説明

スイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造

【課題】スイング式パワーユニットにアシストモータを備えてハイブリッド化する場合において、パワーユニットの大幅な変更を要することが無く、アシストモータ組み込みの小型化や部品レイアウトの簡略化等が可能となるスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造を提供する。
【解決手段】内燃機関3の回転動力を減速して後輪15に伝達する自動変速機50を備えて後輪を軸支する動力伝達部5と、内燃機関とが分離可能且つ一体的に構成され、動力伝達部が車体に対して上下揺動可能に車体に支持される自動二輪車用のスイング式パワーユニット6において、アシスト動力を発生するアシストモータ70が、内燃機関と動力伝達部との分離部31Laに介装されたことを特徴とするスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪を軸支する動力伝達部と内燃機関とを備え、動力伝達部が車体に上下揺動可能に支持される自動二輪車用のスイング式パワーユニットにおける、アシストモータの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スイング式パワーユニットでは、減速機構を含む駆動系と内燃機関とを有するとともに、駆動輪である後輪を支持して揺動する構造を備えるので、アシストモータを加えてハイブリッド化を行おうとする場合には、パワーユニットの大幅な変更が避けがたい。
【0003】
例えば、下記特許文献1に示されるものでは、アシストモータがパワーユニットのスイング揺動の先端側に配置されているため、パワーユニット全体が大きく成りがちであるとともに、揺動による干渉を回避するために、他の部品を配置し難い。また、バネ下の重量増加分が、車輪側に働くため、乗り心地への影響も懸念される、等の解決課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−175473号公報(図1、図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術に鑑み、スイング式パワーユニットにアシストモータを備えてハイブリッド化する場合において、パワーユニットの大幅な変更を要することが無く、アシストモータ組み込みの小型化や部品レイアウトの簡略化等が可能となるスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内燃機関の回転動力を減速して後輪に伝達する自動変速機を備えて同後輪を軸支する動力伝達部と、前記内燃機関とが分離可能且つ一体的に構成され、前記動力伝達部が車体に対して上下揺動可能に車体に支持される自動二輪車用のスイング式パワーユニットにおいて、アシスト動力を発生するアシストモータが、前記内燃機関と前記動力伝達部との分離部に介装されたことを特徴とするスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造において、前記アシストモータのモータケースが前記内燃機関側に固定され、前記動力伝達部は前記モータケース上の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持されて、前記動力伝達部が前記内燃機関に対してスイング可能に取付けられたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造において、前記モータケースと前記動力伝達部とを覆うカバーが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造において、前記アシストモータのモータケースが前記内燃機関側の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持され、前記動力伝達部は前記モータケースに固定されて、前記動力伝達部が前記モータケースとともに前記内燃機関に対してスイング可能に取付けられたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造において、前記内燃機関側の支軸部と前記モータケースを覆うカバーが設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造において、前記内燃機関と前記アシストモータのモータケースと前記動力伝達部とが3層構造をなしてボルトによって共締めされ、前記スイング式パワーユニットが一体となって車体に対してスイング可能に車体に取付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造によれば、動力伝達部と内燃機関とが分離可能且つ一体的に構成されるその分離部にアシストモータが介装されるので、スイング式パワーユニットにアシスト用モータを備えてハイブリッド化する場合において、パワーユニットの大幅な変更を要することが無く、パワーユニットの外側にアシストモータが突出せずパワーユニット揺動時の干渉の問題が回避され、他の部品の装着が容易となる。また、内燃機関から動力伝達部内へ延在するクランク軸に直接アシストモータを組み込めるので、動力伝達効率が良く、アシストモータ組み込みの小型化や部品レイアウトの簡略化が可能となる。そして、動力伝達部のスイング揺動端から離れてアシストモータが配置されるので、揺動慣性重量の増加を抑制でき、好ましい乗り心地が得られる。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、動力伝達部は、従来の内燃機関側の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持されるものに対して、モータケース上の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持されるものであるので、動力伝達部側の構成に大幅な変更を要しない。
