説明

スイッチング電源装置

【課題】スイッチング電源装置の入力平滑コンデンサのハーフショートが生じた場合に、簡単な回路構成で不安全な状態になることを回避する。
【解決手段】電源ラインA,B間を、入力平滑コンデンサC1とスイッチ素子SW1との直列回路で接続する。また、入力平滑コンデンサC1のハーフショートが発生した場合に、入力平滑コンデンサC1に発生するリップル電圧を検知するリップル電圧検知回路15を備える。そして、リップル電圧検知回路15がリップル電圧を検知したときに、スイッチ素子SW1を遮断状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流−直流コンバータ(AC−DCコンバータ)あるいは直流−直流(DC−DC)コンバータに備えられ、安定した直流電圧を出力するスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機、プリンタ、ファックス、AV機器、液晶テレビ、プラズマディスプレイパネル、通信端末など、様々な電子機器において、商用交流電源を整流・平滑化して得られた直流電圧を高周波でスイッチングし、小型の変圧器を用いて所望の電圧に高効率で変換するようにしたスイッチング電源装置が広く用いられている。
【0003】
このようなスイッチング電源装置の代表的な構成としては、変圧器の1次側に印加される直流電圧をスイッチングする主スイッチング素子を備え、変圧器の2次側出力電圧を電圧検出回路で検出し、その検出結果に応じて制御回路が主スイッチング素子のスイッチングパルス幅を制御することにより、所望の2次側出力電圧を得るようにしたパルス幅変調(PWM)方式のスイッチング電源装置がある。
【0004】
図7は、従来の一般的なスイッチング電源装置130の構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置130は、入力端子105、ヒューズ106、フィルタ回路103、ブリッジダイオード104、入力平滑コンデンサC101、変圧器108、主スイッチング素子101、ダイオード109、出力平滑コンデンサ110、分圧抵抗112および分圧抵抗113、比較回路114、制御回路102、出力端子111を備えている。
【0005】
商用電源から入力端子105に入力された交流電圧は、フィルタ回路103でノイズ成分を除去された後、ブリッジダイオード104および入力平滑コンデンサC101によって整流される。この整流によって得られた直流電圧は、ハイレベル側の電源ラインAとローレベル側の電源ラインBとの間に入力される。
【0006】
電源ラインA、B間には、変圧器108の1次巻線n101と主スイッチング素子101との直列回路が接続されている。主スイッチング素子101は、主スイッチング素子101は、制御回路102によってオン/オフ制御される。
【0007】
主スイッチング素子101がオンになると、1次巻線n101に励磁エネルギが蓄積される。この励磁エネルギは主スイッチング素子101のオフ時に2次巻線n102側に誘起され、ダイオード109および出力平滑コンデンサC110で平滑化された後、出力端子111を介して出力される。
【0008】
出力端子111の出力電圧は、分圧抵抗112、113によって分圧されて比較回路114に入力される。比較回路114は、出力電圧の分圧値と基準電圧とを比較し、比較結果を制御回路102にフィードバックする。
【0009】
制御回路102は、比較回路114から入力された上記比較結果に基づいて、スイッチング電源装置130の出力電圧が一定値になるように、主スイッチング素子101のスイッチングを制御(PWM(Pulse Width Modulation)制御)する。
【0010】
また、スイッチング電源装置130は、入力端子105の一端とフィルタ回路103との間に接続されたヒューズ(過電流防止手段)106を備えている。ヒューズ106は、所定量以上の電流が流れたときに溶断してスイッチング電源装置130を商用電源から遮断するものである。
【0011】
また、特許文献1には、トランスの2次側に接続された負荷に印加される出力電圧を検出する低電圧検出回路を備え、上記出力電圧が所定値以下に低下したことを低電圧検出回路が検出したときに、トランスの2次側から1次側への帰還を遮断し、スイッチング電源回路を停止させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−153529号公報(公開日:2003年5月23日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
電子機器に対しては、世界標準の安全規格としてのIEC規格を始めとして、UL規格(アメリカ)、CSA規格(カナダ)、BS規格(イギリス)などさまざまな安全規格が規定されている。また、日本では電気用品安全法が、平成13年4月1日から施行されている。
【0013】
例えば日本の場合、安全規格の認証時には、電子機器に発生する可能性のある異物の接触、配線処理の不都合、ハンダ付けの不良等の現象を想定して、部品の両端あるいは端子間を短絡した場合および部品の一方の端を開放した場合に、発煙および発火等の不安全な状態が発生しないか確認するために短絡開放試験が行われている。
【0014】
しかしながら、上記従来のスイッチング電源装置は、電子機器の製造・出荷段階では安全規格を満たしていたとしても、入力平滑コンデンサC101が劣化して絶縁抵抗が低下すると、入力平滑コンデンサC101に流れる漏れ電流が増大してしまい(所謂、ハーフショート)、ヒューズ106が溶断するまでにブリッジダイオード104、フィルタ回路103が過熱されてしまうという問題がある。
【0015】
つまり、スイッチング電源装置130の製造・出荷時には安全規格により定められた基準を満たしていたとしても、例えば保証期間を超えて使用したり、不適切な使用条件で使用したりすることにより、入力平滑コンデンサC101が劣化して絶縁抵抗が低下する可能性がある。そして、入力平滑コンデンサC101の漏れ電流が増大した場合、漏れ電流が増大し始めてからヒューズ106が溶断するまでにはタイムラグがあるため、ヒューズ106が溶断するまでに入力平滑コンデンサC101よりも前段に備えられたブリッジダイオード104、フィルタ回路103に過大な電流が流れて過熱してしまうおそれがある。また、入力平滑コンデンサC101の漏れ電流の増大後にヒューズ106に流れる電流の電流値がこのヒューズ106を溶断させる大きさに達しないためにヒューズ106が溶断されず、ブリッジダイオード104、フィルタ回路103の過熱が生じてしまう場合がある。
【0016】
また、上記特許文献1の技術では、ハーフショートが生じてからスイッチング電源回路が停止するまでに要する時間が長いため、スイッチング電源回路が停止するまでに入力平滑コンデンサC101よりも前段に備えられた回路に過大な電流が流れて過熱してしまうおそれがある。つまり、上記特許文献1の技術では、ハーフショートが生じてからそれに起因して出力電圧が所定値以下になったことを検出するまでに要する時間が長く、また、出力電圧が所定値以下になったことを検出してからトランスの2次側から1次側への帰還を遮断してスイッチング電源回路を停止させるまでに要する時間が長い。このため、ハーフショートが生じてからスイッチング電源回路を停止するまでに、入力平滑コンデンサC101よりも前段に備えられた回路に過大な電流が流れてしまう。
