説明

スイッチ装置

【課題】潤滑剤による接点周辺の汚染を極力防ぐとともに潤滑剤の塗布量の管理を容易にし、ひいては生産性の向上を図る。
【解決手段】スイッチ装置は、操作部材22と、固定接点と、可動接片20と、摺動子27と、潤滑剤29と、を備える。摺動子27は、潤滑成分を含む材料で形成され、操作部材22側が開口しかつ可動接片20側が閉塞した非貫通の穴272を有する。初期の使用状態では、摺動子27が有する潤滑成分により潤滑性を維持する。ある期間使用すると、摺動子27は、可動接片20上を摺動することに伴い摺動子27の可動接片20との接触部分が摩耗して穴272が貫通する。潤滑剤29は、この貫通した穴272を伝って摺動子27と可動接片20との接触部分に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動子の移動により可動接片の接触状態が切替わる構成のスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摺動子の移動により可動接片の接触状態が切替わる構成のスイッチ装置が公知である。このようなスイッチ装置は、例えば、操作力を受ける操作部材と、固定接点と、揺動して固定接点との接触状態が切替えられる可動接片と、操作部材の操作に伴い先端部が可動接片上を摺動して可動接片を揺動させる摺動子と、を備えている。従来のスイッチ装置の場合、摺動子と可動接片との接触部分には、滑りを良好にするために予めグリースなどの潤滑剤が塗布される。
【0003】
この場合、潤滑剤の量が少なすぎると、摺動子は、可動接片との摩擦が増大して摺動が困難になるいわゆるスティッキングを起こす。また、潤滑剤の量が多すぎると、潤滑剤は、可動接片と固定接片との間に垂れ落ちて接点周辺の異常発熱や接点不良を引き起こす。このようなことが発生すると、可動接片および固定接片は劣化して、スイッチ装置の寿命の低下を招くことになる。このため、作業者は、スイッチ装置を組立てる際、摺動子と可動接片との間に塗布する潤滑剤の塗布量を厳しく管理しなければならないという事情があった。
【0004】
このような事情から、例えば特許文献1の発明が開示されている。特許文献1に開示されたものでは、摺動子に内外を連通する穴を形成し、この摺動子の内部に潤滑剤を配設している。潤滑剤は、摺動子の移動に伴って穴から僅かにしみ出て可動接片に供給される。これによれば、作業者は、スイッチ装置を組立てる際、摺動子と可動接片との間に潤滑剤を塗布する必要がない。したがって、作業者は、摺動子と可動接片との間に塗布する潤滑剤の塗布量を厳しく管理する必要もなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−173433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたものでは、スイッチ装置を組立てる際、潤滑剤が摺動子の内外を連通する穴から漏れ出て周囲を汚染するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、潤滑剤による接点周辺の汚染を極力防ぐとともに潤滑剤の塗布量の管理を容易にし、ひいては生産性の向上が図られるスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のスイッチ装置は、操作部材と、固定接点と、揺動可能に設けられ、揺動に伴い前記固定接点との接触状態が切替えられる可動接片と、前記操作部材と前記可動接片との間に配置されるとともに、付勢手段により前記可動接片側へ付勢して設けられ、前記操作部材の操作に伴い先端部が前記可動接片上を摺動して前記可動接片を揺動させる摺動子と、前記摺動子と前記操作部材との間に設けられる潤滑剤と、を備える。前記摺動子は、潤滑成分を含む材料で形成され、前記操作部材側が開口しかつ前記可動接片側が閉塞した非貫通の穴を有し、前記摺動子が前記可動接片上を摺動することに伴い前記摺動子の前記可動接片との接触部分が摩耗して前記穴が貫通し、その貫通した前記穴を伝って前記潤滑剤が前記摺動子と前記可動接片との接触部分に供給される。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、摺動子は、操作部材側が開口しかつ可動接片側が閉塞した非貫通の穴を有している。このため、摺動子と操作部材との間に設けられた潤滑剤は、スイッチ装置の組立ての際、穴から漏れ出ることはない。また、摺動子は潤滑成分を含む材料で形成されている。このため、摺動子は、摺動子に含まれている潤滑成分により滑らかに摺動する。これにより、摺動子は、可動接片との接触部分に潤滑剤を塗布しなくても十分な潤滑性能を確保できる。そのため、作業者は、可動接片と摺動子との接触部分に予め潤滑剤を塗布する必要がない。この結果、スイッチ装置の組立て時および使用時において、潤滑剤による接点周辺の汚染を極力防ぐとともに潤滑剤の塗布量の管理が容易になり、ひいては生産性の向上が図られる。