また、揺動部に変更が殆ど無いので、揺動慣性の増加も殆ど無くすることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、モータケースと動力伝達部とを覆うカバーによって、モータケースと動力伝達部との間の回動支持部を塵埃の侵入から保護できる。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、内燃機関は、従来の動力伝達部を内燃機関側の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持するものに対して、モータケースを内燃機関側の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持するものであるので、内燃機関側の構成に大幅な変更を要しない。
アシストモータによる重量は、ベアリングが支えるため、揺動慣性はベアリング周りの慣性モーメントの僅かな増加に抑えられる。
【0016】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて、内燃機関側の支軸部とモータケースとを覆うカバーによって、内燃機関とモータケースとの間の回動支持部を塵埃の侵入から保護できる。
【0017】
請求項6の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、内燃機関と動力伝達部とが固定されてパワーユニットが一体となって車体に対してスイング可能に車体に取付けられるタイプのスイング式パワーユニットにおいても、内燃機関側および動力伝達部側の構成に大幅な変更を要さず、アシストモータを組み込むことができる。
アシストモータは、車体支持部寄りに配されるため、揺動慣性の増加は少なくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1および実施形態2に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明の実施形態1および実施形態2に係る自動二輪車用のスイング式パワーユニットの左側面図である。
【図3】図1中、III−III矢視による実施形態1のスイング式パワーユニットの断面展開図である。
【図4】図3中の、アシストモータの周囲の拡大説明図である。
【図5】図1中、III−III矢視による実施形態2のスイング式パワーユニットの断面展開図である。
【図6】図5中の、アシストモータの周囲の拡大説明図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る自動二輪車の左側面図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る自動二輪車用のスイング式パワーユニットの左側面図である。
【図9】図7中、IX−IX矢視による実施形態3のスイング式パワーユニットの断面展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態1に係る自動二輪車用のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造を、図1から図4に基づき説明する。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係るスイング式パワーユニット(以下、単に「パワーユニット」という)を、自動二輪車に取り付けた状態での車両の向きに従うものとする。図中、矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
なお、そのことは、後述の実施形態2および実施形態3に係る記載において同様である。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のスクータ型の自動二輪車1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ20の上部から左右一対のメインパイプ21、21が後方へ斜め下向きに側面視で直線的に延出しており、ヘッドパイプ20の下部から後方へ略水平に延びた左右一対のサポートパイプ22、22がメインパイプ21、21に連結されてメインパイプ21、21の前部を支持している。
【0021】
そしてサポートパイプ21、21の中間部から左右一対のダウンパイプ23、23が左右に広がって下方へ急傾斜角度で延出して前側鉛直部23a、23aをなし、下端で後方へ屈曲して中央水平部23b、23bを形成し、その後端で上方へ屈曲して後側傾斜部23c、23cを形成している。
後側傾斜部23c、23cの下部にメインパイプ21、21の後端が連結されて、側面視で概ね三角形状をなすメインパイプ21とダウンパイプ23の間には補強パイプ24が介装されている。
【0022】
メインパイプ21、21の中央より若干後寄り部分に前端を固着して水平に近い僅かに斜め上向きにシートレール25、25が後方へ車体後部まで延びており、シートレール25、25の中央部にダウンパイプ23、23の後側傾斜部23c、23cの上端が連結されて、シートレール25、25を下から支持する構造となっている。
【0023】
ヘッドパイプ20は、ステアリングシャフト11を軸支して、その上方へステアリングハンドル12、12が左右に展開して形成され、下方へはフロントフォーク13が延出して、その下端に前輪14が軸支されている。
【0024】
ダウンパイプ23の後側傾斜部23cの上下に支持ブラケット23d、23eが後方へ向けて突設されており、左右にそれぞれ対をなす支持ブラケット23d、23eに内燃機関3が懸架される。
【0025】
本実施形態に係る内燃機関3には、内燃機関3の回転動力を減速して後輪15に伝達するVベルト式自動変速機(本発明の「自動変速機」)50を備えて後輪15を軸支する動力伝達部5が、分離可能且つ一体的に構成され、動力伝達部5が内燃機関3に対して回動自在に支持され、一体のパワーユニット6が構成されている。
すなわち、パワーユニット6のうち、内燃機関3は車体フレーム2に取り付けられて固定されるが、後輪15を軸支する動力伝達部5は、その後端部とシートレール25、25の後端部との間にリヤクッション16、16が介装されて、車体フレーム(本発明における「車体」)2に対して上下揺動可能に支持される。
【0026】
内燃機関3は、4ストロークサイクル2気筒内燃機関であり、クランク軸30を車幅方向、すなわち水平左右方向に配向させ車体フレーム2に搭載されており、クランクケース31をダウンパイプ23の後側傾斜部23cより後方に位置させ、クランクケース31に順次重ねられて合体したシリンダブロック32、シリンダヘッド33、シリンダヘッドカバー34が、前方へ大きく前傾した姿勢でダウンパイプ23の後側傾斜部23cより前方に突設されている。
