説明

スイッチング電源装置

【課題】出力電流を推定するにあたり、電流や電圧の検出に必要なセンサの数を減らして、システムの簡素化を図る。
【解決手段】スイッチング電源装置6は、カレントトランス12と、スイッチング回路13と、整流回路15と、平滑回路16と、入力電圧検出回路18と、制御部19と、出力電圧検出回路22と、PWM信号生成部30とを備えている。制御部19は、入力電圧検出回路18で検出されたカレントトランス12の二次側の電圧波形から、当該電圧のデューティ比および電圧平均値を算出する。そして、算出されたデューティ比と、電圧平均値と、出力電圧検出回路22で検出された出力電圧Voとに基づいて、出力電流Ioを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧をスイッチングしてパルス電圧に変換し、このパルス電圧を整流して直流電圧を出力するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッドカーには、走行用モータを駆動するための高電圧バッテリが搭載されるとともに、このバッテリの電圧を降圧して各種の車載電装品へ供給する電源装置が搭載される。この電源装置としては、一般に、PWM(Pulse Width Modulation)信号に基づくスイッチング動作により直流電圧をパルス電圧に変換するスイッチング回路と、パルス電圧を整流する整流回路と、整流回路で整流された電圧を平滑する平滑回路とを備えたスイッチング電源装置(DC−DCコンバータ)が用いられる。後掲の特許文献1〜3には、このようなスイッチング電源装置が記載されている。
【0003】
スイッチング電源装置では、回路の状態を常時監視するために、入力電圧、入力電流、出力電圧、出力電流などを検出する多数のセンサが必要となる。また、入力電圧を検出するには、許容電力値の大きな抵抗により入力電圧を分圧するため、回路実装上大きなスペースが必要となる。さらに、入力電流や出力電流を検出する手段としては、電流センサやシャント抵抗などがあるが、電流センサは構造が複雑であり、シャント抵抗は電力損失が大きいという難点がある。一方、電流検出手段としてカレントトランスを用いた場合は、構造が簡略化されるという利点がある。特許文献1〜3のスイッチング電源装置では、入力電流の検出にカレントトランスが用いられている。
【0004】
特許文献1のスイッチング電源装置では、電流検出部が、カレントトランスと、このカレントトランスで得られた信号のピーク値を保持し、これを検出信号として出力するサンプルホールド部とで構成される。制御部は、この電流検出部からの検出信号と出力電圧に基づいて、所定のパルス幅をもつ駆動信号をスイッチング素子に供給する。また、制御部は、出力電圧とスイッチング素子への駆動信号とに基づき、一次電流のリップル分の平均値を推定し、この平均値から、負荷を流れる出力電流の値を算出する。
【0005】
特許文献2のスイッチング電源装置では、電流検出部が、スイッチ手段の電流を電圧として検出するカレントトランスと、スイッチ手段の駆動パルスのデューティ比を電圧に変換する電圧変換回路とを備えている。そして、電流検出部は、カレントトランスの検出電圧に電圧変換回路の変換電圧を加算し、これを補正検出電圧としてPWM制御部に出力する。
【0006】
特許文献3のスイッチング電源装置では、スイッチング手段に流れる電流のピーク電流をカレントトランスにより検出し、出力電流の制限を行う過電流保護手段が備わっている。そして、この過電流保護手段において、入力電圧と出力電圧、およびスイッチング手段のデューティ比に比例する電圧を用いて、検出されたピーク電流値を補正する。
【0007】
ところで、スイッチング電源装置において、PWM信号を生成するPWM信号生成部と、出力電圧を制御する制御部とを、1つのマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)で構成した場合は、同じマイコン内でPWM処理と制御処理を並行して行わねばならないため、PWM処理が制御処理の影響を受けて遅くなるという問題がある。
【0008】
一方、PWM信号を生成するPWM信号生成部と、出力電圧を制御する制御部とを、別のマイコンで構成した場合は、PWM処理と制御処理が独立に行われるので、PWM処理を高速化することができる。例えば、制御用マイコンの処理周期を1msとし、PWM用マイコンの処理周期を10μsとすることで、PWM用マイコンの処理周期が短くなって、スイッチング回路の動作周波数が大きくなる。これにより、故障検出時に短時間でスイッチング回路が動作し、応答性を高めることができる。また、スイッチング回路と整流回路の間に設けられたトランスを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−236999号公報
【特許文献2】特開2003−274648号公報
