説明

スイッチング電源装置

【課題】小型化及び低コスト化のため1次側において過負荷保護を行うに際し、励磁電流の影響を抑えるとともに、広範囲な入力電圧に対応して安定した過負荷保護を行うスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが直列に接続された第1直列回路と、共振コンデンサCiと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Lpとが直列に接続された第2直列回路と、整流平滑回路と、整流平滑回路の出力電圧に基づいてスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン/オフさせる制御回路10aと、第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部と、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との少なくとも一方のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する負荷電流抽出部と、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う過電流保護部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流共振型のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等に用いられるスイッチング電源装置は、スイッチング素子を2石用いるハーフブリッジ型で、さらにスイッチング損失を減らすことができる電流共振型を採用する場合が多い。電流共振型のスイッチング電源装置は、通常PFC(Power Factor Correction)との組み合わせで使用されるので、入力電圧一定で使用される場合が多い。
【0003】
図7は、従来のスイッチング電源装置におけるDC−DCコンバータの構成を示す回路図である。図7に示すDC−DCコンバータの動作を説明する。まず、直流電源Vinの電圧が印加されると、図示しない起動回路により制御回路10が動作を開始する。制御回路10は、発振回路11、D型フリップフロップ回路13、デットタイム生成回路14,15、レベルシフト回路16、バッファ回路17,18を有し、スイッチ素子Q1とスイッチ素子Q2とをデットタイムを有して交互にオン・オフさせる。
【0004】
スイッチ素子Q2がオンすると、Vin→Q2→Lr→P→Cri→Vinの経路で電流が流れる。この電流は、トランスTの1次側の励磁インダクタンスLpに流れる励磁電流と、1次巻線P、2次巻線S2、ダイオードD2、コンデンサCoを介して出力端子+Vo及び−Voから負荷へ供給される負荷電流との合成電流となる。前者の電流は、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCriとの正弦波状の共振電流となり、スイッチ素子Q2のオン期間に比べて低い共振周波数とするため、正弦波の一部が三角波状の電流として観測される。後者の電流は、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現れた正弦波状の共振電流となる。
【0005】
スイッチ素子Q2がオフすると、トランスTに蓄えられた励磁電流のエネルギーにより、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCri、電圧共振コンデンサCrvによる電圧擬似共振が発生する。このとき、小さい容量の電圧共振コンデンサCrvによる共振周波数がスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の両端電圧として観測される。即ち、スイッチ素子Q2の電流は、スイッチ素子Q2のオフと共に電圧共振コンデンサCrvに移る。電圧共振コンデンサCrvがゼロボルトまで放電されると、ダイオードD8に電流が移行する。これは、トランスTに蓄えられた励磁電流によるエネルギーがダイオードD8を介して電流共振コンデンサCriを充電する。この期間にスイッチ素子Q1をオンさせることでスイッチ素子Q1のゼロボルトスイッチが可能となる。
【0006】
スイッチ素子Q1がオンすると、電流共振コンデンサCriを電源として、Cri→P→Lr→Q1→Criの経路で電流が流れる。この電流は、トランスTの励磁インダクタンスLpに流れる励磁電流と、1次巻線P、2次巻線S1、ダイオードD1、平滑コンデンサCoを介して出力端子+Vo及び−Voから負荷へ供給される負荷電流との合成電流となる。前者の電流は、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCriの正弦波状の共振電流となり、スイッチ素子Q1のオン期間に比べて低い共振周波数とするため、正弦波の一部が三角波状の電流として観測される。後者の電流は、リアクトルLrと電流共振コンデンサCriとの共振要素が現れた正弦波状の共振電流となる。