【0017】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡単な回路構成で入力平滑コンデンサの漏れ電流の増大に起因する過熱を防止できるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1のスイッチング電源装置は、上記の課題を解決するために、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、上記1次巻線に対して並列に接続され、上記1次巻線に入力される直流電圧を平滑化する入力平滑コンデンサと、上記直流電圧をスイッチングして上記2次巻線にパルスとして出力させる主スイッチング手段と、上記パルスを平滑化して出力する出力手段と、上記出力手段からの出力電圧が一定になるように上記主スイッチング手段のスイッチング動作を制御する制御手段とを備えたスイッチング電源装置であって、上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記入力平滑コンデンサに対して直列に接続された第1副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第1副スイッチ手段を導通状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第1副スイッチ手段を遮断状態にすることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記入力平滑コンデンサに対して直列に接続された第1副スイッチ手段とを備えている。この第1副スイッチ手段は、正常動作時(漏れ電流の電流値が所定値未満である時)には導通状態とされるので、入力平滑コンデンサに電圧が印加され、入力平滑コンデンサは印加された電圧を平滑化することができる。一方、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときには、第1副スイッチ手段は遮断状態にされる。これにより、入力平滑コンデンサへの電圧印加を遮断し、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0020】
また、上記の構成に加えて、第1端子および第2端子を有し、電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第2副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第2副スイッチ手段を導通状態にする構成としてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、第1端子および第2端子を有し、電圧供給源に接続される入力部と、上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との接続点と上記第1端子との間に接続された過電流遮断手段と、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備えている。この第2副スイッチ手段は、正常動作時には遮断されているので、スイッチング電源装置におけるスイッチング動作には寄与しない。一方、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときには、第2副スイッチ手段は導通状態にされる。これにより、第2副スイッチ手段を介して電流が流れることによって過電流遮断手段に流れる電流が増加する。したがって、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0022】
本発明の第2のスイッチング電源装置は、上記の課題を解決するために、第1端子および第2端子を有し、電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、上記1次巻線に対して並列に接続され、上記1次巻線に入力される直流電圧を平滑化する入力平滑コンデンサと、上記直流電圧をスイッチングして上記2次巻線にパルスとして出力させる主スイッチング手段と、上記パルスを平滑化して出力する出力手段と、上記出力手段からの出力電圧が一定になるように上記主スイッチング手段のスイッチング動作を制御する制御手段とを備えたスイッチング電源装置であって、上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第2副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第2副スイッチ手段を導通状態にすることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、第1端子および第2端子を有し、電圧供給源に接続される入力部と、上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との接続点と上記第1端子との間に接続された過電流遮断手段と、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備えている。この第2副スイッチ手段は、正常動作時には遮断されているので、スイッチング電源装置におけるスイッチング動作には寄与しない。一方、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときには、第2副スイッチ手段は導通状態にされる。これにより、第2副スイッチ手段を介して電流が流れることによって過電流遮断手段に流れる電流が増加する。したがって、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0024】
なお、上記第2副スイッチ手段と上記主スイッチング手段との並列回路が、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続されている構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、上記第2副スイッチ手段と上記主スイッチング手段との並列回路が、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続されている。したがって、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに第2副スイッチ手段が導通状態にされると、主スイッチング手段の両端子間が短絡して過電流遮断手段に流れる電流が増加する。これにより、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0026】