【0027】
シリンダブロック32、シリンダヘッド33、シリンダヘッドカバー34は側面視で左右のダウンパイプ23の後側傾斜部23cとメインパイプ21の後部とシートレール25の前部とにより構成される左右の三角形の間に位置し、クランクケース31の上部に突設されたマウントブラケット31aと前部に突設されたマウントブラケット31bが、支持ブラケット23d、23eに支軸26、27を介して各々支持されることで内燃機関3は車体フレーム2に懸架される。
【0028】
内燃機関3のクランクケース31に、動力伝達部5が、前部を回動自在に枢着されて後方へ延出して後部に後輪15を軸支している。内燃機関3の前傾したシリンダヘッド33の各シリンダから上方へそれぞれ延出した吸気管35、35が後方へ湾曲しクランクケース31の上に左右に並んで配設されたスロットルボディ36、36に接続され、スロットルボディ36、36はその後方に配設されたエアクリーナ37に連結されている。エアクリーナ37は左右シートレール25、25の間に配置され、その上方に収納ボックス17がシートレール25、25に架設支持されている。
【0029】
内燃機関3およびスロットルボディ36、36の上方を運転者用シート18Aが開閉自在に覆い、収納ボックス17およびその後部の上方を同乗者用シート18Bが開閉自在に覆っている。
【0030】
シリンダヘッド33から下方へそれぞれ延出した排気管38、38は、クランクケース31の前方を右側に寄ってクランクケース31の右側面に沿って後方へ延び、一本に結合されて車体の右側面を斜め上方に立ち上がり、後輪15の右側に支持されるマフラー39に連結されている。内燃機関3の前には、上側の左右2本のメインパイプ21、21と前側および下側の左右2本のダウンパイプ23、23の4本のパイプに囲まれて燃料タンク19が架設支持されている。
【0031】
本実施形態の自動二輪車1は、概ね以上のように構成されている。以下、パワーユニット6の内燃機関3およびそのクランクケース31に枢着される動力伝達部5の構造について説明する。
【0032】
クランクケース31は、左右割りの左クランクケース31L、右クランクケース31Rを合体するもので、図3に示すように、クランクケース31内の水平左右方向に指向したクランク軸30の右端にはACジェネレータ40のアウタロータ40aが嵌着され、その側方をケースカバー41が右クランクケース31Rに固着されて覆っており、ケースカバー41にACジェネレータ40のインナステータ40bが支持されている。
【0033】
シリンダブロック32の2本のシリンダスリーブ42、42内を各々往復摺動するピストン43、43がコネクティングロッド44、44を介してクランク軸30のクランクピンに連結されている。両クランクピンは360度の位相を有している。
【0034】
シリンダヘッド33には動弁機構45が設けられており、水平左右方向に指向した上下2本のカムシャフト45a、45bの右端に嵌着されたカムチェーンスプロケット45e、45eとクランク軸30の右クランクケース31Rより突出した根元部分に嵌着されたドライブチェーンスプロケット45cとの間にタイミングチェーン45dが架渡されて動力が伝達されるようになっている。
【0035】
タイミングチェーン45dは、シリンダブロック32とシリンダヘッド33の右側に形成されたカムチェーンチャンバー32a、33aを通っている。カムシャフト45a、45bは、それぞれ吸気バルブ46と排気バルブ47を所定タイミングで駆動する。
【0036】
以上のような内燃機関3のクランクケース31に、動力伝達部5が分離可能且つ一体的に枢着されて、パワーユニット6が構成されるが、動力伝達部5は、右側の支持アーム51と左側変速機ケース52とを備える。
右クランクケース31Rの右開口を塞ぎACジェネレータ40を覆うケースカバー41は、クランク軸30と同軸芯の開口部41aを有し、開口部41aにベアリング54を介して回転軸55が右方に突設されており、その突設部に動力伝達部5の支持アーム51の基端部51aが嵌着されている。
すなわち、開口部41aが、内燃機関3と動力伝達部5との、右側の分離部を構成する。
支持アーム51は、基端部51aから右クランクケース31Rの後面に沿って内側に回り込んだ連結部51bを有している。
【0037】
以下、図4も参照して、クランク軸30の左端は、左クランクケース31Lを貫通して左方に突出しており、従来その左突出部30aを囲む左クランクケース31Lの左側部31Laに動力伝達部が回動自在に取り付けられ、左側部31Laは、内燃機関3と動力伝達部5との左側の分離部を構成したが、本実施形態では、その左側の分離部である左クランクケース31Lの左側部31Laに、アシストモータ70を介装している。
【0038】
すなわち、アシストモータ70のモータケース71が、ベアリング72、72を介して、クランク軸30の左突出部30aを回転自在に挿通させて、ボルト73で左クランクケース31Lの左側部31Laに固定されている。
【0039】
モータケース71は、左クランクケース31に締結され左側が開放された右側のモータベース71aと、モータベース71aの左側の開放面を塞ぎモータ収容室74を形成するようにモータベース71aに締結される蓋部71bからなる。
モータ収容室74内において、クランク軸30の左突出部30aには、アシストモータ70の磁石を備えたインナロータ70aが嵌着され、モータケース71の内面には、アシストモータ70の電磁コイルを備えたアウタステータ70bがインナロータ70aの外周を囲むように配置されて支持され、アシストモータ70が構成される。
【0040】
クランク軸30は、左突出部30aの先に、左先端部30bがモータケース71の左方に貫通して突出しているが、クランク軸30の左先端部30bが貫通するモータケース71の蓋部71bの外側面に、クランク軸30の左先端部30bを囲むように環状支持部材(本発明の「支軸部」)75が固着され、環状支持部材75にベアリング56を介して左側変速機ケース52の基端部52aが回動自在に枢支されている。
【0041】
図3に示されるように、左側変速機ケース52は、基端部52aから左クランクケース31Lの後面に沿って内側に回り込んだ連結部52bと、さらに後方へ延出した左フォーク部52cとを有する。
