説明

スイッチング電源回路

【課題】全対応負荷領域でZVSとなる、シングルエンドの共振形コンバータの実用化を図る。
【解決手段】一次側スイッチングコンバータをE級共振形として構成し、このE級共振形コンバータの一次側直列共振回路のチョークコイルを絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1とするスイッチング電源回路を構成する。この構成において、直流入力電圧の入力ラインに挿入するチョークコイル巻線N10を、平滑コンデンサCiの正極と、一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11の接続点との間に挿入する。これにより、チョークコイル巻線N10に発生する共振パルス電圧を一次巻線N1に重畳させ、さらに、一次側直列共振電流をチョークコイル巻線N10に分流させるようにして動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧共振形コンバータを備えて成るスイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
共振形によるいわゆるソフトスイッチング電源としては、電流共振形と電圧共振形の形式が広く知られている。現状においては、実用化が容易なことを背景に、2石のスイッチング素子によるハーフブリッジ結合方式の電流共振形コンバータが広く採用されている状況にある。
しかし、現在、例えば高耐圧スイッチング素子の特性が改善されてきている状況にあり、電圧共振形コンバータを実用化するにあたっての耐圧の問題はクリアされてきている状況にある。また、1石のスイッチング素子によるシングルエンド方式で構成した電圧共振形コンバータについては、1石の電流共振形フォワードコンバータと比較して、入力帰還ノイズや直流出力電圧ラインのノイズ成分などの点で有利であることも知られている。
【0003】
図21は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータを備えるスイッチング電源回路の一構成例を示している。
この図に示すスイッチング電源回路においては、商用交流電源ACをブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により整流平滑化することで、平滑コンデンサCiの両端電圧として、整流平滑電圧Eiを生成している。
なお、商用交流電源ACのラインに対しては、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLから成り、コモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが設けられている。
【0004】
上記整流平滑電圧Eiは、直流入力電圧として電圧共振形コンバータに対して入力される。この電圧共振形コンバータは、上記しているように、1石のスイッチング素子Q1を備えたシングルエンド方式による構成を採る。また、この場合の電圧共振形コンバータとしては他励式となっており、MOS−FETのスイッチング素子Q1を、発振・ドライブ回路2によりスイッチング駆動するようにされている。
【0005】
スイッチング素子Q1に対しては、MOS−FETのボディダイオードDDが並列に接続される。また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対して一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0006】
一次側並列共振コンデンサCrは、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とによって一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成している。そして、この一次側並列共振回路によって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として電圧共振形の動作が得られるようにされている。
【0007】
発振・ドライブ回路2は、スイッチング素子Q1をスイッチング駆動するために、スイッチング素子Q1のゲートに対して、ドライブ信号としてのゲート電圧を印加する。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号の周期に応じたスイッチング周波数によりスイッチング動作を行う。
【0008】
絶縁コンバータトランスPITは、スイッチング素子Q1のスイッチング出力を二次側に伝送する。
絶縁コンバータトランスPITの構造としては、例えば、フェライト材によるE字形状コアを組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE字形コアの中央磁脚に対して巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては1.0mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.80〜0.85程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。また、この結合係数kの値が、リーケージインダクタンス(L1)の設定要素となる。
【0009】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の一端は、スイッチング素子Q1と平滑コンデンサCiの正極端子間に挿入されるようになっていることで、スイッチング素子Q1のスイッチング出力が伝達されるようになっている。絶縁コンバータトランスPITの二次巻線N2には、一次巻線N1により誘起された交番電圧が発生する。
【0010】
この場合、二次巻線N2の一端に対して二次側直列共振コンデンサC2を直列に接続していることで、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路(電流共振回路)が形成される。
そのうえで、この二次側直列共振回路に対して、図示するようにして整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路を形成している。この倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧V2の2倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoを、平滑コンデンサCoの両端電圧として生成する。二次側直流出力電圧Eoは負荷に供給されると共に、定電圧制御用の検出電圧として、制御回路1に入力される。
【0011】
制御回路1は、検出電圧として入力される二次側直流出力電圧Eoのレベルを検出して得られる検出出力を発振・ドライブ回路2に入力する。
発振・ドライブ回路2は、入力される検出出力が示す二次側直流出力電圧Eoのレベルに応じて周波数などを可変したドライブ信号を出力することで、二次側直流出力電圧Eoが所定のレベルで一定となるようにして、スイッチング素子Q1のスイッチング動作を制御する。これにより、二次側直流出力電圧Eoの安定化制御が行われる。
【0012】
図22及び図23は、上記図21に示した構成の電源回路についての実験結果を示している。なお、実験にあたっては、図21の電源回路の要部について下記のようにして設定している。
絶縁コンバータトランスPITは、コアにEER-35を選定し、中央磁脚のギャップについては、1mmのギャップ長を設定する。また、一次巻線N1及び二次巻線N2のターン数T(巻数)については、それぞれN1=39T、N2=23Tとし、二次巻線N2の1ターン(T)あたりの誘起電圧レベルについては、3V/Tを設定した。絶縁コンバータトランスPITの結合係数kについてはk=0.81を設定した。
また、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスについてはCr=3900pF、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスについてはC2=0.1μFを選定した。これに応じて、一次側並列共振回路の共振周波数fo1=230kHz、二次側直列共振回路の共振周波数fo2=82kHzが設定される。この場合、共振周波数fo1,fo2の相対的関係としては、fo1≒2.8×fo2と表すことができる。
二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは135Vであり、対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=200W〜最小負荷電力Pomin=0Wである。
【0013】
図22は、図21に示した電源回路における要部の動作をスイッチング素子Q1のスイッチング周期により示す波形図であり、図22(a)には、最大負荷電力Pomax=200W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2、二次側整流電流ID1、ID2が示されている。図22(b)には、中間の負荷電力Po=120W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1、一次巻線電流I1、二次巻線電流I2が示されている。図22(c)には最小負荷電力Pomin=0W時における電圧V1、スイッチング電流IQ1が示される。
電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状の共振パルスとなる波形である。この電圧V1の共振パルス波形が、一次側スイッチングコンバータの動作が電圧共振形であることを示している。
【0014】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TONにおいて図示する波形により流れ、期間TOFFにおいて0レベルとなる波形として得られる。
一次巻線N1に流れる一次巻線電流I1は、期間TONにおいて上記スイッチング電流IQ1として流れる電流成分と、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなる。
【0015】
また、図22(a)のみにおいて示しているが、二次側整流回路の動作として、整流ダイオードDo1,Do2に流れる整流電流ID1,ID2は、それぞれ図示するようにして正弦波状に流れるものとなる。この場合、整流電流ID1の波形のほうが、整流電流ID2よりも、二次側直列共振回路の共振動作が支配的に現れたものとなっている。
二次巻線N2に流れる二次巻線電流I2は、整流電流ID1,ID2が合成された波形として得られる。
【0016】
図23は、図21に示した電源回路についての、負荷変動に対するスイッチング周波数fs、スイッチング素子Q1のオン期間TON、オフ期間TOFF、及びAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を示している。
先ず、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)を見てみると、負荷電力Po=50W〜200Wまでの広範囲で90%以上となる高効率が得られていることが分かる。このような特性は、シングルエンド方式による電圧共振形コンバータに、二次側直列共振回路を組み合わせた場合に得られるものであることを、先に本出願の発明者は実験で確認している。
【0017】
また、図23のスイッチング周波数fs、オン期間TON、オフ期間TOFFによっては、図21に示す電源回路についての負荷変動に対する定電圧制御特性としてのスイッチング動作が示されることになる。この場合、スイッチング周波数fsは、負荷変動に対してほぼ一定となっている。これに対して、オン期間TON、オフ期間TOFFが図示するようにして相互に逆傾向となるようにしてリニアに変化を示している。このことは、二次側直流出力電圧Eoの変動に対してスイッチング周波数(スイッチング周期)はほぼ一定とされたうえで、オン期間とオフ期間との時比率を変化させるようにしてスイッチング動作を制御しているということを示す。このような制御は、1周期内のオン/オフ期間を可変する、PWM(Pulse Width Modulation)制御であるとみることができる。このPWM制御によって、図21に示す電源回路では、二次側直流出力電圧Eoについての安定化が図られる。
【0018】
図24は、図21に示す電源回路の定電圧制御特性を、スイッチング周波数fs(kHz)と二次側直流出力電圧Eoとの関係により、模式的に示している。
図21に示す電源回路では、一次側並列共振回路と二次側直列共振回路を備えることから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンス特性と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンス特性との2つの共振インピーダンス特性を複合的に有することになる。また、図21に示す電源回路では、fo1≒2.8×fo2の関係を有しているとされるので、図24にも示しているように、一次側並列共振周波数fo1に対して二次側直列共振周波数fo2が低い関係となる。
そのうえで、或る一定の交流入力電圧VACの条件でのスイッチング周波数fsに対する定電圧制御特性を想定すると、図示するようにして、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線A,Bとして示され、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた共振インピーダンスの下での最大負荷電力Pomax時/最小負荷電力Pomin時の各定電圧制御特性としては、それぞれ特性曲線C,Dで示されるものとなる。そして、この図24に示す特性の下で、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルであるtgにより定電圧制御を図ろうとすると、そのために必要なスイッチング周波数fsの可変範囲(必要制御範囲)は、Δfsで示される区間として表すことができる。
【0019】
図24に示される必要制御範囲Δfsは、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Cから、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最小負荷電力Pomin時の特性曲線Aまでに至るもので、その間に、二次側直列共振回路の共振周波数fo2に応じた最小負荷Pomin時の特性曲線Dと、一次側並列共振回路の共振周波数fo1に応じた最大負荷電力Pomax時の特性曲線Bをまたぐ。
このために、図21に示す電源回路の定電圧制御動作としては、スイッチング周波数fsはほぼ固定とされたうえで、1スイッチング周期における期間TON/TOFFの時比率を変化させるPWM制御の状態により、スイッチング駆動制御を行うものとなる。なお、このことは、図22(a)(b)(c)に示す最大負荷電力Pomax=200W時、負荷電力Po=100W時、最小負荷電力Pomin=0W時に示される1スイッチング周期(TOFF+TOzN)の期間長についてはほぼ一定とされたうえで、期間TOFF,TONの幅が変化していることによっても示されている。
このような動作は、電源回路における負荷変動に応じた共振インピーダンス特性として、一次側並列共振回路の共振周波数fo1の共振インピーダンス(容量性インピーダンス)が支配的となる状態と、二次側直列共振回路の共振周波数fo2(誘導性インピーダンス)が支配的となる状態との間での遷移が、狭いスイッチング周波数の可変範囲(Δfs)のもとで行われることにより得られるものであるとされる。
【0020】
【特許文献1】特開2000−134925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記図21に示す電源回路では次のような問題を有している。
先に説明した図22の波形図において、図22(a)に示される最大負荷電力Pomax時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングであるオフ期間TOFFの終了時点に至るまでは0レベルで、オン期間TONに至ると、先ず負極性の電流がボディダイオードDDに流れ、この後に反転してスイッチング素子Q1のドレイン−ソースを流れるようにして動作する。この動作は、ZVS(Zero Voltage Switching)が適正に行われている状態を示している。
