説明

スイッチング電源装置

【課題】電源再起動時のラッチ動作を容易に回避できるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】入力ライン12,13の両極間に設けられたコンデンサCinと、スイッチング素子Q1のオン・オフを制御するスイッチング電源用IC14と、当該IC14を動作させるためのコンデンサC1と、トランスTに設けられコンデンサC1を充電するための補助巻線15と、スイッチング素子Q1を流れる過電流を検出する過電流検出用抵抗R1と、トランスTの二次側に接続された出力ライン18,19と、出力ライン18,19に設けられトランスTから出力される交流を直流に変換する整流素子D2と、直流が流れる出力ライン18,19の両極間に設けられた平滑コンデンサC2とを備えたスイッチング電源装置10であって、アノード側がコンデンサC1側に、カソード側がコンデンサCin側にそれぞれ接続されたダイオードD4を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁型のDC/DCコンバータとしてのスイッチング電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、UVLO(Under Voltage Lock Out:低電圧誤動作防止装置)を有していないスイッチング電源用ICを搭載したスイッチング電源装置が知られている。このようなスイッチング電源装置においては、入力された直流電圧を、他励式のオン・オフ方式を用いて断続し交流電圧を生成する一方、スイッチング電源用ICの電源電圧を確立するための補助巻線を備えたトランスが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記スイッチング電源装置では、過電流保護回路が設けられており、電源再起動時に過電流保護回路のラッチアップ動作に起因した起動不良にならないように、部品乗数が細かく調整されている。
【0004】
図2は、従来のスイッチング電源装置の回路構成を示している。このスイッチング電源装置10’においては、トランスTの一次側巻線11に接続された入力ライン12,13間にコンデンサCinが設けられている。このコンデンサCinには外部より入力電圧Vinが供給され、そのとき、コンデンサCinには入力電圧Vinに応じた電気が充電される。
【0005】
また、入力ライン12,13間にはスイッチング電源用IC14が設けられている。このスイッチング電源用IC14はピン1〜8を有し、このうち、ピン8がコンデンサCinより一次側巻線11に近い側で入力ライン12に、ピン4がコンデンサCinより一次側巻線11に近い側で入力ライン13にそれぞれ接続されている。
【0006】
入力ライン13の途中には、NMOSからなるスイッチング素子Q1が設けられている。スイッチング素子Q1は、そのゲートがスイッチング電源用IC14のピン5に接続されており、スイッチング電源用IC14によりオン・オフが制御される。また、入力ライン13には、スイッチング素子Q1よりも下流側に且つスイッチング素子Q1に直列に過電流検出用抵抗R1が設けられている。
【0007】
また、トランスTには補助巻線15が設けられ、この補助巻線15の一側はダイオードD1を介してライン16によりスイッチング電源用IC14のピン6に接続され、また補助巻線15の他側は入力ライン13に接続されている。そして、ライン16と入力ライン13との間にはコンデンサC1が設けられている。
【0008】
一方、トランスTには二次側巻線17が設けられ、この二次側巻線17の両端には出力ライン18,19がそれぞれ接続されている。出力ライン18の途中には整流素子D2が設けられている。そして、整流素子D2の下流側において、出力ライン18,19間に平滑コンデンサC2が設けられている。
【0009】
上記構成のスイッチング電源装置10’において、補助巻線15は、平滑コンデンサC2における電圧VC2に比例した電圧(つまり電圧VC1)が、コンデンサC1に発生するように機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−144536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来の技術では、外部からコンデンサCin(これを第一のコンデンサとする)への入力電圧Vinの供給が終了した際には、コンデンサCinの容量によって、コンデンサCin内ではその電圧Vinが徐々に低下する。平滑コンデンサC2の電圧VC2は、コンデンサCinの電圧Vinの低下に関わらず、電圧を一定に保つ働きがあるため、過電流検出用抵抗R1に流れる電流I1は増加する。
【0012】
このように過電流検出用抵抗R1に流れる電流I1が増加すると、過電流保護動作が働く。コンデンサC1(これを第二のコンデンサとする)の容量が小さければ、過電流保護動作が働く前に、スイッチング電源用IC14のピン6の電圧(つまり、コンデンサC1における電圧VC1)が低下し、過電流保護動作によるラッチ動作は発生しないが、コンデンサC1の容量が大きい場合、スイッチング電源用IC14のピン6の電圧(つまり、コンデンサC1における電圧VC1)が低下しないため、保護動作が働き続け、ラッチ動作が発生して、その状態での電源再起動ができない。
【0013】
そのため、コンデンサC1の容量を大きくすることが、事実上不可能となり、コンデンサC1における電圧VC1のリプルの増大及び容量過小等によって、コンデンサC1の短寿命化などの弊害が発生する。
【0014】
