説明

スキャナドライバ

【課題】プレスキャンを行う場合の全読取処理時間を短縮する。
【解決手段】最高解像度のプレスキャンモードであれば(S0B)、読取条件設定ステップにおいて、ユーザが読取条件の各項目の設定値を変更する毎に、この更新に対応した画像処理を行って、その結果をプレビュー表示させる(S2、S3、S4A、S30、S31)。ユーザが本スキャン指示を与えると、本スキャンせずに処理結果画像メモリの内容をアプリケーションに渡す(S6A)。最低解像度のプレスキャンモードであれば、低解像化処理を含む読取解像度がこれ以下の場合、本スキャンせずに処理結果画像メモリの内容をアプリケーションに渡す(S6A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスキャン指示に応答して、スキャナに対し所定解像度で原稿画像を読み取らせ、得られた画像データを表示装置に表示させるプレビュー機能を備えたスキャナドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
アプリケーションからスキャナドライバを起動させ、そのUI画面でプレスキャン機能を有効にしてスキャンを実行させると、従来では図1に示すような処理が行われていた(例えば下記特許文献1)。
【0003】
(S0)読取解像度をスキャナの最低解像度に設定して、スキャナに対し原稿画像を読み取らせる。
【0004】
(S1)読み取った画像データを受信し、画面に表示させる。
【0005】
(S2)ユーザは、その画像を視認して、明るさ、コントラスト又は読取範囲等の読取条件を設定する。
【0006】
(S3)ステップS2で本スキャンボタンが押下されていれば、ステップS4へ進む。
【0007】
(S4)設定値を保存して、次に設定変更されるまでこの設定値を使用する。
【0008】
(S5)この設定値に基づいて、スキャナに対しスキャンを実行させ、その結果の画像データを受信する。
【0009】
(S6)アプリケーションへ画像データを渡して、スキャナドライバの処理を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−20679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、プレスキャン後、必ず本スキャンが行われるので、全体の処理時間が長くなるという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、プレスキャンを行う場合の全読取処理時間を短縮することが可能なスキャナドライバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様では、プレスキャン指示に応答して、スキャナに対し所定解像度で原稿画像を読み取らせ、得られた画像データを表示装置に表示させるプレビューステップと、
設定指示に応じて画像読取条件を定める条件設定ステップと、
確定指示に応答して、該画像読取条件を満たす画像データをアプリケーションに渡す最終処理ステップと、
をコンピュータに実行させるスキャナドライバにおいて、
該条件設定ステップでは、設定指示の変更毎にその設定に対応するように該画像データを編集させ、その編集結果を該表示装置に表示させ、
該最終処理ステップでは、最終的な該編集結果を該アプリケーションに渡す。
【0014】
本発明によるスキャナドライバの第2態様では、第1態様において、該所定解像度は、該スキャナの解像度範囲の最低値であり、
該最終処理ステップでは、該条件設定ステップで最終的に設定された読取解像度が該最低値以下であれば本スキャンを省略し、そうでなければ、最終的に設定された画像読取条件に基づいて該スキャナに対し該原稿画像を再度読み取らせる。
【0015】
本発明によるスキャナドライバの第3態様では、第1態様において、該所定解像度は、該スキャナの解像度範囲の最高値であり、
該最終処理ステップでは、本スキャンを省略する。
【0016】
本発明によるスキャナドライバの第4態様では、該コンピュータに対し、第1処理モード又は第2処理モードの選択を受け付けさせるモード選択ステップをさらに有し、
該コンピュータに対し、
該第1モードの選択に応答して請求項2に記載の全ステップを実行させ、
該第2モードの選択に応答して請求項3に記載の全ステップを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
上記第1態様の構成によれば、原稿画像読取条件設定の変更毎にその設定に対応するように、プレビュー画像のデータを編集しその結果を表示装置に表示させ、最終的な編集結果をアプリケーションに渡すので、本スキャンを省略することが可能となり、これにより、プレスキャンを行う場合の全読取処理時間を短縮することが可能となるという効果を奏する。
【0018】
