説明

スイッチ装置

【課題】低荷重の押圧操作で電極間が導通する構成において、押圧操作により確実に導通することができると共に、非押圧状態では非導通状態を確実に維持することができるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】プリント基板5には複数のスイッチ素子6が搭載されており、保護シート7で保護されている。このスイッチ素子6は、弾性基材8の表面に形成された貯留部9に導電性液体12を貯留して構成されている。貯留部9の内壁面には電極11が形成されており、導電性液体12により電極11間が導通している。操作部10を押圧操作すると、貯留部9の底面が低下し、それに伴って導電性液体12の液面が低下するので、電極11間の導通が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低荷重で操作可能なスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスイッチ装置において、低荷重の押圧操作で接点間の導通ができる低荷重操作用のスイッチ装置、例えばメンブレンスイッチに対する市場の必要性が高まっている。
従来のメンブレンスイッチは、シート状の可動電極と固定電極との間にスペーサにより所定間隙を設け、使用者の可動電極に対する押圧操作により低荷重で接点間の導通を行うことができるものであった(特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2005−528740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、シート状の可動電極と固定電極との間をスペーサにより所定間隙を保持する構成であることから、可動電極における狭い領域が押圧操作された場合は、荷重が集中することにより可動電極が容易に変形して固定電極に接触して導通するものの、指先のように比較的広い領域で押圧操作された場合は、荷重が分散することにより可動電極が変形しにくくなり、電極間が導通しにくくなる。また、温度変化などにより各部材の寸法に変動を生じると、非押圧操作状態で電極間の非導通状態を維持することが困難となる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、低荷重の押圧操作で電極間が導通する構成において、押圧操作により確実に導通することができると共に、非押圧状態では非導通状態を確実に維持することができるスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、弾性基材と、この弾性基材に形成された貯留部と、この貯留部に貯留された導電性液体と、この導電性液体に浸漬した状態で導通する一対の電極と、押圧操作に応じて前記貯留部の底面を押圧する操作部とを有するスイッチ素子を備えたスイッチ装置であって、前記操作部に対する押圧操作に応じて前記貯留部に貯留された前記導電性液体の液面を低下させることにより前記電極間の導通を解除するものである(請求項1)。
【0006】
上記構成において、前記操作部は、前記弾性基材に一体に形成されているのが望ましい(請求項2)。
前記スイッチ素子がプリント基板に複数搭載された状態で保護シートにより被覆されることによりメンブレンスイッチとして構成するようにしてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、通常時は、弾性基材の貯留部に貯留されている導電性液体により一対の電極間が導通しており、スイッチ素子はオンしている。操作部が押圧操作されると、操作部により貯留部の底面が押圧されて弾性変形するので、貯留部に貯留されている導電性液体の液面が低下する。これにより、導電性液体による電極の導通が解除されるので、スイッチ素子をオフすることができる。この場合、弾性基材は変形し易いので、荷重面積の大小にかかわらず電極間の導通を確実に解除させることができる。また、例えば周囲温度の上昇により各部材の寸法が変動するにしても、その変動を貯留部の弾性変形により吸収することが可能となる。
【0008】
請求項2の発明によれば、操作部は、弾性基材に一体に形成されているので、貯留部と操作部との位置精度を高めることができる。
請求項3の発明によれば、スイッチ装置をメンブレンスイッチとして構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例につき図面を参照して説明する。
図3には、本発明を自動車のカーナビゲーションの操作に用いられるスイッチ装置として使用した実施例が示されている。このスイッチ装置1は、運転者が車両を運転しながら操作可能な位置に設置されるもので、スイッチ装置1に対する操作位置がカーナビゲーション2の表示器3にカーソル位置として表示されるようになっている。
【0010】
図3に示すように、スイッチ装置1は、ケース4内にプリント基板5(図1参照)を収納して構成されている。プリント基板5の表面には複数のスイッチ素子6がマトリックス状に実装されており、それらのスイッチ素子6を保護シート7で被膜することによりメンブレンスイッチとして構成されている。使用者は、スイッチ装置1の表面を軽くなぞり、決定したい箇所に来たときに、指をスイッチ装置1から離すことで決定操作が可能となる。
【0011】
図1はスイッチ素子6の縦断側面図を示し、図2はスイッチ素子6の平面図を示している。尚、図2では保護シート7の図示を省略した。これらの図1及び図2に示すように、スイッチ素子6は、例えばシリコーン樹脂からなる直方体形状の弾性基材8を主体として形成されている。弾性基材8の表面には陥没形状の貯留部9が形成されている。貯留部9の底面には円柱形状の操作部10が一体に立設されており、その操作部10の頂点が弾性基材8の表面よりも上方に突出している。これらの貯留部9及び操作部10は、弾性基材8を金型成型する際に同時に形成されている。
【0012】
貯留部9の内壁上部から弾性基材8の表面にわたって一対の電極11が形成されており、その電極11が図示しないワイヤボンディグによりプリント基板の図示しない配線パターンと接続されている。
貯留部9には導電性液体12が貯留されている。この導電性液体12は、導電性フィラー入りの液体、或いは導電性ペーストからなる。通常時においては、電極11は導電性液体12に浸漬しており、これにより、電極11間が導通してスイッチ素子6がオンしている。
【0013】
次に上記構成の作用について説明する。
