説明

スイッチ

【課題】省スペースで大電流に対応可能な接点間隙を確保できるとともに、基礎絶縁が破壊された場合でも感電に対する保護が可能となる接触機構を備えたスイッチを提供することを目的とする。
【解決手段】レバー10を操作することで傾動軸10bが回転し、この回転に伴って傾動軸10bに嵌合された第1の可動接片カバー2が回転することで可動接片1が回転し、端子6間の接離を行う。また、接触機構と操作部を夫々独立したユニットで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流に対応可能な接触機構を備えたスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の大電流に対応可能なスイッチは、操作部の操作に伴って可動接片が傾動することで端子間を接離させて電路の開閉を行うシーソー型の接触機構が一般的であった。また、大電流開離時に発生するアークを切断しやすくするために、底面に可動接片を配設した転換子を操作軸の傾倒により摺動させる構造とすることで接点間隙を広くした接触機構を備えたもの(下記特許文献1参照)があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−273316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のスイッチは、シーソー型の接触機構で接点間隙を広くするためにはスイッチを大型化しなければならなかった。また、底面に可動接片を配設した転換子を摺動させる構造とすることで、スイッチを大型化せずに接点間隙を広くすることが可能であるが、操作軸で直接可動接片を操作するため、基礎絶縁が破壊されたときの感電に対する保護を設けることが困難であった。ここで、基礎絶縁とは感電に対する基本的な絶縁であって、破壊されたときには感電する可能性のある絶縁のことである。
【0005】
そこで本発明は、上記状況に鑑みて、省スペースで大電流に対応可能な接点間隙を確保するとともにアークを瞬時に切断することができ、基礎絶縁が破壊された場合でも感電に対する保護ができる接触機構を備えたスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕ケース内に配設された複数の端子間を可動接片によって開離して電路の開閉を行う接触機構を備えたスイッチにおいて、前記可動接片は略円弧状に形成され、該可動接片の両端には円弧の外方に向って突片が形成されるとともに該突片に接点が配設され、前記可動接片が操作部の操作にともなって前記円弧の中心を支点として回転することにより、前記接点が前記端子に形成された固定接点と接離することで電路の開閉を行うことを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載のスイッチにおいて、前記可動接片は、回転の軸となる突起を設けた第1および第2の可動接片カバーにより挟持されることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載のスイッチにおいて、前記操作部と前記第1の可動接片カバーまたは前記第2の可動接片カバーが遊嵌されるとともに前記第1の可動接片カバーと前記ケースの間に弾性部材が配設され、該弾性部材は前記操作部の操作変位が一定量を超えたとき、操作方向によって前記可動接片を前記端子と接触する方向または開離する方向に付勢することを特徴とする
〔4〕上記〔1〕記載のスイッチにおいて、前記固定接点のいずれかを導電性部材を折り返して略U字状に形成したことを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕記載のスイッチにおいて、前記接触機構と前記操作部を夫々独立したユニットで構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)略円弧状の可動接片の回転により端子間を接離する構造としたので、一般的なシーソー型の接触機構と同スペースで、接点間隙を広くすることができる。
(2)操作部と第1の可動接片カバーまたは第2の可動接片カバーが遊嵌されるとともに第1の可動接片カバーとケースの間に弾性部材が配設されたことにより、操作部を操作する速度に係わらず、操作部の操作変位が一定量を超えるまでは可動接片は回転せず、一定量を超えると弾性部材の付勢により可動接片が瞬時に回転するため、操作部の駆動速度と接点の開閉速度が連動せず、操作部をゆっくりと操作しても接点間を瞬時に接離できるためアークを瞬時に切断することができる。
(3)第1の可動接片カバーとケースの間に配設された弾性部材の付勢により、接点と固定接点の接触時には十分な接触力が確保できる。
(4)接点間隙を広くすることができるとともにアークを瞬時に切断することができるので、大きなアークが発生する直流負荷の開閉に使用することができる。
(5)固定接点のいずれかを略U字状に形成したので、固定接点に弾性が付与されるため接点が接触する時に発生するバウンスを吸収することができる。
(6)接触機構と操作部を夫々独立したユニットとしたので、接触機構の基礎絶縁が破壊された場合でも感電に対する保護ができる。
(7)接触機構と操作部を夫々独立したユニットとしたので、接触機構の構造を変えることなく接触機構ユニットの結合数を変えるだけで、極数を容易に変更することができる。
(8)接触機構と操作部を夫々独立したユニットとしたので、接触機構を変えることなく操作部ユニットを付け替えることで、レバー、スライド、ロッカなど様々な操作形態に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の斜視図である。
【図3】本発明の実施例を示すスイッチの操作部の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施例を示すスイッチの操作部の斜視図である。