クランクケース31の後面に沿って、右側から回り込んだ支持アーム51の連結部51bと、左側から回り込んだ左側変速機ケース52の連結部52bとが互いに連結合わせ面どうしを当接され、ボルト57で締結されている。
【0042】
また、連結部52bの後面に取付けボス部52dが後方へ突出しており、取付けボス部52dの右側合わせ面に、右フォーク部材53の前端の左側合わせ面が合わせられ、ボルト58により締結されている。
しかして、左右の変速機ケース51、52が連結され、左フォーク部52cと右フォーク部材53が相対向して一体に結合され、右フォーク部材53が支持アーム51と一体に連結されて後方へ延出される。
【0043】
結合された一方の支持アーム51はクランク軸30を中心にベアリング54により揺動自在に軸支され、他方の左側変速機ケース52はクランク軸30を中心にベアリング56により揺動自在に軸支されているので、相対した左フォーク部52cと右フォーク部材53は一体にクランク軸25を中心に上下に揺動自在に支持されることになる。
【0044】
なお、ベアリング56を介して、互いに回動自在に連結される内燃機関3と動力伝達部5とは、左クランクケース31Lの左側部31Laにおいて、分離可能且つ一体的に構成されるが、運転時において環状支持部材75やベアリング56等回動支持部に塵埃が侵入することを防ぐために、モータケース91と動力伝達部5とを覆うカバー59が設けられている。ただし、カバー59は、図1、図2においては、図示省略されている。
【0045】
左側変速機ケース52の基端部52aには、Vベルト式自動変速機50の遠心変速機構を備えた駆動プーリ60が設けられ、挿入されたクランク軸30の左先端部30bに取り付けられている。
一方、左側変速機ケース52の左フォーク部52cの後部は、ミッション室をなし、ドリブン軸64が回転自在に支持され、ドリブン軸64に遠心クラッチ63を介して従動プーリ62が軸支されている。従動プーリ62と駆動プーリ60との間にVベルト61が架渡されてVベルト式自動変速機50が構成されている。
Vベルト式自動変速機50自体は、広く公知であるので、構造と作用の詳しい説明は省略する。
なお、Vベルト式自動変速機50を収納する左側変速機ケース52の左側開口は、ベルトカバー65で塞がれる。
【0046】
左フォーク部52cの後部のミッション室内において、ドリブン軸64から中間軸66を介して後輪軸15aに駆動力が伝達される減速ギヤ列67による減速機構が構成されている。
後輪軸15aは、左フォーク部52cと右フォーク部材53の間に回転自在に架設されており、左フォーク部52cと右フォーク部材53の間で後輪15が後輪軸15aに支持されている。
【0047】
したがってVベルト式自動変速機50を備えた、支持アーム51と左変速機ケース52からなる動力伝達部5は、クランク軸30を中心に左フォーク部52c、右フォーク部材53および後輪15を上下に揺動自在として枢支される。
そして左側変速機ケース52の後端とシートレール25の後端との間にリヤクッション16が介装され、動力伝達部5は、車体フレーム2に対して上下揺動可能に支持される。
【0048】
以上のように、本実施形態1のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造では、内燃機関3の回転動力を減速して後輪15に伝達するVベルト式自動変速機50を備えて後輪15を軸支する動力伝達部5と、内燃機関3とが分離可能且つ一体的に構成され、動力伝達部5が車体フレーム2に対して上下揺動可能に車体フレーム2に支持される自動二輪車1用のスイング式のパワーユニット6において、アシスト動力を発生するアシストモータ70が、内燃機関3と動力伝達部5との分離部である左クランクケース31Lの左側部31Laに介装されたので、パワーユニット6にアシストモータ70を備えてハイブリッド化する場合において、パワーユニット6の大幅な変更を要することが無く、パワーユニット6の外側にアシストモータ70が突出せず、パワーユニット6揺動時の干渉の問題が回避され、他の部品の装着が容易となる。
【0049】
また、内燃機関3から動力伝達部5内へ延在するクランク軸30に直接アシストモータ70を組み込めるので、動力伝達効率が良く、アシストモータ70組み込みの小型化や部品レイアウトの簡略化が可能となる。そして、動力伝達部5のスイング揺動端(後輪15側端部)から離れてアシストモータ70が配置されるので、揺動慣性重量の増加を抑制でき、好ましい乗り心地が得られる。
【0050】
また、アシストモータ70のモータケース71が内燃機関3側に固定され、動力伝達部5はモータケース71上の支軸部である環状支持部材75にベアリング56を介して回動自在に支持されて、動力伝達部5が内燃機関3に対してスイング可能に取付けられたので、動力伝達部5は、従来の内燃機関側の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持されるものに対して、動力伝達部5側の構成に大幅な変更を要しない。
また、揺動部に変更が殆ど無いので、揺動慣性の増加も殆ど無くすることができる。
【0051】
また、モータケース71と動力伝達部5とを覆うカバー59が設けられたので、モータケース71と動力伝達部5との間の回動支持部となる環状支持部材75とベアリング56を、塵埃の侵入から保護できる。
【0052】
次に、本発明の実施形態2に係る自動二輪車用のスイング式パワーユニット(以下、単に「パワーユニット」という)のアシストモータ配置構造を、図5と図6に基づき説明する。
また、図1、図2は、本実施形態においても同様なので参照するものとする。
【0053】
本実施形態2のパワーユニット6′は、上述の実施形態1に対して、アシストモータ80の取付け位置と、内燃機関3′に対する動力伝達部5′の分離部と、動力伝達部5′を回動支持する箇所が異なるだけで、他の構成は同様である。
したがって、以下、実施形態1と実質的に同様な箇所は、図中に符号を付すのを省略し、あるいは同じ符号を付して説明を省略ないしは簡略とし、異なる箇所には別途の符号を付して、異なる点を主に説明する。
【0054】
図5に示されるように、また、図6も参照して、本実施形態においてもクランク軸30の左端は、左クランクケース31Lを貫通して左方に突出しており、従来、その左突出部30aを囲む左クランクケース31Lの左側部31Laに動力伝達部が回動自在に取り付けられ、左側部31Laは、内燃機関と動力伝達部との左側の分離部を構成したが、本実施形態では、その左側の分離部である左クランクケース31Lの左側部31Laに、アシストモータ80を回動自在に介装している。