カーナビゲーション2を動作させると、表示器3にはその時点で操作可能な動作に対応したボタンが表示される。
通常時においては、スイッチ素子6の電極11の先端部が貯留部9に貯留されている導電性液体12に浸漬しているので、導電性液体12により電極11間が導通、つまりスイッチ素子6はオン状態となっている。
【0014】
車両の運転者は、スイッチ装置1の表面をなぞる感覚でスイッチ装置1の表面に対して指による低荷重の押圧操作(タッチ操作)を行う。すると、指で低過重の押圧操作が行われた部位に位置するスイッチ素子1の操作部10が図4に示すように貯留部9の底面を下方に押圧するので、貯留部9の底面が弾性変形し、それに伴って貯留部9に貯留されている導電性液体12の液面が低下する。これにより、導電性液体12が電極11の端部位置よりも低下するようになるので、導電性液体12により導通していた電極11間の導通が解除され、スイッチ素子6がオフしたことを示す検出信号がカーナビゲーション2に出力される。この場合、使用者によるタッチ操作に応じて複数のスイッチ素子6がオフしたときは、複数のスイッチ素子6がオフしたことを示す検出信号がカーナビゲーション2に出力される。
【0015】
カーナビゲーション2は、1個のスイッチ素子6がオフしたことを検出したときは、オフしているスイッチ素子6の位置に対応した位置に表示器3に表示しているカーソルを移動する。また、複数のスイッチ素子6がオフしていることを検出したときは、それらのスイッチ素子6の中心位置にカーソルを移動する。従って、運転者がスイッチ装置1に対するタッチ操作位置を移動したときは、それに伴って表示器3に表示されているカーソル位置が移動することになる。このとき、表示器3に表示しているボタンにカーソルが位置したときは、そのボタンを選択表示することにより当該ボタンが選択されていることを示す。
【0016】
運転者は、スイッチ装置1に対するタッチ操作により表示器3に表示されている所望のボタンが選択表示されたときは、スイッチ装置1に対するタッチ操作を解除する。すると、操作部10に対する押圧操作が解除され、貯留部9の弾性変形が解除されて元形状に復帰するので、導電性液体12の液面が上昇して電極11の先端部を上回るようになる。これにより、スイッチ装置1から指を離した位置で、その位置のスイッチ素子6が最後にオンするので、カーナビゲーション2は、最後にオンしたスイッチ素子6の位置で決定操作が行われたと判断する。この場合、スイッチ素子6がオフする場合と同様に、複数のスイッチ素子6が同時にオンしたときは、その中心位置で決定操作が行われたと判断する。
カーナビゲーション2は、上述のようにボタンが選択表示した状態で決定操作が行われたときは、その時点で選択表示されているボタンに応じた動作を実行する。
【0017】
このような実施例によれば、操作部10に対する押圧操作により弾性基材8に形成した貯留部9に貯留された導電性液体12の液面を低下させるようにしたので、導電性液体12による電極11の導通を解除してスイッチ素子6をオフすることができる。この場合、弾性部材8は変形し易いので、荷重面積の大小にかかわらず電極11間の導通状態を確実に解除させることができる。また、周囲温度の上昇により各部材の寸法が変動するにしても、その変動を貯留部9の貯留された導電性液体12により吸収することが可能となる。さらに、保護シート7の寸法が変動するにしても、保護シート7をスイッチ素子6で支持することができるので、通常時においてスイッチ素子6のオフ状態を確実に維持することができる。
【0018】
しかも、操作部10を弾性基材8に金型により一体に形成するようにしたので、操作部10を別体で設ける構成に比較して、貯留部9と操作部10との位置精度を高めることができると共に、弾性基材8を極めて精密に形成することができる。
【0019】
本発明は、上記しかつ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
弾性基材8をシリコーン樹脂以外の弾性部材から形成してもよい。
操作部10を弾性基材8の硬度よりも大きく形成するようにしてもよい。このような形成方法としては、二色成型(異材質成型、混色成型)、硬質化処理などにより実施可能である。また、操作部10内に硬質部材をインサートすることにより操作部10の強度を高めるようにしてもよい。
【0020】
保護シート7に操作部10を一体に形成するようにしてもよい。
弾性基材8において貯留部9の下方側となる部位に空間部を形成することにより、操作部10に対する押圧操作力を一層低減するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示すスイッチ素子の縦断面図
【図2】スイッチ素子の平面図
【図3】スイッチ装置の斜視図
【図4】押圧操作状態で示す図1相当図
【符号の説明】
【0022】
図面中、1はスイッチ装置、6はスイッチ素子、8は弾性基材、9は貯留部、10は操作部、11は電極、12は導電性液体である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性基材と、この弾性基材に形成された貯留部と、この貯留部に貯留された導電性液体と、この導電性液体に浸漬した状態で導通する一対の電極と、押圧操作に応じて前記貯留部の底面を押圧する操作部とを有するスイッチ素子を備えたスイッチ装置であって、
前記操作部に対する押圧操作に応じて前記貯留部に貯留された前記導電性液体の液面を低下させることにより前記電極間の導通を解除することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記弾性基材に一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記スイッチ素子がプリント基板に複数搭載された状態で保護シートにより被覆されることによりメンブレンスイッチとして構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のスイッチ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−21594(P2008−21594A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194213(P2006−194213)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】