また、上記第2副スイッチ手段と上記入力平滑コンデンサとの並列回路が、上記1次巻線に対して並列に接続されている構成としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、上記第2副スイッチ手段と上記入力平滑コンデンサとの並列回路が、上記1次巻線に対して並列に接続されている。したがって、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに第2副スイッチ手段が導通状態にされると、入力平滑コンデンサの両端子間が短絡して過電流遮断手段に流れる電流が増加する。これにより、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0028】
また、上記いずれかの構成において、第1端子および第2端子を有し、交流電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、上記過電流遮断手段および上記第2端子に接続されたフィルタ回路と、上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流回路と、上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第3副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第3副スイッチ手段を導通状態にする構成としてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、第1端子および第2端子を有し、交流電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、上記過電流遮断手段および上記第2端子に接続されたフィルタ回路と、上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段と、上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備えている。この第3副スイッチは、正常動作時には遮断されているので、スイッチング電源装置におけるスイッチング動作には寄与しない。一方、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときには、第3副スイッチ手段は導通状態にされる。これにより、第3副スイッチ手段を介して電流が流れることによってフィルタ手段が短絡し、過電流遮断手段に流れる電流が増加する。したがって、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0030】
本発明の第3のスイッチング電源装置は、第1端子および第2端子を有し、交流電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、上記過電流遮断手段および上記第2端子に接続されたフィルタ回路と、上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段と、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、上記1次巻線に対して並列に接続され、上記1次巻線に入力される直流電圧を平滑化する入力平滑コンデンサと、上記直流電圧をスイッチングして上記2次巻線にパルスとして出力させる主スイッチング手段と、上記パルスを平滑化して出力する出力手段と、上記出力手段からの出力電圧が一定になるように上記主スイッチング手段のスイッチング動作を制御する制御手段とを備えたスイッチング電源装置であって、上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第3副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第3副スイッチ手段を導通状態にすることを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、第1端子および第2端子を有し、交流電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、上記過電流遮断手段および上記第2端子に接続されたフィルタ回路と、上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段と、上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備えている。この第3副スイッチは、正常動作時には遮断されているので、スイッチング電源装置におけるスイッチング動作には寄与しない。一方、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときには、第3副スイッチ手段は導通状態にされる。これにより、第3副スイッチ手段を介して電流が流れることによってフィルタ手段が短絡し、過電流遮断手段に流れる電流が増加するので、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0032】
上記いずれかの構成において、上記検知手段は、上記入力平滑コンデンサに印加される電圧の電圧値あるいは電圧値の変動幅が所定値以上になったことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する構成であってもよい。
【0033】
入力平滑コンデンサの漏れ電流が増大した場合、この入力平滑コンデンサにはリップル電圧(直流電圧出力に含まれる交流成分)が発生する。上記の構成によれば、上記入力平滑コンデンサに印加される電圧の電圧値あるいは電圧値の変動幅が所定値以上になったことを検知することで上記リップル電圧が生じたことを検知し、入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを間接的に検知することができる。
【0034】
また、上記検知手段は、上記入力平滑コンデンサに流れる電流、または上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との並列回路に流れる電流の電流値が所定値以上になったことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する構成としてもよい。
【0035】
入力平滑コンデンサの漏れ電流が増大した場合、入力平滑コンデンサに流れる電流および上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との並列回路に流れる電流が増大する。上記の構成によれば、上記入力平滑コンデンサに流れる電流が所定値以上になったことを検知することで、入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを直接的に検知できる。あるいは、入力平滑コンデンサと1次巻線との並列回路に流れる電流の電流値が所定値以上になったことを検知することで、入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを間接的に検知することができる。
【0036】
また、上記検知手段は、上記変圧器の1次側に備えられる部材の温度が所定値以上に昇温したことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する構成としてもよい。
【0037】