これに対して、図22(b)に示される、中間負荷に対応するPo=120W時のスイッチング電流IQ1は、ターンオンタイミングのオフ期間TOFFの終了時点に至る以前のタイミングで、スイッチング電流IQ1がノイズ的に流れる動作が得られている。この動作は、ZVSが適正に行われていない異常動作である。
【0022】
つまり、図21に示されるようにして、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータでは、中間負荷時においてZVSが適正に実行されない異常動作となることが分かっている。図21の電源回路の実際としては、例えば図23に示す区間Aとしての負荷変動範囲の領域で、このような異常動作となることが確認されている。
二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータは、先にも説明したように、傾向としては負荷変動に対して高効率が良好に維持できる特性を本来有しているが、図22(b)のスイッチング電流IQ1として示すように、スイッチング素子Q1のターンオン時において相応のピーク電流が流れることになるので、これによるスイッチング損失の増加を招き、電力変換効率の低下要因を抱えることになる。
また、いずれにせよ、上記のような異常動作が生じることで、例えば定電圧制御回路系の位相−ゲイン特性にずれが生じることとなって、異常発振状態でのスイッチング動作となる。このために、実用化することは、現実的には困難であるとの認識が現状においては強い。
【課題を解決するための手段】
【0023】
そこで、本発明は上記した課題を考慮して、スイッチング電源回路として次のように構成することとした。
つまり、少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うスイッチング素子と、このスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段とを備える。
また、整流平滑電圧がスイッチング素子に入力される経路に対して挿入される第1のインダクタを備える。
また、スイッチング素子のスイッチングに応じて共振動作を行い、少なくとも第2のインダクタのインダクタンスと、この第2のインダクタのインダクタンスと直列となる関係により接続される一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第1の一次側直列共振回路を備える。また、スイッチング素子のスイッチングに応じて共振動作を行い、少なくとも第1のインダクタのインダクタンスと、この第1のインダクタのインダクタンスと直列となる関係により接続される一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第2の一次側直列共振回路を備える。
また、スイッチング素子のスイッチングに応じて共振動作を行い、少なくとも第1のインダクタのインダクタンスと、この第1のインダクタと直列に接続される関係となるようにされた第2のインダクタのインダクタンスと、第1のインダクタ及び第2のインダクタの直列接続回路に対して並列となる関係により接続される一次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第1の一次側並列共振回路を備える。
また、少なくとも、第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、この一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との結合係数が得られるようにされたコンバータトランスを備える。また、コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段を備えることとした。
【0024】
なお、本願発明において「結合係数」とは、電磁的な結合の度合いを示すものであり、数値として1が最も結合の度合いが高いことを示し、数値として0が最も結合の度合いが低い(結合していない)ことを示す。
【0025】
上記構成による電源回路は、一次側においてE級スイッチングコンバータとしての回路形態を形成する。E級スイッチングコンバータは、基本構成としては、一次側において第1のインダクタ、第2のインダクタ、一次側並列共振コンデンサ、及び一次側直列共振コンデンサを備えることで、並列共振回路(一次側並列共振回路)と直列共振回路(一次側直列共振回路)を備える複合共振形といわれるソフトスイッチングコンバータの一形式である。そして、E級スイッチングコンバータにおける直列共振回路(一次側直列共振回路)を形成するインダクタ(第2のインダクタ)をコンバータトランスの一次巻線とすることで、DC-DC電力変換が可能な電源回路を構成している。
このようにして、E級スイッチングコンバータを適用した電源回路を基礎的な構成とすることで、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が生じるという、電圧共振形コンバータにまつわるとされる問題の要因を排除して、適正なZVS動作を得ている。
【0026】
また、本発明では、一次側のE級スイッチングコンバータは、商用交流電源を整流平滑化する整流平滑回路を形成する平滑コンデンサの両端電圧である整流平滑電圧を入力してスイッチングを行うようにされている。このとき、平滑コンデンサからE級スイッチングコンバータに流入する電流は、一次側並列共振回路を形成する第1のインダクタを介してスイッチング素子側に流れるようにされることで、直流となる。
【0027】
そのうえで本発明では、一次側において、上記した構成要素により、第1の一次側直列共振回路、第2の一次側直列共振回路、及び第1の一次側並列共振回路とを少なくとも備えることとしている。このような構成では、先ず、第1の一次側並列共振回路の共振動作によって第1のインダクタに共振パルス電圧が発生すると、この共振パルス電圧が一次巻線に生じる電圧に重畳するために、一次巻線電圧レベルが増加する。また、第1、第2の一次側並列共振回路の共振動作により、コンバータトランスの一次巻線(第2のインダクタ)に流れるべき共振電流が、第1のインダクタにも分流するようにして流れるようにされ、一次巻線に流れる電流量を低減させる。
このようにして、一次巻線電圧のレベルが増加し、また、一次巻線の電流量が低減することで、一次側スイッチングコンバータに流れる電流は、その分の低減が生じる。このようにして電流量が低減されることで、電源回路における電力損失が低減される。
【発明の効果】
【0028】
このようにして本発明は、一次側に並列共振回路を備えるスイッチング電源回路として、中間負荷とされる負荷条件範囲の下でZVS(Zero Voltage Switching:ゼロ電圧スイッチング)動作が得られなくなる異常動作が解消される。このことにより、二次側直列共振回路を備える電圧共振形コンバータの実用化が容易に実現されることになる。
また、商用交流電源から整流平滑電圧(直流入力電圧)を生成する整流平滑回路の平滑コンデンサからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、上記平滑コンデンサとしての部品素子のキャパシタンスについて小さい値を選定し、また、汎用品を選定することが可能になり、例えば平滑コンデンサの低コスト化や小型化などの効果が得られる。
さらに、上記のようにして、電源回路内に流れる電流量の低減に応じて電力損失の低減が図られることで、総合的な電力変換効率特性は大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について説明するのに先立ち、本実施の形態の背景技術となる、E級共振形によりスイッチング動作するスイッチングコンバータ(以下、E級スイッチングコンバータともいう)の基本構成について、図18及び図19を参照して説明しておく。
図18は、E級スイッチングコンバータとしての基本構成を示している。この図に示すE級スイッチングコンバータは、E級共振形で動作するDC-ACインバータとしての構成を採る。
この図に示すE級スイッチングコンバータは、1石のスイッチング素子Q1を備える。この場合のスイッチング素子Q1はMOS−FETであることとしている。このMOS−FETとしてのスイッチング素子Q1には、ボディダイオードDDが、ドレイン−ソース間に対して並列接続されるようにして形成される。この場合のボディダイオードDDの順方向は、ソースからドレインへの方向に沿ったものとなる。
また、同じくスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
【0030】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して、直流入力電圧Einの正極と接続される。スイッチング素子Q1のソースは、直流入力電圧Einの負極と接続される。
【0031】
また、スイッチング素子Q1のドレインに対しては、チョークコイルL11の一端が接続され、他端には直列共振コンデンサC11が直列に接続される。直列共振コンデンサC11と直流入力電圧Einの負極との間には、負荷となるインピーダンスZが挿入される。ここでのインピーダンスZの具体例には圧電トランス、高周波対応の蛍光灯などを挙げることができる。
【0032】
このような構成のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される並列共振回路と、チョークコイルL11のインダクタンスと直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより形成される直列共振回路とを備える複合共振形コンバータの一形態であるとみることができる。また、スイッチング素子を1つのみ備えて形成される点では、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータと同じであるといえる。
【0033】
図19は、上記図18に示した構成のE級スイッチングコンバータについての要部の動作を示している。
スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1の両端に得られる電圧であり、スイッチング素子Q1がオンとなる期間TONにおいて0レベルで、オフとなる期間TOFFにおいて正弦波状のパルスとなる波形である。このスイッチングパルス波形は、上記並列共振回路の共振動作(電圧共振動作)により得られる。
【0034】
スイッチング電流IQ1は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流であり、期間TOFFでは0レベルで、期間TONにおいては、先ず開始時点から一定期間において、ボディダイオードDDを流れることで負極性となり、この後に反転して正極性となって、スイッチング素子Q1のドレインからソースに流れる。
また、E級スイッチングコンバータの出力として、上記直列共振回路に流れるとされる電流I2は、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れるスイッチング電流IQ1と、一次側並列共振コンデンサCrに流れる電流とを合成したものとなり、正弦波成分を含む波形となる。
【0035】
また、上記スイッチング電流IQ1とスイッチング電圧V1との関係によっては、スイッチング素子Q1のターンオフタイミングにおいてZVS動作が得られており、ターンオンタイミングにおいてZVS及びZCS動作が得られていることも示される。
【0036】
また、直流入力電圧Einの正極端子からチョークコイルL10を流れるようにしてE級スイッチングコンバータに流入する電流I1は、チョークコイルL10,L11のインダクタンスについて、L10>L11の関係を設定していることで、図示するようにして所定の平均レベルをとる脈流波形となる。このような脈流波形は、近似的な直流としてみることができる。
【0037】
本願の発明者は、上記基本構成に基づくE級スイッチングコンバータを適用して電源回路を構成し、この電源回路について実験を行った。この電源回路の構成例を図20の回路図に示す。
【0038】
この図に示すスイッチング電源回路においては、まず、商用交流電源ACのラインに対して、図示するようにして、1組のコモンモードチョークコイルCMCと、2本のアクロスコンデンサCLが挿入される。これらコモンモードチョークコイルCMC、及びアクロスコンデンサCL,CLにより、商用交流電源ACのラインに重畳するコモンモードのノイズを除去するノイズフィルタが形成される。
【0039】
商用交流電源AC(交流入力電圧VAC)は、ブリッジ整流回路Diにより整流され、その整流出力は平滑コンデンサCiに充電される。つまり、ブリッジ整流回路Di及び平滑コンデンサCiから成る整流平滑回路により商用交流電源を整流平滑化する。これにより平滑コンデンサCiの両端電圧として整流平滑電圧Eiが得られる。この整流平滑電圧Eiが、後段のスイッチングコンバータのための直流入力電圧となる。
【0040】
この図において、上記整流平滑電圧Eiを直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行うスイッチングコンバータは、上記図18の基本構成に基づいたE級スイッチングコンバータとして形成される。
この場合のスイッチング素子Q1には高耐圧のMOS−FETが選定されている。また、この場合のE級スイッチングコンバータの駆動方式は、発振・ドライブ回路2によりスイッチング素子をスイッチング駆動する他励式である。
【0041】
スイッチング素子Q1のドレインは、チョークコイルL10の直列接続を介して平滑コンデンサCiの正極端子と接続される。従って、この場合には、直流入力電圧(Ei)は、チョークコイルL10の直列接続を介してスイッチング素子Q1に供給されるようになっている。スイッチング素子Q1のソースは一次側アースに接続される。このチョークコイルL10としてのインダクタ(第1のインダクタ)は、図18に示したE級スイッチングコンバータにおけるチョークコイルL10に相当する機能部位となる。
スイッチング素子Q1のゲートに対しては、発振・ドライブ回路2から出力されるスイッチング駆動信号(電圧)が印加されるようになっている。
【0042】
この場合のスイッチング素子Q1には、MOS−FETが選定されていることから、図示するようにして、ソース−ドレイン間に対して並列に接続されるようにしてボディダイオードDDを内蔵する。このボディダイオードDDとしては、アノードがスイッチング素子Q1のソースと接続され、カソードがスイッチング素子Q1のドレインと接続される状態を形成する。このボディダイオードDDは、スイッチング素子Q1のオン/オフ動作(スイッチング動作)により生じる、逆方向のスイッチング電流を流す経路を形成する。
【0043】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、一次側並列共振コンデンサCrが並列に接続される。
一次側並列共振コンデンサCrは、自身のキャパシタンスと絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージ(漏洩)インダクタンスL1とによって、スイッチング素子Q1に流れるスイッチング電流に対する一次側並列共振回路(電圧共振回路)を形成する。この一次側並列共振回路が共振動作を行うことによって、スイッチング素子Q1のスイッチング動作として、1つには電圧共振形の動作が得られる。これに応じて、スイッチング素子Q1の両端電圧(ドレイン−ソース間電圧)V1としては、そのオフ期間において正弦波状の共振パルス波形が得られる。
【0044】
また、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間に対しては、後述する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と一次側直列共振コンデンサC11とから成る直列接続回路が並列に接続される。この場合には、一次巻線N1の巻き終わり端部をスイッチング素子Q1のドレインと接続し、巻始め端部を一次側直列共振コンデンサC11と接続している。一次側直列共振コンデンサC11の一次巻線N1と接続されない側の極端子は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
