である。この第4の実施形態における一次側スイッチング素子Q3の接続及び動作は第2の実施形態と同様である。
【0088】
(5)トランスの第1の実施形態
(5−1)トランスの構成
図6は、上記のスイッチング電源回路の第1〜第4の実施形態に好適に用いられるトランスTの第1の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【0089】
トランスTのコアは、対向する一対のヨーク21a、21bと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚22と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚23a、23bとから構成され、さらに両ヨーク間の中間位置にて外側脚23a、23bに磁気ギャップ24a、24bをそれぞれ設けている。中央脚22と外側脚23a、23bとの間にはそれぞれ窓空間25a、25bが形成されている。
【0090】
一次コイルL1は中央脚22に巻装され、巻き始め端子X1が引き出されている。X1端子には、図1のスイッチング素子Q1のソース及び一次側ダイオードD1のカソードが接続される。二次コイルL2は、第1の二次コイルL2aと第2の二次コイルL2bに分割されて双方の外側脚23a、23bにそれぞれ巻装されている。第1の二次コイルL2aの巻き終わりと第2の二次コイルL2bの巻き始めは接続されている。第2の二次コイルL2bは、その巻き終わり端子X2が引き出されている。X2端子には、図1の二次側ダイオードD2のカソードが接続される。一次コイルL1の巻き終わり端子と第1の二次コイルL2aの巻き始め端子とは接続され、この接続点からタップX0すなわち出力端子Voが引き出されている。一次コイルL1と二次コイルL2a、L2bとは、ほぼ窓空間25a、25bの幅だけそれぞれ離隔して(当然であるが、コイルを巻装した厚み分は減じられる)巻装されており、これにより疎のトランス結合が実現される。以下、第1及び第2の二次コイルL2a、L2bはまとめて「二次コイルL2」と称する。
【0091】
(5−2)トランスの動作説明
図7及び図8を参照しつつ、磁気回路と電気回路との関係を含めて図6に示したトランスTの動作を説明する。
図7(A)は、中央脚22の磁気回路(以下「中心磁極磁気回路」と称する)の磁束φ1と、外側脚23a、23bの各磁気回路(以下「両脚磁気回路」と称する)に流れ込む磁束φ1aの各々の磁束密度の時間変化を模式的に示した図である。
図7(B)は、図7(A)と時間軸を揃えた二次コイルL2の第2及び第4電流i2、i4の時間変化と、参考のために一次コイルL1のフライバック電流である第3電流i3の時間変化を模式的に示した図である。
図8(A)は、スイッチング素子Q1のソース電圧波形である。図8(B)は、二次側ダイオードD2のカソード電位すなわち二次コイルL2の巻き終わり端子X2の電位波形である。図8(C)は、一次コイルL1のフライバック電流(第3電流)波形である。図8(D)は、二次コイルL2の電流波形(第2及び第4電流)である。
【0092】
<オン期間の動作>
一次コイルL1の巻き始め端子X1に直流電圧が印加されて電流(図1の第1電流i1)が流れると、中心磁極磁気回路に磁束φ1(破線)が発生する。第1電流i1は、図6のトランスTの底面からみて一次コイルL1を時計回りに流れる。
【0093】
磁束φ1の一部である磁束φ1a(実線)が、両脚磁気回路へ流れ込むことにより、二次コイルL2には相互誘導により磁束φ1aに抗する起磁力による磁束φ2が生じる。二次コイルL2の電流(図7(B)の第2電流i2)は、この磁束φ2を生じる方向に流れる。よって、第2電流i2は、トランスTの底面からみて二次コイルL2を時計回りに流れる。第1電流i1と第2電流i2は共にタップX0へと流れ、出力される。
【0094】
トランスTでは、中心磁極磁気回路に生じた磁束φ1の一部である磁束φ1b(二点破線)が、一次コイルL1と二次コイルL2の間の空隙である漏洩磁気回路を通ることにより、両脚磁気回路を通る磁束φ1aは少なくなっている。漏洩磁気回路は磁束φ1の迂回路である。
【0095】
図7(A)に示すように、直流電圧が一次コイルL1に印加されると中心磁極磁気回路の磁束密度は急速に増加する。このとき、両脚磁気回路の磁束密度も一次コイルL1の磁束φ1の影響により増加するが、この増加は中心磁極磁気回路のそれよりも少ない。これは、次のように説明される。中心磁極磁気回路に生じた磁束φ1は、本来、二次コイルが巻装された両脚磁気回路を通り難いものであり、従来のトランスではこの通り難い磁束をできるだけ漏れなく通すことを理想としている。これに対し、本発明のトランスでは中心磁極磁気回路に生じた磁束φ1の一部φ1bを積極的に漏洩磁気回路へ迂回させることにより、二次コイルと鎖交する磁束φ1aを減少させている。そして、漏洩磁気回路に迂回させられる磁束φ1bは、そのエネルギー損失がほとんどないことから中心磁極磁気回路の磁束密度の増加を促進することに寄与する。一方、鎖交する磁束φ1aが相対的に減少した両脚磁気回路の磁束密度の増加は低く抑えられることとなる。この結果、中心磁極磁気回路と両脚磁気回路の磁束密度に大きな差が生じる。
【0096】
従来のトランスであれば中心磁極磁気回路から両脚磁気回路へ与えられるべき磁束が、本トランスにおいては、両脚磁気回路へ与えられず中心磁極磁気回路に蓄積するが、この中心磁極磁気回路に蓄積されたエネルギーは、後述するオフ期間になってから両脚磁気回路へと放出されるので、エネルギーの損失はない。
【0097】
尚、両脚磁気回路の磁束密度の増加自体は少ないが、これに抗して生じる起磁力φ2の変化率は二次コイルL2に瞬時に電流を流すために十分な大きさであるので、図7(B)に示すように十分な第2電流i2が流れる。