【0010】
また、摺動子に設けられた非貫通の穴は、摺動子が摩耗することにより貫通する。そして、摺動子と操作部材との間に設けられた潤滑剤は、この貫通した穴を伝って摺動子と可動接片との接触部分に供給される。このため、摺動子に含まれる潤滑成分が経年により揮発して摺動子と可動接片との摩擦抵抗が増大した場合、摺動子と可動接片との接触部分に潤滑剤が供給される。これによれば、摺動子は、スイッチ装置の使用初期段階では操作子に含まれる潤滑成分により潤滑され、長期使用した場合は摺動子と操作部材との間に設けられた潤滑剤により潤滑される。これにより、潤滑剤の消費が抑えられ、その結果、スイッチ装置の長寿命化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態によるスイッチ装置の第一切替部周辺の縦断側面図
【図2】第二切替部周辺の縦断側面図
【図3】可動接片の斜視図
【図4】電気回路を示す概略図
【図5】摺動子周辺の断面構成を示すもので、(a)は穴が非貫通の状態、(b)は穴が貫通した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、車両のパワーウインドウを操作するスイッチ装置10を示している。以下、図1および図2において左側をスイッチ装置10の前方とし、右側をスイッチ装置10の後方として説明する。スイッチ装置10は、図1および図2に示すように、基台11を備えている。基台11は、図4に示す電気回路を有している。この電気回路は、図示しない窓ガラスを開閉するため、図4に示すモータMの電流制御を行う。モータMは、スイッチ装置10により供給される電流の向きが切替えられて正回転および逆回転が切替えられる。基台11は、図1、図2、および図4に示すように、二個の切替部12、13が設けられている。これら切替部12、13は、互いの配置を前後逆にして図1における奥行方向に並んでいる。また、基台11は仕切壁111を有している。これにより二個の切替部12、13は独立して区画されている。
【0013】
次に、二個の切替部12、13のうち、図1に示す切替部を第一切替部12とし、図2に示す切替部を第二切替部13として説明する。第一切替部12および第二切替部13は、それぞれグランド端子14、負荷端子15、バッテリ端子16、グランド接点17、負荷接点18、バッテリ接点19、および可動接片20を有している。図4に示すように、グランド端子14はグランドGNDに接続されている。また、負荷端子15はモータMに接続されている。そして、バッテリ端子16はバッテリのプラス端子+Bに接続されている。
【0014】
本実施形態の場合、図1に示すように、第一切替部12のグランド端子14、負荷端子15、およびバッテリ端子16は、前方から順に基台11に設けられている。また、図2に示すように、第二切替部13のグランド端子14、負荷端子15、およびバッテリ端子16は、後方から順に基台11に設けられている。図1および図2に示すように、これらグランド端子14、負荷端子15、およびバッテリ端子16は、基台11に埋め込まれるとともに、その一部が基台11から露出している。この場合、グランド端子14は、基台11から露出している部分にグランド接点17を有している。負荷端子15は、端部が立ち上がって基台11から露出している。この立ち上がりの部分を負荷接点18としている。バッテリ端子16は、基台11から露出している部分にバッテリ接点19を有している。これらグランド接点17、負荷接点18、およびバッテリ接点19は固定接点を構成する。
【0015】