【0045】
発振・ドライブ回路2は、例えば他励式によりスイッチング素子Q1を駆動するために、発振回路と、この発振回路により得られた発振信号に基づいて、MOS−FETをスイッチング駆動するためのゲート電圧であるドライブ信号を生成して、スイッチング素子Q1のゲートに印加するようにされる。これにより、スイッチング素子Q1は、ドライブ信号波形に応じて連続的にオン/オフ動作を行う。つまり、スイッチング動作を行う。
【0046】
絶縁コンバータトランスPITは、一次側と二次側とを直流的に絶縁した状態で、一次側スイッチングコンバータのスイッチング出力を二次側に伝送するもので、このために、一次巻線N1と二次巻線N2が巻装される。
【0047】
この場合の絶縁コンバータトランスPITの構造としては、一例として、フェライト材によるE字形状コアを組み合わせたEE字形コアを備える。そして、一次側と二次側とで巻装部位を分割したうえで、一次巻線N1と、二次巻線N2を、EE字形コアの中央磁脚に対して巻装している。
そのうえで、絶縁コンバータトランスPITのEE字形コアの中央磁脚に対しては1.6mm程度のギャップを形成するようにしており、これによって、一次側と二次側との間で、k=0.75程度の結合係数kを得るようにしている。この程度の結合係数kは疎結合としてみてよい結合度であり、その分、飽和状態が得られにくくなる。
【0048】
絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1は、後述するようにして、一次側に形成されるE級スイッチングコンバータにおける一次側直列共振回路を形成するための素子であり、スイッチング素子Q1のスイッチング出力に応じた交番出力が得られる。
【0049】
絶縁コンバータトランスPITの二次側では、一次巻線N1により誘起された交番電圧が二次巻線N2に発生する。
この二次巻線N2に対しては、二次側直列共振コンデンサC2を直列となる接続関係によりに接続している。これにより、二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとによって二次側直列共振回路を形成する。この二次側直列共振回路は、後述する二次側整流回路の整流動作に応じて共振動作を行うが、これにより、二次巻線N2に流れる二次巻線電流は正弦波状となる。つまり、二次側において電流共振動作が得られる。
【0050】
この場合の二次側整流回路は、上記のようにして二次側直列共振コンデンサC2が直列接続された二次巻線N2に対して、2本の整流ダイオードDo1,Do2と、1本の平滑コンデンサCoを接続することで、倍電圧半波整流回路として形成される。この倍電圧半波整流回路の接続態様としては、まず、二次巻線N2の巻き終わり端部側に対して、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと、整流ダイオードDo2のカソードを接続する。また、整流ダイオードDo1のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。二次巻線N2の巻始め端部と、整流ダイオードDo2のアノードは、二次側アース電位にて平滑コンデンサCoの負極端子と接続する。
【0051】
このようにして形成される倍電圧半波整流回路の整流動作は次のようになる。
先ず、二次巻線N2に誘起される交番電圧である二次巻線N2の両端電圧(二次巻線電圧)の一方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されることになるので、整流ダイオードDo2が導通し、整流電流を二次側直列共振コンデンサC2に対して充電する動作が得られる。これによって、二次側直列共振コンデンサC2には、二次巻線N2に誘起される交番電圧レベルの等倍に対応したレベルの両端電圧が生成される。次の、二次巻線電圧V2の他方の極性に対応する半周期においては、整流ダイオードDo2に順方向電圧が印加されて導通する。このとき、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線電圧V1の電位と、上記二次側直列共振コンデンサC2の両端電圧とが重畳された電位により充電が行われる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線N2に励起される交番電圧レベルの2倍に対応したレベルによる二次側直流出力電圧Eoが得られることになる。
この整流動作では、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2に励起される交番電圧の一方の半周期にのみ充電が行われる。つまり、倍電圧半波としての整流動作が得られている。また、このような整流動作では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続により形成される二次側直列共振回路の共振出力について整流動作を行っているものとしてみることができる。
このようにして生成される二次側直流出力電圧Eoは、負荷に供給される。また、分岐して制御回路1に対して検出電圧として出力される。
【0052】
制御回路1は、入力された二次側直流出力電圧Eoのレベル変化に応じた検出出力を発振・ドライブ回路2に供給する。発振・ドライブ回路2では、入力された制御回路1の検出出力に応じてスイッチング周波数を可変し、また、これに伴って、1スイッチング周期におけるオン期間TONとオフ期間TOFFの時比率(導通角)を可変するようにして、スイッチング素子Q1を駆動する。この動作が二次側直流出力電圧に対する定電圧制御動作となる。
【0053】
上記のようにしてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数及び導通角が可変制御されることにより、電源回路における一次側、二次側の共振インピーダンス、電力伝送有効期間が変化し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1から二次巻線N2側に伝送される電力量、また、二次側整流回路から負荷に供給すべき電力量が変化することになる。これにより、二次側直流出力電圧Eoのレベル変動がキャンセルされるようにして、二次側直流出力電圧Eoのレベルを制御する動作が得られることになる。つまり、二次側直流出力電圧Eoの安定化が図られる。
【0054】
上記のようにして形成される図20の電源回路の一次側において形成されるスイッチングコンバータ(Q1、Cr、L10、N1、C11)と、先に図18に示したE級コンバータとしての回路構成とを比較してみると、図20におけるスイッチングコンバータは、図18の回路から負荷となるインピーダンスZを省略し、チョークコイルL11の巻線を絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1(リーケージインダクタンスL1)と置き換えたものとしてみることができる。また、図20における一次側スイッチングコンバータでは、チョークコイルL10のインダクタンスと一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとによって一次側並列共振回路を形成し、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとにより一次側直列共振回路を形成する。
このことから、図20の一次側スイッチングコンバータは、E級共振形のスイッチング動作を行うE級スイッチングコンバータとして形成されている、ということがいえる。そして、この一次側スイッチングコンバータのスイッチング動作により得られるスイッチング出力(交番出力)を、絶縁コンバータトランスPITにおける磁気結合を介するようにして、チョークコイルL11に相当する一次巻線N1から二次巻線N2に伝達し、二次側にて整流を行って直流出力電圧Eoを得るようにされている。つまり、図20に示す電源回路は一次側にE級スイッチングコンバータを備えるDC-DCコンバータとして構成される。
また、このようにして形成される一次側のE級スイッチングコンバータは、チョークコイルL10、及び一次側並列共振コンデンサCrとともに電圧共振形コンバータを形成するスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に対して、一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路を並列接続した複合共振形コンバータ、ソフトスイッチング電源の構成であるともみることができる。
【0055】
ところで、一般的に、一次側に電圧共振形コンバータを備える電源回路は、負荷電力の制御範囲が狭く、また、軽負荷時におけるZVSが維持できないために、そのままでは実用化は不可能であると考えられている。そこで、先に従来例として図21に示したように、一次側電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を設け、二次側整流回路として倍電圧半波整流回路を形成した電源回路を構成して本願発明者が実験を行ったところ、それまでの電圧共振形コンバータを備える電源回路よりも、実現化に近づく特性が得られることが確認された。
しかしながら、図21の電源回路では、図22により説明したように、中間負荷時において、スイッチング素子Q1のオフ期間(TOFF)が終了しないうちにスイッチング素子Q1に正極方向(この場合はドレイン→ソース方向)に電流が流れてZVSの動作が得られないという異常動作を生じる。このために、図21の電源回路の構成であっても、依然として実用化は困難な状況であった。
【0056】
図20により説明した電源回路は、上記しているように、一次側に電圧共振形コンバータの回路形態を備える複合共振形のスイッチングコンバータである、という点では、図21に示した従来の電源回路と共通の構成を採っているといえる。
しかしながら、この図20の電源回路について実験を行ったところ、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消され、所定の対応負荷電力の全範囲において正常なスイッチング動作が得られることが確認された。
【0057】
図21に示される電源回路の中間負荷時の異常動作は、電圧共振形コンバータに二次側直列共振回路を備えた形式の複合共振形コンバータを構成した場合に生じやすいことが確認されている。これは、電圧共振形コンバータを形成する一次側並列共振回路と、二次側直列共振回路(整流回路)とが同時に動作することによる相互作用が主たる原因となっている。つまり、上記した中間負荷時の異常動作は、一次側電圧共振形コンバータと二次側直列共振回路とを組み合わせた回路構成であることがそもそもの要因であると捉えることができる。このことに基づき、先ず、図20に示す電源回路としては、一次側スイッチングコンバータとして、電圧共振形コンバータに代えて、E級スイッチングコンバータを適用した構成のものを備えることとしたものである。
このような構成が要因となって、図20の電源回路では、二次側に対して直列共振回路を設ける、あるいは設けない場合とに関わらず、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消されることとなった。
【0058】
このようにして、図20の電源回路では、従来例としての図21の電源回路において問題となっていた中間負荷時における異常動作が解消されている。
しかしながら、図20の電源回路では、図21の電源回路では備えられていないチョークコイルL10を、直流入力電圧がスイッチングコンバータに流入するラインに対して挿入している。このチョークコイルL10は、例えば1mH程度とされて、チョークコイルL11に相当する絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1と比較して、相当に大きなインダクタンスを有する。このために、チョークコイルL10における鉄損、銅損などによる電力損失も相応に大きく、これにより、電源回路全体としての電力変換効率の低下も相応に顕著なものとなってくる。例えば、図21の電源回路との比較では、図20の電源回路のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)の値は1%程度低下することが実験により確認された。
また、図20の電源回路では、上記のようにして、チョークコイルL10について相当に大きいとされるインダクタンスを設定する必要上から、例えばチョークコイルL10を構成するためのコアなどについて比較的大型の部品を選定することになる。このことがコストダウンや、回路の小型化などを促進することの妨げの要因になる。
【0059】
そこで、本実施の形態としては、図20に示した電源回路からさらに推し進め、電源回路としてE級スイッチングコンバータを適用することで、中間負荷時における異常動作を解消したうえで、さらに、上記している電力変換効率の低下を補償して電力変換効率を向上させ、また、チョークコイルL10に相当する部品についての小型化が図られるようにするための構成を提案する。
このような本実施の形態としての電源回路として、第1の実施の形態の電源回路の構成例を図1に示す。なお、この図において、図20と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
先ず、図1に示す電源回路においては、チョークコイル巻線N10の巻き終わり端部を平滑コンデンサCiの正極端子と接続し、チョークコイル巻線N10の巻き始め端部を一次巻線N1の巻き始め端部と接続する。また、この場合の一次側直列共振コンデンサC11は、一方の極の端部が一次巻線N1の巻き始め端部とチョークコイル巻線N10との接続点に対して接続され、他方の極の端部が一次側アース電位にて一次側並列共振コンデンサCrの一方の極とスイッチング素子Q1のドレインとの接続点に対して接続されることで、一次側直列共振コンデンサC11と一次巻線N1との直列接続の関係が得られるようにされている。
なお、この場合にも、一次側並列共振コンデンサCrは、スイッチング素子Q1のソース−ドレインに対して並列の関係となるようにして接続されている。
【0061】
本実施の形態において、上記のようにして挿入されるチョークコイル巻線N10は、図18若しくは図20におけるチョークコイルL10としての巻線に相当する。本実施の形態では、このチョークコイル巻線N10は、所定形状サイズのコアに巻装され、これによりチョークコイルPCCとしての部品素子を構成するようにされる。あるいは、チョークコイル巻線N10は、後述するようにして、絶縁コンバータトランスの構造内に含められるようにして巻装することもできる。この場合、絶縁コンバータトランスPITは、複合絶縁コンバータトランスC−PITとして構成される。
【0062】
上記したような回路形態では、一次側並列共振回路(第1の一次側並列共振回路)は、チョークコイル巻線N10と一次巻線N1とによる直列接続回路と、この直列接続回路に対して並列接続される一次側並列共振コンデンサCrとに基づいて、チョークコイル巻線N10(チョークコイルPCC)のインダクタンスL10と、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とにより得られる合成インダクタンスと、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成されるものとしてみることができる。
また、一次側直列共振回路としては、一次側直列共振コンデンサC11と一次巻線N1との直列接続に基づいて、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスと、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とにより形成される第1の一次側直列共振回路を備える。また、チョークコイル巻線N10と一次側直列共振コンデンサC11との直列接続に基づいて、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとによって形成される第2の一次側直列共振回路を備える。
【0063】