本発明の課題は、第二のコンデンサの容量に関係なく、電源再起動によるラッチ動作を容易に回避可能なスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、トランスの一次側に接続され直流電流が流れる入力ラインと、前記入力ラインの両極間に設けられた第一のコンデンサと、前記入力ラインを流れる直流電流を断続させて、当該直流電流を交流に変換するスイッチング素子と、前記スイッチング素子のオン・オフを制御する制御部と、前記制御部に接続され該制御部を動作させるための第二のコンデンサと、前記トランスに設けられ前記第二のコンデンサを充電するための補助巻線と、前記スイッチング素子に直列に接続され当該スイッチング素子を流れる過電流を検出する過電流検出用抵抗と、前記トランスの二次側に接続された出力ラインと、前記出力ラインに設けられ、前記トランスの二次側から出力される交流を整流し直流に変換する整流素子と、前記整流素子で変換された直流が流れる前記出力ラインの両極間に設けられた第三のコンデンサとを備えたスイッチング電源装置であって、アノード側が前記第二のコンデンサ側に、カソード側が前記第一のコンデンサ側にそれぞれ接続されたダイオードを設けたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、第一のコンデンサの電圧が減少した状態で、制御部が有するピンのうち、第二のコンデンサが接続されたピンの電圧が低下していなくても、第一のコンデンサと第二のコンデンサとの間にダイオードが設けられているので、当該ダイオードを介して第一のコンデンサ側へ電流が流れ、第二のコンデンサが接続された制御部の前記ピンの電圧を強制的に低下させることができ、これにより、当該ピンの電圧をリセット電圧以下に低下させることが可能となる。その結果、制御部はラッチ状態を解除し、電源再投入しても、ラッチ状態が続かず、スイッチング電源装置を容易に再起動することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、前記補助巻線は、前記第三のコンデンサにおける電圧に比例した電圧が、前記第二のコンデンサに発生するように機能することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第二のコンデンサの容量に関係なく、電源再起動によるラッチ動作を容易に回避可能なスイッチング電源装置を提供することができる。しかも、ダイオードを追加するだけであるから、スイッチング電源装置を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るスイッチング電源装置の構成図である。
【図2】従来技術によるスイッチング電源装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。なお、従来技術と同じ箇所には同一符号を記すこととする。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明に係るスイッチング電源装置の構成図である。図1において、本スイッチング電源装置10は、スイッチング素子Q1を有し、このスイッチング素子Q1はトランスTの一次側巻線11に印加される直流電圧を断続して交流電圧に変換する。また、スイッチング電源装置10は、スイッチング素子Q1のオン・オフを制御するスイッチング電源用IC14と、このスイッチング電源用IC14を動作させるためのコンデンサC1と、このコンデンサC1を充電するための補助巻線15と、スイッチング素子Q1に直列に接続されスイッチング素子Q1を流れる過電流を検出する過電流検出用抵抗R1とを有している。ここで、この過電流検出用抵抗R1に生じる電圧がスイッチング電源用IC14のピン3に入力されるようになっている。
【0022】
補助巻線15の一側はダイオードD1を介してライン16によりスイッチング電源用IC14のピン6に接続され、また補助巻線15の他側は入力ライン13に接続されている。そして、ライン16と入力ライン13との間にコンデンサC1が設けられている。そして、補助巻線15は、平滑コンデンサC2における電圧VC2に比例した電圧(つまり電圧VC1)が、コンデンサC1に発生するように機能する。
【0023】
また、スイッチング電源用IC14のピン1と入力ライン13との間にはコンデンサC3が、スイッチング電源用IC14のピン2と入力ライン13との間にはフォトトランジスタQ2がそれぞれ設けられている。
【0024】
D2はトランスTの二次側巻線(制御巻線)17に誘起される交流電圧を整流する整流素子(ダイオード)であり、C2は整流素子D2が出力する整流電圧を平滑する平滑コンデンサである。平滑コンデンサC2は、出力ライン18,19間に接続されている。そして、この整流素子D2と平滑コンデンサC2によって、直流電圧を出力する出力回路が構成されている。
【0025】
20は抵抗R2,R3を含む電圧検出回路であり、出力ライン18,19間に設けられている。この電圧検出回路20は、出力ライン18,19からの出力電圧を検出する。
【0026】
出力ライン18,19間には、発光ダイオードD3、抵抗R4、定電圧IC21が各々直列に接続されて設けられている。また、発光ダイオードD3に並列に抵抗R5が設けられ、さらに、抵抗R4と抵抗R2,R3の接続点との間に、コンデンサC4及び抵抗R6が直列に接続されて設けられている。なお、発光ダイオードD3及びフォトトランジスタQ2はフォトカプラ22を構成している。
【0027】
