説明

スイッチ機能付通信モジュール及び通信装置

【課題】ネットワーク構築時に必要な通信装置の種類、台数を減らし、無駄な高速・短距離ポートを減らすスイッチ機能付通信モジュールを提供する。
【解決手段】接続される複数個の定格通信モジュール13より所定の通信速度で送受信される通信信号を処理する複数個の装置側信号処理回路14a〜14dと、通信信号の送信先を切り替えるスイッチLSI15とを備えた通信装置11に装着されると共に、上記各定格通信モジュール13に接続され、これら各定格通信モジュール13や複数個の外部装置と送受信するための通信モジュール1であって、各定格通信モジュール13の通信速度で送受信される通信信号を複数の通信信号に分け、あるいは各外部装置の通信速度で送受信される通信信号をまとめるスイッチ機能を有するスイッチ部2と、複数個のポート3を有し、スイッチ部2と接続されるコネクタ4とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の定格通信モジュールが接続される通信装置に用いられ、各定格通信モジュールや複数個の外部装置と送受信するための通信モジュール及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イーサネット(登録商標)のスイッチ(イーサスイッチと略す)のような通信装置(伝送装置)は、内部にパケットスイッチLSIと、制御回路およびそのソフトウェアと、通信インターフェースとを備えている。イーサスイッチのインターフェース部分のうち、伝送路の物理的な特性(光信号を使うか電気信号を使うか、等)に依存する部分はモジュール化された定格通信モジュールとなっており、伝送距離等の必要に応じて使い分ける場合が多い。
【0003】
近年、特に光通信の分野では通信装置を基地局やビルなどのフィールドで設置をした後にでも、伝送距離、伝送媒体を自由に選べるように、定格通信モジュールを装置に簡単に着脱できるプラガブルモジュールとすることが一般的である。このプラガブルモジュールにはMSA(Multi Source Agreement)と呼ばれる業界標準規格があり、その規格に合わせればユーザ多数の供給元からの通信モジュールを自由に使うことができる。
【0004】
従来の一般的な通信装置は、接続される複数個の定格通信モジュール(通常、定格光トランシーバ)より所定の通信速度で送受信される通信信号を処理する複数個の装置側信号処理回路と、これら装置側信号処理回路同士を切り替えるスイッチLSIとを備える。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0006】
【特許文献1】特表2003−502691号公報
【特許文献2】特開2004−104706号公報
【特許文献3】特開2004−112775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の通信装置は、基本的に1つのポートには1つの通信モジュールを備えているため、ポートの密度が上げられないという問題がある。ネットワークの大規模化に伴って通信ポート数は飛躍的に増え、通信ポート密度が高まらないと機器、設置場所、あらゆる点でコスト高になってしまうが、その解決が難しい。複数個の通信モジュールを合わせて一体化した通信モジュールも存在するが、業界標準規格から外れた特殊品となってしまうし、さほどポートの高密度化効果はない。
【0008】
加えて最も問題となるのは、従来の通信装置では、通信モジュールを変更しても通信速度に関しては変えることができないという不便な点もある。
【0009】
例えば、10Gbit/sポートが3個、1Gbit/sポートが10個必要なユーザが存在する場合、一例として図5に示すように、まず、10Gbit/s通信装置51Aを1台、1Gbit/s通信装置51Bを1台用意する。そして、通信装置51Aに10Gbit/sの通信ポート52を有する10Gbit/s通信モジュール53Aを接続し、その通信モジュール53Aと通信装置51Bに接続した通信モジュール53Bとを光ファイバ54で接続してネットワーク50を構築する必要がある。
【0010】
つまり、10Gbit/sと1Gbit/sの2種類・2台の通信装置51A,51Bが必要なだけでなく、外部とのインターフェースの他にすぐ隣に設置される2台の通信装置51A,51Bを結ぶために、短距離の伝送でも高価な10Gbit/sの通信ポート52を使わなければならないという無駄も生じてしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ネットワーク構築時に必要な通信装置の種類、台数を減らし、無駄な高速・短距離ポートを減らすスイッチ機能付通信モジュール及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、接続される複数個の定格通信モジュールより所定の通信速度で送受信される通信信号を処理する複数個の装置側信号処理回路と、通信信号の送信先を切り替えるスイッチLSIとを備えた通信装置に装着されると共に、上記各定格通信モジュールに接続され、これら各定格通信モジュールや複数個の外部装置と送受信するための通信モジュールであって、
上記各定格通信モジュールの通信速度で送受信される通信信号を複数の通信信号に分け、あるいは上記各外部装置の通信速度で送受信される通信信号をまとめるスイッチ機能を有するスイッチ部と、
複数個のポートを有し、上記スイッチ部と接続されるコネクタと
を備えたスイッチ機能付通信モジュールである。
【0013】
請求項2の発明は、回路基板に上記スイッチ部を搭載し、上記回路基板に上記通信装置と接続する接続端子を複数個形成し、上記通信装置に着脱自在に設けた請求項1記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0014】
請求項3の発明は、通信装置本体との通信速度が略10Gbit/sであり、上記外部装置とのインターフェース速度が略1Gbit/sであり、上記複数個のポートが10〜24ポートである請求項1または2記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0015】