入力平滑コンデンサの漏れ電流が増大した場合、入力平滑コンデンサに対して直列に接続された部材に流れる電流および上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との並列回路に対して直列に接続された部材に流れる電流が増大する。このため、これらの部材の温度が正常動作時よりも上昇する。上記の構成によれば、入力平滑コンデンサに直列に対して接続される部材、または上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との並列回路に対して直列に接続される部材の温度が所定値以上に昇温したことを検知することで、入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを間接的に検知することができる。
【0038】
例えば、交流電圧供給源に接続される入力部と、上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段とを備え、上記検知手段は、上記整流手段の温度が所定値以上に昇温したことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する構成としてもよい。
【0039】
上記の整流手段は、当該回路に流れる電流の増加によって昇温しやすい。このため、この整流手段の温度が所定値以上に昇温したことを検知することで、入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを適切に検出できる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明の第1のスイッチング電源装置は、上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記入力平滑コンデンサに対して直列に接続された第1副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第1副スイッチ手段を導通状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第1副スイッチ手段を遮断状態にする。
【0041】
それゆえ、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに、入力平滑コンデンサへの電圧印加を遮断し、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0042】
また、本発明の第2のスイッチング電源装置は、上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第2副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第2副スイッチ手段を導通状態にする。
【0043】
それゆえ、検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに、第2副スイッチ手段を介して電流を流すことで過電流遮断手段に流れる電流を増加させ、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0044】
本発明の第3のスイッチング電源装置は、上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備え、正常動作時には上記第3副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第3副スイッチ手段を導通状態にする。
【0045】
それゆえ、検知手段が入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに、第3副スイッチ手段を介して電流が流れてフィルタ手段が短絡し、過電流遮断手段に流れる電流が増加する。これにより、過電流遮断手段を素早く作動させてスイッチング電源装置に流れる電流を遮断させることができる。したがって、入力平滑コンデンサの漏れ電流に起因してスイッチング電源装置が不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30aの概略構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置30aは、入力部5、ヒューズ6、フィルタ回路3、ブリッジダイオード4、リップル電圧検知回路15、スイッチ素子SW1、入力平滑コンデンサC1、変圧器8、主スイッチング素子1、ダイオード9、出力平滑コンデンサ10、分圧抵抗12および分圧抵抗13、比較回路14、制御回路2、出力端子11を備えている。
【0047】
入力部5は、第1端子5aおよび第2端子5bを有し、これら両端子が商用電源(図示せず)に接続されており、交流電圧(例えばAC100V)を印加される。
【0048】
ヒューズ(過電流遮断手段)6は、入力部5の第1端子5aとフィルタ回路3の一方の入力端子との間に備えられており、所定量以上の電流が流れたときに溶断してスイッチング電源装置30aへの電力供給を遮断する。なお、本実施形態では、ヒューズ6として定格電流5Aのもの(Littelfuse社製、型番237005)を用いた。図8は、ヒューズ6に流れる電流とヒューズ6の溶断時間との関係を示すグラフである。この図に示すように、ヒューズ6は、定格電流(5A)を10000秒以上流しても溶断しないが、定格電流の2倍(10A)の電流を流すと約1秒で溶断するようになっている。
【0049】
フィルタ回路(フィルタ手段)3は、一方の入力端子をヒューズ6に接続され、他方の入力端子を入力部5の第2端子5bに接続されており、入力された交流電圧からノイズ成分を除去する。
【0050】
ブリッジダイオード(整流手段)4は、4つのダイオード4a〜4dからなるブリッジ回路である。ダイオード4aのカソードおよびダイオード4bのアノードは、フィルタ回路3の一方の出力端子に共通に接続されており、ダイオード4cのカソードおよびダイオード4dのアノードは、フィルタ回路3の他方の出力端子に共通に接続されている。ダイオード4aのアノードおよびダイオード4cのアノードは、ローレベル側の電源ラインBに共通に接続されており、ダイオード4bのカソードおよびダイオード4dのカソードは、ハイレベル側の電源ラインに共通に接続されている。これにより、ブリッジダイオード4は、フィルタ回路3から入力された交流電圧を全波整流して、ローレベル側の電源ラインBとハイレベル側の電源ラインAとの間に脈流電圧を出力する。
【0051】
リップル電圧検知回路(検知手段)15は、入力平滑コンデンサC1にハーフショート(漏れ電流の増大)が生じたときにこの入力平滑コンデンサC1に発生するリップル電圧(直流電圧出力に含まれる交流成分)を検出し、検出結果に応じてスイッチ素子SW1の開閉を制御するものであり、ハイレベル側の電源ラインAに直列に接続されている。より具体的には、リップル電圧検知回路15は、入力平滑コンデンサC1とスイッチ素子SW1との直列回路と変圧器8の1次巻線n1と主スイッチング素子1との直列回路との接続点とブリッジダイオード4との間に直列接続されている。
【0052】