スイッチング素子Q1がスイッチング動作を行うのに応じて、上記一次側並列共振回路の電圧共振動作により、スイッチング素子Q1がオフとなる期間において一次側並列共振コンデンサCrに対して充放電電流を流す。この充放電電流により、一次側並列共振コンデンサCrの両端電圧として、略半波の正弦波状の共振パルス電圧が発生する。図1の回路では、一次側並列共振回路において一次巻線N1が挿入されていることから、一次巻線N1においては、スイッチング電流に応じて生じる交番電圧に対して、この共振パルス電圧が重畳される動作が生じる。
また、第1の一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1のオン時において、一次側直列共振コンデンサC11−一次巻線N1−スイッチング素子Q1の経路で共振電流が流れるようにして共振動作を行う。
また、第2の一次側直列共振回路は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて、一次側直列共振コンデンサC11−チョークコイル巻線N10−平滑コンデンサCiの経路を共振電流が流れるようにして共振動作を行う。
このようにして第1の一次側直列共振回路及び第2の一次側直列共振回路が複合的に動作することによって、例えば一次巻線N1に流れるべき直列共振電流が、チョークコイル巻線N10に対しても分流して流れることになる。
また、第1の一次側直列共振回路に対応する、一次側直列共振コンデンサC11−一次巻線N1−スイッチング素子Q1の電流経路と、第2の一次側直列共振回路に対応する、一次側直列共振コンデンサC11−チョークコイル巻線N10−平滑コンデンサCiの電流経路とを、スイッチング周期の交流的にみた場合には、両者の電流経路は、一次側直列共振コンデンサC11を共通として、並列的な関係にあるものとしてみることができる。
なお、図1に示す二次側の回路形態は、図20と同様に、二次側直列共振回路を含む倍電圧半波整流回路となっているが、図1においては、二次巻線N2の巻き始め端部側を二次側直列共振コンデンサC2と接続し、巻き終わり端部を二次側アースにて平滑コンデンサCoの負極端子と接続している。
【0064】
上記構成による図1の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造として、先ず、チョークコイル巻線N10を含まない、チョークコイルPCCとは別個の部品となる絶縁コンバータトランスPITの構造例を図11に示す。
この図に示すように、絶縁コンバータトランスPITは、フェライト材によるE字形状コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE型コア(EE字形コア)を備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBが備えられる。このボビンBの一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBを上記EE字形コア(CR1,CR2)に取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コアの中央磁脚に巻装される状態となる。このようにして絶縁コンバータトランスPIT全体としての構造が得られる。
【0065】
そのうえで、EE字形コアの中央磁脚に対しては、図のようにして、例えばギャップ長1.6mm程度以上のギャップGを形成する。これによって、結合係数kとしては、例えばk≒0.75程度による疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図21に示した電源回路の絶縁コンバータトランスPITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップGは、E型コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
また、このようにして、チョークコイル巻線N10を含まない絶縁コンバータトランスPITの構造とした場合、チョークコイル巻線N10を備えるチョークコイルPCCは、絶縁コンバータトランスPITとは別の独立した部品として構成される。この場合のチョークコイルPCCは、例えばER型のコアなどに対して、所要のインダクタンス値が得られるようにしてチョークコイル巻線N10を巻装した構造を採る。
【0066】
また、上記構成による図1の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造として、その構造内にチョークコイル巻線N10(チョークコイルPCC)を含めた、複合絶縁コンバータトランスC−PITとして構成する場合の構造例を図12に示す。
先ず、図12に示される複合絶縁コンバータトランスC−PITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR1、CR2を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。
そして、一次側と二次側の巻装部について相互に独立するようにして分割した形状により、例えば樹脂などによって形成される、ボビンBb1が備えられる。このボビンBb1の一方の巻装部に対して一次巻線N1を巻装する。また、他方の巻装部に対して二次巻線N2を巻装する。
このようにして一次側巻線及び二次側巻線が巻装されたボビンBb1を、上記E字形状コアCR1,CR2から成るEE字形コアの中央磁脚が貫通するようにして取り付けることで、一次側巻線及び二次側巻線とがそれぞれ異なる巻装領域により、EE字形コア部分の中央磁脚に巻装される状態となる。
また、上記EE字形コア(CR1,CR2)に対しては、さらにE字形状コアCR3が図示するようにして組み合わされる。この場合には、EE字形コア(CR1,CR2)におけるE字形状コアCR1側の側面に対して、E字形状コアCR3の脚部端面が対向するようにして組み合わされる。
このE字形状コアCR3に対しては、1つの巻装領域を持つボビンBb2が取り付けられ、その巻装領域に対してチョークコイル巻線N10を巻装する。これにより、チョークコイル巻線N10は、E字形状コアCR3の中央磁脚に対して巻装される状態となる。
【0067】
そして、EE字形コア(CR1,CR2)の中央磁脚に対しては、図のようにして、所定長のギャップG1を形成する。これによって、複合絶縁コンバータトランスC−PIT自体における一次側と二次側との結合係数kとしては、例えばk≒0.75程度による0.8以下とされる値による疎結合の状態を得るようにしている。つまり、従来技術として図21に示した電源回路の複合絶縁コンバータトランスC−PITよりも、さらに疎結合の状態としている。なお、ギャップG1は、E字形状コアCR1,CR2の中央磁脚を、2本の外磁脚よりも短くすることで形成することができる。
また、例えばEE字形状コアCR3の中央磁脚を外磁脚よりも短く形成することで、EE字形状コアCR3の中央磁脚の端部と、EE字形状コアCR1との側面部との間にギャップG2を形成するようにされる。この場合のギャップG2のギャップ長は、上記ギャップG1のギャップ長に対して約1/2を設定することとしている。
【0068】
このようにして、図12に示す絶縁コンバータトランスは複合トランスとしての構造を採る。つまり、一次巻線N1と二次巻線N2が直流的に絶縁される状態で巻装される基本構成を採ったうえで、一次側に備えられるチョークコイル巻線N10も巻装される構造である。そして、このような図12に示す構造では、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2に電流が流れることによっては、E字形状コアCR1、CR2から成るEE字形コアにて主たる磁路(磁気回路)を形成するが、チョークコイル巻線N10に電流が流れることによっては、E字形状コアCR3側のみにて主たる磁路を形成する。このようにして磁路が形成されることで、一次巻線N1及び二次巻線N2が形成する磁路の磁束と、チョークコイル巻線N10が形成する磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。この結果、チョークコイル巻線N10としては、例えば巻線数やギャップG2のギャップ長などに応じた所定のインダクタンスを有するとともに、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合の度合い(結合係数)は、0とみなしてよい程度の一定以下にまで小さいものとなる。つまり、チョークコイル巻線N10側と一次巻線N1及び二次巻線N2側とではトランス結合は存在しないものとしてみてよい状態を生じている。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2とを結合するコンバータトランス機能と、チョークコイル巻線N10によるチョークコイルとしての機能は、それぞれ相互に影響されることなく独立しているものとされる状態で動作する。従って、一次巻線N1、二次巻線N2及びチョークコイル巻線N10が1つのトランス構造内に含まれているのに関わらず、一次側において適正なE級スイッチングコンバータの動作が得られることになる。
【0069】
なお、本願発明としては、先にも説明したように、一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装した構造の絶縁コンバータトランスPITと、チョークコイル巻線N10を巻装したチョークコイルPCCとを、それぞれ別個の部品として構成してもよい。この場合には、例えば絶縁コンバータトランスPITについては、所定形状サイズのEE字形コアに対して一次巻線N1及び二次巻線N2を巻装する構造とし、チョークコイルPCCについても、所定形状サイズのEE字形コアに対して巻線を施す構造とすることで構成できる。ただし、このような構成では、絶縁コンバータトランスPITとチョークコイルPCCとで独立した2つの部品が必要になる。これに対して、本実施の形態の絶縁コンバータトランスPITの構造であれば、これらの部品は1つにまとめられることとなる。これにより、例えば回路基板における部品配置などがこれまでよりも効率的なものとなって、例えば回路基板サイズの小型化などを図り易くなる。
このようにして、本願発明の下では、絶縁コンバータトランスがチョークコイルPCCの巻線を含む複合トランスとしての構造をとってもよいし、チョークコイルPCCとは独立して一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装される構造としてもよい。このようなことを考慮して、以降の説明において、特に両者を明確に区別する必要のない場合には、絶縁コンバータトランスPITとして記述する場合がある。
【0070】
複合絶縁コンバータトランスC−PITの他の構造例について、図13、図14に示す。
図13に示される複合絶縁コンバータトランスC−PITは、例えばフェライト材によるE字形状コアCR11、CR12を互いの磁脚が対向するように組み合わせたEE字形コアを備える。なお、このEE字形コアにおける2本の外磁脚及び1本の中央磁脚の断面サイズは同じであるようにされている。
そのうえで、ボビンBb11において形成される2つに分割された巻装部に対して、それぞれ、一次巻線N1、二次巻線N2を巻装し、このボビンBb11をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付けるようにする。これにより、一次巻線N1、二次巻線N2は、それぞれ異なる巻装領域により、同じ外磁脚に巻装される状態となる。このようにして一次巻線N1、二次巻線N2を巻装したうえで、EE字形コアの中央磁脚に対しては所定長のギャップG11を形成する。これにより、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb12の巻装部に対してはチョークコイル巻線N10を巻装して、このボビンBb12をEE字形コアの一方の外磁脚に対して取り付ける。これにより、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装される外磁脚に対して、中央磁脚を対称にして反対側となる外磁脚に巻装される状態となる。
このような構造では、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路は、これら一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路は、チョークコイル巻線N10が巻回される外磁脚と中央磁脚とをつなぐようにして形成されることから、この場合にも両磁路の磁束が鎖交する度合いは非常に小さくなる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との結合度(結合係数)はほぼ0とみなしてよく、トランス結合は存在しないとする状態を、図12の場合と同様に得ることができる。
【0071】
また、図14に示される複合絶縁コンバータトランスC−PITは、例えば先ず、フェライト材によるU字形状コアCR21、CR22を互いの磁脚が対向するように組み合わせたUU字形コアを形成し、さらにこのUU字形コアに対して、U字形状コアCR23が組み合わされる。
UU字形コア側におけるU字形状コアCR21、CR22の各2本の磁脚が互いに対向する部位には、図示するようにして、所定ギャップ長のギャップG21、G22が形成される。また、UU字形コア(CR21、CR22)におけるU字形状コアCR22の側面部に対して、U字形状コアCR23の2本の磁脚端部が対向する各部位においては、所定のギャップ長のギャップG23,G24を形成するようにしている。
そのうえで、ボビンBb21において形成される2つに分割された巻装部に対して、一次巻線N1と二次巻線N2をそれぞれ巻装し、このボビンBb21をUU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚に対して取り付ける。これにより、一次巻線N1及び二次巻線N2は、UU字形コア(CR21、CR22)の一方の磁脚において、それぞれ異なる巻装領域において巻装される状態となり、上記ギャップG21、G22のギャップ長の設定により、一次巻線N1と二次巻線N2については、所定の結合係数kによる疎結合とされる結合度が得られる。
また、ボビンBb22に対してチョークコイル巻線N10を巻装し、U字形状コアCR23の一方の磁脚に対して取り付けることで、チョークコイル巻線N10がU字形状コアCR23の一方の磁脚に巻装される状態とする。このとき、一次巻線N1及び二次巻線N2による主たる磁路はUU字形コア(CR21、CR22)にて形成され、チョークコイル巻線N10による主たる磁路はU字形状コアCR23側にて形成され、両磁路の磁束の鎖交はほとんど無いとされる状態が得られる。これにより、図12、図13と同様に、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気的結合度(結合係数)はほぼ0とみなされ、トランス結合も存在しないとみなしてよい状態を得ることができる。
【0072】
また、本実施の形態における、複合トランスとしての絶縁コンバータトランスの構造は、上記のようにしてE字形状コア、若しくはU字形状コアを用いた構造の他に、例えば、図15〜図17に示すような構造とすることもできる。
図15に示される複合絶縁コンバータトランスC−PITとしては、4本の磁脚を有する2つのダブルコの字型コアCR51、CR52を備える。そして、これらダブルコの字型コアCR51、CR52の互いの磁脚の端部を接合するようにして、立体型コアを形成する。なお、この場合において、ダブルコの字型コアCR51、CR52は、互いに同一サイズ形状のものを用いることができる。
このようにして立体型コアを形成した場合には、上記4本の磁脚ごとに対応して、ダブルコの字型コアCR51、CR52の接合部は4つ在ることとなるが、この場合、これら4つの接合部について、それぞれ所定長のギャップG50をそれぞれ形成する。なお、これら複数のギャップG50に設定されるギャップ長は同じであってもよいし、必要に応じて異なる長さが設定されてもよい。この点については、後述する図16、図17の複合絶縁コンバータトランスC−PITの構造においても同様である。
【0073】
そして、このようにして形成される立体型コアにおいて、先ず、例えばダブルコの字型コアCR51側の隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、チョークコイル巻線N10を所定ターン数(巻数)巻装する。