【特許文献3】特開2002−305873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電流検出手段としてカレントトランスを用いたスイッチング電源装置において、特許文献1〜3とは別の方法により出力電流を推定演算するものである。本発明の主たる課題は、電流や電圧の検出に必要なセンサの数を減らして、システムの簡素化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るスイッチング電源装置は、PWM信号に基づくスイッチング動作により直流電圧をパルス電圧に変換するスイッチング回路と、パルス電圧を整流する整流回路と、この整流回路で整流された電圧を平滑する平滑回路と、この平滑回路の出力電圧を検出する第1の電圧検出回路と、この第1の電圧検出回路で検出された電圧に基づいてPWM信号を生成し、当該PWM信号をスイッチング回路へ出力するPWM信号生成部と、スイッチング回路の前段に設けられたカレントトランスと、このカレントトランスの二次側の電圧を検出する第2の電圧検出回路と、平滑回路の出力電流を算出する制御部とを備えている。そして、制御部は、第2の電圧検出回路で検出された電圧の波形から、当該電圧のデューティ比を算出し、算出されたデューティ比と、第1の電圧検出回路で検出された電圧と、第2の電圧検出回路で検出された電圧とに基づいて、出力電流を算出する。
【0012】
このようにすると、カレントトランスの二次側の電圧を検出し、制御部で所定の演算を行うことにより、出力電流を容易に推定することができる。したがって、センサの数を減らしてシステムを簡素化し、小型軽量化およびコストダウンが可能となる。また、無駄な電力を使わないので、電力損失を低減することができる。さらに、入力電圧を考慮して出力電流を演算することで、入力電圧の変化に対応して正確な出力電流値を算出することができる。
【0013】
本発明において、制御部は、デューティ比と、第1の電圧検出回路で検出された電圧とに基づいて、スイッチング回路に与えられる入力電圧を算出し、第2の電圧検出回路で検出された電圧に基づいて、当該電圧の平均値またはピーク値を算出し、算出された入力電圧と、算出された平均値またはピーク値を用いて、出力電流を算出することができる。
【0014】
また、制御部は、、第2の電圧検出回路で検出された電圧に基づいて、当該電圧の平均値またはピーク値を算出し、算出された平均値またはピーク値を用いて、カレントトランスの一次側に流れる入力電流を算出することもできる。
【0015】
さらに、制御部は、出力電流の電流値に基づいて、回路故障の有無を判定することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスイッチング電源装置によれば、簡単な回路構成により、出力電流を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電気自動車の電気的構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【図3】カレントトランスの二次側の電圧波形を示した図である。
【図4】カレントトランスの基本構成を示した図である。
【図5】出力電流の算出手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。ここでは、本発明のスイッチング電源装置を電気自動車(またはハイブリッドカー)に搭載する場合を例に挙げる。
【0019】
図1に示したように、電気自動車(またはハイブリッドカー)100は、車載充電器1、高電圧バッテリ2、電力制御部3、インバータ4、モータ5、スイッチング電源装置6、車載電装品7、低圧バッテリ8を備えている。図1における実線矢印は、電力の流れを表しており、破線矢印は、信号の流れを表している。
【0020】
車載充電器1は、家庭用電源(AC100V)により充電される。高電圧バッテリ2は、車載充電器1の電力を蓄電するとともに、外部の高速充電器9から供給される電力を蓄電する。高電圧バッテリ2からは、インバータ4とスイッチング電源装置6へ電源が供給される。インバータ4は、モータ駆動用の電圧を生成してモータ5へ供給する。スイッチング電源装置6は、低圧バッテリ8を充電するための直流電圧を生成する。スイッチング電源装置6については、後で詳しく説明する。低圧バッテリ8の直流電圧は、各種の車載電装品7へ供給される。電力制御部3は、高電圧バッテリ2、インバータ4、スイッチング電源装置6などの電力系統を、CAN(Control Area Network)バスを介して制御する。また、電力制御部3と、車載充電器1および高速充電器9との間も、CANバスを介して通信可能となっており、充電情報などが伝達される。
【0021】
次に、スイッチング電源装置6の詳細につき、図2を参照しながら説明する。図2において、図1と同一部分には同一符号を付してある。ここに示したスイッチング電源装置6は、高電圧の直流をスイッチングして交流に変換した後、低電圧の直流に変換するDC−DCコンバータである。
【0022】