電源ラインAとBとは、入力平滑コンデンサC1とスイッチ素子(第1副スイッチ手段)SW1との直列回路によって接続されている。なお、スイッチ素子SW1の構成は特に限定されるものではなく、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態と遮断状態とに切り替えられるものであればよい。
【0053】
入力平滑コンデンサC1は、ブリッジダイオード4から出力される脈流電圧を平滑化するものである。つまり、ブリッジダイオード4と入力平滑コンデンサC1とからなる主電源回路によって入力された交流電圧が整流され、この整流により得られた直流電圧がハイレベル側の電源ラインAとローレベル側の電源ラインBとの間に入力されるようになっている。
【0054】
また、電源ラインA、B間には、主スイッチング素子1と変圧器8の1次巻線n1との直列回路が接続されている。つまり、入力平滑コンデンサC1とスイッチ素子SW1との直列回路と、主スイッチング素子1と変圧器8の1次巻線n1との直列回路とが電源ラインA,B間に並列に接続されている。
【0055】
主スイッチング素子(主スイッチング手段)1は、制御回路2によってオン/オフ制御され、変圧器8の1次巻線n1に印加される直流電圧をスイッチングし、2次巻線n2にパルスとして出力させる。なお、本実施形態では主スイッチング素子1としてNチャネル型の電界効果型トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いているが、これに限らず、主スイッチング素子1はスイッチング機能を有しているものであればよい。例えば、Pチャネル型の電界効果型トランジスタを用いてもよく、バイポーラトランジスタ等の他のタイプのスイッチング素子を用いてもよい。
【0056】
変圧器8の2次巻線n2の一端は、ダイオード9のアノードに接続されており、ダイオード9のカソードは、出力平滑コンデンサC2を介して2次巻線n2の他端に接続されている。また、ダイオード9のカソードは、分圧抵抗12と比較回路14と分圧抵抗13とを介して2次巻線n2の他端に接続されている。また、ダイオード9のカソードは出力端子11の一端側に接続されており、2次巻線n2の他端は出力端子11の他端側に接続されている。
【0057】
このような構成からなるスイッチング電源装置30aにおいて、正常動作時(漏れ電流の電流値が所定値未満の状態。本実施形態ではスイッチ素子SW1がオン(導通)の状態になる。)に主スイッチング素子1がオンになると、1次巻線n1に励磁エネルギが蓄積される。この励磁エネルギは主スイッチング素子1のオフ時に2次巻線n2側に誘起され、ダイオード9および出力平滑コンデンサC10からなる出力手段で平滑化された後、出力端子11を介して出力される。
【0058】
また、出力端子11の出力電圧は、分圧抵抗12、13によって分圧されて比較回路14に入力される。比較回路14は、出力電圧の分圧値と基準電圧の電圧値とを比較し、比較結果を制御回路2にフィードバックする。
【0059】
制御回路(制御手段)2は、比較回路14から入力された上記比較結果に基づいて、スイッチング電源装置30aの出力電圧が一定値になるように主スイッチング素子1の駆動信号(ゲート電圧)を生成して主スイッチング素子1のゲートに供給し、主スイッチング素子1のスイッチングを制御(PWM制御)する。これにより、スイッチング電源装置30aは安定した直流電圧を出力できるようになっている。
【0060】
次に、入力平滑コンデンサC1にハーフショート(漏れ電流の増大)が生じた場合の動作について説明する。
【0061】
リップル電圧検知回路15は、入力平滑コンデンサC1にハーフショートに伴うリップル電圧(直流電圧出力に含まれる交流成分)が生じることを監視している。リップル電圧検知回路15は、例えば、電源ラインAの電位の変動幅が所定値以上になったことを検知することによって入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知してもよい。
【0062】
そして、リップル電圧を検知すると、リップル電圧検知回路15は、スイッチ素子SW1をオフ(遮断)する。これにより、ハーフショートが生じた入力平滑コンデンサC1への電流供給(電圧供給)を遮断し、入力平滑コンデンサC1の漏れ電流に起因してスイッチング電源装置30aが不安全な状態になることを簡単な回路構成で適切に防止できる。
【0063】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については、実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図2は、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30bの概略構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置30bは、実施形態1に示したスイッチング電源装置30aの構成に加えて、主スイッチング素子1に対して並列に接続されたスイッチ素子(第2副スイッチ手段)SW2を備えている。つまり、主スイッチング素子1とスイッチ素子SW2とからなる並列回路と変圧器8の1次巻線n1との直列回路とが電源ラインA,B間に互いに並列に接続されている。なお、スイッチ素子SW2の構成は特に限定されるものではなく、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態と遮断状態とに切り替えられるものであればよい。
【0065】
スイッチ素子SW2は、正常動作時(漏れ電流の電流値が所定値未満の状態)には遮断されており、リップル電圧検知回路15が
リップル電圧を検知すると、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態に切り替えられる。これにより、入力平滑コンデンサC1の後段に配置された主スイッチング素子1のドレイン・ソース間が短絡し、ヒューズ6の定格電流以上の電流(例えば定格電流の2倍以上の電流)が流れるので、ヒューズ6を素早く溶断させることができ、スイッチング電源装置30bの動作を素早く停止させることができる。したがって、簡単な回路構成で入力平滑コンデンサC1のハーフショートに起因する過熱を防止できる。
【0066】
なお、本実施形態では、スイッチ素子SW1とSW2とを備えた構成について説明したが、これに限らず、例えばスイッチ素子SW1を備えない構成としてもよい。
【0067】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については、実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図3は、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30cの概略構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置30cは、実施形態1に示したスイッチング電源装置30aの構成に加えて、フィルタ回路3の一方の出力端子と他方の出力端子との間に接続されたスイッチ素子(第3副スイッチ素子)SW3、すなわちフィルタ回路3に対して並列に接続されたスイッチ素子SW3を備えている。なお、スイッチ素子SW3の構成は特に限定されるものではなく、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態と遮断状態とに切り替えられるものであればよい。