請求項4の発明は、通信装置本体との通信速度が略40Gbit/sであり、上記外部装置とのインターフェース速度が略10Gbit/sであり、上記複数個のポートが4ポートである請求項1または2記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0016】
請求項5の発明は、上記回路基板はフレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板であり、そのフレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板に、上記スイッチ部と、光電変換機能を有する光送受信部と、上記スイッチ部と上記光送受信部間の通信信号を処理するモジュール側信号処理回路とを搭載した請求項2〜4いずれかに記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0017】
請求項6の発明は、上記フレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板は、上記通信装置側の後部基板と、上記コネクタ側の前部基板と、これら前部および後部基板を連結する第1フレキ基板と、上記後部基板の上方に設けられる上部基板と、その上部基板と上記後部基板とを連結する第2フレキ基板とからなる請求項5記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0018】
請求項7の発明は、上記後部基板の一方の面に上記モジュール側信号処理回路を搭載し、上記後部基板の他方の面に上記スイッチ部を搭載し、上記前部基板に上記光送受信部を搭載した請求項5または6記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0019】
請求項8の発明は、上記コネクタは、内部送受信用テープファイバを多心一括接続する光コネクタからなり、その光コネクタと上記光送受信部を構成する光送信部とを内部送信用テープファイバで接続すると共に、上記光コネクタと上記光送受信部を構成する光受信部とを内部受信用テープファイバで接続し、上記前部基板に、その前部基板を挟んで上下に上記光送信部と上記光受信部とを搭載した請求項6または7記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0020】
請求項9の発明は、上記前部基板の内部に、上記前部基板の一方の面を流れる送信用通信信号と、上記前部基板の他方の面を流れる受信用通信信号とを電気的に遮蔽するグランド層を設けた請求項6〜8いずれかに記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0021】
請求項10の発明は、上記コネクタは、複数本のツイストペアケーブルを接続する電気コネクタからなる請求項1〜4いずれかに記載のスイッチ機能付通信モジュールである。
【0022】
請求項11の発明は、請求項1〜10いずれかに記載したスイッチ機能付通信モジュールを備えた通信装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ネットワーク構築時に必要な通信装置の種類、台数を減らすことができ、無駄な高速・短距離ポートも減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
まず、本実施形態に係るスイッチ機能付通信モジュールを用いた通信装置を説明する。通信装置としては、スイッチングハブやメディアコンバータなど様々な形態があるが、以下の説明では、定格通信モジュールとしての光トランシーバを備えたイーサスイッチの例で説明する。
【0026】
図1は、本発明の好適な実施形態を示すスイッチ機能付通信モジュールを備えた通信装置のブロック図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る通信装置11は、通信装置本体11bと、ユーザ側に設けられた複数個のスロット12と、そのスロット12に挿抜自在に設けられ、通信装置本体11bと接続される複数個の定格通信モジュールとしての光トランシーバ(従来の光トランシーバ)13と、光トランシーバ13より所定の通信速度で送受信される通信信号(フレーム、パケット、データ、あるいは情報)を処理する複数個の装置側信号処理(信号変換)回路としてのPHY(物理層デバイス)14a〜14dと、イーサスイッチLSI15とを備える。
【0028】
スロット12は、放熱性が高いAlなどの金属で形成したケース(筐体)の外形がX2(厚さを除いて名刺サイズ程度)、XENPAK、XFPなどの業界標準規格で定められた光トランシーバ13を挿抜自在にした形状である。
【0029】
光トランシーバ13は、ユーザ側の一端部に設けられて1つの入出力ポート16を有する光コネクタ17と、その光コネクタ17に接続され、光部品や電気部品などが搭載される回路基板18とを備える。
【0030】
回路基板18の装置側の一端部には、通信装置1と接続する接続端子19が複数個形成されてなるカードエッジ部20が設けられる。本実施形態では、光トランシーバ13として通信速度(伝送速度)が略10Gbit/sの光トランシーバを用いた。この10Gbit/sの光トランシーバは、通信装置本体11bとの通信速度、外部装置との通信速度(インターフェース速度)共に略10Gbit/sである。
【0031】
スロット12の装置側の奥部には、回路基板18のカードエッジ部20と嵌合して光トランシーバ13を活線挿抜可能(着脱自在)にするカードエッジコネクタが設けられる。スロット12に光トランシーバ13を挿入し、通信装置本体11bに光トランシーバ13を装着することで、その光トランシーバ13と他の光トランシーバ13や、各光トランシーバ13の入出力ポート16に接続した複数個の外部装置と通信信号を送受信する。外部装置としては、例えば、パソコンなどの端末、他の通信装置などがある。