定電圧IC21は、電圧検出回路20の検出電圧に応じて、フォトカプラ22の発光ダイオードD3及びフォトトランジスタQ2を介して、スイッチング電源用IC14のピン2の電圧を変化させる。
【0028】
スイッチング電源用IC14は、ピン2の電圧に基づいたパルス幅のパルスをピン5から出力し、スイッチング素子Q1のオン・オフを制御して出力ライン18,19からの出力電圧を一定にする。また、スイッチング電源用IC14は、ピン3に入力される入力電圧に基づいて、出力ライン18,19から過電流が流れたか否かを判断する。そして、過電流が流れたと判断した時には、スイッチング素子Q1のオン・オフ制御を停止して出力ライン18,19からの出力電圧を停止する。
【0029】
本実施例では、コンデンサCinとコンデンサC1との間にダイオードD4が設けられている。このダイオードD4は、アノード側がコンデンサC1側に、カソード側がコンデンサCin側にそれぞれ接続されている。
【0030】
なお、上記構成において、コンデンサCinは第一のコンデンサを、コンデンサC1は第二のコンデンサを、平滑コンデンサC2は第三のコンデンサを各々構成している。また、スイッチング電源用IC14は制御部を構成している。
【0031】
次に、本実施例によるスイッチング電源装置10の作用について説明する。
【0032】
トランスTの一次側巻線11に直流電圧が印加され、スイッチング電源用IC14が動作すると、スイッチング素子Q1によりこの直流電圧のオン・オフを繰り返す。そして、このオン・オフの繰り返しによってトランスTの二次側巻線17に交流電圧が誘起される。そして、整流素子D2によって、この交流電圧が整流されて整流電圧が出力され、この整流電圧が平滑コンデンサC2により平滑されて、出力ライン18,19から所定電圧の直流電圧として出力される。
【0033】
このとき、二次側巻線17に誘起される交流電圧を電圧検出回路20で検出し、フォトカプラ22の発光ダイオードD3及びフォトトランジスタQ2を介して、スイッチング電源用IC14に電圧情報をフィードバックする。これにより、スイッチング電源用IC14はスイッチング素子Q1をオン・オフ制御し、トランスTにおいて適切に変圧された制御電圧を二次側巻線17に誘起することができる。
【0034】
また、本実施例では、コンデンサCinとコンデンサC1との間にダイオードD4が設けられているので、コンデンサCinの電圧が減少した状態で、スイッチング電源用IC14のピン6の電圧が低下していなくても、ダイオードD4を介してコンデンサCin側へ電流が流れ、ピン6の電圧を強制的に低下させることができ、これにより、ピン6の電圧をリセット電圧以下に低下させることが可能となる。その結果、スイッチング電源用IC14はラッチ状態を解除し、電源再投入しても、ラッチ状態が続かず、スイッチング電源装置10を容易に再起動することができる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
10 スイッチング電源装置
11 一次側巻線
12 入力ライン
13 入力ライン
14 スイッチング電源用IC(制御部)
15 補助巻線
16 ライン
17 二次側巻線
18 出力ライン
19 出力ライン
20 電圧検出回路
21 定電圧IC
22 フォトカプラ
Cin コンデンサ(第一のコンデンサ)
C1 コンデンサ(第二のコンデンサ)
C2 平滑コンデンサ(第三のコンデンサ)
D1 ダイオード
D2 整流素子
D3 発光ダイオード
D4 ダイオード
Q1 スイッチング素子
Q2 フォトトランジスタ
R1 過電流検出用抵抗
T トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次側に接続され直流電流が流れる入力ラインと、
前記入力ラインの両極間に設けられた第一のコンデンサと、
前記入力ラインを流れる直流電流を断続させて、当該直流電流を交流に変換するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオン・オフを制御する制御部と、
前記制御部に接続され該制御部を動作させるための第二のコンデンサと、
前記トランスに設けられ前記第二のコンデンサを充電するための補助巻線と、
前記スイッチング素子に直列に接続され当該スイッチング素子を流れる過電流を検出する過電流検出用抵抗と、
前記トランスの二次側に接続された出力ラインと、
前記出力ラインに設けられ、前記トランスの二次側から出力される交流を整流し直流に変換する整流素子と、
前記整流素子で変換された直流が流れる前記出力ラインの両極間に設けられた第三のコンデンサとを備えたスイッチング電源装置であって、
アノード側が前記第二のコンデンサ側に、カソード側が前記第一のコンデンサ側にそれぞれ接続されたダイオードを設けたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記補助巻線は、前記第三のコンデンサにおける電圧に比例した電圧が、前記第二のコンデンサに発生するように機能することを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−234518(P2011−234518A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102957(P2010−102957)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000180450)四変テック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】