【0069】
スイッチ素子SW3は、正常動作時(漏れ電流の電流値が所定値未満の状態)には遮断されており、リップル電圧検知回路15が
リップル電圧を検知すると、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態に切り替えられる。これにより、入力平滑コンデンサC1の前段(入力平滑コンデンサC1よりも前段に配置されたフィルタ回路3等)が短絡し、ヒューズ6の定格電流以上の電流(例えば定格電流の2倍以上の電流)が流れるので、ヒューズ6を素早く溶断させることができ、スイッチング電源装置30cの動作を素早く停止させることができる。したがって、簡単な回路構成で入力平滑コンデンサC1のハーフショートに起因する過熱を防止できる。
【0070】
なお、本実施形態では、スイッチ素子SW1とSW3とを備えた構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、スイッチ素子SW1を備えない構成としてもよい。また、スイッチ素子SW1,SW3に加えて、実施形態2に示したSW2を備えた構成としてもよい。
【0071】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については、実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図4は、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30dの概略構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置30dは、実施形態1に示したスイッチング電源装置30aの構成におけるスイッチ素子SW1に変えて、入力平滑コンデンサC1に並列に接続されたスイッチ素子(第2副スイッチ素子)SW4を備えている。つまり、実施形態1にかかるスイッチング電源装置30aでは電源ラインAとBとの間に入力平滑コンデンサC1とスイッチ素子SW1との直列回路が接続されていたが、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30dでは電源ラインAとBとの間に入力平滑コンデンサC1とスイッチ素子SW1との並列回路が接続されている。なお、スイッチ素子SW4の構成は特に限定されるものではなく、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態と遮断状態とに切り替えられるものであればよい。
【0073】
スイッチ素子SW4は、正常動作時(漏れ電流の電流値が所定値未満の状態)には遮断されており、リップル電圧検知回路15が
リップル電圧を検知すると、リップル電圧検知回路15から供給される制御信号によって導通状態に切り替えられる。これにより、入力平滑コンデンサC1(電源ラインA−B間)が短絡し、ヒューズ6の定格電流以上の電流(例えば定格電流の2倍以上の電流)が流れるので、ヒューズ6を素早く溶断させることができ、スイッチング電源装置30cの動作を素早く停止させることができる。したがって、簡単な回路構成で入力平滑コンデンサC1のハーフショートに起因する過熱を防止できる。
【0074】
なお、本実施形態では、スイッチ素子SW4を備えた構成について説明したが、これに限らず、例えば、スイッチ素子SW4に加えて、スイッチ素子SW2,SW3の両方あるいは一方を備えた構成としてもよい。
【0075】
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については、実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図5は、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30eの概略構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置30eは、実施形態1に示したスイッチング電源装置30aにおけるリップル電圧検知回路15に代えて、ブリッジダイオード4に近接して配置された温度検知回路16を備えている。
【0077】
温度検知回路16は、ブリッジダイオード4の温度を検出するものである。温度検知回路16は、ブリッジダイオード4の温度を検出できるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば熱電対を用いた温度検知回路を用いることができる。この場合、例えば、熱電対の一端をブリッジダイオード4の表面近傍に非接触に、あるいはブリッジダイオード4の表面に接触するように配置し、他端を温度検知回路16に接続してブリッジダイオード4のパッケージ表面の温度を測定すればよい。また、サーミスタを用いた温度検知回路を用いてもよい。この場合、例えば、サーミスタをブリッジダイオード4の表面近傍に非接触に、あるいはブリッジダイオード4の表面に接触するように配置し、サーミスタを温度検知回路16に接続してブリッジダイオード4のパッケージ表面の温度を測定すればよい。
【0078】
温度検知回路16は、ブリッジダイオード4の温度検出結果を監視し、検出した温度が所定値以上に達したときに、スイッチ素子SW1を遮断させるための制御信号をスイッチ素子SW1に出力する。つまり、入力平滑コンデンサC1がハーフショートすると、入力平滑コンデンサC1に流れる漏れ電流が増大する結果、C1の前段に配置されたブリッジダイオード4に流れる電流が増大し、ブリッジダイオード4の温度が上昇する。温度検知回路16は、ブリッジダイオード4の温度が所定値以上に昇温したことを検知することによって入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知し、スイッチ素子SW1を遮断状態に切り替える。これにより、実施形態1と同様、ハーフショートが生じた入力平滑コンデンサC1への電流供給を遮断し、漏れ電流の増大によって不安全な状態が生じることを防止できる。
【0079】
なお、本実施形態では、ブリッジダイオード4の温度を検知することによって入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知する構成について説明したが、これに限らず、例えば、入力平滑コンデンサC1に直列に対して接続される部材、または入力平滑コンデンサC1と1次巻線n1との並列回路に対して直列に接続される部材の温度を検知することによって入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知する構成としてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、実施形態1にかかるスイッチング電源装置30aにおいてリップル電圧検知回路15に代えて温度検知回路16を備える構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、実施形態2〜4のいずれかに記載したスイッチング電源装置において、リップル電圧検知回路15に代えて温度検知回路16を備えてもよい。この場合にも、実施形態2〜4と略同様の効果を得ることができる。