【0032】
各PHY14a〜14dは、スイッチLSI15と各カードエッジコネクタ間に接続される。PHY14a〜14dは、スイッチLSI15からの通信信号をOSI(Open System Interconnect)階層モデルの物理層で動作する光トランシーバ13に適合した通信信号に、あるいは光トランシーバ13からの通信信号をスイッチLSI15に適合した通信信号に処理(電圧変換など)する信号処理回路である。
【0033】
スイッチLSI15は、各PHY14a〜14dと各光トランシーバ13間、あるいは各PHY14a〜14dと通信モジュール1間の経路を切り替える(通信信号の送信先を切り替える)ものである。
【0034】
スイッチLSI15は、従来のイーサスイッチが有する通常機能を有する。すなわち、スイッチLSI15は、各光トランシーバ13間、あるいは各光トランシーバ13と通信モジュール1間で通信信号を転送するとき、通信信号の宛先MAC(Media Access Control)アドレスを解析し、その宛先MACアドレスをアドレステーブルで参照して、宛先MACアドレスを有する外部装置がつながった入出力ポート16にのみ通信信号を転送する。これにより、通信装置11は、複数のポートを備えたブリッジとして機能する。つまり通信装置11は、外部装置間での1対1のデータ転送が同時に複数実行可能な装置である。
【0035】
さて、本実施形態に係るパケットスイッチ機能付通信モジュール1は、スイッチ部としてのスイッチIC2と、光通信ポートとしての複数個の入出力ポート3を有し、スイッチIC2と接続されるコネクタとしての光コネクタ4とを備える。
【0036】
この通信モジュール1は、スロット12に挿抜自在となるように、光トランシーバ12と同様、放熱性が高いAlなどの金属で形成したケース5の外形がX2、XENPAK、XFPなどの業界標準規格で定められたものである。
【0037】
スイッチIC2は、下記i)〜iii)の3つの機能からなるスイッチ機能(本実施形態では、データパケットをスイッチする機能)を有する。すなわち、
i)光トランシーバ13の通信速度で送受信される通信信号を複数の通信信号に分ける機能
ii)各外部装置の通信速度で送受信される通信信号をまとめる機能
iii)通信モジュール1に接続した各外部装置間で伝送される通信信号をスイッチLSI15を介さずに転送する機能
である。
【0038】
もちろんスイッチIC2は、スイッチLSI15と同じ機能、すなわち、通信信号を中継する機能、受信した通信信号からアドレスを学習してアドレス学習情報としてフィルタリングデータベース(FDB)に保持する機能、このアドレス学習情報に基づいて転送ポートを決定するフィルタリング機能など、従来から知られている機能も全て有する。
【0039】
また、スイッチIC2は、スイッチIC2を制御するマイコンなどの制御部を備える。この制御部は、通信モジュール自信の動作状態や故障の有無などの管理情報を取得する機能を有する。通信装置本体11b内に同様の制御部を設け、その制御部とスイッチLSI15を接続してもよい。
【0040】
入出力ポート3は、入力1chと出力1chで1対とした場合に5〜12ポート、すなわち総ポート数を10〜24個にするとよい。本実施形態では、入出力ポート3を入力12ch、出力12chの総ポート数24個にした。
【0041】
光コネクタ4としては、伝送路としての複数本(本実施形態では、送信用光ファイバが12本、受信用光ファイバが12本)の送受信用光ファイバ6を多心一括接続するMPO光コネクタに代表されるようなMTベースのパラレル光コネクタを用いる。コネクタサイズに問題がなければ、通常の単心タイプの光コネクタでも構わない。
【0042】
通信モジュール1は、光コネクタ4に接続されて光部品や電気部品などが搭載される回路基板として、フレキシブル・リジッド・ハイブリッド(FRH)基板7を備える。
【0043】
FRH基板7の装置側の一端部には、通信装置1と接続する接続端子19が複数個形成されてなるカードエッジ部20が設けられる。本実施形態では、通信モジュール1として、通信装置本体11bとの通信速度が略10Gbit/s、外部装置とのインターフェース速度が略1Gbit/sのものを用いた。略10Gbit/s、略1Gbit/sとしたのは、信号線(FRH基板7や送受信用光ファイバ6)を通る実際の通信レートでは、符号化等の信号処理を行っているので、これとは若干異なる(例えば、10.125Gbit/sや1.025Gbit/s)場合があるからである。
【0044】
このFRH基板7には、スイッチIC2、モジュール側PHY8a,8b、光送受信部9が搭載される。PHY8aは、スイッチIC2と光送受信部9間に接続され、PHY8bはスイッチIC2と接続端子19間に接続される。
【0045】
PHY8aは、スイッチIC2からの通信信号を物理層で動作する光送受信部9に適合した通信信号に、あるいは光送受信部9からの通信信号をスイッチIC2に適合した通信信号に処理(電圧変換など)する。PHY8bもPHY8aと同様の機能を有する。
【0046】
イーサネットシステムにおいて、PHYチップは基本的に情報のスイッチングを行う際に使用する符号と、情報の伝送に用いる符号(物理層)とを変換する機能(符号変換機能あるいは信号変換機能)を有する。例えば10Gイーサスイッチ機器では、10G用通信モジュールへの信号の受け渡しは、XAUI(X(10)gigabit Attachment Unit Interface:10ギガビットイーサネット用のインタフェース)と呼ばれる伝送用の信号が用いられるので、PHYチップ(PHY8a,8bの一方、あるいは両方)が必要である。ただし、最近ではスイッチチップ(スイッチIC2)内にPHYの上述した機能を有するものも多く、この場合はPHYチップは不要となる。通信モジュール内にスイッチチップを実装する場合には、スイッチの入出力インタフェースに合わせ、必要に応じてPHYチップを用いる。また、PHYチップには、通信の監視に便利な機能や、(回路基板上の引き回しやコネクタ接続による)通信波形の劣化を修正する機能もあるため、この目的で使われる場合もある。したがってXAUI対XAUIというような符号変換を行わないようなPHYも存在する。