【0007】
スイッチ素子Q1がオフすると、トランスTに蓄えられた励磁電流のエネルギーにより、(リアクトルLr+励磁インダクタンスLp)と電流共振コンデンサCri、電圧共振コンデンサCrvによる電圧疑似共振が発生する。このとき、小さい容量の電圧共振コンデンサCrvによる共振周波数がスイッチ素子Q1およびスイッチ素子Q2の両端電圧として観測される。即ち、スイッチ素子Q1の電流は、スイッチ素子Q1のオフと共に電圧共振コンデンサCrvに移る。電圧共振コンデンサCrvが直流電源Vinの電圧まで充電されると、ダイオードD9に電流が移行する。これは、トランスTに蓄えられた励磁電流によるエネルギーがダイオードD9を介して直流電源Vinに回生される。この期間にスイッチ素子Q2をオンさせることでスイッチ素子Q2のゼロボルトスイッチが可能となる。
【0008】
特許文献1には、入力電圧が広範囲化される場合にも過負荷検出信号の入力電圧依存性がないことを目的とするスイッチング電源の過負荷保護回路が記載されている。この過負荷保護回路は、交流電力を整流平滑化してトランスの一次巻線に印加してスイッチング素子によりオンオフし、このトランスの二次巻線に誘起されたスイッチング電圧を整流平滑化して出力するオンオフ型コンバータ部と、このコンバータ部の出力電圧を基準電圧と比較して誤差電圧を小さくする方向にスイッチング素子に対して制御信号を送るとともに、入力電圧が増大したときはパルス幅を狭くする方向に制御するパルス幅制御回路と、この一次巻線に流れる電流のピーク成分を検出する手段と、このトランスの一次側に設けられたバイアス巻線に誘起されるオンオン極性のスイッチング電圧を整流平滑化する整流平滑部とを備え、この電流検出手段で検出した負荷電流信号に、前記整流平滑部で検出した入力電圧補正信号を加算してパルス幅制御回路の過負荷保護端子に送るものである。
【0009】
この過負荷保護回路によれば過負荷検出信号の入力電圧依存性をバイアス巻線を用いた整流平滑部の入力電圧補正信号により打ち消しているので、商用電源の電圧が広範囲化されても的確な過負荷保護を行うことができる。
【0010】
また、特許文献2には、簡単な回路によって過電流制御を行うことを課題とする共振型のスイッチング電源が記載されている。このスイッチング電源は、2つのスイッチング素子と、共振回路と、トランスと、出力整流平滑回路と、過電流保護回路とを含む。2つのスイッチング素子は、直列に接続され、直列回路の両端が直流電源に導かれ、交互に駆動される。トランスは、少なくとも、一次巻線と、二次巻線とを含んでいる。共振回路は、共振コンデンサと、共振インダクタとを有している。共振コンデンサ、共振インダクタ及びトランスの一次巻線は直列に接続され、直列回路の両端が2つのスイッチング素子の接続点と、2つのスイッチング素子によって構成される直列回路の一端との間に接続されている。出力整流平滑回路は、トランスの二次巻線に接続されている。過電流保護回路は、トランスの二次巻線側に流れる電流を検出し、検出信号に基づいて、スイッチング素子に対し過電流保護動作を与える。
【0011】
このスイッチング電源において、直列に接続された2つのスイッチング素子を交互に動作させることにより、入力された直流電源をスイッチングし、そのスイッチング出力を共振回路及びトランスの一次巻線に供給する。2つのスイッチング素子の接続点と、2つのスイッチング素子によって構成される直列回路の一端との間には、共振回路を構成する共振コンデンサ及び共振インダクタと、トランスの一次巻線を直列に接続した直列回路の両端が接続されているから、2つのスイッチング素子の交互動作により、共振回路及びトランスの一次巻線に、共振回路の共振周波数に対応した疑似正弦波電流が流れる。このとき、一次巻線と結合する二次巻線に誘起電圧が発生する。この誘起電圧はトランスの二次巻線に接続された出力整流平滑回路により直流に変換され、出力される。
【0012】
過電流保護回路は、トランスの二次巻線側に流れる電流を検出し、検出信号に基づいて、スイッチング素子に対し過電流保護動作を与える。トランスの二次巻線側に流れる電流は、出力整流平滑回路の回路方式によって異なる。出力整流平滑回路が出力チョークコイルを含むチョークインプット型となっている場合は、トランスの二次巻線には台形状の電流が流れる。台形状電流は、出力電圧が零ボルトまで低下した場合は三角波となる。また、その尖頭値は出力電流とほぼ等しくなる。従って、この電流を検出し、電圧信号等に変換することにより、定電流電圧垂下特性の過電流制御を行うことができる。
【0013】
出力整流平滑回路が出力チョークコイルを含まないコンデンサインプット型となっている場合は、トランスの二次巻線には正弦波状の電流が流れる。従って、この電流を検出し、その平均値を電圧信号等に変換することにより、定電流電圧垂下特性の過電流制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−344712号公報