上記第2態様の構成によれば、スキャナの解像度範囲の最低値で画像を読み取り、最終的に設定された読取解像度が該最低値以下であれば本スキャンを省略するので、この省略の条件を満たす場合に、プレスキャンを行うときの全読取処理時間を短縮することが可能となるという効果を奏する。
【0019】
上記第3態様の構成によれば、スキャナの解像度範囲の最高値で画像を読み取り、最終処理ステップで本スキャンを省略するので、高解像度の画像を読み取る場合に、プレスキャンを行うときの全読取処理時間を短縮することが可能となるという効果を奏する。
【0020】
上記第4態様の構成によれば、ユーザによるモード選択に応じて、上記第2態様又は第3態様の処理を行うので、スキャン結果の用途に応じて、プレスキャンを行うときの全読取処理時間を短縮することが可能となるという効果を奏する。
【0021】
本発明の他の目的、特徴的な構成及び効果は、以下の説明を特許請求の範囲及び図面の記載と関係づけて読むことにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】プレスキャンを含む従来の原稿画像読取処理を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施例1に係る画像形成システムの概略ブロック図である。
【図3】スキャナドライバとこれに関係した部分の機能ブロック図である。
【図4】(A)は図3中のデータ記憶部の構成を示す概略ブロック図であり、(B)は図3中のUI部により表示されるプレスキャンモード選択画面の概略構成図である。
【図5】図3中のスキャナドライバの処理を示す概略フローチャートである。
【図6】図5中の3つのモードに共通な処理を示す概略フローチャートである。
【図7】図5のステップS14での処理を示す概略フローチャートである。
【図8】図5のステップS15での処理を示す概略フローチャートである。
【実施例1】
【0023】
図2は、本発明が適用された画像形成システムの概略ブロック図である。
【0024】
このシステムでは、パーソナルコンピュータ(PC)10と、スキャナを備えた画像形成装置20〜22とが、ネットワーク30で結合されている。PC10には、画像形成装置20〜22のそれぞれのスキャナドライバがインストールされている。各スキャナドライバは、プレスキャンに関し共通の機能を備えている。
【0025】
図3は、この機能を備えたスキャナドライバ40と、これに関係した部分の機能ブロック図である。
【0026】
スキャナドライバ40がアプリケーション41で起動されると、システム制御部42は、ユーザインターフェイス(UI)部43を介し表示装置44に、読取条件設定や後述のプレスキャンモード等のUI画面を表示させる。
【0027】
ここでデータ記憶部45は、図4(A)に示すように、設定値記憶部451、スキャン画像記憶部452及び処理結果画像メモリ453を備えている。設定値記憶部451には、スキャナの読取条件の設定範囲、読取条件の既定値又はその後ユーザにより更新された値である設定値が格納されており、設定値記憶部451はフラッシュメモリなどの不揮発性記憶部である。この設定値には、原稿読取設定範囲、読取解像度、画素階調、明るさ、コントラストなどが含まれる。上記UI画面には、設定値記憶部451に格納されているこれら設定値及びその取り得る値の範囲が表示される。
【0028】
図4(B)は、上記UI画面の1つであるプレスキャンモード設定画面を示す。
【0029】
ユーザは、入力装置46を操作してプレスキャン機能のチェックボックスにチェックを入れることにより、プレスキャン機能を有効にし、ラジオボタンでプレスキャンモードを選択し、実行ボタンを押下すると、プレスキャン指示がUI部43を介してシステム制御部42に与えられる。
【0030】
システム制御部42はこれに応答して、設定値記憶部451に格納されているプレスキャンに関する設定値(読取範囲は原稿サイズに対応した読取可能な全範囲、読取解像度は後述のもの)に基づき、通信制御部47及び通信部48を介して画像形成装置20にスキャンを実行させる。画像形成装置20で読み取られた画像データは、通信部48、通信制御部47及びシステム制御部42を介してスキャン画像記憶部452及び処理結果画像メモリ453に格納され、UI部43を介し表示装置44にこのメモリ内の画像データの画像が、プレビュー画像として表示される。
【0031】
ユーザが入力装置45を操作して読取条件の各項目の設定値を変更する毎に、UI部43は、その値で、設定値記憶部451内の対応する部分を更新する。システム制御部42は、この更新が行われる毎に、スキャン画像記憶部452に格納されている画像データについて、画像処理部49に対し、この更新に対応した画像処理を行わせ、その結果を処理結果画像メモリ453に書き込ませるとともに、UI部43に対し、処理結果画像メモリ453の内容で表示装置44上のプレビュー画像を更新させる。
【0032】