【0055】
すなわち、クランク軸30の左突出部30aが貫通する左クランクケース31Lの左側部31Laに、クランク軸30の左突出部30aを囲むように環状支持部材(本発明の「支軸部」)90が固着され、環状支持部材90にベアリング91を介して、アシストモータ80のモータケース81が、回動自在に枢支されている。
【0056】
モータケース81は、左クランクケース31に回動自在に支持され、左側が開放された右側のモータベース81aを備えるが、モータベース81aの左側は、クランク軸30の左突出部30aを左方に貫通させるとともに、モータ収容室84を形成するように、左側変速機ケース52の基端部52aの右側部52rが、モータケース81の蓋部81bとして開放面を覆って、ボルト85でモータベース81aに締結される。
【0057】
モータ収容室84内において、クランク軸30の左突出部30aには、アシストモータ80の磁石を備えたインナロータ80aが嵌着され、モータケース81の内面には、アシストモータ80の電磁コイルを備えたアウタステータ80bがインナロータ80aの外周を囲むように配置されて支持され、アシストモータ80が構成される。
【0058】
左側変速機ケース52の基端部52aの右側部52r、すなわち蓋部81bは、クランク軸30の左突出部30aに、ベアリング92を介して枢支される。
クランク軸30は、左突出部30aの先に左先端部30bが設けられて、モータケース81の左方に突出し、左側変速機ケース52の基端部52a内に挿入されている。
【0059】
すなわち、左側変速機ケース52はアシストモータ80と互いに一体に固定され、内燃機関3′の左クランクケース31Lの左側部31Laの環状支持部材(本発明の「支軸部」)90に、ベアリング91を介して共に回動自在に支持される。
【0060】
なお、ベアリング91を介して、互いに回動自在に連結される動力伝達部5′およびアシストモータ80と、内燃機関3′とは、左クランクケース31Lの左側部31Laにおいて、分離可能且つ一体的に構成されるが、運転時において環状支持部材90やベアリング91等回動支持部に塵埃が侵入することを防ぐために、モータケース81と環状支持部材90とを覆うカバー93が設けられている。ただし、カバー93は、図1、図2においては、図示省略されている。
【0061】
左側変速機ケース52の基端部52aには、Vベルト式自動変速機50の遠心変速機構を備えた駆動プーリ60が設けられ、挿入されたクランク軸30の左先端部30bに取り付けられている。
動力伝達部5′の構造、作用は、実施形態1の動力伝達部5について説明したとおりである。
【0062】
以上のように、本実施形態2のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造では、内燃機関3′の回転動力を減速して後輪15に伝達するVベルト式自動変速機50を備えて後輪15を軸支する動力伝達部5′と、内燃機関3′とが分離可能且つ一体的に構成され、動力伝達部5′が車体フレーム2に対して上下揺動可能に車体フレーム2に支持される自動二輪車1用のスイング式のパワーユニット6′において、アシスト動力を発生するアシストモータ80が、内燃機関3′と動力伝達部5′との分離部である左クランクケース31Lの左側部31Laに介装されたので、パワーユニット6′にアシストモータ80を備えてハイブリッド化する場合において、パワーユニット6′の大幅な変更を要することが無く、パワーユニット6′の外側にアシストモータ80が突出せず、パワーユニット6′揺動時の干渉の問題が回避され、他の部品の装着が容易となる。
【0063】
また、内燃機関3′から動力伝達部5′内へ延在するクランク軸30に直接アシストモータ80を組み込めるので、動力伝達効率が良く、アシストモータ80組み込みの小型化や部品レイアウトの簡略化が可能となる。そして、動力伝達部5′のスイング揺動端から離れてアシストモータ80が配置されるので、揺動慣性重量の増加を抑制でき、好ましい乗り心地が得られる。
【0064】
また、アシストモータ80のモータケース81が、内燃機関3′側の環状支持部材90にベアリング91を介して回動自在に支持され、動力伝達部5′はモータケース81に固定されて、動力伝達部5′がモータケース81とともに内燃機関3′に対してスイング可能に取付けられたので、従来の動力伝達部を内燃機関側の支軸部にベアリングを介して回動自在に支持するものに対して、内燃機関3′側の構成に大幅な変更を要しない。
また、アシストモータ80による重量は、ベアリング91が支えるため、揺動慣性はベアリング91周りの慣性モーメントの僅かな増加に抑えられる。
【0065】
また、内燃機関3′側の環状支持部材90とモータケース81を覆うカバー93が設けられたので、環状支持部材90とモータケース81との間の回動支持部となる環状支持部材90とベアリング91を、塵埃の侵入から保護できる。
【0066】
次に、本発明の実施形態3に係る自動二輪車用のスイング式パワーユニット(以下、単に「パワーユニット」という)のアシストモータ配置構造を、図7から図9に基づき説明する。
【0067】
図7に示されるように、本実施形態3のスクータ型の自動二輪車101は、ステアリングハンドル110によって操舵される前輪111と、内燃機関103と動力伝達部105とを備えたスイング式のパワーユニット106によって駆動される後輪113とを備えるものである。
【0068】
車体フレーム102は、フロントフレーム121およびリヤフレーム122に2分割される。
フロントフレーム121は、ヘッドパイプ121aから後下がりに延びるダウンフレーム121bと、ダウンフレーム121bの下端から後方に延びる左右一対のフロア支持フレーム121c…と、両フロア支持フレーム121c…の後端間を連結するクロスメンバ121dとを備える。
ヘッドパイプ121aは、前輪110を軸支するフロントフォーク112とステアリングハンドル110を操向可能に支承する。
【0069】
また、フロア支持フレーム121c…の後端には、左右一対のリヤフレーム122が、それぞれ結合され、複数個所で左右が相互に結合されており、フロア支持フレーム121cの後端から後上がりに延びる前半部122aと、前半部122aの後端から前半部122aよりも緩やかにして後上がりに延びる後半部122bとから成り、全体として後上がりに傾斜している。