スイッチング電源装置6の入力端子T1、T2には、高電圧バッテリ2が接続される。高電圧バッテリ2の電圧は、例えばDC220V〜DC400Vである。入力端子T1、T2に入力される高電圧バッテリ2の電圧(入力電圧Vi)は、フィルタ回路11によりノイズが除去される。フィルタ回路11は、カレントトランス12の一次側コイルを介して、スイッチング回路13の入力側に接続されている。カレントトランス12の二次側コイルは、入力電圧検出回路18に接続されている。入力電圧検出回路18は、本発明における第2の電圧検出回路に相当し、カレントトランス12の二次側の電圧を検出する。
【0023】
スイッチング回路13は、半導体スイッチング素子として、例えばFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を有する公知の回路からなる。スイッチング回路13のFETは、ドライブ回路21から与えられるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号により、オンオフのスイッチング動作を行なう。
【0024】
スイッチング回路13の出力側には、メイントランス14の一次側コイルが接続されている。メイントランス14の二次側コイルは、ダイオードD1、D2からなる整流回路15の入力側に接続されている。整流回路15の出力側には、コイルLおよびコンデンサCからなる平滑回路16が接続されている。平滑回路16の出力は、出力端子T3、T4に接続されており、この出力端子T3、T4には、低電圧バッテリ8が接続されている。低電圧バッテリ8は、出力端子T3、T4から出力される出力電圧により、例えばDC12Vに充電される。
【0025】
平滑回路16の出力側には、出力電圧検出回路22が設けられている。この出力電圧検出回路22は、出力端子T3、T4間の電圧、すなわち平滑回路16の出力電圧Voを検出する。検出された出力電圧Voの電圧値は、フィードバック制御のためにPWM回路20へ与えられるとともに、制御部19にも与えられる。
【0026】
制御部19は、マイコン(制御用マイコン)から構成されている。制御部19には、入力電圧検出回路18で検出された電圧と、出力電圧検出回路22で検出された電圧が入力される。制御部19は、これらの電圧に基づいて、後述する演算処理を行う。制御部19はまた、端子T5を介して電力制御部3(図1)との間で通信を行う。
【0027】
電源17は、フィルタ回路11の出力側に接続されている。この電源17は、高電圧バッテリ2の電圧を降圧し、制御部19などに対して、例えばDC12Vの電源電圧を供給する。
【0028】
PWM回路20は、出力電圧検出回路22からフィードバックされる出力電圧値を基準電圧値と比較し、その偏差に基づいてPWM信号のデューティ比を演算する。そして、そのデューティ比に応じた信号(矩形波電圧)をドライブ回路21へ出力する。ドライブ回路21は、PWM回路20からの信号に基づき、所定のデューティ比をもったPWM信号を生成する。このPWM信号は、スイッチング回路13のFETのゲートに与えられ、FETをオンオフさせる。PWM回路20およびドライブ回路21により、PWM信号生成部30が構成される。このPWM信号生成部30は、制御部19とは別のマイコン(PWM用マイコン)から構成されている。制御部19は、PWM回路20に対して、動作開始指令信号および動作停止指令信号を与える。
【0029】
以上の構成からなるスイッチング電源装置6の動作について説明する。入力端子T1、T2へ入力される高電圧バッテリ2の直流電圧は、フィルタ回路11でノイズが除去された後、カレントトランス12を介して、スイッチング回路13へ与えられる。スイッチング回路13では、PWM信号生成部30からのPWM信号に基づくFETのオンオフにより、直流電圧に対してスイッチング動作を行う。これにより、直流電圧は高周波のパルス電圧に変換される。
【0030】
このパルス電圧は、メイントランス14を介して、整流回路15へ与えられる。整流回路15は、ダイオードD1、D2によりパルス電圧を整流する。整流回路15で整流された電圧は、平滑回路16へ入力される。平滑回路16は、コイルLおよびコンデンサCのフィルタ作用により整流電圧を平滑し、低電圧の直流電圧として出力端子T3、T4へ出力する。この直流電圧により、出力端子T3、T4に接続された低圧バッテリ8が充電される。
【0031】
一方、平滑回路16の出力電圧は、出力電圧検出回路22へ入力される。出力電圧検出回路22は、検出した出力電圧の電圧値を、PWM回路20と制御部19へ出力する。PWM回路20は、前述のように、出力電圧値と基準電圧値との偏差に基づいて、PWM信号のデューティ比を演算する。ドライブ回路21は、このデューティ比に応じたPWM信号を生成して、スイッチング回路13のFETのゲートへ出力する。これにより、出力電圧を一定に保つためのフィードバック制御が行なわれる。
【0032】
また、カレントトランス12の二次側の電圧は、入力電圧検出回路18へ入力される。この二次側電圧は、端子T1からカレントトランス12の一次側に流れる電流、すなわち入力電流Iiの電流値を電圧値に変換したものである。入力電圧検出回路18で検出された電圧は、制御部19へ与えられる。
【0033】