【0047】
要約すれば、本実施形態では、スイッチチップが符号変換機能(PHYチップの機能)を有しない場合の一例を想定して、スイッチIC2とPHY8a,8bを別部品で構成した通信モジュール1を説明する。
【0048】
本実施形態では、スイッチIC2とPHY8a,8bを別部品で構成した例で説明するが、スイッチ部としては、本実施形態に係る通信モジュールの個別のシステム設計に応じて、PHY8a,8bの一方、あるいは両方の機能を有するスイッチICを用いてもよい。この場合、PHY8a,8bの一方、あるいは両方は不要となる。
【0049】
光送受信部9は、光電変換機能を有し、内部送受信用テープファイバ10を介して光コネクタ4に接続される。
【0050】
次に、通信モジュール1の動作を、通信装置11の動作と共に簡単に説明する。以下の説明では、PHY14a〜14dをまとめたものをPHY14とする。
【0051】
まず、通信装置11のスロット12の必要な箇所に、通信モジュール1や各光トランシーバ13を装着する。光コネクタ4に内部送受信用テープファイバ10を介して、あるいは光コネクタ17に送受信用光ファイバ21を介して外部装置を接続すると、通信モジュール1単体、あるいは通信モジュール1、各光トランシーバ13、通信装置11、または各光トランシーバ13、通信装置11が動作する。
【0052】
i)光トランシーバ13と通信モジュール1間
光トランシーバ13に接続した外部装置から受信した10Gbit/sの通信信号L10は、光トランシーバ13で電気信号に変換されて通信信号E10になり、これがPHY14(例えば、PHY14a)を通ってスイッチLSI15で受信される。
【0053】
スイッチLSI15は、受信した通信信号E10の宛先MACアドレスを参照し、その宛先MACアドレスが通信モジュール1に接続された外部装置のものであれば、通信モジュール1が接続された経路に切り替え、通信信号E10をPHY14cを介して通信モジュール1に転送する。
【0054】
スイッチLSI15は、宛先MACアドレスが他の光トランシーバ13に接続された外部装置のものである場合には、他の光トランシーバ13が接続された送受信レーン(PHY14c以外が接続された送受信レーン)に経路を切り替え、通信信号を他の光トランシーバ13に転送する。スイッチLSI15は、宛先MACアドレスがアドレステーブルにない場合は、通信信号を破棄する。
【0055】
通信モジュール1のスイッチIC2は、スイッチLSI15から転送された通信信号E10の宛先MACアドレスを参照する。スイッチIC2は、その宛先MACアドレスが通信モジュール1に接続された外部装置のものであれば、スイッチLSI15から転送された通信信号E10を時分割あるいは周波数分割して複数の通信信号E1に分け、FRH基板7の送信レーンを切り替え、PHY8aに送信する。
【0056】
分けられた通信信号E1は1Gbit/sであり、光送受信部9で光信号に変換されて通信信号L1となり、これが内部送受信用テープファイバ10を介し、光コネクタ4の入出力ポート3から送信され、送受信用光ファイバ6を通って外部装置で受信される。スイッチIC2は、宛先MACアドレスがアドレステーブルにない場合は、通信信号を破棄する。
【0057】
ii)通信モジュール1と光トランシーバ13間
通信モジュール1に接続した外部装置から受信した1Gbit/sの通信信号L1は、光送受信部9で電気信号に変換されて通信信号E1になり、これがFRH基板7の受信レーン、PHY8aを通ってスイッチIC2で受信される。ここで受信した通信信号E1は、1つの外部装置から受信した1つの通信信号でもよいし、複数個の外部装置から受信した複数の通信信号でもよい。
【0058】
スイッチIC2は、受信した通信信号E1の宛先MACアドレスを参照し、その宛先MACアドレスが光トランシーバ13に接続された外部装置のものであれば、通信信号をPHY14cを介してスイッチLSI15に送信する。スイッチIC2は、宛先MACアドレスがアドレステーブルにない場合は、通信信号を破棄する。
【0059】
このとき、スイッチIC2は、受信した通信信号E1が1つならば、そのままスイッチLSI15に送信し、受信した通信信号E1が複数ならば、通信信号を時分割多重あるいは周波数分割多重してまとめ、10Gbit/sの通信信号E10としてスイッチLSI15に送信する。
【0060】
スイッチLSI15は、上述と同様にして受信した通信信号E10の宛先MACアドレスを参照し、その宛先MACアドレスを有する外部装置が接続された光トランシーバ13に受信した通信信号E10を転送する。その後、光トランシーバ13で受信した通信信号E10は、光トランシーバ13で光信号に変換されて通信信号L10となり、これが送信されて外部装置で受信される。
【0061】
iii)通信モジュール1に接続した外部装置間(通信モジュール1単体)
通信モジュール1に接続した外部装置から受信した1Gbit/sの通信信号L1は、光送受信部9で電気信号に変換されて通信信号E1となり、これがFRH基板7の受信レーン、PHY8aを通ってスイッチIC2で受信される。
【0062】
スイッチIC2は、受信した通信信号E1の宛先MACアドレスを参照し、その宛先MACアドレスが通信モジュール1に接続された他の外部装置のものであれば、スイッチLSI15には転送せずに、FRH基板7の送信レーンを切り替え、PHY8aに送信する。
【0063】
その後、通信信号E1は光送受信部9で光信号に変換されて通信信号L1になり、これが内部送受信用テープファイバ10を介し、光コネクタ4の入出力ポート3から送信され、送受信用光ファイバ6を通って他の外部装置で受信される。スイッチIC2は、宛先MACアドレスがアドレステーブルにない場合は、通信信号を破棄する。
【0064】
本実施形態の作用を説明する。
【0065】
通信モジュール1は、上記i)〜iii)で説明したパケットスイッチ機能を有するスイッチIC2を備えており、しかも従来の光トランシーバ機能も有する光トランシーバである。