【0098】
こうして、図7(A)の通り、オン期間の終了時点t1では、中心磁極磁気回路に大量の磁束が蓄積されて磁束密度が最大となる一方、両脚磁気回路の磁束密度は相対的に低い不均衡状態となっている。
【0099】
尚、外側脚23a、23bに磁気ギャップ24a、24bを設けたのは、磁気抵抗を大きくして磁気飽和を防止するために好適だからであり、必要に応じて設けても設けなくともよい。
【0100】
<オフ期間の動作>
一次コイルL1への直流電圧印加が停止され第1電流i1が遮断されると、通常であれば磁束φ1は瞬時に消失するが、一次コイルL1に生じる逆起電力により即座に外部との閉回路(L1は準短絡状態)に電流が流れる(図7(B)の第3電流i3)。そして第3電流i3が一次コイルL1に流れ始めることで磁束φ1は強固に保持され(かしめられ)、図7(A)の通り、φ1の磁束密度は最大値から比較的緩やかに減少していく。従って、オフ期間になっても、中心磁極磁気回路と両脚磁気回路の磁束密度の不均衡状態は持続し、この不均衡状態が持続する限り、中心磁極磁気回路から両脚磁気回路へ流れ込む磁束φ1aは増加傾向を維持する。
【0101】
図7(A)に示すように、中心磁極磁気回路から両脚磁気回路へ供給される磁束φ1aの単位時間あたりの増加率は、オン期間に比べれば小さくはなるが、オン期間と同様に正である。この結果、オフ期間においても磁束φ1aに抗する起磁力φ2の方向はオン期間と同じであり、よって、二次コイルL2にはオン期間と同じ方向に起電力が誘起され続け、同じ方向に電流が流れる(図7(B)の第4電流i4)。こうして、第3電流i3と第4電流i4は共にタップX0へと流れ、出力される。
因みに、従来のトランスであれば、オフとなった時点で中心磁極磁気回路と両脚磁気回路に磁束密度の不均衡状態は生じていないため、両脚磁気回路の磁束密度も直ちに減少し、二次コイルL2にフライバック電圧のみが生じてオン期間とは逆方向に電流を流そうとする。本発明では、これと全く逆の動作を実現している。
【0102】
やがて、図7(A)のt2の時点で、中心磁極磁気回路のφ1の磁束密度と両脚磁気回路のφ1aの磁束密度とが均衡し、磁束の流れが停止する。これにより、図7(B)に示すように一次コイルL1及び二次コイルL2の電流はゼロとなり、この瞬間は両コイルがオープン状態となる。
【0103】
ここで、図7(A)に示すように、t2の時点においては両脚磁気回路へ与えられる磁束φ1aがそれまでの増加傾向から急激にゼロとなるために、その磁束変化率は負の最大値となる。この結果、それまでと逆方向に大きな起磁力が生じ、二次コイルL2に逆起電力が発生する。尚、二次側ダイオードD2が逆バイアスとなるために、この逆起電力による電流は流れない。
【0104】
図8の波形を参照すると、この二次コイルL2に生じる逆起電力は、図8(B)の二次コイルL2の巻き終わり端子の電位波形に現れている。図8(B)の波形に大きな逆起電力が観られる時点は、図8(C)の一次コイルL1のフライバック電流(第3電流)が消失する時点、及び、図8(D)の二次コイルL2のフォワード電流(第4電流)が消失する時点と一致することがわかる。この波形観測結果から、オフ期間においても中心磁極磁気回路から両脚磁気回路への磁束の供給が増加傾向を維持していることが証明できる。
【0105】
(6)トランスの第2の実施形態
図9は、トランスTの第2の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図6との相違点は、二次コイルL2が片側の外側脚23bにのみ巻装されている点である。その他の構成については、図6の実施形態と同様である。
【0106】
図9のトランスTでは、二次コイルL2を巻装された外側脚23bには、一次コイルL1に生じた磁束φ1が通り難く、巻装されていない外側脚23aには通り易い。この結果、二次コイルL2から必要な大きさの出力電流が得られなくなる。そこで、二次コイルL2から十分な出力電流を得るためには、巻装されない外側脚23aの磁気ギャップ24aを広くするか、巻装された外側脚23bに磁気ギャップ24bを設けないことが有効である。巻装されていない外側脚23aは、一次コイルL1と二次コイルL2の間の空隙と同様に、磁束の迂回路となる漏洩磁気回路として働く。このように、片側のみに二次コイルL2を巻装することは、製造コストを低減できる利点がある。
【0107】
(7)トランスの第3の実施形態
図10は、トランスTの第3の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図6との相違点は、図6との相違点は、二次コイルL2が一次コイルL1と同心状に巻装される点である。図10では二次コイルL2が両外側脚の内壁に密着して巻装されているがこれに限定されず、両外側脚の内側であれば両外側脚から離れていてもよい。本発明のトランスでは二次コイルL2を一次コイルL1に密着させないで、一次コイルL1と二次コイルL2を離隔して巻装し、この離隔空隙に漏洩磁気回路を構成させることが特徴であるので、二次コイルL2を両外側脚の内壁に密着して巻装する必要はない。その他の構成については、図6の実施形態と同様である。
【0108】
図10のトランスTでは、二次コイルL2が一次コイルL1と同心状に巻装されているので、一次コイルL1に生じた磁束φ1に抗する起磁力φ2が外側脚23a、23bの磁気回路に生じ、これに対応する電流が二次コイルL2に流れる。この場合、図10のトランスTの底面からみて、第1電流i1は一次コイルL1を時計回りに流れ、第2電流i2は二次コイルL2を反時計回りに流れる。但し、結線は同じであるので電気回路の動作は同じである。また上記と同様に、一次コイルL1による磁束φ1の一部φ1bが、一次コイルL1と二次コイルL2の間の空隙を漏洩磁気回路として漏れる。