【0070】
フロントフレーム121における両フロア支持フレーム121c…間には燃料タンク114が設けられ、パワーユニット106は、リヤフレーム122の前半部122a…および後半部122b…の連設部に支軸115とブラケット140とが図示しない揺動リンクを介して上下揺動可能に支承される。
またリヤフレーム122には、パワーユニット106の上方に位置する物品収納部116が支持されており、物品収納部116は運転者用シート117によって上方から開閉可能に覆われる。さらに車体フレーム102、燃料タンク114およびパワーユニット106の一部は、合成樹脂から成る車体カバー123で覆われており、燃料タンク114の上方に配置されるとともに両フロア支持フレーム部121c…で支持されるステップフロア123aが、車体カバー123に形成される。
【0071】
パワーユニット106は、その前部の内燃機関103と、後部左側で後輪113の左側方に配置される動力伝達部105とが分離可能且つ一体的に構成されている。
内燃機関103は、単気筒の4ストロークサイクル内燃機関であり、クランク軸131を自動二輪車101の車幅方向に配向させている。
【0072】
動力伝達部105は、内燃機関103と車幅方向左側に連設されて後輪113の左側方まで後方に延びる変速機ケース150を備え、変速機ケース150の後部と、左側のリヤフレーム122の後端との間にリヤクッション118が設けられる。
すなわち、動力伝達部105は車体フレーム(本発明における「車体」)102に対して上下揺動可能に車体フレーム102に支持される。
【0073】
図7から図9に示されるように、内燃機関103の機関本体130は、クランクケース半部132およびシリンダブロック133を一体に有する第1機関ブロック134と、クランクケース半部132に結合されてクランクケース135を構成する第2機関ブロック136と、シリンダブロック133に結合されるシリンダヘッド137と、シリンダヘッド137に結合されるシリンダヘッドカバー138とを備えて、物品収納部116の下方に配置されており、車幅方向に延びる軸線を有するクランク軸131がクランクケース135で回転自在に支承される。
【0074】
機関本体130は、シリンダブロック133に設けられるシリンダボア139の軸線すなわちシリンダ軸線X(図8参照)を水平に対しわずかに前上がりに傾斜させつつ車体フレーム102の前後方向にほぼ沿うようにして、車体フレーム102に搭載されるものであり、クランクケース135の後側上部に設けられた左右一対のブラケット140…とリヤフレーム122の前半部122a…と後半部122b…との連設部の支軸115とを、図示しない揺動リンクを介して揺動可能に支承される。
【0075】
また、変速機ケース150は、機関本体130におけるクランクケース135の左側部に、アシストモータ170のモータケース171を挟んで結合されて後方に延びるケース主体151と、ケース主体151に左側から結合される左側カバー152と、ケース主体151の後部に右側から締結される右側カバー153とを備える。
【0076】
動力伝達部105は、変速機ケース150内に、クランク軸131の回転動力を無段階に変速するVベルト式自動変速機(本発明の「自動変速機」)154と、後輪113の後輪軸113aとVベルト式自動変速機154との間に介設される減速ギヤ列155とを備える。
Vベルト式自動変速機154は、変速機ケース150におけるケース主体151および左側カバー152間に形成される変速機室156に収容され、減速ギヤ列155は、変速機ケース150におけるケース主体151と右側カバー153との間に形成されるギヤ室157に収容される。
【0077】
Vベルト式自動変速機154は、変速機室156内でクランク軸131の左先端部131bに設けられる駆動プーリ158と、変速機室156内の後部に配置される従動プーリ159と、駆動プーリ158および従動プーリ159に巻き掛けられる無端状のVベルト160とを有する。
【0078】
駆動プーリ158は、クランク軸131に固定された固定側プーリ半体158aと、固定側プーリ半体158aに対して接近・離間可能な可動側プーリ半体158bとを備えており、可動側プーリ半体158bはクランク軸131の回転数の増加に応じて半径方向外側に移動する遠心ウエイト161によって固定側プーリ半体158aに接近する方向に付勢される。
【0079】
変速機ケース150の後部においてケース主体151および右側カバー153には、クランク軸131と平行な軸線を有する出力軸162が回転自在に支承されており、従動プーリ159は、出力軸162に相対回転可能に支持された固定側プーリ半体159aと、固定側プーリ半体159aに対して接近・離間可能な可動側プーリ半体159bとを備え、可動側プーリ半体159bはスプリングで固定側プーリ半体159bに向けて付勢されている。また固定側プーリ半体159aと出力軸162との間に発進用クラッチ163が設けられる。
【0080】
変速機ケース150におけるケース主体151の後部および右側カバー153には、出力軸162と、出力軸162に平行な中間軸164および後輪軸113aが回転自在に支承されており、減速ギヤ列155は、出力軸162、中間軸164および後輪軸113a間に設けられ、右側カバー153を貫通して右側に突出する後輪軸113aの右端に後輪113が設けられる。
【0081】
上のように構成された動力伝達部105によって、クランク軸131の回転動力は駆動プーリ158に伝達され、駆動プーリ158からVベルト160、従動プーリ159、発進用クラッチ163および減速ギヤ列155を介して後輪113に伝達されるが、そのような動力伝達部105自体は広く公知であるので、その構造と作用の詳しい説明は省略する。
【0082】
クランク軸131の右端部にはアウタロータ141aが固定され、アウタロータ141aと共働してACジェネレータ141を構成するインナステータ141bが、アウタロータ141aで囲繞されるようにしてクランクケース135の右側面に固定される。
【0083】
図9に示されるように、シリンダボア139の内部に摺動自在に嵌合するピストン142は、コネクティングロッド143を介してクランク軸131に連接される。