【0081】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1と同様の機能を有する部材については、実施形態1と同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図6は、本実施形態にかかるスイッチング電源装置30fの概略構成を示す回路図である。この図に示すように、スイッチング電源装置30fは、実施形態1に示したスイッチング電源装置30aにおけるリップル電圧検知回路15に代えて、ローレベル側の電源ラインBに直列に接続された電流検知回路17を備えている。より具体的には、リップル電圧検知回路15は、電源ラインBにおける、入力平滑コンデンサC1と電源ラインAとの接続点とブリッジダイオード4との間に直列接続されている。
【0083】
電流検知回路17は、電源ラインBに流れる電流を検知し、所定量以上の電流が流れたときにスイッチ素子SW1を遮断させるための制御信号を生成してスイッチ素子SW1に出力する。つまり、入力平滑コンデンサC1がハーフショートすると、入力平滑コンデンサC1に流れる漏れ電流が増大し、電源ラインBに流れる電流が増大する。電流検知回路17は、電源ラインBに所定量以上の電流が流れていることを検知することによって入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知し、スイッチ素子SW1を遮断状態に切り替える。これにより、実施形態1と同様、ハーフショートが生じた入力平滑コンデンサC1への電流供給を遮断し、漏れ電流の増大によって不安全な状態が生じることを防止できる。
【0084】
なお、電流検知回路17は、電源ラインBに直列に接続された微小抵抗値の抵抗器を有している。そして、この抵抗器の両端に現れる降下電圧を検知し、この降下電圧が予め設定された閾値(例えば定格動作時の2倍の電圧)以上になったことを検知することにより、入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知する。ただし、電流検知回路17の構成はこれに限るものではなく、電源ラインBに流れる電流が所定量以上であるかどうかを検知できる構成であればよい。
【0085】
また、本実施形態では、電源ラインBに流れる電流の電流値が所定値以上になったことを検知することによって入力平滑コンデンサC1のハーフショートを検知する構成について説明したが、これに限らず、例えば、入力平滑コンデンサC1に流れる電流、あるいは入力平滑コンデンサC1と1次巻線n1との並列回路に流れる電流の電流値が所定値以上になったことを検知することによって入力平滑コンデンサC1の漏れ電流が所定値以上になったことを検知する構成としてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、実施形態1にかかるスイッチング電源装置30aにおいてリップル電圧検知回路15に代えて電流検知回路17を備える構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、実施形態2〜4のいずれかに記載したスイッチング電源装置において、リップル電圧検知回路15に代えて電流検知回路17を備えてもよい。この場合にも、実施形態2〜4と略同様の効果を得ることができる。
【0087】
また、上記各実施形態では、入力された商用交流電圧を直流電圧に変換するスイッチング電源装置(AC−DCコンバータ)について説明したが、これに限るものではない。本発明は、例えば、入力された直流電圧を変圧した直流電圧を出力するスイッチング電源装置(DC−DCコンバータ)に適用することもできる。この場合には、例えば、ブリッジダイオード4,フィルタ回路3を省略し、ヒューズ6の一端を入力部5の第1端子5aに接続し、他端を電源ラインAに接続するとともに、入力部5の第2端子5bを電源ラインBに接続すればよい。
【0088】
また、上記各実施形態において、ノイズ成分の除去を行う必要がない場合にはフィルタ回路3を省略してもよい。
【0089】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のスイッチング電源装置は、AC−DCコンバータや、DC―DCコンバータに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態にかかるスイッチング電源装置の回路図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかるスイッチング電源装置の回路図である。
【図3】本発明のさらに他の実施形態にかかるスイッチング電源装置の回路図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態にかかるスイッチング電源装置の回路図である。
【図5】本発明のさらに他の実施形態にかかるスイッチング電源装置の回路図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態にかかるスイッチング電源装置の回路図である。
【図7】従来のスイッチング電源装置の回路図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるスイッチング電源装置に備えられるヒューズに流れる電流と、このヒューズの溶断時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0092】
1 主スイッチング素子(主スイッチング手段)
2 制御回路(制御手段)
3 フィルタ回路(フィルタ手段)
4 ブリッジダイオード(整流手段)
5 入力端子(入力部)
6 ヒューズ(過電流遮断手段)
8 変圧器
9 ダイオード(出力手段)
10 出力平滑コンデンサ(出力手段)
11 出力端子(出力手段)
12、13 分圧抵抗(制御手段)
14 比較回路(制御手段)
15 リップル電圧検知回路(検出手段)
16 温度検知回路(検出手段)
17 電流検知回路(検出手段)
30a〜30f スイッチング電源装置
n1 1次巻線
n2 2次巻線
C1 入力平滑コンデンサ
SW1 スイッチ素子(第1副スイッチ手段)
SW2 スイッチ手段(第2副スイッチ手段)
SW3 スイッチ手段(第3副スイッチ手段)
SW4 スイッチ手段(第2副スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、上記1次巻線に対して並列に接続され、上記1次巻線に入力される直流電圧を平滑化する入力平滑コンデンサと、上記直流電圧をスイッチングして上記2次巻線にパルスとして出力させる主スイッチング手段と、上記パルスを平滑化して出力する出力手段と、上記出力手段からの出力電圧が一定になるように上記主スイッチング手段のスイッチング動作を制御する制御手段とを備えたスイッチング電源装置であって、
上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、