一方、一次巻線N1及び二次巻線N2は、図示するようにして、ダブルコの字型コアCR52側において、上記チョークコイル巻線N10の巻方向に対して、ちょうど直交するようにさせて、隣り合う2本の磁脚に巻き付けるようにして、所定ターン数を巻装するようにされる。
【0074】
上記のような構造では、チョークコイル巻線N10の巻回方向は、一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交することになる。つまり、複合トランスである絶縁コンバータトランスPITとしては、いわゆる直交型トランスとしての構造が得られる。
【0075】
このようにして、一次巻線N1、二次巻線N2、チョークコイル巻線N10が巻装されることで、先ず、一次巻線N1及び二次巻線N2については、コアサイズやギャップ長等に応じて設定される所定の結合係数により磁気結合された状態を生じる。また、チョークコイル巻線N10は、例えばコアサイズと巻数などの定数から、所定のインダクタンスを有するようにされる。そのうえで、チョークコイル巻線N10の巻回方向が一次巻線N1及び二次巻線N2の巻回方向に対して直交するようにされることで、チョークコイル巻線N10を巻回した2本の磁脚において、一次巻線N1及び二次巻線N2側により形成される磁路は逆方向となって打ち消し合うことになる。これにより、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2との磁気結合度としては、0とみなしてよい程度の一定以下とすることができる。
【0076】
図16に示す複合絶縁コンバータトランスC−PITは、立体型コアについて、一方のコアは4本の磁脚を有するダブルコの字型コアCR51のままとするが、他方のコアは、ダブルコの字型コアCR52に代えて、任意の断面がコ字状となるシングルコの字型コアCR60と組み合わせて形成することもできる。なお、このコア構造においても、ダブルコの字型コアCR51の4本の磁脚の端面と、シングルコの字型コアCR60とが対向する部位には、それぞれ、ギャップG60を形成するようにされる。
このコア構造において、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2を、例えば図16と同様のダブルコの字型コアCR51の位置関係、及び巻方向の関係により巻装する。このようにしても、チョークコイル巻線N10と、一次巻線N1及び二次巻線N2の組とが、互いの巻き方向が直交する直交型トランスとしての構成が得られ、図15と同様にして、チョークコイル巻線N10は、所定のインダクタンスを有すると共に、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する磁気結合度については0とみなしてよい状態を得ることができる。
【0077】
また、図17に示す複合絶縁コンバータトランスC−PITは、2つの半目字型コアCR71,CR72を用意し、これらのコアの互いの磁脚が対向するようにして組み合わせることで1つの平面型の目字型コアを形成する。また、目字型コアにおいては、外側2本と内側2本の計4本の磁脚が対向することになるが、この場合には、これらの4本の磁脚が対向する各面について、それぞれ、所定長のギャップG70を形成する。
そして、一次巻線N1及び二次巻線N2は、一方の半目字型コアCR71における2本の内側磁脚に跨るようにして所定ターン数を巻装する。
チョークコイル巻線N10は、他方の半目字型コアCR72における1本の外側磁脚と、この外側磁脚と隣り合う1本の内側磁脚とに跨るようにして、所定ターン数を巻装する。
【0078】
このような複合絶縁コンバータトランスC−PITの構造では、チョークコイル巻線N10が巻回される磁脚位置と、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻回される磁脚位置とが互いに異なるようにされているが、この関係としては、図15及び図16に示したように巻回方向を直交させたのと等価となる。従って、この図17に示す構造によっても、絶縁コンバータトランスPITにおいては、チョークコイル巻線N10は、一次巻線N1及び二次巻線N2に対する結合度は0とみなされ、かつ、所要のインダクタンスを有する状態となる。
【0079】
そして、図1に示した回路形態の電源回路について、後述する実験結果を得るのにあたり、要部については、下記のように選定した。
先ず、絶縁コンバータトランスとチョークコイルPCCについては、それぞれ別個の部品により構成することとした。絶縁コンバータトランスPITについては、図11に示したEE字形状の構造を採用することとして、EE字形コア(CR1,CR2)についてEER-35を選定して、ギャップG1については1.6mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=60T、N2=31Tを選定した。
また、チョークコイルPCCについてはER−28を選定して、中央磁脚部分には1.2mmのギャップを形成し、インダクタンスL10=360μHとなるようにしてチョークコイル巻線N10を巻装した。チョークコイル巻線N10は、50Tを巻装した。
上記した絶縁コンバータトランスPITの構造により、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについては、例えばk=0.75程度の、0.8より小さいとされる値が設定される。
なお、上記EER、ERのコアは、よく知られているように、製品としてのコアの型式、規格の1つであり、この型式には、EEのあることも知られている。本願においてE字形状、EE字形などという場合には、断面がE字、あるいはEE字形状であることに応じて、EER、ER、EEの何れのタイプの場合についてもE字形状、あるいはEE字形のコアであるとして扱うものとする。
また、一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振コンデンサC11、及び二次側直列共振コンデンサC2の各キャパシタンスについては、
Cr=3900pF
C11=0.039μF
C2=0.068μF
を選定した。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vとしている。
【0080】
図1の電源回路の実験結果として、図2(a)の波形図を挙げる。この図2(a)では、最大負荷電力Pomax=300W、交流入力電圧VAC=100Vの条件での、スイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、コンデンサ電流Icr、入力電流I1、一次巻線電圧V2、一次巻線電流I2、二次側交番電圧V3を示している。また、図2には、図2(a)との比較として、図20に示した回路構成の電源回路において同一とされる部位の波形を、図2(b)に示している。
【0081】
図2(a)に示す波形図により、図1の電源回路の基本的な動作について説明する。
入力電流I1は、平滑コンデンサCiから一次側スイッチングコンバータに流入しようとする電流である。本実施の形態の場合、入力電流I1がスイッチング素子Q1側に流入する経路である、平滑コンデンサCiの正極端子とスイッチング素子Q1のドレイン側との間のラインには、チョークコイル巻線N10と絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1の直列接続が挿入されているものとしてみることができる。つまり、入力電流I1は、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10と、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1の合成インダクタンスを介するようにして流れることになる。このために、入力電流I1は脈流となる。このような波形の入力電流I1は、直流としてみることができる。つまり、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は直流となる。
【0082】
スイッチング素子Q1は、平滑コンデンサCiの両端電圧(Ei)を直流入力電圧として入力してスイッチング動作を行う。スイッチング電圧V1は、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間の電圧である。
スイッチング電流IQ1は、ドレイン側からスイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に流れる電流となる。スイッチング電圧V1及びスイッチング電流IQ1によっては、スイッチング素子Q1のオン/オフタイミングが示される。1スイッチング周期は、スイッチング素子Q1がオンとなるべき期間TONと、オフとなるべき期間TOFFとに分けられ、スイッチング電圧V1は、期間TONにおいては0レベルで、期間TOFFにおいて共振パルスが得られる波形となる。このスイッチング電圧V1の電圧共振パルスは、一次側並列共振回路の共振動作により、正弦波状の共振波形として得られる。
スイッチング電流IQ1は、期間TOFFにおいては0レベルであり、この期間TOFFが終了して期間TONが開始されてターンオンタイミングに至ると、先ず、ボディダイオードDDを流れることで負極性の波形となり、続いて反転してドレインからソースに流れることで正極性による波形となる。
【0083】
一次巻線電流I2は、スイッチング素子Q1のスイッチング動作に応じて一次巻線N1に流れる電流であり、この場合には、スイッチング電流IQ1とコンデンサ電流Icrとをほぼ合成するようにして得られる波形となる。スイッチング素子Q1がオン/オフ動作を行うことにより、期間TOFFのスイッチング電圧V1である共振パルス電圧が第1の一次側直列共振回路を形成する一次巻線N1、一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路に印加される。これにより一次側直列共振回路が共振動作を行い、一次巻線電流I2は、正弦波成分によるスイッチング周期に応じた交番波形となる。また、一次巻線電圧V2は、一次巻線N1の両端電圧である。この一次巻線電圧V2も、図示するようにして、正弦波によるスイッチング周期に応じた交番波形となる。
【0084】
期間TONが終了して期間TOFFに至ってスイッチング素子Q1がターンオフするタイミングでは、一次巻線電流I2は、コンデンサ電流Icrとして、一次側並列共振コンデンサCrに対して正極性により流れることで、一次側並列共振コンデンサCrを充電する動作が開始され、これに応じて、スイッチング電圧V1は0レベルから正弦波状により上昇を開始して、電圧共振パルスが立ち上がる。コンデンサ電流Icrが負極性に反転すると、一次側並列共振コンデンサCrは充電から放電が行われる状態に移行することになり、電圧共振パルスはピークレベルから正弦波状により下降していく。
そして、スイッチング電圧V1としての電圧共振パルス波形が0レベルにまで降下したとされると、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)がオンとなる期間TONが開始される。この期間TONに至ると、先ず、ボディダイオードDDが導通して負極性の一次巻線電流I2を流すことになる。このときスイッチング電圧V1は0レベルであり、一定期間においてボディダイオードDDに一次巻線電流I2が流れると、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間がオンとなって、正極性の一次巻線電流I2を流す。このようにして期間TONにおいて、スイッチング素子Q1(及びボディダイオードDD)に一次巻線電流I2が流れることで、スイッチング電流IQ1の波形が得られる。このような動作は、スイッチング素子Q1のターンオン、ターンオフ時において、一次側並列共振回路によるZVS動作、及び一次側直列共振回路によるZCS動作が得られていることを示す。
【0085】
また、二次側交番電圧V3によっては、二次側整流回路の動作が示される。
二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路の両端電圧であり、二次側整流回路が入力する二次側交番電圧V3は、二次側交番電圧V3の半周期の期間ごとに、整流ダイオードDo1,Do2に対して順方向電圧を印加し、これに応じて整流ダイオードDo1,Do2が交互に導通する。これにより、二次側交番電圧V3は、整流ダイオードDo1の導通期間に応じては二次側直流出力電圧Eoに応じた絶対値レベルによりクランプされ、整流ダイオードDo2の導通期間に応じては0レベル(アース電位)となる交番波形が観測される。
【0086】
また、定電圧制御特性として、交流入力電圧VAC=100Vの入力条件で、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対するスイッチング周波数fsの可変範囲Δfsは、Δfs=16.2kHzとなる実験結果が得られた。
また、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)は、最大負荷電力Pomax=300W時ではηAC→DC=91.9%、負荷電力Po=75W時においてはηAC→DC=94.0%となる実験結果が得られた。
【0087】
上記図2(a)に示される波形図と、先に図19に示した波形図とを比較すると、両者において共通とされる部位がほぼ同様の動作波形であることから分かるように、図1に示す電源回路としても、その基本的な動作はE級共振形である。
従って、本実施の形態の電源回路としても、図20の電源回路と同様に、一次側スイッチングコンバータはE級イッチングコンバータを適用していることで、中間負荷時においてZVSが得られなくなることの異常動作は解消され、対応負荷電力(Po=300W〜0W)の全領域にわたってZVS動作が得られる。E級スイッチングコンバータの基本構成は、1石のスイッチング素子と並列共振回路とを含んでいるので、本実施の形態の電源回路は、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの回路構成を備えるスイッチングコンバータとして、実用化が容易に実現可能となっている、ということがいえる。
【0088】
なお、上記しているように、一次側スイッチングコンバータにE級スイッチングコンバータを適用した図1の回路、あるいは図20の回路では、二次側直列共振回路の有無にかかわらず、中間負荷時における異常動作は解消される。但し、図1あるいは図20に示す電源回路のようにして、二次側整流回路として倍圧半波整流回路を備える場合、二次巻線N2には、誘起電圧が正/負の各期間において電流が流れる。このような整流動作となる整流回路の場合には、二次側直列共振コンデンサを接続して二次側直列共振回路を形成することで、この二次側直列共振回路の共振動作による電力増加などの作用が得られ、電力変換効率の向上につなげることができる。
【0089】
また、先に従来例として図21に示した電源回路では、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、絶縁コンバータトランスPITの一次巻線N1を経由してスイッチング素子Q1、一次側並列共振コンデンサCrに流入する。この場合、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は一次巻線電流I1となるものであり、スイッチング周期による比較的高い周波数となる。つまり、平滑コンデンサCiに対しては商用交流電源周期に対して高周波で充放電電流が流れる。
平滑コンデンサCiとしての部品素子には高耐圧が要求されることなどに応じてアルミ電解コンデンサがしばしば採用される。アルミ電解コンデンサは、他の種類のコンデンサなどと比較して、高周波で動作させると静電容量が低下すると共に損失角の正接が増加しやすい性質を有している。このために、平滑コンデンサCiに使用するアルミ電解コンデンサには、ESR(等価直列抵抗)が低く、また、許容リップル電流が多い特殊品を選定する必要がある。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても相応に大きな値を選定する必要が出てくる。例えば図21の電源回路の構成で、本実施の形態と同等の最大負荷電力Pomax=300Wに対応させる場合には、1000μF程度を選定することになる。このようなアルミ電解コンデンサは、汎用のアルミ電解コンデンサよりも高価であり、また、キャパシタンスの増加に応じた部品価格の上昇も含めてコスト的に不利となる。