【特許文献2】特開平10−229673号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】CQ出版社 電源回路設計 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、電流共振型のスイッチング電源装置は、通常PFCとの組み合わせで使用される場合が多いが、PFC部は部品コストと基板面積が大きく、高調波規制の対象とならない負荷容量が割合小さな領域(例えばPIN75W以下)では、PFC無しで電流共振が用いられる場合がある。しかしながら、PFC無しで使用される場合には、入力電圧が一定とならない。特に、ワールドワイド入力(AC85V〜AC276V)では入力電圧が大幅に変化するため、入力電圧に応じて最大出力電圧が大幅に変化するという問題がある。
【0017】
電流共振でワールドワイド入力対応のトランス設計を行うと、過負荷保護に対して入力補正(入力電圧が変化しても過負荷保護レベルを一定にする)が難しくなるという問題点がある。非特許文献1の214ページにも記載されているが、過電流検出を行う電流共振コンデンサCi(又は一次巻線P)に流れる電流は、励磁電流(循環電流)と2次側への負荷電流の合計となる。電流共振型スイッチング電源は共振現象によりスイッチングロスを減らすために、入力電圧が広いほど励磁電流(循環電流)を大きくする必要がある。特に入力電圧上限では、入力電圧が高いだけ一次側負荷電流が少なくなるため励磁電流が占める割合が相対的に大きくなるため、負荷電流の検出が難しくなる。
【0018】
特許文献1に記載の過負荷保護回路は、入力電圧を何らかの方法で検出し、それに応じて過電流検出レベルを変えるものであり、電流共振型スイッチング電源では上述した励磁電流が占める割合が大きいため所望の電源特性を得ることができないという問題がある。
【0019】
図8は、従来のスイッチング電源装置において、ワイド入力で入力電圧が高い場合における無負荷時と最大負荷時の動作波形例を示す。図8(a)に示すように、無負荷時においては電流共振コンデンサに三角波状の励磁電流(循環電流)が流れている。また、図8(b)に示すように、最大負荷時においては電流共振コンデンサに励磁電流と負荷電流との合成電流が正弦波状に流れるが、最大負荷を取っても電流のピーク値が大きく変わらない事がわかる。このため、電流ピーク値を検出する方法では、過負荷保護を行うことが難しい。このことは、PFCが存在し入力電圧一定の場合には励磁電流(循環電流)が小さいので問題にならないが、ワイド入力の場合には顕著に問題になる。
【0020】
特許文献2に記載のスイッチング電源は、励磁電流をゼロとすることができるので、負荷電流だけを確認することができ、入力電圧によらず一定の過負荷保護を行うことができると予測され、所望の電源特性を得ることができると考えられる。しかしながら、この方式の問題点として、高価なカレントトランスを用いる必要がある。また、カレントトランスを使わずに抵抗でI−V変換を行って1次―2次間で信号伝達を行っても良いが、この場合は各種安全距離を取得する必要があり、基板レイアウトの制約と基板面積が増加する。可能であれば、高価なカレントトランスを用いず、また1次―2次間の信号伝達を行わない方がトータルの電源コストを考えると望まれる。
【0021】
本発明は上述した従来技術の問題点を解決するもので、小型化及び低コスト化のため1次側において過負荷保護を行うに際し、励磁電流の影響を抑えるとともに、広範囲な入力電圧に対応して安定した過負荷保護を行うスイッチング電源装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るスイッチング電源装置は、上記課題を解決するために、直流電源の両端に接続され、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とが直列に接続された第1直列回路と、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とのいずれか一方に並列に接続され、共振コンデンサと共振リアクトルとトランスの1次巻線とが直列に接続された第2直列回路と、前記トランスの2次巻線の電圧を整流平滑する整流平滑回路と、前記整流平滑回路の出力電圧に基づいて前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを交互にオン/オフさせる制御回路と、前記第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部と、前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との少なくとも一方のオン期間に同期して、前記電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、前記電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する負荷電流抽出部と、前記負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