【0066】
より詳細に言えば、通信モジュール1は、定格光トランシーバ13が挿抜自在な通信装置11のスロット12に互換性を有しつつ、挿抜自在でありながら、ユーザ側の入出力ポート3を多数備えており、モジュール内部に集線用のスイッチ回路(スイッチIC2)を有している点に特徴がある。
【0067】
定格光トランシーバ13は、装置側に結合する一端に入出力ポートを1チャンネル(ただし、並列信号で送る信号も論理的に1つのチャンネルと見なす)、ユーザ側の他の一端に入出力ポートを1チャンネル有し、業界標準規格のパッケージ(ケース5)にモジュール本体が覆われており、通信装置本体11bに抜き差し自在という特性を有する。
【0068】
簡単に言えば、通信モジュール1は、「業界標準規格の光トランシーバ13と同じスロット12に挿抜可能で、かつ多数のユーザポート3と、スイッチIC2とを備えている光トランシーバ」である。
【0069】
通信モジュール1は、上述したように、通信装置本体11bとの通信速度が略10Gbit/sであり、外部装置とのインターフェース速度が略1Gbit/sである。すなわち、通信モジュール1では、1Gbit/sの信号は10Gbit/sポート方向(PHY14c方向)だけでなく、通信モジュール1内で折り返されて別の1Gbit/sポートに伝送されることもあり、10Gbit/sアップリンクポートの付いた1Gbit/sイーサネットスイッチとして振る舞う。
【0070】
これにより、通信モジュール1では、
(1)10Gbit/sポート用の通信装置11を用意すれば、通信装置本体11b側の10Gbit/sポートと、ユーザ側の1Gbit/sポートとを混在させてユーザ側のポート数を任意数備えることができる。このため、必要な通信装置の種類や台数を減らすことができる(通信装置11が10Gbit/s用の光トランシーバを挿抜自在なスロット12を備えれば、10Gbit/sにも1Gbit/sにも対応できる)。
【0071】
(2)通信モジュール1を差し替えるだけで、10Gbit/sポートと1Gbit/sポートを切り替えることができる。
【0072】
(3)1つの通信モジュール1は1Gbit/sポートを多数備えているため、通信装置11のポート密度を高めることができる。
【0073】
例えば、1Gbit/sの光ポートで広く使われているSFP型光トランシーバを使った場合、慣用の通信装置の総ポート数は24ポート程度が限度となっている。10Gbit/sポートで広く使われているX2型光トランシーバは慣用の通信装置に8個程度実装可能であるため、通信モジュール1を用いれば、少なくとも12×8=96ポートが可能である。
【0074】
また、光コネクタ4として多ポートが一体となった光コネクタを用い、その光コネクタ4と光送受信部9間を内部送受信用テープファイバ10で接続するため、外部装置からパッチパネル(光コネクタ)までの伝送路を多数本一括で行うことができ、配線が非常に容易になる。
【0075】
つまり、通信モジュール1を備えた通信装置11を用いれば、図5のように2種類・2台の通信装置51A,51Bが不要となり、1台の通信装置11でネットワーク50と同じネットワークを構築できる。
【0076】
したがって、通信モジュール1は、ネットワーク構築時に必要な通信装置の種類、台数を減らすことができ、無駄な高速・短距離ポートも減らすことができる。
【0077】
通信モジュールとしては、次世代の規格に合わせ、通信装置との通信速度が略40Gbit/sであり、外部装置とのインターフェース速度が略10Gbit/sであり、複数個のポートが4ポートであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、コネクタとして光コネクタ4を用いた例で説明したが、コネクタとしては、複数本のツイストペアケーブルを接続する電気コネクタを使用してもよい。この場合の通信モジュールは、図1の通信モジュール1から光送受信部9、内部送受信用光ファイバ10を省略したトランシーバである。
【0079】
ここで、通信モジュール1の効果をより詳細に説明する。
【0080】
通信モジュール1では、小型化、伝送ポートの高密度化という効果もあるが、基本はネットワーク構築時に必要な機器の種類、台数を減らす、無駄な高速・短距離ポート(短距離でも10Gbit/sとなるとかなり高価)を減らす、という効果が主である。
【0081】
10Gbit/sポートは基本的にXENPAKやX2またはXEPといった各種業界標準規格トランシーバを、機器に備えられたそれぞれの規格に合った10Gポート用スロットに装着することによって機能する。
【0082】
なお、(光部品、超高速電子回路を含むことから)基本的にトランシーバは高価であるため、機器の「使用しない空きポート」にはトランシーバは装着しないでおき、必要になった時点でトランシーバを購入して装着することがよくある。キャリアやエンタープライズなどのネットワークを集線する場所において、通信装置に要求される1Gbit/sのポート数、10Gbit/sのポート数はネットワーク構成によって様々である。このため、図5で説明したように、通常は10Gbit/sのアップリンクポート1〜2個、1Gbit/sポートを数十個持った通信装置51Bと、10Gbit/sのポートを多数持った通信装置51Aを用意してネットワーク50を構築する。
【0083】
他方、様々なネットワーク形態にフレキシブルに対応できるものとしてシャシー型の通信装置がある。シャシーに様々な伝送速度、伝送媒体(ツイストペアケーブル、マルチモードファイバ、シングルモードファイバ等)に対応する各種のラインカードを装着し、ネットワークに最適な構成にすることができる。
【0084】
しかしシャシー自体が高価であり、ラインカードがフル実装されるような大規模なネットワークでないとあまりコストを削減する効果がない。むしろ、シャシー型通信装置は極めて大容量の交換機能を持たせたり、電源や冷却ファンの共有、2重化によって信頼性を向上させることを目的とする場合が多い。
【0085】