【0090】
これに対して図1に示した本実施の形態の電源回路は、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流は、チョークコイル巻線N10−一次巻線N1の直列接続を介してスイッチング素子Q1側に流れるようになっている。このために、平滑コンデンサCoからスイッチングコンバータに流入する電流は、図2(a)の入力電流I1としても示されるように直流となる。このようにして、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する電流が直流となることで、本実施の形態では、上記した静電容量の低下や損失角の正接の増加の問題は生じることが無い。また、これに伴って、直流入力電圧Eiにおける商用交流電源周期のリップルも低減される。このリップルは、例えば図21の電源回路の構成では7.5Vp-pであるのに対して、図1の電源回路では、5Vp-pとなる。このようなことから、本実施の形態としては、平滑コンデンサCiとして汎用のアルミ電解コンデンサを選定することができる。また、平滑コンデンサCiとしての素子のキャパシタンスについても、図21の回路の場合よりも低い値を選定できる。図1の回路の実際としては、680μFを選定できる。このようにして、本実施の形態では、平滑コンデンサCiについてのコストダウンを図ることが可能になる。
【0091】
また、本実施の形態では、対応負荷電力のほぼ全領域にわたって、良好とみてよい電力変換効率特性となる、という実験結果も得られている。
本実施の形態において高電力変換効率が得られているのは、次のような構成に基づいている。
先ず、電圧共振形コンバータに対して二次側直列共振回路を備える電源回路の構成は、本来、電力変換効率に関しては有利であることが知られている。特に、この構成は、最大負荷電力から軽負荷の傾向となるのにしたがって、電力変換効率が増加していくという特徴的な性質を有しており、軽負荷傾向に応じて電力変換効率が低下する傾向となる電流共振形コンバータと比較すれば、負荷変動に対する電力変換効率特性としては非常に良好であるということがいえる。また、電圧共振形コンバータとしてシングルエンド方式を採用してスイッチング素子を必要最小限の1石とすることで、例えばハーフブリッジ結合方式、フルブリッジ結合方式、プッシュプル方式などの複数のスイッチング素子を備える構成と比較してスイッチング損失を減少させていることも、電力変換効率の向上要因となっている。
本実施の形態のE級スイッチングコンバータも、一次側並列共振回路と1石のスイッチング素子が組み合わされた構成を含むことで、シングルエンド方式の電圧共振形コンバータの構成を含んでいるということがいえ、上記したような電圧共振形コンバータとしての良好な電力変換効率特性を引き継いでいる。
【0092】
そのうえで、本実施の形態としては、上記もしているように中間負荷時における異常動作を解消して、適正なZVS動作が得られるようにしている。この異常動作の現象としては、図22(b)に示したように、ターンオン(期間TON開始)より以前のタイミングでスイッチング素子Q1がオンとなって、正極性のスイッチング電流IQ1がソース−ドレイン間を流れる動作となるのであるが、このようなスイッチング電流IQ1の動作によっては、スイッチング損失を増加させる。本実施の形態では、異常動作に対応するスイッチング電流IQ1の動作が生じないことで、これによるスイッチング損失の増加も無くなり、このことが、電力変換効率の向上要因の1つとなっているものである。
【0093】
また、図2(a)と図22(a)のスイッチング電流IQ1を比較して分かるように、本実施の形態に対応する図2(a)のスイッチング電流IQ1の波形は、期間TONの終了時以前のタイミングでピークが得られる波形となっている。この図2に示されるスイッチング電流IQ1の波形は、ターンオフ時におけるスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されているということを意味する。ターンオフ時のスイッチング電流IQ1のレベルが抑制されれば、その分、ターンオフ時のスイッチング損失は低減され、電力変換効率が向上することになる。
このようなスイッチング電流IQ1の波形は、一次側スイッチングコンバータについてE級スイッチング動作としたことで得られるものである。
【0094】
そのうえで、本実施の形態の電源回路の電力変換効率特性の向上には、次のことが大きく寄与している。
ここで、本実施の形態との比較として、図20に示した電源回路の動作を示す図2(b)を参照する。この図に示す波形は、図20に示す電源回路について、図1の電源回路により図2(a)に示す実験結果を得た場合と同様の負荷電力条件、交流入力電圧条件、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルを設定し、図1の電源回路とほぼ同様の動作条件が得られるようにして、要部の部品の定数を選定、設定しているものである。
【0095】
図20の電源回路の一次側スイッチングコンバータの回路形態では、期間TOFFにおいて、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスと、チョークコイルL10とにより形成される一次側並列共振回路が共振動作(電圧共振動作)を行うことで、図示するようにして、コンデンサ電流Icrを一次側並列共振コンデンサCrに流すようにされる。これにより、スイッチング電圧V1としては、期間TOFFにおける共振パルス電圧を生じることになる。
ここで、図20の電源回路の回路形態では、本実施の形態のようにして一次側並列共振回路において、一次巻線N1のインダクタンスL1は含まれない。
【0096】
これに対して、図1に示す本実施の形態の電源回路では、一次側並列共振回路において、一次巻線N1がチョークコイル巻線N10に対して直列に接続されるようにして挿入される。このために、チョークコイル巻線N10に発生する共振パルス電圧は、一次巻線N1に重畳することとなって、一次巻線電圧V2のレベルを増加させる。実際の測定結果として、図20の電源回路では、図2(b)に示すようにして700Vpであるのに対して、図1の電源回路では、図2(a)に示すようにして、820Vpとなっている。なお、このピークレベルの値は正極性のときのものであるが、負極性のときにも、同様にして、図1の電源回路のほうがレベルは増加している。
【0097】
また、図20の電源回路の一次側の接続態様によっては、本実施の形態における第1の一次側直列共振回路(N10(L10),C11)は形成されるが、第2の一次側直列共振回路は形成されない。この場合、一次側に流れるとされる直列共振電流は、そのまま一次巻線電流I2として流れることになる。
これに対して、本実施の形態では、一次側直列共振回路として第1の一次側直列共振回路と第2の一次側直列共振回路との2組を備えることで、前述したように、一次側に流れるべき直列共振電流は、一次巻線N1とチョークコイル巻線N10とに分流して流れるようにされる。この動作は、先ず、入力電流I1の波形により示されている。例えば、図2(b)に示される、図20の電源回路の入力電流I1は、1Aのレベル変動幅による脈流であり、また、脈流の波形としては、リニアに近い増減の変化を示している。これに対して、図2(a)に示される図1の電源回路の入力電流I1は、1.5Aのレベル変動幅であり、図2(b)より拡大している。また、図2(a)の入力電流I1は、その脈流波形が正弦波状となっている。つまり、直列共振電流がチョークコイル巻線N10に流入していることにより、入力電流I1の振幅幅が拡大し、また、その波形が、直列共振電流成分を含むことにより正弦波状となって現れている。なお、入力電流I1の平均値については、図2(a)と図2(b)とでほぼ同等であるか、あるいは図2(a)のほうが小さくなっているものとみてよい。
【0098】
本実施の形態では、上記のようにして一次巻線電圧V2のレベル(振幅)が拡大し、また、一次側直列共振電流が分流して流れることで、一次巻線電流I2が大幅に低減される。この点について、図1の電源回路に対応する図2(a)と、図20の電源回路に対応する図2(b)とを実際に比較してみると、図2(b)が4.2Apであるのに対して図2(a)では3.5Apであり、0.7A低減されている。
また、これに伴って、スイッチング電流IQ1の電流量も低減する。このスイッチング電流IQ1については、図2(a)(b)とで、共に最大ピークレベルは5.2Apで同等ではあるが、ターンオフ時のピークレベルについては、図2(b)では4.8Apであるのに対して、図2(a)では4.0Apとなっており、0.8A低減している。また、期間TOFFにおいて一次側並列共振コンデンサCrに流れるコンデンサ電流Icrも、図1の電源回路のほうが少ない電流量となる。このようなことから、本実施の形態の電源回路では、例えば図20の電源回路と比較して、一定の負荷条件の下での一次側に流れる電流量は全体として低減しているということがいえる。
【0099】
図1の電源回路においても、チョークコイルL10に相当するチョークコイル巻線N10を備えることで、このチョークコイル巻線N10による電力損失は存在することになる。しかしながら、上記のようにして、一次側のスイッチングコンバータに流れるスイッチング周期に応じた電流量が低減することで、スイッチング素子Q1におけるスイッチング損失、絶縁コンバータトランスPITにおける鉄損、銅損、一次側並列共振コンデンサにおける損失などが低減される。これらの電力損失の低下分の総計は、チョークコイル巻線N10による電力損失を大きく上回るもので、これにより、総合的には、図20の電源回路に対して大幅な電力変換効率の向上が図られることになる。さらに、従来例として図21に示した電源回路との比較においても、図1の電源回路のほうが、良好な電力変換効率特性が得られていることが実験で確認された。
先に説明したように、図1に示す実施の形態の電源回路のAC→DC電力変換効率(ηAC→DC)特性は、最大負荷電力Pomax=300W時ではηAC→DC=91.9%、負荷電力Po=75W時においてはηAC→DC=94.0%であった。これに対して、図21に示した電源回路では、最大負荷電力Pomax=300W時ではηAC→DC=91.7%、負荷電力Po=75W時においてはηAC→DC=93.8%である。このような特性から、対応負荷電力(Pomax=300W〜Pomin=0W)の範囲としてみた場合には、図1の電源回路のほうが相当に良好な電力変換効率特性を有していることが分かる。
なお、図21の電源回路の定電圧制御特性としては、交流入力電圧VAC=100Vの入力条件で、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対してΔfs=20.8kHzであり、図1の電源回路との比較(Δfs=16.2kHz)では、図1の電源回路のほうが、制御範囲は縮小されている。
【0100】
また、上記のようにして、一次側に流れるとされる電流量(主としては一次巻線電流I2)が低減することにより、例えばチョークコイル巻線N10を巻装するチョークコイルPCCにおいて生じる磁束も低減する。また、本実施の形態の接続態様においては、入力電流I1がスイッチングコンバータ側に流入する経路においてチョークコイル巻線N10と一次巻線N1との直列接続回路も形成されることで、入力電流I1を直流化するためのインダクタンスは、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10と、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1との合成により得ることができる。このために、本実施の形態のチョークコイル巻線N10自体に必要とされるインダクタンスは、例えば図20に示されるチョークコイル巻線N10よりも小さく設定できる。
チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10の具体値としては、例えば図20の回路では、L10=1mHであるのに対して、図1の回路では、L10=0.36mH(360μH)を設定できる。このインダクタンスL10の値は、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1に設定される値とほぼ同等とみてよい。
【0101】
そして、上記のようにしてチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10について、これまでよりも小さい値を設定できることで、例えばチョークコイルPCCを絶縁コンバータトランスPITとは独立した別個の部品として備える場合には、このチョークコイルPCCの小型軽量化を図ることができる。具体的に、図20の回路の場合には、L10=1mHとしてのインダクタンスを得るために、EER-28のフェライトコアに対してチョークコイル巻線N10を80T(ターン)巻装して、チョークコイルPCCを構成した。これに対して、図1の回路では、ER-28のフェライトコアに対してチョークコイル巻線N10を50T巻装して構成したものを採用することができる。
【0102】
また、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10が小さくなることによっては、チョークコイル巻線N10をその構造内含めた複合絶縁コンバータトランスC−PITを構成するときにも有利となる。複合絶縁コンバータトランスC−PITの構造例は、図12〜図17に示した。
例えば、チョークコイル巻線N10が図20と同等の相応に大きなインダクタンスL10を有する場合において複合絶縁コンバータトランスC−PITを構成しようとした場合、一次巻線N1と二次巻線N2のインダクタンス(L1、L2)とチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10とのバランスによっては、一次巻線N1及び二次巻線N2を備える本来の絶縁コンバータトランスに必要とされるインダクタンスに応じたコアサイズ(断面積)では、チョークコイル巻線N10に必要なインダクタンスL10を得ることが困難となる場合があり、インダクタンスL10の大きさに対応させて、大きなサイズのコアを選定する必要が出てくる。あるいは、複合絶縁コンバータトランスC−PITの設計が難しいものとなる可能性がある。
これに対して、本実施の形態において必要とされる程度にチョークコイル巻線N10のインダクタンスL10が小さければ、上記した問題は解消されて、例えば必要最小限に小型なコアサイズで、複合絶縁コンバータトランスC−PITを容易に設計して製造することが可能になる。
このようにして、本実施の形態では、チョークコイル巻線N10を巻装するチョークコイルPCC、あるいは複合絶縁コンバータトランスC−PITについて、小型化、軽量化を促進することが容易に可能となり、また、これ伴うコストダウンも期待できることになる。
また、本実施の形態では、入力電流I1の波形は、正弦波状となっているが、これによる高周波ノイズの低減効果も得られる。
【0103】
図3は、第2の実施の形態の電源回路の構成例を示している。なお、この図において図20、図1と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
この図1に示す電源回路についても、チョークコイルPCCとしては、チョークコイル巻線N10が巻装されている。
また、絶縁コンバータトランスPITとしても、第1の実施の形態において説明したのと同様の構造を採ることができる。つまり、チョークコイルPCCとは独立したトランス部品として構成されてもよいし、図12〜図17に示したように、チョークコイルPCCの構造を含めて一体化した複合トランス(複合絶縁コンバータトランスC−PIT)として構成してもよい。また、第2の実施の形態の場合にも、絶縁コンバータトランスPIT自体の一次側と二次側との結合係数kについては、例えば0.8以下となるk=0.75程度を設定している。
【0104】
そのうえで、図3に示す電源回路では、一次側スイッチングコンバータについて、次のように構成している。