可動接片20は、基台11の上側に配置されている。この可動接片20は、金属板などの導体で形成されている。具体的には、可動接片20は、図1、図2、および図4に示すように前後方向に長く形成されている。この可動接片20は、長手方向の中央付近をV字状に曲げた谷部201を有している。また可動接片20は、一方の端部にグランド接点部202を有し、他方の端部にバッテリ接点部203を有している。そして、可動接片20は、図3に示すように、谷部201とバッテリ接点部203との間に位置してバッテリ接点部203の両側に負荷接点部204を有している。この負荷接点部204は、下向き開放した逆U字状に曲げられている。可動接片20は、図1および図2に示すように、逆U字状に曲げた負荷接点部204を負荷接点18に引っかけて、基台11上に配置されている。これにより、可動接片20は、負荷接点部204が負荷接点18に接触した状態で負荷接点18を中心に揺動可能に設けられている。
【0016】
また、スイッチ装置10は、図1および図2に示すように、ボデー21および操作部材22を備えている。ボデー21は、主体部23および取付部24を有している。ボデー21の主体部23および取付部24は内側に空間を形成している。主体部23は、上部が取付部24の下部に接続している。そのため、主体部23と取付部24との内側の空間は連通している。また、取付部24は上側が開口している。これら主体部23と取付部24とは、例えば樹脂などにより一体に形成されている。
【0017】
操作部材22は、ボデー21に揺動可能に設けられている。具体的には、操作部材22は、下方に突出する突出部25を有している。突出部25は、図1および図2の奥行方向における両外側に軸部26を有している。操作部材22は、突出部25がボデー21の取付部24内部に収容されるとともに、突出部25の軸部26がボデー21の取付部24に回転可能に取付けられる。そのため、操作部材22は、軸部26を中心に前後方向に揺動可能となっている。
【0018】
操作部材22は、突出部25の内部において、図1および図2に示すように、二個の円筒部251を有している。この二個の円筒部251は、図1の奥行方向に並んで設けられており、それぞれ独立した円筒形状の空間を形成している。この場合、図1に示す円筒部251は、第一切替部12の可動接片20の上方に設けられている。また、図2に示す円筒部251は、第二切替部13の可動接片20の上方に設けられている。つまり、二個の円筒部251は、それぞれ第一切替部12および第二切替部13に対応している。
【0019】
操作部材22の円筒部251は、突出部25の下側、すなわち可動接片20側が開口し、軸部26付近まで窪んでいる。そして円筒部251は、その中心軸が軸部26の中心軸に対してほぼ直角に配置されている。また、操作部材22は、図1、図2、および図4に示すように、円筒部251の内部においてそれぞれ支え部252を有している。これら二個の支え部252は、円筒部251における軸部26付近の底から円筒部251の開口へ向かって下方へ突出している。
【0020】
また、スイッチ装置10は、図1および図2に示すように、二個の摺動子27および二個のコイルばね28を備えている。この場合、コイルばね28は付勢手段を構成する。摺動子27は、可動接片20と操作部材22との間に配置されている。具体的には、摺動子27は、円柱形状に形成され、図5(a)に示すように可動接片20側となる下側の先端部271が球面状に形成されている。この摺動子27は、一方の端部となる上端部が操作部材22の円筒部251の内部に収容され、この円筒部251の内壁に案内されて移動する。また、摺動子27は、他方の端部となる下端部が操作部材22の円筒部251から露出して、その先端部271が可動接片20に接触している。この摺動子27は、例えばポリアセタール系の樹脂にワックスなどの潤滑成分を含有させた材料で形成されている。そして、摺動子27は、図5(a)に示すように複数、この場合二本の誘導路272を有している。この誘導路272は、特許請求の範囲の穴を構成している。誘導路272は、摺動子27の中心軸とほぼ平行に設けられている。そして、誘導路272は、操作部材22側すなわち図5(a)において上側が開口しかつ可動接片20側すなわち図5(a)において下側が閉塞した非貫通の穴を形成している。
【0021】
摺動子27は、円筒部251内の支え部252に対向する端部にばね受部273を有している。ばね受部273は、摺動子27の可動接片20側とは反対側の端縁が円筒形状に窪んで形成されている。そして、コイルばね28は、操作部材22の円筒部251内部に収容されている。この場合、コイルばね28は、操作部材22および摺動子27の間に配置されている。コイルばね28は、図1および図2に示すように、一方の端の内部に支え部252が挿入されている。また、コイルばね28は、図5に示すように、他方の端が摺動子27のばね受部273に収容されている。そのため、摺動子27は、コイルばね28により円筒部251の開口側、つまり可動接片20側へ付勢されている。これにより、摺動子27は、コイルばね28から弾性力を受けて、先端部271を可動接片20に押しつけている。