【0109】
(8)トランスの第4の実施形態
図11は、トランスTの第4の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。図6との相違点は、二次コイルL2が、一次コイルL1の外側に配置された一対の磁性体片26a、26bを介して一次コイルL1と同心状に巻装されている点である。磁性体片26a、26bはトランスTの底面側から見てそれぞれ円弧状断面を有する。その他の構成については、図6の実施形態と同様である。
【0110】
図11のトランスTでは、二次コイルL2が一次コイルL1と同心状に巻装されているので、一次コイルL1に生じた磁束φ1に抗する起磁力φ2が外側脚23a、23bの磁気回路に生じ、これに対応する電流が二次コイルL2に流れる。この場合、図11のトランスTの底面からみて、第1電流i1は一次コイルL1を時計回りに流れ、第2電流i2は二次コイルL2を反時計回りに流れる。但し、結線は同じであるので電気回路の動作は同じである。また、一次コイルL1による磁束φ1の一部φ1bが双方の磁性体片26a、26bを通り漏れる。この場合、双方の磁性体片26a、26bが漏洩磁気回路として作用する。
【0111】
(9)トランスの特徴のまとめ
本発明のトランスは、一次コイルL1と二次コイルL2との間に漏洩磁気回路を形成するように、空隙または磁性体片を介して両コイルが巻装されている。そして、漏洩磁束の量をどの程度にするかによって、一次コイルL1と二次コイルL2を離隔する距離を決定する。この点において本発明のトランスは、従来のトランスが一次コイルと二次コイルの結合率を限りなく100%(結合度=1)になるように一次コイルと二次コイルを密着して巻装する点と大きく相違する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明による降圧型スイッチング電源回路の第1の実施形態の基本構成回路である。
【図2】本発明による降圧型スイッチング電源回路の第2の実施形態の基本構成回路である。
【図3】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図4】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図5】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図6】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第1の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】(A)は、中心磁極磁気回路及び両脚磁気回路の磁束密度の時間変化を模式的に示した図である。(B)は、二次コイルL2と一次コイルL1の電流の時間変化を模式的に示した図である。
【図8】図1に示した回路図の各測定点における電流または電圧の計測波形である。
【図9】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第2の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第3の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明によるスイッチング電源回路に好適に用いられるトランスTの第4の実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】従来の降圧型スイッチング電源回路の基本例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0113】
T トランス
Q1 スイッチング素子
Q2 二次側スイッチング素子
Q3 一次側スイッチング素子
D1 一次側ダイオード
D2 二次側ダイオード
L1 一次コイル
L2 二次コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子の電流路から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項3】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項4】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚の各々に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装され、少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップが設けられ、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項7】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に前記一対の外側脚の内側に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項8】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが該一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が前記磁性体片を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項9】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の各々に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項10】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装された二次コイルとを有し、