つまり、一次側並列共振コンデンサCrの一方の極を、スイッチング素子Q1のドレインと一次巻線N1の巻き終わり端部との接続点に対して接続し、他方の極を、一次巻線N1の巻始め端部と一次側直列共振コンデンサC11の一方の極の接続点に対して接続する。一次側直列共振コンデンサC11の他方の極は、一次側アース電位にてスイッチング素子Q1のソースと接続される。
この接続態様では、一次側並列共振コンデンサCrは、一次巻線N1に対して並列となる関係により接続され、また、一次側直列共振コンデンサC11は、上記一次側並列共振コンデンサCrと一次巻線N1との並列接続回路に対して直列となるようにして接続される。
【0105】
このような回路構成では、一次側並列共振回路として、先ず、チョークコイル巻線N10(チョークコイルPCC)のインダクタンスL10と、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1との直列接続により得られる合成インダクタンスと、一次側並列共振コンデンサCrと一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路により得られるキャパシタンスとにより第1の一次側並列共振回路が形成され、さらに、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとにより形成される第2の並列共振回路も形成される。
また、一次側直列共振回路は、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10と一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスとによって形成される第1の一次側直列共振回路と、一次側直列共振コンデンサC11のキャパシタンスと、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1とにより形成される第2の一次側直列共振回路とを備えることになる。
【0106】
この図3に示す第2の実施の形態の電源回路については、実験を行うのにあたって要部について下記のように選定した。
先ず、この場合にも、絶縁コンバータトランスとチョークコイルPCCについては、それぞれ別個の部品により構成することとした。絶縁コンバータトランスPITについては、図11に示したEE字形状の構造を採用することとして、EE字形コア(CR1,CR2)についてEER-35を選定して、ギャップG1については1.6mmのギャップ長を設定した。一次巻線N1及び二次巻線N2の各巻数(ターン数)Tについては、N1=55T、N2=31Tを選定した。
また、チョークコイルPCCについてはER−28を選定して、中央磁脚部分には1.2mmのギャップを形成し、インダクタンスL10=360μHとなるようにしてチョークコイル巻線N10を巻装した。チョークコイル巻線N10は、50Tを巻装した。
上記した絶縁コンバータトランスPITの構造により、絶縁コンバータトランスPIT自体における一次側と二次側との結合係数kについては、例えばこの場合にも、k=0.75程度の、0.8より小さいとされる値が設定される。
また、一次側並列共振コンデンサCr、一次側直列共振コンデンサC11、及び二次側直列共振コンデンサC2の各キャパシタンスについては、
Cr=3900pF
C11=0.033μF
C2=0.068μF
を選定した。
対応負荷電力は、最大負荷電力Pomax=300W、最小負荷電力Pomin=0W(無負荷)とし、二次側直流出力電圧Eoの定格レベルは175Vである。
【0107】
図3の電源回路の実験結果として、図4の波形図を挙げる。この図4では、最大負荷電力Pomax=300W、交流入力電圧VAC=100Vの条件での、スイッチング電圧V1、スイッチング電流IQ1、コンデンサ電流Icr、入力電流I1、一次巻線電圧V2、一次巻線電流I2、二次側交番電圧V3を示している。
【0108】
この図4に示される動作の基本としては、先に図2の波形図に示した第1の実施の形態の電源回路の動作と同様となることから、ここでの説明は省略する。また、図4に示す第2の電源回路の動作波形が、第1の実施の形態と基本的に同様であるということは、第2の実施の形態においても、一次側並列共振回路の共振動作に応じて生じる共振パルス電圧が一次巻線N1にも重畳されて一次巻線電圧V2のレベルを増加させており、さらに、第2の一次側直列共振回路の共振動作に応じて、チョークコイル巻線N10側に対しても一次側の直列共振伝習が分流している、ということである。これにより、第2の実施の形態にあっても、一次側スイッチングコンバータに流れる電流量が低減することによる電力損失の低減効果が得られることになる。また、チョークコイル巻線N10のインダクタンスL10について、例えば360μH程度に小さい値を設定できることによる、チョークコイルPCC、複合絶縁コンバータトランスC−PITについての小型軽量化、設計容易化なども図られる。
【0109】
そのうえで、先にも説明したように、第2の実施の形態の電源回路は、一次巻線N1のリーケージインダクタンスL1と、一次側並列共振コンデンサCrのキャパシタンスとから成る第2の一次側並列共振回路を備える。この第2の一次側並列共振回路は、スイッチング素子Q1がオンの期間においてその共振動作が有効となる。そして、この第2の一次側並列共振回路が共振動作を行うことで、期間TONにおいても、一次側並列共振コンデンサCrには、図4に示すようにして正極性による正弦波成分の波形により、コンデンサ電流Icrが流れる。このことは、期間TONにおいては、入力電流I1を元とする電流が、一次巻線N1、及びスイッチング素子Q1だけでなく、一次側並列共振コンデンサCrにも分流して流れることを意味している。また、これに応じて、期間TONにおける一次巻線電圧V2は、極性から負極性に反転する波形となる。
このようにして、第2の実施の形態の電源回路としても、一次側スイッチングコンバータに流れる電流が一次側並列共振コンデンサCrにも分流するのに応じて、一次側に流れる総合的な電流量はさらに減少する結果が得られる。
図4に示される測定結果としては、期間TONにおけるコンデンサ電流Icrのピークレベルが1Apで、これに対応するスイッチング電流IQ1のピークレベルは5.0Apであり、図20の回路との比較(図2(b))では0.2A低減している。また、一次巻線電流I2については、正極性と負極性とでそれぞれ3.8Apとなっており、図20の電源回路との比較では4.2A低減している。この場合、一次側に流れる電流量の低減は、スイッチング電流IQ1のピークレベルの低下として顕著に現れているものとみることができる。
【0110】
このようにして、第2の実施の形態の電源回路では、先ず、第1の実施の形態と同様にして、一次巻線N1に対して共振パルス電圧を重畳する動作により、一次巻線電圧V2の振幅を拡大し、これに伴う一次側スイッチングコンバータに流れる電流の低減を図ることで、電力損失の低減を図っている。
そのうえで、さらに、スイッチング素子Q1がオンのときにも、一次側スイッチングコンバータにおいて流れる電流の一部を一次側並列共振コンデンサCrに対して分流させるようにして流す動作が得られるようにしている。これにより、一次側スイッチングコンバータに流れる電流(スイッチング電流IQ1)がさらに低減されるようにして、さらなる電力損失の低減を図るようにしている。
これにより、第2の実施の形態としては、第1の実施の形態の電源回路に対して、さらに良好な電力変換効率特性が得られていることが実験で確認された。具体的には、AC→DC電力変換効率(ηAC→DC)特性は、最大負荷電力Pomax=300W時ではηAC→DC=92.4%、負荷電力Po=75W時においてはηAC→DC=94.5%であった。また、この第2の実施の形態の電源回路の定電圧制御特性としては、交流入力電圧VAC=100Vの入力条件で、最大負荷電力Pomax=300W〜最小負荷電力Pomin=0Wの負荷変動に対してΔfs=12.9kHzとなった。
【0111】
また、確認のために述べておくと、図3に示す第2の実施の形態の電源回路としても、上記図4に示される波形図と、先に図19に示した波形図との比較から分かるように、第2の実施の形態の電源回路の基本的な動作はE級共振形である。このことから、中間負荷時においてZVSが得られなくなることの異常動作は解消され、対応負荷電力(Po=300W〜0W)の全領域にわたってZVS動作が得られる。また、絶縁コンバータトランスPITの一次側と二次側との結合度(結合係数k)について例えば一定以下としていることで、一次側と二次側との相互影響を希薄化する作用を生じる。このことも上記した以上動作を解消して、より安定したスイッチング動作が得られるようにするための一要因として挙げることができる。
また、第2の実施の形態の電源回路がE級動作であることで、平滑コンデンサCiからスイッチングコンバータに流入する入力電流I1は直流となるものであり、これによる平滑コンデンサCiについての汎用品の選定、及びより小さなキャパシタンスの選定が可能になる。
【0112】
続いて、本発明の第1及び第2の実施の形態の変形例として、二次側整流回路のバリエーションを、図5〜図8に示す。
なお、これら図5〜図8については、二次巻線N2及び二次側整流回路の構成のみが抜き出されて示されているが、図示されていない他の部分は、絶縁コンバータトランスPITの構造も含めて、先に説明した実施の形態としての構成が採られればよい。つまり、チョークコイルPCCと絶縁コンバータトランスPITとがそれぞれ独立した部品とされてもよいし、チョークコイルPCCに巻装されるべきチョークコイル巻線N10を絶縁コンバータトランスの構造に含めた、複合絶縁コンバータトランスC−PITとされてもよい。
【0113】
先ず、図5に示す電源回路では、二次巻線N2と二次側直列共振コンデンサC2の直列接続回路(二次側直列共振回路)に接続される二次側整流回路として、4本の整流ダイオードDo1,Do2,Do3,Do4から成るブリッジ整流回路と、1本の平滑コンデンサCoから成るブリッジ全波整流回路を備える。
この場合、二次巻線N2の巻き終わり端部は、二次側直列共振コンデンサC2を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードの接続点に接続する。また、二次巻線N2の巻始め端部を、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードの接続点に接続する。整流ダイオードDo1のカソードと整流ダイオードDo3のカソードを平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アース電位にて、整流ダイオードDo2のアノードと整流ダイオードDo4のアノードの接続点と接続される。
【0114】
上記のようにして形成される全波整流回路によっては、二次巻線N2に誘起(励起)される交番電圧の一方の半周期において、ブリッジ整流回路の整流ダイオード[Do1,Do4]の組が導通して、平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。また、二次巻線N2に誘起される交番電圧の他方の半周期においては、整流ダイオード[Do2,Do3]の組が導通して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する動作が得られる。
これによって平滑コンデンサCoの両端電圧として、二次巻線N2に誘起される交番電圧のレベルの等倍に対応したレベルの二次側直流出力電圧Eoが生成される。
【0115】
図6に示す電源回路は、二次側整流回路として倍電圧全波整流回路を備える。
この場合の倍電圧全波整流回路としては、先ず、二次巻線N2についてセンタータップを施すことで、このセンタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに2分割する。二次巻線部N2A,N2Bには、同じ所定巻数(ターン数)が設定される。二次巻線N2のセンタータップは、二次側アースに接続される。
また、二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC2Aを直列に接続し、二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部に対しては二次側直列共振コンデンサC2Bを直列に接続する。これにより、二次巻線部N2Aのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC2Aのキャパシタンスから成る第1の二次側直列共振回路と、二次巻線部N2Bのリーケージインダクタンス成分と二次側直列共振コンデンサC2Bのキャパシタンスから成る第2の二次側直列共振回路とが形成される。
【0116】
そして、二次巻線N2における二次巻線N2A側の端部を、上記二次側直列共振コンデンサC2Aの直列接続を介して整流ダイオードDo1のアノードと整流ダイオードDo2のカソードとの接続点に対して接続する。また、二次巻線N2における二次巻線N2B側の端部を、二次側直列共振コンデンサC2Bの直列接続を介して、整流ダイオードDo3のアノードと整流ダイオードDo4のカソードとの接続点に対して接続する。
整流ダイオードDo1,Do3の各カソードは、平滑コンデンサCoの正極端子に接続する。平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースに接続される。また、整流ダイオードDo2,Do4の各アノードの接続点は二次側アースに接続する。
【0117】
上記接続形態では、二次巻線部N2A,二次側直列共振コンデンサC2A、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第1の二次側直列共振回路を備える第1の倍電圧半波整流回路と、二次巻線部N2B,二次側直列共振コンデンサC2B、整流ダイオードDo1,Do2、及び平滑コンデンサCoから成る、第2の二次側直列共振回路を備える第2の倍電圧半波整流回路とが形成されることになる。
第1の倍電圧半波整流回路では、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→整流ダイオードDo2→二次側直列共振コンデンサC2A→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行い、二次巻線部N2Aの交番電圧の電位により二次側直列共振コンデンサC2Aに対する充電を行う。他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2A→二次側直列共振コンデンサC2A→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2A]の整流電流経路により整流動作を行うことで、二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧と二次巻線N2Aの交番電圧の重畳電位により、平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
また、第2の倍電圧半波整流回路は、二次巻線N2に誘起される交番電圧の、上記他方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→整流ダイオードDo4→二次側直列共振コンデンサC2B→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次巻線部N2Aの交番電圧の電位により、二次側直列共振コンデンサC2Bを充電し、上記一方の極性の半周期の期間において、[二次巻線部N2B→二次側直列共振コンデンサC2B→整流ダイオードDo3→平滑コンデンサCo→二次巻線部N2B]の整流電流経路により整流動作を行って、二次側直列共振コンデンサC2Bの両端電圧と二次巻線N2Bの交番電圧の重畳電位により平滑コンデンサCoに対する充電を行う。
【0118】
上記した整流動作によれば、平滑コンデンサCoに対しては、二次巻線N2の交番電圧の、一方の極性の半周期では、二次巻線部N2Bの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC2Bの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われ、他方の極性の半周期では、二次巻線部N2Aの誘起電圧と二次側直列共振コンデンサC2Aの両端電圧の重畳電位による整流電流の充電が行われることとなる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧である二次側直流出力電圧Eoとしては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベルの2倍に対応するレベルが得られることになる。つまり、倍電圧全波整流回路が得られている。