ユーザが入力装置46を操作して本スキャン指示を与えると、これがUI部43を介しシステム制御部42に伝えられる。システム制御部42はこれに応答して、以下に説明するように、所定の条件を満たせば本スキャンせずに処理結果画像メモリ453の内容をアプリケーション41に渡し、又は、図1のステップS5及びS6の処理を行う。
【0033】
図5は、スキャナドライバ40の処理を示す概略フローチャートである。
【0034】
(S10)上述のように、ユーザによる入力装置46の操作に応じて、読取条件やプレスキャンモードなどの設定及びスキャン指示が行われる。
【0035】
(S11)プレスキャン指示が行われた場合にはステップS12へ進み、そうでなければステップS16へ進む。
【0036】
(S12)プレスキャンモードが通常モードであればステップS13へ進み、最低解像度モードであればステップS14へ進み、最高解像度モードであればステップS15へ進む。
【0037】
これらのいずれのモードも、概説すれば、図6に示すような3ステップを含んでいる。
【0038】
(S20)プレスキャン指示に応答して、画像形成装置20に対し所定解像度で原稿画像を読み取らせ、得られた画像データを表示装置44に表示させる。読取範囲は、原稿サイズに対応した読取可能な全範囲である。
【0039】
(S21)ユーザによるデータ記憶部45の操作に応じて、読取条件を設定する。
【0040】
(S22)ステップS21で設定された条件を満たす画像データを、アプリケーション41に渡す。ステップS14では、本スキャンを行う必要がない場合があり、また、ステップS15では、本スキャンを行う必要がない。
【0041】
本スキャンを行う場合があることと、従来からの用語と、単一の用語を使用した方が解りやすいことから、本スキャンを行わない場合も、以下では「本スキャン指示」(請求項では「確定指示」)という用語を使用する。
【0042】
次に、各プレスキャンモードの詳細を説明する。
【0043】
ステップS13では、図1の処理が行われる。図1において、ステップS0及びS1は図6のステップS20に対応し、ステップS2〜S4は図6のステップS21に対応し、ステップS5及びS6は図6のステップS22に対応している。このプレスキャンモードは、例えばプレビュー画像で読取範囲のみ設定し、本スキャンでモノクロ高階調を選択する場合に利用される。
【0044】
図7は、図5のステップS14での処理を示す概略フローチャートである。図1と同一処理については同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図7中、ステップS0A及びS1は図6のステップS22に対応し、ステップS2、S3、S4A、S30及びS31は図6のステップS21に対応し、ステップS32、S33、S5及びS6Aは図6のステップS22に対応している。
【0046】
(S0A)画像形成装置20の読取解像度範囲における最低解像度でスキャンを行わせる。画像形成装置20がカラースキャナであれば、画像形成装置20の読取可能な階調のうち最低の階調、例えば8X8X8=256階調でスキャンを行わせる。
【0047】
以下のステップS1〜S3は図1の場合と同一である。
【0048】
(S4A)読取条件の各項目について、その設定値がユーザにより変更されると、設定値記憶部451内の対応する部分を更新する。
【0049】
(S30)スキャン画像記憶部452に格納されている画像データについて、更新後の設定値記憶部451の内容に対応した画像処理を行い、その結果を処理結果画像メモリ453に書き込む。但し、設定解像度が該最低解像度を超える場合、カラー設定階調が上記値を超える場合又はモノクロ階調が最低カラー階調に対応したモノクロ階調を超える場合には、画像処理を行わない。
【0050】
なお、前記但し書きの場合、スムージング処理により解像度又は階調を、設定値に対応するように変更する構成であってもよい。
【0051】
(S31)処理結果画像メモリ453の内容で、表示装置44上のプレビュー画像を更新し、ステップS2へ戻る。
【0052】
ステップS3において、ステップS2で本スキャンボタンが押下されていれば、ステップS32へ進む。
【0053】
(S32)設定値記憶部451に格納されている読取解像度、すなわち最終的に設定された読取解像度が、最低解像度以下(カラーでプレビュースキャンした場合にはさらに、最終的に設定されたカラー階調が最低階調、又は、最終的に設定されたモノクロ階調が、最低カラー階調に対応したモノクロ階調以下(上記の場合、8階調以下))であればステップS6Aへ進み、そうでなければステップS5へ進む。ここに「以下」に含まれる「未満」は、画像処理により解像度や階調を装置の最低値よりも下げることを意味する。
【0054】
以上の処理により、本スキャンを行わなくてもよい場合が生ずる。このスキャンモードは例えば、読取解像度及びカラー階調がプレスキャンのそれら以下である場合に利用される。この場合、通常プレスキャンモード及び以下の最高解像度プレスキャンモードの場合よりも全体の処理時間を短縮することができる。
【0055】