本実施形態に係る通信モジュール1によれば、安価、簡便なボックス型の通信装置11(慣用の通信装置でもよい)だけで、極めてフレキシビリティの高いシステム構成が可能である。基本的に10Gbit/sのスロットを持つ通信装置だけ準備すればよい。これにより、通信モジュール1と光トランシーバ13を差し替えるだけで、各種10Gbit/s、各種1Gbit/sの多ポートへの対応が自由自在である。
【0086】
また、図5に示す装置51A,51Bの組み合わせにおける大きな無駄、つまり短距離の10Gbit/s伝送のための通信モジュール53A,53Bを省くことができるため、経済効果が大きい。
【0087】
通信装置本体11bと通信モジュール1の結合は統一されたトランシーバの規格に従っているので、通信装置のメーカが異なったとしても同じ効果が期待できる。通信モジュール1をシャシータイプの機器に使用すれば、シャシー型のフレキシビリティをさらに向上させることも可能である。
【0088】
ところで、これまで本実施形態に係る通信モジュール1のような製品がなかった理由は、基本的にトランシーバは1つの信号を1つの信号に「変換」する「アダプタ」(=伝送速度は変わらない)としての形態に囚われていたためと推察される。したがってネットワークの効率化、低コスト化は、トランシーバ部分はトランシーバ部分で、通信装置部分は通信装置部分で進められてきた。
【0089】
しかし、ネットワークの大規模化、複雑化、一般化が大きく進みつつある中、通信装置とトランシーバを結合して考えないと効率化には限界がある。そして本発明は、従来の考えの枠を破って通信装置とトランシーバを融合させることを想到し、これにより上記したように優れた効果を奏することができる。
【0090】
ただし、通信モジュール1を製品化するにあたっては、いろいろと高度な技術、工夫を加えることが必要なのは言うまでもない。一般にトランシーバはサイズが小さいため、スイッチICのサイズや消費電力の点で実装が難しい。また、通信モジュールにおいて、ユーザ側の多ポートインターフェース部品(光トランシーバであれば光送信器、光受信器)の高密度実装が困難であったため、これまでは実現に至らなかった面もある。
【0091】
ICのサイズ、消費電力に関しては半導体プロセスの進歩(微細化)により小さくなってきている点が1つある。だがそれだけではなく、様々な実装上の工夫により小サイズ、大消費電力のスイッチICが通信モジュール1に実装可能となっている。1つは近年進歩しつつあるフレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板をトランシーバに効果的に利用することにより、内部の実装密度を飛躍的に高められるのである。
【0092】
ここで、通信モジュール1のより詳細な構成例を図2〜図4を用いて説明する。
【0093】
図2〜図4に示すように、通信モジュール1が備えるFRH基板7は、装置側の後部基板7bと、コネクタ側の前部基板7fと、これら前部および後部基板7f,7bを連結する第1フレキ基板41aと、後部基板7bの上方に設けられる上部基板7uと、その上部基板7uと後部基板7bとを連結する第2フレキ基板41bとからなる。
【0094】
本実施形態では、第2のフレキ基板41bは、後部基板7bの一側面から上方に湾曲させたものを用いた。
【0095】
また、後部基板7bの一方の面(表面)にPHY8aを搭載し、後部基板7bの他方の面(裏面)にスイッチIC2を搭載し、前部基板7fの表面に光送受信部9を構成する光送信部として光送信アセンブリ(TOSA)9tを搭載し、前部基板7fの裏面に光送受信部9を構成する光受信部として光受信アセンブリ(ROSA)9rを搭載する。すなわち、前部基板7fに、その前部基板7fを挟んで上下となるように光送信アセンブリ9tと光受信アセンブリ9rとを搭載する。
【0096】
光送信アセンブリ9tは、回路基板7からの電気信号を光信号に変換するためのものであり、光受信アセンブリ9rは、内部受信用テープファイバ10rからの光信号を電気信号に変換するためのものである。
【0097】
搭載したスイッチIC2と下ケース5dの隙間には、放熱部材として、放熱用ゴムやフィラー入りのアンダーフィルrを充填する。同様に、搭載した光送信アセンブリ9tと上ケース5uの隙間や、搭載した光受信アセンブリ9rと下ケース5dの隙間にも、放熱部材として、放熱用ゴムやフィラー入りのアンダーフィルrを充填する。
【0098】
光送信アセンブリ9tは、FRH基板7からの複数の電気信号をそれぞれ光信号に変換する発光素子としてのLD素子を有するLDモジュール42と、LD素子からの光信号を一括してそれぞれ集光する1つ(あるいは2つ以上)のレンズを有するレンズブロック43tと、レンズブロック43tに接続する1段MT光コネクタ44tとで主に構成される。
【0099】
LD素子としては、12個のLDチップをアレイ状に並べたVCSEL(面発光レーザ)アレイを用いる。LDモジュール42は、LD素子をセラミックパッケージ45に収納して気密封止したものであり、1cm×1cm程度の実装面積を有する。セラミックパッケージ45の前面側には、レンズブロック43tが固定され、セラミックパッケージ45の後面には、半田ボールが複数個格子状に並べて取り付けられる。つまり、セラミックパッケージ45はBGA(Ball Grid Array)はんだを構成する。レンズブロック43tに備えるレンズには、例えばマイクロレンズアレイを用いる。
【0100】
光送信アセンブリ9tのレンズブロック43tの前面には、1段MT(Mechanically Transferable:多芯一括接続が可能)光コネクタ44tが接続され、その1段MT光コネクタ44tに、光送信アセンブリ9tからの光信号を伝送する内部送信用テープファイバ10tの一端が接続される。1段MT光コネクタは、樹脂からなるフェルールにファイバ挿通穴を左右並列に複数個形成し、これら挿通穴で1本の光ファイバをそれぞれ軸合わせして保持・固定するものである。テープファイバは、単芯の光ファイバを左右並列に複数本(図では12本)並べ、並べたファイバをテープ状にまとめたものである(図3参照)。