【0022】
また、摺動子27と操作部材22との間には、潤滑剤29が設けられている。潤滑剤29は、主に摺動子27やコイルばね28の駆動を滑らかにして駆動に伴う音を低減させる。この潤滑剤29は、例えばグリースや潤滑油などである。この潤滑剤29は、スイッチ装置10を組立てる際、摺動子27と操作部材22との間に塗布される。
【0023】
次に、上記構成の作用について説明する。
スイッチ装置10の操作部材22は、使用者によって図1および図2の矢印C1または矢印C2に示す方向へ操作される。以下、操作部材22が操作されていない状態を中立状態として説明する。中立状態では、スイッチ装置10の二個の摺動子27は、それぞれの先端部271が切替部12、13における可動接片20の谷部201に入り込んでいる。この中立状態では、切替部12、13の可動接片20は、図1および図2に示すように、グランド接点部202がグランド接点17に接触しているとともに、負荷接点部204が負荷接点18に接触している。このため、各可動接片20は、図4に実線で示すように、それぞれグランド接点17および負荷接点18の間を電気的に接続する。その結果、電源から供給される電流はモータMには流れず、モータMは停止している。
【0024】
スイッチ装置10は、操作部材22が使用者によって図1および図2に示す矢印C1方向へ揺動操作されると、第二切替部13の電気的接続が切替わる。具体的には、使用者により操作部材22が矢印C1方向へ揺動操作されると、第一切替部12および第二切替部13の摺動子27は、対応する可動接片20上面を摺動する。この場合、図1に示す第一切替部12の摺動子27は、可動接片20の上面において谷部201とグランド接点部202との間を摺動する。このとき、第一切替部12の可動接片20は、グランド接点部202がグランド接点17に接触しているため、揺動が規制されている。このため、第一切替部12の可動接片20は、谷部201からグランド接点部202の間において、摺動子27から力を受けてもこれ以上揺動しない。その結果、第一切替部12の接触状態は中立状態から切替わらない。つまり、第一切替部12は、図4に実線で示すように第一切替部12のグランド接点17および負荷接点18の間を電気的に接続している。この場合、第一切替部12のコイルばね28は、摺動子27が操作部材22の軸部26方向へ押し込まれることにより弾性力が増している。
【0025】
これに対し、図2に示す第二切替部13の摺動子27は、可動接片20の上面において谷部201とバッテリ接点部203との間を摺動する。このとき、第二切替部13の可動接片20は、バッテリ接点部203がバッテリ接点19に接触していない。このため、第二切替部13の可動接片20は、揺動の中心となる負荷接点部204からバッテリ接点部203の間において摺動子27から力を受けると、負荷接点部204を中心にバッテリ接点部203がバッテリ接点19に接触する方向へ揺動する。すると、第二切替部13の可動接片20は、グランド接点部202がグランド接点17から離れるとともに、バッテリ接点部203がバッテリ接点19に接触する。これにより、第二切替部13は、可動接片20の揺動に伴って接触状態が切替わる。つまり、第二切替部13は、図4に二点鎖線で示すように第二切替部13の負荷接点18およびバッテリ接点19の間を電気的に接続する。また、この場合も、第二切替部13のコイルばね28は、摺動子27が操作部材22の軸部26方向へ押し込まれることにより弾性力が増している。
【0026】
このように、スイッチ装置10は、操作部材22が使用者によって図1および図2に示す矢印C1方向へ揺動操作されると、第一切替部12のグランド接点17と負荷接点18とが電気的に接続されるとともに、第二切替部13の負荷接点18とバッテリ接点19とが電気的に接続される。すると図示しない電源から供給される電流は、図4に示す矢印A1方向へ流れる。これによりモータMは正回転して図示しない窓ガラスを上昇させる。
【0027】
その後、使用者が操作部材22の操作を解除すると、切替部12、13に対応する摺動子27は、コイルばね28に蓄積された弾性力を可動接片20に作用させる。これにより、摺動子27は可動接片20上を摺動する。すると、操作部材22は、摺動子27の摺動に伴って揺動する。そして、操作部材22は、摺動子27の先端部271が可動接片20の谷部201へ入り込んで中立状態に戻る。このとき、第二切替部13は、その接触状態が中立状態に切替わる。これにより、モータMへ供給される電流は遮断されて、モータMは停止する。