ピストン142の頂部を臨ませてシリンダブロック133とシリンダヘッド137の間には燃焼室144が形成されており、シリンダヘッド137には、燃焼室144に通じ得るようにしてシリンダヘッド137の上部に開口される図示しない吸気ポートと、燃焼室144に通じ得るようにしてシリンダヘッド137の下部に開口される図示しない排気ポートとが設けられる。
【0084】
また、シリンダヘッド137とヘッドカバー138との間には、図示しない吸気弁および排気弁を開閉駆動する動弁機構180が収容されており、動弁機構180は、クランク軸131と平行な軸線を有してシリンダヘッド137に回転自在に支承され吸気側カム182aおよび排気側カム182bを備えたカム軸181を備える。
【0085】
クランクケース135、シリンダブロック133およびシリンダヘッド137には、クランク軸131の回転動力を1/2の減速比でカム軸181に伝達するタイミングチェーン184を走行可能に収容するチェーン通路185が設けられ、タイミングチェーン184は、クランク軸131に設けられたドライブチェーンスプロケット186とカム軸181に設けられたカムチェーンスプロケット187とに巻き掛けられる。
動弁機構180自体は広く公知であるので、その構造、作用の詳しい説明は省略する。
【0086】
図示しない排気ポートには、シリンダヘッド137の下部から後方に延びる排気管145(図7参照)の上流端が接続されており、排気管145の下流端は後輪113の右側に配置されるマフラー146に接続される。
【0087】
一方、図8に示されるように、シリンダヘッド137の上部には、図示しない吸気ポートをシリンダヘッド137の上部側壁から後方側に向けて彎曲させるようにした吸気管部137aが一体に設けられている。
吸気管部137aはシリンダヘッド137の上部に一体に設けられ、吸気管部137aに、シリンダヘッド137の上部から後方に延びるようにして機関本体130と物品収納部116の間に配置される吸気装置147が接続される。
【0088】
吸気装置147は、吸気管部137aに接続される吸気管147aと、吸気管147aの上流端に接続されるスロットルボディ147bと、下流端がスロットルボディ147bに接続されるコネクティングチューブ147cと、変速機ケース150の上方に配置されてコネクティングチューブ147cの上流端に接続されるエアクリーナ147dとで構成される。
【0089】
吸気装置147の吸気管147aは、シリンダヘッド137の吸気管部137aとともに側面視で略U字状となる吸気通路を形成するものであり、その吸気通路に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁148が、シリンダヘッド137に取付けられる。
【0090】
そして、本実施形態3においては、図9に示されるように、クランク軸131の左端が、クランクケース135を貫通して左方に突出しており、その左突出部131aを囲むクランクケース135のクランクケース左側部135Laには、従来動力伝達部が分離可能且つ一体的に取り付けられ、クランクケース左側部135Laは内燃機関と動力伝達部との分離部を構成したが、本実施形態では、その分離部であるクランクケース左側部135Laに、アシストモータ170が介装されている。
【0091】
すなわち、アシストモータ170のモータケース171が、クランク軸131の左突出部131aを回転自在に挿通させて、後述の「通しボルト」となるボルト175でクランクケース左側部135Laに固定される。
【0092】
モータケース171は、クランクケース135に締結され左側が開放された右側のモータベース171aと、モータベース171aの左側の開放面を塞ぎモータ収容室174を形成するようにモータベース171aにボルト173で締結される蓋部171bからなる。
【0093】
モータ収容室174内において、クランク軸131の左突出部131aには、アシストモータ170の磁石を備えたインナロータ170aが嵌着され、モータケース171の内面には、アシストモータ170の電磁コイルを備えたアウタステータ170bがインナロータ170aの外周を囲むように配置されて支持され、アシストモータ170が構成される。
【0094】
クランク軸131は、左突出部131aの先にさらに左先端部131bを有し、左先端部131bがモータケース171の蓋部171bの左方に貫通して突出し、ベアリング176を介して蓋部171bにより支持されている。
変速機ケース150のケース主体151の前端側に形成される基端部150aには、クランク軸131の左先端部131bが挿入され、左先端部131bには上述のようにVベルト式自動変速機154の駆動プーリ158が取り付けられるとともに、基端部150aがモータケース171を挟んで、ボルト175でクランクケース左側部135Laに締結される。
【0095】
すなわち、内燃機関103とアシストモータ170のモータケース171と動力伝達部105とが3層構造をなして、通しボルトとしてのボルト175によって共締めされ固定される。
よって、本実施形態のパワーユニット106は、上述の実施形態1、2と異なり、内燃機関103とアシストモータ170と動力伝達部105が一体となって、回動支点となる支軸115回りにスイング可能に取付けられたものとなり、リヤクッション118を介して、動力伝達部105が車体フレーム102に対し上下揺動可能に支持される。
【0096】
以上のように、本実施形態3のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造では、内燃機関103の回転動力を減速して後輪113に伝達するVベルト式自動変速機154を備えて後輪113を軸支する動力伝達部105と、内燃機関103とが分離可能且つ一体的に構成され、動力伝達部105が車体フレーム102に対して上下揺動可能に車体フレーム102に支持される自動二輪車101用のスイング式のパワーユニット106において、アシスト動力を発生するアシストモータ170が、内燃機関103と動力伝達部105との分離部であるクランクケース左側部135Laに介装されたので、パワーユニット106にアシストモータ170を備えてハイブリッド化する場合において、パワーユニット106の大幅な変更を要することが無く、パワーユニット106の外側にアシストモータ170が突出せず、パワーユニット106揺動時の干渉の問題が回避され、他の部品の装着が容易となる。
【0097】