少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップを設け、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項11】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の内側に前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項12】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記磁性体片を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項13】
第1磁気回路を有する一次コイルと、第2磁気回路を有しかつ該一次コイルに疎に磁気結合された二次コイルと、前記一次コイルの発生する磁束の一部が前記二次コイルを通過しないで漏洩する漏洩磁気回路とを有し、
前記一次コイルに直流電圧が印加されたとき前記二次コイルに電圧を誘起させると共に前記一次コイルの有する第1磁気回路内に存在する磁束の磁束密度を前記二次コイルの有する第2磁気回路内に存在する磁束の磁束密度より大として保持し、
前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき前記二次コイルに、前記一次コイルに直流電圧が印加されたときと同極性の電圧を誘起させることを特徴とする電源トランス。
【請求項14】
前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき、前記第1磁気回路から前記第2磁気回路へ磁束が流れ込むことを特徴とする請求項13に記載の電源トランス。
【請求項1】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子の電流路から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項3】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオフ時に、負電位となる前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる一次側ダイオードと、
前記スイッチング素子のオンオフと同相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ、該スイッチング素子のオフ時に前記二次コイルの他端へ向かう電流を導通させ該スイッチング素子のオフ時に該二次コイルの他端に正電位が印加されるとき該二次コイルの他端から流出する電流を阻止する電流路を具備する二次側スイッチング素子とを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側ダイオードから前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項4】
一次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合された二次コイルと、該一次コイルの一端と該二次コイルの一端との接続点に設けたタップとを具備するトランスと、
前記一次コイルの他端に印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオンオフと逆相にて制御され、該スイッチング素子のオン時に遮断されオフ時に前記一次コイルの他端へ向かう電流を導通させる電流路を具備する一次側スイッチング素子と、
前記二次コイルの他端が負電位のとき該二次コイルの他端へ向かう電流を導通させる二次側ダイオードとを有し、
前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第1電流と、該第1電流に起因して前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第2電流とを、該タップから出力すると共に、
前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により前記一次側スイッチング素子から前記一次コイルを通り前記タップへ流れる第3電流と、該第3電流に起因して前記タップ側を正電位として前記二次コイルに生じる磁気誘導により該二次コイルを通り前記タップへ流れる第4電流とを、該タップから出力することを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項5】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚の各々に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記一対の外側脚へそれぞれ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ各々の外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項6】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装され、少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップが設けられ、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚から前記二次コイルが巻装された外側脚へ流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ該外側脚内で増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項7】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に前記一対の外側脚の内側に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が該一次コイルと該二次コイルとの間の空隙を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項8】