【0028】
次に、使用者が操作部材22を図1および図2に示す矢印C2方向へ揺動操作した場合について説明する。本実施形態の場合、第一切替部12および第二切替部13は、構成を前後逆にして配置されている。このため、スイッチ装置10は、操作部材22が使用者によって図1および図2に示す矢印C2方向へ揺動されると、矢印C1方向へ揺動した場合とは逆の作用、つまり第一切替部12の電気的接続が切替わる。具体的には、図1に示す第一切替部12の可動接片20は、揺動してグランド接点部202がグランド接点17から離れるとともに、バッテリ接点部203がバッテリ接点19に接触する。これにより、第一切替部12は、可動接片20の揺動に伴って接触状態が切替わり、第一切替部12における負荷接点18およびバッテリ接点19の間を電気的に接続する。これに対し、図2に示す第二切替部13の可動接片20は揺動しない。このため、第二切替部13の接続状態は中立状態から切替わらない。つまり、第二切替部13は、第二切替部13のグランド接点17および負荷接点18の間を電気的に接続している。
【0029】
このように、スイッチ装置10は、操作部材22が使用者によって図1および図2に示す矢印C2方向へ揺動操作されると、図1に示す第一切替部12の負荷接点18とバッテリ接点19とが電気的に接続されるとともに、図2に示す第二切替部13のグランド接点17と負荷接点18とが電気的に接続される。すると図示しない電源から供給される電流は、図4に示す矢印A2方向へ流れる。これによりモータMは逆回転して図示しない窓ガラスを下降させる。
【0030】
また、使用者が操作部材22の操作を解除すると、切替部12、13に対応する摺動子27は、コイルばね28に蓄積された弾性力を可動接片20に作用させる。これにより、摺動子27は可動接片20上を摺動する。すると、操作部材22は、摺動子27の摺動に伴って揺動する。そして、操作部材22は、摺動子27の先端部271が可動接片20の谷部201へ入り込んで中立状態に戻る。このとき、第一切替部12は、その接触状態が中立状態に切替わる。これにより、モータMへ供給される電流は遮断されて、モータMは停止する。
【0031】
ここで、摺動子27の細部について図5(a)、(b)を用いて説明する。図5(a)は、スイッチ装置10を使用して間もない初期の状態を示している。摺動子27は、ワックスなどの潤滑成分を含んだ材料で形成されている。このため、摺動子27は、可動接片20上面を摺動することに伴って、可動接片20との接触部分に、摺動子27が含有する潤滑成分を供給する。これにより、摺動子27は、可動接片20との接触部分が潤滑されて可動接片20の上面を滑らかに摺動する。
【0032】
次に、図5(b)は、スイッチ装置10をある期間使用した状態を示している。スイッチ装置10をある期間使用した場合、摺動子27に含まれる潤滑成分は期間の経過に伴って揮発してその量が減少する。すると、摺動子27と可動接片20との接触部分に供給される潤滑成分の量も減少する。そして、摺動子27は、可動接片20に対する摩擦抵抗が増大する。この状態でスイッチ装置10をさらに使用すると、摺動子27は、可動接片20との接触部分、つまり先端部271の摩耗が進行する。そして、摺動子27の先端部271の摩耗は誘導路272まで進行し、その結果誘導路272が貫通する。
【0033】
この場合、摺動子27と操作部材22との間に設けられた潤滑剤29は、誘導路272の内部に充満している。そして、この潤滑剤29は、摺動子27が可動接片20上面を摺動することに伴い、誘導路272を伝って摺動子27の先端部271に微小量供給される。これにより、摺動子27は、可動接片20との接触部分が潤滑されて可動接片20の上面を滑らかに摺動する。この場合、潤滑剤29は、本来の目的である摺動子27やコイルばね28の潤滑および消音機能に加えて、摺動子27に含まれる潤滑成分による潤滑機能が低下した場合における予備の潤滑剤としての機能も発揮する。この場合、潤滑剤29の供給量は、潤滑剤29の粘度やちょう度、および誘導路272の内径、長さ、および本数などを変更することにより、任意に設定することができる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、摺動子27は、操作部材22側が開口しかつ可動接片20側が閉塞した非貫通の誘導路272を有している。