【図5】本発明の実施例を示すスイッチの斜視図である。
【図6】本発明の実施例を示すスイッチの操作部の動作を示す図である。
【図7】本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施例を示すスイッチの接触機構と従来例の接点間隙を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、操作部の操作に伴って可動接片が回転することで、端子間を接離することができる構成とする。よって、省スペースで接点間隙を広くすることができる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の分解斜視図、図2は本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の斜視図、図3は本発明の実施例を示すスイッチの操作部の分解斜視図、図4は本発明の実施例を示すスイッチの操作部の斜視図、図5は本発明の実施例を示すスイッチの斜視図、図6は本発明の実施例を示すスイッチの操作部の動作を示す図であり、図6(a)は操作前を、図6(b)は操作途中を、図6(c)は操作完了時である。図7は本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の動作を示す図であり、図7(a)は操作前を、図7(b)は操作途中を、図7(c)は操作完了時である。図8は本発明の実施例を示すスイッチの接触機構と従来例の接点間隙を示す図であり、図8(a)は本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の接点接触時を、図8(b)は本発明の実施例を示すスイッチの接触機構の接点開離時を、図8(c)は従来のシーソー型の接点接触時を、図8(d)は従来のシーソー型の接点開離時である。
【0012】
図1および2において、1は可動接片、2は第1の可動接片カバー、3は第1の可動接片カバー2と嵌合して可動接片1を挟持する第2の可動接片カバー、4はケース、5は第1の可動接片カバー2とケース4に掛着される引張バネ、6はケース4に配設される端子、7は端子6を覆うようにケース4に嵌合される端子カバー、8はケース4と嵌合されるケースカバー、9はケース4に螺合されるネジである。可動接片1は板状の導電部材を円弧状に折り曲げて形成され、円弧の両端には円弧の外方に向って突片1aが形成され、この突片1aに端子6の固定接点6aおよび6bと夫々接触する接点1bおよび1cが設けられている。第1の可動接片カバー2には引張バネ5を掛着する掛着突起2aおよび回転軸2bが形成され、第2の可動接片カバー3には回転軸3aが形成され、この回転軸2bおよび3aを中心として回転可能となる。
【0013】
第1の可動接片カバー2に可動接片1が係合され、第2の可動接片カバー3が第1の可動接片カバー2に嵌合されることで可動接片1が挟持される。このとき、第1の可動接片カバー2の掛着突起2aには引張バネ5の一方が掛着される。固定接点6aおよび6bが端子挿入孔4aからケース4の内側に突出するとともに固定接片6cおよび6dがケース4の底面に配設されるように端子6がケース4の側面に配設され、端子カバー7がケース4の端子6を配設した側から被され、凹部4bに形成された嵌合凸部4cと突片7aに形成された嵌合孔7bが嵌合される。端子6が配設されたケース4に第1の可動接片カバー2および第2の可動接片カバー3に挟持された可動接片1が配設され、このとき、第1の可動接片カバー2の回転軸2bが軸受孔4eおよび軸受孔7cに係合されるとともに引張バネ5の他方が掛着突起4dに掛着される。ケースカバー8がケース4に被され、凹部4fに形成された嵌合凸部4gと突片8aに形成された嵌合孔8bが嵌合される。このとき、第2の可動接片カバー3の回転軸3aが軸受孔8cに係合される。そして、ケース4の下方からネジ9が固定接片6cおよび6dに形成された貫通孔6eおよび6fを介してケース4に螺合されることにより、接触機構ユニット14が完成される。
【0014】
図3および4において、10はレバー、11はケース、12はレバー10とケース11に掛着される引張バネ、13はケース11に嵌合されるケースカバーである。レバー10には引張バネ12が掛着される掛着孔10aと、傾動の支点になるとともに接触機構に操作を伝達する傾動軸10bが形成される。ケース11には引張バネ12が掛着される掛着突起11aと、傾動軸10bが回動自在に係合される軸受孔11bが形成される。
【0015】
レバー10の掛着孔10aとケース11の掛着突起11aに引張バネ12が掛着されるとともに、傾動軸10bが軸受孔11bに係合されるようにレバー10がケース11に配設される。ケースカバー13がケース11に被され、ケース11の凹部11cに形成された嵌合凸部11dとケースカバー13の突片13aに形成された嵌合孔13bが嵌合される。このとき、レバー10の傾動軸10bが軸受孔13cに係合されるとともに、ケース11の掛着突起11aが係合孔13dに係合されることにより、操作部ユニット15が完成される。
【0016】
そして、図5に示すように、各部品の結合孔4h、7d、8d、11eおよび13eを結合ピン16で結合することで、接触機構ユニット14と操作部ユニット15が結合される。このとき、第1の可動接片カバー2の回転軸2bとレバー10の傾動軸10bが遊嵌されることにより、スイッチ17が完成される。
【0017】