前記トランスが、対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアを有し、
前記一次コイルが前記中央脚に巻装され、前記二次コイルが該一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装され、
前記中央脚から前記外側脚へ向かう磁束の一部が前記磁性体片を通るよう構成され、
前記一次コイルを流れる前記第1電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第2電流が流れ、かつ、
前記一次コイルを流れる前記第3電流に起因して前記中央脚に流れる磁束が、前記第1電流に起因する磁束と同方向でありかつ増加することにより、逆方向磁束を発生するべく前記二次コイルに前記第4電流が流れることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチング電源回路。
【請求項9】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の各々に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項10】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚のいずれか一方に巻装された二次コイルとを有し、
少なくとも前記二次コイルを巻装されない方の外側脚の中間位置に磁気ギャップを設け、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙及び前記二次コイルを巻装されない方の外側脚を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項11】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一対の外側脚の内側に前記一次コイルから離隔しかつ該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記一次コイルと前記二次コイルとの間の空隙を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項12】
対向する一対のヨークと、両ヨークの中央部同士を連結する中央脚と、両ヨークの対向する第1端部同士及び第2端部同士の間にそれぞれ延在する一対の外側脚とから構成されるコアと、
前記中央脚に巻装された一次コイルと、
前記一次コイルの外側に配置された磁性体片を介して該一次コイルと同心状に巻装された二次コイルとを有し、
前記磁性体片を漏洩磁気回路とすることを特徴とする電源トランス。
【請求項13】
第1磁気回路を有する一次コイルと、第2磁気回路を有しかつ該一次コイルに疎に磁気結合された二次コイルと、前記一次コイルの発生する磁束の一部が前記二次コイルを通過しないで漏洩する漏洩磁気回路とを有し、
前記一次コイルに直流電圧が印加されたとき前記二次コイルに電圧を誘起させると共に前記一次コイルの有する第1磁気回路内に存在する磁束の磁束密度を前記二次コイルの有する第2磁気回路内に存在する磁束の磁束密度より大として保持し、
前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき前記二次コイルに、前記一次コイルに直流電圧が印加されたときと同極性の電圧を誘起させることを特徴とする電源トランス。
【請求項14】
前記一次コイルへの直流電圧の印加が停止され該一次コイルに発生する逆起電力による電流が該一次コイルに流れるとき、前記第1磁気回路から前記第2磁気回路へ磁束が流れ込むことを特徴とする請求項13に記載の電源トランス。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図2】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【公開番号】特開2007−68278(P2007−68278A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248881(P2005−248881)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(504296415)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イー・エックス・テクノ (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(504296415)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イー・エックス・テクノ (57)
【Fターム(参考)】
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