また、内燃機関103から動力伝達部105内へ延在するクランク軸131に直接アシストモータ170を組み込めるので、動力伝達効率が良く、アシストモータ170組み込みの小型化や部品レイアウトの簡略化が可能となる。そして、動力伝達部105のスイング揺動端から離れてアシストモータ170が配置されるので、揺動慣性重量の増加を抑制でき、好ましい乗り心地が得られる。
【0098】
また、内燃機関103とアシストモータ170のモータケース171と動力伝達部105とが3層構造をなしてボルト175によって共締めされ、パワーユニット106が一体となって車体フレーム102に対してスイング可能に車体フレーム102に取付けられたので、内燃機関と動力伝達部とが固定されて一体となって車体に対してスイング可能に取付けられるタイプのスイング式パワーユニットにおいても、内燃機関103側および動力伝達部105側の構成に大幅な変更を要さず、アシストモータ170を組み込むことができる。
また、アシストモータ170は、車体支持部寄りに配されるため、揺動慣性の増加は少なくて済む。
【0099】
以上、本発明の三つの実施形態につき説明したが、本発明の態様が上記実施形態1〜3に限定されず、本発明は、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0100】
1、101…自動二輪車、2、102…車体フレーム(車体)、3、3′、103…内燃機関、5、5′、105…動力伝達部、6、6′、106…パワーユニット(スイング式パワーユニット)、15…後輪、16…リヤクッション、30…クランク軸、30a…左突出部、30b…左先端部、31…クランクケース、31L…左クランクケース、31La…左側部(分離部)、31R…右クランクケース、32…シリンダブロック、33…シリンダヘッド、50…Vベルト式自動変速機(自動変速機)、51…支持アーム、52…左側変速機ケース、52a…基端部、52r…右側部、56…ベアリング、57…ボルト、59…カバー、60…駆動プーリ、70…アシストモータ、70a…インナロータ、70b…アウタステータ、71…モータケース、71a…モータベース、71b…蓋部、74…モータ収容室、75…環状支持部材(支軸部)、80…アシストモータ、80a…インナロータ、80b…アウタステータ、81…モータケース、81a…モータベース、81b…蓋部、84…モータ収容室、90…環状支持部材(支軸部)、91…ベアリング、92…ベアリング、93…カバー、113…後輪、115…支軸、118…リヤクッション、130…機関本体、131…クランク軸、131a…左突出部、131b…左先端部、135…クランクケース、135La…クランクケース左側部(分離部)、137…シリンダヘッド、150…変速機ケース、154…ベルト式自動変速機(自動変速機)、158…駆動プーリ、170…アシストモータ、170a…インナロータ、170b…アウタステータ、171…モータケース、171a…モータベース、171b…蓋部、174…モータ収容室、175…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(3,3′,103)の回転動力を減速して後輪(15,113)に伝達する自動変速機(50,154)を備えて同後輪(15,113)を軸支する動力伝達部(5,5′,105)と、前記内燃機関(3,3′,103)とが分離可能且つ一体的に構成され、前記動力伝達部(5,5′,105)が車体(2,102)に対して上下揺動可能に車体(2,102)に支持される自動二輪車(1,101)用のスイング式パワーユニット(6,6′,106)において、
アシスト動力を発生するアシストモータ(70,80,170)が、前記内燃機関(3,3′,103)と前記動力伝達部(5,5′,105)との分離部(31La,135La)に介装されたことを特徴とするスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。
【請求項2】
前記アシストモータ(70)のモータケース(71)が前記内燃機関(2)側に固定され、
前記動力伝達部(5)は前記モータケース(71)上の支軸部(75)にベアリング(56)を介して回動自在に支持されて、
前記動力伝達部(5)が前記内燃機関(2)に対してスイング可能に取付けられたことを特徴とする請求項1記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。
【請求項3】
前記モータケース(71)と前記動力伝達部(5)とを覆うカバー(59)が設けられたことを特徴とする請求項2記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。
構造。
【請求項4】
前記アシストモータ(80)のモータケース(81)が前記内燃機関(2′)側の支軸部(90)にベアリング(91)を介して回動自在に支持され、
前記動力伝達部(5′)は前記モータケース(81)に固定されて、
前記動力伝達部(5′)が前記モータケース(81)とともに前記内燃機関(2′)に対してスイング可能に取付けられたことを特徴とする請求項1記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。
【請求項5】
前記内燃機関側(2′)の支軸部(90)と前記モータケース(81)を覆うカバー(93)が設けられたことを特徴とする請求項4記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。
【請求項6】
前記内燃機関(103)と前記アシストモータ(170)のモータケース(171)と前記動力伝達部(105)とが3層構造をなしてボルト(175)によって共締めされ、前記スイング式パワーユニット(106)が一体となって車体(102)に対してスイング可能に車体(102)に取付けられたことを特徴とする請求項1記載のスイング式パワーユニットのアシストモータ配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228983(P2012−228983A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99373(P2011−99373)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】