う過電流保護部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小型化及び低コスト化のため1次側において過負荷保護を行うに際し、励磁電流の影響を抑えるとともに、広範囲な入力電圧に対応して安定した過負荷保護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置における制御回路の中身の一部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置における基準電圧生成回路の出力を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置の動作を示す各部の波形図である。
【図5】本発明の実施例1の形態のスイッチング電源装置における制御回路の中身の一部の構成の別例を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2の形態のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【図7】従来のスイッチング電源装置におけるDC−DCコンバータの構成を示す回路図である。
【図8】従来のスイッチング電源装置において、ワイド入力で入力電圧が高い場合における無負荷時と最大負荷時の動作波形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のスイッチング電源装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。まず、本実施の形態の構成を説明する。図1は、本発明の実施例1のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【0027】
ローサイドのスイッチング素子Q1は、本発明の第1スイッチ素子に対応する。また、ハイサイドのスイッチング素子Q2は、本発明の第2スイッチ素子に対応する。これらのスイッチング素子Q1,Q2は、例えばMOSFETである。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが直列に接続された直列回路は、本発明の第1直列回路に対応し、直流電源の両端に接続されている。ただし、本実施例における直流電源とは、商用交流電源を全波整流し、平滑コンデンサで平滑することで得られた直流電圧を出力する電源回路により構成されるものであり、抵抗R1,R2からなる直列回路の両端に直流電圧を出力している。
【0028】
また、共振コンデンサCiと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Lpとが直列に接続された直列回路は、本発明の第2直列回路に対応する。ここで、共振リアクトルLrは、トランスT1の1次巻線Lpのリーケージインダクタンス(漏れインダクタンス)により構成されてもよい。また、スイッチング素子Q1には電圧共振コンデンサCvが並列に接続されている。本発明の第2直列回路は、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とのいずれか一方に並列に接続されるが、本実施例においては図1に示すように、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)に並列に接続されている。なお、第2直列回路が第2スイッチ素子に並列に接続される場合については後述する。
【0029】
ダイオードD1,D2と平滑コンデンサCoとによる直列回路は、本発明の整流平滑回路に対応し、トランスT1の二次巻線S1,S2に並列接続され、トランスT1の二次巻線S1,S2の電圧を整流平滑するものである。この整流平滑回路で得られた平滑コンデンサCoの直流電圧は、図1に示すスイッチング電源装置の出力電圧となり、Outputから直流電力を供給する。
【0030】
また、図1に記載のスイッチング電源装置は、制御回路10aを有している。この制御回路10aは、上述した整流平滑回路の出力電圧に基づいて、出力電圧が所定の値に保持されるようにスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン/オフさせる。
【0031】
具体的には、エラーアンプ20によって出力電圧が検出され、検出された出力電圧は、フォトカプラを介して一次側の制御回路10aのフィードバック端子(FB端子)に送られる。制御回路10aは、出力電圧に応じて内部の発振回路の発振周波数を調整し、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とを交互にオン/オフさせる。これにより、制御回路10aは、共振コンデンサCiへの充放電期間を変化させ、トランスT1の2次側に誘導される電力量を制御する。
【0032】
ここで、スイッチング素子Q1は、LO端子電圧がLowの場合にオフし、LO端子電圧がHighの場合にオンする。また、スイッチング素子Q2は、HO端子電圧がLowの場合にオフし、HO端子電圧がHighの場合にオンする。