【0101】
図2および図3に示すように、光コネクタ4としては、オス型2段MPO(MT型コネクタのフェルールを用いて、多芯一括接続が工具を使用せずに可能)光コネクタを用いる。このオス型2段MPO光コネクタは、ケース5に保持・固定される。
【0102】
オス型2段MPO光コネクタは、内部送信用テープファイバ10tの他端が上段に接続されると共に、内部受信用テープファイバ10rの一端が下段に接続される2段MT光コネクタと、その2段MT光コネクタに取り付けられ、外部コネクタとしてのメス型2段MPO光コネクタと係合するツメ部材(レセプタクル部)とからなる。
【0103】
このツメ部材とメス型2段MPO光コネクタの凹部とでラッチ機構を構成する。メス型2段MPO光コネクタには、図1の送受信用光ファイバ6が接続される。送受信用光ファイバ6としては光ケーブルを用いてもよいし、あるいはその前段に中継用の伝送路としてテープファイバを用いてもよい。
【0104】
ツメ部材内にメス型2段MPO光コネクタを挿入し、ツメ部材内でオス型2段MPO光コネクタ14とオス型2段MPO光コネクタを嵌合することで、内部送信用テープファイバ10tと送信用光ファイバが接続され、受信用光ファイバと内部受信用テープファイバ10rが接続される。
【0105】
光受信アセンブリ9rは、内部受信用テープファイバ10rの他端が接続される1段MT光コネクタ44rと、その1段MT光コネクタ44rが接続され、内部受信用テープファイバ10rからの複数の光信号を一括してそれぞれ集光する1つ(あるいは2つ以上)のレンズを有するレンズブロック43rと、レンズブロック43rからの複数の光信号をそれぞれ電気信号に変換する複数の受光素子(PD素子)を有するPDモジュールとで主に構成される。レンズブロック43rに備えるレンズには、例えばマイクロレンズアレイを用いる。
【0106】
PD素子としては、12個のPDチップをアレイ状に並べたPDアレイを用いる。PDモジュールは、PD素子をセラミックパッケージに収納して気密封止したものである。
【0107】
FRH基板7と、光送信アセンブリ9tと、内部送信用テープファイバ10tと、内部受信用テープファイバ10rと、光受信アセンブリ9rとオス型2段MPO光コネクタとは、図2に示すように、横断面が略コ字状の下ケース5dと横断面が略コ字状の上ケース5uとからなる上下2分割のケース5内に収納される。
【0108】
通信モジュール1の組み立ては、前部基板7fに光送信アセンブリ9tと光受信アセンブリ9rを配置し、これらアセンブリ9t,9rと前部基板7fとをフレキ基板46で電気的に接続する。
【0109】
他方、内部送信用テープファイバ10tの一端に1段MT光コネクタ44t、内部受信テープファイバ10rの他端に1段MT光コネクタ44r、さらに内部送信用テープファイバ10tの他端を上段に配置すると共に、内部受信用テープファイバ10rの一端を下段に配置して2段MT光コネクタを接続したものを用意する。
【0110】
光送信アセンブリ9tのレンズブロック43tに1段MT光コネクタ44tを接続すると共に、光受信アセンブリ9rのレンズブロック43rに1段MT光コネクタ44rを接続する。
【0111】
2段MT光コネクタにツメ部材を取り付けてオス型2段MPO光コネクタとする。その後、下ケース5dにFRH基板7を収納し、最後に、下ケース5d上に上ケース5uをネジで取り付けると、通信モジュール1が完成する。
【0112】
このように、FRH基板7に光部品や電気部品を搭載して通信モジュール1を構成すれば、3次元的な実装位置が自由になるため、トランシーバ筐体への熱結合が容易になる(10Gbit/sのトランシーバは消費電力が大きいため筐体は金属製である)。フレキ部分は導体を多層にすればマイクロストリップラインを容易に構成できるため、実装の自由度を保ちながら、内部の高速信号の伝送ラインを高密度で信頼性を高くして形成することが可能である。
【0113】
特に、発熱量が多いスイッチIC2や光送信アセンブリ9tなどを、アンダーフィルrを介してケース5内に収納しており、多機能であっても、放熱性が高く、通信モジュール1の動作時の温度上昇を抑えることができるため、信頼性の高い通信モジュール1を実現できる。
【0114】
また、トランシーバ内部にスイッチIC2を実装することにより、スイッチIC2からPHY8a、またはPHY8aから光送受信部9までの伝送線路(送受信レーン)は短くなるため、この部分の信号のやり取りにかかる消費電力を減らす回路的な工夫を加えることができる。
【0115】
例えば1Gbit/sクラスの信号は、通常特性インピーダンス50Ωとすることが多いが、伝送線路を短い距離にすれば特性インピーダンスを100Ωとすることができる。100Ωに合わせた回路にすれば、消費電流を半分に減らすことができ、一定電圧のもとでは消費電力を半分にできる。
【0116】
伝送線路が短い距離であれば信号劣化が少ないので、電圧振幅を減らすことにより、さらに消費電流を低減することが可能である。
【0117】
さらに、通信モジュール1を図2〜図4のように構成すれば、数Gbit/sクラス×10ch程度以上の多チャンネル高速光送受信が1つのトランシーバ筐体内で実現できるようになる。
【0118】
すなわち、図2〜図4で説明した通信モジュール1では、まず、ユーザ側光コネクタ4を12ch×2列の上下2段とし、コネクタ構成を工夫してモジュールの小型化を図った。
【0119】
さらに、送信側、受信側を独立させた光送信アセンブリ9t、光受信アセンブリ9rを採用し、これらと光コネクタ4をテープファイバによるピグテール構造とし、前部基板7fの表裏面に分けて光送信アセンブリ9t、光受信アセンブリ9rを実装した。
【0120】
これにより、送信用の通信信号は前部基板7fの表面を流れ、受信用の通信信号は前部基板fの裏面を流れるので、送信と受信の電気的クロストークを低減できる。
【0121】