制御部19は、入力電圧検出回路18からの電圧と、出力電圧検出回路22からの電圧とに基づいて、平滑回路16からの出力電流Ioを演算する。そして、出力電流Ioの電流値に基づいて、回路故障の有無を判定する。この場合、制御部19は、出力電流Ioの電流値が異常値になると、故障が発生したと判断して、端子T5を介して電力制御部3(図1)へ通知する。電力制御部3は、この通知を受け取ると、各部への電源供給を遮断するなどの処理を行う。なお、回路故障には、スイッチング電源装置6における故障と、負荷における故障とがある。
【0034】
次に、制御部19が行う演算の詳細について説明する。図3は、カレントトランス12の二次側の電圧波形を示している。この電圧波形から、当該電圧のデューティ比Dと、電圧平均値Vcoを取得することができる。デューティ比Dは、図3における信号のハイレベル(オン)区間Tonと、信号の周期Tとから、次式で算出することができる。
D=Ton/T ・・・(1)
また、電圧平均値Vcoは、カレントトランス12の二次側電圧をフィルタ(図示省略)を用いて平均化するか、あるいは、マイコンで演算して算出することができる。
【0035】
カレントトランス12の二次側電圧は、スイッチング回路13のスイッチング動作により生じるものであるため、この電圧のデューティ比Dは、スイッチング回路13におけるPWM信号のデューティ比と同じとなる(図3のTonは、スイッチング回路13のFETがオンしている時間である)。したがって、カレントトランス12の二次側電圧のデューティ比Dと、入力端子T1、T2間の入力電圧Viと、出力端子T3、T4間の出力電圧Voとの間には、次式の関係が成立する。
Vo=Vi・(N2/N1)・D ・・・(2)
ここで、N1はメイントランス14の一次側コイルの巻線数、N2はメイントランス14の二次側コイルの巻線数である。
【0036】
上式(2)より、出力電圧Voがわかれば、デューティ比Dから入力電圧Viを推定できることがわかる。入力電圧Viは、
Vi=Vo・(N1/N2)/D ・・・(3)
で求められる。
【0037】
一方、入力電流Iiが変化することによって、図3の電圧波形のデューティ比Dおよび電圧平均値Vcoが変化する。前述のように、カレントトランス12の二次側電圧は、カレントトランス12の一次側に流れる入力電流に対応しているから、電圧平均値Vcoから入力電流を算出することができる。
【0038】
ここで、図4に示したカレントトランスの基本構成において、
Ii:入力電流
Nc1:カレントトランスの一次側コイルの巻線数
Nc2:カレントトランスの二次側コイルの巻線数
VF:ダイオードの順方向降下電圧
Rc:出力レベル決定抵抗の抵抗値
K:カレントトランスの結合度
としたとき、カレントトランス12の電圧平均値Vcoは
Vco=K・Ii・Rc・(Nc1/Nc2)+VF ・・・(4)
となる。これより、入力電流Iiは、
Ii=(Vco−VF)・Nc2/(K・Rc・Nc1) ・・・(5)
となる。
【0039】
一方、出力電流Ioは、入力電流Ii、入力電圧Vi、出力電圧Vo、変換効率ηを用いて、
Io=Ii・Vi・η/Vo ・・・(6)
で表すことができる。式(6)に式(5)を代入すると、出力電流Ioは、
Io=η・(Vco−VF)・Vi・Nc2/(K・Vo・Rc・Nc1) ・・・(7)
となる。
【0040】
上式(7)より、出力電流Ioは、カレントトランス12の電圧平均値Vcoと、入力電圧Viと、出力電圧Voとを用いて算出できることがわかる。そして、電圧平均値Vcoは、入力電圧検出回路18での検出結果から取得でき、入力電圧Viは、式(3)のように、デューティ比Dと出力電圧Voから取得でき、出力電圧Voは出力電圧検出回路22での検出結果から取得できる。したがって、カレントトランス12の出力波形(図3)から、デューティ比Dと電圧平均値Vcoとを求めることにより、出力電流Ioの値を推定することができる。また、電圧平均値Vcoから、式(5)により入力電流Iiの値も推定することができる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、カレントトランス12の二次側電圧を検出し、制御部19で所定の演算を行うことにより、出力電流Ioを容易に推定することができる。したがって、センサの数を減らしてシステムを簡素化し、小型軽量化およびコストダウンが可能となる。また、無駄な電力を使わないので、電力損失を低減することができる。さらに、式(7)からわかるように、入力電圧Viを考慮して出力電流Ioを演算するので、入力電圧Viの変化に対応して正確な出力電流値を算出することができる。
【0042】
図5は、以上述べた出力電流の算出手順を示したフローチャートである。各ステップの処理は、制御部19を構成するマイコンにより実行される。
【0043】
ステップS1では、入力電圧検出回路18での検出結果に基づき、カレントトランス12の二次側の電圧波形(図3)を取得する。
【0044】
ステップS2では、ステップS1で取得した電圧波形から、電圧平均値Vcoを算出する。
【0045】
ステップS3では、ステップS1で取得した電圧波形から、前記の式(1)により、デューティ比Dを算出する。