【0033】
コンデンサC1と抵抗ROCPとは、電流共振コンデンサCiに流れる電流を分流するためにコンデンサCiに並列に接続されており、消費電力の低減に資する。これらのコンデンサC1、及び抵抗ROCPは、本発明の電流検出部に対応し、第2直列回路に流れる電流を検出する。すなわち、第2直列回路を流れる電流は、共振コンデンサCiとコンデンサC1とにより分流される。その際にコンデンサC1に流れる電流は、共振コンデンサCiに流れる電流に比例しており、抵抗ROCPに流れる。
【0034】
図2は、本実施例のスイッチング電源装置における制御回路10aの中身の一部の構成を示すブロック図である。スイッチ22は、制御回路10a内部においてPL端子とCL端子との間に設けられ、LO端子電圧がLowの場合に閉じ、LO端子電圧がHighの場合に開く。このスイッチ22と、制御回路10aの外部においてCL端子に接続されたコンデンサC2とは、本発明の負荷電流抽出部に対応する。
【0035】
本発明の負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)と第2スイッチ素子(スイッチング素子Q2)との少なくとも一方のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する。
【0036】
本実施例においては、負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する。すなわち、負荷電流抽出部は、電流検出部により検出された電流を抵抗ROCPで電圧信号に変換したものを抵抗R3を介してPL端子から取り込み、スイッチング素子Q1のオン期間に同期してスイッチ22を開閉することで、スイッチング素子Q1のオン期間に同期した電圧信号をCL端子に出力する。
【0037】
したがって、CL端子に出力された電圧信号は、スイッチング素子Q1のオン期間に同期して、コンデンサC2に対し充放電を行う。これにより、CL端子電圧は、電圧信号を平均化したものとなる。すなわち、負荷電流抽出部は、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する際に、正負の符号を含む形で電圧信号に変換し、整流することなく電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する。
【0038】
図2に示す基準電圧生成回路24、コンパレータ26、及び過電力保護回路28は、本発明の過電流保護部に対応し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う。ここで、過電流保護部の各構成について説明する。
【0039】
基準電圧生成回路24は、入力されたVsen電圧に基づいて第2基準電圧値を生成し、出力する。ここで、Vsen電圧は、入力電圧(直流電源の電圧)から生成される抵抗R1,R2の抵抗分割に応じた値の電圧である。言い換えると、基準電圧生成回路24は、直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成する。
【0040】
図3は、本実施例のスイッチング電源装置における基準電圧生成回路24の出力を示す図であり、入力されたVsen電圧に対して出力する第2基準電圧の電圧値を示している。基本的に、基準電圧生成回路24は、図3に示すように、直流電源の電圧値の増加(Vsen電圧の増加)に対して第2基準電圧値を減少させ、直流電源の電圧値の減少(Vsen電圧の減少)に対して第2基準電圧値を増加させるような相補的な関係となる電圧を出力する。
【0041】
これは、1次側に流れる電流は入力電圧が高いと小さくなるので、Vsen電圧が高くなると第2基準電圧が小さくなるように基準電圧生成回路24が調整し、適切な過電流検出を行うことができるようにするためである。
【0042】
ただし、基準電圧生成回路24は、実際のスイッチング電源特性に合わせて非線形特性を持っていてもよく、例えば図3(a)に示すように所定のVsen電圧値を境としてVsen電圧に対する第2基準電圧値の傾きを変化させてもよいし、図3(b)に示すようにVsen電圧に対して第2基準電圧値が単純に負の傾斜を持たせるようにしてもよい。
【0043】
コンパレータ26は、基準電圧生成回路24により生成された第2基準電圧値とCL端子電圧とを比較し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値未満である場合にLowレベルの電圧を出力し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値以上である場合にHighレベルの電圧を出力する。
【0044】
過電力保護回路28は、コンパレータ26によりHighレベルの電圧が出力された場合に、過電流保護(過電力保護)動作を行う。過電力保護回路28による保護動作は、従来からある一般的な動作でよく、例えば発振を停止させて2次側への電力供給を停止してもよいし、発振周波数を強制的に上昇させて2次側への電力供給を制限してもよい。過電力保護回路28による具体的な動作は、本発明の本質的な部分ではなく、上述した方法に制限されるものではない。