【0119】
図7に示す回路は、二次側整流回路として両波整流回路を備える。この場合の両波整流回路は、次のようにして形成されている。
先ず、二次巻線N2については、センタータップを施すことで、センタータップを境界にして二次巻線部N2A,N2Bに分割する。センタータップは二次側アースに接続する。
そのうえで、両波整流回路を形成する部品素子として、この場合には、2本の整流ダイオードDo1,Do2、及び1本の平滑コンデンサCoを備える。整流ダイオードDo1のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2A側の端部と接続し、整流ダイオードDo2のアノードを二次巻線N2における二次巻線部N2B側の端部と接続する。整流ダイオードDo1,Do2のカソードを共に平滑コンデンサCoの正極端子に接続し、平滑コンデンサCoの負極端子は二次側アースにて、二次巻線N2のセンタータップと接続する。
【0120】
このようにして形成される二次側両波整流回路では、二次巻線N2に誘起される二次巻線電圧の一方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NA→整流ダイオードDo1→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。また、二次巻線電圧V3の他方の極性の半周期に対応しては、二次巻線部NB→整流ダイオードDo2→平滑コンデンサCoの経路で整流電流が流れて平滑コンデンサCoに充電を行う。このようにして、二次巻線電圧の正負の各半周期の期間に対応して平滑コンデンサCoに対して整流電流を充電する両波整流動作が行われる。これにより、平滑コンデンサCoの両端電圧としては、二次巻線部N2A,N2Bの誘起電圧レベルの等倍に対応するレベルの二次側直流出力電圧Eoが得られる。
この図7に示す例では、二次側整流回路を両波整流回路としたことに応じて、二次側直列共振コンデンサを備えない構成を示している。なお、確認のために、これまでの説明から導かれるように、この図7及び次の図8に示すようにして、二次側直列共振回路を備えない電源回路の構成とした場合においても、本実施の形態としては、中間負荷時においてZVSが得られなくなる異常動作が解消され、対応負荷電力の全領域範囲にわたって正常なスイッチング動作となる。
【0121】
図8に示す回路は、二次側整流回路として、二次側直列共振コンデンサC2が省略されたうえで、ブリッジ全波整流回路を備える。ブリッジ全波整流回路の回路構成自体は、図5と同様であることから、ここでの説明は省略する。
【0122】
続いて、図9、図10により、第2の実施の形態の電源回路における一次側と二次側との電力伝達部位についての変形例を示す。なお、これらの図においては、商用交流電源ACのノイズフィルタ(CMC、CL、CL)、商用交流電源ACを整流平滑化する整流平滑回路(Di、Ei)、スイッチング素子Q1、及び制御回路1,発振・ドライブ回路2の図示は省略されているが、これらは、図3に示した回路形態に準じて、図9、図10に示す所定の回路部位と接続されるものとなる。
【0123】
図9に示す回路では、一次巻線N1及び二次巻線N2が巻装される絶縁コンバータトランスPITと、絶縁コンバータトランスPIT−1が備えられる。絶縁コンバータトランスPITには一次巻線N1及び二次巻線N2が直流的に絶縁された状態で巻装され、絶縁コンバータトランスPIT−1には、所定の巻数により、一次側にチョークコイル巻線N10を巻装し、二次側に二次側重畳用巻線N13を巻装する。また、チョークコイル巻線N10と二次側重畳用巻線N13とは直流的に絶縁された状態で巻装される。
【0124】
チョークコイル巻線N10の巻き終わり端部は、ここでは図示していない平滑コンデンサCiの正極端子と接続され、チョークコイル巻線N10の巻始め端部は、一次巻線N1の巻き始め端部、一次側並列共振コンデンサCrの一方の極端部、及び一次側直列共振コンデンサC11の一方の極端部との接続点に対して接続される。
【0125】
二次側重畳用巻線N13の巻始め端部は二次巻線N2の巻始め端部と接続され、二次側重畳用巻線N13の巻終わり端部は二次側直列共振コンデンサC2の一方の極と接続される。つまり、この場合の電源回路の二次側は、二次側重畳用巻線N13と二次巻線N2の直列接続に対して、さらに直列に二次側直列共振コンデンサC2が接続される。そして、この二次側重畳用巻線N13と二次巻線N2による合成インダクタンスと、二次側直列共振コンデンサC2のキャパシタンスとにより二次側直列共振回路が形成される。そのうえで、この二次側直列共振回路の二次側直列共振コンデンサC2を含むようにして倍電圧半波整流回路が設けられる。
【0126】
このような構成では、チョークコイル巻線N10に発生する共振パルス電圧が、絶縁コンバータトランスPIT−1における磁気結合を介するようにして二次側重畳用巻線N13にも誘起され、この誘起電圧が、二次側重畳用巻線N13と直列に接続された二次巻線N2に重畳する。これにより、二次巻線N2に生じる交番電圧のレベルが増加して、二次側の整流動作に応じて流れる電流も低減させる作用を生じる。これにより、二次側における整流ダイオードその他の部品におけるスイッチング損失、導通損などが低減されて、このことが電力変換効率の向上に寄与することになる。
【0127】
次に、図10に示す回路構成では、上記図9に示す構成に対して、さらに一次側重畳用巻線N3が設けられている。この一次側重畳用巻線N3は、チョークコイル巻線N10の巻き始め端部側に対して追加的に巻装されるようにして設けられている。この場合、チョークコイル巻線N10の、一次側重畳用巻線N3と接続される側の端部は、一次側並列共振コンデンサCrの一方の極端部と、一次側直列共振コンデンサC11の一方の極端部との接続点に対して接続される。一次側重畳用巻線N3のチョークコイル巻線N10と接続されない側の端部は、一次巻線N1の巻き始め端部と接続される。この場合のチョークコイル巻線N10と一次側重畳用巻線N3との結合度は例えば結合係数k=0.99程度で示され、磁気的に密結合の状態が得られる。
【0128】
この回路構成では、絶縁コンバータトランスPIT−1において、チョークコイル巻線N10に発生した共振パルス電圧が、一次側重畳用巻線N3に誘起され、さらに一次側重畳用巻線N3に誘起された共振パルス電圧が一次巻線電圧V2に重畳する。この結果、一次巻線電圧V2には、先ず、図1により説明したのと同様にして、一次巻線電圧のレベルの増加による一次側での電力損失の低減効果が生じる。また、これとともに、上記図9により説明した、二次側重畳用巻線N13を備えることによる二次巻線電圧レベルの増加による二次側での電力損失の低減効果を生じる。このようにして、図10に示す回路としても、電力変換効率の向上が図られる。
また、図10に示す回路構成を採る場合においては、チョークコイル巻線N10、一次側重畳用巻線N3、及び一次巻線N1の直列接続回路と、一次側並列共振コンデンサCrと一次側直列共振コンデンサC11の直列接続回路との並列接続に基づき、第1の一次側並列共振回路が形成されるものとしてみることができる。このことから、一次側重畳用巻線N3は、チョークコイル巻線N10を延長したものとして、本発明における第1のインダクタとして扱うことができる。
また、第2の一次側並列共振回路は、一次巻線N1と一次側重畳用巻線N3による直列接続回路と、一次側並列共振コンデンサCrとの並列接続に基づいて形成される。
また、第1の直列共振回路は、一次巻線N1、三次巻線N3、及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続に基づいて形成され、第2の直列共振回路は、チョークコイル巻線N10及び一次側直列共振コンデンサC11の直列接続に基づいて形成される。
【0129】
なお、図示による説明は省略するが、本実施の形態としては、少なくとも二次側において、部分電圧共振回路が形成されるようにして、部分電圧共振コンデンサを備えてもよい。二次側部分電圧共振回路は、少なくとも二次巻線N2のリーケージインダクタンスL2と部分電圧共振コンデンサのキャパシタンスによって形成され、二次側整流ダイオードがターンオン/ターンオフするタイミングで部分電圧共振動作を行う。この部分電圧共振動作により、二次側整流ダイオードに流れようとする電流が、二次側部分電圧共振コンデンサに流れ、整流ダイオードにおける導通損、スイッチング損失が低減される。
【0130】
また、本発明としては、上記各実施の形態として示した構成に限定されるものではない。例えば、一次側のスイッチングコンバータの細部の回路形態や、二次側整流回路の構成などは他にも考えられるものである。
また、メインスイッチング素子(及び補助スイッチング素子)については、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタなど、MOS−FET以外の素子を選定することも考えられる。また、上記各実施の形態では、他励式のスイッチングコンバータを挙げているが、自励式として構成した場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態としての電源回路における要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
【図3】第2の実施の形態としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図4】第2の実施の形態としての電源回路における要部の動作をスイッチング周期により示す波形図である。
【図5】実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての構成例を示す回路図である。
【図6】実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての他の構成例を示す回路図である。
【図7】実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての他の構成例を示す回路図である。
【図8】実施の形態の電源回路に対応する二次側の変形例としての他の構成例を示す回路図である。
【図9】第2の実施の形態の電源回路に対応する変形例としての構成例を示す回路図である。
【図10】第2の実施の形態の電源回路に対応する変形例としての他の構成例を示す回路図である。
【図11】実施の形態の電源回路に備えられる絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図12】実施の形態の電源回路に備えられる複合絶縁コンバータトランスの構造例を示す図である。
【図13】実施の形態の電源回路に備えられる複合絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図14】実施の形態の電源回路に備えられる複合絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図15】実施の形態の電源回路に備えられる複合絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図16】実施の形態の電源回路に備えられる複合絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図17】実施の形態の電源回路に備えられる複合絶縁コンバータトランスの他の構造例を示す図である。
【図18】E級スイッチングコンバータの基本構成例を示す回路図である。
【図19】図18に示すE級スイッチングコンバータの動作を示す波形図である。
【図20】図18に示すE級スイッチングコンバータを適用したスイッチング電源回路の構成例を示す回路図である。
【図21】従来例としての電源回路の構成例を示す回路図である。
【図22】図21に示した電源回路の要部の動作を示す波形図である。
【図23】図21に示した電源回路についての、負荷変動に対するAC→DC電力変換効率、スイッチング周波数、スイッチング素子のオン期間の変動特性を示す図である。
【図24】従来の電源回路についての定電圧制御特性を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0132】
1 制御回路、2 発振・ドライブ回路、Di ブリッジ整流回路、Ci 平滑コンデンサ、Q1 スイッチング素子、PIT・PIT−1 絶縁コンバータトランス、C−PIT 複合絶縁コンバータトランス、N10 チョークコイル巻線、Cr 一次側並列共振コンデンサ、N1 一次巻線、N2(N2A,N2B) 二次巻線、N3 一次側重畳用三次巻線、N13 二次側重畳用巻線、C11 一次側直列共振コンデンサ、Do1,Do2,Do3,Do4 (二次側)整流ダイオード、Co (二次側)平滑コンデンサ、C2 二次側直列共振コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも整流素子と平滑コンデンサを備えて形成され、商用交流電源を入力して整流平滑化することで、上記平滑コンデンサの両端電圧として整流平滑電圧を生成する整流平滑回路と、
上記整流平滑電圧を直流入力電圧として入力してスイッチングを行うスイッチング素子と、
上記スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動手段と、
上記整流平滑電圧が上記スイッチング素子に入力される経路に対して挿入される第1のインダクタと、
上記スイッチング素子のスイッチングに応じて共振動作を行い、少なくとも第2のインダクタのインダクタンスと、該第2のインダクタのインダクタンスと直列となる関係により接続される一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第1の一次側直列共振回路と、
上記スイッチング素子のスイッチングに応じて共振動作を行い、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと、該第1のインダクタのインダクタンスと直列となる関係により接続される一次側直列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第2の一次側直列共振回路と、
上記スイッチング素子のスイッチングに応じて共振動作を行い、少なくとも上記第1のインダクタのインダクタンスと、該第1のインダクタと直列に接続される関係となるようにされた上記第2のインダクタのインダクタンスと、上記第1のインダクタ及び第2のインダクタの直列接続回路に対して並列となる関係により接続される一次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第1の一次側並列共振回路と、
少なくとも、上記第2のインダクタを一次巻線として巻装するとともに、該一次巻線に得られたスイッチング出力により交番電圧が誘起される二次巻線を巻装して形成され、疎結合とみなされる所要の一次側と二次側との結合係数が得られるようにされたコンバータトランスと、
上記コンバータトランスの二次巻線に誘起される交番電圧を入力して整流動作を行って、二次側直流出力電圧を生成するように構成された二次側直流出力電圧生成手段と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
少なくとも上記第2のインダクタのインダクタンスと、該第2のインダクタと並列となる関係が得られるようにして接続した上記一次側並列共振コンデンサのキャパシタンスとによって形成される第2の一次側並列共振回路をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−345633(P2006−345633A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168594(P2005−168594)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】