このため、摺動子27と操作部材22との間に設けられた潤滑剤29は、スイッチ装置10の組立ての際、誘導路272から可動接片20側に漏れ出ることはない。また、摺動子27は潤滑成分を含んだ材料で形成されている。このため、摺動子27は、スイッチ装置10の使用初期の段階では摺動子27に含まれている潤滑成分により滑らかに摺動する。これにより、摺動子27は、可動接片20との接触部分に予め潤滑剤を塗布しなくても、十分な潤滑性能を確保できる。そのため、作業者は、スイッチ装置10を組立てる際、摺動子27と可動接片20との接触部分に予め潤滑剤を塗布する必要がない。この結果、スイッチ装置10の組立て時および使用時において、潤滑剤による切替部12および切替部13の周辺の汚染を極力防ぐとともに潤滑剤の塗布量の管理が容易になる。
【0035】
また、摺動子27に設けられた誘導路272は、初期段階では可動接片20側が閉塞している。しかし、スイッチ装置10をある期間使用すると、摺動子27に設けられた誘導路272は、摺動子27の先端部271が摩耗することに伴い貫通する。すると、摺動子27と操作部材22との間に設けられた潤滑剤29は、貫通した誘導路272を伝って摺動子27の先端部271側に供給される。これにより、摺動子27は、可動接片20との接触部分が潤滑剤29に潤滑されて滑らかに摺動する。このように、摺動子27は、初期段階では摺動子27に含まれる潤滑成分により潤滑され、ある期間使用した段階では摺動子27と操作部材22との間に設けられた潤滑剤29により潤滑される。このため、潤滑剤29は初期段階では消費されず、潤滑剤29の消費が抑えられる。その結果、スイッチ装置10の長寿命化が図られる。
【0036】
さらに、潤滑剤29は、摺動子27やコイルばね28を潤滑して消音するために本来的に摺動子27と操作部材22との間に設けられている。そのため、摺動子27と可動接片20との接触部分に供給するための潤滑剤を設ける必要がない。したがって、潤滑剤を塗布する箇所を減らして潤滑剤の管理が容易になり、生産性の向上が図られる。
【0037】
なお、上記実施形態における潤滑剤29の種類や、誘導路272の内径および長さなどの寸法、並びに誘導路272の本数は、これに限定するものではなく、種々の条件によって適宜変更し得る。
また、摺動子27は、潤滑成分を含む材料で形成されていればよく、例えば金属にワックス成分などを含有させた材料で形成してもよい。
また、誘導路272は、例えば摺動子27を軸方向に貫く穴を形成した後、この貫通穴の先端部271側の開口に樹脂や固形ワックスなど埋め込んで非貫通に形成してもよい。
そして、上記実施形態は、車両のパワーウインドウを操作するスイッチ装置を示したが、これに限らず、車両以外に用いるスイッチ装置としても広く適用することができる。
そのほか、本発明は上記しかつ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0038】
図面中、10はスイッチ装置、17はグランド接点(固定接点)、18は負荷接点(固定接点)、19はバッテリ接点(固定接点)、20は可動接片、22は操作部材、27は摺動子、271は先端部、272は誘導路(穴)、28はコイルばね(付勢手段)、29は潤滑剤を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、
固定接点と、
揺動可能に設けられ、揺動に伴い前記固定接点との接触状態が切替えられる可動接片と、
前記操作部材と前記可動接片との間に配置されるとともに、付勢手段により前記可動接片側へ付勢して設けられ、前記操作部材の操作に伴い先端部が前記可動接片上を摺動して前記可動接片を揺動させる摺動子と、
前記摺動子と前記操作部材との間に設けられる潤滑剤と、を備え、
前記摺動子は、潤滑成分を含む材料で形成され、前記操作部材側が開口しかつ前記可動接片側が閉塞した非貫通の穴を有し、
前記摺動子が前記可動接片上を摺動することに伴い前記摺動子の前記可動接片との接触部分が摩耗して前記穴が貫通し、その貫通した前記穴を伝って前記潤滑剤が前記摺動子と前記可動接片との接触部分に供給されることを特徴とするスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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