【0045】
すなわち、過電流保護部は全体として、直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値(CL端子電圧値に相当)が第2基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行う。
【0046】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。過電流が流れていない通常の動作は、図7で説明した従来の装置と同様である。コンデンサC1と抵抗ROCPとは、上述したように第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部であり、本来共振コンデンサCiに流れる電流をコンデンサC1に分流し、抵抗ROCPにおいて電圧に変換する。
【0047】
本実施例における負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する。すなわち、負荷電流抽出部は、抵抗ROCPで電圧信号に変換したものを抵抗R3を介してPL端子から取り込み、スイッチング素子Q1のオン期間に同期してCL端子からコンデンサC2に対して充放電を行う。
【0048】
図4は、本実施例のスイッチング電源装置の動作を示す各部の波形図である。スイッチ22は、上述したようにLO端子電圧がLowの場合に閉じ、LO端子電圧がHighの場合に開く。したがって、抵抗R3に流れる電流は、図4に示すようにスイッチング素子Q1がオンの期間にゼロとなり、スイッチング素子Q1がオフの期間に第2直列回路に流れる電流に応じた値となる。
【0049】
このようにローサイド側又はハイサイド側に波形を分けるのは、電流共振コンデンサCiに流れる電流は、ローサイドとハイサイドを合算するとゼロになるためである。本実施例におけるスイッチング電源装置は、ローサイド側MOSFET(スイッチング素子Q1)のゲート信号を用いている。
【0050】
図4に示すように、本実施例のスイッチング電源装置は、ローサイド側MOSFET(スイッチング素子Q1)のゲート信号がLowの時に、CL端子に接続されたコンデンサC2に、抵抗R3を通して充放電を行う。これにより、CL端子に対してマイナス方向から平均化を行う事ができる。
【0051】
すなわち、励磁電流(循環電流)は図4に示すようにマイナス方向からプラス方向に流れているので相殺され、励磁電流(循環電流)分の影響を少なくする事ができ、負荷電流分のみがコンデンサC2に充電される。したがって、コンデンサC2に接続されたCL端子電圧は、2次側に送られる負荷電流値に基づいた値となる。
【0052】
このようにして、本実施例の負荷電流抽出部は、負荷電流分のみを抽出し、負荷電流値に対応した電圧をCL端子に出力することができる。
【0053】
コンパレータ26は、基準電圧生成回路24により生成された第2基準電圧値とCL端子電圧とを比較し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値未満である場合にLowレベルの電圧を出力し、CL端子電圧の電圧値が第2基準電圧値以上である場合にHighレベルの電圧を出力する。過電力保護回路28は、コンパレータ26によりHighレベルの電圧が出力された場合に、過電流保護(過電力保護)動作を行う。
【0054】
すなわち、過電流保護部は、直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値(CL端子電圧値に相当)が第2基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行う。
【0055】
上述のとおり、本発明の実施例1の形態に係るスイッチング電源装置によれば、小型化及び低コスト化のため1次側において過負荷保護を行うに際し、励磁電流(循環電流)の影響を抑えるとともに、広範囲な入力電圧に対応して安定した過負荷保護を行うことができる。
【0056】
すなわち、本実施例のスイッチング電源装置は、PFC無しで且つワールドワイド入力のように入力電圧が変化する場合においても対応することができ、基準電圧生成回路24が直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成するので、適切な検出スレッシュによる過電流検出を行うことができる。
【0057】
また、一次巻線Pに流れる電流が励磁電流(循環電流)と2次側への負荷電流の合計であり、入力電圧が高い場合に一次側負荷電流が少なくなるため励磁電流が占める割合が相対的に大きくなっても、負荷電流抽出部が励磁電流(循環電流)の影響を小さくして負荷電流値のみを抽出するので、本実施例のスイッチング電源装置は、適切に過電流検出を行うことができる。
【0058】