以上のように構成された本発明のスイッチは、図6および7に示すように、レバー10を右方向に操作すると、傾動軸10bが右に回転する。傾動軸10bと第1の可動接片カバー2の回転軸2bは回転方向に対して遊びをもって嵌合されているため、レバー10の操作変位が一定量を超えるまでは回転軸2bは回転せず、一定量を超えると回転軸2bが回転する。この回転に伴って可動接片1が回転し、可動接片1の接点1bおよび1cが夫々端子6の固定接点6aおよび6bに接触し、端子6間を導通させる。このとき、引張バネ5の付勢により、可動接片1が瞬時に回転するため、レバー10の操作速度に係わらず瞬時に接点間が接触するとともに十分な接触力が確保され、レバー10は係止凸部11fに当接することで係止される。また、レバー10を左方向に操作すると、傾動軸10bが左に回転し、右方向への操作時と同様に、レバー10の操作変位が一定量を超えるまでは回転軸2bは回転せず、一定量を超えると回転軸2bが回転する。この回転に伴って可動接片1が回転し、各接点が開離され、端子6間が開放される。このとき、引張バネ5の付勢により、可動接片1が瞬時に回転するため、レバー10の操作速度に係わらず瞬時に接点間隙が確保される。また、スイッチ17をパネル(図示せず)に取り付ける場合、ケース11に設けられた固定孔11gがパネルに設けられたネジ孔とネジ(図示せず)によって螺合される。
【0018】
このように、本実施例に示すスイッチは、レバー10の操作に伴って可動接片1が回転することにより接点を接離する構造としたため、図8に示すように接点間隙Aは接点間隙Bよりも格段に広く、従来のシーソー型と同サイズであっても大電流に対応可能な接点間隙を確保できるという特徴を有している。
また、レバー10と第1の可動接片カバー2が遊嵌されるとともに第1の可動接片カバー2とケース7の間に配設された引張バネ5の付勢により、操作部を操作する速度に係わらず、操作部の操作変位が一定量を超えるまでは可動接片1が回転せず、一定量を超えると可動接片1が瞬時に回転するため、操作部の駆動速度と接点の開閉速度が連動せず、操作部をゆっくりと操作しても接点1bおよび1cと固定接点6aおよび6bを瞬時に接離できるためアークを瞬時に切断することができ、接点1bおよび1cと固定接点6aおよび6bの接触時には十分な接触力が確保できる。
さらに、接触機構と操作部を夫々独立したユニットとしたため、接触機構はケース4、端子カバー7およびケースカバー8によって可動接片1および端子6が密閉されることで基礎絶縁が備えられ、接触機構の基礎絶縁が破壊されたときでも、操作部ユニット側で感電に対する保護ができるという特徴を有している。
【0019】
本実施例では、操作部を可動接片カバーの回転軸と嵌合するレバーとしたが、操作部は、その操作によって支軸が回転し、その支軸の回転に伴って可動接片を回転させる構造であれば操作形態は多様に変更可能であって、操作部の構造を変えることでレバー以外のスライドやロッカなどとしてもよい。また、可動接片をケースの中央部からずらして配置しているが、ケースの中央部に配置するとともに周囲のスペースを削減することで小型化してもよく、端子をインサート成形などによりケースと一体に形成してもよく、外部との接続をネジ端子としているがハンダ端子やタブ端子などとしてもよい。パネルへの取付方法も樹脂バネによるワンタッチ取付などとしてもよく、種々の方法が考えられる。
【0020】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のスイッチは、大電流に対応可能な接触機構を備えたスイッチとして利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1,101 可動接片
1a 突片
1b,1c,101a,101b 接点
2 第1の可動接片カバー
2a,4d,19a 掛着突起
2b,3a 回転軸
3 第2の可動接片カバー
4,11 ケース
4a 端子挿入孔
4b,4f,11c 凹部
4c,4g,11d 嵌合凸部
4e,7c,8c,11b,13c 軸受孔
4h,7d,8d,11e,13e 結合孔
5,12 引張バネ
6 端子
6a,6b,106a,106b 固定接点
6c,6d 固定接片
6e,6f 貫通孔
7 端子カバー
7a,8a,13a 突片
7b,8b,13b 嵌合孔
8,13 ケースカバー
9 ネジ
10 レバー
10a 掛着孔
10b 傾動軸
11f 係止凸部
11g 固定孔
13d 係合孔
14 接触機構ユニット
15 操作部ユニット
16 結合ピン
17 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に配設された複数の端子間を可動接片によって開離して電路の開閉を行う接触機構を備えたスイッチにおいて、前記可動接片は略円弧状に形成され、該可動接片の両端には円弧の外方に向って突片が形成されるとともに該突片に接点が配設され、前記可動接片が操作部の操作にともなって前記円弧の中心を支点として回転することにより、前記接点が前記端子に形成された固定接点と接離することで電路の開閉を行うことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
請求項1記載のスイッチにおいて、前記可動接片は、回転の軸となる突起を設けた第1および第2の可動接片カバーにより挟持されることを特徴とするスイッチ。
【請求項3】
請求項2記載のスイッチにおいて、前記操作部と前記第1の可動接片カバーまたは前記第2の可動接片カバーが遊嵌されるとともに前記第1の可動接片カバーと前記ケースの間に弾性部材が配設され、該弾性部材は前記操作部の操作変位が一定量を超えたとき、操作方向によって前記可動接片を前記端子と接触する方向または開離する方向に付勢することを特徴とするスイッチ。
【請求項4】
請求項1記載のスイッチにおいて、前記固定接点のいずれかを導電性部材を折り返して略U字状に形成したことを特徴とするスイッチ。
【請求項5】
請求項1記載のスイッチにおいて、前記接触機構と前記操作部を夫々独立したユニットで構成することを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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