更に好ましくは、前部基板7fの内部に、前部基板7fの一方の面(表面)を流れる送信用通信信号と、前部基板7fの他方の面(裏面)を流れる受信用通信信号とを電気的に遮蔽するグランド層を設けてもよい。このグランド層を設けることで、送信と受信の電気的クロストークをより低減することができる。
【0122】
以上のように、実装構造、回路、光送受信部の様々な工夫を組み合わせることにより、スイッチ回路を内蔵した本実施形態に係る通信モジュール1が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の好適な実施形態を示すパケットスイッチ機能付通信モジュールを備えた通信装置のブロック図である。
【図2】図1に示したパケットスイッチ機能付通信モジュールのより詳細な構成例を示す断面図である。
【図3】図1に示したパケットスイッチ機能付通信モジュールに用いる光コネクタの正面図である。
【図4】図1に示したパケットスイッチ機能付通信モジュールのより詳細な構成例を示す斜視図である。
【図5】従来の通信装置の概略図である。
【符号の説明】
【0124】
1 通信モジュール
2 スイッチIC(スイッチ部)
3 入出力ポート
4 光コネクタ
11 通信装置
13 定格通信モジュール
14a〜14d PHY(装置側信号処理回路)
15 スイッチLSI

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続される複数個の定格通信モジュールより所定の通信速度で送受信される通信信号を処理する複数個の装置側信号処理回路と、通信信号の送信先を切り替えるスイッチLSIとを備えた通信装置に装着されると共に、上記各定格通信モジュールに接続され、これら各定格通信モジュールや複数個の外部装置と送受信するための通信モジュールであって、 上記各定格通信モジュールの通信速度で送受信される通信信号を複数の通信信号に分け、あるいは上記各外部装置の通信速度で送受信される通信信号をまとめるスイッチ機能を有するスイッチ部と、
複数個のポートを有し、上記スイッチ部と接続されるコネクタと
を備えたことを特徴とするスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項2】
回路基板に上記スイッチ部を搭載し、上記回路基板に上記通信装置と接続する接続端子を複数個形成し、上記通信装置に着脱自在に設けた請求項1記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項3】
通信装置本体との通信速度が略10Gbit/sであり、上記外部装置とのインターフェース速度が略1Gbit/sであり、上記複数個のポートが10〜24ポートである請求項1または2記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項4】
通信装置本体との通信速度が略40Gbit/sであり、上記外部装置とのインターフェース速度が略10Gbit/sであり、上記複数個のポートが4ポートである請求項1または2記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項5】
上記回路基板はフレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板であり、そのフレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板に、上記スイッチ部と、光電変換機能を有する光送受信部と、上記スイッチ部と上記光送受信部間の通信信号を処理するモジュール側信号処理回路とを搭載した請求項2〜4いずれかに記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項6】
上記フレキシブル・リジッド・ハイブリッド基板は、上記通信装置側の後部基板と、上記コネクタ側の前部基板と、これら前部および後部基板を連結する第1フレキ基板と、上記後部基板の上方に設けられる上部基板と、その上部基板と上記後部基板とを連結する第2フレキ基板とからなる請求項5記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項7】
上記後部基板の一方の面に上記モジュール側信号処理回路を搭載し、上記後部基板の他方の面に上記スイッチ部を搭載し、上記前部基板に上記光送受信部を搭載した請求項5または6記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項8】
上記コネクタは、内部送受信用テープファイバを多心一括接続する光コネクタからなり、その光コネクタと上記光送受信部を構成する光送信部とを内部送信用テープファイバで接続すると共に、上記光コネクタと上記光送受信部を構成する光受信部とを内部受信用テープファイバで接続し、上記前部基板に、その前部基板を挟んで上下に上記光送信部と上記光受信部とを搭載した請求項6または7記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項9】
上記前部基板の内部に、上記前部基板の一方の面を流れる送信用通信信号と、上記前部基板の他方の面を流れる受信用通信信号とを電気的に遮蔽するグランド層を設けた請求項6〜8いずれかに記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項10】
上記コネクタは、複数本のツイストペアケーブルを接続する電気コネクタからなる請求項1〜4いずれかに記載のスイッチ機能付通信モジュール。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載したスイッチ機能付通信モジュールを備えたことを特徴とする通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−67164(P2008−67164A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244161(P2006−244161)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】