さらに、特許文献2に記載のスイッチング電源のように高価なカレントトランスを用いる必要がないため低コストで実現することができ、また1次側において過負荷保護を行うため、1次―2次間で信号伝達を行う必要がなく、各種安全距離を取得する必要がないので装置の小型化が期待できる。特に、1次制御回路と合わせてIC化すれば、設計が簡単で大幅なコストダウンが可能となる。
【0059】
なお、本発明を実現するに際し、過電流保護部は、必ずしも図2に示す構成に限らない。図5は、本実施例のスイッチング電源装置における制御回路10aの中身の一部の構成の別例を示すブロック図である。
【0060】
図5に示す振幅調整回路23、乗算回路25、コンパレータ26、及び過電力保護回路28は、本発明の過電流保護部に対応し、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う。ここで、過電流保護部の各構成について説明する。
【0061】
振幅調整回路23は、入力されたVsen電圧を適切なスケールに調整する回路であり、特にIC化する際に電圧値をICの動作範囲内に収める役割を有する。この振幅調整回路23は、本発明の本質的部分には特に関係しない。
【0062】
乗算回路25は、CL端子電圧と振幅調整回路23により適切な振幅に調整されたVsen電圧とを乗算して出力する。ここで、CL端子電圧は、2次側に送られる負荷電流値に基づいているので、(CL端子電圧)×(Vsen電圧)=(2次側負荷電力に相似)ということができる。
【0063】
コンパレータ26は、第1基準電圧27と乗算回路25による出力電圧とを比較し、乗算回路25による出力電圧値が第1基準電圧値未満である場合にLowレベルの電圧を出力し、乗算回路25による出力電圧値が第1基準電圧値以上である場合にHighレベルの電圧を出力する。また、過電力保護回路28は、図2の場合と同様である。
【0064】
すなわち、過電流保護部は全体として、負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値(CL端子電圧値に相当)と直流電源の電圧値(Vsen電圧値に相当)とを乗算し、得られた乗算値が第1基準電圧27による第1基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行う。
【0065】
本実施例のスイッチング電源装置は、図5に示すような過電流保護部を用いたとしても、図2に示す過電流保護部と同様の効果を得ることができる。特に、乗算回路25による出力値が2次側負荷電力に相当するので、図2の場合のように基準電圧生成回路24による第2基準電圧を適切に調整する必要が無く、過電流保護部は、得られた乗算値と固定値たる第1基準電圧値とを比較することにより、適切に過負荷保護動作を行うことができる。
【実施例2】
【0066】
図6は、本発明の実施例2のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。図1に示す実施例1のスイッチング電源装置の構成と異なる点は、共振回路の構成部品がハイサイド側MOSFETに変更されている点である。すなわち、本実施例において、共振コンデンサCiと共振リアクトルLrとトランスT1の1次巻線Lpとが直列に接続された直列回路(本発明の第2直列回路に対応)は、実施例1の場合と異なり、第2スイッチ素子(スイッチング素子Q2)に並列に接続されている。
【0067】
また、本実施例においては、分流コンデンサを使用しない代わりに、ローサイド側MOSFETのソース−GND間に電流検出用抵抗ROCPが設けられている。本実施例において、この抵抗ROCPは、本発明の電流検出部に対応し、第2直列回路に流れる電流を検出する。すなわち、第2直列回路を流れる電流は、スイッチング素子Q1を介して、抵抗ROCPに流れる。
【0068】
本実施例のスイッチング電源装置における制御回路10bの中身の一部の構成は、実施例1で説明した図2あるいは図5と同様でよい。ただし、スイッチ22は、LO端子電圧がLowの場合に開き、LO端子電圧がHighの場合に閉じる。このスイッチ22と、制御回路10bの外部においてCL端子に接続されたコンデンサC2とは、本発明の負荷電流抽出部に対応する。
【0069】
その他の構成は、実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0070】
次に、上述のように構成された本実施の形態の作用を説明する。基本的な動作は実施例1で説明したスイッチング電源装置と同様である。抵抗ROCPは、上述したように第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部であり、スイッチング素子Q1がオンしたときに共振コンデンサCiに流れる電流を抵抗ROCPにおいて電圧に変換する。
【0071】
本実施例における負荷電流抽出部は、第1スイッチ素子(スイッチング素子Q1)のオン期間に同期して、電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する。すなわち、負荷電流抽出部は、抵抗ROCPで電圧信号に変換したものを抵抗R3を介してPL端子から取り込み、スイッチング素子Q1のオン期間に同期してCL端子からコンデンサC2に対して充放電を行う。