(S6A)処理結果画像メモリ453の内容をアプリケーションへ渡して、スキャナドライバの処理を終了する。
【0056】
図8は、図5のステップS15での処理を示す概略フローチャートである。図7との比較では、ステップS0Bでの読取解像度がステップS0Aのそれと異なり、また、図7のステップS32及びS5が省略されている。他の点は図7と同一である。
【0057】
(S0B)画像形成装置20の読取解像度範囲における最大解像度でスキャンを行わせる。画像形成装置20がカラースキャナであれば、画像形成装置20の読取可能な階調のうち最高の階調、例えば256X256X256階調でスキャンを行わせる。
【0058】
このモードによれば、図7のステップS5の処理を完全に省略することが可能となる。このモードは例えば、要求される画質の点で最終的に高解像度かつ高階調の画像となるがファイルサイズを最小限に抑えたい場合やカラーにするかどうか迷っている場合などに利用される。このような場合、通常モード及び最低解像度モードの場合よりも全体の処理時間を短縮することができる。
【0059】
本実施例1では特に、3つのプレスキャンモードのうちの1つをユーザが選択できるようにしているので、用途に応じてプレスキャンモードを選択することにより、プレビューを行う場合の全読取処理時間を短縮することが可能となる。
【0060】
以上において、本発明の好適な実施例を説明したが、本発明には他にも種々の変形例が含まれ、上記実施例で述べた各構成要素の機能を実現する他の構成を用いたもの、当業者であればこれらの構成又は機能から想到するであろう他の構成も、本発明に含まれる。
【0061】
例えば、上記3つのプレスキャンモードのうち少なくとも2つ以上含む構成であればよい。また、最低解像度モード又は最高解像度モードにおいて、図4(B)の画面でカラー階調を選択できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 PC
20〜22 画像形成装置
30 ネットワーク
40 スキャナドライバ
41 アプリケーション
42 システム制御部
43 UI部
44 表示装置
45 データ記憶部
451 設定値記憶部
452 スキャン画像記憶部
453 処理結果画像メモリ
46 入力装置
47 通信制御部
48 通信部
49 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスキャン指示に応答して、スキャナに対し所定解像度で原稿画像を読み取らせ、得られた画像データを表示装置に表示させるプレビューステップと、
設定指示に応じて画像読取条件を定める条件設定ステップと、
確定指示に応答して、該画像読取条件を満たす画像データをアプリケーションに渡す最終処理ステップと、
をコンピュータに実行させるスキャナドライバにおいて、
該条件設定ステップでは、設定指示の変更毎にその設定に対応するように該画像データを編集させ、その編集結果を該表示装置に表示させ、
該最終処理ステップでは、最終的な該編集結果を該アプリケーションに渡す、
ことを特徴とするスキャナドライバ。
【請求項2】
該所定解像度は、該スキャナの解像度範囲の最低値であり、
該最終処理ステップでは、該条件設定ステップで最終的に設定された読取解像度が該最低値以下であれば本スキャンを省略し、そうでなければ、最終的に設定された画像読取条件に基づいて該スキャナに対し該原稿画像を再度読み取らせる、
ことを特徴とする請求項1に記載のスキャナドライバ。
【請求項3】
該所定解像度は、該スキャナの解像度範囲の最高値であり、
該最終処理ステップでは、本スキャンを省略する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスキャナドライバ。
【請求項4】
該コンピュータに対し、第1処理モード又は第2処理モードの選択を受け付けさせるモード選択ステップをさらに有し、
該コンピュータに対し、
該第1モードの選択に応答して請求項2に記載の全ステップを実行させ、
該第2モードの選択に応答して請求項3に記載の全ステップを実行させる、
ことを特徴とするスキャナドライバ。
【請求項5】
該モード選択ステップではさらに、該コンピュータに対し第3処理モードの選択を受け付けさせ、
該コンピュータに対し、該第3モードの選択に応答して請求項1に記載の全ステップを実行させるとともに、該最終処理ステップでは、最終的な該画像読取条件に基づいて必ず、該スキャナに対し該原稿画像を本スキャンさせる、
ことを特徴とする請求項4に記載のスキャナドライバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27000(P2013−27000A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162910(P2011−162910)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】