【0046】
ステップS4では、ステップS3で算出したデューティ比Dと、出力電圧検出回路22で検出された出力電圧Voとを用いて、前記の式(3)により、入力電圧Viを算出する。
【0047】
ステップS5では、ステップS2で算出したカレントトランス12の電圧平均値Vcoと、ステップS4で算出した入力電圧Viと、出力電圧検出回路22により検出された出力電圧Voとを用いて、前記の式(7)により、出力電流Ioを算出する。
【0048】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。例えば、前記実施形態では、電圧平均値Vcoを用いて出力電流Ioを算出したが、電圧平均値Vcoの代わりに、図3に示した電圧ピーク値Vpを用いて出力電流Ioを算出してもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、出力電流Ioに基づいて回路故障の有無を判定するようにしたが、これに加えて、入力電流Iiに基づいて回路故障の有無を判定するようにしてもよい。さらには、上記に加えて、出力電圧検出回路22で検出された出力電圧Voに基づいて、回路故障の有無を判定するようにしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、スイッチング電源装置6から出力される直流電圧により低圧バッテリ8を充電したが、スイッチング電源装置6の出力を直接負荷に供給してもよい。
【0051】
さらに、前記実施形態では、スイッチング電源装置6を電気自動車(またはハイブリッドカー)に搭載した例を挙げたが、本発明に係るスイッチング電源装置は、車載以外の用途にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
6 スイッチング電源装置
12 カレントトランス
13 スイッチング回路
15 整流回路
16 平滑回路
18 入力電圧検出回路(第2の電圧検出回路)
19 制御部
20 PWM回路
21 ドライブ回路
22 出力電圧検出回路(第1の電圧検出回路)
30 PWM信号生成部
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
Ii 入力電流
Io 出力電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM(Pulse Width Modulation)信号に基づくスイッチング動作により直流電圧をパルス電圧に変換するスイッチング回路と、
前記パルス電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路で整流された電圧を平滑する平滑回路と、
前記平滑回路の出力電圧を検出する第1の電圧検出回路と、
前記第1の電圧検出回路で検出された電圧に基づいてPWM信号を生成し、当該PWM信号を前記スイッチング回路へ出力するPWM信号生成部と、
前記スイッチング回路の前段に設けられたカレントトランスと、
前記カレントトランスの二次側の電圧を検出する第2の電圧検出回路と、
前記平滑回路の出力電流を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第2の電圧検出回路で検出された電圧の波形から、当該電圧のデューティ比を算出し、
算出された前記デューティ比と、前記第1の電圧検出回路で検出された電圧と、前記第2の電圧検出回路で検出された電圧とに基づいて、前記出力電流を算出することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記制御部は、
前記デューティ比と、前記第1の電圧検出回路で検出された電圧とに基づいて、前記スイッチング回路に与えられる入力電圧を算出し、
前記第2の電圧検出回路で検出された電圧に基づいて、当該電圧の平均値またはピーク値を算出し、
算出された前記入力電圧と、算出された前記平均値またはピーク値を用いて、前記出力電流を算出することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記制御部は、
前記第2の電圧検出回路で検出された電圧に基づいて、当該電圧の平均値またはピーク値を算出し、
算出された前記平均値またはピーク値を用いて、前記カレントトランスの一次側に流れる入力電流を算出することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスイッチング電源装置において、
前記制御部は、前記出力電流の電流値に基づいて、回路故障の有無を判定することを特徴とするスイッチング電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−90406(P2012−90406A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234274(P2010−234274)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】