【0072】
その他の作用は実施例1と同様であり、重複した説明を省略する。
【0073】
上述のとおり、本発明の実施例2の形態に係るスイッチング電源装置によれば、共振回路の構成部品がハイサイド側にある場合や、分流コンデンサを使用せずに電流検出用の抵抗ROCPがローサイド側MOSFETに直列に接続されているような場合であっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0074】
なお、抵抗ROCPの代わりにカレントトランスを代用した場合には、抵抗ROCPの電力損失を抑え、巻線間は低圧で済むため、特許文献2に記載のスイッチング電源装置のように1次−2次間耐圧は必要とせず、安価なものが使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るスイッチング電源装置は、電流共振型のスイッチング電源装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
10,10a,10b 制御回路
11 発振回路
13 D型フリップフロップ回路
14,15 デッドタイム生成回路
16 レベルシフト回路
17,18 バッファ回路
20 電圧検出回路(エラーアンプ)
22 スイッチ
23 振幅調整回路
24 基準電圧生成回路
25 乗算回路
26 コンパレータ
27 第1基準電圧
28 過電力保護回路
C1,C2 コンデンサ
Ci,Cri 共振コンデンサ
Cv,Crv 電圧共振コンデンサ
Co 平滑コンデンサ
D1,D2,D8,D9 ダイオード
Lp 一次巻線
Lr 共振リアクトル
Q1,Q2 スイッチング素子
R1,R2,R3,ROCP 抵抗
S1,S2 二次巻線
T,T1,T2 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の両端に接続され、第1スイッチ素子と第2スイッチ素子とが直列に接続された第1直列回路と、
前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とのいずれか一方に並列に接続され、共振コンデンサと共振リアクトルとトランスの1次巻線とが直列に接続された第2直列回路と、
前記トランスの2次巻線の電圧を整流平滑する整流平滑回路と、
前記整流平滑回路の出力電圧に基づいて前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子とを交互にオン/オフさせる制御回路と、
前記第2直列回路に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記第1スイッチ素子と前記第2スイッチ素子との少なくとも一方のオン期間に同期して、前記電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換するとともに、前記電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出する負荷電流抽出部と、
前記負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値に基づいて過電流保護動作を行う過電流保護部と、
を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記共振リアクトルは、前記トランスの1次巻線のリーケージインダクタンスにより構成されることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記負荷電流抽出部は、前記電流検出部により検出された電流を電圧信号に変換する際に、正負の符号を含む形で電圧信号に変換し、整流することなく前記電圧信号の電圧値を平均して負荷電流値を抽出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記過電流保護部は、前記負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値と前記直流電源の電圧値とを乗算し、得られた乗算値が第1基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記過電流保護部は、前記直流電源の電圧値に基づいて第2基準電圧値を生成し、前記負荷電流抽出部により抽出された負荷電流値が前記第2基準電圧値以上である場合に過電流保護動作を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−170218(P2012−170218A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28738(P2011−28738)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】