上記入力平滑コンデンサに対して直列に接続された第1副スイッチ手段とを備え、
正常動作時には上記第1副スイッチ手段を導通状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第1副スイッチ手段を遮断状態にすることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
第1端子および第2端子を有し、電圧供給源に接続される入力部と、
上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、
上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備え、
正常動作時には上記第2副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第2副スイッチ手段を導通状態にすることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
第1端子および第2端子を有し、電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、上記1次巻線に対して並列に接続され、上記1次巻線に入力される直流電圧を平滑化する入力平滑コンデンサと、上記直流電圧をスイッチングして上記2次巻線にパルスとして出力させる主スイッチング手段と、上記パルスを平滑化して出力する出力手段と、上記出力手段からの出力電圧が一定になるように上記主スイッチング手段のスイッチング動作を制御する制御手段とを備えたスイッチング電源装置であって、
上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、
上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続された第2副スイッチ手段とを備え、
正常動作時には上記第2副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第2副スイッチ手段を導通状態にすることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
上記第2副スイッチ手段と上記主スイッチング手段との並列回路が、上記入力平滑コンデンサに対して並列に接続されていることを特徴とする請求項2または3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
上記第2副スイッチ手段と上記入力平滑コンデンサとの並列回路が、上記1次巻線に対して並列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
第1端子および第2端子を有し、交流電圧供給源に接続される入力部と、
上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、
上記過電流遮断手段および上記第2端子に接続されたフィルタ回路と、
上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段と、
上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備え、
正常動作時には上記第3副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第3副スイッチ手段を導通状態にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
第1端子および第2端子を有し、交流電圧供給源に接続される入力部と、上記第1端子に接続された過電流遮断手段と、上記過電流遮断手段および上記第2端子に接続されたフィルタ回路と、上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段と、1次巻線および2次巻線を有する変圧器と、上記1次巻線に対して並列に接続され、上記1次巻線に入力される直流電圧を平滑化する入力平滑コンデンサと、上記直流電圧をスイッチングして上記2次巻線にパルスとして出力させる主スイッチング手段と、上記パルスを平滑化して出力する出力手段と、上記出力手段からの出力電圧が一定になるように上記主スイッチング手段のスイッチング動作を制御する制御手段とを備えたスイッチング電源装置であって、
上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知する検知手段と、
上記フィルタ手段に対して並列に接続された第3副スイッチ手段とを備え、
正常動作時には上記第3副スイッチ手段を遮断状態にし、上記検知手段が上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知したときに上記第3副スイッチ手段を導通状態にすることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項8】
上記検知手段は、上記入力平滑コンデンサに印加される電圧の電圧値あるいは電圧値の変動幅が所定値以上になったことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知することを特徴とする請求項1、3、7のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
上記検知手段は、上記入力平滑コンデンサに流れる電流、または上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との並列回路に流れる電流の電流値が所定値以上になったことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知することを特徴とする請求項1、3、7のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項10】
上記検知手段は、入力平滑コンデンサに直列に対して接続される部材、または上記入力平滑コンデンサと上記1次巻線との並列回路に対して直列に接続される部材の温度が所定値以上に昇温したことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知することを特徴とする請求項1、3、7のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項11】
交流電圧供給源に接続される入力部と、
上記入力部に入力された交流電圧を整流するための整流手段とを備え、
上記検知手段は、上記整流手段の温度が所定値以上に昇温したことを検知することによって上記入力平滑コンデンサの漏れ電流が所定値以上になったことを検知することを特徴とする請求項10に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−154322(P2008−154322A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337409(P2006−337409)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】